解体新書:Carl Zeiss Jena (カールツァイス・イエナ) Flektogon 35mm/f2.8 zebra《中期型-II》(M42)写真

(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
写真を閉じる際は、写真の外 (グレー部分) をクリックすれば閉じます

『解体新書』はヤフオク! などで「オーバーホール済/整備済」などを謳って
出品しているオールドレンズをゲットし、当方で再び解体して内部の状況を
調査していく企画です。
(当方の技術スキル向上のために参考にさせて頂くことを目的としています)


オーバーホール/修理ご依頼分ですが、当方の記録用として掲載しており
ヤフオク! 出品商品ではありません (当方の判断で無料掲載しています)。
(オーバーホール/修理ご依頼分の当ブログ掲載は有料です)


つい先日も、今回扱う旧東ドイツはCarl Zeiss Jena製準広角レンズ『Flektogon 35mm/f2.8 zebra《中期型-II》(M42)』を当方にてオーバーホール済でヤフオク! 出品しました。
(ご落札頂き大変ありがとう御座いました!)

今回のこの掲載はオーバーホール/修理のご依頼として承りましたが、同じくヤフオク! で自ら整備して出品している「プロの写真家」からつい最近落札された個体になります。ところが、実はちょうど一年前に同じくこの『解体新書』コーナーで同じ出品者からの落札個体をやはりオーバーホール/修理しています (こちらのページで『解体新書』として掲載しています)。

そこで調べてみると、その「プロの写真家」出品による当モデルの累計扱い本数は「82本」に到達しており、しかもそのほとんどが「3万円台」という高価格帯で落札されています。

一方当方の累計扱い本数は今回が67本目ですが、ゼブラ柄だけで計算すると「僅か43本目」になり、さらにばつが悪い事に当方出品の落札価格帯は「16,500円24,500円」なので遙か下の低価格帯で彷徨っている始末です(笑)

何とも情けない限りですが、これが「現実」であり真摯に受け止めなければイケマセン。
(皆さんからの当方に対する評価の結果なので仕方がない)

  ●               ● 

今回は『解体新書』コーナーなので、このモデルの背景や光学系の詳細などについて興味が
ある方は、お手数ですが先日の掲載ページをご覧下さいませ。

【オーバーホール/修理のご依頼内容】
まずはその「プロの写真家」からご落札頂いた「ご落札者様」が今回のオーバーホール/修理
の「ご依頼者様」にあたります。そのご依頼内容は以下になります。

距離環を最短撮影距離位置まで回しても絞り環が「f2.8」まで戻らない。
絞り環にガタつきがある

【当初バラす前の確認事項】
以下は当方がバラす前に今回扱う個体 (オールドレンズ) をチェックして確認した内容です。

距離環を回した時「∞〜0.5m」間でガタつき (距離環が左右に細かくブレる) が発生。
最短撮影距離位置「0.18m」付近が重いトルクになる。
開放時に絞り羽根が3枚極僅かに顔出ししている。
光学系後群側に極微細な点キズが多い (パッと見で塵/埃に見える)。
ピント合わせの時スリップ現象 (ククッと微動してしまう) が発生している。
距離環の一部に「油染み」が滲み出ている。

落札されてから (整備されてから) まだ2カ月も経っていない状況なので、上のについてそれがもしも仮に「不具合」と認識するなら、それは「整備時点の設定/微調整が不適切だったから」と言えるのではないでしょうか。何故なら、当方では10年そのまま現状維持で使えるつもりで普段からオーバーホールに努めていますが、最低でも整備してから5年は現状維持し続けるべきと考えます。

従って当方では、整備後僅か1年〜数年で揮発油成分がオールドレンズ内部に廻ってしまい、絞り羽根の油染みやトルクの違和感を感じるような「白色系グリース」を使うのは問題だと
認識しているワケです。

