♦ FUJITA (藤田光学工業) H.C FUJITA 35mm/f2.5 (zebra)《初期型:FT26xxx》(M42)

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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホール/修理が終わりご案内するモデルは、国産は
藤田光学工業製広角レンズ・・・・、
H.C FUJITA 35mm/f2.5 (zebra)《初期型:FT26xxx》(M42)』です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Україні!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

Slava UkrainieieGeroyam Slava

今回完璧なオーバーホールが終わってヤフオク! 出品するモデルは、当方がオーバーホール作業を始めた14年前からの累計で、当時の藤田光学工業製広角レンズ「35㎜/f2.5」で捉えると14本目にあたりますが、今回扱った「製造番号:FT26xxx」先頭番号「FT26」だけでカウントすると初めての扱いです。

先ずは冒頭で、このような大変希少なオールドレンズのオーバーホール/修理ご依頼を賜り、
ご依頼者様に感謝とお礼を申し上げたいと思います・・ありがとう御座います

偶然昨年末から、ライカ製オールドレンズの実装光学系の中で「3群4枚エルマー型光学系」について、その特許出願申請書の記述などを基に、当方の認識を改め考察を深めたことから、運良く今回扱うモデルの光学系についても明確な考察を進められそうです(汗)

右構成図は以前扱った別個体のオーバーホールで完全解体した際、光学系の清掃時当方の手によりデジタルノギスを使い逐一全ての光学硝子レンズを計測したトレース図です。

この光学系構成図を使って解説を試みたいと思います。

先ずは巷で間違った認識をしている人が居るので、ここで最初にこのような広角レンズ域のオールドレンズに実装される光学系について説明します。

一般的にオールドレンズの光学系に於いて「レトロフォーカス型光学系」とは特定のモデル、或いは特定の光学設計のタイプ/カタチのみを限定する趣旨のコトバではなく「光学系の設計概念の中の前提条件のひとつ」を表すコトバであることを認識するべきです (テッサー型のように特定の光学系を指す型の名称ではない)。

戦前〜戦中の間、フィルムカメラの主流を担っていたのはレンジファインダーカメラであり、オールドレンズの後玉端からフィルム面までの「バックフォーカス」(オールドレンズのマウント面からフィルム面までの距離を定義するフランジバックとは異なる) が短かった為、広角レンズ域のオールドレンズに対して実装すべき光学系は「標準レンズ域の光学設計でも十分対処できていた」と言う時代背景を理解する必要があります。

ところが戦後すぐにフィルムの直前にクイックリターンミラーを装備した一眼 (レフ) フィルムカメラが民生品として登場し、その撮影の確実性から瞬く間に普及が進むと、オールドレンズの後玉端とフィルム間の距離が長い為に「標準レンズ域の光学設計をそのまま広角レンズ域に流用する難しさ」に直面することになります。

逆に言うなら戦後すぐの時点では「広角レンズ域の専用光学設計が存在していなかった」ことを受け入れる必要があります。

そこに1950年、フランスは老舗の光学メーカーP. ANGENIEUX PARIS (アンジェニュー) 社より世界で初めて一眼 (レフ) フィルムカメラ向けの広角レンズ専用光学設計を実装した「RETROFOCUS TYPE R1 35mm/f2.5」というオールドレンズが発売され、その時「RETROFOCUS (レトロフォーカス)」はそのモデル銘として商標登録されました。

これが「RETROFOCUS」が世に現れた一番最初の経緯であり、このコトバはフランス語の「rétro (レトロ:後退)」と「focus (フォーキュス:焦点)」をあわせた造語であり、まさに「焦点を後方に延伸する光学設計概念」の一つだったことを認識すべきです。

従って「レトロフォーカス型光学系」と言った時、それは一意の特定的な光学設計の型を表さず、広義的な広角レンズ域の光学設計概念を明示するコトバです・・別名「逆望遠型光学系」とも言われており、それはまさに「光学設計概念の前提条件でしかなく、その前提にプラスして他の/別の光学設計が必ず付随する必要が在る」点に於いて、特定に光学系の型を表す表現ではないことは確実になります。

