◎ KONICA (コニカ) HEXANON AR 50mm/f1.4 AE《中期型》(AR)

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今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、コニカ製
標準レンズ・・・・、
HEXANON AR 50mm/f1.4 AE《中期型》(AR)』です。


オーバーホール/修理ご依頼分では何本か扱っており、累計扱い本数は今回が15本目になります。しかしオーバーホール済でヤフオク! 出品するのは2015年以来の4年ぶりですね。

以下のオーバーホール工程の中で解説していきますが、KONICA製オールドレンズの多くのモデルが非常に神経質な微調整を求められるので、オーバーホールしてもその作業対価分を回収できない (つまり赤字で終わる) 問題があります。さらに光学系内にカビが発生する率が非常に高いのもKONICA製オールドレンズの特徴なので (極薄いクモリの発生率が高い)、とてもリスキーなモデルであり普段扱うのを敬遠しています。

しかし、実は当方はオールドレンズに興味を抱いた当初よりKONICA製オールドレンズの多くのモデルを評価しており、特に標準レンズ域の中では今回の「中期型」50mm/f1.4が最も素晴らしいモデルと考えていますし、他にも開放f値「f1.2」モデルなどはその描写性と意図した写りとの整合性に於いて、扱いが大変難しい他社光学メーカーの同クラスの中で唯一使い易く感じるモデルだと評価しています。

但し、個人的にはどうしても絞り環の細かいクリック感がいまだに馴染めず (その根拠がちゃんとあるのですが)、諸手を挙げて手を出す気持ちにもなれないのが悶々としている原因だったりします(笑)

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コニカの歴史は相当古く、何と明治6年 (1873年) に東京麹町で米穀商「小西屋」を営んでいた6代目杉浦六右衛門が、25歳の時に当時の写真館で撮影した写真に感動し写真材料の扱いを始めたのが原点です。その後東京日本橋に写真材料と薬種を扱う「小西本店」を開業したのが創設になります。

それから30年後の明治36年 (1903年) 国産初のブランド付カメラ『チェリー手提用暗函 (6枚の乾板装填式)』国産初の印画紙「さくら白金タイプ紙」を発売しました (左写真)。

その後大正12年 (1923年) 現在の東京工芸大学の前身「小西写真専門学校」を創設し、昭和11年 (1936年) に株式会社小西六本店と社名変更しています (後のコニカ株式会社)。

今回扱うHEXANONシリーズは当初マウントが違うFマウントでしたが1965年12月に発売した世界初のAE方式一眼レフ (フィルム) カメラ「AUTOREX」からARマウントに変わっています。ARマウントの名称は「AutoRex」の頭文字を採っており、前期は「EE (Electric Eye)」後期は「AE (Auto Exposure)」機能を装備しています (セットするとシャッター優先AE機能が働く)。

【コニカ製一眼レフ (フィルム) カメラの変遷】(発売年度別時系列)
AUTOREX (1965年12月発売)
AUTOREX-P (1966年3月発売)
FTA (1968年4月発売)
AUTOREFLEX A (1970年発売:輸出機)
AUTOREFLEX A3 (1973年3月発売:輸出機)
AUTOREFLEX T3 (1973年4月発売)
ACOM-1 (1976年11月発売)
AUTOREFLEX TC (1976年11月発売:輸出機)
AUTOREFLEX T4 (1977年1月発売:輸出機)
FS-1 (1979年4月発売)
FP-1 (1980年8月発売)
FC-1 (1980年10月発売)
FT-1 (1983年4月発売)
AUTOREFLEX TC-X (1985年4月発売)

上の列記で、オレンジ色①は「EE」タイプでグリーン⑤は「AE」タイプです。時系列で見ると1985年以降一眼レフ (フィルム) カメラの発売がなく、コンパクト (フィルム) カメラである「コニカカメラ」或いは「現場監督」ばかりを発売し、ついに2003年をもってフィルムカメラ事業から撤退してしまいます。

今回扱う『HEXANON AR 50mm/f1.4 AE (AR)』は、1973年発売のフィルムカメラ「AUTOREFLEX T3」発売時点で用意されていたセット用標準レンズです。

