◎ Meyer-Optik Görlitz (マイヤーオプティック・ゲルリッツ) Orestor 100mm/f2.8 zebra《前期型》(M42)

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今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、旧東ドイツ
Meyer-Optik Görlitz製中望遠レンズ・・・・
Orestor 100mm/f2.8 zebra《前期型》(M42)』です。


ヤフオク! によりガイドライン違反で削除された為、このブログへのリンクを外して再出品しました。ウォッチ頂いた方々には大変申し訳御座いません。

前回このモデルをオーバーホール済でヤフオク! 出品したのは4年前の2015年でした。当時は同じMeyer-Optik Görlitzの中望遠レンズ「Trioplan 100mm/f2.8」の市場価格高騰が始まった頃だったので、このOrestorのほうは注目されておらず底値だったのが敬遠していた理由です。今回改めて考察すると人気モデルTrioplanとはまた違う魅力が見えてきたので久しぶりに扱ってみました。

Trioplanシリーズの魅力と言えば今でこそ大変美しい繊細なシャボン玉ボケの表出が大きな魅力ですが、実は今回Orestorを扱ってみて逆にTrioplanシリーズの欠点が見えてきたように感じます。それはそもそも当方が実装している光学系構成に着目してスタートをしていなかったのがイケナイのですが、3群3枚トリプレット型構成のTrioplanに対して、Orestorは4群5枚のプリモプラン型構成を採っていました。

となると、そもそも吐き出す写真の描写性は性格が近くなるハズがありません。確かに繊細で美しいシャボン玉ボケの表出となるとTrioplan 100mmに適うオールドレンズはまず思い浮かびませんし、このOrestor 100mmも全く足元にも及びません。ところが質感表現能力と撮影現場のリアル感 (立体感) となると途端に苦手になるTrioplanに対して、このプリモプラン型構成を実装してきたOrestorは俄然有利になってきます。それもそのハズで標準レンズの「Primoplan 58mm/f1.9」と同一の光学系構成を採っているワケですから、その血筋を受け継いだ画造りに至っている事は至極納得できます。実際Orestorのピント面の鋭さは相当なもので、且つPrimoplan譲りの質感表現能力の高さやリアル感の演出はそのま描写性に見ることができるワケで、そもそもTrioplanと比較していた考え方だったのが間違っていたのです。

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Meyer-Optik Görlitzの中望遠レンズは、Trioplan 100mm/f2.8が有名ですが、その開発は1916年まで遡るので相当歴史の長いモデルです。実際に一眼レフ (フィルム) カメラ用途として登場したのは戦時中の1942年でしたが、当時は真鍮製で軍用が主な目的だったようです。1893年にHarold Dennis Taylorによってデザインされた3群3枚の Cooke-Triplet型光学系がその設計の基本になっています。

今回出品するモデルOrestor 100mが登場したのはそれから24年も経った1966年になり、当時のPENTACON製フィルムカメラやEXAKTA RTL1000 (最後のexaktaマウントモデル) 向けに用意された交換レンズ群の中の一つです。

【モデルバリエーション】
オレンジ色文字部分は最初に変更になった諸元を示しています。

前期型1966年発売
絞り羽根枚数:12枚
絞り連動ピン:無
プレビューボタン:無
絞り環:クリック式
プリセット絞り機構:無

中期型1967年発売
絞り羽根枚数:6枚
絞り連動ピン:
プレビューボタン:
絞り環:クリック式
プリセット絞り機構:無

後期型-I1968年発売
絞り羽根枚数:6枚
絞り連動ピン:有
プレビューボタン:有
絞り環:クリック式
プリセット絞り機構:無

後期型-II:〜1977年まで製産
絞り羽根枚数:6枚
絞り連動ピン:有
プレビューボタン:無
絞り環:クリック式
プリセット絞り機構:無
鏡胴:黒色鏡胴

モデルバリエーションで注目するのは「中期型」です。この時点で後のPENTACONモデルへと引き継ぐ大幅な内部構造の変更などがなされています。

前期型のみ
絞り羽根枚数:12枚
絞り羽根のカタチ:円弧型
絞り羽根回転方向:左回り
絞り制御方式:実絞り (クリック感あり)
絞り連動ピン:無
プレビューボタン:無

