いろいろと調査して更新。

先月は1カ月間ほぼ休み無く作業を続けていたので、いや3月も確か休みが無かったか?(笑)、
5月のGWと言うこともあり1日だけ休息日を設けました。

久しぶりに自宅に戻るからと妻に連絡すると、急に言われても・・とのこと(笑)
「あのさァ〜、他人じゃないんだからそう言う言い方無いでしょ?」

・・とまぁ、ここから先進めるとまた喧嘩になるので(笑)、はいはいと頷いて言われるがまま頼まれた買物をして時間調整してから戻りました。
悲しいかな、当方は「共済事業」ヨロシク「恐妻事業」に勤しんでおります・・。

長女が当方の仕事を手伝いたいとのことだったので、この機会にいろいろと話をしましたが、そうは言ってもすぐにできる作業はありません。
当方の仕事を手伝うよりも、そろそろ嫁に行ってくれたほうが安心なんですが、呑気な性格なのかなかなかです・・。

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先月ある問屋に問い合わせをしていたのですが、その返答のみならずいろいろと調べてくれてしかもサンプルまで取り寄せて送ってくれました。何とありがたいことか・・。

調べてもらった内容は「光学系の洗浄液」についてです。

経年で発生してしまった光学系内のカビに関しては、オーバーホールを始めた7年前にはその除去が大きな課題だったワケですが、コーティング層の内側で繁殖したかカビでなければ、 現在はほぼ間違いなく除去できるようになりました。

ネット上を調べると様々な方法でカビの除去をしていますが、光学硝子を生産している会社に出向いてお話しを伺うとなかなかハードルが高いことを知りました。結局、専用の機械設備が無い個人たる当方でできる処置は限られており、様々なカビの発生状況や経年劣化が進行しているコーティング層を勘案すると、重要なのはコーティング層も含めた光学硝子材に対して「最も影響が少ない薬剤」で除去するのがベストと言う考えに落ち着き、今はその手法を執っています。

ネット上で案内されている「カビキラー」の類の化学薬品を使うのは禁じ手です。先ず間違いなくコーティング層を傷めてしまい劣化を促進する結果に至ります。かと言って手近に手に 入る薬品などは経年で発生したカビの繁殖状況に完璧に対応できるモノも無く (カビ菌が残留してしまう)、相応の価格とツテを頼りに問屋から調達するしかありません。

またコーティング層の内側でカビが繁殖してしまっている場合には、カビ除去薬だけでは歯が立たないので機械を使いますが、下手すればカビが繁殖した痕をさらに破壊してしまう懸念もあり安直に使うワケにはいきません。その辺の判断がなかなか難しいところです。
(カビ繁殖痕を破壊するとカビ除去痕がより明確になり広がってしまう)
専用の機械と言っても簡単に手に入るモノでは用を成さず、仕方なくちょっと高額でしたが「カビ撲滅」を目指して入手した次第です。

なかなか一筋縄で行かないのがカビの除去なのですが、7年間の研究と努力の甲斐あり現在はほぼ完全除去できるようになりました。
(カビ除去薬に関しては公開しない約束で問屋から分けてもらっているのでお問い合わせ頂いてもお応えできません)

そして次なる課題が「経年劣化したコーティング層の洗浄」です・・。

これが大変厄介でカビのように視認できないので経年劣化の程度を判定できません。もちろん専用の機械設備が無いので経年劣化の程度を判定する方法すら持ち合わせていません。
ぶっつけ本番で清掃に臨むしか無いのが正直なところです。

そうは言っても、現実としてコーティング層が剥がれてしまう懸念は残ったままなワケで今回の問い合わせに至ったワケです。もちろんただ単に教えてくださいと伺っても、具体的な手法や解決策には辿り着きません。当方が7年間でやってきた手法や手順、或いは薬剤などを細かく掲示した上で、次なる手段を相談するしかありません。

