◎ FUJI PHOTO FILM CO. (富士フィルム) FUJINON 55mm/f1.8《後期型》(M42)

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※解説とオーバーホール工程で使っている写真は現在ヤフオク! 出品中商品の写真ではありません

今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、当時の
フジカ製標準レンズ・・・・、
FUJINON 55mm/f1.8《後期型》(M42)』です。


市場ではマルチコーティングの「EBC (Electron Beam Coating)」がモデル銘に附随する「EBC FUJINON 55mm/f1.8 (M42)」のほうが人気ですが、当方が個人的に気に入っているのはこちらモノコーティング (EBCが附随しないタイプ) のほうですが、手に入れようと探してもすぐにはなかなか手に入らなかったりするのがこのモデルです (前期型のほうが多くで回っている)。

その理由は2つあります・・。

画全体に漂う「優しい」印象の画造り
空気感/距離感を写し込んだ「空間表現」の素晴らしさ

たかがコーティングの相違でそんなに違いが出るのかと思うかも知れませんが、マルチコーティング化することで解像度の向上のみならず様々な収差面も改善が期待できるので、必然的に後の時代に当たり前になるマルチコーティングのモデルのほうがパキッとした写りになってきます。しかしそれはの「優しい印象」を打ち消すことに至り、同時に今回のモデルで特筆される「空間表現」の素晴らしさ () まで消失していきます。

なお、今回出品する個体は近年にメンテナンスされていることが判明している個体ですが、マウント部内部に「ごまかしの整備」が処置されていたので、今回のオーバーホールで正しい (適切な) 状態に戻して仕上げています。この点については以下オーバーホール工程の中で解説します。

  ●               ● 

1970年にM42マウントを採用したフジカ初の一眼レフ (フィルム) カメラ「ST701」が発売され、セットレンズとしてモノコーティングの初代標準レンズ「FUJINON 55mm/f1.8 (M42)」が登場します。

その後1972年には「ST801」が発売され交換レンズ群はマルチコーティング化されモデル銘に「EBC」が附随してきます。さらに1974年に「ST901」が発売されそのタイミングで再び交換レンズ群もフルモデルチェンジしています。

今回出品する個体はフィルムカメラ「ST901」発売のタイミングでモデルチェンジした、初代モノコーティングの「後期型」にあたります (以下モデルバリエーションを附したタイプ)。

なお、一部ネットでこのモノコーティングモデルからの発展系としてマルチコーティング化された「EBC」付が登場したと解説しています。すると今回扱う「後期型」のモノコーティングタイプが浮いてしまいます

そこでモノコーティングタイプの発売タイミングを調べると、初代の「初期型」はST701の取扱説明書に記載されていますが「ST801」の取扱説明書にはマルチコーティング化した「EBC」付モデルしか掲載されていません。ところがST901」の説明書を見ると欄外に「EBC付ではないモデルも存在する」とちゃんと記載されていました

従って今回のモデル発売のタイミングは1974年の「ST901」登場時点だったと推測できます (筐体デザインが後期型にチェンジした)。

念の為1978年に印刷されたレンズカタログをチェックすると、こちらにもちゃんとEBC」付とモノコーティングの両方が記載されていましたから、併売していたことが分かります。つまり一部サイトで解説している今回のモデルから「EBC」付へと変遷したという案内は誤りだと言えるワケですね (今回のモデルをモノコーティングからマルチコーティング化への変遷として捉えてしまうと違うと言う意味)。

【モデルバリエーション】
オレンジ色文字部分は最初に変更になった要素を示しています。

初期型:1970年発売 (ST701用)

コーティング:モノコーティング
開放測光用の爪:無
距離環ローレット:金属製
レンズ銘板:金属製

初期型:1970年発売 (ST701用)

コーティング:モノコーティング
開放測光用の爪:無
距離環ローレット:金属製
レンズ銘板:金属製

前期型:1972年発売 (ST801用)

コーティング:マルチコーティングEBC
開放測光用の爪:
距離環ローレット:ラバー製
レンズ銘板:プラスティック製

後期型−Ⅰ:1974年発売 (ST901用)

コーティング:マルチコーティング「EBC
開放測光用の爪:有
距離環ローレット:ラバー製
レンズ銘板:プラスティック製

後期型−Ⅱ:1974年発売 (ST901用)

