◎ LEICA (ライカ) ELMAR-M 50mm/f2.8 (2nd) (silver)(LM)

(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
写真を閉じる際は、写真の外 (グレー部分) をクリックすれば閉じます
※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホール/修理が終わりご案内するモデルは、旧西ドイツは
ライカ製標準レンズ・・・・、
ELMAR-M 50mm/f2.8 (2nd) (silver) (LM)』です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Україні!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

Slava UkrainieieGeroyam Slava

今回完璧なオーバーホール/修理が終わってご案内するモデルは、当方がオーバーホール作業を始めた13年前からの累計で捉えても初めての扱いです。

先ずは冒頭で、このような大変希少なオールドレンズのオーバーホール/修理ご依頼を賜りま
した事、ご依頼者様に感謝とお礼を申し上げたいと思います・・ありがとう御座います!

  ●               

当方は極度のカメラ音痴オールドレンズを知らないと共に光学知識も皆無なので、LEICAに関するあ~だこ~だは、ネット上の解説に任せます(笑)

然し、オールドレンズの写りを楽しむ際に、やはり光学系の構成図くらいは知っておいたほうが「どうしてこう言う写りになるのか???」に関し、せめてものこじつけ程度くらいは認知しておいたほうが、自分の嗜好の良し悪しにも足しになるような「」と
思っているのですが・・どうなんでしょうか (要は自信が全くないだけの話)(笑)

今回は、こちらフランスのサイト「Classement par Nombre de lentilles (Ranking by Number of lenses)」を参考にしつつ、何は置いても大御所様「滲みレンズ」の解説も参照しつつ「知ったかぶり」に徹してみようかと思い立ちました (大御所様、スミマセン)(汗)

↑今回扱うLEICA製標準レンズ『ELMAR-M 50mm/f2.8 (2nd) (silver) (LM)』の光学系を
考える時、イキナシ真髄から味わっても良いのでしょうが、性格上「始祖」を辿らないと気がすまないので(汗)、先ずはスタート地点から探りたいと考え、ネット上を漁りまくりました(笑)

光学硝子レンズの収差を考えた時「Aplanat (アプラナート)・Stigmat (スティグマート)・Anastigmat (アナスティグマート)」と辿っていくと、それぞれ「球面収差/コマ収差の改善 (Aplanat)」から「球面収差/コマ収差/非点収差の改善 (Stigmat)」さらに「球面収差/コマ収差/非点収差/像面歪曲の改善 (Anastigmat)」へと展開していくのが分かります (ネット上を
漁っていて
)。

光学硝子レンズの半径曲面をみた時「球面収差とコマ収差を同時に改善できている事を指してアプラナートである」と表現するらしいです (他も同じ)・・実のところ、よく分かっていま
せんが(汗)

・・間違いが必ずあると思うので、詳しい方がいらしたら是非ご指摘下さいませ!(涙)

するとアナスティグマートである光学系の設計を考案したのは、英国はROSS LONDONの「Dr Heinrich Ludwig Hugo Schroeder (ハインリッヒ・ルードヴィッヒ・フーゴ・シュローダー)」博士による「Concentric (コンセントリック) 型光学系」で、上の特許出願申請書で一番左端に掲載した米国向け「US404506A (1889年6月4日申請)」が初のようです。

そして次にドイツのDr. PAUL RUDOLPH (パウル・ルドルフ) 博士により「Zeiss Anastigmat (ツァイス・アナスティグマート/後にプロターに改名) 型光学系」が、上の左から2つめの特許出願申請書「CH2305A (1890年4月19日申請)」にて発案された後、同博士はさらにプロターを改良して3つめの特許出願申請書「GB189924089A (1899年12月4日申請)」にて「Unar (ウナー) 型光学系」を発案します。

そして同博士により「Tessar (テッサー) 型光学系」が特許出願申請書「GB190213061A
(1902年6月9日申請)」として登場し、当時のZeissにより「プロター型の前群とウナー型の
後群を合体させた
」と説明されているようです (上の特許出願申請書で一番右端)。

この点について前述の大御所様は、さすが考察が鋭く「それが事実としても、3群3枚トリプレット型光学系の後群側で、貼り合わせレンズにして収差改善を狙ったとも考えられる」とのご指摘で、まさに的を射ており至極納得できる解説で脱帽です(汗)・・色収差の強力な改善を成したのも唸ってしまいます(笑)

