◎ OLYMPUS (オリンパス光学工業) OM-SYSTEM E.ZUIKO AUTO-T 100mm/f2.8《中期型》(OM)

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※解説とオーバーホール工程で使っている写真は現在ヤフオク! 出品中商品の写真ではありません

今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、OLYMPUS製
中望遠レンズ・・・・、
OM-SYSTEM E.ZUIKO AUTO-T 100mm/f2.8《中期型》(OM)』です。


今年2020年についにOLYMPUSは映像事業を分社化し日本産業パートナーズに譲渡すると発表しましたが、本当に悲しいニュースです。今回扱うモデルもそうですがこの「OM-SYSTEM」の登場から約半世紀、いまだにまるで当時のカメラ屋さんに並んでいたかの如く高品質な状態を維持した個体が数多く市場流通していると言う、ちょっと他社光学メーカーの当時のオールドレンズと比較すると俄に信じがたい現況ですが、そもそもが「宇宙からバクテリアまで」と言う企業理念の下、徹底的にこだわって一切の妥協を排してひたすらに追求を続けた、その「小さなモノ造り」の気概が、いまだにオールドレンズを手に取ると感じられるだけに、本当に残念でなりませんね(涙) 消滅したワケではないので不幸中の幸いですが、時代の流れを感じずには居られません(涙)

当方などは足繁く毎日のように会社の帰りに夜遅くまで開いている近くのカメラ屋さんまで 足を運んでいたので(笑)、いまだにガラスケースの中に鎮座する「OM-1」の勇姿が目に焼きついていて消えませんね (軍艦部の尖り頭が誇らしげに見えてました)(笑)

古き良き時代・・昭和・・に感慨深く感じてしまいます(笑)

何と表現すれば良いのか・・戦後のあの時代と言うのは「熱気」を感じた時代だったとでも 言いましょうか、会社の大小にかかわらず皆がある一つの方向に向かって一目散に駆け抜けていったような、そんな情熱と共に懐かしさも感じ得ます (当方などはパンタロンのジーパンを履いてましたが)(笑) テレビと言えばもちろんブラウン管の時代ですから、青春モノの番組にカジリ付いて感激していたのを覚えていますョ (中村雅俊の唄が聞こえてきそう)(笑)

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今回初めての扱いになりますが、1973年にOLYMPUSが発売した一眼レフ (フィルム) カメラ「OM-1」の登場に合わせて、そのタイミングで出揃っていたオプション交換レンズ群の中の中望遠レンズです。
(右写真はOM-1と標準レンズ50mm/f1.8)

今回扱うモデルは中望遠レンズ群としては下位格版であり普及価格帯の戦略製品のほうになりますが、いまだに銘玉中の銘玉として人気が絶えない「ZUIKO AUTO-T 100mm/f2」と言う上位格版の中望遠レンズがあります。

開放f値が「f2」と明るい分、大口径の光学系を実装してきた事から 必然的に筐体サイズがOLYMPUSの中にあっては大型です。

光学系構成も6群7枚と贅沢ですが、最も特異な要素は「昇降筒を内包する光学系」と言えます。「昇降筒」とはそのコトバのとおり光学系内で任意の群だけが独立して直進動する可変式の光学系です。

従って開放f値だけで捉えてしまうと「f2.0 vs f2.8」の僅かな差に見えますが、実際は全く別モノの設計概念で作られているこだわりの中望遠レンズ「100mm」とも言えますから、自ずとその描写性も別次元のレベルです。

ところが今まであまり気にしていなかったのですが、この上位格版「100mm/f2」モデルの 登場時期が「???」でした。調べてみるとフィルムカメラ「OM-1」の登場タイミングにはまだ発売されていなかった事が分かりました。

↑上の一覧は一眼レフ (フィルム) カメラ「OM-1」の取扱説明書に掲載されているオプション交換レンズ群の中の中望遠レンズ部分だけを抜粋しています。ここには「100mm/f2」が載っていません。確かに筐体意匠を見るとこの頃の「前期型」に見られる「銀枠飾り環」が上位各版「100mm/f2」にはありません (つまりその後のタイプだと言える)。

