◎ Roeschlein Kreuznach (ロシュライン・クロイツナッハ) Luxon 50mm/f2 silver《Paxette版》(M39)

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※解説とオーバーホール工程で使っている写真は現在ヤフオク! 出品中商品の写真ではありません

今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、旧西ドイツ
Roeschlein Kreuznach製標準レンズ・・・・、
 『Luxon 50mm/f2 silver《Paxette版》(M39)』です。


《ご落札頂きましたぁ〜!》
思い入れのあるモデルだけに、そして今回のこの企画発案時の根源的なモデルだっただけに、ご落札に対する喜びはひとしおであり、お礼も兼ねてコメントしてしまいます!(笑)

実は当方はこのモデルの存在を全く知らずに、以下にご案内した「Primoplan 5.8cm/f1.9 の特許申請」と言う真しやかな都市伝説を調べていく中で発見し得たモデルで、まさにその1936年の特許申請時に例として記載されていた「100mm/f1.5」の設計図面に非常に近似した光学設計を採っていた事を知るにつけ、これはもぉ〜手に入れてバラすしかないと躍起した次第 です(笑)

おそらく手に入れずしてそのまま人生を終わっては死ぬに死にきれないと (夢枕にフッと現れる) というくらいの勢いです(笑) 特に当方の場合、上手く調整が進まなかった時に疲れ切って寝入っていても、その夢の中で続きの微調整作業を試みていてヒントを得てしまうと言う隠れ特技を持っているので(笑)、なまじ死に際の夢枕に現れないとも言い切れません!(怖)

もしもそうなったら後悔極まりない話しなので(笑)、ここは何としても扱うしかないとマジッモードで海外オークションebayから入手した次第です (しかもオランダ⇔アンカレッジ⇔日本と飛び回って届いた)。

当方のオーバーホールに対する概念上、どうしてもオールドレンズの設計者に対する思い入れ (開発時の情熱や意地) に同調するので、逆に言うなら「観察と考察」により内部構造を客観的に把握するにつけ、設計時の苦労や工夫/こだわりが見えてくると、どうしても感情移入しないワケにはいかないのです(涙)

根本的にアッと言う間に感情移入して観入ってしまう当方の映画鑑賞の癖と全く同じなのですね・・(笑)

この時、当方がやっているこのオーバーホール作業を対比して考えるとまたオモシロイ考察が現れます。

例えば仮に映画としてこの脚本を考えた時、オールドレンズの内部構造と設計者との関わりなどはそれこそフィクション的な範疇に留まるストーリーなのでしょうが、ことその対象となるオールドレンズを実際にオーバーホールして仕上げていく工程まで含めるとなると、また話しは別の角度から観ているストーリーになり「もしかしたらノンフィクション領域も沸き出でるかも」と言う、何とも贅沢な愉しみ方が当方には広がるワケで、こんな特権を独り占め できる優越感というのはなかなか表現し難い要素だったりします(笑)

どうしてそのようなカタチの部品を介在させたのか、どうしてこの位置で固定するように設計したのか、或いは何故ここまでこだわって複雑な動き方で制御するよう設計してきたのかなどそのような「現実的な物理的な状況把握」には、どうしても『設計者の目線/意図』まで考察 せざるを得ないのです(笑)

だからこそ完全解体してまでこだわってオールドレンズをバラすことで内部構造を把握して、可能な限り構成パーツの経年劣化を排除して「製産時点の状態に近づける」ことで自ずと導き出される組み立て工程手順は、まるでそれこそ「走馬灯の如きタイムスリップの愉しみ」を 味わえると表現できるのが、まさに当方のDOHの醍醐味とも言い替えられるのです(笑)

こんな愉しみを味わいながら一つのオールドレンズを仕上げていけるというのは、何とも贅沢な付き合い方なのではないでしょうか。その意味で確かに当方は『転売屋/転売ヤー』では ありますが、そうは言ってもヤフオク! で流行りつつある「単にバラしてグリースに頼った整備で組み立てるだけ」という「いわゆる整備屋モドキ」の類とは、全く以て一線を画する概念であり、併せてプロのカメラ店様や修理専門会社様などで行われているプロの職人『』によるオーバーホール作業とも全く別モノなのだと断言できるのです(笑)

オールドレンズ・・確かに今ドキのデジタルなレンズとは異なる別の楽しみ方を与えてくれる世界ですが、同時にそこにロマンの領域まで精神性の愉しみ方を広げて附加しようという試みこそが、当方のこのブログであり、そしてDOHの奥義でもあります。

ご落札頂き、本当にありがとう御座いました!

