◎ mamiya (マミヤ光機) AUTO mamiya/sekor 55mm/f1.4 (silver)《前期型》(M42)
(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
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※解説とオーバーホール工程で使っている写真は現在ヤフオク! 出品中商品の写真ではありません
今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、マミヤ光機製
標準レンズ・・・・、
『AUTO mamiya/sekor 55mm/f1.4 (silver)《前期型》(M42)』です。
ある商品で発売はA社の製品だが、実は製造しているのはB社等と言う話が数多くあります。特にこの当時のオールドレンズを考察する時、どうしても避けて通れない問題がこの「発売元/製造元」の関係です。ありがたいことに発売元の会社がその商品の製造元を告知していて くれれば気分もスッキリなのですが(笑)、何も案内しないままに数十年が過ぎてしまい、いつの間にか廃れてしまった商品なのがオールドレンズですね(笑)
すると今頃になってあ〜だこ〜だと発売元と製造元の関係で騒いだりしている始末ですが(笑)その中でレンズ銘板に2つの会社名が刻印されているオールドレンズが極僅かに存在します。
◉ ダブルネームモデル
レンズ銘板に発売元メーカー名の他に製造元メーカー名まで附随して表記したモデル
【TOMIOKAダブルネームモデル】(富岡光学製OEMモデル)
① AUTO TOMINON 55mm/f1.2 TOMIOKA (富岡光学)(上左)
② AUTO YASHINON 55mm/f1.2 TOMIOKA (ヤシカ)(上中央)
③ AUTO CHINON 55mm/f1.2 TOMIOKA (チノン)(上右)
④ COSINON AUTO 55mm/f1.2 TOMIOKA (コシナ)(下左)
⑤ AUTO REVUENON 55mm/f1.2 TOMIOKA (Revue)(下中央)
⑥ AUTO YASHINON DS-M 55mm/f1.2 TOMIOKA (ヤシカ)(下右)
1960年代後半になると、海外輸出モデルまで含めたこの当時富岡光学が供給していたOEM
モデルは数多く存在し、当時最速の「55mm/f1.2」モデルならレンズ銘板に「TOMIOKA」銘を伴う「ダブルネームモデル」があります (①のみ発売/製造が同一のいわゆる原型モデル)。
上に列挙したモデルは全て、レンズ銘板に「TOMIOKA」銘を伴うダブルネームのモデルですが、その仕様は一様に同じで (右記参照)、最後のヤシカ製「DS-M (右下)」モデルだけが
マルチコーティングで他はモノコーティングです。
ところが開放f値「f1.4」モデルになると少なく「AUTO CHINON 55mm/f1.4 TOMIOKA (M42)」しか思い浮かびません 。
(左写真は過去に扱った個体からの転載写真)
実はここまでの考察で既に「当方自身がトラップに填っていた」ことが明白です。皆さんは如何ですか?(笑)
このトラップに最近気が付いてようやく考察が進んだワケですが(笑)、この「TOMIOKA」銘入りのダブルネームモデルに関して、ネット上の解説を調べてみると同様にトラップに填っている方々を多く見かけます(笑) そのトラップとは、これら「TOMIOKA」銘入りモデルが一番最初に登場したのだという「思い込み」です。
一番最初に造られていた富岡光学製モデルだけがレンズ銘板に「TOMIOKA」銘を刻むダブルネームモデルだと、勝手に当方は思い込んでいたワケです(笑) 逆に言えばその後に登場した 富岡光学製OEMモデルのオールドレンズは、単にレンズ銘板から「TOMIOKA」銘が外された (省かれた) のだと言う、それもやはり「思い込み」だと言えますね。
違うのです。「TOMIOKA」銘の富岡光学製OEMモデルは「途中から発売されたモデル」で ある事に気が付きました。
【TOMIOKA銘入りモデルの登場時期】
↑上の写真 (3枚) は、冒頭「55mm/f1.2」TOMIOKA銘ダブルネームモデルがセットレンズとして位置付けされていた、当時の一眼レフ (フィルム) カメラ取扱説明書の写真です。
ところが、各社が当時発売した一眼レフ (フィルム) カメラを1960年から順次調べていくと、上記3つのモデルはいずれも途中で登場していることに気がつきます。
