◆ CORFIELD (コーフィールド) RETRO-LUMAX 28mm/f3.5 (zebra)《後期型》(M39)

(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホール/修理が終わってご案内するモデルは、英国は
CORFIELD製広角レンズ・・・・、
RETRO-LUMAX 28mm/f3.5 (zebra)《後期型》(M39)』です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Україні!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

Slava UkrainieieGeroyam Slava

今回完璧なオーバーホール/修理が終わってご案内するモデルは、当方がオーバーホール作業を始めた12年前からの累計で、当時のCORFIELD製広角レンズ「28mm/f3.5」の括りで捉えると僅か4本目です。前回の扱いが2018年だったので、だいぶ時間が空いてしまいました(泣)

そもそもCORFIELD製オールドレンズは市場流通数が大変少なく、流れていても標準レンズのほうが圧倒的に多く、今回の広角レンズで「焦点距離28㎜」と言うのは相当な品薄品です。特に銘玉と揶揄されているモデルでもなく、あくまでもマニアックな部類に入るのでしょうが何を隠そう当方も実は影でコッソリと「隠れキリシタン」の如くCORFIELDファンだったりします(笑)

初期の頃はCORFIELDが内製しており、特異なヘリコイド駆動方式の設計を採ったシルバーとブラックのtwo-toneモデルが顕在しますが、その後にサクッと旧西ドイツのENNA München (エナ・ミュンヘン) に設計も含めた生産委託をしてしまった潔さが好きで、合わせてENNA製となれば「独特な青色成分の表現性」に多大な魅力を感じ取り、しかも今回のような「後期型」のゼブラ柄モデルとなれば・・もぉ〜生唾モノです!(笑)

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1924年に英国はバーミンガム近郊のラシャルで生まれたKenneth George Corfield (ケネス・ジョージ・コーフィールド) 氏は、10歳の時にKodak製ボックス・ブラウニーカメラを手に入れて初めて写真に興味を持ったようです。印画紙や薬品を購入するお金が無いので、自宅の屋根裏の作業部屋で引き伸ばし機を自作し、自ら薬品を配合し、戦時期に製産され期限切れになった政府の余剰印画紙を手に入れて写真現像していたようです。そんな少年の情熱は最後まで尽きる事なく、85歳になるまでロンドンのオフィスで働き続け、2016年1月11日に91歳で永眠されました。

CORFIELD (コーフィールド) 社は、イギリスのグレートブリテン島の中部に位置するバーミンガム近郊のスタッフォードシャー (現ウェスト・ミッドランズ州) Wolverhampton (ウォルバーハンプトン) と言う街で、創業者ケネス・ジョージ・コーフィールド卿によって1948年に創設されたフィルムカメラメーカーです。

創業当初はフィルムカメラ用アクセサリを開発/製産し「引伸し用露出計ルミメーター」や「距離計テレメーター」などを販売していたようです。

1953年にライカ版サイズ「24x36㎜」を採用し「L39マウント規格」で斬新的な「潜望鏡方式」のミラー機構部を採り入れたレンジファインダーカメラ「periflex I」を発売しました (右写真は第2世代の黒塗り本革貼り仕様のタイプ)。

この当時の初期の頃のモデルではミラー部の降下は押し下げ操作が必要になりシャッターボタン押し込みでも格納されないままでした。

1957年にはフィルムの巻き上げと同時にミラー部が降下し、且つシャッターボタン押し込みと同時に瞬時に格納するよう改良し、布幕フォーカルプレーンシャッター方式を採り、合わせて対物レンズの交換で画角を変更できるファインダーとしてき「periflex 3」を発売します。

潜望鏡方式」と自ら呼称したミラー部は、こんな感じで垂直状にそろそろとフィルム印画紙の巻き上げに連動して降りてきます(笑) シャッターボタン押し下げに合わせ連動して右側に備わるスプリングガイドのバネのチカラを借りて瞬時にミラー部が格納されます。

また翌年の1958年には「periflex 3」の廉価版モデルとしてシャッター速度を1/500秒とし、ファインダーの対物レンズが交換できないモデル「periflex 2」を投入してきます。


さらに、フィルム巻き上げをダイアルノブからレバー方式に改変して、スプリット式のスクリーンを実装し、再びシャッター速度を1/1000秒に戻したモデル「periflex 3a」が1959年に登場します。