  ●               

《Canonに装着するお問い合わせについて》
現在ヤフオク! 出品中ですが、お問い合わせ頂いたので解説します。

現状SONY Eマウント規格用として仕上げてあるので、装着先Canonのカメラ側マウント規格によってフランジバックが違います。

出品のオールドレンズはPaxette版モデルなので、フランジバック:44mmでCanon EOSと 同一のフランジバックですが、出品中セットはSONY Eマウント用の10mmエクステンションを加味して仕上げています。

従ってそれが装着先カメラボディがCanonだと使えないので、その10mm分をマイナスしないとダメです。

また出品商品はフランジ環までのフランジバック計算値が「16mm」ですし、もしもL39→
LM変換リング(5075)まで使うならプラス1mmなので「既に17mm分フランジバックを使っている」と認識して下さいませ。

すると用意するべきサイズは「Paxette:44mmフランジバック」マイナス「出品個体:フランジバック計算値:17mm (LMマウント)」イコール「必要な厚み27mm」なので、それに 見合う変換リングなり隙間調整用の台紙などを間に咬ませれば、無限遠合焦します。

但し残念ながら当方が知る限りそのような厚みのアダプタは存在しないと思います。

仮に「LM→EOS」だとしても、LMのフランジバック値は27.8mmなので「Paxetteのフランジバック値44mm」マイナス「27.8mm」イコール「残り:16.2mm」になり、現状使っているフランジバック値「17mm」に対して「+0.8mm」になりアンダーインフ状態に陥ります。

つまり無限遠合焦しません・・(涙)

同様に「L39→LM変換リング(5075)」を外してしまってL39として使うにも、やはり「L39のフランジバック:27.8mm」なので同じ計算式で結果は「+0.8mm」になりアンダーインフ 状態に陥ります。

・・残念です(涙)

別の視点で、例えば現状附属品のSONY E用エクステンション10mmを外してCanon用エクステンション12mmをセットするなら「+2mm」フランジバックが増えたことになります。

この2mm分を何処で相殺するかと言えば「オールドレンズ内部のヘリコイドネジ込み位置の 変更」しか対処方法が残されていません (その他に接続環などで相殺する方法無し)。

ところがPaxette版オールドレンズの場合、モデルによってはヘリコイドのネジ込み位置変更は2mm分の段差も確保できない場合が多いです。逆の言い方をするならたかが2mm程度の寸法ですが、ヘリコイドのネジ山数として考えるとその2mm分の段差はネジ山の2列分だったり するので、そこまでネジ込み位置をズラしても問題が起きないオールドレンズというのはそう多くありません。

その意味でこの「+2mm」のフランジバック増加と言うのは致命的な話であり、逆に言えばSONY Eマウントの利便性の良さとも言い替えられます (ダテに対応マウントアダプタが多い ワケではない)。

  ●               

現在ヤフオク! 出品中の「即決価格」を値下げしました・・(涙)

ハッキリ言って「作業分対価のタダ働き」で、単に調達時の資金回収みたいな話です(涙)

オモシロイと考えて頑張ったのですが、スッカリ当てが外れてしまいましたね(笑)

情けないのなんのッて・・(涙)

・・てなワケで、この企画Paxette版オールドレンズを使った『なんちゃってマクロ』『疑似 マクロ化』は今回が最初で最後と言う運命になりました(涙)

至極残念・・全く以て残念・・無念極まりなし!(涙)

《既に疑似マクロ化附属品をお持ちの方》
当方から既に『疑似マクロ化附属品』含むオールをご落札頂いた方は、現在
ヤフオク! 出品中のセットを追加でご落札頂いた場合、同じ『疑似マクロ化
附属品』が重複する為『一律5,000円返金』にて対応します。

ご落札後最初のメッセージにてご申告頂ければ、ご指定銀行お口座宛当方より取引完了後に「5,000円」をご返金します。
その場合当然ながら『疑似マクロ化』を実現する附属品の一部はお届け
しません
(他の前後キャップやフィルター/フランジ環などはそのまま附属)
※振込手数料当方負担します。

要はご落札者様にとって一番お得感を感じられる対応をしますので是非
ご遠慮なくお申し付け下さいませ。
少しでも写真ライフを楽しめるドキドキ感をまた味わって頂きたく願う
ばかりです!

