◎ ZOOMAR MÜNCHEN (ズーマーミュンヘン/Kilfitt München) MACRO ZOOMATAR A 4cm/f2.8(arri STD)

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今回の掲載は、オーバーホール/修理ご依頼分のオールドレンズに関するご依頼者様や一般の方々へのご案内です。
(ヤフオク! に出品している商品ではありません)
写真付の解説のほうが分かり易いためもありますが、ご依頼者様のみならず一般の方でもこのモデルのことをご存知ない方のことも考え今回は無料で掲載しています (オーバーホール/修理の全行程の写真掲載/解説は有料です)。
オールドレンズの製造番号部分は画像編集ソフトで加工し消しています。


今回のオーバーホール/修理は、遙か太平洋を越えたアメリカはワシントンDC在住の方から ご依頼頂きました。実際に手元に届いたのは4月末でしたが、ご依頼者様が今月中に一時帰国されるとのことで、そのタイミングに合わせての作業になります。
3カ月近くもお待たせしましたが作業できる日を本当に楽しみにしていました。今回承ったのは4本ですがモデルバリエーションとしては3種類になります。しかし当方の手元に2本以上揃ったことはなく後で兄弟姉妹勢揃いの記念撮影をしたいと思います。このような機会を恵んで頂いたことに本当に感謝申し上げます。ありがとう御座います!

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今回扱った個体はレンズ銘板メーカー名が「ZOOMAR (ズーマー)」になっています。この会社はアメリカのニューヨーク州ロングアイランドでFrank Gerhard Back (フランク・ゲルハルト・バック) 博士が1944年に創設した「ZOOMAR Inc.」なのですが、設計/開発/製産したのは旧西ドイツのKilfitt München (キルフィット・ミュンヘン) 社になります。

ネット上の超有名どころの解説ではズームレンズの「ZOOM」の由来がこの会社ZOOMAR社から来ていると案内されていますが、それは間違いです。Zoom Lens Historyによると既に1902年にClile Allenによる可変焦点レンズのパテントが存在し、且つ当時のテレビ業界では1932年時点で「ZOOM」と言う専門用語が使われていたことを示しています。そもそもZOOMAR社の創始者Frank G. Back博士が「ズームレンズの父」と呼ばれていることから来ている錯覚のようですが、ZOOMAR社が発売したズームレンズに対する考察も前述のネット上の解説は適切ではありません。

ZOOMAR社製 (1968年発売)

ZOOMAR MUENCHEN MACRO ZOOMAR 50-125mm/f4

PATENT:Kilfitt München (Pat. Pend.)
生産国:West Germany

Voigtländer社製 (1959年発売)

VOIGTLÄNDER-ZOOMAR 36-82mm/f2.8

PATENT:ZOOMAR
生産国:West Germany

上のズームレンズ2本のうち50-125mm/f4モデルは設計/開発/製産も含めてパテントが旧西ドイツのKilfitt Münchenですが、下のVoigtländer社から発売されたズームレンズはZOOMAR社にパテント権があるので開発設計者はFrank G. Back博士になります。つまり当方はこの2本を過去にオーバーホールした経緯がありますがこの2本の内部構造は全く異なっており共通点は一切ありません。そもそもズーム方式/機構の概念が異なっているので同じ「ZOOMAR銘」だとしてもここをごちゃ混ぜにすると見えなくなってしまいますね(笑)
Frank G. Back博士が「ズームレンズの父」の異名を持つのは、当時のシネマレンズに於けるズームレンズとしての知名度が高い意味合いが強いと考えます。

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Kilfitt

今回扱ったモデル『MACRO ZOOMATAR A 4cm/f2.8 (arri STD)』の開発設計者は「Heinz Kilfitt (ハインツ・キルフィット:1898-1973)」で戦前ドイツ、バイエルン州 München (ミュンヘン) の Höntrop (ハントロープ) と言う町で1898年時計店を営む両親の子として生まれます。時計職人の父親に倣い自身も時計の修理や設計などを手掛けていましたが、同時に光学製品への興味と関心からカメラの発案設計も手掛けていました。

