◎ Ernst Leitz Wetzlar (エルンスト・ライツ・ヴェッツラー) ELMARIT-R 35mm/f2.8《第1世代》(LR)

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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホール/修理が終わりご案内するモデルは、旧西ドイツは
Ernst Leitz Wetzlar製広角レンズ・・・・、
ELMARIT-R 35mm/f2.8《第1世代》(LR』です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Україні!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

Slava UkrainieieGeroyam Slava

今回完璧なオーバーホールが終わってヤフオク! 出品するモデルは、当方がオーバーホール作業を始めた14年前からの累計で、当時のLeitz製広角レンズ「ELMARIT-R 35㎜/f2.8」だけで捉えると初めての扱いになります。

先ずは冒頭で、このような大変希少なオールドレンズのオーバーホール/修理ご依頼を賜り、
ご依頼者様に感謝とお礼を申し上げたいと思います・・ありがとう御座います

基本的に当方はライカ製品のことは、フィルムカメラもオールドレンズも全くの無知レベルでまるでドシロウトです(汗)

そんな当方宛にこのようなライカ製オールドレンズのオーバーホール/修理をご依頼頂く方が極々僅かにいらっしゃり、そのような方々は当方にとり『神々しい方々』にしか映りません。

・・本当に、ありがとう御座います!(涙)

思えば本年も、オーバーホール済でヤフオク!に出品したオールドレンズご落札や、オーバーホール/修理のご依頼など、それこそ毎月のようにそのような『神々しい方々』に何度も助けられてきたワケで、本当にありがたいことです(涙)

近年は、オーバーホール済でヤフオク!に出品したオールドレンズをご落札頂いた方が、その仕上がり具合を知り、改めてお手待ちのオールドレンズについてオーバーホール/修理ご依頼を賜ることも多くなり、どのような仕上がりになって戻ってくるのか楽しみにお待ち頂くことも増えました(涙)

・・ありがたいことです!(涙)

その際、出品するオールドレンズの素性や背景、或いはオーバーホール工程など、時に当方の愚痴まで交えつつも(汗)、この超長文なブログ故、ご心痛いかばかりかと誠に恐縮極まりない思いでもあります(汗)

・・皆様、本当にお心優しい方々ばかりで、どんなに助けられていることか(涙)

そのような感謝の想いでいっぱいの毎日です(涙)

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そんなワケで、このモデルの登場背景や当時の対称になったライカ製フィルムカメラなどの
情報はネット上の解説サイトに譲ります(汗)

↑上の製造番号に基づく生産台数一覧は、Leica-puts-pocket-bookからの引用です。

 色付第1世代 (総数:35,200台)
 色付第2世代 (総数:8,000台)
 色付第3世代 (総数:11,000台)

こうやって一覧で眺めると、登場した第1世代の製産は当時他の「ELMARIT-R銘モデル」の存在が少ない時期だったこともあり圧倒的に多いですが、焦点距離:28㎜やマクロレンズの登場で第2世代以降の生産台数が激減します。世代別の総数を調べると、意外にも第2世代の人気がなかったことが窺え、内蔵フードを装備した第3世代で多少息を吹き返すもののリアルな現実には生産調整していたことが分かりました (供給過剰か???)(汗)

確かにひと言に言えば「凡そ30年弱に渡るロングランの製品」と言えば聞こえがいいですが
その実、なかなかの紆余曲折があったような印象を覚える一覧になってしまいました(汗)

特に第2世代に関しては、全く以て製品戦略をミスッたような結果に見え、この期間の短さから早急に第3世代への転換が騒がれていたような気配すら透けて見えてきそうです(汗)

↑そのモデルバリエーションとしてネット上から写真をピックアップしてきました。左から順に第1世代のブラックバージョンと、僅か200台しか製産されなかったシルバータイプです。3つめが第2世代で右端がフード内蔵の第3世代です。

←左の写真はマウント部のカムに関する説明です。

1カム赤色矢印
2カムグリーン色の矢印
3カムブルー色の矢印
開閉レバーオレンジ色の矢印

特に3カムは2カムの背後に密着するが如く位置するので、よく見ないと分かりません(汗)
・・いずれにしてもマウントアダプタ経由デジタル一眼レフカメラ/ミラーレス一眼レフカメラなどに装着する際は、これらカムの存在は全く気にする必要がなくなります。

ちなみにオレンジ色の矢印の開閉レバーの近くに在る凹みはロック用の窪みです。開閉レバーはフィルムカメラ側から設定絞り値まで絞り羽根を閉じる時に操作されるレバーですが、このモデルの場合「絞り羽根は常時閉じる方向にチカラが及ぶ設計」なのが分かります。逆に言うなら絞り環操作で開放状態にセットしている時、実は絞りユニット内部では「閉じようとするチカラしか働いていない」という設計だからです (実際その根拠を後のオーバーホール工程の中で解説しています)。

実はこれらの説明は「原理原則」の一つを述べているワケで、このようにオールドレンズは「常時絞り羽根を閉じるチカラが及ぶ」のか「開くチカラが及んでいるのか」の別しか存在せず、いえ「存在できず」中庸の「中立のチカラ」と言うのは物理的に設計できません (ッて言うか中立にする意義が無い)。

例えば常に閉じてしまうチカラが働く絞り羽根は、フィルムカメラ装着時に強制的に完全開放状態に絞り羽根をセットしてしまいます。そしてシャッターボタン押し込みの際、瞬時にそれが解除されれば設定絞り値まで絞り羽根が閉じるのでOKですね。もちんその逆も然り(笑)

このような「原理原則」を整備者がちゃんと理解しているのかどうか、実は多くのオールド
レンズをバラしていると「???」になったりすることがあります(笑)

・・その一因が今回扱った個体の瑕疵内容にモロに影響していたようです(汗)