メーカーロゴが創設者本人のサインになってしまいましたが(笑)、実はどうネット上を探してもこの光学メーカーのロゴが発見できませんでした。唯一特許申請時にペタンと押されていた 判子のサインだけが見つかりました(笑)

どうしてこのサインが本人のモノだと明言できるのかと言えば、もちろんサインの綴りを見れば良いのですが、実はそれだけではなく元々本名は「Stephan Röeschlein」だからです。 日本語読みすれば「ステファン・ロシュライン」で良いのでどちらでも良さそうですが、本人の意志で自分の名前の登記簿を変更したとの事なので、冒頭の判子をそのまま「公文書」向けにペタンやっていたと推察した次第です (こういう事を妄想すると何だか楽しいです!)(笑)

ドイツ語の判子ですが、訳してみれば「光学機械研究所 所有者:Stefan Roeschlein」になるワケで、まさに公文書にちゃんと使えるワケですね (素晴らしい!/名前の登記も変更してるから)(笑)

光学機械研究所」のままなので、まだ息子に勧められてちゃんと 会社名登記する前に使われていた判子だと考えられます。

Rudi Roeschlein (長男) の助言に従い1948年に旧西ドイツはバートクロイツナッハで創設者として登記を済ませたようです (本人の希望は息子さんと一緒に仕事をしたかったようですが)。

当方は本来フィルムカメラ音痴で全く以て興味関心が起きないのですが (オールドレンズだけは大好きです!)(笑)、どう言うワケかレンジファインダーカメラの「Paxetteシリーズ」だけは 気になって仕方なく(笑)、とうとう買い集めている始末です(笑)

そして「Paxetteシリーズ」の中でも当然ながら自分でオーバーホールできるオールドレンズが関わるとなれば興味津々なのは「M39マウントタイプ」なので、第二世代のパクセッテカメラだけになります (第一世代は固定レンズで第三世代はdeckelマウント)。

さらにもっと言うのなら、どうしてパクセッテが気になったのかと言えば、まさに今回扱う オールドレンズがどうしても気になって仕方なかったからと言えるのです。今回扱うモデルの存在を知ったのはちょうど一年前でしたが、旧東ドイツは老舗光学メーカーMeyer-Optik Görlitz (マイヤーオプティック・ゲルリッツ) に在籍して、PrimoplanやTrioplanなど多くの オールドレンズやシネレンズ、或いはプロジェクター用レンズを開発設計した技師こそが・・
この人「Stefan Roeschlein」だからです。

はい、つまりはPrimoplanと同じ光学設計を踏襲しており、もっと言うなら「プリモプランの遙か上を行く収差の暴れ方」とでも言えば上手く表現できるでしょうか。グルグルボケはもとよりシャボン玉ボケ、或いは収差ボケの乱れ方が楽しくて仕方ないのでどうしても気になっていたオールドレンズだったのです (それが高じて第二世代Paxette収拾に走っている始末)。
高齢者のクセに追っかけしてるなど全く以て恥ずかしい限りですが・・(笑)

適確に解説するなら、内部構造や光学系の出来の素晴らしさなどを追求するなら何はともあれ「Meyer-Optik Görlitz製Primoplan 58mm/f1.9 V」を手に入れたほうが良いワケです。
(これは間違いなくそのほうがベストです!)

ところが天の邪鬼な性格の当方にしてみると「えッ?もっと乱れるの?!!!」と吐き出す 写真の収差ボケの酷さに呆れるどころか、むしろ逆に惚れぼれしてしまったからダメなワケで(笑)、光学系が小さくなって入射光量不足に悩まされ周辺域の解像度やまとまりにもムリがかかっている「はい、敢えてPaxette版を使いたいのです!」と思い立ったのが一年前・・と 言うお話しなのです(笑)

イザッ思い立ってこのオールドレンズの調達にと意気込んだものの、何と海外オークションebayでもまともに使えそうなキレイな光学系の個体はなかなか現れず(泣)、ようやく昨年の 11月頭に清水の舞台から飛び降りてゲットしました!(笑)

11月から12月になり、年が明けて1月も終わってしまい・・あれ?オールドレンズ何処に居るのョ???・・と相当心配な状況でしたが、調達先 (出品者の住まい) はオランダだったのにどう言うワケかシドニー国際空港の荷物係からメールが着信し、慌てて出品者に連絡!(怒)

すぐに対処してくれたのはいいのですが、今度はまたアンカレッジ空港・・! つい先日も 別のオールドレンズでアラスカで凍っていると連絡が入ったばかりなので「どうしてみ〜んなアラスカに行くのョ?!」と半ば呆れ状態でした。オランダを出てからオーストラリアに行って日本飛び越して今度はアメリカのアラスカ! 世界を股に掛けて飛び回っているのが何とも羨ましい限りです (DHL自社便の貨物機なので飛び回る代金は請求されません)(笑)

そしてようやく一昨日届きました・・(涙) もぉ〜嬉しいのなんのッて!(笑)
PCR検査してないけど、完全解体して清掃するからウイルスの心配は大丈夫!(笑)

へぇ〜、小っちゃいんだ・・フィルター枠ちょっと曲がってるけれど、でもキレイ・・。
おぉ〜、覗き込むとちゃんと部屋の向こうが見えるじゃん! 光学系バッチシ!
しかし、どうして距離環も何も動かないんだ?!