Kilfittは27歳の頃発案したゼンマイ仕掛けによる自動巻き上げ式カメラ (箱形筐体にCarl Zeiss Jena製Biotar 2.5cm/f1.4レンズを実装したフィルムカメラ) のプロトタイプに関する案件をOtto Berning (オットー・ベルニング) 氏に売却します。このカメラは後の1933年にはより小型になりカメラらしい筐体となって世界で初めての自動連続撮影が可能なフィルムカメラ「robot I」型 (ゼンマイ式自動巻き上げ機構を搭載した 24x24mm フォーマット) としてオットー・ベルニング社から発売されています。
ネット上の解説では、このフィルムカメラ「robot I型」の設計者がHeinz Kilfittであると解説されていますが、正しくはKilfittの設計を基にオットー・ベルニング社内で自動巻上げ機構を実装した小さなカメラらしいフォルムにまとめ上げて開発設計したのであり少々異なります。この案件売却の資金を基にKilfittは長い間温めていた光学レンズの試作製造を実現するためにミュンヘン市の町工場を1941年に買い取り試作生産を始めています (43歳)。

大戦後1947年には隣国リヒテンシュタイン公国首都ファドゥーツ (Vaduz) にて、念願の光学製品メーカー「Kamerabau-Anstalt-Vaduz (KAV:ファドゥーツ写真機研究所)」を創業し様々な光学製品の開発・製造販売を始めました。会社名は「Heinz Kilfitt」「Kilfitt」後に1960年念願の生まれ故郷München (旧西ドイツ) に会社を移し「Heinz Kilfitt München」としたのでレンズ銘板刻印もそれに伴い変わっています。その後1968年にはアメリカのニューヨーク州ロングアイランドで会社を営むFrank G. Back博士に会社を売却し引退してしまいます。Kilfitt引退後に社名は「Zoomar」(商品名もMakro-KilarからZoomatarに変更) に変わり終息しています。つまり会社名はKilfitt在籍中のみ自身の名前が使われていたワケですね。

ちなみに会社売却先のFrank G. Back博士は有名な現代物理学の父とも呼ばれるノーベル物理学賞受賞のアインシュタイン博士の友人でもあり、2人はこぞってKilfittが造り出す光学機器に高い関心を抱いていたようです (特に光学顕微鏡など)。

今まで見逃していましたが、レンズ銘板を見るとKilfittの時代には「Makro」と銘打っていたドイツ語表記が英語表記で「MACRO」に変わっていました。

【モデルバリエーション】
※ 製造番号の先頭3桁がモデル系列番号を表す。タイプ別はレンズ銘板に刻印あり。
※ xxxx はシリアル値の製造番号

① 1:2 倍撮影が可能なシングルヘリコイド:タイプE
前期型:モデル系列番号「209-xxxx」
開放f値3.5、最短撮影距離10cm、実絞り、フロントベゼル無し
後期型:モデル系列番号「246-xxxx」
開放f値2.8、最短撮影距離10cm、プリセット絞り、フロントベゼル有り

② 1:1 の等倍撮影が可能なダブルヘリコイド:タイプD
前期型:モデル系列番号「211-xxxx」
開放f値3.5、最短撮影距離5cm、実絞り、フロントベゼル無し
後期型:モデル系列番号「245-xxxx」
開放f値2.8、最短撮影距離5cm、プリセット絞り、フロントベゼル有り

③ 1:2 倍撮影が可能なダブルヘリコイド:タイプA
モデル系列番号「254-xxxx」
開放f値2.8、最短撮影距離10cm、プリセット絞り、フロントベゼル有り

   
   

上の写真はFlickriverで、このモデルの実写を検索した中から特徴的なものをピックアップしてみました。
上段左端から「円形ボケ・背景ボケ・ピント面・被写界深度」で、下段左端に移って「発色性①・発色性②・質感・ハレ」です。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)

光学系は典型的な3群4枚のエルマー型ですが、今回バラして清掃した際に改めて各群のスケッチをしました。するとビミョ〜にエルマー型の曲率などが一般的なオールドレンズとは異なりマクロレンズだけあって第2群の屈折率をだいぶ強く採ってきているようです (右構成図の曲率やサイズはスケッチによるイメージなので正確ではありません)。

当方にいつもオーバーホール/修理をご依頼頂く動画撮影業界の方からこのモデルの描写性について非常に適確な表現を頂きました。その方もご愛用なのですが「ドライな表現性」と言うコトバが本当にピッタリな画造りをします。ナチュラル派ともコッテリ派とも言い切れない程中立で客観的な発色性を持ち、マクロレンズだけあって接写能力のみならず被写体の素材感や材質感を写し込む質感表現能力の高さには本当に驚かされます。
それは後に登場する様々な有名処のマクロレンズに見られがちな、下手に個性を付加しない「ありのまま」を表してくれる絶大なる信頼性にも繋がります。Makro-Kilarをスタンダートの位置にポジショニングするならば、その後のマクロレンズはボケ味や発色性、被写界深度やピント面のエッジの太さなど好みに応じてチョイスできると考えます。当方も撮影に毎回使っていますが質感表現に疑問を感じたことが無いので、すっかり忘れていたくらいです (つまり金属質や樹脂系/ラバー系などの違いを写真にちゃんと留めている)(笑) その意味で言うなら、逆の捉え方として一般的な写真撮影には少々つまらないモデルなのかも知れません (個性を感じ得ず中庸的すぎると言う意味)。然し当方はこのドライな感覚がまさに気に入っています。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。Makro-Kilarは 内部構造自体それほど難しくなく構成パーツ点数も少なめですが解体方法が分かりにくいことと組み立て手順もミスし易く、さらにヘリコイドのネジ込み位置の把握には少々コツが必要なので完璧な組み立てには相応な技術スキルを要します (無限遠位置を合わせる必要がある)。