↑今度はその後の1975年に発売された一眼レフ (フィルム) カメラ「OM-2」の取扱説明書から、同様にオプション交換レンズ群の
中望遠レンズ群抜粋です。
(右写真はOM-2と標準レンズ50mm/f1.8)

ところがここにもやはり「100mm/f2」の掲載がありません。さらに一覧を見るとチラホラと「MCタイプ」のマルチコーティング化が進んでいる事が見てとれます。この頃の各オプション交換レンズ群を見ると、筐体に「銀枠飾り環が省かれ黒色鏡胴化している」時期にあたります。まさに「100mm/f2」はこの頃のタイプに近似している (レンズ銘板のモデル銘もZUIKO表記) のですが、記載がありません。

↑さらにその後の1979年に発売された一眼レフ (フィルム) カメラ「OM-10」の取扱説明書から、同様にオプション交換レンズ群の
中望遠レンズ群抜粋です。
(右写真はOM-10と標準レンズ50mm/f1.8)

一覧を見ると「MCタイプ」のマルチコーティング化がほぼ完了して いるように見えますが、しかし肝心な「100mm/f2」の掲載がやはり無いままです。

↑最終的にやっと見つけたのは、何と1983年発売の一眼レフ (フィルム) カメラ「OM-4」の カタログに載っていたオプション交換レンズ群一覧に初めて記載がありました。すると上位格版「100mm/f2」モデルには「MCタイプ」が存在しないことになり、且つ1980年以降のタイミングで追加で発売されたように考えられます

【モデルバリエーション】
オレンジ色文字部分は最初に変更になった諸元を示しています。

前期型1973年発売

筐体意匠:銀枠飾り環あり
コーティング:モノコーティング
光学系:5群5枚エルノスター型構成

中期型1975年発売

筐体意匠:銀枠飾り環無し
コーティング:モノコーティング
光学系:5群5枚エルノスター型構成
※(但し光学系は再設計されている)

後期型1980年発売 (?)

筐体意匠:銀枠飾り環無し
コーティング:マルチコーティング
光学系:5群5枚エルノスター型構成
※(但し光学系は再設計されている?)

モデルバリエーションとして捉えようとすると パッと見で「銀枠飾り環の有無」で判定できそうですが、しかし「MCタイプ」が「後期型」には含まれるので、単に筐体から「銀枠飾り環が消えた」だけの相違でも無さそうです。つまりマルチコーティング化に伴い諸収差の改善や解像度の 向上が推測できるので、必然的に光学系を再設計している可能性があります。
(都合2回再設計しているのか/まだ未扱いなので不明なまま)

 

今回オーバーホールのために完全解体して光学系を清掃する際に、当方によるデジタルノギスによる計測を各群で行いトレースしたのが右の 構成図です。

5群5枚の典型的なエルノスター型構成ですが、当初の「前期型」からビミョ〜に曲率や厚みなどが変わっています (一つ前の右側カタログ
の構成図と比較するとビミョ〜に違う)。



上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。

一段目
円形ボケが破綻して溶けていく様をピックアップしましたが、焦点距離100mmながらも大きな円形ボケの表出が苦手なようにも見えます (たまたま実写写真が無いだけなのか不明)。また円形ボケのエッジ自体が太目に現れますが、そもそも明確ではないのですぐに溶けてしまいます。光学系構成のエルノスター型は、本来3群3枚のトリプレット型からの発展系なので (今回のモデルで言えばトリプレットの前に2枚凸メニスカスが追加されているイメージ)、円形ボケが苦手な理由がちょっと不明です。

二段目
さらに背景ボケとして収差の影響を大きく受けている収差ボケを左側2枚にピックアップしましたが、やはりエッジが明確に出てこないのでそれほど醜い乱れ方にもなりません (どちらかと言うと大人しい印象)。そしてやはりこのモデルの特徴は、上位格版「100mm/f2」にも相通じる「マイルド感/優しさ感」を漂わす画造りが好ましい印象です。それはピント面が相当鋭く出てくるのですが、そのカリカリ感が誇張されずに自然で違和感が無いのが余計に安心して見ていられます。