・・当方のようなドシロウトでも理解できそうな解説こそがまさに『』です!(涙)

↑上の光学系構成図は、前に掲出したそれぞれの特許出願申請書の記載内容から、当方が自身の手でトレースした構成図でしかありませんが(汗)、こうやって一列に並べてみると「何となく分かったような気持ちになる」から、不思議です(笑)

・・当方のオールドレンズ光学系の感覚なんて、せいぜいその程度で全く当てにならない(笑)

ちなみに、大御所様ご指摘の「Triplet (トリプレット) 型光学系」は、英国は「Harold Dennis Taylor (ハロルド・デニス・テイラー)」氏により出願申請された特許出願申請書「GB189322607A (1893年11月25日申請)」が初ですから (左)、なかなか納得できる大御所様の解説で本当に助かります(涙)

↑そして、いよいよ聞きかじりのドシロウト把握たる当方のネット探索は佳境に達し(笑)、今回扱ったモデルの変遷を辿る光学系の発展へとストーリーが移ります(汗)

上の掲出で一番左端がLeitz所有の特許出願申請書「DE343086C (1920年10月9日申請)」で、Max Berek (マックス・べレック) 氏発案のまさに「テッサー型光学系」なのが一目瞭然ですが、前出特許権との関係から「Leitz Anastigmatと命名後Ernst LeitzとMax Berekを掛け合わせた造語、Elmax (エルマックス) 型光学系と改名」したとの、またもや大変ありが
たい解説が大御所様のページで確認できます (ありがとう御座います!)(涙)

上に掲示した光学系構成図も当方の手によりそれら特許出願申請書掲載図面からのトレース図です。

すると左端から2つめに掲載したとおり、確かに3群4枚テッサー型光学系なのが分かりますが「Elmax 50mm/f3.5 (L39)」の絞りユニットが第2群の背後に配置されているのが、どうしても天邪鬼な当方は気になって仕方ありません(涙)

どうしてかと言うと、絞りユニットを挟んで光学系前群と後群とのパワー配分に思いを馳せた時、以前ネット上の何処かで光学専門研究者の論文を読んでいた際、その記述のほぼ99%の内容が「???」なるも(笑)、唯一前群/後群のパワー配分にも気を遣う必要があるとの明示に、モノの見事に納得したことだけ覚えていたりします(笑)

従って確かにテッサー型光学系としても、当方は絞りユニットの配置からして「ワザと故意にエルマー型光学系と呼んでいる始末」です (スミマセン)(汗)

ちなみに3つめの光学系構成図は、その後1925年〜1959年と言う本当に長い期間製産が続いた「Elmar 50mm/f3.5」或いは同1954年〜19661年の短期間出荷されていたタイプ、さらに1994年にイキナシ発売された「Elmar 50mm/f2.8」の実装光学系のいずれかのカタチではないかと踏んでいる構成図をトレースしています (どのように再設計して変遷が示されたのかは、未だ全てのバリエーションを扱っていないので実測できておらず不明)。

そして一番右端の構成図が、今回のオーバーホールで完全解体した際に光学系の清掃時、当方の手によりデジタルノギスを使い逐一全ての光学硝子レンズを計測したトレース図です。何を隠そう、実は大御所様のサイトにて掲出されている構成図が「ほぼピタリ」と本当にオドロキを隠せません(驚)

何故なら、ネット上を観ていると一般的なテッサー型光学系に、絞りユニットの位置を縦線で区切って載せているサイトが多かったりするので、その意味でも当てにできず「さすが大御所様!」と納得です(汗)

・・と当方がこのブログで散々解説すると「公然と平気でウソを拡散し続けている」と某有名処のコメント欄やSNSで誹謗中傷の嵐らしいので(笑)、以下のとおり今回も『証拠写真』を載せる次第です(笑)

↑上の写真は、今回扱った個体から取り出した光学系第1群前玉第3群後玉を、左から順に並べて撮影しています。何しろ当方は「プロにもなれず、マニアすらなれなかった整備者モドキのクソな転売屋/転売ヤー」との話ですから(笑)、信用/信頼が皆無なのでイチイチ面倒くさいですが、仕方ありません(笑)