【当初バラす前のチェック内容】
 距離環を回すとグリース切れを起こしておりトルクムラが酷い。
プリセット絞り環と絞り環との間の隙間が多すぎる。
 光学系内は後群側に全面に渡る酷いクモリがあり写真に影響が出ている。
附属のarri STD→LMマウントアダプタに装着するとガタつきが酷い。

【バラした後に確認できた内容】
過去にメンテナンスが1回実施されており黄褐色系グリースが塗られている。
ヘリコイドのネジ山に削れ箇所が複数ある。
プリセット絞り環と絞り環との鋼球ボール位置が僅かにズレている箇所がある。
光学系第1群 (前玉) 表面と第3群 (貼り合わせレンズ) にも全面に渡るクモリあり。

↑絞りユニットや光学系前後群を組み付ける鏡筒です。このモデルは ヘリコイド (オス側) は独立しており別に存在します。鏡筒と絞り環の両方がヘリコイドの回転に伴い一緒に回っていく回転式繰り出し/収納なので最初は使いにくく感じるかも知れませんがすぐに慣れます。

↑10枚のフッ素加工が施された絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成させます。

当初バラした時点では上の写真で見えている「開閉環」と言う絞り羽根を開閉させている環の周囲にもグリースが過去メンテナンス時に塗られていましたが、今回のオーバーホールは将来的な絞り羽根の油染みや光学系への影響を考えグリースを塗布していません。
従ってオーバーホール後は絞り環を回した時に極僅かな「鳴き (キーキー音)」が聞こえることがあります (再現性無し)。グリースを再び塗れば解消しますが光学系への影響を考えると好ましくない為処置していません。申し訳御座いません・・。

↑絞りユニットの固定は光学系前群の硝子レンズ格納筒に代用させているので、先に光学系前後群を組み付けてしまいます。今回の個体は第1群 (前玉) 表面のコーティング層に経年劣化があり赤色矢印位置に円形状のコーティング浮きが複数あります。コーティング層の経年劣化なので清掃では除去できません (そのまま残っています)。

↑光学系後群側には第3群 (後玉) が貼り合わせレンズ (2枚の光学硝子レンズを接着剤を使って貼り合わせてひとつにしたレンズ群) ですが、後玉のひとつ手前側 (構成で3枚目) のコーティング層も劣化が激しく全面に渡るクモリを生じています。清掃でも除去できなかったので当方による「硝子研磨」にて可能な限り除去しました (中心付近にまだ少し除去しきれず残っています)。申し訳御座いません・・。

↑ヘリコイド (オス側) には赤色矢印箇所にネジ山の削れがあるので過去メンテナンス時にムリに解体しようとしたことが判ります。なおグリーンの矢印の箇所は今回の解体作業時に当方が付けてしまった剥がれ数点なのでご請求額より必要額分減額下さいませ。
大変申し訳御座いません。

↑先ずは絞り環を正しい場所までネジ込みます。最後までネジ込むとプリセット絞り機構が 機能しなくなります。

↑鋼球ボール+スプリングを両サイドに組み込んでプリセット絞り環 (レンズ銘板を兼ねる) をネジ込み組み付けます。当初バラす前の時点では最後までネジ込まれておらず絞り環との間に隙間がありましたが、原因は「絞り値キー」と言う各絞り値に見合う箇所に空いている「」の切削が鋭角すぎて鋼球ボールが填ってしまい動かなくなっていました。それを避ける位置までしかネジ込んでいなかった為に隙間が空いていたようです。今回のオーバーホールでは適正な位置まで確実にネジ込んでおり製産時の状態に戻っています。

↑こちらはフロントベゼルを止めている「ダボ (3個)」です。ネット上の解説では鋼球ボールでカチッとフロントベゼルがセットされると案内されていますが鋼球ボールではありません。

