◎ LZOS (リトカリノ光学硝子工場) JUPITER−9 85mm/f2 black《前期型》(L39)

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今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、旧ソ連時代の
LZOS (リトカリノ光学硝子工場) 製中望遠レンズ
JUPITER−9 85mm/f2 black《前期型》(L39)』です。


当方は「ロシアンレンズ」と表現していますが、正しくは旧ソ連 (旧ソビエト連邦) 時代に生産されたオールドレンズになります。社会主義体制国家には「私企業」の概念が存在しない為、主だった企業は国家に一元管理されていました。しかしどの工場で生産されたモデルなのかが不明瞭なので、ロシアンレンズはレンズ銘板に生産工場を示すロゴマークを刻印しています。

旧ソ連では戦前ドイツで1932年に発売されたZeiss Ikonのレンジファインダーカメラ「CONTAX I」や、その交換レンズ群に注目しており今回扱うモデル『JUPITER-9 85mm/f2 black《前期型》(L39)』はそのCarl Zeiss Jena製ポートレートレンズ「Sonnar 8.5cm/f2 T」の光学系を模倣したモデルとして、戦後旧ソ連で独自の別の系統として新たに発展していったオールドレンズの一つです。

これは非常に興味深い話で、旧ドイツ製オールドレンズを「模倣」したオールドレンズは日本も含め数多く存在すると思いますが、模倣元のモデルと同じ光学硝子材を使って同一設計品をまず製産し、そこから独自に別の系統としての発展を遂げたオールドレンズとなるとそれほど多くないと思います。

右写真は、旧ソ連が模倣した戦前ドイツのCarl Zeiss Jena製ポートレートレンズ「Sonnar 8.5cm/f2 T」ですが、ドイツ敗戦時に占領した旧ソ連軍はCarl Zeiss Jenaの設計技師を含む人材や工場の機械設備、或いは原材料などの資材を接収しています。

接収した人材や設備/資材をもとに、旧ソ連のKMZ (Krasnogorski
Mekhanicheski Zavod:クラスノゴルスク機械工廠) で設計された
モデルが「ZK-85 8.5cm/f2 Π」として1948年に極少数作られ、1949年より本格的な量産型モデルとして再び設計し直したたモデルが「ZORKI ZK 8.5cm/f2 Π」として登場し新たな源流となっていきます (右写真)。

今回扱うモデルはその後1958年にKMZからLZOSに製産が移管された後の出荷個体で、モデルバリエーション上では「前期型」にあたりますが、輸出用だった為に「JUPITER-9」とレンズ銘板に刻印されています (ロシア語のキリル文字ではない)。

左図は今回扱う『JUPITER-9シリーズ』のレンズ銘板に刻印されている製産工場を現すロゴマークの変遷を示しています。

KMZのロゴマーク自体は戦時中の単なる台形 (プリズムを型取ったロゴマーク) からスタートして戦後には入射光が左端から入り射出していく様を現す矢印が加えられています。

一方レンジファインダーカメラ本体は、やはりZeiss Ikonの「CONTAX I」を模倣した「Kiev-10 Avtomat」を開発したので、KMZではKiev/CONTAXマウントのモデルも製産しています。

その後1957年にはウクライナのKiev (キエフ) にあるZavod Arsenal (アーセナル工場) でもKiev/CONTAXマウントのJUPITER-9が製産され始めますが、フィルター枠部分が黒色なので外観上の相違が分かり易いです。

KMZに於ける製産でL39/M39/M42マウントモデルは、後の1958年からLZOS (Лыткаринский завод Оптического Стекла:リトカリノ光学硝子工場) に移管され1988年まで製産が続けられました。

従って「JUPITER-9シリーズ」はKMZ:1949年〜1958年、LZOS:1958年〜1988年、さらにArsenal:1957年〜1963年の時系列でそれぞれ変遷していったことが分かります。

これらは全て社会主義体制の下「5カ年計画」に基づく産業工業の国家一元管理体制からスタートした複数工場での同一モデル並行生産を表す「特異な産業構造」と言え、同時にこの概念や思想はそのまま旧ソ連が占領統括した旧東ドイツにも指示命令され広まっていきました。

【モデルバリエーション】
※各バリエーションの製産時期はネット上サンプルの製造番号から推測

前期型

製産工場:KMZ / LZOS
製産時期:1950年〜1963年



中期型

生産工場:LZOS / ARSENAL
製産時期:1958年〜1968年


後期型

生産工場:LZOS
製産時期:1968年〜2000年代 (?)