この後1961年には「periflex Gold Star」及び「INTERPLAN-A」が投入されます (右写真はGold Star (左) にINTERPLAN-A (右))。

ちなみに1959年にアイルランドに会社を移転させますが、その後すぐ1960年にギネスに買収され1961年末には生産を停止してしまいます。さらに1971年には工場を閉鎖するものの、1980年に入ってから今度は建築用のフィルムカメラ「CORFIELD WA67」を手掛けるなど、フィルムカメラに対する情熱は留まるところを知りませんでした(涙)

合わせてケネス氏は同時期には英国の電話交換システム大手の「STC (Standard Telephones and Cables)」を15年間指揮し、欧州からの大陸間横断海底ケーブル敷設に貢献し、その一方でやはり当時英国最大規模を誇っていたコンピューター会社「ICL」を買収し、通信ハードウェア輸出額の著しい増大を実現させ、ついに1980年にはそれら英国に於ける貢献が認められナイトの爵位を拝受しています。

↑上の写真 (4枚) は、当時旧西ドイツのENNA München (エナ・ミュンヘン) が発売していた「焦点距離28㎜」の広角レンズ製品群です。左から「ULTRA-LITHAGON 28mm/f3.5 (silver)」にゼブラ柄の「LITHAGON 28mm/f3.5 (zebra)」そして右側2枚は1958年に登場したレンズヘッド交換方式の「LITHAGON 28mm/f3.5 Sockel仕様」になります。

これらのうち1年前後の遅れでCORFIELD向けにOEM発売されたのが「CORFIELD製RETRO-LUMAX 28mm/f3.5」シルバー鏡胴やゼブラ柄になりますが、そもそもENNA製品でさえシルバー鏡胴とゼブラ柄モデルの発売時期が前後に入り乱れておりその詳細は不明です (シルバー鏡胴モデルは1960年発売なのにゼブラ柄は1959年との情報もある/ちなみにSockel仕様に至ってはさらに先に登場し1958年発売/Northern Ireland COMMUNITY ARCHIVEより引用)

なお「ENNA」を「エンナ」と記しているネット上サイトが多いですが (オークションでも非常に多い) ドイツ語発音では「エナ」が正しい表記になります (エンナは日本人特有のローマ字的な呼称なので適さない)。

例えば今問題になっている「ウクライナ」状況も「Ukraine」がラテン語/英語表記になりますが、英語圏での発音は「ユークレイン」と聞こえます (ウクライナ語表記ではУкраї́на)。ところが日本では「ウクライナ」なので、そのまま発音すると通じない場合があります。エジプトのピラミッドに纏わる「ツタンカーメン」王もラテン語/英語表記は「Tutankhamun」で、発音すると「トゥトゥカーメ()」に聞こえるので、一般的に英語圏では短縮して「トゥト/トゥトゥ (tut)」と呼称するのが普通ですから、そのまま「ツタンカーメン」と述べても通じない事があるらしいですね(笑) このように明治維新の名残たる(笑)、日本人特異なローマ字読みでの国際通用は、正直恥ずかしい文化ではないかと特に最近強く感じています(笑) せめて世界に広く開示されてしまうネット上での呼称は、ローマ字読み的な発音はできるだけ避けて「国際通用する発音」として、日本でも今後教育していく必要があると感じています (そもそも英語話せるようになるべきではないでしょうか)(汗)

このブログでも仕方なく日本で通用するほうの表記/呼称で載せている場合がありますが(汗)

【CORFILED社製オールドレンズ】

  • CORFILED内製 (Wray PAT.):RETRO-LUMAR 28mm/f3.5 (silver)
  • CORFILED内製 (Wray PAT.):RETRO-LUMAX 35mm/f3.5 (silver)
  • CORFILED内製 (Wray PAT.):RETRO-LUMAX 35mm/f2.8 (silver)
  • CORFILED内製 (Wray PAT.):LUMAX 45mm/f3.5 (silver)
  • CORFILED内製 (Wray PAT.):LUMAX 45mm/f2.8 (silver)
  • CORFILED内製 (Wray PAT.):LUMAX 45mm/f1.9 (silver)
  • CORFILED内製 (Wray PAT.):LUMAR 50mm/f3.5 (silver)
  • CORFILED内製 (Wray PAT.):LUMAR 50mm/f2.8 (zebra)
  • ENNA製 (Wray PAT.):LUMAX 50mm/f1.9 (zebra)
  • ENNA製:RETRO-LUMAX 28mm/f3.5 (zebra)
  • ENNA製:RETRO-LUMAX 35mm/f2.8 (zebra)
  • ENNA製:LUMAX 50mm/f2.8 (zebra)
  • ENNA製:LUMAX 50mm/f2.4 (zebra)
  • ENNA製:LUMAR 95mm/f2.8 (zebra)