もちろんこの他に上位格で「f1.2」或いは下位格に「f1.7」モデルが併売されていましたが、いずれのモデルも極端なピント面の解像度のみを追求せず「空間表現能力/質感表現能力」を併せ持つとても優れた描写性がいまだにファンを虜にしています。

【モデルバリエーション】
オレンジ色文字部分は最初に変更になった諸元を示しています。

前期型1973年発売
絞り環刻印優先機能:EE
最小絞り値:f16
絞り環クリック:半段クリック
距離環外径:小
指標値刻印:末広がり

中期型
絞り環刻印優先機能:AE
最小絞り値:f16
絞り環クリック:半段クリック
距離環外径:
指標値刻印:末広がり

後期型
絞り環刻印優先機能:AE
最小絞り値:f22
絞り環クリック:一段クリック
距離環外径:
指標値刻印:縦ライン

50mm/f1.4」の範疇なら上記モデルバリエーションになりますが、先代は梨地シルバーな絞り環を配していた「HEXANON 57mm/f1.4 EE」になります。




上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。

一段目
左端からシャボン玉ボケが破綻して円形ボケを経てトロトロに溶けていく様をピックアップしています。実は後で出てきますが、このモデルの光学系は6群7枚の拡張ウルトロン型構成です。ともなれば真円のシャボン玉ボケ表出はまず難しい (苦手) なのが常なのですが、ウルトロン型のくせに一丁前な (キレイな) 輪郭の円形ボケをちゃんと表出できてしまうところがさすがです。しかもそれなりにエッジを繊細に表現できているところがオドロキであり円形ボケに関して評価できる数少ないウルトロン型構成のオールドレンズとも言えます。

二段目
左の2枚は背景ボケの中で収差の影響を受けて乱れているボケ方の実写をワザとピックアップしました。つまりボケ方 (ボケ味) としての引き出しの多さではそれほど多くなく、ある意味優等生的なありきたりなボケ味しか楽しめません (極端な乱れたボケ方を期待するとなかなか撮れない)。

ところが人物撮影となると俄然能力を発揮してくれ、ポートレートレンズ以下の標準レンズ域の範疇で考えると人物撮影が得意なモデルと言うのは実はそう多くないと考えています。その中にあって数少ない真面目に使えてしまう人物撮影が魅力です。さらに次の三段目との兼ね合いでこれら人物撮影 (ポートレート撮影) の味付けがガラッと変わってくるので、その要素まで含めて考えるとちょっとポートレートレンズ相手でも似たような性格のモデルが思い浮かばないくらい、このモデルの人物撮影は独特な表現性を出せます。

三段目
何と言っても (一にも二にも) このモデルの最大の魅力はたった一つ「空間表現能力の高さ」であり、おそらく右に出る標準レンズ域のモデルは存在しないのではないでしょうか (彼の有名なPlanarさえ敵いません)?

その「空間表現性」をキッチリ写し込んでいる実写を4枚ピックアップしてみました。奥行き感/距離感/空気感そして立体感、どれをとってももの凄いとしか言いようがない「空間表現能力の高さ」です。単に背景がボケでいれば良いのではなく、或いは逆にそこそこに滲んでいれば表現できるワケでもなく、ボケ方と光の捉え方とエッジの表現性 (強調性) にプラスして緻密ではないのに緻密っぽい印象を残せるところが「空間表現」に至っているのではないかと考えています。

左端の実写は背景がそれほど滲んでおらず、しかし奥行き感が素晴らしく表現できている1枚です。また2枚目の写真はおそらく開放近くのf値で撮った写真と推測しますが、極端に滲んでいく中でもこれだけ距離感を留められるのは凄いと感じました。普通のトロトロボケのそれこそマクロレンズで撮った植物写真などには全く見られない「距離感/リアル感」だと思います。

また右の2枚はそれぞれ日射しを浴びながら寛いでいる人物写真ですが、この日射し感のみならず「空気感//気温」などまで写し込んでしまっているように見えてしまうのが素晴らしいです。これは単に日射しを入れた写真を撮ってみれば違いが分かると思います (これだけのリアル感を表現できるのか否か)。

