◎ CARL ZEISS JENA DDR (カールツァイス・イエナ) MC FLEKTOGON 35mm/f2.4(M42)
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今回の掲載は、オーバーホール/修理ご依頼分のオールドレンズに関するご依頼者様や一般の方々へのご案内です。
(ヤフオク! に出品している商品ではありません)
写真付の解説のほうが分かり易いためもありますが、ご依頼者様のみならず一般の方でもこのモデルのことをご存知ない方のことも考え今回は無料で掲載しています (オーバーホール/修理の全行程の写真掲載/解説は有料です)。
オールドレンズの製造番号部分は画像編集ソフトで加工し消しています。
どう言うワケか毎月必ずこのモデルのオーバーホール/修理を承ります(笑) 当方がオーバー
ホールを始めて7年が経ちましたが、オーバーホール/修理のみならずヤフオク! への出品も
含めると今回が136本目の扱いです。
何も好きこのんで扱っているワケではなく、むしろこのモデルの調整には限界を感じている (設計上の問題がある) ので、どちらかと言うとあまり関わりたくないモデルなのですが、これだけの個体数を扱っていると自ずと「標準的な適正と考え得る調整/状態」と言うものが見えてきます。
もちろん、今となってはバラした際の小さなネジの相違すら一目瞭然で、パッと見てもすぐに何処で使うネジなのか明確に判断できますから、パーツケースの中にまとめて入れていても間違えることはありません。まさに意に反して「FLEKTOGON専属の修理屋さん」みたいなお話です(笑)
このモデルは旧東ドイツのCARL ZEISS JENA DDR製広角レンズですが、前身は1953年に発売されたシルバー鏡胴モデル「Flektogon 35mm/f2.8 (silver)」になり、その後ゼブラ柄に変遷しますが、1972年にマルチコーティング化されて今回の黒色鏡胴モデル『MC Flektogon 35mm/f2.4 (M42)』へと一新されます。
【モデルバリエーション】
※オレンジ色文字部分は最初に変更になった諸元を示しています。
初期型:1972年発売
最短撮影距離:19cm
最小絞り値:f16
MC刻印:MC
前玉固定環:薄枠
銀枠飾り環:距離環
製造番号:9,800,000〜10,000,000の前で消滅
前期型-Ⅰ
最短撮影距離:20cm
最小絞り値:f22
MC刻印:MC
前玉固定環:薄枠
銀枠飾り環:距離環
製造番号:混在 (10,000,000〜、リセット後0700〜30,000)
前期型-Ⅱ
最短撮影距離:20cm
最小絞り値:f22
MC刻印:MC (マウント面に電気接点端子装備)
前玉固定環:薄枠
銀枠飾り環:距離環
製造番号:混在 (10,000,000〜、リセット後0700〜15,000)
中期型-Ⅰ:1980年代
最短撮影距離:20cm
最小絞り値:f22
MC刻印:MC
前玉固定環:幅広枠
銀枠飾り環:距離環
製造番号:リセット後0700〜70,000
中期型-Ⅱ
最短撮影距離:20cm
最小絞り値:f22
MC刻印:MC
前玉固定環:幅広枠
銀枠飾り環:無
製造番号:混在 (リセット後47,000〜70,000)
後期型-Ⅰ
最短撮影距離:20cm
最小絞り値:f22
MC刻印:白MC (auto表記附随)
前玉固定環:幅広枠
銀枠飾り環:フィルター枠
製造番号:混在 (リセット後30,000〜)
後期型-Ⅱ:〜1990年まで生産され終焉
最短撮影距離:20cm
最小絞り値:f22
MC刻印:白MC (auto表記附随)
前玉固定環:幅広枠
銀枠飾り環:無
製造番号:リセット後14,000〜,70,000〜220,000サンプル取得終了
上のモデルバリエーションの中で製造番号に関しては、当方で整備した個体の他に海外オークションebayでサンプル取得して参考にしています (総数50本)。
なお、モデルバリエーションで製造番号グリーン色の文字に関しては、製造番号のシリアル値がMAX値に到達してしまい、一旦リセットされた後の符番を表しています (実際の符番はリセット後0001ではなく1,000番台からスタートしている)。また、製造番号欄に「混在」と記載されているタイプは、その前のタイプと混在した製造番号の符番なので同時期に「並行生産」していたことになります。
例えば「後期型-Ⅰ」は「中期型-Ⅱ」と混ざった製造番号で存在しているので、同時期に2つのタイプが生産され完成した個体から順番に製造番号をシリアル値として符番していたことになります。これは何を意味するのか・・生産工場がCarl Zeiss Jenaの本体工場だけではなかったことが窺えます (つまり複数工場で並行生産して増産していた)。しかし、最後の「後期型-Ⅱ」(製造番号:70,000〜) の段階では増産をやめてしまい1990年の東西ドイツ再統一に至っているようです。
