◎ Chiyoko (千代田光学精工) © TELE ROKKOR 13.5cm/f4(L39)
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今回の掲載はオーバーホール/修理ご依頼分のオールドレンズに関するご依頼者様や一般の方々へのご案内ですので、ヤフオク! に出品している商品では ありません。
当方での扱いが初めてのモデルなので記録としての意味合いもあり無料で掲載しています (オーバーホール/修理の全行程の写真掲載/解説は有料です)。
オールドレンズの製造番号部分は画像編集ソフトで加工し消しています。
“Chiyoko“などと表したら「千代子」か?などと言われかねないような名前ですが、歴とした光学メーカー名で「千代田光学精工」です。
Wikiを紐解くと、創業は前身まで遡ると1928年に兵庫県で開業した「日独写真機商店」になるから相当な老舗ですが、ミノルタの前身として捉えると「minolta」ブランドを使い始めた1933年辺りになりますから、その当時の会社は「モルタ合資会社」ですが、その後1937年に千代田光学精工に変わっています。
「minolta」は「Machinery and INstrumrnts OpticsaL by TAshima」の頭文字を採っていますが、当て字の概念として創業者田嶋一雄氏が母親から言われていた「稔るほど頭を垂れる稲穂のように常に謙虚でありなさい」を肝に銘じる意味から「稔る田」の「minolta」としたらしいです。
このコトバはなかなか刺さるモノがありますね・・辛口コメントばかり言っている当方などは耳が痛いです(笑) MINOLTAのオールドレンズを使う時はいつもこのコトバを思い出して謙虚に立ち返らなければイケマセンね。むしろ今からでもマニュアル・フォーカスレンズとして「稔る田」プランドで出したらオモシロイかも知れません(笑) サントリーとかキリンとかがスポンサーになるかも知れませんョ (それってビールか?!)。
光学系は3群4枚のオルソスコープ型でした。今回初めてバラしましたが、光学硝子レンズの清掃時にスケッチしたのが右構成図ですのでイメージであり正確ではありません。オルソスコープ型は第2群の次に絞りユニットが配置されることが多いですが、このモデルは第1群 (前玉) の次に配置しています。
↑いきなしですが水道管を撮影してしまいました・・そう言われても信じてしまうほどに腐食/錆が進行しているアルミ合金材の鏡筒です (もちろんちゃんと清掃後の写真です)(笑)
あまりバラして清掃した後の構成パーツ写真を掲載すると、所有しているオールドレンズに対して疑心暗鬼になられる方がいらっしゃるようなので (実際にクレームのような無いような?メッセージを頂いたので)、極力掲載しないように気をつけているのですが、今回の個体はバラしている時に「これ」を見た途端「えッ?水道管?」といの一番に頭に浮かんでしまい(笑)、撮ってしまいました・・。
↑当方による「磨き研磨」を施した後に撮影しました。ロシアンレンズでさえ、いくら何でもここまでアルミ合金材の腐食/錆が進行していることは珍しいのですが、外見からは全く想像だにしない「水道管」でした、いえ鏡筒です。
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オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。
↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。上の写真をご覧頂くとキレイに光り輝いている真鍮製パーツがありますが、その内側を見ると「黒色」になっています。実は、これは「黒色の塗色」ではなく真鍮材の経年に拠る酸化/腐食で「限りなく黒に近い焦茶色」になっています。光学系が入る場所でもあるので敢えて磨かずにそのままにしていますが、外側はちゃんと「磨き研磨」したので黄金色です (他パーツと接触箇所の為)。
これら構成パーツの「磨き研磨」は、当方のオーバーホール方針でもある「DOH」により施していますが、時々「どうせ外から見えないので綺麗にしなくていいのでその分料金を安くしてほしい」と言うご指示を頂きます。ご尤もなのですが、決してキラキラと輝かせるためだけに処置しているのではなく、経年に拠る表層面の酸化/腐食に伴う抵抗/負荷/摩擦を極力低減させる目的から実施しています。
従って、他のパーツに影響しない (干渉しない) 場合は「磨き研磨」を施さないこともあるので必要だからこそ処置していると受け取って頂けると有難いです。確かにどんな個体でも概ね 2時間掛かりで処置していますが、実際の工賃としての計算上は、たかが当方の手によるものですから2,000円程度です。それでも必要ないと仰る場合は (そのような方がいらっしゃるならば)、その旨ご指示下さいませ。当方の作業上必須なので処置しますが「減額:▲2,000円」としてご請求時に計上させて頂きます。数ヶ月おきに「DOH」に対する懸念のメッセージを送る方がいらっしゃるので (メールアドレスがどう言うワケか不通)、敢えて告知しておきます。
そのような、実際に作業しているにも拘わらず「料金優先」の方がいらっしゃるのは、何とも悲しい限りですね(笑) 逆に言えば「磨き研磨」は当方の必須作業ですから必要ない旨ご指示を頂くと自動的に2,000円分ご請求額が安くなるのでお得ですョ・・(笑)