今現在もまたこのモデルが3万円台の高価格帯で「プロの写真家」から出品されていますが、絞り羽根の駆動について「問題なくスムーズ」さらに距離環の駆動についても「問題なくスムーズ」のひと言しか記載が無く、しかしむしろ外観などについては逆に状態が良ければ価格をさらに吊り上げている始末です (革ケースがあるとさらにプラスしている)(笑)

これッて違うのではありませんか?(笑)
重要なのは外観ではなく、操作性や光学系の状態ではないでしょうか

整備した以上スムーズに動くのは当たり前なのであり、ピント合わせの際に微動してしまい使い辛かったり、距離環を回すトルクが重く感じたり、絞り羽根が完全開放していない点などはちゃんと記載して出品するのが良心的ではないかと考えますね。

逆に言えば、上記問題点のまでが発生している個体ならば、もしも当方が出品する場合はむしろ価格を下げる理由になっているワケで、とても「問題なくスムーズ」のひと言で済ませる気持ちにはなりません。

つまりは正直者がバカを見ているワケで(笑)、何とも笑えてしまう結末です・・。
しかしこれが「現実」なのであり「プロの写真家」と言う高い信用/信頼が、要は皆さんに
とってはすべてなのでしょう。

そう断言できる理由は、まさに「プロの写真家」に対する評価が物語っているワケです。

上記問題点ののような個体でも諸手を挙げて喜んで落札者は評価を付けているワケで、だするとオールドレンズ沼初心者の方々に対しても配慮して出品している当方の評価は、むしろそれが仇となって (正直に問題点を記載しすぎて) 自ら墓穴を掘っているのが「現実」だと
言えるのではないでしょうか?

詰まるところ、そんなオチなのではないかと、最近思いますね・・(笑)
ウソやごまかしで出品できない自分が悪いのだと、そんな声が何処かから聞こえてきます(笑)

  ●               ● 

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。整備されてからまだ2カ月も経っていないので内部の各構成パーツはもちろんキレイなのですが、基本的に
当方以外で「磨き研磨」して構成パーツの経年劣化に伴う酸化/腐食/錆びなどを除去している過去メンテナンスをまだ見た事がありません。

従って今回も当方にて「磨き研磨」を施し、各構成パーツの経年劣化 (酸化/腐食/錆び) を可能な限り除去し「限りなく製産時点に近い状態」に戻しています。
(詳細は「DOH」で解説しています)

このオーバーホール工程の中で、冒頭で列記した問題点について個別に解説していきます。

左写真は当初バラす前のチェック時点で撮影しました。距離環の隙間部分から「油染み」が滲み出てきており (赤色矢印)、一部は手が触れる箇所にまで染み出ています。

この「プロの写真家」が行う整備は相当な量のヘリコイドグリースを塗ったくっているようなので、他のオールドレンズでも同じ現象が発生しています (他のモデルなどは『解体新書』コーナーで掲載中)。

実際に今回扱う個体をバラし始めた途中で撮影したヘリコイド (オスメス) と基台です。

やはり多めの「乳白色の白色系グリース」が塗られていたワケですが、まだ整備後2カ月しか経っていないにも拘わらず既に一部は
薄いグレー状」に変質しています。

その塗られている「乳白色の白色系グリース」を綿棒で拭った部分をさらに拡大撮影しました。

一部は乳白色のまま残っているので「薄いグレー状」に変わった事が明白です。この「グレー」の部分はヘリコイドのアルミ合金材が摩耗した摩耗粉であり、実際に新しい無色透明な溶剤にこの綿棒を浸けると、容器の底に金属質の摩耗粉がサラサラと沈殿します。

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。このモデルではヘリコイド (オス側) は独立しており別に存在します。

ヘリコイド (オス側) の状況を都度確認している理由は、たいていの場合ヘリコイド (オス側) の内側にこの鏡筒が組み込まれて、距離環を回すことで繰り出したり/収納したりしているのはヘリコイド (オス側)=鏡筒だからです (オールドレンズの一般的な設計の場合)。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

