◎ YASHICA (ヤシカ) SUPER – YASHINON 5cm/f1.8(M39)

yashica-logoレンズ銘板の「SUPER」繋がりと言うことで、今度はヤシカ発売の「SUPER-YASHINON 5cm/f1.8 (M39)」を整備してオーバーホール済の上で出品してみます。

フィルムカメラのことをほとんど知らないので (ミラーレス一眼からしか使っていないため) 当レンズがセット用レンズとして対象になっていた「YASHICA 35 YF (fair-way)」と言うレンジファインダーカメラのことも全く分かりません。ピンと来ないというのは、なかなか書くことがなくって困りますね(笑)

当モデルの当方での扱いは今回が初めてです。バラしてみて例によって「富岡光学製」なのかと、うさん臭く疑って掛かりましたが、その確たる「証」は発見できませんでした。構造化から考えても「富岡光学製」ではないと思われます・・というのも非常に工程数を減らした簡略化が進んでおり、意外と調整箇所もなく容易に組み立てられました。「富岡光学製」の場合、この当時のモデルでは間違いなく「意味不明の構造化」が成されており、ムダにパーツ点数が多く工程を経る必要があり、その調整箇所が多いのが特徴ですから・・恐らく当時ヤシカの岡谷工場内製と予測できます。

当レンズに関しては、英語圏まで含めてネット上を当たってみてもほとんどヒットせず謎のモデルなのですが、その写りについてもたいした情報はありません。整備が終わり組み上がったレンズを当方にて実写してみましたが、決して悪いモデルでもなくよく写り、ネット上の解説でチラッと見た立体的な表現性に於ける評価に納得できると感じました。なかなか端正な写りをするモデルでピント面のエッジの線が細いので「繊細な画」的な終わり方なのかと思えばそうでもなく、意外と気になる描写をするモデルでした。

ボケ方が幾通りかあるので少々クセ玉的要素を含んでいますが、むしろそれがオールドレンズらしくオモシロイとは思います。今回の個体は光学系の状態が内外共に非常に良い状態を維持しているので、珍品に入るのかどうかよく分かりませんが、如何でしょうか・・?


オーバーホールのために解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載しています。

すべて解体したパーツの全景写真です。

SY518(0919)11ここからは解体したパーツを実際に使って組み上げていく組立工程の写真になります。

構成パーツの中で「駆動系」や「連動系」のパーツ、或いはそれらのパーツが直接接する部分は、すでに当方にて「磨き研磨」を施しています (上の写真の一部構成パーツが光り輝いているのは「磨き研磨」を施したからです)。「磨き研磨」を施すことにより必用無い「グリスの塗布」を排除でき、同時に将来的な揮発油分による各処への「油染み」を防ぐことにもなります。また各部の連係は最低限の負荷で確実に駆動させることが実現でき、今後も含めて経年使用に於ける「摩耗」の進行も抑制できますね・・。

まずは絞りユニットや光学系前後群を組み付けるための鏡筒です。このモデルではヘリコイド (オス側) は独立しており別に存在します。

SY518(0919)12この鏡筒をヘリコイドに固定する方法として「一切ネジ止めしない」「固定環で前玉側から締め付け固定する」と言うのがひとつの「富岡光学」を示す要素なので、当レンズもそのような構造化になっており一瞬「富岡光学製」が頭を過ぎりました・・。

SY518(0919)13絞り羽根を実際に組み付けて絞りユニットを完成させます。この絞り羽根の「絞り方」が「直線的」で「AUTO YASHINON 5cm/f2 (原型はAUTO TOMINON C. 5cm/f2)」や旭光学工業の「Auto-Takumar 55mm/f1.8」などと同一なので「富岡光学製」の可能性もありますが、確たる証拠は掴めません。一応「絞り羽根の形状」も当方の写真データベースで当たってみましたが、似た要素を感じる形状のモデルは発見できませんでした。

SY518(0919)14この状態で鏡筒を立てて撮影しました。ここからクリック感のある「絞り環」を組み付けていきます。

SY518(0919)15各絞り値での「キー」と言う「溝」が実は上の写真のクロームメッキのフィルター枠環の内部に刻んであるのですが、このモデルではその直下の「絞り環 (黒色)」と共に一気に作業を進めなければ一切固定できない構造になっており、アッと言う間に絞れ環の機構部が組み上がってしまいました・・なので組み上げていく途中をお見せすることができません。

SY518(0919)16光学系の前後群をここで鏡筒に組み付けてしまいます。前玉は非常にキレイで極僅かなカビ除去痕としての極微細な点キズが数点あるだけで、キズを探そうとしても見つかりません・・。

SY518(0919)17上の写真はあまりにもキズが見つけられないのでワザと真横から覗いたりしましたが (疑い深い)、やはり記載すべきキズや汚れは見当たりません・・。

【光学系の状態】(順光目視で様々な角度から確認)