・・他にも中望遠〜望遠レンズまで発売していましたが、オールドレンズに関する詳しいことはネットを検索してもあまり出てきません。

上記一覧で「CORFIELD内製」はウルバーハンプトンの自社工場で製産していた事を意味し「シルバー鏡胴に黒色の合皮革を巻いていたtwo-toneのカラーリングになる初期型」モデルを指します (左写真は当時の写真で中央手前の敷地に広がっているのが工場と本社建屋/
Northern Ireland COMMUNITY ARCHIVEより
)。

また「Wray PAT.」は同じく英国はロンドンの「Wray Optical Works (レイ光学製造所)」による特許登録光学設計を指します。後に登場する「ENNA製」は旧西ドイツのENNA München社によるOEM生産を意味します。

なお最後期には鏡胴に「MADE IN JAPAN」刻印がある「LUMAXシリーズ」も極短い期間に登場していますが、詳細は不明です。

今回扱ったモデルRETRO-LUMAX 28mm/f3.5 (zebra)《後期型》(M39)』の「初期型」たるCORFIELD内製品は、ネット上では唯一「CJ’s Classic Cameras」の掲載写真が存在するので、右写真はその引用です。どう言う理由なのか不明ですが、このモデルだけがブラックのフィルター枠外周に「光学系構成図を刻印していた」のが分かり、なかなか興味をそそられます (当時の他の初期型モデルには光学系構成図の刻印が無い)。

これらCORFIELD内製モデルについては、例えばLUMAX 45mm/f1.9 ENGRAND (L39)」などをこのブログでも掲載しているので、そこをご覧頂くと解説していますが「ヘリコイドは特異な鋼線を螺旋状に打ち込んでアルミ合金材の鏡胴で繰り出し/収納する設計」なのが分かり、とても特徴的です。

またマウント規格は「L39マウント規格」としても「距離計連動機構を装備していない」ので、その分ライカ版フィルムカメラの制約を受けずに「最短撮影距離でより近接撮影できるよう短縮化している」のをその設計にみてとれます。従って厳密に言えば「M39マウント規格」とも言い替えられそうですが、ロシアンレンズで言う「ZORKI版マウント規格たるM39」の
フランジバックや目的/仕様などとは全く異なるので紛らわしいです(汗)

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↑上の写真はFlickriverで、このオールドレンズの特徴的な実写をピックアップしてみました。
ピックアップした理由は撮影者/投稿者の撮影スキルの高さをリスペクトしているからです
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています/上記掲載写真はその引用で
転載ではありません。

上の写真は全て今回扱ったモデル「CORFIELD製RETRO-LUMAX 28mm/f3.5」で一切ヒットしないので、仕方なくOEM元「ENNA製品」Lithagonのほうでピックアップしています。

一段目
左側2枚の実写は背景の円形ボケの状況を確認する為にピックアップしていますが、基本的に広角レンズ域の光学設計なのでそもそも円形ボケが苦手です。また右側は収差ボケが溶けてトッロトロボケへと変わる様を調べています・・どちらかと言うと背景ボケは全般的に少々粗めに煩く現れる印象でしょうか。

二段目
この段では発色性を確認していますが、左側2枚の実写を観る限り、植物の葉の色合いも決してコントラストが誇張されずに「ナチュラルな印象の発色性」に落ち着き、花の色合いも決して違和感を感じない自然な印象です。

それに反して、右側2枚は「完璧に色飽和してしまった赤色表現」としてピックアップしましたが、そもそも一段前のところでピックアップしていた実写の発色性は「どちらかと言うと朱色的な印象の色合い」に感じられるので、一線を越えると途端に色がヒックリ返ってしまい「赤色だけが色飽和する」ような特徴があるのでしょうか・・よく分かりません。

逆に言うなら「赤色の表現性に特徴がある」オールドレンズの場合、朱色も似たように特徴的な色付きをしている事が多いように思うので、どうもこのモデルでの「朱色と赤色との切り分け」がよく分かっていません(笑)

