◎ Ernst Leitz Wetzlar (ライツ) Elmar 3.5cm/f3.5《1938年製造》(L39)
(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
写真を閉じる際は、写真の外 (グレー部分) をクリックすれば閉じます
※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。
今回完璧なオーバーホール/修理が終わりご案内するモデルは、戦前ドイツは
ライツ製広角レンズ・・・・、
『Elmar 3.5cm/f3.5《1938年製》(L39)』です。
ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ! Слава Україні! Героям слава!
上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。
Slava Ukrainieie! Geroyam Slava!
今回完璧なオーバーホール/修理が終わりご案内するするモデルは、当方がオーバーホール作業を始めた14年前からの累計で、当時のLeitz製「Elmar銘」で捉えた中で広角レンズについては初めての扱いです。
先ずは冒頭で、このような大変希少なオールドレンズのオーバーホール/修理ご依頼を賜り
ました事、ご依頼者様に感謝とお礼を申し上げたいと思います・・ありがとう御座います!
当方は基本、ライカレンズもフィルムカメラのことも何も知らない『極度のカメラ音痴』です(恥) 当然ながら普通に皆さんから言われる「そうは言ってもElmarと言う名前くらいは聞いたことがあるでしょう」との指摘は、残念ながら当方には全く以て当てはまりません(笑)
・・つい近年までその名前すら知らなかったくらいの「まるでドシロウト」です(恥)
ところが今回のご依頼者様のように、ワザワザ当方にそのような希少なオールドレンズをオーバーホール/修理ご依頼頂く『神々しい方々』が数名いらっしゃり、そのような方々のおかげで当方は苦もなく希少なモデルの存在を知り、背景を探る機会を得て、なによりも完全解体するチャンスに恵まれると言う、本当にありがたいお話であり、そのような皆様に平伏してお迎えしたくなる思いです(涙)
・・もう一度、ありがとう御座います!(涙)
今回扱うオールドレンズは、巷で「ヘビーカム」と呼ばれているらしく、今回現ブツを手にするまでいったい何のことを指しているのか「???」だったほどです(汗)
要は距離環のツマミ部分のクッション式ロックピン部分が「LM変換リング」に干渉してしまい、M型ライカカメラに装着できない「らしい」です(汗)・・詰まるところそのライカカメラすら一度しか触ったことがないので、よく分かっていません(笑)
その状況を指して「ヘビーカム」と言うのですね(汗) 「ヘビー」とは、なかなか英語の概念に詳しい人でないと、例えカタカナ表記にしても当てはめられないコトバのように感じ、ちょっと焦りました(笑)
タダでさえ日本語のボキャブラリーが極度に少ない「欠陥脳」状態なのに、まして英語の表現をオールドレンズの使用状況に当てはめると言うのは、当方にとり少々苦行だったりしました (今回結構焦ってネット上を探しまくって勉強し、ようやく理解しました)(笑)
・・ウ〜ン、これが “ヘビー” なのね。
● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●
今回扱ったオールドレンズの描写性については、写真家「赤城耕一」氏の記事である「”よく写るレンズで写真が上手くなる? 総勢50名のエルマー写真展で感じたこと」を拝読し、掲載の写真を見て即座に直感的に「あッ! これ好きかも!」になりました(汗)
・・解像度もボケ味も関係ない世界観のお写真達、好きかも(笑)
とか言いながら、ボケボケな写真やシャボン玉ボケに背景ボケに収差ボケと好きなだけ言いまくっているクセにと思ったりしますが、こういうリアルな緊迫感を留めるお写真達が結構好きなのです(汗)
その意味で、収差張りしている領域にツッコミ入れてあ~だこ~だ言う派のタイプではないので(笑)「あくまでも自分の目で観たがままに (老眼酷いし) 感じ入るのがヨロシイ」のです(汗)