まさにこの4枚の写真がこのモデルの「空間表現能力の高さ」を物語っていると思いますね。

四段目
左2枚はダイナミックレンジの広さを表すとしてピックアップしましたが、ギリギリまで頑張って (粘って) 黒潰れせず/白飛びもせずですが、その中で (それでも) ちゃんと色彩表現がキッチリ撮れているところが凄いと感じました。このような描写性はCarl Zeissの標準レンズやもちろんLeicaに相通ずるモノがあると思います (ある意味匹敵し得る能力と評価しています)。

光学系は先代モデルの焦点距離「57mm」が先に登場していた関係で、元々は5群6枚の当時流行っていたであろう普通の「ウルトロン型」構成でした (右構成図は57mm/f1.4の光学系です)。

必然的に今回の50mm/f1.4とは異なる描写性だったワケで、その意味では個性的とも言えずそつなく上手くこなしている優等生的な画造りに見えます。

普通、当時の業界に倣えば、次世代モデルはより合理化を進めてコスト削減に務めたりするのが常ですが、ところがKONICAは逆のことをやっていて50mm/f1.4では後群側を1枚拡張してしまい、何を考えたのか余計に拘った光学設計に変えてしまいました(笑)

さらに第5群と第6群の光学硝子レンズには「ランタン材」を含有させてしまい (右構成図 部分) 屈折率を10%代まで向上させています (先代よりも余計にコストを掛けている)。自ずと光学系を覗き込むと「極僅かに黄変化」しています。

これらの事からこの50mm/f1.4には相応にKONICAの拘りが感じ取れると考えています。
それは特に第2群と第3群のカタチ/比率で表れていると思います。

第1群 (前玉) が先代57mmでは裏面側が非常に緩やかなカーブの凸メニスカスでしたが、50mmは平凸レンズに変更してしまいました。するとその分入射光の屈折率を稼ぐ必要に駆られるので、必然的に第2群/第3群のカタチに至ったと推測できます (カタチが逆比率で普通と逆パターン)。特大の貼り合わせレンズを第4群に据えて、且つこれでもかと強制的に後玉へと収束させていった事がこの構成図から見えます (だからランタン材含有による屈折率の確保も納得できる)。

確かにこの光学系構成はCarl Zeissのプラナー型なのですが、プラナーと書いてしまうと誇張的なカリカリの鋭いピント面を想像する方が多いので敢えてそうしていません(笑) KONICAのそれは、あくまでも誇張感に至らないマイルド感です・・が然し、それがKONICAらしさであり魅力であり優しい雰囲気を漂わせながらも実はリアルすぎる表現性に溜息混じりに見入ってしまう写真を吐き出してくれるのがHEXANONですねぇ〜。

と言うのも、当方は何もかもカリカリの鋭いピント面だけが優れている (描写性能が高い) 証だとは考えていないので、それゆえ等倍鑑賞などもしませんし(笑)、等倍での画質チェックなども細かく行いません。どんなに画質が高く優れている数値で検査できたとしても、その写し出された写真に「質感表現/立体感/リアル感」を見出せなければ「意味が無い」と受け取っているからに他なりません。それは前述のようにトロトロに (滑らかに) 背景がボケていき、しかしピント面は非常に鋭いマクロレンズで撮られた花の写真だとしても、ノッペリした平面的な (二次元的な) 描写にしか至っていなければ、決して頷けないワケです (見ていてつまらないと言う意味)。

その意味で当方はスペック至上主義者ではありませんね・・(笑)

そういうスペックに拘る写真を撮りたければ、何もオールドレンズに手を出さずに、今ドキのデジタルなレンズで充分なのではないでしょうか? それをオールドレンズ相手に細かい数値を並べてあ〜だこ〜だ言っている評価を読んでも、そのモデルに何も興味を抱きません。

ちなみにランタン材は酸化トリウム含有のいわゆる「アトムレンズ (放射線レンズ)」と違いUV光の照射でも黄変化は改善できません (つまり今回のオーバーホールでもそのままです)。またコーティングはこの当時のKONICA製オールドレンズはほとんど「モノコーティング」ばかりです。従ってデジカメ一眼/ミラーレス一眼などカメラボディ側のオート・ホワイト・バランス設定をOFFにすると、このページ一番最後の実写のように暖色寄りに偏った発色になります。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。ハッキリ言ってこのモデルの登場時期が1973年だとしてもこの内部構造を見る限り「前世代的な設計」としか言いようがありません。下手するとKONICAには「合理化させてもっと必要な箇所に集中的にコスト配分していこう」と言う気概が社内に無かったのでしょうか?