コーティング:モノコーティング
開放測光用の爪:有
距離環ローレット:ラバー製
レンズ銘板:プラスティック製

各バリエーション発売年度と発売時に対象としたフィルムカメラのモデル銘を併記しました。特に「後期型−Ⅰ」に関しフィルムカメラ「ST801」と同時に発売されたと解説しているサイトがありますが正しくは「ST901」発売のタイミングで登場したのであり「ST801」発売当時に存在していたのは「前期型」のほうのタイプになります (筐体デザインが異なる)。

あくまでも「FUJINON 55mm/f1.8」シリーズの進化と捉えると上のようなバリエーションの展開が見えてくるワケですが、この他に廉価版のモデルが存在しています。

「FUJINON 55mm/f2.2」1976年発売 (ST601/ST605用)
コーティング:モノコーティング
開放測光用の爪:有
距離環ローレット:ラバー製
レンズ銘板:プラスティック製
筐体:プラスティック製

「FUJINON 55mm/f1.6」1978年発売 (ST705W用?)
コーティング:モノコーティング
開放測光用の爪:有
距離環ローレット:ラバー製
レンズ銘板:プラスティック製
筐体:プラスティック製

これら廉価版モデルは光学系構成が異なっており「FUJINON 55mm/f1.8」とは全くの別モノです。この廉価版モデルを富士フィルムから発売されたフィルムカメラ「ST701〜ST605II」までの時系列の中で捉えると意外なことが判ってきます。

バリエーションの中で「FUJINON 55mm/f1.8」シリーズのを附した「後期型−Ⅱ」については本来コーティング層をモノコーティングにして価格を僅かに安く控えた廉価版モデルとして登場させたつもりだったのでしょうが市場は反応せず結果として出荷台数は伸びなかったようです。そこで新設計による本格的な廉価版モデルを用意したのが「FUJINON 55mm/f2.2」だったのかも知れません。従って「後期型−Ⅱ」の位置付けとしてはモノコーティングとして括り「初期型」→「後期型−Ⅱ」としたほうが分かり易いと思います。

ちみなみにを附したモデルは「初期型」の単なるカラーバリエーションのひとつ「ブラックバージョン」なのでモデルの変遷に入るワケではありませんが、ネット上の解説でバリエーションとして捉えているサイトもあるので敢えて確認のために載せておきました。

光学系は4群6枚の典型的なダブルガウス型光学系です。右の構成図は
今回バラして清掃時にデジタルノギスで計測しほぼ正確にトレースした構成図です。後に登場したマルチコーティング化されモデル銘に「EBC」が附随するタイプと同じなのですが、ネット上の解説などを見ていくとこの「EBC」付の光学系構成図をそのまま掲載しているパターンがほとんどです。

しかしそれは正しくありません・・。

一方「EBC」付モデルの光学系構成図が右図になります (やはり以前
オーバーホールした際にデジタルノギスで計測したトレース図)。

すると、第2群〜第3群の貼り合わせレンズの外径サイズがそもそも全く異なることが分かります (当然ながら曲率は「EBC」付モデルのほうが高くなっている)。

そうは言っても当方が計測したトレース図なので信憑性が低い為、ネット上で確認できる大多数の構成図のほうが「」です (つまり右図は参考程度の価値もない)。
(各硝子レンズのサイズ/厚み/凹凸/曲率/間隔など計測)


上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。

一段目
毎回この女の子に登場してもらって申し訳御座いませんが (可愛い)(笑)、背景のシャボン玉ボケはピント面のエッジがすぐに破綻していくダブルガウス型光学系の特徴から表出しにくいように考えます。もちろん口径食も出てしまうので真円のシャボン玉ボケにもなりにくいですね。

そしてピント面のエッジは基本骨太に明確に出てくるのですが画全体として捉えると妙に繊細感を感じます。この繊細感の犯人は何かと言うのがいつも課題になるのですが「EBC」付ではない分、パキパキで鋭い誇張的なピント面に至らないからなのではないかと考えています。それは収差の改善や解像度面でもモノコーティングのままですから画全体にその影響が出ているのではないかと言う考察です。特に当方がこのモノコーティングを好む理由の一つがダイナミックレンジの広さです。一番右端の写真など「まるで絵画 (油絵)」に見えてしまうので感動的です。