と言うワケでニマニマしながらイジっているのを妄想頂ければ良いのですが、結局届いた個体は全く動かないシロモノ!(笑) こんなのにウン万円も払ったのかと半ば汗タラタラ状態でしたが、然しよくよく考えればこんだけ光学系がスパッとクリアなのはそれだけでウン万円もの価値があると断言できてしまうのが今回のモデルなのです!(笑)

ステファン・・貴方が作ったオールドレンズ、これからバラしてキレイキレイしてちゃんと 活躍できるようにしますからね! 1971年にもう亡くなられてますが、貴方の功績を胸に秘め最大限のエールを贈りつつ再び活躍の場を提供します!

本当にオールドレンズとは不思議なモノで、何十年も前の、いえ下手すれば半世紀も前だったりするワケで、その時に精魂詰めて必死に設計して作られたその情熱とこだわりは、バラすとちゃんと脈打って伝わってきます・・(涙)

設計者の意図に寄り添い、そして汲み取り、再びの活躍の場をと願いを込めても・・50年後に残るのはやはりオールドレンズの設計者の名前で、残念ながら当方の名前も存在も何もかも一切知られません(笑)

オーバーホールする事とは・・実はそういうモノなんです・・(笑)

  ●               

↑上の図は銘玉としてやまない旧東ドイツは老舗光学メーカーMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズの「Primoplan 5.8cm/f1.9 V」特許登録時のデータだとネット上をチェックすると散々いろいろな処で解説されていますが・・これ違います!(泣)

ドイツ語なので不鮮明な分読みにくいですがちゃんと訳していくと「4群の明るい硝子レンズを使い」且つ「第2群は凹メニスカスと凸メニスカス接着によるダブレット」を介在させる事でザイデルの諸収差改善を狙うと記載されています。

そしてその直ぐ下に「example、Focal ratio: 1:1.5、Focal length:100mm、Free opening:66.7mm」とラテン語/英語翻訳できてしまいましたが、何と焦点距離:100mmの場合の光学設計を代表例として載せているだけなのです (間違いなく例だと明記されている)。

はい、つまりは「Primoplan 5.8cm/f1.9 V」の光学設計の特許ではないのです。光学系設計概念の特許登録だと考えられます。おそらく4群4枚のエルノスター型光学系との相違についてこの4群5枚の光学系を設計する概念/構想についての特許申請なのだと、記載されている内容から推察できます (何故なら何処にも焦点距離:58mmも明るさ:f1.9も記載が無いから)。

つまりは「Meyer-Optik Görlitz製標準レンズのPrimoplan 58mm/f1.9 V」を特定する ような記載が何処にも存在していないと言えます。

いつのまにかこの特許書類の図がネット上を一人歩きしていますが(笑)、信用/信頼が皆無な 当方がこだわっているだけの話なので、是非とも皆様はネット上の解説を「」としてご認識下さいませ。当方のこの解説は「ウソ」で構いませんから、せめて誹謗中傷メールを送るの だけは何卒ご勘弁下さいませ。なにしろ気が小さいのでさすがに堪えます(涙)

上の図からトレースした光学系構成図が右図になります。

今まで数多くのPrimoplanをバラしましたし、中望遠レンズの75mmもバラしましたがこの構成図の方を踏襲した光学設計をまだ手に取って見たことが無かったので、これで納得できました(笑)

要は第2群の曲率が非常に高く、且つ第4群が近接しており厚みも相当もっている事からどう考えても標準レンズ域の光学系構成図には見えないのです。

そして右図が今回の個体をバラして光学系の清掃時に当方の手でデジタルノギスを使って逐一計測した時のトレース図です。

当方がやっていることなので、是非とも信憑性が低いのだと皆様は ご認識下さいませ。ウソの構成図とのご認識でも構いません。批判は敢えてお受けしますのでどうぞよろしくお願い申し上げます。

なお光学系最後の第4群の距離が離れている分もちゃんと実測して
トレース図に反映させています。

ちなみに本家旧東ドイツはMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズの「Primoplan 5.8cm/f1.9 V《後期型》」の光学系構成図が右図
になります。

如何でしょうか・・とても近似した構成図でちゃんと第4群が離れた位置に居るところまで似てますね。

本家Primoplanのほうは最短撮影距離:60cmまで最後は短縮してますから、今回のPaxette版では最短撮影距離:1mなので、その分の違いも勘案する必要がありますね。