いわゆる「没入感派」とでも言いましょうか、或いは「疑似体験派」みたいな、サクッとそのお写真を観た瞬間に (0.3秒で) 脳が勝手に反応しまくっているような、そんな感じ方が当方の写真鑑賞スタイルだったりします (最近は3秒かかりますが)(汗)
するとカッチカチに精緻感タップリだったり、これでもかと言わんばかりに縦横斜め全てに於いて均整のとれたイケメン的写真に当方は一切なびきません(笑) かと言って「オールドレンズの写真って、こうだョねぇ~!」みたいな、ハイキ〜張りに低コントラストな写真を増産したり、まるで光輪しか観てはイケナイような(笑)、ゴーストやフレア「だけ」の世界を観せられても「魅せられない」ワケですョ (ハイ、頑固です)(笑)
詰まるところ、オールドレンズの写りとは、同じ写真なのだとしても、そうやって使う人の、撮影者の『我』の世界であって、その表現性にあ~だこ~だと「型」にハメ込もうとすること自体が「違う」のだと思ったりします(笑)
・・だから、コントラスト張りの写真もボケボケ写真も、リアルなら大好き!(笑)
もちろんハイキ〜な写りでも、本当にそういうシ~ンならモロに受け入れちゃいます!(笑)
但し、さすがに光輪は当方の目はまだ観たことがないので、ただただ眩しいだけだったりしますが(汗)、するとでは「シャボン玉ボケは視えてるの???」と言う話にならざるを得ません
・・いえ、ハイ、やっぱり全く見えていません (単に眩しいだけです)(笑)
←せっかくなので「Leica-puts-pocket-book」を調べて今回扱ったモデルの製産時期をチェックしました。
白抜きの戦前に対して、 色付戦時中はやはり軍需生産主体になったようです(汗) 特に1941年以降このモデルの製産はストップしていたのが分かります。前線や後方の状況写真などに広角レンズを使っても良さげな気がしますが、どうして造られなかったのでしょうか(汗)
戦後息を吹き返しますが、1949年中に「Summaron 3.5cm/f3.5《前期型》(L39)」へと引き継ぎ終焉を迎えます (リストを見る限り終焉は1950年ではないと思います)。
それでこのリストを造っている最中に当然ながら「Elmar 5cm/f3.5」も頻繁に現れるのですが、そこですっかり思い込みしており「Elmar銘なんだから3群4枚のエルマー型光学系」と勝手に信じ込んでいたら、イザッ完全解体して光学系の各群を取り出した時「???」(笑)
前群後群それぞれで黄銅材一体モールド成型されていて「2つの塊しか入っていなかった」のにちょっと拍子抜けです(汗)・・それで各群を眺めていて、光学系第1群前玉だけが前群と信じ込み、後群側は第2群~第3群の2枚貼り合わせレンズと言う「典型的な3群4枚エルマー型光学系」を妄想しながら覗き込むと・・「あれ? 前玉の次に何かが居る!」(驚)
そうなんです! まるでイッパシの「3群4枚テッサー型光学系」ではありませんか!(驚)
それでようやく思い出しました。そもそもErnst Leitzも「3群4枚エルマー型光学系」で特許出願申請書を出願していたものの、1902年のPaul Rudolph (パウル・ルドルフ) 氏によるまさに「3群4枚テッサー型光学系」の特許出願に抵触する為 (その際製品化された時の名称はAnastigmat)、Ernst Leitzと発案者Max Berek (マックス・べレク) 氏を掛け合わせた造語「Elmax (エルマックス)」銘で登場した経緯でした (その後翌年にElmar銘を採る)(汗)
右構成図は今回のオーバーホールで完全解体した際に光学系の清掃時当方の手によりデジタルノギスを使い、逐一全ての光学硝子レンズを計測したトレース図です。
絞りユニットの絞り羽根を挟んで、光学系第2群と第3群がだいぶ
迫っている近接した設計でした(汗)
↑完全解体した後に取り出した光学系前群 (左) と後群 (右) です。まさに典型的な3群4枚テッサー型光学系ですが、3つの群の中で最大径をとる第3群2枚貼り合わせレンズ (後玉のこと) ですら「⌀ 10.31㎜」しかないので (上の写真右側のほう)、とにかく小さくて当方の老眼ではもうよく見えないくらいです(汗)
ちなみに今回のオーバーホール/修理ご依頼内容だった「光学系内のクモリ」は次の写真に出てくる「反射防止黒色塗料のインク成分が光学硝子レンズに飛んでいた為に生じていたクモリ」から、今回の清掃でまるでキレイに除去できてしまい、改めてこのモデルの描写性能の素晴らしさに感心した次第です(涙)
・・ありがとう御座います!(涙)