このように「製造番号」とモデルバリエーションとの関係づけで捉えると、結論として当時の生産工場はCarl Zeiss Jenaの本体工場ひとつだけではなく複数の工場で同時期に並行生産しており、且つ製造番号は各工場に生産前の時点で先に割り当てられていたことになります (生産完了時に各工場が割り当てられている製造番号をシリアル値として符番)。
それ故モデルバリエーションが製造番号の中でバラバラに混在してしまう事象に至ったのではないでしょうか。そう考えないと、一つの工場で生産ラインを変えて別々の構成パーツ (設計が異なるから) をワザワザ用意して生産しなければイケナイ「必然性」が全く浮かんできません。工場が別だったとすれば、そもそもその工場は基はCarl Zeiss Jenaではない全く別の光学メーカーだったハズ (つまり吸収した光学メーカーの工場設備) ですから、納得できます。
上の写真はFlickriverで、このモデルの実写を検索した中から特徴的なものをピックアップしてみました。
上段左端から「シャボン玉ボケ・円形ボケ・玉ボケ・背景ボケ」で、下段左端に移って「発色性・パースペクティブ・動物毛・逆光」です。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
気がついたら、あまりにも銘玉として有名モデルなので、まともに描写性に関して記載した
ことがありませんでした(笑)
ギリギリ何とかシャボン玉ボケと言えそうな真円に近くエッジが際立つ円形ボケを表出させることができます。やがてリングボケ・玉ボケへと移っていきますが、最短撮影距離20cmですから相当寄れるにも拘わらずマクロレンズ並みのトロトロのボケ味までは到達しません (上段右端)。
発色性はさすがにこの当時の旧東ドイツ製オールドレンズたる「コッテリ系」の色乗りを味わえ、当時の日本製オールドレンズとは意趣が異なるでしょうか (後にはすぐに似たような描写特性が日本の光学メーカーでも流行ります)。
さすがにキッチリと端正なパースペクティブで歪みが非常に少なく、被写体の素材感や材質感を写し込む質感表現能力にも優れ、距離環や空気感までも表現し得る立体的な画造りには頷くしかありません。
光学系は6群6枚のレトロフォーカス型ですが、内部に貼り合わせレンズ (2枚の光学硝子レンズを接着剤を使って貼り合わせてひとつにしたレンズ群) を配置せずにここまでの描写性能に仕上げていますから、Carl Zeiss Jenaの意地を見せた逸本とも言えます。
今回オーバーホール/修理を承った個体は「前期型-I」にあたり市場では最も人気が高いタイプでもあります。
【当初バラす前のチェック内容】
1. Rayqual製マウントアダプタに装着すると無限遠が出ていない。
2. K&F CONCEPT製マウントアダプタに装着すると無限遠が出る。
3. 開放f値「f2.4」時に絞り羽根が顔出ししている。
4. 最小絞り値「f22」が閉じすぎ。
5. 距離環を回すとトルクムラを感じスリップ現象も出ている。
【バラした後に確認できた内容】
6. 過去メンテナンス時に白色系グリースを塗布している。
7. 光学系第1群 (前玉) コバ端着色ミスあり。
8. 光学系第2群の固定環は生産時点のままを確認。
・・とまぁ〜こんな感じなのですが、ご依頼者様からのご依頼内容は「1.Rayqual製マウントアダプタで無限遠が出ていない」と言う点だけでしたから、チェックするとこんだけ出てくるワケであり、イキナシ溜息モードですョ・・毎月のことですが(笑)
↑先ずは何と言っても問題の (ご依頼内容の) 1. Rayqual製マウントアダプタ装着時に無限遠が出ない (合焦しない) 問題です。
Rayqual製マウントアダプタは日本製マウントアダプタの代表格みたいな存在で市場での信用/信頼性が最も高い高精度な製品です (と言うか日本製はこれしか無い?)。三晃精機さんの社長さんが亡くなられているのでご冥福をお祈り申し上げます。
無限遠位置での実写確認も済んでいますが、ご依頼者様が仰るとおり無限遠が出て (合焦して) いません。マウントアダプタ別の比較では無限遠である「∞」刻印位置で突き当て停止してしまうので比べられませんから、上の写真のとおりワザと「実測:2.5m位置」にピントを合わせた時の距離環距離指標値を撮影しています (赤色矢印)。
実測距離2.5mにも拘わらず、距離環距離指標値はご覧のように「3m」を優に超えています。またこの時オールドレンズのマウント面とマウントアダプタとの「間の隙間」にも要注意です (グリーンの矢印)。
↑一方、こちらは当方がオーバーホール時に「基準マウントアダプタ」としている中国製の「K&F CONCEPT製マウントアダプタ」です。