実はこの古い臭い構造設計が仇となり、オーバーホール (整備) しようとすると様々な箇所が影響し合い期待通りの仕上がりに至りません。その意味でKONICA製オールドレンズはどのモデルも全て神経質な微調整を要求されるので正直 (ホンネは) 触りたくありませんね(笑)

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。他社光学メーカーが挙って合理化を突き進んでいる中、何を考えていたのかKONICAは従前の設計を踏襲し続けました。この鏡筒の最深部には「鋼球ボールを84個使った操作環 (リング/輪っか)」が組み込まれています。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

↑真鍮製 (黄銅) で造られている絞りユニットを撮影しました。絞り羽根はこのユニットの裏側 (反対の面) に刺さります。

すると外周側に「開閉環」がセットされており、そこに絞り羽根の「開閉キー」がささる (裏側の話) のでカムの移動に伴い (ブルーの矢印①)「開閉環が回って ()」絞り羽根が開閉する仕組みです。

ところがその絞り羽根が「常に開こうとするチカラ」を与えているのが「線径の非常に細い捻りバネ」だったりします (赤色矢印)。従って、この絞りユニットの真鍮材 (黄銅) が経年劣化で酸化/腐食/錆びしてしまい、経年の抵抗/負荷/摩擦が増大すると「必然的に捻りバネが弱る」結果に至ります。

何を言いたいのか?

←(裏側にはこんな感じで6枚の絞り羽根が刺さります)

絞り羽根の開閉異常」が発生する率が高いのが、KONICAが踏襲し続けた古臭い設計の構造による因果関係になります。残念ながら今回の個体もこの「捻りバネ」が弱っている為に「開放時に一部の絞り羽根が顔出ししている」ことになります。

↑絞りユニットはご覧のようにこんなに薄いサイズで用意されています。

↑実際に完成した絞りユニットを鏡筒最深部にセットしたところです。

↑そのままひっくり返して今度は鏡筒の裏側 (反対側) を後玉側方向から撮影しました。するとご覧のように鏡筒周りをグルッと囲んで「長いスプリング」が組み付けられており「開閉アーム制御キー」を掴んでいます。「開閉アーム」が操作される事で同時に「制御キー」も移動して (ブルーの矢印) 前述の「カム」が移動するので絞り羽根が開閉する仕組みです。

前述の鏡筒写真でご案内した「84個の鋼球ボール」がこの「操作環」だったワケですね (開閉アームと制御キーが附随するスプリングで引き戻されている環/リング/輪っか)。

ご覧のとおり、この長いスプリングは「絞り羽根を常に閉じるチカラ」を及ぼしているので、前述の絞りユニット内部にあった「線径の細い捻りバネ」と相反するチカラの作用で絞り羽根が正常に開閉する設計です。

↑距離環やマウント部を組み付ける為の基台です。

↑基台をひっくり返して裏側 (反対側) を撮影しました。ご覧のように、ここにも鋼球ボールを使ってクルクルと回る「 (リング/輪っか裏)」が備わっており「絞り連動レバー/開閉アーム用ガイド」が用意されています。さらにグリーンの矢印で指し示しましたが、ネジ山も用意されています。

↑真鍮製のヘリコイド (メス側) を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

↑ヘリコイド (オス側) を、やはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルは全部で9箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

ちなみに、このヘリコイド (オスメス) だけの状態 (基台にネジ込んでいる状態) ならば、非常に軽いトルク感で大変滑らかに駆動してくれますが、この後の工程で様々なチカラの伝達が関わってくると、途端に重いトルクに変わっていきます。これはハッキリ言ってこの当時のKONICA製オールドレンズの宿命的な構造の問題なので、どうにも改善できません