中期型後期型-II
絞り羽根枚数:6枚
絞り羽根のカタチ:L字型
絞り羽根回転方向:右回り
絞り制御方式:自動絞り (クリック感あり)
絞り連動ピン:
プレビューボタン:

ところがここで気がつかなければイケナイのですが、Meyer-Optik GörlitzがPENTACONに吸収合併したのは1968年です。もちろんそのPENTACONも1981年にはCarl Zeiss Jenaに吸収され消滅してしまいますが (一部サイトで逆にCarl Zeiss JenaがPENTACONに吸収と案内していますが、Carl Zeiss Jenaはベルリンの壁崩壊の1989年時点でもちゃんと存在しており後の1990年東西ドイツ再統一時点でZEISSとして併合されています)、吸収される直前の1967年時点で既にPENTACONモデルと同一の内部構造に大きく設計変更しています。もちんその後PENTACONモデルになっても何ら内部構造は変更されず最後まで製産が続けられました (1977年製産終了)。

ここがポイントで、PENTACONに吸収される前の時点でPENTACONモデルに継承されるべき内部構造に既に設計変更していた点が (鏡胴デザインが同じゼブラ柄なのにも拘わらず)、自社工場をCarl Zeiss Jenaに押さえられていて、且つCarl Zeiss Jena直下のPENTACONに製品供給を強要されていた事が見えてきます。

Meyer-Optik Görlitzは経営難からPENTACONに吸収されましたが、実は自社工場の稼働権限すら失っていた実情から当時の経営難を乗り切るだけの体力は既に無く、1953年からの吸収合併要求をひたすらに拒否しつつもCarl Zeiss JenaやPENTACONの思惑どおりに消滅していった事が垣間見えます。「悲劇の光学メーカーMeyer-Optik Görlitz」の命運は、既に敗戦時に決していたのかも知れませんね・・ロマンが広がります。



上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。

一段目
左端からシャボン玉ボケが破綻して円形ボケへと変わっていく様をピックアップしていますが、Trioplanのような真円で繊細なエッジを伴う美しいシャボン玉ボケの表出は苦手です。ところがシャボン玉ボケや円形ボケが表出していながらもピント面の鋭さを見た時にPrimoplanに相通ずる鋭さとリアル感を感じます。

二段目
さらに円形ボケが破綻して収差ボケへと変わる様を載せましたが (左2枚)、プリモプラン型構成の独特な滲み方を伴い、しかしやはりピント面の鋭いエッジがちゃんと残っているところがTrioplanとは大きな違いです (Trioplanはピント面がマイルドに変わっていく/トリプレット型の個性とも考えられる)。さらに驚異的なのが右から2枚目の写真で、まるで「水墨画風」とも見えてしまうほどにグレースケールの世界にそれこそカメラボディ側のフィルター処理で言うところの「カラー2値化処理」の如く赤色の屋根だけがインパクトとして演出効果になっています。ところが、この写真をよ〜く見るとちゃんとカラーのままであり「相当なダイナミックレンジの広さ」を物語っています (森の緑色がちゃんと写り込んでいる)。

実はこのダイナミックレンジの広さがTrioplanで最も苦手としている要素であり、暗部の潰れや白飛びなどは3群3枚のトリプレット型光学系では限界があるのではないかと考えています。さらにそれにブラスしてプリモプラン型光学系の実力たる「ピント面の鋭さ」とが相まり、右端のような被写体の素材感や材質感を写し込む質感表現能力の高さに至っています。

三段目
それらダイナミックレンジの広さとピント面の鋭さが功を奏して、左端の写真のように非常に現場感を残したリアル感タップリな1枚を残しています。このリアル感のレベルはTrioplanでは出すことができません。それは2枚目の写真で明らかで、現場の雰囲気まで感じられる (ある意味空気感まで感じられる) 効果に至っています。もちろんそれらの要素はポートレートレンズたる人物撮影でも大変活き活きとした効果となって表れていますが、Trioplanでの人物撮影に今ひとつ物足りなさを感じるのとは別の世界です。