例えばヤシカ製フィルムカメラは「PENTA J」シリーズ (1961年発売) から始まる一連の自社製一眼レフ (フィルム) カメラのセットレンズに「AUTO YASHINON-DX」シリーズを据え 続けました。この「DXシリーズ」には開放f値「f1.2モデル」は存在しません。さらにマルチコーティング化された「DS-Mシリーズ」は開放f値「f1.2」モデルも含め、この時の「TL ELCETRO-X/ITS」モデル (1969年/1970年発売) の時のみセットレンズとして設定されて、その後に発売されたフィルムカメラは再び「DXシリーズ」に戻ってしまいました (従って開放
f値:f1.2モデルが取扱説明書からも再び消えている)。
同様にチノン製一眼レフ (フィルム) カメラを調べても同じ状況で、当初「CHINON M-1」の発売時 (1972年) でもセットレンズに開放f値「f1.2」モデルがありません (f1.4/f1.8のみ)。上の右端「CHINON CE MEMOTRON」が発売されたのは1974年です。
残念ながらコシナ製「TOMIOKA」銘入りモデルだけは調べても不明なままでしたが、もしかするとセットレンズとしては一切供給されずに単発でオールドレンズだけが市場に流通したのかも知れません (セットレンズはTOMIOKA銘を伴わない他のモデルやf1.4/f1.8のみ)。
また旧西ドイツの写真機材を扱う通信販売商社「FOTO-QUELLE」のブランド銘である「Revue (レビュー) シリーズ」は多くの光学メーカーからOEMの供給を受けていますが、 その中で「TOMIOKA」銘入り「f1.2」はやはりチノンからの供給になっています。チノン製フィルムカメラ「CHINON CE MEMOTRON II」を原型モデルとした「REVUEFLEX 5005 (1976年発売)」ですね。
これらの調査から明確になったのは「TOMIOKA刻印モデルは1969年〜1976年辺りの登場」であり、それ以前に数多くのOEMモデルが富岡光学製として既に供給されていた事になり、 ダブルネームモデルが一番最初ではなかったことになります(笑)
もっと深く考察するなら、当時富岡光学は経営難に喘いでおり1968年に大手顧客先のヤシカに吸収合併しています。すると年代として捉えた時、吸収された後の1969年からヤシカ製一眼レフ (フィルム) カメラのセットレンズとして「TOMIOKA銘入り」でブランドを確立する狙いで発売されたのかも知れません。
ちなみにそのヤシカも実は既に経営難に陥っており、ついには1983年に倒産し京セラに吸収され消滅していきます。この中で富岡光学だけは「京セラオプテック」として現存していま したが、とうとう2018年に解散してしまいました。
夏草や 兵ものどもが 夢の跡
ご存知、江戸時代前期の俳諧師、三重県生まれの松尾芭蕉による1689年5月26日に「おくのほそ道」に出立してから44日目の6月29日、岩手県は平泉で藤原家三代の栄枯盛衰と義経の最期を偲んで詠まれた名句ですね (日付はいずれも新暦)。
芭蕉自身が藤原家三代の哀れみに想いを馳せているように、現代に於いては私達が芭蕉が詠んだ句を通して再び栄枯盛衰の哀れみに想いを寄せる、まるでオールドレンズそのモノのような関係に親近感を覚えますね(笑)
・・それはオールドレンズを通して情景を切り取る時、そこに「オールドレンズの味」を加味させて増幅し、切り取った情景に改めて感動や感嘆を重ね合わせているかのように見えます。
短い句の中に多くの情景をその想いと共に写し込み表現する様は、何処か「ボケ味」の中に 芸術性を見出した日本人の「侘び寂び」の世界観に相通ずるものを感じ、それは外国人には理解し難い、然しとても魅力的な世界観でもあり「bokeh」のコトバに現れていると思います。
今ドキのデジタルなレンズでは飽きたらずに「オールドレンズの境地 (オールドレンズ沼)」に足を踏み入れた皆様方は、まさに光を通して想いを伝え合う「現代の (光の) 俳諧師」なのかも・・知れませんョ(笑)
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以前扱ったマミヤ光機製標準レンズ「AUTO mamiya/sekor 55mm/f1.4《富岡光学製:後期型》(M42)」考察時一つ分かったことがあり、当時の各社向け富岡光学製OEMモデルのモデルとmamiyaが発売していたオールドレンズとは「初期型〜後期型」のタイミングが合致していないという問題です。