↑5枚の絞り羽根を組み付けて絞りユニットを鏡筒最深部にセットします。

↑完成した鏡筒を立てて撮影しました。上の写真で下が前玉側方向で上が後玉側にあたります。

↑この工程が冒頭「問題点f2.8に戻らない」点の解説になります。

鏡筒の周囲に「制御環」と言う環 (リング/輪っか) がネジ込まれ、その途中に「絞り環連係
ガイド
」と言う「斜め状の溝」が用意されています (赤色矢印)。

その「斜め状の溝 (絞り環連係ガイド)」に刺さって上下を行ったり
来たりしているのが絞り環 (左写真) の内側に飛び出ている「連係
アーム
」の先端部分です (赤色矢印)。

真鍮 (黄鋼) 製の板状パーツなので、強いチカラを加えると簡単に変形してしまい、下手すると締付ネジ部分が割れて破断します。

制御環
絞り環から飛び出てくる「連係アーム」が刺さって設定絞り値が伝達される/決められる環
(リング/輪っか)

絞り環連係ガイド
連係アーム」が刺さったまま行ったり来たりスライドする「」部分

連係アーム
絞り環の設定絞り値を「制御環」に伝達する役目の板状パーツ

すると、前述のとおりこの鏡筒自体はヘリコイド (オス側) の内側に組み込まれ、距離環を回すことで繰り出されたり/収納したりしてピント合わせができる仕組みです。

時々思い違いしている方が居ますが(笑)、距離環を回して繰り出したり収納したりしているのは「鏡筒」であり、ヘリコイド (オス側) も同じように繰り出し/収納をしますがそれ自体は重要ではなく、あくまでも距離環を回す「回転するチカラ」が「直進するチカラ」に変換され伝達されている結果に過ぎません (何故なら繰り出し/収納をしないヘリコイド/空転ヘリコイドなども存在するから)。

つまりピント合わせしているのは鏡筒のほうで、ヘリコイド (オスメス) の目的は「チカラを伝達しながらその方向を変換させる役目」だけです。

冒頭「問題点f2.8に戻らない」と言う現象は、まさにこの「絞り環連係ガイド」が「斜め状に溝が用意されているから」に他なりません。距離環が無限遠位置「∞」の時、鏡筒は最も収納された位置に格納されていますから絞り環からの「連係アーム」は上の写真「無限遠位置側
f2.8」の場所に居ます。

距離環を回して最短撮影距離方向に繰り出していくと、同時に鏡筒が繰り出されるワケですから「連係アーム」の位置は徐々に「連係ガイドの溝」を上方向に上がっていって最後は「最短撮影距離位置側f4近く」に上がりつめます。

左写真は過去にオーバーホールした「Flektogon 20mm/f4 zebra」の鏡筒写真ですが、ご覧のように「絞り環連係ガイド (溝)」は垂直状です (赤色矢印)。

一般的に多くのオールドレンズでこの「絞り環連係ガイド (溝)」は垂直状態で設計されています (斜め状の設計が非常に珍しい)。

従って、残念ながら冒頭「問題点f2.8に戻らない」と言う現象は「正常」であって不具合ではありません。このモデルに限定される特殊な設計から来ている現象であり、この点を指して当方はこのモデルを「見なし開放f値のモデル」と認識しています。

当方がこのモデルをオーバーホール済でヤフオク! 出品する際は、その都度必ずブログなどを使ってこの点を解説しつつ出品しているので、ご落札頂く方々には十分に周知できていると考えていますが、今回の個体を出品している「プロの写真家」の出品ページを見ると、一切案内されていませんね(笑)

これではオールドレンズ沼初心者の方々にはとても不案内な話でありかわいそうです(涙)

ちなみに「見なし開放f値」と考察している理由は、無限遠位置の時だけ開放f値「f2.8」を維持しているのであって、距離環を少しでも回し始めると途端に開放f値が「f2.8f4近く」へとズレ始めるからです。一般的なオールドレンズは前述のとおり開放f値は無限遠位置だろうが最短撮影距離位置だろうが一切変化しません。