カビ除去痕としての極微細な点キズ:前群内5点目立つ点キズ1点、後群内:3点、目立つ点キズ1点。コーティング経年劣化:前後群なし、カビ除去痕:あり、カビ:なし。ヘアラインキズ:第2群と第3群にLED光の照射でどうにか確認できるレベルの極微細な薄いヘアラインキズ各1本あり。その他:特になし。光学系の状態非常に良いです。光学系内はLED光照射でようやく視認可能レベルの極微細な拭きキズや汚れ、クモリもありますがいずれもすべて写真への影響はありませんでした。

次は光学系後群です。

SY518(0919)18後玉までキレイです・・本当なのか?!(驚)

SY518(0919)19唯一カビ除去痕としての極微細な点キズが上の写真のようにポツポツとある程度なので、非常にキレイでクリアで申し分のない状態です。もちろん、このように疑って掛からずとも「既に自分でバラして整備している」ので知ってはいるのですが・・。

光学系の状態を撮影した写真は、そのキズなどの状態を分かり易くご覧頂くために、すべて光に反射させてワザと誇張的に撮影しています。実際の現物を順光目視すると、これらすべてのキズはなかなか容易には発見できないレベルです。

それで思い出しました・・。以前のクレームで「LED光照射して整備していると書いてあるのにキレイではない!」と言うのがありました。これは人の感覚の一種なのかも知れませんが、「LED光照射の下に整備を実施」と書くと「LED光を照射して確認しつつキズや汚れが無い状態までキレイに清掃が完了している」と思い込んでしまうのですね・・(笑)

確かにそう言うニュアンスに受け取られてしまうのかも知れませんが、あくまでもLEDライトを照射した明るい状態で清掃の確認をしているだけで、その環境で清掃を施したからと言って、すべての汚れやキズが「消失している」などと言うことは起きませんね・・(笑) オールドレンズの初心者の方に意外と多いクレームの内容でした。

話が反れましたが、当レンズでは鏡胴は「前部」と「後部」の2つに分かれ、「前部」はこれで完成したことになります。次は「後部」に進みます。

SY518(0919)20光学系の状態が良すぎるので、写真は上記の写真だけで終わりです。ここからは駆動系に入っていきます。まずは「真鍮 (黄鋼) 製 (ガンメタル)」のヘリコイド (オス側) です。

SY518(0919)21このモデルではヘリコイド (オス側) のさらに内側にフリーで回転だけする「内筒」がもうひとつ入っているので、それを組み付けた状態の写真です。上の写真でボケていて見にくいですが「シルバー色」の真鍮 (黄鋼) 製の筒が内筒です。どんなにキッチリと当方にて「磨き研磨」を施していても、非常に硬い「真鍮 (黄鋼) 製」のパーツが互いに接する部分なので、すぐに噛んでしまい動かなくなるくらいの負荷が掛かります。当然ながらヘリコイドグリスを極微量ながらも内筒には塗布しておきます。

SY518(0919)22指標値環に先のヘリコイド (オス側) を組み付けます。

SY518(0919)23ピントレバーを装備した距離環を組み付けて、この上にブラックの距離環用ローレットをセットすれば鏡胴「後部」も完成です。呆気ないくらいの工程数で、調整箇所も上の写真の「無限遠位置調整」の極僅かな調整穴が用意されているだけで、ほとんど何も調整の必要がありません。初心者向けと言いたくなるくらいですね・・。

ただし、この構造化が少々納得できる方でないと組み立ての手順や仕方が分からないと思います・・ワリと一気に進めてしまう方式を採っているので途中を撮影できません。

SY518(0919)24もう完成してしまいました・・。上の写真は距離環ローレットの縁の「経年の使用に於けるハガレ」が相応にあるのを拡大撮影しています。普通にギザギザの山や縁が僅かに白くなっている程度なので醜い箇所や凹みや打痕なども一切ありません。

SY518(0919)25真鍮 (黄鋼) 製なのでメッキが薄く極微細な「錆」も出ています。当然ながら当方にて既に「光沢研磨」が終わっているので、この梨地仕上げの指標値環や距離環もすべて美しくキレイに輝いています (錆のハガレはそのままあります)。

写真の掲載数が多く、大変申し訳御座いませんが・・最近「神経質」な方が増えてきており、ちょっとしたコトでも「記載が無い」と当方の返品システムを以て返品キャンセルを要請してくるので・・困りものですね。そもそも「オールドレンズ」なのだと言うコトが頭の中から消えてしまっているようです・・(笑)

人間、ひとつの要求がクリアされると次が出てくるもので・・整備済でオーバーホールした商品を出品しているにも拘わらず、まるで「今ドキのデジタルなレンズ」の如く事細かにチェックしてクレームしてくる人も居ます(笑) そもそも整備して出品しているコト自体が珍しいことなのですが、その部分はスッカリ「越えてしまったハードル」になっているようですねぇ。