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↑例によって今回扱ったモデルの特許出願状況を探ります・・意外にもオーバーホール作業では過去メンテナンス時の整備者の尻拭いばかりが多くて結構苦痛を感じますが、その一方でこの光学系の背景を探索するのが、最近は一番楽しかったりしますね(笑)

US3467464 (1965-04-08)』米国特許庁宛出願
→ Ernst Leitz Wetzlar GmbH在籍、Rudolf Ruehl (ルドルフ・ルール) 氏発明

まさに今回扱ったモデルELMARIT-R 35mm/f2.8《第1世代》(LR』の実装光学系発明案件と指摘できそうですが、不思議なのは特許出願の日付が「1965年」になっており、実際に工場で製産出荷していた1963年のタイミングと一致しません(汗)

・・ちなみに5群7枚レトロフォーカス型光学系の実装は第1世代だけです。

ライツ在籍時のRudolf Ruehl (ルドルフ・ルール) 氏による発明案件ですが、その記述を読むと大変オモシロイ内容が記されていました。実は記述内に次の に示した発明案件を明記して「古典的逆ガレリオ式望遠鏡タイプの発明概念は現在にも有効な要素が含まれている」と述べています。

・・この記述のおかげで実は当方の認識がガラッとヒックリ返りました(汗)

当初この特許出願申請書に掲載されている光学系構成図を見た時「基本成分はまさにELMAR銘の如く3群4枚のエルマー型光学系」と思い込んでいたのですが、その記述を読んで初めて「なんと基本成分は3群3枚トリプレット型光学系だった」ことが判明しました(汗)

3群4枚エルマー型光学系」なので、第1群前玉の次に絞りユニットが来てしまいます (後群側に第2群と第3群を配置)。一方有名な3群4枚テッサー型光学系は「第1群前玉〜第2群が絞りユニットの前衛配置」なので、当方の認識ではこの2つは「前後群のパワーバランスが異なる光学設計」と捉えています。

実際に例えば幾つかの標準レンズ域のマクロレンズなどに実装しているテッサー型光学系は、実は絞りユニットの前には前玉しか居ない「いわゆるエルマー型」が多かったりします(汗) それは「発散と集光の重きの違い」と受け取られ、テッサー型で光量をかき集める発散に力点を置くのに対し、マクロレンズではむしろ非点収差と色収差の改善のほうが重要なので「集光の後群側にパワー配置する」のは至極納得できるからです (あくまでも光学知識皆無な当方の妄想範疇を超えません)(汗)

その意味で「タイプ」として捉えれば確かに3群4枚テッサー型光学系の範疇なるも、実のところその趣旨から捉える角度で観るなら「3群4枚エルマー型は、それだけでユニークな存在たるモノ」との認識なのが当方の受け取りだったりします(汗)

話を戻して、 はまさに3群3枚トリプレット型光学系の前に、バックフォーカスを稼ぐ目的から第1群前玉と第2群を前衛配置させた5群5枚レトロフォーカス型光学系です。

するとRuehl氏の記述によると、そのトリプレットの要素に非点収差と像面収差に歪曲収差の改善を狙いつつ、合わせて後群側で強力に色収差改善を狙っているようにも受け取れますが、特にテッサー型光学系との相違はやはり光学系第5群の2枚貼り合わせレンズが、色収差改善だけのために配置されていない点をその格納様式から見てとれます(汗)

実はこの点に着目できたが為に今回扱った個体の瑕疵内容の一つが大きく改善できたワケで、なかなか特許出願申請書の記述を漁るのも実利を得られるものだと、マジッな体験を積み重ねたような錯覚を覚えるオーバーホール作業でした(汗)

US1934561 (1932-03-10)』米国特許庁宛出願
→ BAUSCH & LOMB 在籍、Wilbur B. Rayton (ウィルバー・レイトン) 氏発明

US3217598 (1961-05-09)』米国特許庁宛出願
→ ISCO Optische Werke GmbH 在籍、Rudolf Solisch氏、Walter Woltche氏両名発明

US2983191 (1955-02-19)』米国特許庁宛出願
→ ENNA Werk Optik Aplet 在籍、Johann Lautenbacher (ヨハン・ラウテンバッハ) 氏

が今回扱ったモデル、の特許出願に際し参照/引用した既知の発明案件です。意外にも同じ旧西ドイツはISCO-GÖTTINGEN社やENNAの発明案件のほうが前出だったワケで、なかなかライカ製オールドレンズとの接点に登場するんだ・・と、当方的にはオモシロイと感心しました(汗)

こういう部分は製品ばかりに目を奪われていると全く見落とされてしまう内容で、今回ちょっと反省した次第です (イスコもエナも、なかなか頑張ってるじゃないかと驚いた)(汗)

↑ようやく光学系構成図の話に到達しました (だからいつも話が長いんだって!)(汗)

左端が US3467464 に掲載されている図面から当方がトレースした光学系構成図です。 色付の要素が3群3枚トリプレット型光学系構成を表し、そこに像面歪曲収差と斜め非点収差の改善を補強する意味、合わせて必然的に色収差改善も狙いつつ 色付の構成6枚にあたる平凹レンズが接着されているようです。

一方中央が今回のオーバーホールで完全解体した際、光学系の清掃時当方の手によりデジタルノギスを使い逐一全ての光学硝子レンズを計測したトレース図です。特に 色付の光学系第4群と第5群構成6枚目のカタチが別モノでした。しかし前述の特許出願申請書掲載図のとおり確かに構成6枚目は平凹レンズであり、真っ平らなのを確認しました。

最後に右に掲載したのが、ネット上で今回扱ったモデルの光学系構成図として載せられている図のトレースです。この構成図が明らかに間違いであるのが 色付両凹レンズと 色付平凹レンズが離れている (互いに接触していない) 時点で正しくありません。

なぜなら、そもそも の特許出願申請書の掲載光学系構成図の時点からして「構成5枚目と6枚目は互いに接触している」発明だったハズなので、それを違えてしまってはイケマセンね(笑)