三段目
本来ポートレート域ではありますが、それほど人物撮影が特異と言えるほどの印象にはなりません。むしろ下手すれば標準レンズのほうがもっと生々しい人物撮影ができたりしますから、決して特異なモデルでもなさそうな印象です。空気感/距離感を表現する立体的な描写性があるので (3枚目の小道写真) その辺を活かした撮影をすると素晴らしい1枚が残せそうです。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。上位格版「100mm/f2」に比べると遙かにコンパクトで同じ中望遠レンズ「85mm/f2」と大差ない筐体サイズから考えれば理に適った内部構造と構成パーツ点数です。もちろんこれらOMシステムのオールドレンズに共通する内部構造化が踏襲されているので、その整備作業/微調整は必須になりますから、決してシロウト向けではありませんね(笑)

↑絞りユニットや光学系戦後群を格納する鏡筒 (ヘリコイド:オス側) です。格納する光学系に深さがあるので、或いは鏡筒の繰り出し量が多いのでご覧のように鏡筒の深さが相当長い設計になります。

↑上の写真は絞りユニットのベース環です。絞り羽根はもちろんその他の制御系構成パーツもすべて取り外してしまった状態を撮っています。なかなかこの制御系の構成パーツまでバラしてしまう整備者がネット上を見ていても非常に少ないですが(笑)、経年劣化を考えると一度はバラして各構成パーツの状況をチェックする必要はあると考えます (実際今回バラしてみると相応に各構成パーツは経年劣化が進行している状況だった)。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

↑こちらの写真は前述の「絞りユニットベース環」にセットされる「開閉環」とその附随するアーム群です。ここの接続部分の経年劣化が進行していると、制御系パーツに附随する「捻りバネ」が弱ってしまい絞り羽根の開閉動作に支障を来すので、まずはこのアーム群の経年劣化進行を食い止める事が重要な話になってきます

特に2種類のアーム群をご覧頂ければ一目瞭然ですが「開閉アーム」側には「開閉環」と同じように「極微細な凹凸の梨地仕上げ」メッキ加工が施されているのが分かります。ところが一方の「制御アーム」側は無垢の真鍮 (黄銅) 材ですから、ここの設計者の意図を汲み取って整備できるか否かがメンテナンス時のポイントになってきます

↑またさらに鏡筒 (ヘリコイド:オス側) とその中に組み込まれる「制御環」を並べて撮っていますが、過去メンテナンス時の整備者はここに「白色系グリース」をベットリ塗ってくれました(笑)

と言うか、この当時のOLYMPUS製オールドレンズを見るとどのモデルもほぼ間違いなく近似した構造の設計を採っていますが、ほぼ100%に近い実例で過去メンテナンス時にここに
白色系グリース」が塗られています。

逆に言えば、設計者の意図をちゃんと把握して整備している人がまず以て居ないと言う哀しい現実です(笑) 何故なら、これらこの当時のOLYMPUS製オールドレンズはどのモデルもほぼ間違いなく鏡筒内部の絞りユニット自体に制御系パーツが組み込まれる設計なので (つまりこの当時のOLYMPUS製オールドレンズの共通設計概念/ポリシーとも考えられる)、その要素の ポイントに気が付いたかどうかが重要な話になります。

その解説をします。鏡筒内壁グリーンの矢印で指し示した箇所は「鏡面仕上げ」になっています。過去メンテナンス時に既にここに「白色系グリース」が塗られているので (ほぼ100%に近い個体が必ず塗られている) 既に経年劣化進行に伴い酸化/腐食/錆びしてしまいますが、 実際は「鏡面仕上げ」なのです。

一方そこに組み込まれる (鏡面仕上げの内壁部分に接触して回転する)「制御環」の接触壁部分 (ブルーの矢印) は、前述の「開閉環」などと全く同一の「極微細な凹凸を施した梨地仕上げ メッキ加工」の処理が施されています。

つまり何を言いたいのか???(笑)

工場で生産されていた時には、この「制御環」と鏡筒内壁が接触する事を (当然ながら) 見越してここに「グリースは塗布しない設計」として製産していた事が明白なのです。