この構成図を見ただけでも特に第2群の曲率が相当曲がっているので、確かに周辺域の乱れ方が本家Primoplanよりも酷くなることが納得できてしまいますね (敢えてそれを狙っているのだからむしろ嬉しいのですが)(笑) そして特に本家Primoplanとの決定的な相違点は「第3群の 両凹レンズの曲率と向きが違う」事からも最短撮影距離が長くなるのが納得できます。

ちなみに現在も海外オークションebayを探せばこのモデルが載っていますが、残念ながら光学系にクモリがあります。Meyer-Optik Görlitz製オールドレンズのPrimoplan同様に光学系は 第2群の貼り合わせレンズにクモリが生じているのでどうにも改善できません (一度剥がして再接着しない限り改善不可能)。

それゆえにほぼ1年がかりで調達で探しまくった次第です・・(笑) なおオールドレンズ鏡胴の絞り環や距離環など一部に打痕が残っており変形しています。可能な限り修復しましたがその影響で特にトルクムラには至っていませんから快適にお使い頂けると思います。



上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています/上記掲載写真はその引用で あり転載ではありません。

一段目
左端からシャボン玉ボケが破綻して円形ボケや収差ボケへと変わっていく様をピックアップしています。特に真円のキレイな円形ボケの表出はさすがに難しいみたいで乱れていますし、本当ならもっと凄いグルグルボケも撮れるみたいです(笑)

二段目
さらに背景に収差ボケの影響を濃く受けている写真をピックアップしてみました。乱れ方が凄いと言っても目立つ乱れ方ではなくて滲んでしまっているので (二線ボケ状に明確にエッジが際立たないので)、当方はむしろこれら収差ボケを「背景効果として使える」と評価してしまっています(笑) さらには一番右端のようなキリリッとした、そして明確に記憶色に反応しそうな素晴らしい発色性をものの見事にやってのけています (凄いです!)。

三段目
さすがにダイナミックレンジが狭くて明暗部にムリがかかっているのが分かりますが、むしろ逆に言えばよくぞここまで粘って耐えているなと当方は感心した次第です (何しろ気に入って手に入れてるから何でもかんでもぜ〜んぶ良いこと尽くめ!)(笑) 2枚目の写真の距離感や空気感が漂うのも見逃せませんし (実はMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズが最も苦手としている要素) 被写体の材質感や素材感などの質感表現能力の高さも相当なモノです。これでレンジファインダーカメラ向けの標準レンズですからねぇ〜ッ! (そのくらい後玉が小っちゃいから!)(笑)

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。ご覧のとおり内部構造はこれでもかと言わんばかりに簡素です。パッと見で初心者向けのように見えてしまいますが、ハッキリ言って「チョ〜高難度モデル」です。この跡の工程を見ていけばきっと分かります(笑)

↑掃除する前だったので光学系第3群が汚いまま写ってしまいましたが(笑)、鏡筒にカシメ止めされているので外すことができませんし、もちろん貼り合わせレンズでもないのでこのままでOKです (後でちゃんと清掃します)。

絞りユニットや光学系前後群が格納される鏡筒ですが、実は外回りにはヘリコイド (メス側) のネジ山が切られています。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

↑こんな感じで15枚もの絞り羽根がセットされますが、当初バラした直後は真っ赤っかにサビサビ状態で、3回も清掃してようやくサビが取れました (つまりはカーボン仕上げの絞り羽根です)(笑)

カーボン仕上げである以上相当古い時代の個体なのが明白ですね(笑) さすがに製造番号を調べる手段が無いので不明なままですが、おそらく発売時期の1950年前後の製産品と推測しています。

↑完成した鏡筒を立てて撮影しましたが、一般的なオールドレンズならこの鏡筒周りのネジ山は単なる絞り環用などの役目ですが、何と今回の「Paxette版」はこれがヘリコイドのネジ山です (オス側)。

↑距離環を回すと一緒に絞り環まで回っていってしまう設計なのでヘリコイド (オスメス) の一部が絞り環用のネジ山です。

↑絞り環用のベース環をセットしたところですが、もちろんこの位置をミスるとこの跡の工程が大騒ぎです(笑)

実はこの後にヘリコイド (メス側) と距離環を組み込んでマウント部まで被せるのですが、何と全てを一緒くたに微調整していかないとまともに動かない設計である事に気が付き、もう写真撮影しているどころではなくなってしまい全く余裕無くなりました(笑)

従ってこのまま最後まで組み上げてしまい無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い完成させています。

要はとてもそんな余裕無かったと言うくらいに「絞り環の位置がネジ山のここだから距離環はここでさらにマウント部のネジ山はここにしないとダメ・・???」みたいな、アッチコッチ全ての位置調整を三つ巴で考慮して組み上げる必要がある事に気が付き(笑)、余裕が無くなってしまった次第です(笑)