ちなみに1枚目の写真は前玉の露出面側方向をグリーン色の矢印で指し示しています・・当然ながら光学系第3群の後群側 (後玉) は、前玉に対して実装の向きが反転するので、グリーン色の矢印の向きも反転しています(汗)

2枚目の写真は単にヒックリ返して裏面側を撮影していますが、ちゃんと前玉の裏側が凹んでいる「凸メニスカス」レンズで、凸平レンズではない事が分かります。同様第3群も絞りユニット側の面が突出した曲がり率である点まで、ちゃんと写っていますね (だから決してウソではありませんし、何よりも大御所様の掲載構成図がそれを明示しています)(笑)

↑なお、今回のオーバーホール/修理ご依頼内容は「絞り環の前後左右方向でのガタつきが気になる」点と合わせて「光学系内に黒い微細な点が1つ在る」とのご指摘でした・・いずれも/
2つとも当方にて瑕疵内容を実際にイジって確認しました(汗)

然し乍ら、写真撮影して掲出してしまい大変申し訳ございませんが(汗)、それよりも当方が
一番気になったのは上の写真「光学系第2群裏面側の絞りユニット側方向の外周/フチにカビが生えまくっている!(涙)」点です (指摘してしまいスミマセン!)(汗)

このカビの繁殖の仕方、と言うか状況は「当方が見ると分かりますが、過去の結露に拠るカビ菌の繁殖跡 (もう既に現在進行系ではなくなっている)」です(汗)

実は、当初バラす前の実写確認時に光学系内をチェックしていて「ウ〜ン??? 何だか何処かの群のフチに泡がブクブク湧いていて、複数在る!」と焦ったのです(汗)

光学系内に勝手に気泡がブクブクと現れることなど有り得ないので(汗)「これはもしかしてバルサム切れか???」と光学系第3群の2枚貼り合わせレンズの接着を疑った次第です。

オーバーホール/修理が終わった現状は「ちゃんとカビを完全除去して美しくキレイに仕上がっている」のでご心配なきようお願い申し上げます。

・・皆様も、是非とも冬場の結露には重々お気をつけ下さいませ(怖)

ご帰宅され、お部屋に入り、オールドレンズを取り出す際は「できれば手にいっとき掴んで、今日も一日活躍してくれてありがとう、と優しく体温を伝えてあげるのがヨロシイかと・・」さすれば、きっとオールドレンズもちゃんと応えてくれるハズで御座いまする(涙)

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。このように並べて撮影してしまうと、パッと見で「如何にも内部構造が簡素に見える」ような構成パーツ点数ですが、とんでもない!(泣)

今回のモデルはヘリコイドグリースに「ウレアグリース」が塗布され、一部に本格的な固着剤が執拗に塗られていたので「過去に最低でも一度はメンテナンスされている個体」と推察し
ます(汗)

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。当方の写真撮影スキルがド下手なので(汗)、上手く伝えられませんが、実は「鏡筒の内外は光沢平滑メッキ加工」が施されています(汗)

光の反射具合でそれが分かるでしょうか???(汗) 例えば「迷光迷光」と大騒ぎするユーザーや、特に整備会社のプロの整備者に徹底的にモノ申したい思いですが、ライカでさえこのような「光沢平滑メッキ加工」を施して設計し製産している「リアルな現実!」を、貴方達はいったいどのように説明するのか、是非とも教えて頂きたいです!(怒)

この鏡筒の内部の段々状の箇所に光学系第1群前玉第2群スリーブ環 (光学硝子レンズとの間/空間を埋める遮光環の類) と一緒に格納する「落とし込み方式の格納方法」で設計しています。

平滑仕上げにメッキ加工している根拠」がまさにその落とし込みであり、確実に適切な光路長をシッカリ担保するべく意図的にこのように設計し製産しています(涙)

どうしてこの鏡筒を観た時に、そのようにすぐに理解が進まないのでしょうか???(怒)

今回の個体はさすがライカ製となれば、過去メンテナンス時に「反射防止黒色塗料」など一切着色してありませんでしたが(笑)、ライカ製オールドレンズは着色しないのに、どうして他の
一般的なオールドレンズは平気で着色しまくるのか「答えて欲しいです!」と、敢えて記述しておきます(笑)

↑一つ前の写真は前玉側方向からの撮影でしたが「本当の絞りユニット格納箇所」は上の写真のとおり「後玉側方向からの格納」と言う設計です。もちろんこちら側も内外全てが「光沢平滑メッキ加工」です(笑)