にもかかわらず「接触して回転するから」と過去メンテナンス時に「白色系グリース」を塗ってしまうから、余計に経年劣化進行に伴い酸化/腐食/錆びが進んでしまいパーツ本来の機能を果たせなくなっています

ここが最大のポイントなのです。まず以てこの当時のOLYMPUS製オールドレンズで発生し得る「絞り羽根開閉異常」或いは「絞り羽根の戻りが緩慢」と言う不具合の根本原因が、何の事はなく過去メンテナンス時に塗布されてしまった「白色系グリースのせい」なのです(笑)

いったい何の為に整備しているのでしょうか・・???(笑)

↑絞りユニットの「ベース環」を組み上げて、且つ6枚の絞り羽根をセットしたところです。「開閉アーム」が本来のポジションにセットされて稼動状態になります (ブルーの矢印のように動く)。この上に右横のメクラを被せて絞り羽根が脱落するのを防ぐ設計概念です。

↑メクラを被せるとこんな感じに組み上がります。とても薄い絞りユニットなのが分かると思います (実測すると僅か4mm程の厚みしかない)。もちろんご覧のようにメクラ自体にやはり「極微細な凹凸状の梨地仕上げメッキ加工」が黒色艶消しで施されているのが分かります。

↑完成した絞りユニットをひっくり返して前玉側方向に位置する「各制御系パーツ」を撮りました。ご覧のようにビッシリと制御系パーツが組み込まれます。

ここでのポイントは前述した「捻りバネ (2本)」とスプリング (1本) です。これらが経年劣化進行に伴い弱ってしまうと「製品寿命」に至り「絞り羽根開閉異常を解消できなくなる」ワケですね(怖)

従ってこの絞りユニットに附随する制御系各構成パーツの経年劣化進行を食い止める必要があるワケです (つまり冒頭で解説した話そのモノ)

逆に言えば完全解体する理由がご理解頂けたと思います(笑)

↑こんな感じで絞りユニットが鏡筒 (ヘリコイド:オス側) 最深部にセットされます。その後 この上に (被さるように)「制御環」が入ります (グリーンの矢印)。

もちろん今回のオーバーホールではここにグリースなどは一切塗りません(笑) 要は設計者の意図通りに、もっと言えば工場での製産時点と全く同一の工程を経て組み上げていきます

↑完成した鏡筒 (ヘリコイド:オス側) を解説しています。まずこの絞りユニットを含めた「各階層の把握」がとても重要です。それぞれの階層にグリーンの矢印まで指し示しました。

第1階層:絞り羽根
第2階層:制御系 (各構成パーツのこと)
第3階層:連係系 (制御環のこと)

もちろん本来はこの次の第4階層として「光学系前群」がこの後セットされます。

すると「制御環」には「なだらかなカーブ」が備わり、その坂 (勾配) に「制御アーム」に附随する「カム」がカチンと突き当たる事で、その時の勾配に従い絞り羽根の開閉角度が決まる仕組みです。「なだらかなカーブ」の麓部分が開放側になり、坂を登りつめた頂上部分が最小絞り値側になります (ブルーの矢印)。

上の写真では「カム」が頂上部分に突き当たっているので、絞り羽根が最小絞り値まで閉じきっていますね。要はこの「カムがカチンと突き当たる」チカラが必要なワケで、それこそが 前述の「捻りバネ」の役目だったりします。

今回のオーバーホールではこれら鏡筒内部には (当然ながら) グリースの類は一切塗っていないので(笑)、今後将来的にグリースのせいで経年劣化が進む事がちゃんと避けられます

ちなみに 第3階層:連係系は、絞り環と連係接続する設計です (つまり絞り環操作時には
この制御環が鏡筒内部で回っている事になる
)。従ってここに過去メンテナンス時のように「白色系グリース」が塗られていると「光学系前後群の間にグリースが存在する」事になり、どう考えてもあり得ない話だと感じないでしょうか?(笑) 何故なら、フツ〜絞りユニットにグリースは塗りませんョね?(笑) むしろ絞り羽根の油染みを気にしているくらいですから、そのような話なのに平然とグリースを塗っているのが過去メンテナンス時の整備なのだと申し上げているのです(笑) 今現在もそのような整備が続いているのかどうかは敢えて言いませんが(笑)