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑3カ月以上もかかって3つの国を行ったり来たりしてようやく手元に届いた個体です。当初 バラす前は何一つ動かない「単なるカタマリ状態」でしたが(笑)、もちろんオーバーホール する以上キッチリ仕上げなければ当方の場合は終わりません。

手に取ると分かりますが本当に小っちゃいです・・(涙)

↑そして何よりもこの光学系です!(涙) LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無です (信じられません!)。スパッとクリアです!(笑)

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

光学系前群も実は後群も全ての群で「微細な気泡」が相当数混じっています。故にカーボン 仕上げの絞り羽根なのも時代的な納得できますね(笑)

気泡
光学硝子材精製時に適正な高温度帯に一定時間維持し続けたことを示す「」と捉えていたので、当時光学メーカーは正常品として出荷していました。

↑おそらくご落札者様も二度と目にしないと思いますが、このオールドレンズ本来のマウント部です。「M39マウント」規格なのでもちろんライカ判と同じネジ込み式ですがフランジ
バックが「44mm」なので合いません (L39は28.8mmだから)。

そして問題なのはネット上の他のサイトでも必ず使っていますが、フランジバックがビッタリと「44mm」にセットできないので簡単に仕上げる為にヘリコイド式マウントアダプタを使う人が多いです。

もちろんそのほうが安上がりなのですが、当方は基本的に「ヘリコイド付マウントアダプタは白色系グリースを使っている」のがカチンと来るので使いません。逆に言うと白色系グリースが塗られているので1年〜数年で油染みが発生して手がベタベタになり始めます。

また不用意に動いてしまう「軽さ」も実は撮影で使っていて面倒くさい話なので、どうしてもヘリコイド付マウントアダプタではない方法で仕上げたいワケです(笑)

従ってフランジバックを適合させているので、このマウント面を再び見ることはもう無いで しょう(笑)

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:20点以上、目立つ点キズ:20点以上
後群内:20点以上、目立つ点キズ:20点以上
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(極微細で薄い20ミリ長が数本あります)
・バルサム切れ:あり (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
(第2群外周に4箇所結晶状のバルサム切れあり)
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・光学系内パッと見で微細な塵/埃に見える「気泡」がありますが当時は「正常品」として出荷されていました(写真には影響ありません)。前述点キズにカウントしていますがキズではありせん。
・光学系内は透明度が非常に高いレベルです。
(LED光照射でも極薄いクモリすら皆無です)
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑光学系内の特に第2群の貼り合わせレンズにバルサム切れがあるのは上の写真赤色矢印のように外周部分に「雪の結晶のようなカタチの汚れ状が見える」箇所です。他にもう2個あるので全部で4個がこの外周に面した箇所にあります。

これは汚れではなく2枚の硝子レンズを接着するバルサム剤の中に「不純物」が混じってしまっていた為にその箇所が浮いている部分です (結晶のように見える部分)。経年で浮きが出て しまいましたが今後さらに進行して剥がれていくことは考えられません。

貼り合わせレンズ
2枚〜複数枚の光学硝子レンズを接着剤を使って貼り合わせて一つにしたレンズ群を指す

バルサム切れ
貼り合わせレンズの接着剤/バルサムが経年劣化で剥離し始めて白濁化し薄いクモリ、或いは 反射が生じている状態

↑またこのモデルのマウント面には上の解説のとおり「フランジバック環」をセットして「M39マウント」化させていますから、ご落札者様は申し訳御座いませんが今後このフランジバック環を外さないようにお願い申し上げます。

当方はエポキシ系接着剤などを使わないので回せば外れてしまいます。もしも外してしまった場合、下手すれば無限遠合焦しなくなります (アンダーインフ状態に陥り甘い画像に堕ちてしまう/ちょっと強めにネジ込んだので簡単には回りません)。

↑15枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。このモデルは距離環を 回してピント合わせすると一緒に絞り環が回っていきますから、逆に言えばピントがあった後に絞り環操作したら「ピント位置がズレる」ので、最初に絞り値を決めてからピント合わせ するようにお願い申し上げます。

なお絞り羽根は赤サビを取り除いてあるので再び赤くなってくることはありません。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人により「軽め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。
距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触やゴリゴリ感が伝わる箇所があります。事前告知済なのでクレーム対応できません。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
・絞り環操作も確実で軽い操作性で回せます。
・附属のマウントアダプタなどは一部にガタつきなどが僅かにありますが(エクステンション)、製品の仕様なので改善できません(当方には関係ありません/単に新品購入し附属させているだけ)。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。
フィルター枠/絞り環/距離環一部に打痕が残っており極僅かに変形していますがこれ以上修復できませんまたフィルター着脱は非常に大変なので(ネジ山潰れている為コツが必要)外さないほうが無難です