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ロシアンレンズのマウント規格について注意事項があるので解説しておきます。
(※以下マウント規格について誤記をご指摘頂きました。ここに謹んでお礼申し上げます)

左図はGOI Leningrad (Gosudarstvennyi Optichaskij Institut Leningrad:GOI光学研究所) の設計諸元書から転載しました。

L39スクリューマウント (L39 x 1)
ライカ判を模倣したFed-Zorki (フェド・ゾルキ) 版ネジ込み式マウント
マウント内径:⌀39mm x ピッチ:1mm (フランジバック:28.8mm)

M39スクリューマウント (M39 x 1)
旧ソ連のフィルムカメラZenit (ゼニット) 版ネジ込み式マウント
マウント内径:⌀39mm x ピッチ:1mm (フランジバック:45.2mm)

Kiev/CONTAXマウント (バヨネットマウント)
「CONTAX I」を模倣したやはり旧ソ連の独自マウント規格。

すると上記3つのマウント規格の中で「L39とM39が同一径のネジ込み式マウント」です。

マウントが同じ「ネジ山内径39mm x ピッチ1mm」なので、パッと見で同一に見えてしまいますが、フランジバックが違うので間違えて入手するともちろんピントが合いません。

さらに厄介なことに、右写真のような「M39 → M42変換リング」が存在するので、これをネジ込んで「M42マウント」と謳って市場に平気で流しています (古い場合は真鍮製の変換リングもある)。


ややこしい話ですが、必ず「フランジバック」を考えなければオールドレンズは使えません。

L39マウント:フランジバック:28.8mm±0.02
M39マウント:フランジバック:45.2mm±0.02
M42マウント:フランジバック:45.46mm±0.02

つまり、ヤフオク! でも平気で公然と「M42マウントとしても使えます」と謳われていますが変換リングの類を使ってM39を「M42マウント化」したとしてもフランジバックがそのままなら「相当なオーバーインフ量」になっていることになります (距離指標値の∞から5目盛以上もズレた手前の位置で無限遠合焦してしまう)。

すると、例えば今回の中望遠レンズで言えば、距離環に刻印されている距離指標値は「・・5 6 8 12 ∞」なので、下手すると5mを過ぎた辺りから無限遠合焦してしまい、ポートレートレンズとしての画角で考えるとだいぶ使い辛いと思います。

いわゆる高く売りたいが為の謳い文句として敢えて詳しく案内しない出品者も居るので本当に厄介です (シロウトなので詳細は不明/委託品なので未確認などが横行している)。

従ってL39なのかM39なのか、或いは本当のM42なのか (変換リングがネジ込まれていない) 等確認が必要になります。しかしライカ判「L39」を「M39」と表記している人も居るので非常に分かりにくい話になっています。当方も調達時は必ず無限遠位置が適正なのか質問して入手しているくらいです。

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上の写真はFlickriverで、Carl Zeiss Jena製「Sonnar 8.5cm/f2 T」の特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。


上の写真はFlickriverで、このモデル「JUPITER-9 85mm/f2」の特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。

一段目
SonnarもJUPITER-9も共にシャボン玉ボケが表出しますが、残存収差の影響度合いの違いがエッジの滲み方の相違に現れるので、ピント面のエッジが骨太に出てくるロシアンレンズの特徴を備えたJUPITER-9のほうが、明確なシャボン玉ボケ〜円形ボケまでの表出にメリットがあります。Sonnarのほうは、おそらく意図的に収差を残している要素があると踏んでいるので、それはそれで美しい溶け方 (滲み方) をしている印象を受けます。

二段目
ここからが両方のモデルの相違をより明確化してくる要素だと考えますが、収差ボケの質が違うので背景ボケの現れ方に違いがあると思います。基本的にピント面のエッジが繊細で細い印象のSonnarは背景ボケが煩く出てきても違和感を感じませんが、ピント面のエッジが (太いから) 明確に出てくるJUPITER-9のほうは、シ〜ンの設定をミスると背景ボケと被写体とのバランスで違和感ギリギリのところまで近づきます。その意味で撮影スキルが試されるモデルなのかも知れません。
共にポートレートレンズの焦点距離だけあって人物撮影が美しく表現されますが、画全体的な印象は2つのモデルで対極的なように感じます。