↑ダボに適度なクッション性を与えている「ハガネ」を撮りました。このハガネの内側に前述のダボ (3個) が組み込んであり適切なクッション性を伴いフロントベゼルをカチッと保持しています。相当赤サビが出ていたのでキレイにサビ取りが済んでいます。

↑ヘリコイド (オス側) を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

上の写真赤色矢印の箇所には両サイドに削れが残っていますが、過去メンテナンス時に内部構造を知らない人によりムリに絞りユニットを外そうとした痕跡です (当方がキズ付けてしまったのではありません)。おそらくカニ目レンチで回して外そうとしたようです。

↑ダブルヘリコイド部も無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。全部で26箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

↑距離環をセットします。

↑附属のarri STD→LMマウントアダプタですが、ロックピンのカタチ (設計) が正しくなく円筒のままなのでそのままオールドレンズをセットするとガタついてしまいます。
正しくはarri STDマウントの「溝のカタチ」である「V字型 (円錐形)」にピンの面取りをしないとピタリと填りません。分解してピンの頭を削っても良いのですが溝に対して填りが変化してしまうと取り返しが付きません (ガタつきが酷くなる)。そこで見栄えが非常に悪いのですが遮光テープを貼ってガタつきを解消させました。遮光テープは容易に剥がせるのでオリジナルの状態に戻すことが可能です。

オールドレンズの着脱をしていると遮光テープが剥がれてくる (浮いてくる) ので申し訳御座いませんが押して貼り付けて下さいませ。なお赤色矢印の箇所 (縁部分) にある遮光テープのタワミ (膨れあがっている部分) は押し潰して平にしないようお願い申し上げます。この出っ張り分がクッションになりガタつき解消に役立っているので平になると再びガタつきが生じます。もしもお気に召さなければキレイに剥がせるテープですのでお手数ですが剥がして下さいませ。スミマセン・・。

↑こんな感じでガタつき無くピタリとセットできます。

↑無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い無事に全てのオーバーホール工程が完了しました。

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ここからはオーバーホールが完了したオールドレンズの写真になります。

↑前回初めてこのタイプAのモデルをオーバーホールしたのが2013年でしたから実に5年ぶりに作業しました。ZOOMAR社の民生向けレンズの製産が1971年で終了しているのでKilfittが引退してしまった1968年に旧西ドイツのKilfitt München社をZOOMAR社が買収してから僅か3年しかありませんから、その中で最後期に開発されたタイプAは出荷数自体が大変少なかったと推測できます。民生向けから軍需も含むシネマ業界向けに製産をシフトさせていったことが窺えますね。

今回気がついたのはレンズ銘板が英語表記に変わっていた点です。ミュンヘンもMünchenではなく「MUENCHEN」としていますし「MACRO」表記になっていました。モデル系列番号「Nr.254-xxxx」のタイプA自体が市場に出回らず当方も目にしたのは2年ぶりですから本当に貴重な個体です。ちなみに別モデルではシリアル値が1桁増えて5桁になっている個体も存在します。

左写真のように前玉直前にダボ (3個) が飛び出ています (赤色矢印)。このダボを指で押し込んでみると容易に引っ込むのでクッション性があるのが確認できます。しかし今回の個体に附随するフロントベゼルは簡単にカチッと填ってくれません。どうやら別モデルから転用されたベゼルのように見えます。と言うのもこのタイプAでは本体側の遮光環の仕様が極僅かに違うことを発見したからです。

ネット上では「フード」と解説されていることが多いですが、そもそも前玉が奥まった位置に配置されているので遮光環が存在する以上敢えてフードは必要になりませんね(笑) たかが5mm程の突出にしかならないフードを用意する意味が分かりません。

フードではなくベゼルであり英語圏で「フロントベゼル (前カバー)」と呼んでいます。

このフロントベゼルの存在理由は「フィルター装着用」です。開発設計者であるKilfittはフィルターの装着位置を前玉直前にしか認めていなかったのでこのようなパーツが用意された次第です (タイプDの場合 最短撮影距離5cmなのでレンズ銘板付近にフィルター装着した場合 フィルターの光学状態により影響を受け易くなる為)。
左写真は例として当方の手元にあるオレンジフィルターを実際に装着してみました。

数は少ないですが今でも市場で出回っているTIFEN製のカラーフィルターでアメリカ製です。

このフロントベゼルに装着可能なフィルターは⌀30mm径/厚み4mmまで対応しています。厚みを越えるとフロントベゼルが填らなくなるので注意が必要です。

↑「硝子研磨」の甲斐あって光学系内の透明度が非常に高くなりました。第3群 (構成で3枚目) の中央付近に残っている汚れは後玉側方向から光に反射させて覗かない限り視認できません (LED光照射では視認不可)。もぅこれだけで嬉しくなってしまいました!(笑) 大変キチョ〜なタイプAの復活です!