一言にコーティング層と言ってもモノコーティングあり、マルチコーティングあり、そして最も処置が難しい「非常に弱い薄膜蒸着の複層膜コーティング層」などもあったりします。オールドレンズを光に翳して反射させた時に「グリーン色」や「淡いブル〜」或いはライカレンズなどでは「アンバー」に光彩を放つコーティング層が「薄膜蒸着層」です。これらの薄膜蒸着層はモノコーティングやマルチコーティング層の上に最後の「味付け」的な意味合いで複層膜コーティング層として蒸着されている為、剥がれてしまった場合はその下のモノコーティング
/マルチコーティング層が露出します。結果当初光り輝いていた何かしらの色合いの薄膜蒸着層の光彩は消失してしまいますね。

今回の問い合わせではこの「非常に弱い薄膜蒸着の複層膜コーティング層」を剥がさない清掃手法と薬剤を手に入れることが命題でした。

結果、専用の洗浄液だけではなく、そもそも清掃手法と手順が異なっていたことに気がつきました。今頃そのようなことを探っている始末です(笑)
オーバーホールを始めて7年が経ちましたが、当方の技術スキルはその程度ですから、どうかこのブログをご覧頂いている皆様も当方の技術スキルが高いなどと買い被らぬようくれぐれもお願い申し上げます。

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実は、先月にはグリースに関してもメーカーに問い合わせご相談した結果、2種類ほど黄褐色系グリースを増やしました。当方が拘っている「白色系グリースによるアルミ合金材の摩耗」についてもお話したところ当方の読みが正しかったことを確認できました。当初塗布した時は「白色」だったグリースが経年で「濃いグレー状」に変色してしまい、それを溶剤で洗浄すると溶剤の中に非常に微細な摩耗粉を確認できると話したところ、至極納得頂きました (つまりアルミ合金材の摩耗粉であることは間違いない)。

もちろん検査機関で正しい手順で検査した上での話ではないので、あくまでも推測の域は出ません。

ネット上以外にも実際にお問い合わせ頂く内容として、それはグリースに含まれる金属成分ではないかとの話もありましたが、白色系グリースと黄褐色系グリースの2種類についてアルミ板を使って当方で実験したところ「白色系グリースのみアルミ板が摩耗した」ことを確認済です。もちろん白色系グリースと言っても様々な種類が出回っていますから一概には結論を出せませんが、少なくともオールドレンズをバラしていると白色系グリースが過去メンテナンス時に塗られていた場合、ほぼ90%以上の確率で「濃いグレー状」に至っていますから間違いないと考えています。

そして実際にグリースのメーカーに伺い担当者の方にそれら事象や当方の実験を掲示した上で具体的なグリースの成分/配合について細かくお話しを伺うことができました。当方が拘る「黄褐色系グリース」について、先ず間違いなくオールドレンズが製産されていた当時は使われていたであろうグリース種別であり、然しそれは100%間違いなく当時の光学メーカーに於いて専用の成分と配合で特別に用意されていた専用グリースであったと言うことです。

そもそもグリースの基剤が金属由来の鉱物系であることから、どのような増ちょう剤や様々な特徴や性質を加味するかで異なる他の成分を含有させることで多種多様に存在しています。

【潤滑剤の中味】
「原料基油 (鉱物系)」+「増ちょう剤」+「その他の成分」=潤滑剤

【潤滑剤の大分類】
● 液体潤滑剤:潤滑油
● 半個体状潤滑剤:グリース/コンパウンド
● 個体潤滑剤:二硫化モリブデン/グラファイトなど

そしてもっと言えば、その前に金属加工会社の社長さんからお伺いしたお話とも、それらの事柄はすべて逐一合致しています。つまりオールドレンズは当時の黄褐色系グリース塗布を前提とした金属成分や配合を調整して具体的なアルミ合金材として精製されており「それを無視した白色系グリースの塗布には自ずと限界がある」と言う結論に達します。

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そんなワケで、年明けからいろいろと調査しお伺いしながら、7年間拘り続けた当方の考察に対する妥当性と具体的な今後の手法や手順、或いは使用するグリースや洗浄剤について更新を行いました。

さて、これからはただただひたすらにオーバーホールをしていくだけですね・・(笑)