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

絞り羽根開閉幅
絞り羽根が閉じていく時の開口部の大きさ/広さ/面積を指し、光学系後群側への入射光量を決定づけている

↑さて、ここでもう一つ「さすがライカ製はこれだから違う!」と言う証拠の一つをご紹介しましたょう(笑) 上の写真は前述の絞りユニット (後群側から格納する) 内部に入り、セットされた絞り羽根6枚の上に被さる「開閉環」ですが、ご覧のとおり「相当にゴツゴツした本格的な凹凸を伴うマットな梨地メッキ加工」です(汗)

これが、この設計が意図しているのは「平滑性を担保した内壁に対し、相応に強めの梨地が接触して適切なトルク感を生み出し絞り羽根の開閉動作を仕上げる」と言う、本当に強力な設計者の意図が汲み取れる内容なのです!(驚)

その根拠は「一般的な微細な凹凸を伴うマットな梨地メッキ加工とは全く別モノのゴツゴツ感」なのが明示しており、まさにそれこそが設計者の意図を汲み取るべきそのままなのです(驚)

従ってこのモデルの絞りユニットは、グリースなど一切塗布する必要性すら今後数十年に渡り生じません!(驚)

・・如何ですか??? 凄いと思いませんか???(涙)

当方などは、今回バラしていて、この「開閉環」を目の当たりにした時「マジッに両腕が鳥肌立った!」と、寒いくらいだったです(笑)・・感動した一瞬でした!(涙)

・・こう言う瞬間にご依頼者様に対し、このような機会を与えられた感謝を感じています!

ありがとう御座います(涙)

↑鏡筒の最深部に絞りユニットが組み込まれた状態ですが、前述のとおり実際に絞り羽根が刺さっているのはこの裏側たる「後群側方向からの格納」ですね(笑)・・ちなみに、唯一最深部の絞り羽根の外周辺に「ほんの僅かに微細な凹凸を伴うマットな梨地メッキ加工の位置決め環が顔をのぞかせている」のも、よ〜く見ると、ちゃんと写っていますョ(笑)

・・だからライカは凄いのです!!!(涙)

世の中のプロの整備者は、自慢話に固執する前に、こう言う「真にライカの凄さ」を、せっかく自らバラして整備しているなら、少しくらい明示しても良いのではないかと、本当に強く強く思いますね(汗)

↑再び後群側から撮影していますが、このモデルの設計では「開閉環の固定は光学系第3群たる後玉の格納筒が担っている/兼務している」ので、ここで先に後玉を清掃してから組み込みました(笑)

↑光学系第2群をストンと鏡筒の中に落とし込み、スリーブ環を被せて、その上からさらに光学系第1群前玉を落とし込んで「ようやく最後にたった1個の締付環」で締め付け固定します。

従ってこのモデルには後玉用と前玉用の2つの締付環しか備わっていませんから、ネット上の何処かで「ライカがバカ高いのは造りが違う!」と解説されていましたが、とんでもない!

光学硝子レンズの格納を「落とし込み方式」で設計しているのです(笑) 造りの違いではありません! そう信じ込ませるよりも、ちゃんと真実をこうして述べてあげるほうがもっと愛着が湧くと思うのです(笑)

・・真実は光路長を徹底的に担保した落とし込み方式を設計したライカの凄さ

・・だと強く、本当に強く当方は思いますね(涙)

ちなみに上の写真で、前玉の外周辺に「ポツポツと白っぽい点状が写って見えている」のは、前玉のコバ端の塗膜の浮きで、製産時点の光学硝子材とコバ端塗膜塗料との材質面での整合性が違うからであり、ライカでさえこのような仕上げてもそのままなのです(笑)

実はここに「コバ端の浮きはそもそも塗膜との違いが当然なので、光学設計に既に含まれている内容」とも指摘できます。それこそ光学硝子材のコバ端の仕上げ処理を技術革新で発展させて、塗膜面との密着性を担保できればもっと良いのでしょうが「そんな事にお金をかける必要性が皆無」だからこその光学設計らしいです (以前の取材で確認しました)。

・・それは「迷光」を光学設計者が決して勘案していないワケではないのと同じ発想です(笑)