実測値2.5mに対してピント合焦点は距離環距離指標値「3m僅か手前」位置です (赤色矢印)。この時のマウントアダプタとの「間の隙間」にも注目ですね (グリーンの矢印)。
具体的に細かい話や実測値などをここで上げませんが、詳細を知りたい方は「解説:M42マウントアダプタについて」でご案内しているので興味がある方はご覧下さいませ。
と言うか、あんましRayqual製マウントアダプタ批判すると「日本製マウントアダプタ信者」の方々から嫌がらせやクレームが途端に増大するので、もぅ懲り懲りだったりします(笑)
なので、今回はな〜んにも辛口コメントしません (もぅ勘弁です/参りましたから許して下さい)
ちなみに「実測:2.5m」位置を必ずチェックしている理由は、前述のとおり無限遠位置「∞」で距離環が停止してしまう為に「アンダーインフ」の確認ができないからです (どのくらいのアンダーなのかが分からないから)。
この「アンダーインフ」と「オーバーインフ」の相違をごちゃ混ぜにしていらっしゃる方や そもそも無限遠位置のことが正しくご理解頂けていない方など、結構多いですね(笑)
おかげで納得できないと当方に対するクレームが後を絶ちません (その度に減額処置して凌いでいたり)。結構なタイミングでいちいち解説しているのですが、なかなかご理解頂けません。
【無限遠位置とは】
一般的に「無限遠位置」とは「距離環でピント合わせを必要とせずに合焦している距離の距離環指標値位置」を指し、距離環指標値刻印の「∞」で突き当て停止します (距離環がカチンと 突き当たってそれ以上回らず止まる状態)。
それは一般的なお話で、当方のオーバーホール作業では必ず「オーバーインフ」に設定しています。理由は、皆さんフィルムカメラに装着するのかマウントアダプタ経由でのご使用なのか不明だからです (ヤフオク! 出品時の話)。そのためにオーバーホール/修理ご依頼時には必ず「装着先」をお聞きしています。
このように申し上げても「無限遠位置がピント合焦する位置ならピタリと∞刻印で合わせればそれでいいじゃないか」と仰る方も居ました(笑) 何のためにオーバーインフ設定にしているのかの説明がそもそも無視されていたりします(笑) こう言う人の場合は、もぅ素直に謝って減額処置で逃げるしか通用しませんから、損をするのは最終的に当方と言うことになります (つまりタダ働きで終わる)(笑)
【オーバーインフとは】
距離環距離指標値「∞」の僅か手前でピント合焦し、それから先「∞」位置に向かって距離環を回していくと再びピント面がボケ始める状態。
「オーバーインフ」を因数分解すると「インフ位置 (つまり∞刻印位置)」の場所で「オーバーしている (ピント面がボケ始めている)」ことを表すコトバですから「無限遠合焦がオーバー している」ではありません。英語の感覚で考えて頂ければ本当は正しくご理解頂けるのですがそれが日本人にとってはチョ〜苦手だったりします(笑)
【アンダーインフとは】
オーバーインフの逆で、距離環距離指標値「∞」位置でもピント面が合焦しない状態 (つまり最短撮影距離〜∞まで遠景が一切合焦しない) です。前述に倣えば「無限遠合焦がアンダー (足りない)」で合っているのです(笑) ここが難しいのでしょうねぇ〜。無限遠が足りないのですからアンダーで正しいワケで、こっちはご理解頂けるのに「オーバーインフ」はダメと・・。
足りないと言うことは「∞」位置の先でないとピント面合焦しないとすぐピンッと来ます。
つまり「オーバーインフ」も「アンダーインフ」も同じ意味になったまま理解していらっしゃる方が居ますねぇ〜(笑) いろいろ説明していると「素人なので難しいことは分からないからとにかく納得できないので減額」となります(笑)、世知辛い世の中で鬼が棲んでいますョ(笑)
なお、ヤフオク! で海外から整備済のオールドレンズを出品していらっしゃる方が居ますが「無限遠」のことを「無限大」と案内されています。当方では「無限遠」と言うコトバを使いますが、具体的にピタリとピント合焦する位置が「無限遠位置」なので「無限遠」です。
一方「無限大」はある任意の数値「a」があったとすると、その数値「a」に限りなく近づいて増幅している「状態」を指すコトバなので、ピタリとピント合焦する寸前の「状態」を指してしまいます。それではおかしいので (ピント合焦するので) 「無限遠」です(笑)
もちろん反対語である「無限小」と言うコトバも存在しますから、これは限りなく任意の数値「a」に近づきつつ減少している「状態」を指し同じ概念ですね。数学のお話ですが「無限大集合」とは言わないので (無限集合が正しい) 学生の頃に勉強したハズなのですがねぇ〜(笑)
↑また愚痴ってしまいました (スミマセン)。こちらは開放f値「f2.4」の絞り羽根の状態を撮りました。ご覧のように絞り羽根が顔出ししています。
↑開放側が絞り羽根顔出しなら、必然的に最小絞り値「f22」側は「閉じすぎ」になりますョね (ご覧のとおりです)?