光学系は標準レンズ「Primoplan 58mm/f1.9」から受け継ぐ4群5枚のプリモプラン型構成です。それこそCarl Zeiss Jena製標準レンズのBiotar 58mm/f2のように、シルバー鏡胴を最後に消滅していった系譜と同じようにPrimoplanも消滅しますが、その血筋だけはこのOrestorに引き継がれ、そしてその描写性に見て取ることができます。

中期型後期型-II」までが右構成図で、4群5枚のプリモプラン型構成は仕様変更などが一切行われていませんが、極僅かに各群の曲率や厚みなどがイジられています。それは特に「中期型後期型-II」で筐体サイズから絞り羽根制御方式に至るまで大幅に仕様変更されたのが影響しており、例えば最短撮影距離が同じ1.1mのままにも拘わらず、光学系第3群の外径サイズは小型化されています (前玉も緩やかな両凸レンズ)。

しかしそもそも筐体サイズを見れば一目瞭然で、マウント面からの突出量 (全高) 僅か55mmと言うコンパクトな外観なのが「前期型」の大きな相違点です。

これらの事柄から、今回久しぶりにこのモデルを扱いましたが、まさにPrimoplanから引き継ぐ画造りを残しつつも焦点距離100mmとして、Trioplanとはまた異なった写りとして1966年に投入されてきた意味が理解できたように思います。再評価といったところでしょうか・・。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。内部構造としては「初心者向け」です。Meyer-Optik Görlitz製オールドレンズに多い「光学系後群側のイモネジ固定」も無く楽です (当方では必ず簡易検査具で光軸/偏心チェックしますが)。しかし、Meyer-Optik Görlitz製オールドレンズのこの当時のモデルには特異な方式の「直進キー」が採用されており、それによる「距離環を回すトルク調整」が相当難易度の高いハードルです。たいていの場合 (今回の個体も同じですが) 過去メンテナンス時にヘリコイドグリースを「白色系グリース」にすることで逃げています(笑)

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。このモデルではヘリコイド (オス側) が独立しており別に存在します。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

↑12枚の絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成させます。ほぼ真円の「キレイな円形絞り」を実現していますから、例えば開放ではなく半段分絞った絞り値での撮影時にも必ず「円形ボケ」表出が期待できますね (f2.8〜f8までは半段ステップの絞り値)。

↑完成した鏡筒を立てて撮影しました。光学系の構成はたかが4群5枚ですが、第2群に巨大な硝子レンズの塊 (貼り合わせレンズ) が配置されるので、ご覧のように奥の深い (長い) 鏡筒です。

↑鋼球ボール+スプリングを組み込んでから絞り環をセットします。このモデルにはプリセット絞り機構が存在しないので、単なるクリック感を伴う実絞り方式です (クリック感がちゃんとあるので操作時に有難い)。

↑後からセットするのが面倒なので、ここで先に光学系前後群を組み込んでしまいヘリコイド (オス側) をセットします。ヘリコイド (オス側) には両サイドに「直進キーガイド」と言う「V字溝」が備わっており、ここを「直進キー」がスライドして行くことで鏡筒を繰り出したり/収納したりをする仕組みです。

↑鏡胴「前部」がこれで完成なので鏡胴「後部」の工程に入ります。距離環やマウント部を組み付ける為の基台ですが、両サイドに「直進キーが刺さるための穴」が備わっています。

この穴には左写真のような「尖頭筒スプリング」の方式を採った「直進キー」が刺さります。スプリングと言っても、指で押し潰そうとしてもほぼ圧縮しないほどの「硬い鋼材」のスプリングです。

従ってこの方式の「直進キー」を採用しているMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズは、この「尖頭筒」と前述の「V字溝」との接触レベルが距離環を回す時のトルクに大きく影響してきます。

酷い場合にはスプリングを除去してしまう過去メンテナンスがあったりしますね(笑)

↑距離環 (ヘリコイド:メス側) を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

↑さらに鏡胴「前部」にセットされているヘリコイド (オス側) を、やはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルは全部で9箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

この後は無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にレンズ銘板をセットすれば完成です。

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ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑4年ぶりに扱いましたがオーバーホール自体は簡単なモデルですが大変コンパクトな筐体サイズです。