どうしてここまで明言できるのかと言えば、今回のオーバーホール工程の中で、これら光学硝子レンズのコバ端を溶剤で拭っても一切溶けなかったからこそ「製産時点を維持しきっている」と判定を下せたからです (ちゃんと根拠がある)(笑)

それを敢えてコバ端の焼付塗膜を剥がしてまで、テキト〜ーな「反射防止黒色塗料」を使って再着色する必要が在るでしょうか???(笑)

↑前玉を格納できたのでフィルター枠をセットしたところです。鏡筒を立てて撮影していますが、横方向には赤色矢印で指し示している位置に切り欠き/スリット/開口部が備わるものの、ライカの徹底度はハンパなく(笑)、両サイドにこれら切り欠き/スリット/開口部が用意され、絞り環には両サイドの2箇所から固定します (つまり前出の開閉環の両サイドに2本開閉キーが刺さって絞り環と連結させる念の入れよう)。

実はこれは「念を入れている」のではなく(笑)、両サイドから差し込んで連結させる事で「均一性を担保」する設計の現れですね(笑)

ちなみにグリーン色の矢印で指し示しているのが絞り環用の基準「●」マーカーです。

↑さらに工程を進めます。絞り環に鋼球ボールとスプリングを忍ばせてから組み込んだところです。

前述のとおり「シリンダーネジが両サイドで連結して刺さっている」ワケで、それをブルー色の矢印で指し示しています (反対側にも在る)。

ところがこのシリンダーネジが刺さっている位置/高ささえも意図的に設計されているワケで、まさにライカの凄さを表している一面の一つです(驚)

そして今回のオーバーホール/修理ご依頼内容の一つの結末を説明しますが、上の写真「C型締付環」により絞り環を固定しているので、このモデルの設計上「絞り環が入っている位置は一切微調整できない」仕様です(汗)

例えば、仮に絞り環が鏡筒外壁に備わるネジ山にネジ込まれているのであれば、そのネジ込み量を変更すれば「絞り環の配置箇所を前後で微調整できる」次第ですが「C型締付環」では
残念ながら一意の設置箇所でしか固定できません(汗)

・・その根拠を上の写真で明示しています (決して当方整備不始末の言い訳ではない)(笑)

実際上の写真でオレンジ色の矢印で絞り環とフィルター枠との間に「隙間」が介在する点を明示しています。この「隙間」を解消する事が設計上できない事を示しています(涙)

・・するといったい何処で絞り環のガタつきを解消するのか???

当然ながら、製産後の出荷時には絞り環にガタつきなど起きていなかったワケで、至極当然な話です(笑)・・つまりここに過去メンテナンス時の整備者の落ち度が隠されている始末です(笑)

・・ライカ製オールドレンズを扱うプロのカメラ店様や修理専門会社様のハズなのに!(笑)

今回オーバーホール/修理工程では、前後方向でのガタつきをほぼ解消できています (極僅かに残っているのは前述のとおりC型締付環による個体の設計だから微調整できない)。その一方で絞り環の左右方向でのガタつきは「絞り値キーと言う溝に鋼球ボールがカチカチとハマるタイミングの問題なので、これも一切微調整できない (何故なら鋼球ボールの径は決まっているし溝の幅も決まっているから)」のを、今回の完全解体にて確認し、当方が判定を下しました(汗)

・・申し訳ございません(汗)

↑上の写真はこのモデルの内部に挟まっている「シム環」と言う非常に薄い環/リング/輪っかです。このパーツの目的は「無限遠位置の微調整」であり、光路長方向に対して複数枚が挟まり「物理的な無限遠位置の微調整を担っている」次第です。

シム環:0.18㎜ 厚/高
シム環:0.12㎜厚/高
シム環:0.05㎜厚/高 x 2つ

こんな感じで、全部で4つのシム環を使っています/挟みますが、実はこれらの厚み/高さのシム環をこの数で挟むのは「今回の個体固有の無限遠位置微調整から決まっている」のであり、他の同型モデルをバラすと、また異なる厚み/高さのシム環が挟まっているハズです(汗)

今回の個体は製造番号から「1995年製」の個体と指摘できますが、今ドキこんなシム環で無限遠位置を微調整するのかと言われるのもご尤もです。然し乍ら、むしろこれこそが現代に於いても個体別の厳密な無限遠位置微調整をシム環でちゃんと担保しきっている『まさに証』です(笑)