↑距離環やマウント部を組み付ける為の基台です。焦点距離100mm分の鏡筒繰り出し量を考えると意外と薄いです。

↑ヘリコイド (メス側) を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

↑完成している鏡筒 (ヘリコイド:オス側) を、やはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルでは全部で9箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

するとヘリコイド (オス側) ネジ山の途中両サイドに「直進キーガイド」なる「」が用意されています (ブルーの矢印)。ここに「直進キー」と言う板状パーツが刺さるので鏡筒が繰り出し/収納する原理です。

直進キー
距離環を回す「回転するチカラ」を鏡筒が前後動する「直進するチカラ」に変換する役目

↑完成したヘリコイド (オスメス) をひっくり返して裏側 (つまり後玉側方向) から撮影しました。ちゃんと両サイドに「直進キー」が刺さっていますね。

するとここまでのヘリコイド (オスメス) のネジ込みで明白ですが、他のこの当時のOLYMPUS製オールドレンズ同様、基台の厚みが薄いので距離環を回す時の抵抗/負荷/摩擦は基本的に増大してしまいます。さらに設計思想からして「前玉側に絞り環が配置されている」ワケですから、必然的にマウント部内部にまで連係が必要です。

何を言いたいのか???

つまり相当真剣にトルク調整をしないとOLYMPUS製オールドレンズの距離環を回す操作性はどんどん重くなっていってしまうと言う話です(笑) 逆に言えばご落札者様お一人様だけが確認できますが、これだけ軽い操作性で仕上がっていること自体が「所有欲」をより充たす要素にもなっているとも言い替えられると考えます(笑)

↑ここで先距離環を仮止めしてしまいます。

↑絞り環もセットします。

↑こちらはマウント部内部ですが、既に各構成パーツを取り外して当方による「磨き研磨」を終わらせた状態で撮っています。当初バラした直後はこのマウント部内部にも過去メンテナンス時の「白色系グリース」が塗られており、且つ経年劣化進行に伴い「濃いグレー状」に変質していました (一部マウント部内壁に緑青発生)。

↑取り外していた各構成パーツも個別に「磨き研磨」を施し組み込みます。もちろん今回のオーバーホールではここにもグリースの類は一切塗布しません。

どうしてなのか???

赤色矢印で指し示したように各構成パーツの駆動条件として「鏡面仕上げのベース環の存在」があるからです。つまりここも設計者の意図で「鏡面仕上げ」にする事で各構成パーツの滑らかな駆動を実現していたのに、過去メンテナンス時に塗布した「白色系グリース」のせいで 経年劣化進行に伴い酸化/腐食/錆びてしまいました。

結果、このマウント部内部に附随する「スプリング (1本)」と「板バネ (1枚)」が弱ってしまいやはりこのままでは「絞り羽根の戻りが緩慢」という不具合に結びついてしまいます。

↑完成したマウント部を基台にセットします。この後は光学系前後群を組み込んでから最後に無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わりました。とても滑らかで軽い操作性で回せる距離環に仕上がり、極軽いチカラだけでピント合わせの微動が可能です。絞り環も小気味良く確実な操作性で絞り羽根の反応も俊敏です。もちろん光学系内はスカッとクリアで透明です。

出品の個体はレンズ銘板に「E.ZUIKO」と光学系の実装枚数を示す暗号が附随するので「前期型」の要素を持ちますが、しかし「銀枠飾り環が省かれている」ので「中期型」になります。おそらく「中期型」としては最初の時期に近いロットの出荷品ではないかと考えられますが、距離環のローレット (滑り止め) に印刷されていた暗号は「97サ」なので、1979年7月に生産された坂城事業所生産分ではないかと推測しています。従ってもちろんコーティング層もモノコーティングのままだと考えられます。

↑光学系内は驚異的に何も無く、スカッとクリアでLED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無です。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