これは例えば富岡光学では「中期型」のタイプにあたる内部構造や構成パーツを使ったモデルだとしても、その同じタイプがmamiyaでは「初期型」にあたるバリエーションモデルだったりすると言う意味です。
つまり富岡光学とmamiyaとではオールドレンズの展開が全く違うので、互いにモデルのバリエーションのタイミングが一致しないと言う話です。
上の一覧でその時間軸を前提にまとめましたが、今回扱うmamiya製標準レンズは当時のCHINON製標準レンズ群の「初期型〜中期型」を跨いだ内部構造と構成パーツの設計だった事になるワケで、この点が当方にとっては納得できるか否かの大きな問題になってしまったワケです。
何故なら内部構造や構成パーツは契約台数の問題から多少の時間的なズレが生じるとしても、各光学メーカー向け供給されていた富岡光学製OEMモデルはある任意の時期で全て同一の設計だったハズだからです。
例えば工場の製産ラインの中で新旧混在させて並行生産するタイミングは、極一部の限定した期間だけだと考えられます。モデルチェンジして内部構造や構成パーツが代替し設計が変わっていく中で、いつまでも旧型機種のラインを維持しつつ並行生産するメリットはよほどでない限り大きくないと考えるからに他なりません (契約台数が消化できていない場合は継続して
旧型製品のラインを維持し製産し続けるしかない場合もある)。
つまり逆の言い方をすれば当時のこれら富岡光学製OEMモデルは、筐体外観で捉えた場合に様々な相違点があるとしても、バラした時に「内部構造と構成パーツが一致したら同一時期の製産モデル」としか考えられないからです (製産する立場から捉えた理に適う考え方の一例)。
それは以前お世話になった金属加工会社長のお話からも伺え、筐体外装の意匠や距離環/絞り環等の配置や仕様 (短い/長い) 或いは回転方向などは、その製産時点でどうにでも容易に指向先顧客別に細かく随時変更できるが、コアとなる基本設計部分は容易に変更できないという点です。もちろんこの事はひいては内部構造と構成パーツが一致したら、それは同一の製造元と判定できるとも言える内容です。
何を言いたいのか?
つまり今回扱うモデルはmamiyaでは「前期型」ながらも、当時市場に流通していたであろう富岡光学製OEMモデルで捉えると「まさにTOMIOKA銘を伴う初期型〜中期型の特徴を持つ」からに他なりません。逆の言い方をすれば、レンズ銘板に「TOMIOKA」の刻印が無いだけの違いしか存在しないレベルと言えるのです。
下手すれば「AUTO mamiya/sekor 55mm/f1.4 TOMIOKA (M42)」が存在していたかも 知れないタイミングだったのだと言いたいワケです。その辺の解説を後のオーバーホール工程の中でご案内していきたいと思います。
なお今回扱う個体は上の一覧 部分の「前期型」としましたが、今回初めてその存在を知った「チョ〜稀少品」だったりします(笑) それは内部構造はもとより「光学系の設計と筐体外装が初期型」なのに「レンズ銘板だけは後期型」だからです (おそらく後期型への過渡期の製品)。
ちなみに当時のmamiyaでは、富岡光学製OEMモデルに切り替わる前は世田谷光機製オールドレンズを使っていたので、世田谷光機を浦和工場に移管して閉鎖したタイミングとも合致しており、以降富岡光学製OEMモデルにチェンジしたと受け取っています (従って1964年を境に してその前後でmamiya製オールドレンズは内部構造も構成パーツも互いに全く一致する要素が無い/世田谷光機製と富岡光学製の相違だから)。
その意味でmamiya製オールドレンズの全てのモデルを世田谷光機製と案内しているサイトの解説は、不適当だと当方では判定しています。
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前置きが長くなってしまいましたが、これらの前提をシッカリ認識できていないと単なる他の (後に登場した) 富岡光学製OEMモデルと一緒くたにされてしまうと危惧したからです。
そして、実はこれらの事柄に疑念を抱いたり見落としに気がついたそもそもの発端は「描写性の相違」を発見してしまったからに他なりません。レンズ銘板に「TOMIOKA」銘を伴うモデルの画造りと、その後に登場した富岡光学製OEMモデルの描写とは「明らかに傾向が異なる」からなのですが、その「初期型たる画造り」の要素を今回のマミヤ光機製標準レンズに見てしまったのが全ての始まりでした (当初は疑念だけだったがバラして内部構造と構成パーツを確認して確信に至った)(笑)
上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。