↑同じ並びですが、今度はヒックリ返して各群の裏面側を上に向けて撮影しています。当方は「プロにもなれず、マニアすらなれなかった整備者モドキのクソな転売屋/転売ヤー」との話なので(笑)、「公然と平気でウソを拡散し続けている」と某有名処のコメント欄に誹謗中傷され続けている始末で(泣)、仕方ないのでちゃんと『証拠写真』を載せて解説しなければイケナイみたいです(笑)
さらに当方は「写真スキルまで皆無」なので(汗)、まるで上手く撮影できず「反射防止黒色塗料」の状況が分かりませんが、コバ端に残る塗料のインク成分が飛んでおり、確かにバラす前に光学系を覗き込んでも、バラしてから単独でチェックしても「薄いのを通り越して本格的に曇っている」状況でしたから、これはまさにオーバーホール/修理依頼したくなる状況だったのだと、ご心痛痛み入ります(涙)
・・現状は、まるでウソのように (当方はウソが得意らしいので) スカッとクリアです!(笑)
本当は左側の前群が2つに分割できるのだと思いますが、外れませんでした(涙)・・それでもちゃんとキレイになったので、極々微細な塵/埃の類は僅かに侵入しているものの、写真への影響度は (そもそも玉ボケの表出も非常に小さいハズなので)、それらの写り込みが視認できないと思います。
上の写真は既に当方の手による『磨き研磨』が終わっている状態なので、多少なりとも格納筒の黄銅材の色合いが明確に見えています (当初バラした直後は経年劣化進行に伴う酸化/腐食/錆びで真っ黒状態)。
↑上の特許出願申請書からの抜粋図面は、以下の内容になります。
◉ 左:『GB190213061 (1902-06-09)』英国内務省宛て出願
→ Paul Rudplph (パウル・ルドルフ) 氏発案3群4枚テッサー型光学系
◉ 中:『DE343086 (1920-10-09)』ドイツ特許省宛て出願
→ Max Berek (マックス・べレク) 氏発案3群4枚エルマー型光学系
◉ 右:『GB383233 (1931-12-11)』英国内務省宛て出願
→ Ernst Leitz GmbH (ライツ) 距離計連動方式の出願
関係する特許出願申請書はこんなところでしょうか。確かに3群4枚エルマー型光学系 (中) もテッサー型の範疇なのですが、当方はどうしても「絞りユニットの配置」を重要視してしまい、その配置の違いで「前後群の正負パワーバランスが変わってしまう」ことから、絞りユニットを注視しない捉え方で考えようとした時、その入射光制御に矛盾をどうしても抱いてしまいます (単に当方の光学知識が皆無で妄想しているだけの話なのですが)(汗)
従って基本的に全体で捉えて3群4枚テッサー型光学系の範疇としても、当方にとりエルマー型はエルマー型でユニークな存在なのだと言う認識です (スミマセン)。特にマクロレンズなどに使われるエルマー型構成の入射制御とテッサー型タイプのマクロレンズとでは、その制御の概念が全く違うと思うのです(汗)
それは第1群~第2群を透過してきてから絞りユニットで光量制御するのと、一方エルマー型の第1群前玉だけの透過で光量制御するのとでは、最後の「第3群が同じ2枚貼り合わせの
ダブレット化」にしても、光学設計者のKats Ikeda博士のコトバを借りるなら、この第3群は決して色収差補正や球面収差補正だけが目的ではないとの認識に立った時、第2群両凹レンズと絞り羽根制御のポジショニングの相違は、結構大きい要素だと思うのです(汗)
なお上の特許出願申請書で右端の出願は、ライカが発売していたレンジファインダーカメラ「Leica II型 (1932年発売)」の登場に合わせて、初めて距離計連動ヘリコイドを実装した機構の発明案件出願になります。パッと見でまるで今回のモデルのカット図面のように見えるので以前から「???」だったのですが、ちゃんと記述を読めばイメージ図であることが判明します (最初っからすぐに記述を読めョ)(汗)
オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。
↑今回のオーバーホール/修理個体を完全解体した時のパーツ全景写真です。当然ながら固定式鏡胴なので (沈胴式ではないと言う意味) 内部構造は簡素で構成パーツ点数も少ないです。ある程度整備経験がある方なら組み立ては簡単でしょう。
今回のオーバーホール/修理ご依頼では、特に光学系のクモリとカビ除去がメインの内容ですが、当初バラす前の確認では少々距離環を回すトルクも重めのような気がしました(汗)