従って、このモデルは実質的に「f4近く (実測でf3.3〜f3.6辺り)」の開放f値のモデルと認識すべきであり、その意味では先ほどのモデル「Flektogon 20mm/f4 zebra」と同じ「f4ゼブラ柄モデル」の仲間だと当方では認識しています

その意味で「プロの写真家」の出品ページを見ると、最短撮影距離:18cmまで近寄れる点をメリットとして挙げて勧めていますが、開放f値が「f2.8」ではない点を説明しなければ、最終的な最短撮影距離で撮影している時の「ボケ味」は「f4近くのボケ味」なのであり、それをf2.8のボケ味と受け取られかねない表現には危険が伴うような気もしますがね(笑)

↑上の写真は距離環ですが、裏側は上から下まで「ヘリコイド (メス側)」のネジ山が切られています。この当時のCarl Zeiss Jena製オールドレンズのほぼ全てのモデルがこのような設計概念で作られています。

ここで問題なのは「距離環が変形したらヘリコイド (メス側) のネジ山は真円を維持していない」点です。つまり過去に落下やぶつけたりなどしている場合、アルミ合金材の距離環にはその打痕や凹みなどが残っています。すると極僅かな変形だけで「トルクムラ」に陥り、且つそれを改善する手立てが無い事が問題になります

製産後数十年を経たオールドレンズだから、多少のキズや打痕/凹みは気にしないと言う人が多いですが、はたしてそれが原因で距離環を回す時のトルクムラが、例え整備に出しても一切解消できないとすれば如何でしょうか?

たいていの場合「ヘリコイドグリースの入れ替えで改善できる」との期待を寄せてオーバーホール/修理をご依頼されますが、実際には完全に改善できないままオーバーホール/修理が終わっている事のほうが多いのが現実です (変形してしまったアルミ合金材を人力では真円状態に戻す事ができないから)。

↑こちらは鏡筒カバーですがヘリコイド (オス側) になります。内側に「直進キーガイド」と言う溝が用意されていて (赤色矢印)、そこに「直進キー」と言う板状パーツが刺さって行ったり来たりスライドするので繰り出したり/収納したりできる仕組みです (グリーンの矢印)。

↑まずは先に距離環やマウント部を組み付ける基台を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

↑次にヘリコイド (オス側) である鏡筒カバーを、やはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルは全部で27箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

↑ここで完成したヘリコイド (オスメス) と基台を使って最短撮影距離位置までヘリコイド (オス側) を繰り出した時の状態を再現し、その内側を撮影しました。

すると「直進キーガイド」の溝に対して刺さっている「直進キー」は、その「先端部分の先っぽだけで辛うじて引っ掛かっている状態」である点がポイントになります (グリーンの矢印)。

従ってこの状態の時にフィルターを外そうとしたり、或いはヘリコイドグリースを入れ替える目的で解体しようとチカラを加えたりしたら「簡単に直進キーが変形してしまう」事がお分かりでしょうか?

もっと端的な表現をすれば「トルクムラが酷いからと繰り出したり/収納したりムリな操作を繰り返す」と、それだけで「直進キー変形」に至る事がお分かり頂けないでしょうか?

トルクムラを改善してほしい」とオーバーホール/修理を承りますが、そもそも「直進キーの変形」が発生していた場合、外観からは確認できず然しトルクムラも解消できずと言う結末に至ってしまいます。

これがどんなに恐ろしい事なのか、是非とも皆さんにはご理解頂きたいと思います。「トルクムラ」解消の為にムリな操作を繰り返す事は「限りなく製品寿命を縮めている行為」である点をご承知置き下さいませ。

ちなみに、上の写真の状態 (最短撮影距離の位置) でムリなチカラが加わった場合、たいていは「直進キーを締め付け固定しているネジ穴が破断する」事に至りますから、それを元に戻せない理由もご理解頂けると思います (一度割れてしまった金属は元に戻せないから)。

↑ちなみに距離環が無限遠位置「∞」の時の内側の状態が上の写真です。ご覧のように「直進キー」の全長が全て「直進キーガイド」の溝の中にスッポリ収まります (グリーンの矢印)。