光学系は3群7枚のゾナー型ですが、今回の個体は製造番号から1978年の製産ですから既にロシア産の新種硝子材へと変わった後の設計になっています。

今回バラして清掃時にデジタルノギスで計測しほぼ正確にトレースした構成図です。
当方が計測したトレース図なので信憑性が低い為、ネット上で確認できる大多数の構成図のほうが「」です (つまり右図は参考程度の価値もない)。
(各硝子レンズのサイズ/厚み/凹凸/曲率/間隔など計測)

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。

当方での「JUPITER-9シリーズ」扱い本数は、オーバーホール/修理を承った分も含めると今回が累計で36本目に当たりますが、その中で「前期型」タイプは17本目になります。ところがさらにその中で「黒色鏡胴」は今回がまだ2本目なので相当少ない状況です。

このブラックバージョンを純粋にヤフオク! にオーバーホール済で出品するのは今回が初めてになります。

決して敬遠しているワケではないのですが、この「前期型」タイプは内部構造として「ダブルヘリコイド方式」を採っているので、ヘリコイド (オスメス) が必ず「内外ヘリコイド」の組み合わせで2セット入っています。

すると筐体外装をチェックした時に「凹みや打痕」がある場合、たいていトルクムラが解消できない懸念が高くなる為に要チェック項目になります。さらに光学系の状態まで加味すると、調達対象となる「黒色鏡胴」は限りなく減っていくというワケですね。

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。このモデルは鏡胴が「前部/後部」二分割方式なので、ヘリコイド (オス側) は鏡胴「後部」に配置されています。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

↑15枚ものカーボン仕上げの絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成させます。今回の個体は、過去の一時期に「絞り羽根の油染みが相当粘着化していた」期間があり、そのまま使用されていたようです。15枚の絞り羽根のうち3枚に「キーの変形」があり一部の絞り羽根の開閉角度が途中から変わる為に「最後までキッチリ真円の円形絞りで閉じていかない」問題が残っています。

下手にキーの変形を正そうとすると脱落してしまう為に改善できません。

皆さんは「光学系内のカビ発生」は相当なレベルで気にされる方が多いのに「絞り羽根の油染み」は放置プレイの方が多かったりします(笑)

まず間違った思い込みをしている例として「光学系は密閉されている」と思い込んでいらっしゃる方が少なからず居ます。確かに多くのオールドレンズで「光学系の光学硝子レンズは締め付け環で締め付け固定される」のですが、それで密閉されている事にはなりません。

もっと言えば、光学硝子レンズが最も恐ろしい環境は「気圧の変化」です。時々冬などで寒い外から暖かい室内に移った時など、その温度差で発生する「結露」で光学硝子レンズに影響が出ると気にされる方がいらっしゃいますが「結露」が直接的な原因で光学硝子レンズが破壊されることはまずあり得ません。

それよりも「急激な気圧差」で光学硝子レンズが圧壊する懸念は相当高くなりますから、そこで注意が必要になる環境と言えば「気温による金属材などの伸縮」から生ずる気圧の変化になります。

つまり前述の「結露」の例で言えば「結露した」結果が問題なのではなく気温差のほうが問題だと言えます。

ところが「結露」することで光学系内に「水分/湿気」を蓄えてしまう事に繋がります。つまりオールドレンズ内部に廻ってしまった「経年の揮発油成分」が光学系のコーティング層に付着していた時、その「揮発油成分」に留まっている (或いは引き寄せられた)「結露/水分/湿気」はそっくりそのまま含有されている「有機成分」が「カビ菌繁殖の糧」として環境を整えている事になります。

その「揮発油成分」発生の判断材料となる一つが「絞り羽根の油染み」なのではないでしょうか?(笑)

つまり「絞り羽根の油染み放置」はそのまま「光学系内のカビ発生」環境を整えたまま放置
プレイしている事に気がつくべきですね(笑)