↑ここで先に距離環を仮止めしてしまいます。

↑この状態で再びひっくり返してまた裏側を撮影しました。前述の「ネジ山」は実は「絞り環用のネジ山」だったのです (グリーンの矢印)。

左写真はその「絞り環」を撮影しましたが、内側に「ネジ山」が切削されており、ネジ込んでいくのが分かります。

この当時の他社光学メーカーのオールドレンズは、そのほとんどがネジ込み式ではなくてハメ込み式で、且つクリック感を備えた絞り環の設計に変わっていましたが、KONICAでは旧態依然の古臭い設計を踏襲し続けていた事になります。

何故なら、このように「ネジ込み式の絞り環」を採用したオールドレンズは、日本のみならず海外も含めて1950年代〜1960年代に主流だった設計だからです。

↑実際に絞り環をネジ込んでセットしたところです。すると絞り環の両サイドに「鋼球ボール+スプリング」が組み込まれています (グリーンの矢印)。この「鋼球ボール+スプリング」の役目はカチカチと絞り環に刻印されている絞り値でクリック感を実現する目的で組み込まれています。

ここがポイントです・・。

普通この当時の一般的なオールドレンズは絞り環にクリック感を伴う設計が非常に多く普及していましたが、そのクリック感を実現する「鋼球ボール」は1箇所だけにセットされていました。ワザワザ両サイドに1個ずつ用意する必要がなかったからです。

では、どうしてKONICA製オールドレンズだけが両サイドに鋼球ボールを2個も入れて使っているのでしょうか?

答えはたったの一つ。「絞り環用のネジ山があるから」なのです(笑) つまりネジ込み式の絞り環で設計してしまったが為に「片側だけに鋼球ボールが入ると絞り環が固まる」ゆえにワザワザ両サイドに鋼球ボールを入れてネジ山に対する負荷 (絞り環を回すチカラを) 均一に保っているワケです。

そうは言っても実際組み上がると、このKONICA製オールドレンズのほとんどのモデルが「カチカチとクリック感」と言うよりも「ガチガチと擦れていく」と言った表現のほうが正しいと感じるくらい雑な印象のクリック感です(笑) その原因は両サイドに用意してしまった2個の鋼球ボールを押し込んでいるスプリングのチカラのせいでもあり、且つ使っている鋼球ボール径が⌀1mmと小さい事もガチガチ感を増長している一因です。

上の解説には他に非常に重要なパーツが存在することを案内しています。「絞り連動レバー/開閉アームガイド」ですね。結局、この「絞り連動レバー/開閉アームガイド」が附随する鋼球ボールで回転させている「操作環 (リング/輪っか)」を用意してしまったからこそ「絞り環がネジ込み式である必要性に至った」とも言えます。何故なら、ここに鏡筒からの「開閉アーム」が連結するからであり、鏡筒の周りをグルッと回っているスプリングのチカラが及ぶからであり、且つ実は絞り環にセットされている「AEロックボタン機構部の反発力」などのチカラまで及ぶとなれば、それは一般的なハメ込み式の絞り環では対応できなかったとも考えられます。

つまりこの当時既にKONICAにも他社光学メーカーと同じハメ込み式の絞り環の設計を考える余地があったと推測していますが、それが適わなかったのは一にも二にも「鋼球ボールで駆動させている環 (リング/輪っか) による制御方式を採り続けた」からであり、ひと言で言えば冒頭の解説のとおり「旧態依然の古臭い設計」からの改善をしなかった事に根本的な原因があります。

こういう構造面での考察も、消えていった光学メーカーの栄枯盛衰の因果関係を垣間見るようで何ともロマンを感じて仕方ありませんね・・。

↑上の写真は解説用に用意した合成写真です。合成なので縮尺が正しくありません。

左側の鏡筒が距離環がセットされている基台の中に組み込まれる事を太い赤色矢印で示しています。ところがその時鏡筒側の「開閉アーム」が基台側に用意されている「開閉アーム用ガイド」に刺さる必要があります (グリーンの矢印)。

つまりここで初めて鏡筒の「開閉アーム」が「絞り環と連係した」事になるワケですね。

これがKONICA製オールドレンズの非常に神経質な微調整の因果関係に至っています。鏡筒を繰り出したり/収納したりしてピント合わせするワケですが、この時「開閉アームとガイド」さらに「ガイドと絞り環」そして「絞り環と鋼球ボール」の都合3箇所の抵抗/負荷/摩擦の影響を受けて距離環が回っている事になります。

これが厄介なのです。逆に言うなら、距離環を回すと言うことは「開閉アームとガイド/ガイドと絞り環/絞り環と鋼球ボール」の3箇所からの抵抗/負荷/摩擦を引っ提げて全て距離環だけが引き受けて回っている事になります。

これを滑らかな操作性で回せる距離環に仕上げる事がどんだけ至難の業なのか???