◉ 一段目
左端からシャボン玉ボケが破綻して滲んで溶けていき円形ボケへと変わっていく様をピックアップしています。このシャボン玉ボケ〜円形ボケの滲み方のクセだけで捉えても、当時の富岡光学製OEM「初期型〜中期型」と「後期型」の描写性について特徴的な相違点があります。「初期型〜中期型」はシャボン玉ボケのエッジがすぐに滲んでしまうので明確に表出しませんが「後期型」はハッキリクッキリと輪郭が出てきます。
◉ 二段目
さらに背景の円形ボケが円形ではなく収差の影響を大きく受けた乱れて汚いボケ方の実写をピックアップしました。収差の影響を受けてゴチャゴチャと背景が滲んでしまうワケですが、実は「後期型」モデルの多くはこれら収差ボケがだいぶ改善されていて大人しく変わっています。従ってこれら収差ボケを単に「汚い」だけで片付けてしまうなら「後期型」のほうがその人には向いている話になりますが、逆に敢えて「特殊効果的に活用する」のであれば、この収差ボケはむしろ「オールドレンズの味」的な要素になったりします。
◉ 三段目
ここからが「初期型」の光学系設計の醍醐味を表している実写ですが「ふわっ」としたピント面の滲み方に特徴があります。大人しく表現させればススキの穂のような柔らかい優しい印象に仕上がりますし、ハロを伴う滲み方に強調してしまうと左端のような写真も残せると言う、とても懐の深いボケ味を持っています。
◉ 四段目
この段が実は富岡光学製オールドレンズの特徴たる由縁ですが、ピント面のエッジが繊細で非常に細く出てくると同時に、被写体の素材感や材質感を写し込む質感表現能力に優れているので、シ〜ンの現場感や臨場感まで表現したリアルな写真を残せます。さらに階調豊かに滲んでいくそのグラデーションのポテンシャルは相当なレベルと評価しています。
◉ 五段目
標準レンズ域のモデルなのに意外にも人物撮影が得意で (リアルで) 違和感なく自然な表現に落ち着きますから、まるでポートレートレンズのような印象です。実は標準レンズでここまでポートレート撮影に耐えられるモデルと言うのはそれほど多くありません。
光学系は5群7枚のビオター/クセノター型光学系ですが、レンズ銘板の 刻印文字をチェックすると「AUTO mamiya/sekor」なので「後期型」の要素なのに、光学系の設計は「初期型」でした(驚)
1966年にマミヤ光機から初めて発売された「M42マウント」の一眼レフ (フィルム) カメラが「1000TL/500TL」になり、セット用標準レンズとして「AUTO MAMIYA-SEKORシリーズ」が用意されました (左写真は1000TL)。
パッと見で見落としがちですが、実はレンズ銘板のモデル銘が一般的に現在市場で流通しているタイプとは異なります。つまり「MAMIYA
-SEKOR」表記であり「mamiya/sekor」ではありません。これが この当時のマミヤ製オプション交換レンズ群の中で「初期型/後期型」の最も見分けやすい特徴です。
この時の取扱説明書をチェックすると、用意されていたセット用標準レンズ群は「f1.4/f1.8/f2.0」の3種類で「f1.2」が存在しないことになります。
この時の標準レンズ群は全てマミヤ製モデルとしては「初期型」に なります。
なお、当方が「富岡光学製」と判定している基準の内部構造と構成パーツの要素が3点あり、いずれか1点、或いは複数合致した時に判定しています。
① M42マウントの場合に特異なマウント面の設計をしている (外観だけで判断できる)。
② 内部構造の設計として特異な絞り環のクリック方式を採っている (外観だけでは不明)。
③ 内部構造の設計として特異な絞り羽根開閉幅調整方式を採っている (外観だけでは不明)。
今回扱う『AUTO mamiya/sekor 55mm/f1.4《前期型》(M42)』は、これら判定基準①〜③全てが当てはまります。
オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。
↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。パラせば一目瞭然ですが、内部構造と使われている構成パーツのカタチも仕様も、ほぼこの当時に製産されていたであろう他の富岡光学製OEMモデルと同一です。
↑上の写真は左側が「AUTO CHINON 55mm/f1.4 TOMIOKA (M42)」で右側が「AUTO REVUENON 55mm/f1.2 TOMIOKA (M42)」であり、共にレンズ銘板に「TOMIOKA」銘を伴う個体の全景写真です。
↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。このモデルはヘリコイド (オス側) が独立しており別に存在します。
↑同様左側が「f1.4」で右側が「f1.2」ですが「f1.2」モデルでは光学系の専有面積 (容積) が足りずに鏡筒まで切削してギリギリの設計で用意していたことが分かります。
絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。
◉ 位置決めキー
「位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー
◉ 開閉キー
「開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー
◉ 位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)
◉ 開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環
↑同様左側が「f1.4」で右側が「f1.2」ですが「f1.2」モデルでは光学系の専有面積 (容積) の関係から入射光制御に6枚の絞り羽根だけでは足りずに「絞り羽根枚数:8枚」に仕様変更していることが分かります (もちろんその分光学系の外径サイズ/鏡筒外径共に大きい)。
↑完成した鏡筒をひっくり返して裏側 (後玉側) 方向から撮影しました。ご覧のように「開閉 アーム」が1本だけ飛び出ているという簡素な状況です。
このスプリングが非常に線径が細く引張率が低いので (引っ張るチカラが弱いので) 経年劣化で弱ってしまうと「絞り羽根開閉異常」を来します。グリーンの矢印で解説のとおり「開放側/最小絞り値側」の移動距離が決まっているので (停止キーで突き当て停止なので) 絞り羽根の開閉幅 (開口部の大きさ/カタチ/入射光量) の微調整がここではできません。
↑完成した鏡筒を立てて撮影しましたが (上側が前玉側方向)、解説のとおり鏡筒の端部分に「絞り羽根開閉幅微調整キー」なる真鍮 (黄銅) 製の小さな円盤がネジ止めされています。しかし、その円盤とネジの位置関係をよ〜く観察すると「ネジが中心から外れた位置にある」ことが分かります。つまり円盤はグリーンの矢印のとおりネジを緩めることで「左右に微動する ことで位置を微調整できる」設計であることが分かります。
このように「鏡筒自体の固定位置で絞り羽根の開閉幅を微調整する方式」を採っている当時の光学メーカーは、どちらかと言うと少数派です。
↑同じ角度の写真を撮っていませんでしたが、鏡筒の端部分に同じ「微調整キー」が備わっていることが分かります。同様左側が「f1.4」で右側が「f1.2」です。もちろん鏡筒の裏側から飛び出ている「開閉アーム」が1本用意されていて、且つスプリングが細いのも同じです。
↑距離環やマウント部を組み付ける為の基台です。基台の側面には幾つかのネジ穴が集中的に並べて用意されていますが「無限遠位置微調整用の穴」になり、ここに「無限遠位置微調整 キー」が後からセットされます。
↑同様左側が「f1.4」で右側が「f1.2」ですが「f1.4」モデルは同一の設計ながら「f1.2」モデルは異なります。この違いは「f1.4」モデルがCHINONに於ける「中期型」であり「f1.2」モデルは「初期型」だからです。
そして「初期型」を示す決定的な設計概念の相違点は後ほど出てきます。
↑上の写真は真鍮 (黄銅) 製のヘリコイド (メス側) をひっくり返して裏側を撮影しています (つまり後玉側方向からの撮影)。すると解説のとおりネジ山が2種類刻まれており、一つが「ヘリコイド (メス側)」でもう一つは「距離環用ネジ山」です。途中には「制限壁」と言う壁の出っ張りが用意されています (グリーンの矢印)。
↑真鍮 (黄銅) 製のヘリコイド (メス側) を、無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。
基台の側面に前述の「無限遠位置微調整キー (制限キー)」をネジ止めしてあります。上の写真向かって右端が「無限遠位置側」になり左端が「最短撮影距離位置側」です (グリーンの矢印)。ここにヘリコイド (メス側) に用意されている「制限壁」と言う壁の出っ張り部分がカチンと突き当たるので、それぞれ無限遠位置/最短撮影距離位置で突き当て停止する仕組みです。
さて、自分で整備していらっしゃる方はここで気がついたでしょうか?