ところが、今回の個体は絞り環が開放側「f2.4の先」最小絞り値側「f22」の先まで回ります。つまり開放時は「f2.4の先」で完全開放している状態にセットされていました。これは「確信犯」ですねぇ〜。実際にこの最小絞り値「f22」の状態で実写確認すると「回折現象による コントラスト低下」を招いていました。ちょっと色褪せたような、解像感も目減りしたような印象の写りに堕ちます。
このモデルは最小絞り値「f22」でも充分な画質をキープしているハズなので、こんな設定はあり得ません(笑)
↑こちらは実際にバラし始めた時に撮影したヘリコイド (オスメス) です。
↑過去メンテナンス時に塗布されていたのは「乳白色の白色系グリース」且つ「粘性:軽め」でした。
実は、このグリースを好んで使っているヤフオク! 出品者が居て、プロのフォトグラファーだったりします。このグリースは何処のホームセンターでも間違いなく棚に並んでいる有名処のグリースです。
真っ白だった綿棒が「グレー状」になっているのは、アルミ合金材のヘリコイドネジ山が既に摩耗しているワケで、その「摩耗粉」が混じっており乳白色がグレー状に変色しています。
このグリースの色合いから過去メンテナンスは1〜2年内と推察できますし、既に液化も進行しており距離環を回すとピント合わせ時に「ククッ」と微動してしまう「スリップ現象」も発生していましたから、あまり使い易い距離環駆動とは言い難い状態です。
さらに注意深くゆっくりと距離環を回していくと「トルクムラ」も感じました (重くなったり軽くなったり)。このモデルのピントの山はアッと言う間なので、できれば少し重めのトルク感で距離環が回ったほうがキッチリとピント合わせができます。
↑さらにバラしていくと光学系第1群 (前玉) 裏面のコバ端着色をミスっていて硝子レンズ面にコバ着色しています (赤色矢印)。逆にコバ端には一部に剥がれたままの箇所があったりします (グリーンの矢印)。何やってるんでしょうか・・?