ところが、問題だったのはこの次から説明する解説です(汗)

↑上の写真は、このモデルのヘリコイド群を並べており、以下のとおりです。

マウント部 (LMマウント規格)
基準「▲」マーカー環/リング/輪っか
直進キー、兼制限環/リング/輪っか
空転ヘリコイド
距離計連動ヘリコイド
直進動停止環
鏡胴「前部」固定遮光環
距離環用距離指標値環/リング/輪っか
距離環用ローレット (滑り止め)

・・こんな感じです。

↑上の写真は解説用に撮影したですが「制限キー」がカツンと音を立てて無限遠位置と最短撮影距離位置で停止する原理です。ところがブルー色の矢印で指し示している箇所にはネジ山が存在せず「空転ヘリコイド」として設計されており、この箇所の「平滑性」が必要なのに、過去メンテナンス時の整備者はちゃんと磨かずに「ウレアグリースを塗ってごまかした」次第です(笑)

さらにグリーン色の矢印で指し示した箇所には、両サイドに「直進キーガイド (溝)」が備わりますが、ご覧のとおり「X印」がマーキングされています(汗)

もちろん当方がマーキングしたワケではありませんから、これ発見して「過去メンテナンスが最低でも一度は施されている」との判定に至っています・・決してテキト〜を言って、当方の自慢話に仕上げているワケではありませんね(笑)

・・そもそもライカがこんなマーキングをするハズがありませんから(笑)

↑さていよいよクライマックスです(笑) 前述した「シム環」の徹底度合いを蔑ろにしてしまい「設計を逸脱してしまう所為を過去メンテナンス時の整備者が施している証拠」です(汗)

上の写真グリーン色の矢印で指し示している箇所、実際は全てのネジ穴なので「全部で6箇所」ですが、指し示しているネジ穴の両脇に「固着剤」を塗布しネジ止めしていました(汗)

前述した「シム環」は「僅か厚み0.05㎜ (実測した)」を2枚も使って無限遠位置をキッチリ合わせています。それにもかかわらず「このマウント部のネジ穴で固着剤の厚み分光路長を狂わせている」始末で(怒)、しかも塗布してあった固着剤の厚みも6箇所でバラバラですから、下手すれば極僅かな偏芯すら懸念が現れます(怖)

・・どうしてそういう整備/所為が平然とできるのですか???!!!(怒)

めちゃくちゃ頭にきています!!!!!(怒) 当然ながら、マウント部の固着剤のせいで「今度はブルー色の矢印で指し示している平滑性を担保すべき空転ヘリコイドの部位」すら、水平を維持できていなかった懸念が残ります (実際当初バラした際に溶剤で洗浄した後に一部に擦れ痕が残っていて???になった)。

ライカの設計で水平を担保できないなど、120%の勢いで考えられません!!!(怒)

こう言ういい加減な整備を、プロのカメラ店様や修理専門会社様の整備者が平然とヤッているのです!(怒)

・・異常じゃありませんか???!!!(怒) 堪ったものではありませんョ!(怒)

DOHヘッダー

ここからは完璧なオーバーホール/修理が完了したオールドレンズの写真になります。

↑完璧なオーバーホール/修理が終わりました。上の写真の前玉コバ端にポツポツと白い点状が写っていますが、前述のとおり当方では気にしていません・・申し訳ございません(汗)

少なくともライカが施した焼付塗膜を剥がす気持ちにはなれないので、もしもご納得頂けないようであれば、ご請求額からご納得頂ける分の金額を減額下さいませ(涙)

↑前出の泡ブクブクもご覧のとおり消えて、ご依頼内容の一つだった「微細な黒いモノ」も消えていますし、当然ながら光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でも極薄いクモリすら皆無です。

↑後群側もスカッとクリア極薄いクモリが皆無です。光学系内には数点の微細な点キズが残っていますが、当然ながら清掃で除去できないので当方では処置なしです(汗)

↑絞り環操作時のクリック感をシッカリしたクリック感に変更して仕上げています。また前後方向でのガタつきも解消させていますが、前述のとおり「C型締付環」の影響と合わせて「フィルター枠との間の隙間」も設計上の問題なので、どうにもできません(汗)