ちなみにこの「RETROFOCUS」と言うコトバが光学設計の前提概念の一つだったことを如実に明示する事実が存在し、Angenieux社はモデル銘として商標登録したものの、その後各国、様々な光学メーカーに於いて、一眼 (レフ) フィルムカメラ向けの広角レンズ域光学設計の開発に於いて、ほぼ高確率で採用せざるを得ないリアルな現実から、僅かに特許料を支払うことを前提に商標権に関する訴訟を凍結しています(汗)

逆に言えば、それほど核心をついた広角レンズ域専用の光学設計概念の前提だったことが明白ではないでしょうか。それは今現在も相変わらず続いており「純粋に単に焦点位置を後方に延伸するだけ」という本質を捉えた発明だったからこそではないかと、今さらながらに感心します(涙)

さて、そのような前提条件を知った上で、前出の今回扱ったモデルに実装する右の光学系構成図を見ると、その「RETROFOCUS」に由来する要素は 色付部分の光学系第1群前玉第2群なのが明白です。もしもこの 色付部分の要素が存在しなければ、光学系第3群からの光学設計だけになってしまい、視野角を広げられずにそれこそ標準レンズ域の光学設計に変化してしまいます(汗)・・つまり光学系第1群前玉第2群は「焦点を後方に延伸する役目が主体の配置」なのが分かります。

一方この光学設計の基本成分たる 色付部分光学系第3群第5群後玉までの要素を指して「3群5枚変形エルマー型光学系」と述べることができます(汗)・・エルマー型なので、十分に解像度が高いと期待に胸を膨らませます(涙)

変形」と述べたのは、本来エルマー型は「3群4枚構成」だからです。まさに「エルマー銘」からライカ製オールドレンズの中で有名な標準レンズElmar 50mm/f2.8《第1世代:196年製》(LM)』向け開発された光学設計であることを表しています (3群4枚エルマー型光学系の特許出願申請書やその解説も前出のリンクのページで詳説しています)。

するといったいこの「変形」要素がどれなのかと言えば、右構成図の中の光学系第4群の2枚貼り合わせレンズたる両凹レンズの構成を担う「構成4枚目の凹平レンズ 色付部分を指します。

逆に言うならもしも 色付が接着されていない「単なる両凹レンズ」だったら、まさに 色付の「3群4枚エルマー型光学系」で落ち着いてしまいます (その場合このモデルは5群6枚レトロフォーカス型光学系になる)(笑)

それ故「変形」なのは間違いありませんが、ではいったいどのような目的で今回扱ったモデルは光学系第4群に「2枚貼り合わせレンズ」を配置したのでしょうか???

残念ながら「藤田光学工業」銘でも光学レンズ設計者の「黒木 直次郎」氏でも特許出願申請書を検索して全くヒットしませんでした(涙)

光学知識皆無な当方による妄想の範疇として考察するなら(笑)、この光学系第4群の2枚貼り合わせレンズのカタチに注目する必要があります。2枚貼り合わせている光学系構成4枚目の光学硝子レンズは「凹平レンズ」です (貼り合わせ面が平らと言う意味)。一方次に接着される構成5枚目の光学硝子レンズは「平凹レンズ」です。

ここに着目する必要があります。もしも2枚の光学硝子レンズをダブレット化して (接着して)「入射光の色消し効果を狙った」のだとすれば「直前の絞りユニット側に位置する1枚目は必ず凹メニスカス」になる必要があり、さらに次に接着される光学硝子レンズ構成5枚目は「両凸レンズ」でなければ「色収差の改善を狙っている事にならない」と指摘できます(汗)

※ちなみに以下の引用解説では入射光が左から透過してくる場合の想定で図式しています。今回の個体の光学系第4群の配置と向きは以下とは逆なので、それを勘案してご参照下さいませ。

色収差
光学ガラスレンズを透過して像をつくる時(結像と言う)、ガラスレンズ材料の分散が原因で発生する収差で、像の色ズレとして現れる事象を色収差と言う。光学に於いて分散とは入射光が波長ごとに別々に分離される現象、またはその度合を指す。媒体たる光学ガラス材の屈折率が波長によって異なることから発生する(wiki)。

図1: 軸上色収差

軸上色収差:色による屈折率の違いにより、結像位置が色によって前後にずれる収差である。白色点光源を撮影した場合、青でピントを合わせると青白い輝点のまわりに赤い前ボケが出来、赤でピントを合わせると赤っぽい輝点のまわりに青紫の後ボケができる。縦収差であるため縦色収差とも言う。