↑上の写真を撮るまでに4時間が経過して(笑)、ようやく納得できるトルク感まで改善して前述の3箇所からの抵抗/負荷/摩擦を微調整して最終的な距離環を回すトルク感に至りました。赤色矢印はそれぞれ抵抗/負荷/摩擦のチカラの伝達経路ですね (絞り連動レバーと開閉アームにそのガイド)。

やっとのことで光学系前後群を組み込めます。

↑マウント部をセットして、この後は無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。

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ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑当初の予想どおり、相当厄介な微調整をするハメに陥り丸一日がかりでオーバーホールが終わりました。やはり作業対価分の回収はムリなようで「今回も赤字」でのヤフオク! 出品のようです(笑)

↑今回の個体でラッキ〜だったのは光学系の状態が良いレベルを維持している点です。LED光照射でもコーティング層経年劣化による極薄いクモリすら皆無です。カビ除去痕は数箇所残っていますが、ありがたい事に極薄いクモリを伴うレベルではなかったので、光学系内の透明度が非常に高い状態を維持していたワケです。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

↑光学系後群側もLED光照射で極薄いクモリが皆無です。極微細な点キズは少々多めに残っています (パッと見で微細な塵/埃に見える)。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:14点、目立つ点キズ:10点
後群内:20点以上、目立つ点キズ:17点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
・バルサム切れ:無し (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
(光学系内各群に経年相応なコーティング層劣化進行が僅かにあり)
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
光学系内の透明度が非常に高い個体です
(LED光照射でも極薄いクモリすら皆無です)
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑6枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。絞り環操作のクリック感は当初ガチガチした印象だったので多少軽い印象になるよう調整しています。絞り羽根が閉じる際は「ほぼ正六角形を維持」して閉じていきます。

なお、開放時に一部の絞り羽根が極僅かに顔出ししていますが内部の「捻りバネとスプリング」の経年劣化なので、そのチカラバランスの均整を執りつつ微調整することがこれ以上できないので改善できません (捻りバネとスプリングと言う形の異なるバネ材なのでこれ以上不可能です) 。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度と軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人によって「重め」に感じ「全域に渡ってほぼ均一」です。
(繰り出し/収納時で極僅かに軽いトルクムラあり)
・距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
・開放時に一部の絞り羽根が極僅かに顔出しします。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。

↑毎回オーバーホールするとKONICA製オールドレンズは納得できる仕上がりに至るのが五分五分といったところでしょうか。今回の個体に関して言えば光学系の透明度が高いだけに距離環を回す際のトルクムラが少々残念ですが、言われなければ気がつかない人も多いかも知れません。一応念の為に神経質な方のレベルでは「トルクムラが極僅かにある」とだけ明記しておきます。但し繰り出し時/収納時とでトルクムラの程度が変わるので、やはり内部からの抵抗/負荷/摩擦の分で影響を受けていると推測しています (設定絞り値によっても変わるのでスプリングのチカラも影響しています)。

今になって思いますが、本当に少しは合理化なり旧態依然の古臭い設計を卒業してほしかったですね(笑) クリック感を実現する鋼球ボールが片側だけに設計変更するだけでだいぶ改善されると思いますが、ネジ山が備わっている以上どうにもできません。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離45cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

この実写はミニスタジオで撮影していますが上方と右側方向からライティングしています。その関係でフードを装着していない為に絞り値の設定によりハレ切りが不完全なまま撮影しています。一応手を翳していますがハレの影響から一部にコントラスト低下が出てしまうことがあります (簡易検査具による光学系検査を実施済で偏心まで含め光軸確認は適正/正常)。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f2.8」で撮りました。

↑f値は「f4」に変わっています。

↑f値「f5.6」になりました。

↑f値「f8」です。

↑f値「f11」に変わっています。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。「回折現象」の影響が現れ始めています。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。