三段目
この段ではまさに特徴的な「青色成分の凄さ」としてピックアップしていますが、これらの実写はサイトを確認するとフィルターを介しており、合わせて発色性の制御も執っているようです・・然しそうだとしても、そもそも青色成分が強烈に影響しているので、一部の色成分だけを除去しても全く違和感を感じません。さらに言うなら「階調表現の素晴らしさ」は、しっかりグラデーションを維持できている点に於いてなかなかたいしたものだと感じます。その意味で捉えるなら、きっと総天然色を表現する「色の三原色」の中で、当時から主体的に使われ続けている「黄色」前述の様に「赤色成分だけを除去制御」したとしても (フィルターの介入と共にカラーコントロールしているとの事) 各波長/各色にて大変素晴らしい入射光制御ができている「証拠」として、この段で捉えた/ピックアップした「青色成分の凄さ」がグラデーションにちゃんと残っているのだと受け取っています・・つまり光学設計の素晴らしさとでも言うべきでしょうか。

四段目
この段では被写体の素材感や材質感を写し込む質感表現能力の高さについてチェックしています。光学系の基本成分が「3群3枚のトリプレット型構成」なので、それほど鋭い要素を写し込めないもののギリギリの処で質感表現をちゃんと残しているように見えます・・但し、人物撮影での人肌表現だけはノッペリしているようです(笑)

五段目
左側2枚でパースペクティブを確認して、右側2枚で被写界深度をチェックしています。画の歪み感はそれほど高くないのでパースペクティブにも極端に違和感が残らないように見えます。被写界深度はそれほど高くないようですが/狭くないようですが、一番右端の実写はサイトを観ると「マクロモード」との記載があるのでエクステンションでも介しているのかも知れません。

六段目
この段では陰影の残り方、合わせて黒潰れ含めた質感表現能力の高さもチェックしています。白黒写真になると余計に青色成分の影響が極端に顕著に表れ、黒潰れの傾向がさらに低く変わります・・それは総天然色のカラー成分を白黒写真などのグレースケール表現では「256階調に振り分ける」作業を経て白黒写真として残る原理からも考えた時、必然的に「色の三原色の振り分け境界が必ず大きく影響してくる」ハズと捉えられ、例えば青色成分についても、ある一線を越えるまでは「白黒写真内での明るさ/明部への振り分け」である一方、その一線を越える手前までの色成分は「むしろ中間調から暗部への影響度を増す」とも捉えられ「境界を跨いで互いに相反する方向性へとその階調表現が振り分けられる特性」こそが白黒写真のグレースケール世界での表現性の大きな特徴とも受け取れそうです (当方は光学知識が疎いので多々自慰認識ではありません)(笑)

すると同じシ〜ンを撮影しているにもかかわらず、カラー写真と白黒写真とで全くその画の表現性がガラッと変わってしまう要素について、ある意味説明ができそうに気がしてきます。従ってカラー写真だけが特筆されるべき写真世界では無く、逆に白黒写真のグレースケール世界も「別の表現性を示してくれる」点に於いてリスペクトすべきと特に感心しています(笑)

これらの話が今回扱ったこのモデルの光学系設計に於いて、特に顕著に見てとれる要素の一つとも考えられ、なかなかオールドレンズは奥が深いと感心させられました(汗)・・その意味でも「三段目」と最後の「六段目」との繋がりは特にこのモデルに於いては強いのかも知れませんね・・興味関心は尽きません(笑)

光学系は6群6枚のレトロフォーカス型構成です。絞りユニットを挟んで3群3枚のトリプレット型構成を基本成分としているので、とても自然な印象に落ち着くピント面の鋭さを併せ持っていると受け取れます。

その一方でバックフォーカスを稼ぐ目的で光学系第1群 (前玉) からの3枚が配されているとしても、3群目の役割がどうも気になって仕方ありません(笑)

・・光学系の知識が疎いので消化不良です(笑)

右構成図は今回のオーバーホールで完全解体した際に光学系の清掃時、当方の手によりデジタルノギスを使い逐一全ての群の光学硝子レンズを計測したトレース図です。

↑今回出品の個体を完全解体した時のパーツ全景写真です。オーバーホール工程やこのモデルの当時の背景など詳しい解説はRETRO-LUMAX 28mm/f3.5 (zebra)《後期型》(M39)』のページをご参照下さいませ。

ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。

DOHヘッダー

ここからは完璧なオーバーホール/修理が完了したオールドレンズの写真になります。

↑順番が逆になりますが、上の写真は当初バラしてから溶剤で洗浄した後の「直進キー」と言うパーツの状況です。赤色矢印で指し示している箇所がペンチか何かで掴んで故意にワザと広げられています。

この空いている溝のような部分には「固定用の締付ネジ」が両端に2本入るのですが、その一方だけを「ネジ頭まで入るように広げている」のが分かります。

今回のオーバーホール/修理ご依頼内容は「距離環を回すトルクが重すぎる」との事で、届いた現物をチェックしても確かにピント合わせできるような距離環のトルクではありませんでした (重すぎて時々マウントが回ってしまうくらい)。

直進キー
距離環を回す「回転するチカラ」を鏡筒が前後動する「直進するチカラ」に変換する役目

直進キー」の役目が上記のような目的なので、鏡筒の両サイドに用意されている「直進キーガイドという溝部分」に上の写真の「突出している先部分が刺さってヘリコイドの回転により鏡筒が繰り出されたり/収納したりする原理」です。

従ってこの突出している部分がガイドの溝部分の内壁に当たって擦ったりすると「距離環を回す時のトルクに大きく干渉してしまい重くなる」次第です。

つまり今回の個体が距離環を回した時に「異常に重いトルク」に至っている原因が「上の写真で広げて変形させてしまったから」と明確に指摘できます。

そもそもどうしてこのようにペンチで広げてしまったのでしょうか??? その目的は明白です。この「直進キー」を締め付け固定するネジ2本が開いている切り欠きの両端に入るとしても、その一方のネジ頭まで入ってしまえば「この直進キーの位置が絶対にズレない」事を狙って、広げてしまったワケで、相当賢い考え方です(驚)

2本の締付ネジのうち片側はこの切り欠きに入ってネジ頭まで入らないので「直進キーを押さえ込んで固定している」まさに役目そのモノですが、もう一方の締付ネジは「ネジ頭まで入るので直進キーを押さえ込んで締め付け固定するのではなく、ネジ頭が入っているから一切ズレない」ワケです。

確かにそれで「直進キーは全くズレなくなる」のでしょうが、問題なのは「厳密に言えば、鏡筒両サイドの直進キーガイドの溝に斜め状にこの突出部分が入ってしまう」ために非常に重いトルクに変わってしまいます(涙)

・・原理原則」からして至極当然な話であり実行せずとも理論だけで判る話(笑)

↑従って今回のオーバーホール/修理で当方がヤッタ作業は「元の製産時点のカタチに戻した」次第です(笑)・・ロクな事をしません!(涙)

何しろ鏡筒両サイドの「直進キーガイドの溝」にこの突出部分が真っ直ぐ入らなければスライド時に干渉してしまい「トルクが重くなる」ワケで、例え締付ネジが入る切り欠き部分のカタチを戻したとしても「肝心な突出部分が真っ直ぐでなければ意味が無い」ので、何回も何回もカタチを替えては組み上げてヘリコイドオスメスまでネジ込んで「ちゃんと距離環まで組み付けて回してみてトルク確認をした」次第です (今回のオーバーホール/修理の工程では都合3回組み直ししてカタチを適正な状態に戻した)(涙)

・・まぁ〜何回も組み直ししなければならず面倒くさいったらありゃしません!(怒)

第1金属材の材質が「黄鋼材」なので、極僅かな歪みが応力としてすぐに働いてしまい「伝達するチカラが変化してしまう」からこそ重いトルクに変わってしまったのです(泣)・・全く以てこのパーツの役目も目的も材質も何もかも無視した整備でどうしようもありません!(泣)

実は今回のモデルは「ヘリコイドのネジ山の向きが互いに逆方向」なので、基台側ヘリコイドのネジ山が繰り出すと「鏡筒は逆に収納方向に落ちてくる」次第です。逆に基台側ヘリコイドを収納方向に回すと「鏡筒が繰り出される」と言う真逆の動き方をするので、その駆動の中で「無限遠位置を探る」と同時に「鏡筒内部の絞りユニットからの絞り環連係キーの適切な伝達」が成されなければ、前述同様「再び重いトルクに堕ちる」話しに至ります(笑)

そのような点を分かっていて最後まで組み立てられていた整備者なのでシロウト整備はムリであり、どう考えても「整備会社での所為」と推測が成り立ちます(笑)