そして「絞り羽根の油染み」が進行すると、やがて粘性を帯びてきて「界面原理」が働き、絞り羽根を閉じていった時に「膨れあがる現象」が発生します。これが「キー変形」の原理であり、一度垂直を維持しなくなったキーは再び垂直状態に戻す事が難しくなるので、結果「歪なカタチで絞り羽根が閉じていく」現象に至ります。

すると「絞り羽根の油染み放置」は、最終的に「光学系内のカビ発生」を促し、同時に「絞り羽根が歪に閉じる」原因をも自ら作っている事になりませんかね?(笑) それを当方のオーバーホール/修理で改善を期待されてもムリと言う話です

↑完成した鏡筒を立てて撮影しました。光学系が僅か3群しかありませんが、ご覧のように深い (長い) 鏡筒です。

↑ここで先に光学系前後群を組み付けてしまいます。さらにこの鏡筒の上に「絞り環用ベース環」を被せます。このベース環を見ると「イモネジ用の下穴が2箇所空いている」のが分かります (グリーンの矢印)。

この2つの下穴のうち1個が製産時点で、もう1個は過去メンテナンス時にドリルで開けられてしまったごまかしの位置と言えます (つまり過去に絞りユニット環の位置がズレていた時期がある)。

このようにバラすことで「過去のごまかし」まで白日の下に曝されますね(笑)

↑こんな感じで「絞り環用ベース環」がセットされますが、最後までネジ込んでしまうと絞り環操作が正しく機能しません。

↑実際に「絞り環」をイモネジ (3本) で締め付け固定します。これで鏡胴「前部」が完成した事になります。

イモネジ
ネジ頭が存在せずネジ部にいきなりマイスの切り込みが入っているネジ種

↑ここからは鏡胴「後部」の組み立て工程に入ります。鏡胴「後部」はヘリコイド (オスメス) とマウント部だけの構成なので非常にシンプルです。

ダブルヘリコイド方式なのでヘリコイド (オスメス) のセットが2つ組み合わさる構造です。
基準ヘリコイド (外ヘリコイド:オス側)
外ヘリコイド (メス側)
内ヘリコイド (オス側)
内ヘリコイド (メス側)

↑内外のヘリコイド (オスメス) がご覧のようなネジ込み順序 (ブルーの矢印) で基準ヘリコイドに対して互いにネジ込まれます。

↑実際に基準ヘリコイドに対して内ヘリコイド (オスメス) のをネジ込みました。するとオレンジ色矢印の箇所に「スリット (溝/切り欠き)」が用意されており、ここに「直進キー」と言うシリンダーネジが刺さってスライドする事で内ヘリコイド (オスメス) が繰り出されたり/収納したりする仕組みです。

直進キー
距離環を回す「回転するチカラ」を鏡筒が前後動する「直進するチカラ」に変換する役目

↑さらに外ヘリコイド (メス側) もネジ込んで内外ヘリコイド (オスメス) によるダブルヘリコイド部が完成したところです。

すると基準ヘリコイドが回転する事で内ヘリコイド (オスメス) が繰り出したり/収納したりする仕組みですから、それぞれが互いにブルーの矢印方向で回っている事になります。

つまり鏡筒を繰り出している時 (距離環を回して最短撮影距離側の方向に回している時)、マウント側の内ヘリコイド (メス側) は「逆に収納している状態」と言うのが構造原理です。逆に距離環を回して無限遠位置方向まで収納している最中は「内ヘリコイド (メス側) は繰り出している状態」ですね。

このように互いが逆の動き方をしているのがダブルヘリコイド方式の特徴なので「原理原則」を熟知している人でなければ無限遠位置のアタリ付けすらできない事になります。

さらに厄介なのが上の写真のとおり2セットのヘリコイド (オスメス) が介在するために「直進キーも2本刺さる」点です (オレンジ色矢印)。つまり距離環を回す時の「トルク」を決めているのは、これら内外ヘリコイド (オスメス) の滑らかさ/スムーズさと言う話です。

↑ダブルヘリコイド (オスメス) のトルク調整で、今回は14回の組み直しを行い、且つ塗布したヘリコイドグリースも合計5種類を組み合わせつつもようやく距離環のセットまで漕ぎ着けました (既にマウント部もセット済)。

この後は完成している鏡胴「前部」を組み付けて無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行えば完成です。