ここからはオーバーホールが完了したオールドレンズの写真になります。
↑Rayqual製マウントアダプタ装着時に無限遠が出ない (合焦しない) と言う問題だけでご依頼頂きましたが、当方にとって今回の個体が扱い数136本目ともなれば、本来の適正な調整/状態がどうなのか、或いはどれだけ狂っているのかが当方にはすぐに分かります。
そもそもバラす前の実写確認で「ピント面の鋭さが足りない」ような印象を持ちました。具体的な原因がバラす前で分からないので冒頭の問題点には含んでいません (と言うか無限遠位置の問題が影響していると予測していた)。
ところが、バラしてみれば何のことはなく、光学系第6群 (つまり後玉) を逆向きに過去メンテナンス時にはセットしていましたね(笑) ちょっとウケてしまいました(笑) あまりこのモデルのオーバーホール作業で楽しいことは無いのですが、これはウケましたョ!(笑)
↑光学系内の透明度が非常に高い個体です。もちろん開放時「f2.4」でご覧のとおりキッチリと完全開放です (当たり前です)。前玉コバ端着色ミスもキレイに落として再着色しました。
↑光学系後群の透明度も驚異的な状態を維持しています。もちろん「後玉」の向きも正したので(笑)、必然的にピント面の鋭さが出ています (このページ一番下の実写をご覧頂ければ分かります)。
↑これが最小絞り値「f22」での適正な絞り羽根の閉じ具合です(笑) 何故に故意に閉じさせていたのか (回折現象で画質劣化を招くのに) 意味不明です・・。
ここからは鏡胴の写真になりますが経年の使用感をほとんど感じさせない大変キレイな状態を維持した個体です。
↑塗布したヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース:粘性軽め」を塗りましたが、問題が発生しています。
当初バラす前のチェックで「トルクムラ」が出ていたのは、距離環が「真円状態」を維持していなかったからです。このモデルは距離環裏側にリコイド (メス側) ネジ山が切削されている為過去の落下やぶつけたりなどが致命的だったりします。
当方所有のヘリコイドグリース (7種) をいろいろ試しましたがトルクムラが改善できないので指標値環と距離環との隙間をチェックしたところ、距離環距離指標値「0.5m〜0.22m」辺りまでが重くなり隙間が狭くなります (それ以外が軽すぎで隙間が広がる)。
つまり距離環が「真円ではない」ことになります。
当方は個人なので真円度を検査する機械設備がありません。仕方ないので「叩き込み」処置を施し、現状最もトルクムラが少ない状態に改善させました。
また塗布したヘリコイドグリースにより当初と比べると「重め」のトルク感に仕上がっていますが、前述のとおりピントの山がアッと言う間なのでむしろピント合わせはし易い環境になったのではないかと思います。
但し、ご納得頂けないならばご請求額より必要額分を減額下さいませ。申し訳御座いません。
また距離環を回すと前述の「真円ではない」ことが影響してヘリコイドのネジ山が擦れる感触が残っています。これも当方では改善できません。この点も合わせて減額下さいませ。
↑当初絞り環が開放側「f2.4の先」及び最小絞り値側「f22の先」まで回ってしまうのもピタリと停止するようキッチリ合わせています。
今回のご依頼内容1.Rayqual製マウントアダプタ装着時に無限遠が出ない (合焦しない) 問題についての結論をお話しします。
このモデルは「無限遠位置調整機能」が装備されていませんし、内部に「シム環」と言う無限遠位置調整のためのスペーサーのような環 (リング/輪っか) も存在しない設計です。
つまり、このモデルはヘリコイドのネジ込み位置をズラすだけしか無限遠位置調整ができない設計なのです。
今回のオーバーホールでは当初のネジ込み位置に対して、その前後のネジ込み位置をちゃんとチェックしました (具体的にはヘリコイドのネジ込み位置を替えつつ5回ほど最後まで組み上げて都度実写確認して無限遠合焦をチェックしました)。その結果、当初位置が最も無限遠が出る (合焦する) 位置であることを確認したので、その位置で組み上げています (これ以上ネジ込めない位置です)。
結論は残念ながら「Rayqual製マウントアダプタに装着すると無限遠合焦しない」ことになりますので、必要であれば以下マウントアダプタを手に入れられることをお勧めします。
無限遠合焦を確認したマウントアダプタは「K&F CONCEPT製」の
マウントアダプタになります (左写真をクリックするとamazonの
ページが別ページで表示されます)。
2,199円ですからご入り用の方はご検討下さいませ。
(2018年4月28日現在価格)
なお、無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/K&F CONCEPT製マウントアダプタで僅かな オーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環 絞り値との整合性を簡易検査具で確認済ですし、フィルムカメラに装着した場合のマウント面絞り連動ピン押し込み動作に伴う絞り羽根開閉の挙動もチェック済です。距離環を回すトルク感は「全域に渡りほぼ均一」でトルクは「重め」程度に仕上げていますが、ピント合わせは むしろし易くなっていると思います。
↑当レンズによる最短撮影距離20cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。
当初バラす前の実写では、ピント面にこの鋭さが出ていませんでした。これがこのモデル本来のピント面です。
↑f値「f16」になりました。まだ「回折現象」が出ていません。
↑最小絞り値「f22」での撮影です。ご覧のようにこのモデルの場合最小絞り値でも「回折現象によるコントラスト低下」が少ないのが本来の描写性能です (当初バラす前の実写チェックではコントラスト低下を招いていた)。
距離環を回す際のトルク感が「重め」なのが当初の軽い状態から比べると想定外なのかも知れませんね・・申し訳御座いません。ご納得頂けなければどうぞ減額下さいませ (但し残念ながら真円ではないのでこれ以上改善できません)。
今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。