単レンズの場合、赤と青の焦点距離の差は、焦点距離の2%程度である。

色収差の改善として屈折光学系屈折率と分散が異なる硝材のレンズの組を使って色収差の影響を少なくできる。色消しと言う。基本的な手法として、色による屈折率差の少ないクラウンガラスの凸レンズと、色による屈折率差の大きいフリントガラスの凹レンズを組み合わせると、軸上色収差を補正することができる(アッベ数が重要になる)[efn_note]Optipedia,色収差(https://optipedia.info/opt/optics/chromatic-aberration/)から転載[/efn_note]。

→ 光学系構成:フラウンホーファー型もこれを活用している

図2: 軸上色収差の補正

倍率色収差:色による屈折率の違いは、斜めに入射した光の場合には像の倍率の違いとなってあらわれる。その結果、色により像の大きさが異なってしまい、被写体のフチに赤や青紫の色ズレが見える。白色点光源では、画面の周辺部において虹色に分解されて放射方向に伸びた像となる。横収差であるため横色収差とも言う。

軸上色収差は絞り込む(f値を大きくする)ことで、収差の原因となっているレンズ周辺部を通る光線をカットし、被写界・焦点深度を深くして抑えることができる。一方、倍率色収差はレンズの中央部を通る主光線でも発生しているため、絞りでは抑えられない。

・・このことからも明らかなように、貼り合わせレンズの貼り合わせ面が「」になってい点がポイントになり、この光学系第4群は「色消し効果を狙って配置していない」ことになります(汗)

まさにこの色消し効果を内包するのが、最後の光学系第5群後玉の2枚貼り合わせレンズの
カタチと言えばご理解頂けるでしょうか??? 同じカタチですが3群4枚テッサー型光学系の後玉も近似したカタチです (エルマー型も同じ)。

結果、今回のモデルに於ける光学系第4群貼り合わせレンズの接着面は「曲がり率を平坦にすることで色消し効果ではなく、主に像面歪曲収差の改善を主体的に狙っているのではないか」と考察できるのです(汗)

それが「接着面を平坦にした凹メニスカスレンズを2枚ダブレット化してきた理由」とみており、おそらく光学硝子材も互いに違えて配置していると推測できます。特に単一凹メニスカスレンズの配置として仮に見ても、後玉側方向に非常に強い曲がり率を設計してきている点からして「色消し効果狙いではなくなる」ことが分かり、推測の域を出ませんが「最短撮影距離を50cmに短縮化してきた影響」から像面歪曲の改善に迫られていたのではないかと視ています (当方の妄想です)(汗)

これら推測した光学設計から汲み取れるのは「実は相当にAngenieuxのRETROFOCUSモデルを意識していた製品」ともみることができそうで (しかもAngenieuxは最短撮影距離80cmだし!)(笑)、ここに来て「おぉ〜!」と心の中で唸り声を挙げていた次第です(笑)・・その意味で「開放f値f2.5」は至極当然であり製品開発当初から既に決まっていた要素の一つとさえ妄想してしまいます(涙)

巷ではそれほど銘玉扱いされていないようですが、当方的にはもの凄く当時の日本製オールドレンズの中にあって「大手光学メーカーではない、いわゆる弱小メーカーなりの相当な気概を感じ取れる・・としての意味合いで銘玉に値する」との受け取りにて、実は2015年来扱いを続けている広角レンズの一つであり、且つ大変貴重な「純粋なレトロフォーカス型光学系を参照しつつも、1957年当時としては驚異的な50cm近接撮影を体現させてしまった特異的な広角レンズの位置づけ」とも当方の中では捉えています(涙)

・・それほど光学系第4群ダブレット化は特異な設計概念であり、意地を感じ取れる(涙)

いわゆるネット上でこのモデルの外見上のカタチ (頭でっかち) など意匠面の特異性から捉えるのではなく、或いは間違った捉え方で (或いは印象操作で) レトロな甘い写り具合とかハイキ〜な写りなどと揶揄されつつ貶されるのは、全く以て甚だ適合しておらず、今回のオーバーホールに於いても「ピント面はまるでエルマー型光学系のとおり鋭く変わった」ことを・・ここに明記しておきます。もっと見直されるべきオールドレンズだと、当方は思いますね(涙)