↑完全解体して取り出した光学系第1群前玉第5群後玉までを並べて撮影しています。光学系前群側の配置レンズを赤色文字で表記し、後群側をブルー色の文字で表しています。またグリーン色の矢印が指し示す方向は前玉の露出側方向を表します。

↑同様ヒックリ返して裏面側を撮影しています。当方は「プロにもなれず、マニアすらなれなかった整備者モドキのクソな転売屋/転売ヤー」との話なので(笑)「公然と平気でウソを拡散し続けている」と某有名処のコメント欄に誹謗中傷され続けている始末で(泣)、仕方ないのでちゃんと『証拠写真』を載せて解説しなければイケナイみたいです (面倒くさい)(笑)

後で引退してから当該被疑者2人を営業妨害と慰謝料請求で告訴する為に、その被害を被っている事実として2022年以来記載し続けています (しつこくてスミマセン)。

↑先に明記した光学系後群側に位置する第4群両凹レンズと、後玉にあたる第5群を並べて撮影しています。赤色矢印で指し示している箇所の「反射防止黒色塗料」箇所が一部剥がれています。またオレンジ色の矢印で指し示している箇所には非常に薄いクモリが視認できます。

↑同様またヒックリ返して撮影しました。やはりオレンジ色の矢印で指し示している箇所には本当に薄いクモリが確認できました。また赤色矢印で指し示している箇所は、製産時点に着色されたモノではない「反射防止黒色塗料」が確認できます。

↑2つの光学硝子レンズを「実際に後群格納筒の中に収納した時の状態で撮影」した写真です。赤色矢印で指し示したように互いの光学硝子レンズは接触しあい積み重なる設計で「格納筒に落とし込み方式で収納」なのが歴然です。

・・何を言いたいのか???

つまり当初バラす前の実写確認時点で、やはり今回の個体もピント面の解像度が甘く、そのピーク/山の前後に非常に薄いパープルフリンジブルーフリンジが現れました (とても薄い色付き)。

その因果を明示する『証拠写真』が上の写真であり、光路長に対して不必要な「反射防止黒色塗料の塗膜の厚み分」が影響しているように考えます (後玉のコバ端は一部が剥がれ落ちているのが分かる)。

↑2枚貼り合わせレンズたる後玉の光学系第5群ですが、露出面にもこのように凡そ1㎜強内側に「反射防止黒色塗料」が塗られており、これは「後玉締付環を着色した反射防止黒色塗料の一部」が残っていた次第です・・この事実から「こんなことは製産時点にライカが行うワケがない」と考え、過去メンテナンス時に着色したモノだと断定しました(汗)

↑再び同じ光学系後群側第4群第5群ですが、試しに溶剤で拭くと溶けて除去できたので、製産時点ではないことが明白です (他の群の該当箇所は溶剤で溶けないメッキ加工なのが判明しているから)。赤色矢印で指し示している箇所が互いに接触して重なる部分です。

↑こちらは光学系前群側第1群前玉ですが、格納筒に一体モールド成型されており、赤色矢印で指し示している箇所は「濃い紫色のメッキ加工」が施されています。これは以前特許出願申請書を調べている時に偶然発見したキヤノンの「反射防止黒色塗料」に関する発明の記述を読んで、初めて「敢えてワザと故意に濃い紫色に仕上げている」事を理解しました。その理由は当然ながら反射する入射光の波長成分に対して最も効果的な波長成分として、最終的に実施例を示しつつ検証した結果の色合いが「濃い紫色のメッキ加工」だと分かったからです。

日本を含む世界各国の非常に多くの光学メーカーが「濃い紫色のメッキ加工」を採用している根拠を垣間見たような気がしています(汗)

そしてグリーン色の矢印で指し示している箇所はアルミ合金材削り出しで「平滑研磨」していたのが確認できましたが、既に経年劣化進行に伴い酸化が進んでいます (白い斑模様が酸化している状況)(汗)

前玉なので光学系第1群にあたりますが、このアルミ合金材削り出しの箇所に次の光学系第2群第3群の黄銅材モールド一体成型の群が格納されます (だから光路長確保のために平滑性を担保する必要があるのに、過去メンテナンス時に処置されていない)(汗)

↑次に格納されるべき光学系第2群第3群は、このように黄銅材にモールド一体成型ですが、赤色矢印で指し示している箇所が「濃い紫色のメッキ加工」であるのに対し、グリーン色の矢印で指し示している箇所は経年劣化進行に伴う酸化が酷く、変質しています。

これは光学系内に存在する締付ネジのネジ山も同じですが、過去メンテナンス時の整備者の多くが「ネジ山に潤滑油を極微量塗りつけて、最後まで硬締めする」のを習性としているようなのです (昔、実際に整備しているプロの整備者の方からご教授頂きました)(汗)

それを整備勘案して推察するなら、今回の個体のこの光学系第2群第3群黄銅材モールド一体成型部分に潤滑油を微量塗っていたことは想定に難くなく、その結果がまさに上の写真のとおり経年の酸化としてグリーン色の矢印の領域に見られると理解が進みます (この領域は平滑面ではないので酸化し易いから/単に重なっているだけだから)。

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以上から、今回扱った個体のピント面の鋭さが甘い瑕疵内容と、合わせてそのピントのピーク/山の前後に現れる微かなパープルフリンジブルーフリンジの出現について、大凡の因果が掴めたように考えます。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。ネット上で幾つかのサイト解説に於いて「標準レンズ域のELMARIT-Rと内部構成パーツの一部が共通に使われている」と述べられていますが、それは間違いです(汗)

確かにほんの数本の締付環の類などは共通パーツ化しているかも知れませんが、そもそも焦点距離が異なれば「鏡筒の繰り出し/収納量が違う」ワケで、当然ながらそれら直進動する際のガイドや「直進キーの長さ」など違うのが道理ではないかと考えます(汗)