距離環を回した時に「ネジ山が擦れる感触」と場所によっては「ゴリゴリ感」があったり
しますが、この点を事前にちゃんと出品ページでも告知して明記済です。
大変申し訳御座いませんが、ご落札者様はこの問題について評価欄でコメントされぬようお願い申し上げます。
出品者評価を参考にしていらっしゃる方が居ますので、ちゃんと事前告知しているのに当方にとっては不利な評価になってしまいます。

もしも何かご不満が御座いましたら、最終的には返品キャンセル全額返金まで可能ですから くれぐれも評価欄にコメントされずに取引メッセージ欄でお申し付け下さいませ。

ちゃんと事前に告知しているのに評価でコメントされるとさすがに凹みます・・(涙)

マウント面にセット済の「フランジバック環 (M39マウント)」は絶対に外さないようにして 下さいませ。

また今回の個体は構造上ご覧のとおり基準「△」マーカーの位置から「」刻印がどうしてもズレてしまいます。本来はもっとズレる (凡そ2目盛分) のですがネジ込み位置の変更で対処 しています (グリーンの矢印)。

逆に言うとこれら「Paxette版シリーズ」のM39マウントモデルは、どのオールドレンズも
(まず間違いなく) 単なるフランジバック計算値だけで合わせていても、必ず正続環の誤差分でフランジバック超過するので (約0.3mm分アンダーインフ状態に陥る) 確かに距離環の目盛り「2目盛分」くらいのズレが生じているのは納得できてしまうワケです。

つまりは必ず解体して距離環のネジ込み位置を変更しない限り、ヘリコイド付マウントアダプタで都度無限遠位置を合わせる使い方しかできないとも言い切れてしまうワケです。それで こだわって当方では完全解体によるオーバーホールに徹している次第です (いちいち都度無限遠位置合わせせずとももっと簡単に使いたいから)。

↑全部で11点の附属品があります。

《出品の附属品》
ハクバ製MCフィルター (新品購入)
本体Luxon 50mm/f2 silver《Paxette版》(M39)』
フランジバック環 (M39マウント化/未接着)
M39樹脂製後キャップ (新品購入)
SONYEマウント樹脂製ボディ側キャップ (新品購入)
M39樹脂製ボディキャップ
(新品購入)
M39→LMマウント変換リング
(新品購入)
LM→SONY Eマクロヘリコイド付マウントアダプタ (新品購入)
エクステンション10mm (新品購入)
エクステンション16mm (新品購入)
SONY Eマウント樹脂製後キャップ (新品購入)

他にフィルターケースが箱の中に入ってます。これだけ附属させようとすると全部で1万円 くらいになってしまいました (スミマセン!)(泣)

↑この状態が「仕様上の最短撮影距離1m」になります。つまりエクステンション10mmをフランジバックに含んで組み上げているので、上の写真で言うと距離環が無限遠位置で写っていますが、ブルーの矢印①方向に距離環を回して最短撮影距離:1mまで繰り出せば、そのままこのオールドレンズ本来の仕様のままという話です。

使っている附属品は上の番号を参考にして下さいませ。なおフィルターは外さないようにして下さいませ。変形が残っているので一度外すとなかなかネジ込みできないと思います

↑上の写真は仕様上の最短撮影距離:1mまで距離環を回した状態を撮っています (グリーンの矢印)。

ここでマクロヘリコイド付マウントアダプタのローレット (滑り止め) をブルーの矢印②方向に動かすと、同時に全体が最大で5mm繰り出されます (ブルーの矢印③)。この時の最短撮影 距離44cmです。

↑こんな感じでマクロヘリコイド付マウントアダプタのローレット (滑り止め) を動かしたので (グリーンの矢印) 5mm分繰り出していますが (赤色矢印)、距離環は最短撮影距離の1mのままです (グリーンの矢印)。

従ってこの時にブルーの矢印④方向に戻せばオリジナルの仕様状態に簡単に戻ります。つまり繰り出した5mm分が元に戻るので収納されます (ブルーの矢印⑤/赤色矢印)。

↑今度はエクステンションを16mmに変更しました (ブルーの矢印)。すると最短撮影距離:30cmまで寄れます。この時マクロヘリコイド付マウントアダプタのローレット (滑り止め) は回しきっており (グリーンの矢印) 且つオールドレンズ本体の距離環も最短撮影距離:1mmのままです (グリーンの矢印)。従ってマクロヘリコイドは5mm分繰り出されているという解説 です (赤色矢印)。