つまり距離環が無限遠位置に近い位置の時に (距離環のトルクが重いからと) ムリなチカラで回そうとしても大事には至りにくいですが、逆に最短撮影距離に近い位置まで繰り出している状態の時に「同じチカラで回そうとしたらアウト」だと言っているのです。無限遠位置で問題ないからとそのまま同じチカラで操作したらヤバいワケですョ。

どうでしょうか? ご理解頂けたでしょうか・・。

オーバーホールの工程に興味関心が無いとしても、このように内部構造を知る事で「やってはイケナイ操作」やその概念などを知る事ができるワケで、当方がこのブログでオーバーホール工程の解説をしている理由も、実はそういう部分のほうが重要だったりします。SNSで批判されているとおり確かに技術スキルが低いのは認めますが、その整備作業の言いワケをする為だけにブログ掲載しているのではありません

↑ひっくり返して基台の裏側 (後玉側方向) を撮影していますが、実は今回の個体はその製造番号からこのモデルゼブラ柄としては「初期の頃の製産品」であり、ご覧のように「直進キーが両サイドに無い (片側に1本しか存在しない)」設計です。反対側には一応その場所が用意されているのですが、ネジ穴も無ければヘリコイド (オス側) に「直進キーガイドの溝」も用意されていません (グリーンの矢印)。

実は、この問題はこのオールドレンズを使う所有者が留意すべき話ではなく「整備者が配慮すべき話」なので、敢えてここで解説しています。

距離環を回すトルクの微調整は「片側の1本の直進キーだけで完結させる」必要が生ずる点を、整備者自身が認識していたのか否かが問題になってきます。

↑上の写真はその片側に1本しか無い「直進キー」の固定箇所を拡大撮影していますが、ご覧のように2本線でマーキングされています。このマーキング (刻み込み) は当方が刻み込んだのではなく「プロの写真家」が整備の際にマーキングしています (グリーンの矢印)。

その目的は何か? 当初バラす前の位置で「直進キー」を固定する目安としているのです。

するとどうしてそれが問題になるのか???

プロの写真家」は単にバラして清掃した後に、元の位置で構成パーツを固定して組み戻しているだけにすぎない事が、これで明白になってしまいました(笑)

過去にどんなメンテナンスが施されたのかは、バラしてみれば全てが白日の下に曝されます。

本来両サイドに1本ずつ (合計2本) の「直進キー」が存在すべきなのが片側に1本しか無いので、自ずと距離環を回す時のトルクが神経質になります。つまりトルクの微調整が必須なのですが、この「プロの写真家」はそんな事はお構いなしにただ組み戻してヤフオク! に出品しています (その証拠がマーキングだと言えるワケです)(笑)

従って冒頭「問題点③④」の現象が発生していたのも納得できるワケですね(笑)

今回のオーバーホールではもちろんトルクの微調整を施しているので改善できています。

↑完成している鏡筒をセットして「開閉アーム機構部」を組み込みます。「開閉アーム」が実際に鏡筒内部に向かって刺さり、且つ「開閉アームが左右に動くことで具体的に絞り羽根を開いたり閉じたりしている」設計概念です (非常にシンプルな概念)。

しかしこの概念が非常に神経質な微調整を求められる最も厄介な話になります。

マウント面から飛び出ている「絞り連動ピン」或いはプレビューレバーなどを操作すると「操作アーム」が操作されて (ブルーの矢印①)、反対側の絞りユニット内部に刺さっている「開閉アーム」も動く為 () 結果絞り羽根が開閉する仕組みです。
スプリングのチカラでご覧のとおり「常に絞り羽根を閉じるチカラ」が働いていますから、開閉状態にするには「操作アーム」が押されないとダメですね(笑)