↑光学系後群も第5群の後玉だけになりますがスカッとクリアでLED光照射で極薄いクモリが皆無です。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:10点、目立つ点キズ:6点
後群内:13点、目立つ点キズ:8点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(極微細で薄い2ミリ長が1本あります)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズなし)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・光学系内は透明度が非常に高いレベルです。
(LED光照射でも極薄いクモリすら皆無です)
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑6枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に正六角形を維持」したまま閉じていきます。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

【 ご 注 意 】
ヤフオク! 出品者の中に「抗菌剤による清掃済」を謳って出品している出品者が居ますが、市販の抗菌剤の類 (液体/スプレー式共に) を筐体の外装金属に 塗布するのはおやめ下さい。将来的に筐体外装金属の酸化/腐食/錆びを助長 してしまいます (抗菌剤に含まれる成分により悪影響を来すから)。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人により「軽め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。
・距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
・絞り環操作も確実で軽い操作性で回せます。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。

↑筐体外装の経年による使用感 (微かな薄い擦れ) などが無ければ、デッドストック品で「新品同様品」と言われても信じてしまうほどに素晴らしい仕上がりになっています(笑) 特に焦点距離100mmなので、ピント合わせ時の微動にこれだけ軽い操作性が伴うと「撮影に専念できる愉しさ」を存分に味わう事ができると思います。

↑純正のスナップ式樹脂製前キャップと樹脂製後キャップが附属します。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離1m付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありません。

この実写はミニスタジオで撮影していますが上方と右側方向からライティングしています。その関係でフードを装着していない為に絞り値の設定によりハレ切りが不完全なまま撮影しています。一応手を翳していますがハレの影響から一部にコントラスト低下が出てしまうことがあります (簡易検査具による光学系検査を実施済で偏心まで含め光軸確認は適正/正常)。

↑絞り環を回して設定絞り値「f4」で撮影しました。

↑さらに回してf値「f5.6」による撮影です。

↑f値は「f8」に変わっています。

↑f値「f11」になりました。

↑f値「f16」です。

↑最小絞り値「f22」での撮影です。最小絞り値まで絞り羽根が閉じきっても「回折現象」の影響を感じないので、確かに普及価格帯の戦略商品なのかも知れませんが、相当な光学系のポテンシャルと当方はむしろ評価しています。なにしろ標準レンズ並のこのコンパクトさは堪りません(笑)

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

【当方のオールドレンズ出品について】
当方によるオーバーホール済でオールドレンズを出品していますが、無限遠位置など含め0.1mm単位や10倍の精度による電子的で厳密/厳格な検査を行い微調整していません (簡易 検査具による目視検査による微調整のみ)。デジカメ一眼/ミラーレス一眼にマウントアダプタ経由装着しお使い頂く事を前提にしている為、マウントアダプタとの相性問題が顕在する以上無限遠位置なども僅かにオーバーインフの設定で仕上げています。

それら0.1mm単位や10倍の精度の厳密/厳格な検査を期待される方は当方出品オールドレンズをご落札頂かぬようお願い申し上げます

またお届けした商品に対するクレームはヤフオク! 取引ナビのメッセージ欄でご申告頂ければどのような理由でも必ず「返品/キャンセル」をすぐにお受けしています。

商品の返送:クロネコヤマト宅急便をご利用頂き「送料着払い」で返送可能
※ご返金代金:ご指定の銀行お口座宛「商品代金+当初の送料+手数料/迷惑料」合計額を返金

ご迷惑をお掛けした、或いは返送に掛かる面倒を強いてしまったお詫びとして、ご落札者様がご納得頂ける「手数料/迷惑料」をご掲示頂き、その代金を加算した金額ですぐに返金させて頂きます。

【 お 願 い 】
フィルムカメラでの使用をクレーム対象としません (フィルムカメラで使う つもりで整備していません)。また当方に対する攻撃的な内容のクレームも
ご勘弁下さいませ (当方の性格上、すぐに立ち直れません)。
ご落札者様のご指摘内容に反論する事はありません。全てご落札者様がご納得頂けるようご指示に100%従います。