・・それでこう言うアホな所為を施している始末!(笑)

↑さらに鏡筒内最深部に組み込まれた絞りユニットの「開閉環」と連結して絞り環からのチカラを伝達する役目の「開閉キー」がご覧のように破断してしまいました(涙)

当初バラしている最中に見た時は「くの字型に曲がっていた」のですが、このシリンダーネジをドライバーで回して外している最中にパリンと折れてしまいました!(驚)

元々くの字型に曲がっていたのでそれを勘案しつつ回していたつもりでしたが破断してしまいました・・申し訳御座いません!(泣)

折れた時に「くの字に曲がっていた中心的な部分が飛んで紛失」してしまったので、ネジ山が少々短いままで撮影しています・・もう同じくらいの長さ分曲がっているネジ山が本当はあります。それはどのくらいネジ山が長いのか外さなければ分からないので、注意しつつ回していたつもりでしたが後の祭りです(泣)

・・当然ながら代替シリンダーネジを用意しちゃんと正常使用できるよう組み上げています。

おそらく過去の同じタイミングでのメンテナンス時に「光学系前群格納筒を外そうとして反時計方向に強く回した」際にくの字型に曲がってしまったのではないかとみています。鏡筒内最深部に組み込まれている絞りユニットの構成パーツ「開閉環」から飛び出て絞り環と連結する「開閉キー」は開放側、或いは最小絞り値側の限界点で突き当て停止するので、その箇所では反時計方向に回した時の加えたチカラが「全てシリンダーネジのネジ部の軸部分に一極集中してしまうから」と指摘でき、変形に至った背景と所為が見えてきます。

↑完璧なオーバーホールが終わりました。限りなく素晴らしい操作性に仕上がっており、今回のご依頼内容であった「距離環を回すトルクが異常に重い」状況について、まるでウソの如く素晴らしいトルク感に仕上がっていて、きっと写真撮影をお楽しみ頂けると思います。

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無です。特にこのような広角レンズ域の焦点距離の場合、近年多くのオールドレンズで「光学系内の特に集光している中玉のコーティング層経年劣化進行が顕著」なので、多くの市場流通個体でクモリを帯びています・・残念ながらこれらクモリの発生は蒸着コーティング層の変質が多い為、光学系の清掃だけで除去できるレベルではありませんから、手に入れるにも覚悟が必要です(涙)

今回扱った個体はスカッとクリアなので素晴らしいのですが、大変残念な事に上の写真のとおり光学系第4群が割れています。当初バラし始める前の実写段階で確認できていたので、パッと見で欠落しているのかと焦りましたが、実際は割れていただけでそのまま格納できています。

実はこの第4群だけではなくて、格納している光学硝子レンズのほぼ全てにコバ端の欠けが数多く残っています・・第1群前玉の凹メニスカス (コバ端欠け)、第2群凸メニスカス (コバ端欠け)、第4群凸メニスカス (割れ)、さらに後群側の第5群両凹レンズ (コバ端欠け) と言う状況で、一切欠けが生じていないのは第3群両凸レンズと第6群の凸平レンズだけでした(涙)

これらもおそらく同じタイミングの過去メンテナンス時に生じている欠けと推察できますが、光学硝子レンズを吸着して取り出す治具「レンズサッカー」を使っておらず、マイナスドライバーなどを使ってこじ開けて取り出していたのだと推測できます・・このような所為で取り出そうとすると経年劣化に伴う変質で光学硝子材が大変もろくなっているのでコバ端の欠けが起きます(怖)

おそらくこの割れてしまった第4群も当時の時点ではコバ端の欠けだったのかも知れませんが経年で割れてしまったようです(涙)・・そのまま格納されて残っていてくれたので、今回のオーバーホール工程でも清掃後に格納しています。普段の撮影時には写真への影響を視認する事は難しいですが、例えば円形ボケや玉ボケなどの内側にはこの欠けのカタチが写り込む場合があります (但しそもそも円形ボケ自体が大変小さいので割れているカタチの影を視認できるか否かは疑問なレベルです)。

↑後群側もLED光照射で極薄いクモリが皆無です。今回扱ったモデルRETRO-LUMAX 28mm/f3.5 (zebra)《後期型》(M39)』はそれぞれが単独の6群6枚レトロフォーカス型光学系構成ですが、その中で光学系第5群の両凹レンズのみ白紙に翳すと「僅かに褐色を帯びた光学硝子レンズに見える」為、おそらくは光学硝子レンズの成分に「ランタン材」を含有させ屈折率を最大で10%代まで向上させる狙いで設計しているように見えます。