二段目
そしてこのモデルの最も好きな要素が左端2枚の「空間表現」です。これは被写体の背景のボケ味がポイントになってきますが、ボケ具合が溶けすぎてしまうと空気感 (距離感) を表現しにくくなってきます。悪く言えば汚いボケ方とも言えるのかも知れませんが、何もかもトロトロのボケ味だけが優れていると言う偏った考え方は当方にはありません(笑)

当方が拘る描写性の要素として以下の3つがあります。

被写体の素材感や材質感を写し込む質感表現能力
距離感や空気感を感じる立体的な表現能力
現場の雰囲気や臨場感を留めるリアル感の表現性

この中でに関しては背景のボケ具合が大きく関わってきますから、どんなにカリカリの鋭いピント面だとしても、画全体としてノッペリした平面的な印象に写っている写真には興味が湧きませんし、ダイナミックレンジが狭くて明暗部の潰れが多少生じていたとしても画全体として現場の雰囲気を感じる写真には頷いてしまいます。

つまりは「人の五感」に訴えるが如く「余計なモノが見えず、現場の音が聞こえ、臭いまで漂い、気温や湿度、或いは日射しや寒さまで感じてしまう要素」に当方は反応します。それは当方自信のことだけなのかも知れませんが、凝視しているつもりでも実は目を凝らして見ている場所だけしか認識しておらず、その周囲はボケたままで一切認識していない (記憶していない) からであり、人の記憶とは実はその時の現場の音や温度/湿度、或いは明暗など凡そ「雰囲気的な要素」まで捉えてインプットされているのではないかと考えているからです。すると「リアルな写真」に魅力を感じるのですが、それはそれら要素たる「人の五感」に訴える要素が写真の中にも見出せなければ魅力として感じないワケです。

従って「EBC」付のマルチコーティングも良いですが、マルチコーティング化されたオールドレンズだけが優れていると言う評価には結びつきませんし、むしろノンコーティングシングルコーティング時代のオールドレンズでも、それら「人の五感」に訴える要素を表現し得るモデルが存在すると考えています。だとすると、詰まるところは (重要なのは) ピント面の問題ではなく、逆に「背景のボケ具合」が写真の画全体的な印象に大きな影響を持つ要素なのではないかと考えている次第です (結果ピント面がより明確な主張をしてくる)。あくまでも写真センスが無い当方の拘りです(笑)

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。
(オーバーホール工程では過去オーバーホール時に掲載していた写真を転用しています)

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります (上の写真のみ今回の個体を完全解体した際の撮影です)。内部構造は「EBC」付モデルと全く100%同一です (違うのはレンズ銘板と光学系だけ)。

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒 (ヘリコイド:オス側) です。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

絞り羽根を組み込んで絞り羽根開閉異常完成させると左写真のようになります。

左写真では「位置決め環」側が見えています。反対側 (裏側) に「開閉環」が既に入っています。

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

↑完成した絞りユニットを鏡筒 (ヘリコイド:オス側) 最深部にセットします。

↑距離環やマウント部を組み付ける為の基台です。

↑ヘリコイド (メス側) を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

↑完成している鏡筒 (ヘリコイド:オス側) を、やはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルは全部で7箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

完成したヘリコイド (オスメス) をひっくり返して後玉側方向から撮影しました。両サイドに「直進キー」が刺さっており、他に鏡筒から「開閉アーム/制御アーム」の2本のアームが飛び出てきています。

絞り羽根の開閉制御を司る「チカラの伝達」手法として「アーム」が用意されており「開閉アーム/制御アーム」の2種類により具体的な絞り羽根開閉動作を実現しています。

直進キー
距離環を回す「回転するチカラ」を鏡筒が前後動する「直進するチカラ」に変換する役目

開閉アーム
マウント面絞り連動ピン (レバー) が押し込まれると連動して動き勢いよく絞り羽根を開閉する

制御アーム
絞り環と連係して設定絞り値 (絞り羽根の開閉角度) を絞りユニットに伝達する役目のアーム

↑マウント部内部の写真ですが既に各構成パーツを取り外して当方による「磨き研磨」を終わらせた状態で撮っています。

↑取り外していた各構成パーツも個別に「磨き研磨」を施し表層面の「平滑性」を確保して組み付けます。マウント面から飛び出ている「絞り連動ピン」が押し込まれると (ブルーの矢印①) その押し込まれた量の分だけ「開閉」が移動します ()。一方「制御爪」は絞り環に接続しており、鏡筒から飛び出ている「制御アーム」を掴むことになります。