正しく言い替えるなら「共通パーツ化として用意したのではなく、共通の設計概念として同じ目的/役目を与えられ、近似したパーツとして造られている」のが本当ではないかと思います。

《当初バラす前のチェック時に気になっていた内容》
距離環を回すトルクがスカスカ状態でグリース切れを起こしている。
距離環を回していくと途中に重く感じる箇所がありトルクムラが残っている。
内部から潤滑油の独特な臭いがする (CRC 5-56ではない)。
絞り環にガタつきがありクリック感が非常に軽い。

 開放時絞り羽根が極僅かに顔出ししている (完全開放していない)。
マウント部開閉操作レバーの動きにムラがある。
光学系内に極薄いクモリと点状の汚れがある。

《バラした後に新たに確認できた内容》
空転ヘリコイドの酸化進行が酷すぎる。
ヘリコイドオスメスのネジ込み位置が違っている。
絞りユニット/開閉レバー環共に鋼球ボールの動きに違和感あり。
空転ヘリコイドが重いので、それをごまかす為に絞り環に遊びを持たせて組み上げている。
塗布していたヘリコイドグリースは黄褐色系グリースだが、その後潤滑油注入されている。

↑上の写真はこのモデルのヘリコイド群を並べて撮影しています。このモデルは鏡胴内に「空転ヘリコイド」を装備するので、ヘリコイド群に対するネジ山のセットは一対しか存在しません (一般的には基台側にネジ込む為、ネジ山は2組必要になる)。

グリーン色文字で表記しているのが「空転ヘリコイド」の構成パーツであり、当然ながら接触しながら回る=空転する為「平滑研磨」されています。上の写真では「ヘリコイドメス側空転ヘリコイド」になります。また「封入環」は「空転ヘリコイド」を押さえ込んで寸法公差を担保すべく存在する大変重要な役目を担っています(怖)

なお1枚めがバラした直後に溶剤洗浄した直後の撮影で、2枚めが当方の手による『磨き研磨』が終わっている状態での撮影です。

↑「空転ヘリコイド」の「平滑面」を赤色矢印で指し示しています。同様1枚目の写真がバラした直後の溶剤洗浄後で、2枚目が『磨き研磨』後ですが、実際は処理が少し違っていて「平滑研磨」しています。

↑「空転ヘリコイド」の内側が「ヘリコイドメス側のネジ山」になるものの (グリーン色の矢印)、相当な長さなのが分かります。その一方で左側「ヘリコイドオス側のネジ山」は短いので、メス側の長い距離を回りながら回転していく/直進動していく原理です。

するとこれだけネジ山が細かいので (量が多いので) 必然的に塗布するヘリコイドグリースの性質で距離環を回す時のトルク感が激変します(汗)

なおブルー色の矢印で指し示している箇所が「封入環で抑え込まれる平滑面」を意味し、ここまで含めて「平滑研磨」が必須です。

↑製品版のオールドレンズで、距離環を回した時に鏡筒を繰り出したり収納したりする原理は「回転するチカラを直進動するチカラに即座に変換する仕組みがあるから」と指摘でき、その役目が「直進キーと直進キー環の存在」であり、垂直状に立つ板状パーツ=直進キーは、ヘリコイドオス側ガイド/溝に刺さって、スライドしていきます。

従って「チカラを変換しつつ、可能な限り距離環を回して伝わってきたチカラを100%伝えるポイントは、ガイドとの接触面にある」と指摘できます(汗)・・それを整備者がどれだけ正しく認識しているのかで最終的な組み上がり後のトルク感は全く別モノに変化していきます(汗)

↑実際、しっかりとちゃんと『磨き研磨』成されれば、ご覧のようにヘリコイドグリースを塗布せずともとても滑らかにスルスルとヘリコイドオスメスが回転しながら貫通していくのが分かります (上の写真は一切ヘリコイドグリースも潤滑油も塗っていません)(笑)

一般的に『磨き研磨』しないままこのような所為を行うと、ヘリコイドオスメスのネジ山同士が噛み合い「カジリ付」で融着してしまい外せなくなります(怖)

↑全ての構成パーツの『磨き研磨』が終わったので、ここからはオーバーホールの組立工程に入ります。上の写真は絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です (前玉側う方向からの撮影)。

↑絞りユニットの構成パーツはシンプルで「位置決め環 (左)」と「開閉環 (右)」ですが、金属材の材質が全く異なります。「位置決め環 (左)」が真鍮材/ブラス材の切削で造られており、鋼球ボールによる「平滑面」を備える設計です (それで真鍮材/ブラス材を使っている)。一方「開閉環 (右)」側は回転運動を続けながら絞り羽根の開閉動作を行いますがアルミ合金材の削り出しです。

さらにグリーン色の矢印で指し示しているように棒バネがセットされており、そのチカラで互いが回転運動する原理なのが分かります。

↑絞りユニットの構成パーツを全て並べました (鋼球ボールのみ写真には写っていません)。

締付環 (アルミ合金材)
ベース環 (黄銅材)
開閉環 (アルミ合金材)
円弧型鋼球ボール用スペーサー x 5ケ (アルミ合金材)
位置決め環 (真鍮材/ブラス材)

の円弧型スペーサーのみ1本だけ一緒に撮影するのを失念していました (この撮影時に指で引っ掛けて飛んでしまい紛失していたから/後で工具箱の中から見つけ出し救出しました)(汗)

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

絞り羽根開閉幅
絞り羽根が閉じていく時の開口部の大きさ/広さ/面積を指し、光学系後群側への入射光量を決定づけている

↑5個の円弧型スペーサーと鋼球ボールを均等間隔に入れ込んで、無事に絞りユニットが組み上がりました・・結局、開閉環が回転する時、その間に入る鋼球ボールが介在すると言う意味は「内側に位置する位置決め環の最大外径は、開閉環の最小内径よりもさらに小さい」が故に、そのまま開閉環の内部に位置決め環を落とし込むと「ストンと何処にも引っかからず貫通落下してしまう」のが道理です(笑)