実際今回のオーバーホール工程の中で各群の放射線量を調べると「光学系第1群と第3群、及び第4群と第6群が0.05μ㏜/h以下 (つまり測定値限界以下) の計測値」と言う結果になり、一般的なオールドレンズの光学硝子材と同一レベルです。その一方で「光学系第5群のみ僅かに褐色を帯び0.11μ㏜/hの計測値」だったのでランタン材含有の可能性は捨てきれません
・・ちなみに光学系第2群も放射線量は「0.08μ㏜/h」の計測値をとっています。

なお各群に蒸着されているコーティング層は第1群前玉と第6群後玉だけが光学硝子の両面で「薄いパープル色のシングルコーティング層蒸着」で、他の第2群〜第4群の光学硝子レンズが両面で「薄いブル〜色の光彩を放つシングルコーティング層蒸着」に対し「第5群の両凹レンズのみパープルアンバーブル〜の3色の光彩を放つモノコーティング層蒸着」にみえます。3色の光彩なので多層膜のマルチコーティングではないかとみる節もありますが、発売時期の1960年時点ではまだ開発が進んでいなかったと考えられ、アポクロマートレンズたるモノコーティング層蒸着の特徴の一つにもみえますが情報が無いので詳細は不明です。

例えば旧東ドイツのCARL ZEISS JENAでさえマルチコーティングたる「T*」の特許登録は、1972年時点なので旧西ドイツだとしても当時のENNA Münchenで1960年時点にマルチコーティングが実用化できていたとの情報は目にしていません。

ちなみに上の写真を見ればすぐ分かりますが(笑)、光学系第6群後玉が見えているとしても、フランジバックを延伸させる目的で単に延長筒を装着させているにすぎない簡素な設計なのが見てとれます(笑)

↑7枚の当時としては先進的なフッ素加工が施された絞り羽根もキレイになり確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に正七角形を維持」しながら閉じていき、主に円形絞りをちゃんと維持しています。上の写真をご覧頂ければ光学系第4群の割れ具合が分かり易いと思います。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。

詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。

↑塗布したヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」を使い、当方独特なヌメヌメッとしたシットリ感漂うトルクに仕上げてあり、距離環を回してピント合わせする際は「掴んでいる指の腹に極僅かなチカラを伝えるだけで前後微動が叶いビミョ〜なピント面の確認に違和感を一切感じない」と言う素晴らしい操作性を実現しています・・特にこのモデルのピントのピーク/山はまだかまだかと緩やかなのに、ピントが合焦する瞬間は瞬時でアッと言う間なので「この前後微動のビミョ〜な操作性の良さがとても有難く感じる」ハズです(笑)

・・オーバーホール/修理ご依頼者様お一人様だけがご実感頂けますがクセになります(笑)

そもそもこれらENNA München製のオールドレンズ群は「独特な懸垂式のヘリコイド駆動方式を好んで採っていた時期」がゼブラ柄モデルの特徴でもあるので、奥が深い基台に対して「まるでブラ下がっているが如くの鏡筒/ヘリコイドオス側のトルク調整は相当難度が高い」とも指摘できます・・何故なら鏡筒たるヘリコイドオス側はヘリコイドのネジ山だけで懸垂しているので (他には直進キーしか介在していない) ヘリコイドグリースだけに頼った整備ではその時点は良くてもすぐにトルクが変質してしまい、およそ数年でこのように重いトルクに堕ちるからです(涙)

実際にどんな感じでブラ下がるのか見たい方はLUMAX 50mm/f2.4 zebra (M42)』のオーバーホール工程解説をご覧頂ければ「ブラ下がっている状況が掴める」と思います。この当時のENNA München製ゼブラ柄モデルの多くでこのような深さがある基台の設計が多いです。

しかも今回の個体のように「肝心な直進キーを変形させてしまった」からこそ、むしろ鏡筒両サイドに備わる「直進キーガイド (溝)」で抵抗/負荷/摩擦が発生する因果関係に墜ちてしまったのが、最終的に距離環を回すトルクを異常に重くしてしまった理由です(涙)