左写真は上の写真でグリーンの矢印で指し示している箇所で使って
いる「捻りバネ (2本)」を撮影しました。

この「捻りバネ」は片方が「常時絞り羽根を閉じようとするチカラ」が及ぶのに対し、もう一方は「絞り羽根を常に開こうとするチカラ」を及ぼすので、互いに相反するチカラのバランスの中で絞り羽根が正しく開閉する原理で設計されています。

冒頭でご案内しましたが、今回の個体はつい最近 (おそらく5〜6年内) メンテナンスされている個体でした。ヘリコイドグリースに「白色系グリース」を塗布し完全解体した後に組み上げています。

過去にメンテナンスされていても何も問題が無ければ気にしないのですが、このモデルで使われている「捻りバネ (2本)」を故意に曲げて (変形させて) 強制的に絞り羽根の動きを変えている「ごまかしの整備」が施されているとなると黙っていられません(笑)

捻りバネ (2本)」には突出している棒状部分 (バネの左右部分) に「長短の長さの相違」があります (左右対称ではない)。その長さの相違を以て及ぼすチカラバランスを整えているワケですが、今回の個体のバネは片方 (大きい方) が「逆向きにセットされていた」ことが判明しています。

上の左写真で赤色矢印で指し示した箇所は引っ掛け用のフックになっているのですが、左右を変えてセットする為にワザと (故意に) フック部分の傾きを変えてセットしていました。

つまり、バラした後に組み上げていく途中でセットする方向を間違えた人為的ミスではなく「向きを変える為にイジった」事がこれで判明しました

すると、この大きい方の捻りバネの向きを左右変更した場合にどのようにチカラの影響が変化するのかを熟知している整備者の仕業と言えます。つまり過去メンテナンス者は「プロの整備者」だったことがこのバネのセット状況を見ただけで判明してしまいます (シロウト整備ではフック部分の向きまで考えが及ばないから)(笑)

何を言いたいのか?

実は、特にこの当時のFUJICA製オールドレンズをバラしていると、これら「捻りバネ (2本)」を故意に向きを変えたり、ワザと曲げて変形させたりしている過去メンテナンスが非常に多いと言わざるを得ません。そうすることで絞り羽根の開閉動作が変化する事を知っている整備者の手による処置であり「プロの仕業」と言えますが、それらの処置は製産時点、ひいては設計を逸脱したチカラを及ぼす処置であり、最終的にはオールドレンズ個体の寿命を縮めている処置とも言えます (バネのチカラが弱ってしまったら代替パーツが無いから)。

それを承知で平気で処置しているワケで、組み上がってしまえば一切分からないので「全く以て悪質です!」(怒)

シロウト整備なら仕方ないと思いますが、これをプロの整備者が平然とやっていることに対して腹立たしさを覚えます。

今回のオーバーホールでは、大きい方の「捻りバネ」を本来の正しい向きに戻し、且つ左右のフック部分を曲げられてしまった傾きも「水平状態」に戻し製産時点の適切なカタチに戻してから組み込みました。それでも正しく絞り羽根が開閉していますから、ちゃんと部位別に適切に調整していけば「ごまかしの整備」を行う必要性など全くありませんね(笑)

安直に時間をかけずに仕上げようとするから、このような「ごまかしの整備」が横行しています。どうしてそのような「ごまかしの整備」を処置するのかと言えば、それはその時点で既に「絞り羽根の開閉異常」が発生していた個体だったワケで、その原因や因果関係をちゃんと調べずに短時間で改善させたいから (仕上げたいから)「ごまかしの整備」をしてしまいます。

↑完成したマウント部を基台にセットします。

↑指標値環をイモネジ (ネジ頭が無くネジ部にいきなりマイナスの切り込みを入れたネジ種) 3本で締め付け固定します。この時、締め付け位置をミスると絞り環の刻印絞り値と実際のクリック感の位置がズレてしまいチグハグになります。

↑距離環を仮止めしてから光学系前後群を組み付けて無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。

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ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わりました。「初期型」の梨地シルバーな絞り環の配色も美しいですが、今回の「後期型」の精悍な装いも却って「EBC」付ではないのが (ちゃんとFUJINONが真上に来ていて) どことなく誇らしげに見えます(笑)