↑絞りユニットや光学系前後群を格納する黄銅材の鏡筒です。この先端に (前玉に並列して) 絞り環が組込まれますが「単なる爪」です(笑)
↑絞りユニットの構成パーツですが基本的に「位置決め環 (左)」と「開閉環 (右)」しかありません(笑) いずれも相当経年劣化進行に伴い酸化/腐食/錆びが進んでいたので、今回のオーバーホールで当方の手による『磨き研磨』によりキレイになり、絞り環操作/爪の動きもとても軽く変わりました。
↑例によって過去メンテナンス時の状況を探ると、赤色矢印で指し示している箇所に「1箇所だけイモネジの締め付け痕が残っているだけ」なので、絞り羽根の開閉幅 (開口部の面積/カタチ/入射光量) は、まるで製産時点を維持し続けていたことになります!(驚)
今回の個体は「1938年製」なので、まるで86年間も外さずに整備し続けられてきたと言うのは、或る意味オドロキだったりします(笑)・・この事実が意味するのは、おそらくほとんどの過去メンテナンスで鏡筒はそれほど本格的な洗浄をされずに、そのまま組み上げられてきたように考えます。
・・今回は本当に久しぶりにキレイに経年の垢を落としてスッキリです!(笑)
絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。
◉ 位置決めキー
「位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー
◉ 開閉キー
「開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー
◉ 位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)
◉ 開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環
◉ 絞り羽根開閉幅
絞り羽根が閉じていく時の開口部の大きさ/広さ/面積を指し、光学系後群側への入射光量を決定づけている
↑10枚の絞り羽根を組み込み、鏡筒最深部に絞りユニットをセットしたところです。上の写真では手前に「開閉環」が写っていますが、現状この状態ではまだ固定されておらず、このままひっくり返すとバラけてしまいます(汗)
つまりこれが意味するのは、絞りユニットは「光学系前群格納筒がネジ込まれて初めて固定される」設計であり、さらにその結果は「絞り環の爪の動きが重くなるか、軽くなるのかを決めているのは、この絞りユニットの固定時の仕上げ方次第」になり、要は「開閉環の平滑性と、合わせて同時に光学系前群格納筒裏面側の平滑性まで確保しないと詰めの捜査が非常に重くなる」ことを意味し、まさに当初バラす前の状況に合致します(汗)
↑光学系前群側の第1群前玉~第2群までが格納されています (ヒックリ返して撮影/第2群裏面側が見えている状態)。赤色矢印で指し示している箇所の光学硝子レンズは両凹レンズです。既に光学ガラス清掃が終わり、コバ端の「反射防止黒色塗料」も一度剥がしてから再着色が終わっています。当然ながら飛んでいた古い塗料のインク成分はキレイに除去できています(涙)
・・広角エルマー、復活の義です!(涙)
ネット上の解説を読むと、フレアライクな写真をこのモデルの味わいとしているサイトがありますが、違いますね(笑) それは単に光学硝子レンズにクモリを帯びている写りだからな、だけです。
またグリーン色の矢印で指し示している箇所は「平滑研磨」が終わっており、ここに鏡筒内部の絞りユニット「開閉環」が接触して、特に最小絞り値方向に操作された時の「絞り羽根の浮き上がり」を抵抗/負荷/摩擦少なく抑えてくる、ありがたい平滑面です(涙)
逆に言うな、この箇所の「平滑研磨」が施されていない場合、爪の操作も硬くなり面倒さがより増大する印象に繋がります(汗)
↑光学系の清掃が終わり鏡筒に組み込むと、こんな感じ (立てて前玉を上方向に向けて撮影)。赤色矢印で指し示している箇所には「開閉環に備わる連結ネジ用のネジ穴」が見えていますがライカはこの1930年代当時から既に「両サイドから絞り環と連結させる設計概念を頑なに踏襲し続ける」ことで操作性の向上だけでなく、何よりも絞り羽根の耐性を高め、最小絞り値側方向の「絞り羽根の浮き上がり/膨らみ/歪曲」を適切に抑えられ、決して製品耐性100年を見越して設計したワケではないのに、いまだにその耐性試験を続ける貫禄を魅せつける素晴らしい製品設計なのが伝わります(涙)