↑上の写真は絞り環を撮っていますが、カチカチとクリック感を実現しているのはベアリングではなく「棒状ピン (金属製)」だったりします。

クリック感を実現するチカラは「棒状ピン板バネ」によるので、クリック感の強弱は板バネの反発力を微調整しない限り変わりません。

ところがご覧のとおり極僅かなスペースに入っている板バネなので、反発力をイジろうとチカラを加えると途端に折れてしまいます (つまりクリック感の微調整は不可能です)。

↑絞り環をセットしたところです。

↑こちらはマウント部内部の写真ですが、既に当方による「磨き研磨」を終わらせた状態で撮影しています。

↑取り外していた「絞り連動ピン機構部」も個別に「磨き研磨」を施してからセットします。

絞り連動ピン」が押し込まれると (ブルーの矢印①) その押し込まれた量の分だけチカラが伝達されて「カムが押し上げられる」事がポイントです ()

つまり「絞り連動ピンが押される/押し込まれる」動作の認識がちゃんとできているのかが、オールドレンズ使い (ユーザー) サイドにも求められると言う話をしています

もしも仮に「絞り羽根の開閉異常 (ちゃんと閉じなかったり動きが緩慢だったり)」が発生していた場合、その因果関係の一つにはこの「チカラの伝達」の問題が関わっている懸念がある点を、皆さんは誰も認識しようとしません(笑)
(何故なら絞り連動ピンの押し込み量が足りなければ伝達されるチカラもその分少ない)

もっと言えば、それはマウントアダプタの「ピン押し底面の深さの問題」なのかも知れませんし (つまりマウントアダプタとの相性問題)、内部のスプリングの経年劣化なのかも知れません。もちろん単に絞り羽根に油じみが生じているのが原因かも知れませんが、必ずしもそれだけとは限らないことを是非ともご認識頂きたいと思います。

絞り羽根開閉異常」の改善には相当なスキルが必要であることをご理解下さいませ。

するとここで当方がオーバーホール工程としてチェックしたかったのは、実は冒頭「問題点絞り羽根の顔出し」の因果関係です。「絞り羽根の開閉異常」の原因を突きとめる時、その因果関係を一つずつチェックして適正な状態に改善しない限り最終的な「正しい/適切な絞り羽根の開閉動作」には至りません。

今回の個体で言えば、まず「絞り連動ピンに経年劣化の酸化/腐食/錆びが生じていた」点が一つ因果関係としてあります。

↑完成したマウント部をセットします。冒頭「問題点絞り環のガタつき」がここの工程になりますが、このモデルは前述のとおり「棒状ピン板バネ」で絞り環のクリック感を実現している為、残念ながら「板バネの状態に左右される」のが現実ですし、そもそもその分のマチ幅を用意した設計なので極僅かなガタつきが残ってしまいます。

つまりこの個体の絞り環のガタつきは許容範囲内と判定します。申し訳御座いません・・。

↑プレビューレバー (環/リング/輪っか) をセットします。

↑するとマウント面から飛び出る「絞り連動ピン」が押し込まれた時 (ブルーの矢印①) は、全く同じ動きになるよう「プレビューレバーが押し込まれた時 ()」設計されています。また同じように「操作アームとカム」の動きも互いに同じ動作としてチカラを伝達するよう設計されています (ブルーの矢印②)。

従って「絞り連動ピン」が押し込まれようが「プレビューレバー」が操作されようが、どちらでも同じように絞り羽根が開閉する仕組みですね。

当方がオーバーホール工程の中で各部位の微調整を行っている話は、実はこれら「チカラの伝達経路」の微調整そのものであり、その結果が「距離環を回すトルク感」だったり「適切な絞り羽根の閉じ方」だったりしています。

距離環はスムーズに動きます」とか「絞り羽根もちゃんと閉じます」ではなくて(笑)、そのトルク感が「ムラ無く軽い操作性なのかどうか」或いは「正しい開口部の大きさ/カタチ/入射光量で絞り羽根が開閉しているのか」が重要なのであり、スムーズに動くのは当たり前であり絞り羽根が閉じるのもテキト〜整備ではイケナイことを言っています。