実はここの工程が富岡光学製オールドレンズで数多く見かける「意味不明な設計」であり、辻褄が合わない下手すれば設計ミスではないかと考えられる部分です。
「無限遠位置微調整キー」により「距離環」を回した時の突き当て停止位置を微調整できますから (ネジ穴がたくさん用意されているから)、刻印されている「∞」マークの位置でピタリと無限遠の合焦を合わせられます。
ところがこの時、真鍮 (黄銅) 製のヘリコイド (メス側) に用意されている「イモネジ用の下穴」の位置は「均等配置で3箇所のみ」と決まっているので、無限遠で合焦したとしても「距離環の∞位置がズレてしまう」設計なのです。
何故なら「イモネジ用の下穴」が決まっているので無限遠位置で突き当て停止する位置がズレると、その分だけ距離環を固定する位置がズレていくからです。
過去メンテナンス時のその証拠が残っていました(笑)、上の写真グリーンの矢印の箇所に「ポツンと針の穴のような痕」が均等配置で3箇所残っています。これはイモネジが刺さっていた箇所であり「位置がズレている」ことから無限遠位置をズラしていた時期があるのが明白です。
左写真はそのイモネジを拡大撮影しましたが、ご覧のようにネジ切り部分にいきなりマイナスの切り込みが用意されているネジ種で、反対側が尖っているのが分かりますね。
↑ヘリコイド (オス側) を、やはり無限遠位置のアタリを付けて正しいポジションでネジ込みます。このモデルでは全部で13箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。
ヘリコイド (オス側) の内側には (内部には) 鏡筒がストンと落とし込まれて入りますが、その際に鏡筒の位置を確定させる目的を兼ねて「切り込み/スリット」が用意されており、そこに前述の鏡筒の端部分にネジ止めした円盤「絞り羽根開閉幅微調整キー」が入ります。
左写真はその鏡筒が入る時の様子を解説しています。
↑鏡筒をヘリコイド (オス側) の内側にストンと落とし込む時の写真です。グリーンの矢印のとおり「絞り羽根開閉幅微調整キー」が入ります。
↑こんな感じで鏡筒がヘリコイド (オス側) の内側に落とし込まれます。
↑ここでひっくり返して裏側を撮影しました (つまり後玉側方向からの撮影)。両サイドに「直進キー」と言うパーツがヘリコイド (オス側) に刺さっています。
◉ 直進キー
距離環を回す「回転するチカラ」を鏡筒が前後動する「直進するチカラ」に変換する役目
↑こちらはマウント部内部間写真ですが、既に各構成パーツを取り外して当方による「磨き研磨」を終わらせた状態で撮影しています。当初バラした際は過去メンテナンス時に塗布されてしまった「白色系グリース」により「濃いグレー状」に変質しており、一部に経年の酸化/腐食/錆びが生じていました。
↑取り外していた各構成パーツも個別に「磨き研磨」を施してセットしますが、必要以上のグリース塗布を避けています (必要外なグリースの塗布は再び経年劣化に拠る酸化/腐食/錆びを招くだけだから)。
マウント面から飛び出ている「絞り連動ピン」が押し込まれると (ブルーの矢印①)、その押し込まれたチカラの分だけカムが反応してチカラを伝達し (②) 先端部に用意されている「操作爪」を動かします (③)。すると「操作爪」がガシッと掴んで離さないのが、前述の鏡筒から飛び出ているたった1本の「開閉アーム」ですね。
つまりマウント面から飛び出ている「絞り連動ピン」が押し込まれたそのタイミングで瞬時に「操作爪」が「開閉アーム」を操作して設定絞り値まで勢い良く絞り羽根を閉じてくれる仕組みです。
「なだらかなカーブ」の勾配 (坂) に金属棒 (オレンジ色矢印) が突き当たる事で絞り羽根の開閉角度が決まる原理で、勾配 (坂) の麓部分が最小絞り値側になり、登りつめた頂上部分が開放側でてす (グリーンの矢印)。
↑同様左側が「f1.4」で右側が「f1.2」です。マウント部内部の設計概念は全く同一ですから、ここで「内部構造の基本的な設計概念が同一」なのが明白です (つまり同一の製造メーカー品と言う話に至る)。
↑絞り環をセットしたところです。絞り環には裏側に「絞り値キー」と言う「溝」が用意されていて、そこに鋼球ボールがカチカチと填ることでクリック感を実現しています。ところがこの当時の富岡光学製OEMモデルではその鋼球ボールを「スイッチ環側」に用意してしまった為に、この「スイッチ環の固定位置」をミスると、途端に「絞り環のクリック感と絞り値がチグハグでどの絞り値に閉じているのか分からない」などと言う不具合に見舞われます。
例えば絞り環を設定絞り値「f8」にセットしたいと回した時、もしも「スイッチ環」の固定位置をミスっていれば「f8のクリック感なのかf11のクリック感なのかが分からない」と言う現象にブチ当たります(笑)いちいち絞り羽根の閉じ具合をチェックして「f8/f11」を判断したりしている始末です。