敢えて元気の良い発色性ではない、つまりは「EBC」付ではない「FUJINONモデル」に拘ることで、自然でマイルドな人の目で見たがままの印象を重視したい人向けとも言えるモデルです。モノコーティングたるこのモデルの存在理由は、そういうところにあるのではないでしょうか。

それはワザワザ「後期型」発売のタイミングで敢えてモノコーティングを用意してきた (併売した) メーカー戦略の意図があったハズですし、実際光学系をバラしてみれば明らかに光学設計の相違が見てとれ、外観こそそっくりですが (EBCの有無の違いだけですが) その描写性には明らかに違いが感じられます。

その意味で、このモデルは決して蔑ろには出来ない存在価値があると見ています。

↑光学系は驚異的な透明度を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。

今回出品個体は残念ながら前後玉の表面側に極僅かな目立つカビ除去痕が2〜3点残っています (一見すると目立つキズに見える)。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

↑光学系後群側もLED光照射でさえ極薄いクモリが皆無でスカッとクリアです。やはり後玉表面側に2点ほど目立つカビ除去痕がパッと見でキズに見えますが残っています。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:11点、目立つ点キズ:7点
後群内:19点、目立つ点キズ:14点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
・バルサム切れ:無し (貼り合わせレンズ有り)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:有り
(前群側中心付近に微細な目立つカビ除去痕2点の
他、後玉表面側にも目立つカビ除去痕2点あり)
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・前玉表面側に経年相応なカビ除去痕が複数残っておりLED光照射で極薄いクモリを伴い浮かび上がります。
・光学系内の透明度は高いレベルです。
(一部にカビ除去痕としての薄いクモリあり)
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑6枚の絞り羽根をキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に正六角形を維持」しながら閉じていきます。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度と軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人によって「重め」に感じ「全域に渡って完璧に均一」です。
・距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
・マウント部内部の爪が内部でアームを掴んだまま距離環を回してピント合わせする際上下動する為カリカリ音が聞こえますが将来的に不具合が発生する要素になりません。
マウント面に「開放測光用の爪」が1mm程突出しています。「切削」が必要な方はご落札後の一番最初のメッセージにてご申告下さいませ
別途「作業料2,000円」を送料欄に加算の上お支払い頂きます
再度マウント部を解体後に切削し着色後に発送します(発送が数日遅延します)

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。

↑1974年に発売された「後期型」であるにも関わらず、意外にも市場に出回る頻度は「初期型」のほうが多かったりします (たいていフィルムカメラST701にセットされたまま出品されることが多い)。逆に言うと、最後に発売されたにも拘わらず生産数自体が少なかったことから出荷数も伸び悩み (期待値ほど売れなかった) 結果的に市場での出現率も低いのが現状なのでしょう。

その意味で手に入れようと探してもすぐに見つからないモデルの一つです。

今回の個体は前述のとおり、つい最近「プロの整備者」によりメンテナンスされていますが、マウント部内部の「捻りバネ」をイジった「ごまかしの整備」が施されていました。そもそも内部の全ての箇所に「緑色の固着剤」を塗布しており、なかなかバラすことができませんでした。そもそもヘリコイドグリースに「白色系グリース」が塗布されていたので、既に「濃いグレー状」に変質しており、僅か数年で距離環のトルクも重く変わっていました。

はたして10年も維持しないような整備をしておいて「全ての箇所に固着剤」を塗る意味があるのでしょうか?

本来製産時点で必要な箇所だけに限定して「固着剤」をメーカーが塗布するのは、あくまでも次のサービス (整備) までに適切な固定箇所が緩まないようにする目的です。「適切な固定箇所」と言うのは検査した上で微調整しているからに他なりませんが「ごまかしの組み立て」など一切あり得ない世界の話です。

ごまかして組み上げておいて「全てに固着剤を塗る」と言うその考え方がそもそも理解できません。正しいことをしていないのに「如何にも正しいような固着剤の使い方」は、全く以て整備者自身が何も考えずにただ単にバラして組み上げているだけという「いい加減な整備レベル」とは言えませんか?