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ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑今回初めてオーバーホール済でヤフオク! 出品するロシアンレンズ、LZOS製中望遠レンズ『JUPITER−9 85mm/f2 black《前期型》(L39)』です。

マウント規格がライカ判「L39」である事は無限遠位置の確認で既に実写済ですから安心です (M39ではない)。また今回の個体は製造番号から1978年製ですが、レンズ銘板のモデル銘が英語表記なので (ロシア語のキリル文字刻印ではないので) 欧米向けの輸出用個体だった事が分かります。必然的に輸出上必要になる原産国表記も必ず明示されており「Made in USSR」の白文字が鏡胴にあります。

これらの事柄からある一つの事実がより具体的に明確になってきます。それは何か???

今回の個体が「ニコイチ品」ではない事です (限りなくその可能性が低い)。特にロシアンレンズは鏡胴が「前部/後部」二分割方式のモデルが多かったりするので、良い部位だけで組み上げた「ニコイチ/サンコイチ」品があったりするのですが、鏡胴「前部/後部」で整合性が執れているとなれば、その懸念も低くなると言うものです(笑)

たかがレンズ銘板の刻印の話ですが、こんな安心材料に繋がっていく事もありますね(笑)

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。但し、残念ながら第1群 (前玉) 表面だけは「経年相応な拭きキズが多め」です。逆に裏面側はスカッと綺麗な状態なので (カビ除去痕すら皆無/コーティング層がキレイなまま) 写真への影響は全くありません。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

↑光学系後群側も非常に透明度が高くLED光照射でも極薄いクモリすら皆無です。もちろん拭きキズなども一切ありません。

↑上の写真 (2枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(順光目視で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:20点以上、目立つ点キズ:18点
後群内:11点、目立つ点キズ:5点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
・バルサム切れ:無し (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:あり
(前玉表面に経年相応な極微細な拭きキズあり)
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
光学系内の透明度が非常に高い個体です
(LED光照射でも極薄いクモリすら皆無です)
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑15枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「ほぼ円形絞りを維持」していますが絞り羽根3枚のキー変形により極僅かに歪なカタチのまま閉じていきます。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度と軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「重め」に感じ「全域に渡ってほぼ均一」です。
・距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
(一部トルクが僅かに重くなる箇所があります)
・絞り環操作も確実で軽い操作性で回せます。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。

↑距離環を回すトルク感がもう少し軽めに仕上げられれば文句なかったのですが「少々重めのトルク感」です。また1箇所極僅かですが抵抗/負荷/摩擦を感じる箇所があるので、トルクムラも全域で均一ではありません (逆に言えばその箇所だけの話です)。

神経質な方が操作すれば「トルクムラがある」と感じられるでしょうし、そうではない方には「何処?」と言うレベルの感じ方になります。但しトルクの重さは誰がイジッても「確かに重め」だと感じると思います。

こういうビミョ〜なニュアンスが現物を触ってチェックして買うことができないオークションではなかなか表現しにくいのですが、このようなブログに掲載する事で少しでもお伝えできればと思います (個人の感じ方の話なので、この件についてクレーム対象にはなりません)。

無限遠位置は当初バラす前の位置と同じに設定してありますが、極僅かにズレていたので適正化させ、ほぼ「∞の左側辺り」で無限遠合焦します (当方所有K&F CONCEPT製マウントアダプタによる)。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑オリジナルかどうか分かりませんが、樹脂製のネジ込み式フードが附属するのでありがたいです (ネジ込み部のみ金属製)。他、汎用のスナップオン式前キャップと金属製の汎用ネジ込み式後キャップが附属します。

↑当レンズによる最短撮影距離1.15m付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

この実写はミニスタジオで撮影していますが上方と右側方向からライティングしています。その関係でフードを装着していない為に絞り値の設定によりハレ切りが不完全なまま撮影しています。一応手を翳していますがハレの影響から一部にコントラスト低下が出てしまうことがあります (簡易検査具による光学系検査を実施済で偏心まで含め光軸確認は適正/正常)。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2.8」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f4」で撮りました。

↑f値は「f5.6」に変わっています。

↑f値「f8」です。

↑f値「f11」になりました。そろそろ「回折現象」の影響が出始めているでしょうか。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

↑f値「f16」です。

↑最小絞り値「f22」での撮影です。