要は「鋼球ボールの半径だけでそれぞれが支えられつつ回転運動するから、非常に平滑な回転が実現する」原理ですね(笑)・・ちょっと考えれば至極当然な話ですが、リアルな現実に実際「鋼球ボールの半径だけで内側の位置決め環を支える」と言うのは、そんな簡単な工程作業ではありません(笑)

先ず120%の勢いで手に保持したまま25個の鋼球ボールを入れ込んでいく作業だけで、その途中にパラパラと先に入れ込んだ鋼球ボールが落下していき、あっという間にバラけます(汗)

・・従って専用の治具を用意する必要性にかられます(汗)

ちなみに上の写真で手前側に位置する黄銅製の「 ベース環」に対して「 位置決め環」が「 締付環」によって締め付け固定され、且つこの「 ベース環」が今度は鏡筒内部に締め付け固定される結果、絞りユニットが鏡筒最深部にセットされます(笑)

これが意味するのは「このモデルの絞りユニットは、鏡筒の上部 (前玉直下) で固定されたままそのままブラ下がっている状態の中で、一方向から棒バネのチカラが影響を与えづけている構造設計」だと理解できるワケで、その「一方向からのチカラが常に及ぶ前提」に対しての金属材に係る慣性から「 ベース環を黄銅材で用意してきた」ことまで判明する次第です(驚)

・・このように全ての構成パーツの素材と設計と目的/役目は密接に繋がっているのです(汗)

過去メンテナンス時には「 締付環」が「反射防止黒色塗料」で着色されていましたが、そもそも光学系に一切影響を及ぼさない為、着色する必要性すらゼロです(笑)

それにこだわるのなら、ではどうしてライカの製品設計者は「 位置決め環」をピッカピカの真鍮材/ブラス材で用意したのでしょうか???(笑)

・・そういう思い込みだけで「反射防止黒色塗料」を着色するから光路長が狂っていく(泣)

↑実際鏡筒最深部に絞りユニットを組み込むとこんなかんじに仕上がります。既にこの時点で「棒バネのチカラにより、絞り羽根は常に閉じるチカラが及んでいる (から閉じきっている)」状態であり、上の写真が明示するのはこのモデルの最小絞り値f22であり、それ以前でも以後でもありません (それがライカです)。

当初バラす前の確認時点で「 開放時絞り羽根が極僅かに顔出ししている (完全開放していない)」であり、それを正したところです (つまり閉じすぎていた設定だった)(汗)

少なくとも当方のような何処の馬の骨だが分からないような整備者モドキと呼ばれている人間が正す前に、そもそもライカ製オールドレンズの整備をするような整備者なら「絞り羽根が閉じすぎ」なんて有り得ない話だと思うのですが・・(汗)

ちなみに顔出ししていた量は「僅か0.5㎜程度」ですが、顔出しは顔出しで事実です(笑)・・完全開放しない限り全てダメです (と当方は思います)(笑)

その結果 (閉じすぎていた為に) 各絞り値に対しての絞り羽根の開閉幅 (開口部の面積/カタチ/入射光量) まで微妙に適切に合致しないまま長年使い続けることを強要されるのは、さすがに「心の健康上ヨロシクない」との立場なのが当方のスタンスだっりたします (もちろん僅かに
0.5㎜程度の顔出し/相違レベルなら、たいした影響には至りませんが、あくまでもライカはライカだからです
)(汗)

もっと厳密に指摘するなら、開放設定時の極僅かな絞り羽根の顔出しは、絞り値が上がって閉じていくに従いその影響度合いは増していくのが道理ですから、特にこのモデルの場合、その描写性能から捉えてもそれはちょっと無いでしょう・・と言う話にしかなりません(涙)

・・ライカを整備するとは、そういう処にこだわりを探るのが本筋だと思っちゃいます(汗)

当方は技術スキルが低いので、プロの整備者相手に何かしらの因縁をつける時、そういう非常に細かい重箱の隅をつつくような要素を挙げて、大騒ぎするしか残っていません (本人が自覚して述べているので事実です)(笑)

↑完成した鏡筒を立てて撮影しました。写真上方向が前玉側の方向にあたります。外周には切り欠き/スリット/開口部があり、そこに「絞りユニット内の開閉環」が見えており、合わせて「1箇所に開閉アーム」がネジ止め固定されています。この「開閉アーム」はブルー色の矢印の範囲で移動します/回転します。

↑今度はヒックリ返して後玉側方向の向きで撮影しています。同様「開閉アームブルー色の矢印の範囲で駆動する」ワケですが、その際及んでいるチカラは棒バネからのチカラであり、その棒バネが両端でネジ止めされています (グリーン色の矢印)・・一方は開閉環に締め付け固定されています。

ちなみに光学系後群格納筒はご覧のように内壁がピッカピカのアルミ合金材削り出し状態で、且つ実際は「平滑面」に仕上げられています (ブルー色の矢印)。

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ここまでのこの鏡筒に関する解説で、既に「 開放時絞り羽根が極僅かに顔出ししている
(完全開放していない)
」の瑕疵内容に関する因果が大凡明白になっているのが分かるでしょうか???(笑)

少なくともプロの整備者なら、もうこの時点で気づいていなければアウトですが(笑)、要は「開閉アーム」の位置がズレているのです(汗) 前述のようにこのモデルの場合「常に絞り羽根を閉じようとするチカラが及んで、鏡筒単独状態では最小絞り値まで絞り羽根が閉じきっている状態」なのが明らかです。

すると問題なのは (絞り羽根顔出しの瑕疵に至る問題なのは)、この「開閉アームの位置ズレ」であり、上の写真で言うところの右端ではなく「左端に開閉アームが来ている時に既にズレているから絞り羽根が顔出ししている」と整備している最中に気づかなければイケナイと言っているのです。