少なくとも当方から見れば、こんな整備をしているのに「プロ」と呼ばれていることに非常に違和感を覚えます。

今回の個体に塗布されていた「白色系グリース」の劣化状況から、まだ10年など経過していない (せいぜい5〜6年程度) ワケで、それは裏を返せば「いまだにこんな整備を公然と行っている整備会社が今もある」と言えるのではないでしょうか。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑いつもながら、どうして製造元や実際に販売している販売店サイドがキッチリ解説せずに、当方がこのブログでいちいち解説しなければならないのか甚だ納得できないのですが「開放測光用の爪」とマウントアダプタについてご案内します(笑)

この当時の「フジカ製オールドレンズ」或いはマミヤ製オールドレンズの一部にはマウント面に「約1mm弱の突出」があります。フジカ製オールドレンズでは「開放測光用の爪」としてマウント面に突出があるワケですが、そのままM42規格のマウントアダプタにネジ込んでいくと途中で引っ掛かってしまい、最後までネジ込めずに固着してしまいます (キズが付く/削れてしまう)。

↑上の写真ではその「開放測光用の爪」を赤色矢印で指し示しています。この「開放測光用の爪」は現状残したまま仕上げているので、当時のフジカ製フィルムカメラに装着すれば「開放測光機能」が働きます (ST801/ST901/AZ1など)。

一方マウントアダプタに装着する場合に邪魔になる方は、ご落札後の一番最初の取引ナビメッセージでご申告頂ければ「切削処置」を別途有償で執り行います (作業料2,000円)。ご落札代金お支払いの際に「送料欄に加算してお支払い」頂ければ承ります。その際、再びマウント部を解体して絞り環までバラした上で「開放測光用の爪」だけを切削するので、他にキズが付いたりなどせずにキレイに切削でき、且つ最後はちゃんと「着色」して元通りに組み戻します (従って発送は数日遅延します)。

但し、当然ながら「開放測光用の爪」を一度切削してしまうと、二度とフィルムカメラ装着時に「開放測光機能」を働かせることはできなくなるのでご留意下さいませ

その関係で、M42規格のマウントアダプタに装着しても爪を切削せずにそのまま使えるマウントアダプタが存在します。一つ前の写真で並べて撮っているマウントアダプタです。

Rayqual製マウントアダプタ (日本製)
K&F CONCEPT製マウントアダプタ「旧型」(中国製)
K&F CONCEPT製マウントアダプタ「新型」(中国製)

この3種類のマウントアダプタの中で「問題なくそのまま着脱可能なのはのマウントアダプタ」です。の「旧型」は最後までネジ込めずに途中で引っ掛かり固着するパターンになります (新型との相違をご案内する為にワザと一緒に掲載しています)。

のK&F CONCEPT製 (中国製) マウントアダプタを並べて撮影しました。するとオールドレンズ側のマウント面に突出があるか無いかの相違があります (赤色矢印)。「新型」には突出が用意されたので「開放測光用の爪を避けて最後までネジ込める」ことになりますね。

の「旧型」は途中で引っ掛かってしまい最後までネジ込めないワケです (キズが付く/削れてしまう)。

のK&F CONCEPT製マウントアダプタ「新型」を拡大撮影しましたがご覧のようにオールドレンズ側マウント面が突出した仕様に変わっています。

↑実際に今回の出品個体をネジ込んでみると、ご覧のように「開放測光用の爪」が引っ掛からずに最後までネジ込めています (赤色矢印)。

↑こちらはのRayqual製マウントアダプタ (日本製) 拡大写真です。

↑同様今回出品個体をネジ込むと「開放測光用の爪」が引っ掛からずにちゃんと最後までネジ込めます (赤色矢印)。

  ●               ● 

例えば、K&F CONCEPT製マウントアダプタ (/) をAmazonのネット販売店で購入 (注文) すると、実はサイトの掲載写真は「旧型」なのに届くのは「新型」だったりします。逆に言えば「新型」でちゃんと掲載してくれているサイトがまだありません

但し、一部のカメラボディ対応マウントアダプタ「EOS R用/Nikon Z用」などはちゃんと「新型」で掲載し販売しています。また「PROバージョン」が新たに追加されており、こちらは「新型」として購入することができます (割高です)。ハッキリ言って「内面反射防止塗装」したのが「PROバージョン」なのですが、単に艶消しメッキ塗装に変更しただけの商品なので「値上げ」みたいな話です。

このように販売店側がちゃんと一斉に「新型」に変更してくれないので、新旧グチャグチャで購入せざるを得ない状況になっているのが現状です (そもそも掲載写真と違う商品が届くこと自体商取引法違反状態)。

もっと言えば、日本製のRayqual製マウントアダプタでさえ「開放測光用の爪」の事は一切明示されていません。何故に開発/製造メーカー自らが明示せず販売しているのか?