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。

詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。

もっと言うなら「光沢剤/研磨剤/化学反応」の類も一切利用しないので、金属材表層面に影響を及ぼしてしまう処置は何一つ講じていません(笑) 特にヘリコイドのネジ山などを研磨剤にて処置すると、塗布するヘリコイドグリースの成分/配合によってはそれらの浸透を促してしまうので、ザリザリ感やスレ感が数年で増大し製品寿命の短命化を促す結果に到達しますから要注意です(泣)・・当方独自のヌメヌメ感を感じるシットリしたトルク感は、それら「光沢剤/研磨剤/化学反応」の類を一切利用しない磨き研磨により実現している特異なトルク感であり、巷で流行る「分解整備済」とは全く異なる完全解体を前提とした製品寿命の延命化が最終目的です(笑)

もちろんそれらの根拠として「当時製産時点に使っていたであろう成分/配合の分類に可能な限り近い黄褐色系グリースだけを使う」事をその前提と据えており、今ドキ流行っているシリコーン系「白色系グリースの何♯ (番)」などを謳って整備するのは以ての外で(泣)、そのような整備は「製品の延命処置」からはまさに逆行した所為と指摘せざるを得ません(涙)

実際それらシリコーン系「白色系グリース」が塗布されている個体を数多く確認していますが
距離環を回した時のトルク感は「ツルツルした感触」しか感じず、合わせてピントのピーク/山の前後微動に於いて、意識せずとも微動してしまう使いづらささえその印象として残るので、はたしてそれで撮影に没頭できる操作環境を真に提供できているのかとの疑念さえも湧いて
きます(笑)

その意味でも整備で塗布するグリースの問題は、製産時点/設計概念に配慮した内容だけに留まらず、組み上げられたオールドレンズの使用感にまで気配りした概念がそこには介在し、結果的に「製品寿命の延命化」に到達できていれば、なおさらに最高ではないかとのポリシ~が
根底にあったりするのが当方が施すDOHそのものなのです(笑)

↑塗布したヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」を使い、当方独自のヌメヌメッとしたシットリ感漂う軽めのトルク感で、掴んでいる指の腹に極僅かにチカラを伝えるだけでピント面の前後微動が適うトルクに仕上げられており、抜群の操作性を実現しています(笑)

当初バラス前の「ウレアグリース」による擦れ感の印象は多少改善できています。またこのモデルのピントのピーク/山の前後動を勘案して「当初より軽めのトルク感」に仕上げています・・申し訳ございません。

↑総じてご報告すべき瑕疵内容は残っていないとの判定ですが「絞り環の前後左右方向でのガタつきは完全解消していない」点と、光学系内の微細な点キズ数点、及び距離環を回すトルク感の違い、などなど、ご納得頂けない要素は減額システムをご利用下さいませ・・申し訳ございません。

オーバーホール/修理ご依頼者様皆様に告知しているとおり、もしもお届けしたオールドレンズの仕上がり状況にご満足頂けない場合は、そのご納得頂けない要素に対して「ご納得頂ける分の金額をご請求金額より減額」下さいませ。
減額頂ける最大値/MAX額は「ご請求金額まで (つまり無償扱い)」とし、大変申し訳御座いませんが当方による弁償などは対応できません・・申し訳御座いません。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/ピタリの位置です)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

被写界深度から捉えた時のこのモデルの無限遠位置を計算すると「焦点距離50㎜開放F値f2.8被写体までの距離35m許容錯乱円径0.026㎜」とした時、その計算結果は「前方被写界深度17m後方被写界深度∞m被写界深度∞m」の為、20m辺りのピント面を確認しつつ、以降後方の∞の状況 (特に計算値想定被写体の35m付近) をチェックしながら微調整し仕上げています。

・・一言に無限遠位置と述べてもいったいどの距離で検査したのかが不明瞭です(笑)

↑当レンズによる最短撮影距離70cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。また付属のフードを装着状態で撮影しています。

↑絞り環を回して設定絞り値「f4」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f5.6」で撮っています。

↑f値「f8」に上がっています。

↑f値「f11」での撮影です。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。極々僅かに「回折現象」の影響が現れ始めているでしょうか。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。

今回のオーバーホール/修理ご依頼、真にありがとう御座いました。既に本日梱包しクロネコヤマト宅急便で返送して御座います。どうぞよろしくお願い申し上げます。