《OEMモデルのモデルバリエーション》
※当方で過去に扱った個体について羅列 (未扱い品を含まず)。

原型モデル:藤田光学工業製 (1957年発売)
H.C FUJITA 35mm/f2.5 (zebra)

あくまでも、このモデルが原型であり、それ以外のブランドモデルはすべてOEMモデルとの認識です。
出現頻度は海外オークションでも1年に2〜3本レベルですから希少品の一つです。

OEMモデル:アメリカ向け輸出仕様
H.C JUPLEN 35mm/f2.5 (zebra)

海外オークションでも1年に5〜6本レベルで流通しているので、このモデルの中では最も出現数が多いタイプでしょうか。近年はヤフオク! でも出回っています (feet表記のみ)。

OEMモデル:アメリカ向け輸出仕様
P.C UNEEDA 35mm/f2.5 (zebra)

9年間で1本しか見つけていない珍品です。当方が入手したのはアメリカ向けの輸出仕様品でした。レンズ銘板を見るとモノコーティングの名称刻印が「P.C」になっており少々異なります (feet表記のみ)。

OEMモデル:欧米向け輸出仕様
P.C ACCURAR 35mm/f2.5 (zebra)

こちらも9年間で1本しか見つけていない超稀少品 (珍品) になります。やはりレンズ銘板のモノコーティング刻印が「P.C」になっています (feet/meter併記)。

OEMモデル:フランス向け輸出仕様
P.C RENOIT ETOILE 35mm/f2.5 (zebra)

こちらも1本しか扱っていない超稀少品 (珍品) になります。やはりレンズ銘板のモノコーティング刻印が「P.C」になっています (feet/meter併記)。

原型モデル:藤田光学工業製 (1957年発売)(?)
FUJITA RETROFOCUS f/EXAKTA 35mm/f2.5 (zebra)

同様1本だけの扱いで超稀少品 (珍品) です。初めてレンズ銘板にモノコーティング刻印が無いタイプを見つけました (feet表記のみ)。

他にネット上を探索すると「P.C TOWER 35mm/f2.5 (zebra)」或いは「H.C TOWER 35mm/f2.5 (zebra)」そして「P.C FUJITAR 35mm/f2.5 (zebra)」他「P.C OPTINAR 35mm/f2.5 (zebra)」などというブランド銘の刻印もあったりします。

《製造番号先頭2桁でまとめたOEMモデルの状況》
FT25xxx:
FUJITA、FUJITAR、TOWER、UNEEDA、ACCURA、TAYLOR、RENOIT ETOILE、OPTINAR
FT26xxx:FUJITA、FUJITAR、TOWER
FT27xxx:FUJITA、TOWER、ROTAR
FT35xxx:FUJITA、FUJITA RETROFOCUS、JUPLEN、VOTAR

いずれも製造番号シリアル値側は3桁留まりなので (4桁に増えていた個体を未だ発見できず) そのまま計算すれば製造番号の先頭2桁では合計で1,000本を越えない話になってしまう為、おそらくは割当製産のタイミングを示す暗号ではないかとみています。

↑上の写真は今までに扱ったモデルバリエーションの中から撮影した写真を転載してきています。

:プレッシング時に羽根の形に切り込んで折り返した代用キーのタイプ
中央:その羽根の形の代用キーの拡大写真
:一般的な金属棒をプレッシングしたタイプ

絞り羽根は板金をプレスして一気に求められる設計したカタチにカットされます。この時同時に絞り羽根の両端に「十文字の切込みを入れて押し曲げてしまう」と、左写真のように「三角形のカタチに垂直状に折り曲げられて立つ羽根の形の代用キーが完成」する仕組みです。

プレッシング工程だけで容易にこのような代用キーを用意できるので、製産する側の立場からすれば最も低コストに効率良く絞り羽根を用意できます(汗)

その「三角形のカタチに用意した代用キー」を拡大撮影したのが中央です。「開閉キー」は絞りユニット内の構成パーツ「開閉環」に刺さり、その開閉環が絞り環と連結することで絞り環操作により絞り羽根の角度が変化して絞り羽根が閉じる原理です。