・・だから写りだけではないライカの世界も美しく素晴らしい!(涙)
例として引き合いに出して大変申し訳ありませんが(汗)、例えば同じ時期のCarl Zeiss Jenaが製産していたオールドレンズ達の絞り羽根は、ペラペラに薄く、プレッシングされる金属棒のキーも、小さく弱々しい印象なのに対し、ライカ製オールドレンズは肉厚の絞り羽根に、まるで岩盤の如く飛び出ている金属棒たるキーの打ち込み強度は、まぎれもなく「過剰的な印象すら覚える」くらいに真っ向から製品設計に真摯に相対していた企業姿勢が伝わってくるから、バラしていても本当に涙が出てきそうになります (涙腺弱いタイプです、ハイ)(涙)
そんな想いもあり、ご覧のようにピッカピカに黄銅材を磨き上げ (バラした当初は真っ黒) まるで製産時点を思い出すが如く (いえ、知りませんが) 復活の義に向けて、準備を進めるところで御座います(涙)
↑絞り環を組み込んだところです。連結ネジが入っていますが、反対側にも居ます。このネジの凄いところは「ネジ頭が円柱状に突出していて、ちゃんと開閉環に刺さった後の回転運動時に開閉環に対して抵抗/負荷/摩擦を増大させない配慮が成されている」ことです(驚)
この当時、ライカ以外の光学メーカーで同じ手法で締付ネジをちゃんと用意していた会社は、戦後旧西ドイツの光学メーカーに属する会社以外存在しないと思います(涙)
いったいこの当時から、どういう考え方でそのような徹底的な工業製品の設計概念を生み出す頭脳が生まれたのか、本当に感銘しか残りません(涙)・・マジッで戦前ドイツって「スゲェ~」と心底恐れ入った次第です(怖)
とても多くの光学メーカーのオールドレンズが「開閉環にネジ込まれる締付ネジばかり」なのに(汗)、その方式では (ネジ込みでは) 回転方向の運動に対して抵抗/負荷/摩擦が増大することに配慮した特殊ネジをワザワザ用意したと言う話を述べているのです(涙)・・それが表すのは「絞り羽根の重なり合いで膨らむことに配慮し、且つその時同時に回転運動の中で回っていくことまで気配りした、金属材に対する徹底した耐性配慮の設計」だからこそ、結果的にまるで100年を見越して製品寿命はまだまだ続くのです(涙)
どうして世の中の整備者達は、自らバラして自身の指で掴んでいるハズのこのとても小さな特殊ネジのことを、もっと褒め称えてあげないのでしょうか???(涙) どうしてオールドレンズを整備する時、その設計者達の存在を世の中に広めようと考えないのでしょうか???(涙)
何故なら、それこそがオールドレンズの強みであり、今ドキのデジタルなレンズには決して成し得ない、自らが歴史の事実と取り巻くロマンを体内に受容し続けている工業製品であって、だからこそ「単なる写真を撮るためだけの道具」として終わらせてはイケナイのだと・・当方は本当に強く思ふのです(涙)
・・それを自らの使命として体現できるのは、整備者だけです。
↑こちらの写真は後玉側方向からの撮影です。確かに戦前ノンコーティングであるものの、ご覧のようにすっかりキレイにクリアに戻りました(涙)・・この上の写真に写っている後玉周囲の黄銅材がちゃんとメタリックにメッキ加工されているのに、過去メンテナンス時にさんざん「反射防止黒色塗料」を厚塗されてきたが故に、そのインク成分が飛んで「光に翳しただけですぐにまるでクモリを帯びている状況」をつくっていたワケで、溶剤で溶けたので剥がしてみれば「その下から現れたのはメタリックなメッキ加工」であり、いったいどうしてこのライカが必要と認めて処置したメッキ加工がイケナイのでしょうか???(泣)
↑このモデルは鏡胴が「前部/後部」の二分割方式なので、鏡胴「前部」が完成した為、ここからは鏡胴「後部」の組立工程に入ります。
❶ マウント部 (真鍮製/ブラス製)
❷ ヘリコイドオス側、兼距離環 (真鍮製/ブラス製)
❸ 距離計連動ヘリコイド (黄銅材)
❹ ヘリコイドメス側 (黄銅材)
このモデルの設計で本当に凄いと感嘆しつつ、合わせて当時戦前ドイツの工業技術の脅威をまざまざと確認できる要素は「既にアルミ合金材削り出しの旋盤機械が完成の域に到達していた」事実です(驚)
これだけ小さなコンパクトな製品で、且つ「ツマミを回していく一方向からのチカラの伝達だけで回転運動を強いられる駆動方式」の中にあって、しっかりした面取加工までキッチリ処置できていたのが、まるで昨日製品出荷されたが如く感じられるほど、いまだに製品精度を保つ工業技術に呆気にとられます(驚)