従って、この方式の設計を採った場合「スイッチ環」側の固定位置に神経を遣う必要が発生します。鋼球ボールとスプリングは「スイッチ環」のグリーンの矢印の麓箇所にセットされますが製産時の工程として考えれば非常にムダな人件費を食っているだけの富岡光学らしい「意味不明な設計」の一つですね(笑)
実際この当時の他社光学メーカーでは既に簡素なクリック方式を採っており、鋼球ボール (或いはスプリング) は上の写真オレンジ色矢印の位置に組み込んでしまい、鋼球ボールの位置とクリック感の位置がズレないように考慮されていました。
↑要は「富岡光学の意味不明な設計」の一つであり(笑) 冒頭「判定基準の②」になりますが、同様左側が「f1.4」で右側が「f1.2」です。
↑このように「スイッチ環」がマウント面にセットされますが、その際「横方向からイモネジ3本による均等締め付け固定」なのが富岡光学製である「証」であり (グリーンの矢印)、同時に唯一外部から判定できる基準でもあり、冒頭の「判定基準の①」になります (但し一部のM42マウントモデルは別の設計を採っている)。
↑同様左側が「f1.4」で右側が「f1.2」です。以前は「絞り環用固定環」とか「カバー」と呼称していましたが、よくよく考えたらこの「スイッチ環」の固定位置もミスると絞り環のクリック感がチグハグになるのと同じように「A/Mスイッチ」操作時のカチッと感じる抵抗感がズレます。
それはつまり「イモネジ (3本)」を使って締め付け固定しているからなのですが、逆に言えば「イモネジを使う箇所は要微調整箇所」とも言えるワケで、一般的な締付ネジで多い「皿頭ネジ/鍋頭ネジ」が使われていた場合に単に締め付け固定するだけで良い話なのとは、イモネジの場合は状況が全く違います。そして一番重要な点は「イモネジの締め付け方法」をミスるとたいていの場合不具合に繋がります (つまり単に締め付けるだけの話で済まない)(笑)
こういう要素が「観察と考察」でどれだけ細かくチェックしつつバラして、そして組み上げているのか問われる話であり、同時に「原理原則」に則った整備ができない人 (多いパターンはグリースに頼った整備) が仕上げた個体の場合には、早ければ1年長くても5〜6年以内には何かしら不都合が表れ始めます (当方の整備品は6年前まで経年状況の確認ができています)。
↑指標値環をやはりイモネジ (3本) で締め付け固定します (グリーンの矢印)。すると前述のように絞り環のクリック感と絞り値とがチグハグになってしまった時は、はたしてスイッチ環の固定位置がズレているのか、或いは指標値環の位置がズレているのか・・そのような判定が憑き纏うのが「イモネジ使用」の一つの理由です。
富岡光学製オールドレンズとは、そのように微調整を伴う組み立て工程を好んで設計していましたから、他社光学メーカーとの大きな相違点とも言えます。
↑距離環を仮止めしてから光学系前後群を組み付けて無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。
ここでもやはりイモネジを使っていますがちゃんと下穴に固定しています (グリーンの矢印)。
ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。
↑ご覧のとおりレンズ銘板の刻印が「AUTO mamiya/sekor」なので「初期型」の「AUTO MAMIYA-SEKOR」ではありません。上の写真では敢えて画像編集ソフトで消していますが、実は製造番号をチェックすれば一目瞭然で「後期型」の場合は「製造番号6桁」ですが、それまでの「初期型〜前期型」は「製造番号5桁」です。
従って「製造番号6桁」の個体なら、右構成図のとおり「後期型」の光学系設計にチェンジしていることになります。冒頭の構成図と比較すれば歴然ですが、特に第5群 (後玉) の表側 (露出側) が平坦な凸平レンズに 変わっています (つまり描写性が変わっている)。
「初期型〜前期型」では両凸レンズなので後玉表面側には緩やかな
膨らみがあります (平坦ではない)。
↑光学系内の透明度が「とんでもなくスカッとクリアな状態」を維持しています。もちろんLED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。
↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。
↑光学系後群側もLED光照射で極薄いクモリが皆無です。特に富岡光学製オールドレンズの開放f値「f1.4」モデルの標準レンズは、この後玉表面のコーティング層が経年劣化で曇っていたりするので要注意です (清掃しても除去できません)。