一方絞り羽根の反対側に用意される「位置決めキー」は「位置決め環」の穴に刺さり、そこを軸にして絞り羽根が角度を変えるので「絞り羽根が閉じていく」動きが実現できます。

この「代用キー」を用意していたタイプと、その後の時期に一般的なオールドレンズと同じように「金属の円柱をプレッシングして用意したタイプ」に変更してきたのが右端の写真になります。「代用キー」に比べてコストは増えますが、絞り羽根制御時のトラブルを考えれば圧倒的にその解消に役立つ方式です。

従ってこれら変遷をモデルバリエーションを表す「新旧タイプの相違」として捉えようと考えた時、はたしてどちらが古いタイプの製産手法であり、新しいタイプなのかの判別をつけるのが難しい話になります。

普通に考えれば耐用性の向上やトラブルの改善を求める方向性と捉えれば「代用キー金属棒」と言う (上の写真で言う左右の流れ) になりますが、その一方それら改善目的よりも「何よりもコストを下げたい製産効率を上げたい」という目的を最優先するなら、まるで退化するが如く逆の流れ「金属棒代用キー」の流れ (上の写真で言う右左の流れ) すら実際に起きていた事実と受け取れます(汗)

そのいずれの流れを執ったのかは残念ながら明確に証拠を見つけることは、内部構造の変遷や各構成パーツの変化からは特定できません(涙)

しかし今回扱うモデルに関しては後でご使用解する「マウント面にセット対称とするフィルムカメラ銘を刻印していたタイプが存在していた」事実から、その装備している絞り羽根の「開閉キー」が「三角形のカタチをした代用キー」であることを、その「開閉環の切り欠き/スリット/溝」に写る形状から確認できた為、ようやく確信を持てると判定を下した次第です(汗)

今回扱うモデルバリの中での「新旧判別手法」は「三角形のカタチをした代用キーの存在初期型と前期型」と確定でき、一方「金属棒のキープレッシング後期型」と結論づけできたと推定しています(汗)

その根拠は、ワザと故意にマウント面にセット先のフィルムカメラ、旭光学工業製「Asahiflex IIA/IIB」銘を刻印している事実であり、このフィルムカメラの登場は1952年に国内初の一眼 (レフ) フィルムカメラとしての発売になります。一方発売順で捉えれば「Asahiflex IIB1954年」翌年「Asahiflex IIA1955年」の発売と、モデル銘の最後に付随する「B/A」の順が逆転している発売状況です(汗)

合わせて確かに当時のセット用標準レンズAsahi-Kogaku Takumar 58mm/f2.4 (M37)」も同じく「羽根型の代用キー」を採用していた時期であり、その事実を以て当時のオールドレンズに於ける「絞り羽根のプレッシング工程の変遷」と位置づけるなら、その整合性も相当に確率が高くなります(汗)

《製造番号先頭2桁でまとめた絞り羽根のキー形状》
FT25xxx:(2つの手法が混在している状況)
金属製キー (棒状) のプレッシング方式 → ACCURA、RENOIT ETOILE、
羽根式の代用キー方式 → UNEEDA、FUJITA、FUJITAR、TOWER
FT26xxx:羽根式の代用キー方式 → FUJITA、FUJITAR、TOWER
FT27xxx:羽根式の代用キー方式 → FUJITA、TOWER、ROTAR
FT35xxx:
羽根式の代用キー方式 → FUJITA、FUJITA RETROFOCUSJUPLEN、VOTAR

上の羅列の中で赤色文字のタイプだけは「羽根式の位置決めキーが刺さる穴が円柱状だった」ことを表しており、それが意味するのは「同じ羽根式のキーなのに刺さった後に穴の反対側で折り返して脱落防止していない設計」であり、当方はこれを以て『初期型の設計ではないか』とみています(汗)

何故なら、最小絞り値側まで絞り羽根を閉じきる時、絞り羽根は重なる面積の増大から「癒着原理」が働き上方向に膨らむ現象が起きます。この時「三角形のカタチに羽状に (垂直状に) 立ち上げてキーの代用にしていた」タイプは、代用するキーのカタチが三角形の羽根形状なので「僅かに絞り羽根が浮き上がるだけで羽根が折れる危険に遭う」ワケで、これは経年で「絞り羽根の油染みに弱い」瑕疵にも直結します(怖)