残念ながら、戦後日本の名だたる光学メーカーでさえ、ここまで素晴らしい真鍮材/ブラス材や黄銅材の仕上がり、そして何よりもその後主流になるアルミ合金材削り出しに対する旋盤機の工業技術革新は並行したレベルに到達しておらず、特に❹ ヘリコイドメス側を手にした時に、まるで鳥肌立ちました(涙)
この❹ ヘリコイドメス側の外周には「たったの3列しかネジ山が切られていないのに、どんな位置からネジ込まれようとも確実に間違いなく1箇所でとても滑らかにスムーズにネジ込みが入る」切削レベルのあまりの高さに、マジッで唸ってしまい、このパーツを掴み上げて凝視したくらいです!(驚)
・・明らかに戦後日本の工業技術とは比較になりません(驚)
逆に言うなら、戦前ドイツでこのような工業技術 (旋盤機を代表として挙げた時) の到達をみた時、同じ時期に日本の旋盤機のレベルがどうだったのかと言えば、はたしてアルミ合金材削り出しについては先日まで幾つも扱ってきたキヤノン製品でさえ、その面取加工まで含め比較対象になり得ません(汗)
今の時代こそ普通に触ってしまい、まるで気づかないかも知れませんが、これが1930年代の真実なのだと考えると、いや、やはり恐ろしい国だったのだと戦前ドイツの工業技術の素晴らしさを、今さらながらに堪能できた次第です(涙)
この当時の工業技術レベルを探る時、真鍮材/ブラス材や黄銅材ではなく「アルミ合金材削り出しのレベル」さえチェックすれば、本当にその差を如実に感じ取れると思いますね (もちろん陽極メッキのレベルも当時としてはまるで別次元/現代でも引けを取らない完成の域)。
↑ヘリコイド群を組み立てていきます。もう既にグリースを塗布済です。このモデルの無限遠位置は1箇所しか対応しておらず、無限遠位置を微調整する概念はそもそもこのモデルの製品設計には組み込まれていません・・どうやってもまるでピタリの位置でしか組み上げられません。
↑距離環をセットします。当然ながら写真の下部分に位置していて見えていない「距離計連動ヘリコイド」も、その適切な停止位置は自ずと1つだけになります。
↑レンズ銘板をセットし、この後は完成している鏡胴「前部」を組み込んで締め付け固定すれば完成です(涙)
ここからは完璧なオーバーホール/修理が完了したオールドレンズの写真になります。
↑完璧なオーバーホールが終わりました。ご依頼内容だった光学系のクモリは完全除去完了しています。
↑一部にはおそらく「気泡」だと思いますが、拡大撮影しても全くよく分かりません(汗) 何しろ最大径ですら「⌀ 10.31㎜」の世界ですから、申し訳ございませんがご勘弁下さいませ(汗)
◉ 気泡
光学硝子材精製時に、適正な高温度帯に一定時間到達し続け維持していたことを示す「証」と捉えていたので、当時の光学メーカーは正常品として「気泡」を含む個体を出荷していました (写真に影響なし)。
↑また確かにカビ菌糸の繁殖も確認しましたが、このレベルはさすがに86年の歳月となれば、甚だ致し方ないのではないかと思うくらいに微細です (除去済)(汗)・・もちろん光学系内の透明度は非常に高い状態を維持した個体であり、LED光照射でも経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です (そもそもノンコーティングなので、蒸着コーティング層が存在しない分、クモリを帯びる要素も本来存在しないのが真実です)。
「蒸着コーティング層」と言っても、しょせん金属材を資料とした話であり、経年劣化進行に伴い酸化/腐食/錆びが進むのは歴然です。ところがノンコーティングとなれば、本来クモリを帯びさせる要素はカビ菌糸くらの話で、プラスしてせいぜいグリースの揮発油成分となれば、そのクモリを帯びる光学系の群はたかが知れています(汗)
それかどの群にもまるで均質のようにクモリを帯びるとなれば、その状況が異常な話であることを察知しない過去メンテナンス時の整備者が悪いのです。要は「反射防止黒色塗料」が原因だと気づかないのがイケナイのです(笑)
どうしても必要性が残る部位なら、一旦溶かして剥がしてから再着色して、とにかくインク成分が飛びにくい環境を用意するべきです(汗)
↑10枚の絞り羽根もキレイになり、絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に円形絞りを維持」しながら閉じていきます (途中僅かに角張ります)。