中には、コンバーターを介在させて装着することを隠して依頼され、当方より返却後絞り羽根の開閉異常を来し再整備し (もちろん当方で調べると正常駆動していたが念のため再整備実施) たにも拘わらず、当初ご請求額も含め踏み倒した方もいらっしゃるので、世の中には鬼が棲んでいますね(笑) 人の心をいったい何だと思っているのでしょうか、世知辛い世の中です(涙)
↑愚痴ってしまいました、スミマセン。絞りユニットや光学系前後群が格納される鏡筒です。
このモデルは鏡胴が「前部」と「後部」に二分割するタイプなので、ヘリコイド (オスメス) は鏡胴「後部」に配置されています。
↑10枚のカーボン仕上げが施されている絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成させます。
↑絞り値環 (リング/輪っか) を鏡胴「後部」にある「Ι」マーカーと合致する正しい位置でセットします。
↑絞り環を組み付けます。当初バラしている時にこの絞り環の上側に例の水道管があからさまに見えていたのでギョッとしたワケです(笑)
↑光学系前後群を組み付けます。第1群 (前玉) は貼り合わせレンズ (2枚の光学硝子レンズを接着剤を使って貼り合わせてひとつにしたレンズ群) ですが、レンズ銘板との一体成形になっています。
確かにMINOLTAの前身である千代田光学精工ですが、この第1群 (前玉) は締め付けだけになりこの上から鏡筒カバーをネジ込みます。しかも、その鏡筒カバーも一切固定されない締め付けだけなので、ちょっと配慮が無さ過ぎですね (せめてイモネジの1本でも締め付けがあればと 考えます)。
鏡胴「前部」はこれでほぼ完成なので、この後は鏡胴「後部」の組み立てに入ります。
↑鏡胴「後部」はヘリコイド筒 (つまりヘリコイドのオスメス) と指標値環にマウント部だけなので簡単です。ところが今回の個体は距離環を外そうとしても抜くことができませんでした。
距離環は内部で3本のイモネジにより締め付け固定されており、距離環を抜く際にヘリコイドに用意されている溝に合わせて引き抜く構造を採っています。ところがおそらく「制限キー」と言うパーツ (距離環の駆動域を制限しているおそらくネジ) が経年の使用で変形してしまい 曲がっているのか、用意されている溝を通過してくれません (つまり距離環が抜けない)。
無限遠位置と最短撮影距離位置の両端でカツンと音がして停止するので、そのネジが曲がっている懸念がありますが抜けないので確認のしようがありません。1時間ほどあ〜だこ〜だと ガチャガチャやりましたが、仕方なく諦めて組み戻したのが上の写真です。つまりヘリコイドが解体できていません。
こうなるとヘリコイドがバラせていないのでグリースを塗る方法は一つしかありません。ネジ山の隙間からグリースをチビッとずつ押し込んではグリグリとヘリコイドを回す作業を数十回繰り返して馴染ませ、ようやく納得できるトルクに到達しました (当初はスカスカ状態)。
この後は完成している鏡胴「前部」をセットして無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (それぞれ解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。
ここからはオーバーホールが完了したオーバーホール。の写真になります。
↑前述のとおり、レンズ銘板を兼ねる鏡筒カバー (TELE ROKKOR銘が刻まれているクロームのメッキ筒) はネジ込んでいるだけですし、第1群 (前玉) さえもネジ込んだままです。フィルター枠が特殊サイズで「⌀39mm」のようなサイズなので、ネジ込み式フィルターは無いかも知れませんがご留意下さいませ。鏡筒カバーが緩んだ場合下手すれば第1群 (前玉) も一緒に回ってしまい描写性能が落ちます。
↑光学系内の透明度は非常に高い状態を維持している個体です。第1群 (前玉) 外周全周に渡って微細な菌糸状のカビが生じていたので除去しています (カビ除去痕が残っています)。
↑光学系後群も透明度が凄いのですが、極微細なヘアラインキズだけは残っています。
↑当初バラす前のチェック段階でスカスカ状態だった絞り環操作もシットリしたトルク感を与えて仕上げています。カーボン仕上げの絞り羽根に、やはり赤サビが生じていたので可能な限り除去しています。
ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感をほとんど感じさせない大変キレイな状態を維持しています。当方による「磨きいれ」を筐体外装に施したので当時のような艶めかしい眩い光彩を放っています (今回も程ほどに磨いています)。
↑塗布したグリースは、ヘリコイド自体を完全解体できていませんが「黄褐色系グリース:粘性中程度」を塗りました。このモデルもピントの山が多少なりとも掴みにくいので「普通」程度のトルク感で仕上げています。
↑ヘリコイドを完全解体できなかった分は、ちゃんとご請求額で減額しています。
無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済ですし、距離計連動ヘリコイドも当初位置で調整しています。距離環を回すトルク感も「全域に渡り完璧に均一」でトルクは「普通」程度に仕上げており、ピント合わせもし易く調整しています。
↑当レンズによる最短撮影距離2m附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。
↑最小絞り値「f32」での撮影です。回折現象が大幅に現れています。今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。3カ月間の長きに渡りお待たせしてしまい、本当に申し訳御座いませんでした。お詫び申し上げます。