このブログで何度も指摘していますが、このように「製産時点で執られていなかった変形を整備者が敢えて加える行為/所為」或いは非常に多い「製産時点に執られていなかった固着剤による処置」などは全てが「整備者の自己満足大会」であり、必要ない余計な行為/所為ばかりであると明確に指摘できます (製産時点に執られていない行為/所為だから)(笑)

↑本当に哀しい事に光学系各群のコバ端欠けや第4群の割れが残る個体ですが、如何せん不幸中の幸いは「普段の撮影写真には全く影響を来さない」点に於いて、この「個体の味」として認めてあげて下さいませ・・今回のオーバーホール/修理で、まだまだ数十年先までその勤めを全うできる状態に戻っています (頑張れRETRO-LUMAX!)(涙)

・・何しろ尊敬するコーフィールド卿が遺した逸品ですからまだまだ活躍を期待します!(涙)

なお前述の絞り羽根の処で記載するのを失念していましたが、当初バラす前時点で「完全開放せずに僅かに絞り羽根が顔出ししている」状況だったのは「開閉キーのくの字型に曲がってしまった因果関係から」だった要素も代替開閉キーを組み込んだので改善できています (完全開放し最小絞り値の閉じ具合も適正です/簡易検査具で検査済)。

特殊な径と長さのシリンダーネジだったので代替するにも既製品は無く、仕方ないので全く別モノのネジ種から今回削って削って削りまくって、適切な代替開閉キーに仕立てました(笑)

特に当方はこのゼブラ柄モデルの「まさに英国ブリティッシュを直接感じ取れるブライトシルバーの配置意匠に今さらながらに感銘を受ける」次第で(笑)、本当にコーフィールド卿の凄さまで手に取れるのが嬉しい限りです(涙)

・・英国人たる品格の良さすら感じ取れそうな大好きなゼブラ柄モデルです!(涙)

このように飽くなき少年時代の情熱にひたすらに真正面から挑み続け、且つ合わせて当時核心的にも欧州大陸を横断してから荒波のドーバー海峡を越えて海底ケーブル敷設に邁進したその先見の明は、まさに『ナイトの称号』に値する英国の素晴らしい人材の一人だったのだと感慨深い想いでいっぱいです(涙)

当時のコーフィールド卿を知る人の記事に拠れば、何が起ころうとも常に冷静沈着で、穏やかな表情を絶やさず周囲の人々を温かく包み込む包容力の高さは尋常ではなかったとの事で、きっと誰からも尊敬され親しまれる存在だったのでしょう・・91歳まで長寿を全うされたコーフィールド卿に栄光あれ(涙)

オーバーホール/修理ご依頼者様皆様に告知しているとおり、もしもお届けしたオールドレンズの仕上がり状況にご満足頂けない場合は、そのご納得頂けない要素に対して「ご納得頂ける分の金額をご請求金額より減額」下さいませ。
減額頂ける最大値/MAX額は「ご請求金額まで (つまり無償扱い)」とし、大変申し訳御座いませんが当方による弁償などは対応できません・・申し訳御座いません。

オーバーホール/修理ご依頼者様向けにご依頼者様と当方の立場が「50 vs 50」になるよう配慮しての事ですが、とても多くの方々が良心的に受け取って頂ける中、今までの12年間で数人ですが日本語が口語として普通に語れない、おそらく某国人に限ってここぞとばかりに「無償扱い」される方もいらっしゃいます (漢字三文字、或いは漢字とカタカナ表記を合わせて含むお名前様だけで確定判断はできませんが)(笑)

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離30cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f4」で撮影しています。ピントは本当に被写体ミニカーの手前側ヘッドライトの「まさに電球そのモノ」にしか合っていませんが、大変鋭いピント面です。

↑さらに回してf値「f5.6」で撮影しています。

↑f値は「f8」に上がっています。

↑f値「f11」での撮影です。このように「艶が顕れる描写性」が「ENNA製ゼブラ柄のLUMAXシリーズ特徴」とも指摘できそうです!(涙) 考えるにこのような表現性はオリジナルなENNA München製「LITHAGONシリーズ」の写りには特徴的に感じる程まで見出せないので、まさにCORFIELD製モデルの特徴でしょうか???

↑f値「f16」です。

↑最小絞り値「f22」での撮影です。もうほとんど絞り羽根が閉じきっている状況なので「回折現象」の影響がみてとれます。今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。引き続き2本目の作業に入ります。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。