レンズ銘板には左の刻印がありますが、これは「1st quality」のロゴマークです。レンズ銘板から省かれている個体もあるので刻印する基準がよく分かりません。

↑光学系内は驚異的な透明度を誇っている個体です。もちろんLED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。

残念ながら光学系第2群の貼り合わせレンズには、中心付近にバルサム剤に含まれていた異物が浮きとなっている点状が3点ありますが (雪の結晶のようなカタチをしている)、今後将来的に拡大する兆しもありませんし写真にも影響しません。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

↑後群側もLED光照射で極薄いクモリが皆無です。極微細な点キズなどは前後群共に複数残っています。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(順光目視で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:18点、目立つ点キズ:12点
後群内:17点、目立つ点キズ:13点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内)
・バルサム切れ:無し (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・第2群貼り合わせレンズ中心付近にバルサム剤に含まれた異物の浮きが点状で3点あります。将来的に広がる事はありません(写真にも影響なし)。
光学系内の透明度が非常に高い個体です
(LED光照射でも極薄いクモリすら皆無です)
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑12枚の絞り羽根もキレイになり絞り環のクリック感共々小気味良い操作性に仕上がっています。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。クロームメッキのゼブラ柄部分も当方にて「光沢研磨」を施したので、当時のような艶めかしい眩い光彩を放っています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:重めと軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人によって「重め」に感じ「全域に渡って完璧に均一」です。
・距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。

↑当初バラす前の非常に重いトルク感から比べれば相当な軽さに仕上がりましたが、そうは言ってもヘリコイドグリースを新しく入れ替えているので決して軽すぎるトルク感ではありません。また塗布した「黄褐色系グリース」の性質上、ヘリコイドのネジ山が擦れる感触は極僅かに指に伝わってきます。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

同じMeyer-Optik GörlitzのPrimoplan 58mm/f1.9を使っていらっしゃる方、或いは気になっている方にはお勧めの同じ画造りを期待できる中望遠レンズです。その意味ではPrimoplan同様「ボケ味の引き出しが多い」とも言えますね。特にリアル感のレベルは相当なものなので、Trioplanが苦手とする本来のポートレート撮影 (人物撮影) には最適です。

↑当レンズによる最短撮影距離1.1m付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

この実写はミニスタジオで撮影していますが上方と右側方向からライティングしています。その関係でフードを装着していない為に絞り値の設定によりハレ切りが不完全なまま撮影しています。一応手を翳していますがハレの影響から一部にコントラスト低下が出てしまうことがあります (簡易検査具による光学系検査を実施済で偏心まで含め光軸確認は適正/正常)。

このモデルは「フードが必須」とも言えるので、ありきたりな⌀49mm径のストレート型フードでもケラレなど発生しませんから装着して使ったほうが良いです。この実写ではフードが無いので手の平を翳して撮影していますが、ほぼ全ての写真でハレが出てしまうので (写真中央部分/お城の階段部分辺り) フード装着は必須です。

また当初バラす前の実写チェック時には甘い印象だったピント面がご覧のように大変鋭い状態まで改善できています (原因は第2群の貼り合わせレンズ締付環の緩み/反射防止塗膜の塗りすぎ)。その意味で、当方のオーバーホールでは「固着剤反射防止塗膜」の類は全て完全除去してから必要があれば当方で再び着色しているので、光学系の光路長確保が適正状態に至ることが多いです (実際に毎月のオーバーホール/修理ご依頼分で実証済)。もちろん簡易検査具でしか検査できませんが「光軸確認 (偏心含む)」もチェックしつつ調整済だからこのようなピント面に至ります (つまり色ズレが無い)。

↑絞り環を回して設定絞り値「f4」で撮影しています。実際は絞り環には半段分の位置に「●」刻印があってクリックストップできます (f8まで半段ずつ可能)。既に写真中央部にフレアの影響が出ています (フード未装着だから)。

↑さらに回してf値「f5.6」で撮りました。

↑f値「f8」に変わっています。

↑f値「f11」での撮影です。

↑f値「f16」です。そろそろ「回折現象」の影響も現れ始めています。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像力やコントラストの低下が発生し、ねむい画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞りの径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

↑最小絞り値「f22」での撮影です。