鏡筒側面や絞り環の表裏面も「平滑研磨」したので、当初バラす前時点の絞り環「爪」の操作性の硬さに比較すれば、だいぶ軽い操作性に変わっていますが、何しろ「爪」なので面倒くさいです(笑)
またこのモデルの絞り値は「大陸絞り」と呼称する当時の欧州ヨーロッパで採用されていた理論値を採るので「f3.5→f4.5→f6.3→f9→f12.5→f18」になります。あくまでも理論値ですから、例えば実際に光学系内を透過してきた時の実測絞り値として採用する「T値」或いは任意のユニークなカタチに切削した板状絞りを挟み込む「H値」などもありますから、f値至上主義でいると特にシネレンズなどの感覚が狂います(汗)
ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。
↑塗布したヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」を使い、いつもの当方独自のヌメヌメッとしたシットリ感漂う軽めのトルク感で、掴んでいる指の腹に極僅かにチカラを伝えるだけでピント面の前後微動が適うトルクに仕上げられており、抜群の操作性を実現しています(笑)
この個体は距離環のツマミ部分は、その板状を極僅かに曲げてあるようなので、そのままにしてあります (従ってツマミ自体は垂直状ではなく極々僅かに斜めっています)。
↑当方所有RICOH製GXRにLMマウント規格のA12レンズユニットを装着し、ライブビューで無限遠位置の確認等行い、微調整の上仕上げています。その際使っているのは「Rayqual製変換リング (赤色矢印)」です。無限遠位置は「∞」刻印ピタリの位置でセットしています。
(写真に写っているGXRやA12レンズユニットにRayqual製変換リングは今回の出品物には含まれません)
あくまでも当方での確認環境を明示しているに過ぎません。
無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。
被写界深度から捉えた時のこのモデルの無限遠位置を計算すると「焦点距離:35㎜、開放F値:f3.5、被写体までの距離:14m、許容錯乱円径:0.026㎜」とした時、その計算結果は「前方被写界深度:7m、後方被写界深度:∞m、被写界深度:∞m」の為、10m辺りのピント面を確認しつつ、以降後方の∞の状況 (特に計算値想定被写体の20m付近) をチェックしながら微調整し仕上げています。
・・一言に無限遠位置と述べてもいったいどの距離で検査したのかが不明瞭ですね(笑)
この後に掲載するオーバーホール完了後の個体で実写撮影した写真を見れば分かりますが、さすが3群4枚テッサー型光学系だけあってピント面の解像感は素晴らしい描写性です(驚)
オーバーホール/修理ご依頼者様皆様に告知しているとおり、もしもお届けしたオールドレンズの仕上がり状況にご満足頂けない場合は、そのご納得頂けない要素に対して「ご納得頂ける分の金額をご請求金額より減額」下さいませ。
減額頂ける最大値/MAX額は「ご請求金額まで (つまり無償扱い)」とし、大変申し訳御座いませんが当方による弁償などは対応できません・・申し訳御座いません。
↑当レンズによる最短撮影距離1m付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。
各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。
↑f値は「f9」に上がりました。この光学系の設計では、ここら辺りまでが限界値で、そろそろ「回折現象」の影響が現れ始めています。
◉ 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。
◉ 被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。
◉ 焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。
↑最小絞り値「f18」での撮影です。今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。明日完全梱包のうえ、クロネコヤマト宅急便で発送させて頂きます。どうぞよろしくお願い申し上げます。