↑マウントカバーをセットして、この後は光学系前後群を組み付けてから無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にレンズ銘板をセットすれば完成です。

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ここからはオーバーホールが完了したオールドレンズの写真になります。

↑冒頭「問題点」について全ての解説が終わりました。ご依頼者様のご要望によると、当初バラす前の距離環を回すトルク感よりも「軽めのトルク」をご希望でした。

この「プロの写真家」が使っている「乳白色の白色系グリース」は確かに重めの (硬めのシッカリした) トルク感に仕上がります。そう断言できるのは、実は当方にも同じグリースが用意してあるからです(笑)

市場流通している「レンズ用白色系グリース」とこの「乳白色の白色系グリース」さらに潤滑油「呉工業製CRC5-56」などは、ご依頼者様からご要望があった場合に備え一通り手元に揃えています (あまりそのようなご要望はありませんが)。

だからこそトルク感の比較ができるので敢えて当方ではこれらオールドレンズが製産されていた時代に使われていたであろう「黄褐色系グリース」をメインとして使っています (何故なら黄褐色系グリースの使用を前提とした設計だったハズだから/当時はまだ白色系グリースが開発されていなかったハズだから)。

これは単なるヘリコイドグリースの種別の話ではなく、使っている金属のアルミ合金材や真鍮 (黄鋼) 材などとの関わりの話であって、今ドキの最新の「白色系グリース」が優れている云々の不毛な議論をするつもりは毛頭ありません(笑)

例えば「白色系グリース」が塗られていたオールドレンズにその後から「潤滑油」を注入してしまった場合、早ければ1年遅くても数年で潤滑油の油成分が揮発してしまい、且つ化学反応により「白色系グリース」側成分の一部が「粘性を帯びてくる」現象があったりします。

具体的には「潤滑油」を注入した当初は軽い操作性だったのが、その後固くて回せないほど重いトルクに変わっていたりします。するとまた「潤滑油」を注入してしまいます。それを繰り返しているとおそらく3回目の「潤滑油」注入の機会は巡ってきません(笑)

その前にヘリコイドのネジ山が固着してカジリ付いてしまい、二度とヘリコイドは解体できない状態に陥ります。つまりとうとう「製品寿命」に至ってしまったと言う結末です(笑)

ところが「黄褐色系グリース」にその後「潤滑油」が注入されたとしても数年後に重いトルクに至る可能性はだいぶ低くなります。距離環を回すトルク感に違和感を覚えるようにはなるのでしょうが、少なくともヘリコイドのネジ山に「粘性が帯びてくる」現象は発生しません (既に確認済)。もちろんそれは「白色系グリースと潤滑油の成分の関係性」によっても違いがあると思いますが、少なくとも「黄褐色系グリースと潤滑油」の場合は数年でカジリ付く事には至りません。

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。

今回の個体が出品されていた2カ月前の「プロの写真家」出品ページの掲載写真では、特に光学系内の状態がキレイに見えるよう写っていましたが(笑)、実際は特に後玉表面に極微細な点キズが多めに残っており、パッと見で「微細な塵/埃」に見えます。今回3回清掃しましたがいずれも除去できませんでした。

長めの4mm長の微細な拭きキズが1本ありますが、他にカビ除去痕も数箇所残っています (出品時の掲載写真には写っていない)。いずれも清掃で除去できないので申し訳御座いません。

↑開放時に3枚の絞り羽根が極微かに顔出ししている現象は「絞り羽根の開閉幅 (開口部の大きさ/カタチ/入射光量) 微調整」で改善済ですので、完璧に開ききってくれます。また閉じる際も「完璧な正五角形を維持」したまま閉じていきます。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。クロームメッキのゼブラ柄部分も当方にて「光沢研磨」を施したので、当時のような艶めかしい眩い光彩を放っています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑塗布したヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」を使い「粘性中程度軽め」を使い分けています。ご依頼者様のご指示に従い当初バラす前のトルク感よりも僅かですが軽めに仕上がるよう調整しています。但し「黄褐色系グリース」なのでその性質上ヘリコイドのネジ山が擦れる感触が指に伝わります。