もちろんその場合コントラスト低下を招き、必然的に解像度不足の「甘い写り/霞んだ写り」に堕ちてしまいます。従って特に富岡光学製の開放f値「f1.4〜f1.2クラス」のオールドレンズでは、この後玉の状況確認が必須であり、どんなに整備されていようがキレイな状態を維持していようが関係なく、後玉の経年劣化が生じているだけで「1枚ベール越しの写真」乱発になってしまいますね (LED光照射での確認が必須と言う意味)(泣)。
↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。
【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ:
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:11点、目立つ点キズ:7点
後群内:17点、目立つ点キズ:12点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(極微細で薄い9ミリ長が数本あります)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
(後玉表面側に経年使用に伴う極薄い/微かな擦れ痕があります/LED光照射で視認可能)
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・光学系内の透明度が非常に高いレベルです。
(LED光照射でも極薄いクモリすら皆無です)
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。
↑6枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に正六角形を維持」したまま閉じていきます。
ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。
↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人により「重め」に感じ「全域に渡って完璧に均一」です(どちらかと言うと重めの印象)。
・距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
・絞り環操作も確実で軽い操作性で回せます。
【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
・当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。
・A/M切替スイッチはツマミが破断していますが研磨して多少滑らかにしています。
↑大変貴重な「前期型」です。特に「ふわっ」としたピント面の写り方に特徴があるので、今ドキの「インスタ映え」には喜ばれるかも知れませんね(笑)
このモデルのピントの山がアッと言う間なので、本当はもう少し「軽め」の距離環を回すトルクに仕上げられれば良かったのですが、ヘリコイド (オスメス) の個体別の状況次第なので仕方ありません (今回の出品個体は過去メンテナンス時に塗布された白色系グリースのせいでネジ山の摩耗が進行しているから)。
↑A/M切替スイッチのツマミが破断しているので、グリーンの矢印の箇所は削って可能な限り滑らかにしています。
↑フィルター枠周りの「ブライトシルバー (光沢シルバー)」が大変美しく光彩を放ちます。また「ブライトブラックとマットホワイトの梨地仕上げ」ツートーンも気品に満ちています。
無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。
もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい。当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません。
↑当レンズによる最短撮影距離50cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。
この実写はミニスタジオで撮影していますが上方と右側方向からライティングしています。その関係でフードを装着していない為に絞り値の設定によりハレ切りが不完全なまま撮影しています。一応手を翳していますがハレの影響から一部にコントラスト低下が出てしまうことがあります (簡易検査具による光学系検査を実施済で偏心まで含め光軸確認は適正/正常)。
↑最小絞り値「f16」での撮影です。この絞り値でも「回折現象」の影響が極僅かで視認できないレベルなのが素晴らしいです。
◉ 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。