↑光学系後群もMakro-Kilarシリーズの後玉中央によく見られる当てキズが無く、大変キレイな状態を維持しています。全面に渡るクモリがある個体を入手されたのが却って大きなメリットになりましたね、良かったです!(笑)

↑10枚のフッ素加工が施された絞り羽根もキレイになり確実に駆動しています。錆も殆ど出ていなかったので何故に光学系の状態が悪かったのか不思議です。前玉だけは大きめな点状の クモリ (コーティング層の浮き部分) が数箇所残りますが、ハレの出現率を上げてしまうので 敢えて「硝子研磨」をして除去しませんでした (おそらく除去できないレベル)。写真には一切影響しないレベルなので気にせずお使い下さいませ。

↑塗布したヘリコイドグリースは黄褐色系グリース粘性:重め」を塗りましたが、それでも距離環を回すトルク感は「普通程度」です。このモデルはピント合わせ後の絞り環操作で距離環まで回ってしまうので必然的に距離環側のトルクをワザと重く執っています (逆に言うと絞り環側を軽くしています)。その影響から絞り環操作時には前述のとおり「鳴き (キーキー音)」が微かに出ることがありますが我慢して下さいませ。絞り環や距離環の操作性や光学系内への影響等全て考慮した上で判断した処置です。

但し、残念ながらヘリコイドのネジ山が削れている箇所はどうにも修復できないので距離環を回すと僅かに重く感じるトルクムラが残っています。ご使用中に違和感を抱くほどではありませんしピント合わせ時に支障にもなりませんからこのままご使用下さいませ。どうしても ご納得頂けない場合はご請求額より必要額分減額下さいませ。申し訳御座いません・・。

もちろん本会員様ですから筐体外装も「磨きいれ」を施し鏡胴部分のマットな部分は艶消し感を残したまま、或いは距離環やプリセット絞り環などのブライトフィニッシュのブラックは 光沢感を増して磨き上げています。当然ながらクロームメッキ部分の「光沢研磨」も終わっているので当時のような艶めかしい眩い光沢感が戻っています。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環の絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

距離環のラバー製ローレット (滑り止め) は既に経年劣化が進行しておりだいぶヒビ割れが多くなっています。まだ裏側まで至っていないのでボロボロになりませんが次回のオーバーホール時には貼り替えが必要かも知れません (その時は当方はもう居ないので別の方にお願いします)(笑) まだまだ数十年使える状態まで復活しました。本当に嬉しい限りです・・。

Makro-Kilarシリーズはどの個体も全て光学系のコーティング層がもう限界に来ているので、このタイミングでグリースの交換ができたのは本当に良かったと思います。製産時期が1955年〜1971年ですから、おそらく製産時のコーティング層蒸着が弱いレベルだったのではないかと推察しています。光学系と言うとカビの発生ばかりを気にされる方が多いですが、コーティング層の劣化に伴うクモリほど厄介なことはありません。そしてそのコーティング層の経年劣化を促す最大の要因は「必要外に塗られたグリースの経年に拠る揮発油成分」であることを皆さんなかなかご理解頂けません。

それは「解体新書」でも案内していますが、整備者自らが必要以上に多量なグリースを塗っているからであり、また同時に白色系グリースを好んで使っていることにも問題があります。 整備してから僅か1カ月〜1年足らずで油染みが鏡胴から出てくるなど以ての外ですね(笑)
例え油染みが出なくても白色系グリースを塗布している以上、当方の経験値では1年〜3年で グリースの液化進行が促され揮発油成分がオールドレンズ内部に廻っていきますから、白色系グリースを塗布するなら極短い期間での再メンテナンスが必須になります。もちろん、当方が問題視している白色系グリースによるヘリコイドのネジ山摩耗の問題もありますが、それは 当方だけが騒いでいることなので埋もれている話です(笑)

↑再び何年後に手にすることができるでしょうか? 記念の為にレンズ銘板を撮らせて頂きました(笑) 引き続き次のモデルの作業に移ります。

↑当レンズによる最短撮影距離10cm付近での開放実写です (実際は20cmくらい)。ピントは ミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

↑絞り環を回して設定絞り値「f4」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f5.6」で撮りました。

↑f値は「f8」になっています。

↑f値「f11」になりました。

↑f値「f16」です。

↑最小絞り値「f22」での撮影です。今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。