さらに原因追求を進めるなら、ではどうして左端に到達した「開閉アーム」の位置がズレているのか、その因果は「まさに絞りユニット内の位置決め環固定位置ズレが原因」であり、要は絞りユニットの組み込みを過去メンテナンス時の整備者がミスっているのです(笑)

結果、後のオーバーホール工程で出てきますが、この「開閉アーム」を常に保持し続けている「制御環から垂直状に飛び出ている制御ガイド」との連携に係る「チカラの影響」は、そっくりそのまま最終的に距離環を回すトルクが重くなる方向へと瑕疵を増大させていく要因に至ります。

・・これが潤滑油を注入して距離環のトルクを軽くしたかった理由の本質です!(笑)

このように非常に多くの人達が「距離環を回すトルクが重いのはヘリコイドグリースの粘性の問題」とすぐに結論づけしますが、それは間違っています(笑)

おそらく今このブログをご高覧頂いている、多くの皆さんも同じように推察していたでしょうが、距離環を回すトルクが重く変わってしまった根本は「実は絞りユニットの組み込みミスだった」と言う、まるで異なる部位からの「伝わってくるチカラの影響に気づかなかった整備者のスキル問題」と断定できてしまい、だからこそ一意的に因果関係を決めつけて即座に処置してはイケナイのだと、何度も何度も執拗にこのブログで述べ続けています(笑)

・・重要なのは「観察と考察」であり「原理原則」に則った気づきとその対処なのです!

↑こちらは絞り環と連携して駆動する「制御環」の各構成パーツを並べて撮影しています。

ベース環 (黄銅材)
制御環 (アルミ合金材)
円弧型スペーサー (アルミ合金材)
封入環 (黄銅材)

ここでもやはり黄銅材に対して「制御環側はアルミ合金材と金属質が異なる」ワケで、この理由/根拠について、ちゃんと金属相手で作業する以上、原理として理解できていないとダメですね(笑)

なお 円弧型スペーサー (アルミ合金材) は非常に柔らかいアルミ合金材で、ちょっと柔らかめの針金のような印象です (指で簡単に曲げられる)。

すると当初バラす前の「 マウント部開閉操作レバーの動きにムラがある」は、まさにこの「 制御環 (アルミ合金材)」の駆動を指しており、その因果は必然的に「 円弧型スペーサー (アルミ合金材)」の円弧のカタチが拙いしかあり得ません(笑)

実際チェックするとブルー色の矢印で指し示している箇所の1本だけ、円弧の曲がり具合が微妙に違います(汗)・・おそらく封入する際に斜めってしまい、封入環で締め付けてしまって鋭角に変形してしまったのを直したのだと推察します(汗)

しかしその変形した鋭角に曲がった場所だけは、既にカタチが残っている為、今回のオーバーホール工程の作業では『磨き研磨』してそのカタチを正します(泣)

・・大変細かい話ですが、リアルな現実は、こういうのが「観察と考察」だったりします(汗)

↑組み上げるとこんな感じに仕上がります (当たり前ですが)(笑)・・当然ながら回転の動きは至極滑らかで平滑を担保できています(笑)

ベース環と 制御環の間に「 円弧型スペーサーと鋼球ボール (5ケ)」が均等配置で封入されているのが分かります。従って「 制御環」回転させてみた時にゴロゴロッとした感触が指に伝わってきていたのが違和感だったワケで(笑)、要はそんな程度の調査しか当方にはできません (何一つ高度な技術レベルの話を指摘できない整備者モドキ)(恥)

↑上の写真は基台 (アルミ合金材削り出し) をヒックリ返して撮影しています。すると赤色矢印で指し示している箇所は「平滑仕上げ」なのに対し、外側の絞り環が被さる箇所は「メッキ加工」なのが一目瞭然です (グリーン色の矢印)(汗)

・・どうしてメッキ加工が違うのでしょうか???

↑その理由が分かりましたね(笑)・・前述した「制御環の部位が入って回転するから」です(笑)

↑絞り環と連携させて組み込んだところです。このように一見すると「グリースを塗布すれば良い」と考えがちですが、リアルな現実は全く違います(笑)

それはそうです。そもそも互いのメッキ加工が異なるのですから、そこには製品設計者の意図が明確に示されていると気づかないとダメですね(笑)

↑マウント部仮組みしてヒックリ返したところです。すると赤色矢印で指し示している箇所にこそ「空転ヘリコイドの部位が丸ごと格納される」からこそ、必然的に「平滑性の担保」が必須になります(汗)

↑もう一度並べて撮影しましたが、その「空転ヘリコイドの部位の各構成パーツ」です。

ヘリコイドオス側 (黄銅材)
ヘリコイドメス側、兼空転ヘリコイド (黄銅材)
直進キー環 (黄銅材)
封入環 (黄銅材)

これら4つの構成パーツは、互いが100%接触しあって駆動するのに「どうして同じ黄銅材で用意してきた」のでしょうか???(笑)

・・これが分かっていないと、残念ながらこのモデルの整備は適切に組み上げられません(笑)

逆に指摘するなら距離環駆動時のトルクを決めているのは「まさに空転ヘリコイドそのモノ」だからです(汗)

↑ちゃんと組み込んであげると、こんな感じに仕上がります(笑)

この時、既に「 直進キー環」も「 ヘリコイドオス側」刺さっている為、ここで空転ヘリコイドの回転でトルクが決まる次第です。すると冒頭の問題の内容で「 距離環を回すトルクがスカスカ状態でグリース切れを起こしている」や「 距離環を回していくと途中に重く感じる箇所がありトルクムラが残っている」或いは「 絞り環にガタつきがありクリック感が非常に軽い」といった瑕疵内容の全ては「そもそも空転ヘリコイドヘリコイドの経年劣化進行に伴う酸化が酷いまま潤滑油の効果だけに頼って過去面弟子に組み立てていた」からです(笑)