従って製品設計の立場から考察するなら「羽根式のキーが刺さる穴の反対側で折り返して絞り羽根の浮き上がり防止策を採るのが次の段階」と考えられる為、モデルバリエーションの変遷として考えた時「浮き上がり防止策無し浮き上がり防止策有り金属棒へと設計変更」の3パターンが考えらるワケです。これは機能性能を優先した場合、決して退化することはないとの立場からです(汗)

・・それ故に、位置決め環の位置決めキーが単なる円柱状は『初期型』になる唯一の証。

と指摘でき、且つまさに今回扱った個体もその『初期型』の一つだったようです(驚) さらにその根拠を強力に裏付けする『証拠』が次にご紹介する説明です。

FUJITAR銘」のモデルには左写真のような「Asahiflex IIA/IIB」向け刻印がマウント面に刻まれていた個体もあります。
(引用元:BURNT EMBERSのFujitar P.C 35mm F2.5 Asahiflex Lens Testより)
素晴らしい観察力で調査しているサイトです。

これらの検証結果から、藤田光学工業製35mm/f2.5シリーズ」について、特に製造番号先頭2桁の数値は「必ずしも製産時期の新旧に合致しない」と考えざるを得ず、何かしらの暗号の意味合いを持たせた別の役目だったように考えられます。

それは位置決め環に用意されていた「位置決めキー用の穴」の切削状況や、金属棒のプレッシングへの変化など、凡そ同一製産ラインのタイミングの中で「取っ替え引っ替え製造番号先頭の符番を入れ替えていた理由や根拠」としての道理が通らない点から、該当しないとの考察に至ります。

また例えば「TOWER銘」製品は、北米のみならず西部地域や南部の広告にも載っていたりするので、カナダと米国全土向けを対象に当時米国で流行っていた数百ページに及ぶカタログ誌を使う通信販売方式だったのではないかとみています(汗) 同様、例えばカナダ/米国向けに限らず、実際は欧州/ヨーロッパ向けにも輸出していたような広告すら見つかるので「北米向け」と限定してしまうのは如何なものかと思います(汗)

その意味で某有名処で述べられている「このモデルはJUPLEN銘から始まった」との謳い文句は、全く以て当てはまらないようにも思いますが、どうでしょうか(笑)

↑完全解体した時の内部構成パーツ全景写真です。オーバーホール工程やこのモデルの当時の背景など詳しい解説はFUJITA RETROFOCUS f/EXAKTA 35mm/f2.5 (zebra)《初期型》(exakta)』のページをご参照下さいませ。

ご依頼者様のせいではないのですが、今回のオーバーホール/修理ご依頼に際し、ちゃんと参照ページまでご案内頂きながら、当方がその掲載写真をよ〜くチェックしなかったのが悪いのですが・・残念ながら今回の個体は『改造品』です(涙)

ご依頼内容であった「距離環を回すトルクが重い」のもその『改造品』であるが故の結果であり、それを改善した場合「別の瑕疵内容が現れる」結末に至り、まるで当方が改悪にしてしまったような話にしかなりません(涙)

・・こういう不条理が起きるのがリアルな現実です(涙)

今回の個体のオークション内での出現を探ってみると、一番最初に現れたのは昨年の10月22日でした、その時点で掲載写真を見れば手が加えられていたことが明白なのに、その出品ページにはその事実が一切明記されていません(涙)

次に登場したのも昨年の12月8日で、この時の出品ページにも『改造』のコトバは一切表記なく(涙)、おそらく今回のご依頼者様はその事実を知らないままご落札頂いたのだと推測できます。

『改造品』であったにしろ、実際いったいいつのタイミングで「マウント部がポロッと脱落する状況」に至っていたのかは今となっては分かりませんが、残念ながらこの個体のマウント部は「切削で一度切り取られていて固定されていない状態」です(涙)

それをごまかす為に「固着剤」で固めていたものの、それが溶剤を注入したことによって溶けてポロッと脱落したのだと思います。

ハッキリ言って、当方は現ブツを手にして自分の目で視ていても「まさかマウント部が脱落するとは想定していなかった」ワケですが、今となっては「整備したオマエが悪いのだろう?」と言われても反論する余地がありません・・(涙)