当初発生していた極微細なガタつきも解消し、もちろんスリップ現象も無くなり軽い操作性でピント合わせできるようになりました。しかしそうは言っても、解説のとおりヘリコイドのネジ山が相当な長さなので決して軽いトルク感に仕上がったワケではありません (あくまでも当初より軽く仕上がった程度の話)。申し訳御座いません・・。

↑絞り環のガタつきは当初バラす前の状態と何ら変化ありません (相変わらずガタつきが残っています)。これは設計上のマチ幅なので改善できません。

筐体外装の刻印は特にオレンジ色部分に油性マジック書きされていたので(笑)、洗浄して元のオリジナルなオレンジ色に戻しています。白色刻印部分も一応着色しました。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑ここからは、まだこのモデルの事をご存知ない方の為に冒頭「問題点f2.8に戻らない」現象の解説をしていきます。

距離環が無限遠位置「∞」の時 (グリーンの矢印)、絞り環の設定絞り値が開放状態「f2.8」だとすると (赤色矢印) そのまま距離環を回すとどうなるか?

↑仮に最短撮影距離位置「0.18m」まで距離環を回して繰り出した時 (グリーンの矢印)、絞り環は一切触っていないのに勝手に動き始めて「f2.8からf4近くまで移動していく」のを撮影しました (赤色矢印)。

それゆえこのモデルは「見なし開放f値のモデル」と当方では認識しています。

↑さらにその最短撮影距離位置から再び無限遠位置「∞」まで距離環を回して戻したのが上の写真です (グリーンの矢印)。ご覧のように「f2.8→f4近く」までズレてしまった絞り環は、当初ズレる際は勝手に (触っていないのに) ズレていたにも拘わらず、元に戻ってくれません (赤色矢印)。都度自分で絞り環操作して戻すしかありません。

これは前述のとおり鏡筒周りの「制御環」や絞り環などにスプリングが備わっていて勝手に戻す設計ではないから (手動操作だから) 戻らないワケです (つまり正常/不具合ではない)。

この点については、当方がオーバーホール済でヤフオク! 出品する際はこのブログなどで逐一解説しつつ出品しているので、ちょっとご依頼を承った際に正しく認識できておらず「プロの写真家」が説明せずにヤフオク! 出品している事まで完全に把握し切れていませんでした。
申し訳御座いません・・。

もしもご請求額にご納得頂けない場合は「減額申請」にてご納得頂ける必要額分を減額してお支払い下さいませ。減額の最大値 (MAX) は申し訳御座いませんが「無償扱い」までとし、弁償などはご勘弁下さいませ。

なお、しつこいですが、最短撮影距離位置:18cm辺りまで距離環を回して繰り出している時に「絞り環を回してf2.8に戻そうとする」と内部パーツが壊れますので、くれぐれもご留意下さいませ。その操作をしてチカラを指に加える瞬間に「斜め状の連係ガイド」の写真を頭の
片隅にでもフッと思いだして頂けると、きッと壊す前に防げると思います(笑)

↑当レンズによる最短撮影距離18cm付近での開放実写です。実際は、開放f値「f2.8」からのボケ味の変化を写す為に30cmほど離れた位置で撮影しています。

ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

この実写はミニスタジオで撮影していますが上方と右側方向からライティングしています。その関係でフードを装着していない為に絞り値の設定によりハレ切りが不完全なまま撮影しています。一応手を翳していますがハレの影響から一部にコントラスト低下が出てしまうことがあります (簡易検査具による光学系検査を実施済で偏心まで含め光軸確認は適正/正常)。

↑絞り環を回して設定絞り値「f4」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f5.6」で撮りました。

↑f値は「f8」に変わっています。

↑f値「f11」です。

↑f値「f16」になりました。極僅かに「回折現象」の影響が現れ始めています。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

↑最小絞り値「f22」での撮影です。大変長い期間に渡りお待たせし続けてしまい本当に申し訳御座いませんでした。今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。