・・つまり一切過去メンテナンス時に「平滑研磨」していません(汗)

グリースに頼った整備」をするから当然起こる (想定できる) 瑕疵内容と指摘できます(汗)

↑距離環ローレット (滑り止め) をセットするとこんな感じに組み上がりますが、実はライカ製オールドレンズの多くのモデルが「距離環の固定箇所は1箇所しか下穴を用意していない」ワケで、それが意味するのは「適切なヘリコイドオスメスのネジ込み位置が決まっていて、必然的に無限遠位置も何もかも確定する (一意しか執らない)」完璧な設計概念です(涙)

従って今回の個体はヘリコイドオスメスのネジ込み位置が「ネジ山1つ分狂っていた」が為に、その影響が各所に現れ、それをごまかす目的で「敢えてワザと故意直進キー環を硬締めせずに固定していた (本当に極僅かに緩い締め付け)」結果、その上に被さる「制御環」への干渉が増してしまい、それをごまかす目的で今度は「絞り環を極僅かに浮かせていた」と言う、全てが繋がった因果だったのが分かります(笑)

・・鏡胴のガタつきの理由は、そんなところです(笑)

↑ちなみに「制御環」は当然ながら繰り出し/収納する鏡筒のその「繰り出し量/収納量」に比例したガイド/溝を備えるので、それを説明しています (グリーン色の矢印と囲ったライン)。つまり距離環を回した時のトルク感に抵抗/負荷/摩擦として影響してくるのがこの「制御環」の組込状況なのがご理解頂けると思います(汗)

必然的に赤色矢印で指し示している箇所に「鋼球ボール反発式スプリング」が入るので、それによってクリック感が体現できます。

↑一峯の上から被さるマウント部を撮影していますが、赤色矢印で指し示している箇所に「円形の穴」が空いているのが「絞り値キー」であり、ここに鋼球ボールがカチカチとハマるのでクリック感を実現できる原理です。

ところが他の一般的なオールドレンズのように「経年の中で溝が/絞り値キーが削れて横方向の削れ痕が残っていない」のが明白で、こういうところに金属材の違い、ひいてはその硬度管理を基にしたしっかりした製品設計概念があるからこその検証の一つと言えないでしょうか。

・・当方はこんなところで、ウルッと涙腺が緩くなったりしています(笑)

本当に逐一、さすがのライカです!(驚)

↑なおこのモデルの内部構成パーツの中で唯一の存在ですが「樹脂製パーツ」が居ます(汗) ご覧のとおり「開閉アーム」と「後玉遮光環」が樹脂製パーツですが「開閉アーム」のほうには締付ネジに「固着剤」が塗布されており、当然ながら樹脂材なのでその成分のせいで本当に微々たるものですが、樹脂材の表層面が溶けています(怖)

また一方の「後玉遮光環」も「固着剤」を塗ってくれたので、今回外すことができませんでした (溶剤で溶けてしまうから)(涙)

こういう仕業こそが、過去メンテナンス時の整備者の手により「将来に渡るサービスレベルを阻害させている」要因にしかなっていません(涙)

↑こちらは光学系第2群の直前に位置する「遮光環 (アルミ合金材削り出し)」ですが、既に当方の手により溶剤を使い「反射防止黒色塗料」を完全除去しています(汗)

ご覧のとおり、過去メンテナンス時に塗布されていた「反射防止黒色塗料」の下から現れたのは「製産時点にメッキ加工されたいる遮光環」なのに、いったいどうしてこのメッキ加工が
イケナイのでしょうか??? どうして製品設計者の決断がイケナイのでしょうか???(涙) そしてもちろんこのメッキ加工の根拠は「光学設計者の意志の現れ」なのに、それを過去メンテナンス時の整備者はまるで尊重せず台無しにしています(涙)

・・何でもかんでも「反射防止黒色塗料」を塗りまくるその頭が当方には信じられません(涙)

当方は、こういう設計者の意志や意図を台無しにして貶してしまう所為に、本当に腹が煮えくり返る処で御座いまする(涙) 製品設計者も光学設計者も共に、自分の人生の貴重な多くの時間を賭して設計に一心に臨んだのに、いったいどうしてそれを貶めるような行為ができるのか本当にその人格を疑わざるを得ません。

・・全ては外面の見てくれの良さで高く売れれば良いと言う、まるで低俗な考えの現れ!(怒)

実際今回の個体も「 光学系内に極薄いクモリと点状の汚れがある」その薄いクモリは、まるで「反射防止黒色塗料のインク成分」だったワケで、さらにそこにカビ菌糸が根を下ろしていたワケで、一部が微細な点状カビ除去痕として残っています(涙)

DOHヘッダー

ここからは完璧なオーバーホール/修理が完了したオールドレンズの写真になります。

↑完璧なオーバーホール/修理が終わりました。正直なところ「円弧型スペーサーと鋼球ボールの組込に丸1日を要した」ワケで、どんだけ技術スキルが低いのかと言う話です(恥)・・しかも専用治具まで造らなければダメだったワケで、恥ずかしい限りです(汗)

↑光学系内の薄いクモリは完全除去できました。但し光学系第4群の両凹レンズに、点状カビ除去痕が数点残ります。パッと見で当初バラす前に塵/埃に見えましたが、チェックするとカビ菌糸でした (つまりその芯が残っている)(汗)

ご覧のように前述した「第2群直前の遮光環を製産時点に戻した」のが一目瞭然です(笑) もしもこれで「迷光迷光」と騒ぐ人が居るなら(笑)、「ではどうして絞り羽根がメタリックグレーなのかの説明を是非お願いします」と嘆願申し上げます(笑)

・・頭が悪い当方は、未だにその根拠を発見できていません(恥)

どうして漆黒のマットな真っ黒の絞り羽根ではないのでしょうか???