↑さらに今度はエクステンションをダブルで装着した場合です。最短撮影距離:23cmまで短縮化されます (ブルーの矢印)。もちろんこの時も同様にオールドレンズ側距離環は最短撮影距離:1mままですしマクロヘリコイド付マウントアダプタもローレット (滑り止め) を回しきった状態 (グリーンの矢印) で5mm分繰り出しています (赤色矢印)。

このようにオリジナルの状態にいつでも簡単に戻せて、且つエクステンションを活用する事でその着脱だけで最短撮影距離をさらに短縮化させる方式を採っている為、不用意にヘリコイドが動いてしまう心配もいりませんし、油染みしてくることもありません(笑)

最短撮影距離:1m〜23cmまでの撮影をお楽しみ頂けると思います

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑ここからはそれぞれの附属品を装着した時の実写を載せていきます。

まずはオリジナルの状態でもあるエクステンション10mmでマクロヘリコイド付マウントアダプタのローレット (滑り止め) を動かしていない状態の実写です。

当レンズによる最短撮影距離:1mでの開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありません。またフード未装着なので多少フレア気味だったりします。

↑上の写真は1枚目と似たような感じですが、実は周辺の乱れ方が爆発状態です(笑)

マクロヘリコイド付マウントアダプタのローレット (滑り止め) を動かしきって5mm分繰り 出した状態での撮影です。この時の最短撮影距離:44cmですね。

↑さらにエクステンションを16mmに入れ替えました。最短撮影距離は30cmに変わっています。

↑最後の4枚目は極めつけ、エクステンションをダブルでかませた時の実写です(笑) この時の最短撮影距離は23cmです。

《近接撮影の状況》※マクロヘリコイドの5mm分繰り出しで疑似マクロ化
エクステンション (10mm) +マクロヘリコイド回さず → 仕様1mのまま
エクステンション (10mm) +マクロヘリコイド (5mm) →44cmまで近接
エクステンション (16mm) +マクロヘリコイド (5mm) →30cmまで近接

エクステンション (10/16mm) +マクロヘリコイド (5mm) →23cm近接

如何でしょうか?(笑) このように繰り出し量を増やすと実はボケ量もどんどん増えて、且つ 明るさも増大するのでそれを以てして「疑似マクロ化」と当方では呼んでいますが、あくまでもこれらは「本来の仕様を逸脱した写り方」である点をご留意下さいませ。この写り方が優れている云々を勧めているワケではありません (当方は等倍チェックなどしないタチなのであくまでも愉しむ範疇です)(笑)

なお、このモデルの仕様上の最短撮影距離:1mは、実測すると98cmくらいの位置でした。
また疑似マクロ化で近接撮影の実測距離自体が短縮化されるので (つまり被写体により近づく事になるので) ピント面から外れるアウトフォーカス部のボケ量が増えて、且つ明るさが増す のも光学硝子レンズのより中心付近に特化して入射光量が増大するからではないかと考えて います。その結果絞り値をあげていくと (つまり絞り環を回して絞り羽根を閉じていくと) 余計に入射光量が減っていくので「回折現象の影響は逆に大きくなる」とも言い替えられますからご留意下さいませ。

つまり疑似マクロ化で近接撮影するのはボケ量が増えてより明るさが増しますが、絞り羽根を閉じすぎると (絞り値を上げすぎると) 写真中心部のコントラストは逆に (回折現象から) どんどん低下してフレアの影響を受け易くなってきます。すると逆光や光源を含む撮影時にフードの使用頻度がより高くなるとも考えられますから、まさにマクロレンズ撮影時と同じ 前提条件になりますね(笑)

そもそもマクロレンズは光学系の第1群 (つまり前玉) が奥まった位置に配置されているのも、そういう意味では納得できますね!(笑)

↑同様に1枚目がオリジナル状態 (最短撮影距離:1m) で2枚目が5mm分繰り出し (最短撮影距離:40cm)。3枚目はエクステンションを16mmに変更し (最短撮影距離:30cm)、 最後の4枚目がエクステンションを2個使いです (最短撮影距離:23cm)。

いずれも設定絞り値は絞り環を回して「f2.8」での撮影です。

↑さらに回してf値「f4」での撮影です。1枚目最短撮影距離:1m、2枚目:44cm、
3枚目:30cm、最後4枚目:23cmです。

↑設定絞り値は「f5.6」に上がっています。23cmの近接撮影では「f4」でもトロットロの 滲み方ですね (逆に言えば収差が酷いというお話)(笑)

↑f値は「f8」に変わっています。

↑f値「f11」での撮影です。近接状況によっては既に「回折現象」の影響が現れ始めています。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。