最近は「ADJ機能」なるタイプを新発売してきていますが、要は「指標値位置の適正化 (調整機能)」を附加したに過ぎません。これは単に安い中国製マウントアダプタが横方向からのマウントのネジ部固定方式を採っている為に容易に (最初から) 位置調整機能が付加されているのに対抗した話です (Rayqual製はマウント面側から締め付け固定だから位置調整できない)。

さらに根本的な問題点を指摘すれば、M42マウント規格のRayqual製マウントアダプタはホームページで「フランジバック」について案内していますが、何らその根拠を示していません

フランジバック
レンズマウント面から撮像面 (フィルムカメラならフィルム面、デジカメ一眼/ミラーレス一眼ならば撮像素子面) までの距離

すると・・、

(A) M42マウント規格のオールドレンズ側フランジバック:45.46mm
(B) SONY Eマウント規格のフランジバック:18.00mm
(C) マウントアダプタの製品全高:(A) 45.46mm ー (B) 18.00mm 27.46mm
※M42マウント規格は「レンズマウント」としてWikiで解説されています

ところが・・、

Rayqual製マウントアダプタ「M42-SαE」製品全高は「27.51mm」あります。つまり計算上フランジバックより「0.05mm超過」している為に極僅かなアンダーインフ状態に陥ります。

この話は当方のブログ「解説:M42マウントアダプタにみるフランジバックとの関係②」で詳しく解説しています。実は中国製マウントアダプタも日本製Rayqual製マウントアダプタの仕様を真似しているので「同じ製品全高27.51mm」です (極僅かなアンダーインフ状態)。

この件について中国K&F CONCEPTに確認したところ「我が社製品のM42マウント規格フランジバックは45.5mmだ」との解答でした。つまり小数点以下を「1桁に丸めている」ことになりますが、実際の光学メーカー側の誤差許容値は「±0.02mm」がほとんどで小数点以下2桁まで採っています。

たかが「0.05mm0.04mmの違い」なのでしょうが(笑)、オーバーホールして実際に光路長確保している当方にとっては致命的な話であり「マウントアダプタによる相性問題」として無限遠合焦のクレームで毎月のように悩まされているワケです (何故なら0.05mmの相違は距離環刻印距離指標値の2〜3目盛分のズレとなって現実的に現れるから)(涙)

それで仕方なく「オーバーインフ状態に仕上げる」と、今度はオーバーインフ量が多いと言ってきます(笑) ではいったいオーバーインフ量をどうすれば良いのか尋ねると「オーバーインフ量は少ない方が良い」との返事が来ます。それって自分が持っているマウントアダプタに対するオーバーインフ量の話であって、市場流通している多くのマウントアダプタに対する話になっていませんョね?(笑)

ご落札者が持っているマウントアダプタを当方は知る術がありません。どうやってオーバーインフ量を調整してオーバーホールを仕上げれば良いのでしょうか???

このようないい加減な規格仕様の世界なのがマウントアダプタの現状である事を、使うユーザサイドも認識するべきですね (リスクが伴うと言う話)。

従って、オールドレンズ販売店の一部では無限遠位置をキッチリ合わせていると明言していますが、実際は適合するマウントアダプタを極一部だけに決めているので (Rayqual製マウントアダプタに適合させている) 他のマウントアダプタに装着した場合は当然ながら無限遠位置がズレます (それでコリメーター適合させていると明言しても意味が無いと思うのですが?)。

そういう自分に都合の良い話だけを通しているのが現実なワケで、正直にそれを問題視して指摘していると嫌がらせや誹謗中傷メールが来る始末で、世の中なかなか厳しいですね (日本製マウントアダプタ信者が居る)(笑)

↑当レンズによる最短撮影距離45cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

この実写はミニスタジオで撮影していますが上方と右側方向からライティングしています。その関係でフードを装着していない為に絞り値の設定によりハレ切りが不完全なまま撮影しています。一応手を翳していますがハレの影響から一部にコントラスト低下が出てしまうことがあります (簡易検査具による光学系検査を実施済で偏心まで含め光軸確認は適正/正常)。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2.8」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f4」で撮りました。

↑f値は「f5.6」に変わっています。

↑f値「f8」になりました。

↑f値「f11」です。極僅かに「回折現象」の影響が現れ始めています。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。