↑後群側の第4群と第5群の接触面を (落とし込みによる格納なので) キッチリ仕上げた分、ピント面の解像度感が増して (α7IIのピーキング反応が僅かに増した) 合わせてピントのピーク/山前後のフリンジ量が大幅に低減できています (光学設計上、ゼロにはならないと思います)。特にパープルフリンジの量が低減できているので、解像感が増す結果に至った内容と辻褄も合致します (あくまでも光学知識皆無な当方の妄想範疇を超えません)(汗)

・・それが当初バラす前に実写確認した時との、画像の印象差ですね(汗)

その意味で指摘するなら、今回の個体のモデルバリエーションたる「第1世代」の実装光学系が「5群7枚レトロフォーカス型光学系」に対し、その次に登場したバリエーションたる「第2世代 (以降)」では、実装光学系が「6群7枚レトロフォーカス型光学系」へと変異します。それが意味するのは「解像感のより増強」を狙ったからとも妄想でき、或る意味「ピント面から周辺域への滲みの要素を狙うなら第1世代」と言う方程式も否めず、逆に「外周域に対する収差改善を狙いキッチリクッキリがほしい」なら第2世代 (以降) と言う選択に効果が期待できるとも言えそうです(汗)

もっと言うなら、さらにそれ以上の解像感と緻密感を狙うなら、ではどうしてオールドレンズを入手するの???・・と言う、至極純粋な疑念に到達します(笑) はたして今ドキのデジタルなレンズ群との境界を何処に置くのかは個人の自由ですが、オールドレンズに期待値以上を求めすぎるのも如何なものかと思ったりします(汗)

・・その意味でも当方はこの「第1世代」好きです(惚)

↑当然ながら、当たり前の話ですが絞り羽根の開閉レベルはまるで適正です(笑) そして完全開放時の極僅かに絞り羽根顔出しも完全開放に調整済みです (当然です)(汗)

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑塗布したヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」ですが、当方独自のヌメヌメッとしたシットリ感漂う軽めのトルク感で、掴んでいる指の腹に極僅かにチカラを伝えるだけでピント面の前後微動が適うトルクに仕上げられており、抜群の操作性を実現しています(笑)

但し、当方の印象としては「どちらかと言うと重めの印象」であり、決して軽い印象には仕上がっていません。おそらく当方で用意しているヘリコイドグリースの成分が、このモデルの「空転ヘリコイド駆動」に僅かに合致していないのだと思います。

試しに軽く仕上がる方法でグリース塗布すると「今度は逆にククッと微動する現象が起きて、ピント合わせ時に辛くなる」ので、重いほうに戻しています(汗)・・申し訳ございません。

また他に光学系内に関しては、特に後群側に残る極微細な点状カビ除去痕と合わせて、微細な線状の拭きキズのような痕跡も視認できますが、これらは除去できません・・申し訳ございません。

オーバーホール/修理ご依頼者様皆様に告知しているとおり、もしもお届けしたオールドレンズの仕上がり状況にご満足頂けない場合は、そのご納得頂けない要素に対して「ご納得頂ける分の金額をご請求金額より減額」下さいませ。
減額頂ける最大値/MAX額は「ご請求金額まで (つまり無償扱い)」とし、大変申し訳御座いませんが当方による弁償などは対応できません・・申し訳御座いません。

↑同梱されていた付属品一式です。marumi製フィルターにも、なんだかカビ菌糸のようなモノが残っていたので光学清掃しました(汗)

また純正の金属製フード「12564」は、ご指示に従い叩き込みを行い1箇所の打痕を可能な限り戻しましたが、完璧に真円状態にまで到達していません(涙)・・これも誠に申し訳ございません!(汗)

なお付属の前後キャップなども中性洗剤で洗浄しており、ローレット (滑り止め) の平目模様 (ギザギザ) も同様手垢などを溶かす専用洗浄液で清掃し終わっています。

↑以下のミニスタジオ撮影はα7IIを使って撮っていますが (何しろ老眼が酷くて見えないので)(汗)、無限遠位置のピント合わせだけはRICOH製GXRを使いちゃんと確認しながら微調整しています (要はヘリコイドオスメスのネジ込み位置の話)。

無限遠位置は∞刻印に対して僅かに手前位置のオーバーインフ状態です。この次のネジ込み位置に送ると、今度は逆に極々僅かなアンダーインフ状態に陥るので、どうにもなりません(汗)・・申し訳ございません。

なお、手持ちのマウントアダプタに信用を置ける「LRLMマウントアダプタ」が無かったので、慌ててRayqual製を入手しました。その関係でさらに整備が遅れましたこと、お詫び申し上げます(泣)

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

被写界深度から捉えた時のこのモデルの無限遠位置を計算すると「焦点距離35㎜開放F値f2.8被写体までの距離17m許容錯乱円径0.026㎜」とした時、その計算結果は「前方被写界深度8.5m後方被写界深度∞m被写界深度∞m」の為、10m辺りのピント面を確認しつつ、以降後方の∞の状況 (特に計算値想定被写体の20m付近) をチェックしながら微調整し仕上げています。

・・一言に無限遠位置と述べてもいったいどの距離で検査したのかが不明瞭ですね(笑)

↑当レンズによる最近接撮影距離30cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフードは付属品をそのまま装着して撮影しています。

・・まるで被写体の被写界深度が薄く/狭いながらも確実に明確にピーク/山が掴めます。

↑絞り環を回して設定絞り値「f4」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f5.6」で撮りました。

↑f値は「f8」に上がっています。

↑f値「f11」での撮影です。

↑f値「f16」です。

↑最小絞り値「f22」での撮影ですが、もうほぼ絞り羽根が閉じきっているものの、まだよ〜く見ないと「回折現象」の影響を感じないレベルであり・・本当に流石のライカモデルです!(驚)

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。

今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。本日クロネコヤマト宅急便にて完全梱包のうえ、発送申し上げます。また発送後にご案内メール送信いたします。どうぞよろしくお願い申し上げます。