SY518(0919)26上の写真のようにフィルター枠にも極微細なちょこっとした「錆」がありますので・・ヨロシクです。

当方にて「磨き研磨 (内部パーツが対象)」「光沢研磨 (外観上の研磨)」「光学系清掃」「グリスアップ」など実施していますが、研磨したり清掃したら元々あったキズやハガレ、凹みやスレなどが「消えてしまう」ワケでは決してありませんので・・(笑) ヘリコイドのネジ山の摩耗などもどうしようもありませんし、当方ではワザとグリスで誤魔化すこともしていません (なのでゴリゴリ感のある仕上がりもあります)。

オーバーホール (整備済) と言うのは、すべての問題や不具合が一切消滅するまで整備しているワケではありませんので、勘違いしないよう切にお願い申し上げます・・。

そのような整備を期待される方はプロの「カメラ専門店」様にてお買い求め頂くのが良いかと思います・・当方は「アマチュアの方々」の足元にも及ばない程度のスキルですので、そこも勘違いしないようヨロシクお願い申し上げます。

DOHヘッダー

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ここからは組み上げが完成した出品商品の写真になります。

SY518(0919)1市場でもあまり見かけないモデルかとスッカリ信じ込んでしまいいい気になって調達してしまいましたが、何のコトはありません。レンジファインダーカメラとセットで出品されているのですね・・(笑) この個体には純正の金属製被せ式前キャップと非純正の金属製後キャップが附属しており、ありがたいです。

SY518(0919)2光学系の状態は「ズバ抜けて」良いです! もちろんLED光照射の下チェックして頂ければ、相応にカビ除去痕やヘアラインキズや汚れなどが浮かび上がりますから・・そこはご容赦を (既に半世紀以上経過したオールドレンズですので)。よく見えませんでしたが中央付近に微細な「気泡」もあるかも知れません。

SY518(0919)3絞り羽根は9枚ですが「真円」にまではならずとも近いレベルの「円形絞り」です。光学系の仕様上、ボケ味にクセもありますからこれはありがたいですね。単に「円形絞りです!」などと記載すると「真円じゃないじゃないか。円には角が無いだろ?」と言ってくる人も居ました・・(笑) いろいろありますね・・。

ちなみに、上の写真で光学系に「キズ」があるように見えているのはキズではなく「絞り羽根」上のキズですのでお間違いのないように・・。光学系全群は非常にキレイでクリアです。

ここからは鏡胴の写真です。距離環や絞り環のローレットの縁や山には経年相応の「ハガレ」があり、当方にて一部着色していますがご使用中にすぐにとれると思います。

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SY518(0919)7【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)

距離環や絞り環の操作は大変滑らかになりました。距離環のトルク感は滑らかに感じ完璧に均一です。ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
【外観の状態】(整備前後拘わらず経年相応中古品)

距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。

SY518(0919)8絞り環のクリック感もバッチリ調整できました。指標値位置もピッタシです。外観上の「光沢研磨」も真鍮 (黄鋼) 製なりに一生懸命磨いたつもりです。ヘリコイドグリスはM39ライカマウントの場合、少々重めの粘性を使わないとスリップするので (真鍮 (黄鋼) 製ヘリコイドなので) 僅かに重めですがピント合わせの際には軽いチカラでちゃんと楽なピント合わせができるようにしてあります (磨き研磨の効果です)。

SY518(0919)9光学系後群のみならずマウント部もキレイです。それなりに愛用されたのでしょうが、大事に使っていたのが分かる状態の個体です。ちなみにマウント面からの突出は「7.5mm (目測)」くらいですので「○○のボディで使えますか」の類のご質問もご容赦下さいませ。当方はカメラのことは皆目分かりませんので・・。

SY518(0919)10当レンズによる最短撮影距離1m附近での開放実施です。ネット上ではほとんど実写の掲載が見受けられませんが、なかなか素晴らしい描写性を持っているモデルだと思います。開放f値「f1.8」と当時では「明るい」部類に入っていると思いますが、極端なハレも出ずに立派です。コントラストも相応に高くメリハリ感のある画造りで、発色性は階調のダイナミックレンジが広いので余裕を持った写りをはき出してくれる・・なかなかいいモデルではないでしょうか? ピント面がとても鋭く、且つエッジが細いのでボケ味はそれに呼応して明確なエッジを出してきますし、光学系の仕様上グルグルボケが出現するシーンもありますから、撮影スキルを楽しむにはうってつけのモデルと思います。当方は写真の感性の素質が全く無いので下手くそな写真ばかりですが、今回初めての扱いにも拘わらず、当方は気に入ってしまいました。

なお、レンズ銘板には「C」の類の刻印がありませんが、光学系をバラしたところ「アンバー色」と「パーブル色」に輝くコーティングが施されており「C」付と考えて良いと思います。いわゆる「モノコーティング」のことですが、文字はともかく、赤色の刻印に拘る方もいらっしゃるので・・。