・・全てはバラした当方の責任に一瞬で変わってしまいます(涙)

従って当方では特約事項の規定のとおり『改造品は扱いません』と明記していますが、ご依頼者様が『改造品』とご認識頂けていない場合、或いは当方ですら『改造品』と受け取れていないままご依頼を承ってしまった場合は、当然ながら「普通の完全解体工程を進めてしまう」のが道理です(泣)

・・これが大失敗でした!(涙)

そのような経緯だった為「不条理」と言うコトバの表現になり、そういう結末を迎えました
・・申し訳ございません。

↑上の写真が今回扱った個体のマウント部の写真ですが、一度「反射防止黒色塗料」を溶剤で剥がして確認しようと溶剤を注入した途端に「マウント部だけがポロッと脱落した」ワケで、当然ながら当方はそのような想定でなかった為、まるでアニメの目が飛び出るシ~ンの如く驚愕した次第です(驚)

上の写真を説明すると、赤色矢印で指し示している箇所が「基台」ですが、マウント部のネジ山の先を切削して切り落としているのが分かります (上のほうの赤色矢印が指し示している箇所)。実はこの切り落とした断面部分は「エポキシ系瞬間接着剤」のようなモノで接着してあったようなのですが、溶剤で溶けてしまったのか弱くなって脱落したのだと思います(涙)

次ぐにグリーン色の矢印で指し示している箇所は、ご覧のように切削してあるのが明白ですが、これはマウント部の一部分で真鍮材/ブラス材です。

このモデルの「M42マウント規格品」は、このマウント部のネジ山の先が突出しているので、おそらくその部分を切り落としたのだと推測できます。その時の切削痕がご覧のように粗削りで残っています(汗)

・・実際一部は指を切りそうになったくらいに鋭角でした(怖)

↑指を切りそうで怖かったので、当方にて再び研磨して磨き上げた状態を撮影しています。本来当方は『改造品』を扱わない方針なので、このような処置は普通なら行いませんが、そうは言っても指を切りそうなのは変わりないので、ご依頼者様が怪我されるのを知らん顔もできず、仕方なく研磨したところです(涙)

このような作業も気を利かせた自分が悪いのですが、しかし当方はそれを以て「不条理」と受け取ります(涙)

本来このモデルの製品設計では「基台」と「マウント部」はそれぞれ外れて単独のパーツとして存在するのですが・・この個体はくっついていて外れません(汗) 特にマウント部ネジ山の途中に締め付けられている4本のイモネジを外しても、ビクともしません(涙)

今まで扱ってきた個体数13本は、全てこの4本のイモネジを外せばマウント部が取り出せていたので間違いありません。

↑上の写真は過去に扱った別個体の写真から転載しています。このモデルで「M42マウント規格品」だった場合の「基台」は、こんなカタチをしており、黒色メッキ加工が施されているアルミ合金材パーツです (赤色矢印)。パッと見では「基台」が分割するように見えますが、そのようなカタチに削られて製産してあるだけで実際は一体です。

ところが今回の個体は上の写真で示したブルー色ラインで囲った厚み分を切削して切り落としています。その結果、一つのパーツだったハズの「基台」はの締付ネジ穴がある環/リング/輪っかと、の残りの基台部分の2つに分割されてしまいました(涙)

・・これが最悪なのです(涙)

↑「基台」を取り外すとこんなかんじに内部が露わになりますが、黄銅材で造られている「空転ヘリコイド (ブルー色の矢印)」とアルミ合金材削り出しのヘリコイドオス側 (グリーン色の矢印) 、さらに右奥に並べている黄銅材のヘリコイドメス側 (赤色矢印) という3つのパーツに別れます。

このブルー色の矢印で指し示している箇所の「空転ヘリコイド直進キー環」を兼ねており、マウント部に締付ネジにより締め付け固定されることで、距離環を回した時にヘリコイドオス側 (グリーン色の矢印) が回りながら繰り出し/収納動作をする原理です。

逆に言うなら「ブルー色の矢印で指し示している箇所空転ヘリコイドが固定されているから、その先のヘリコイドオス側が丸ごと繰り出し/収納動作できる」道理になるのがご理解頂けるでしょうか???

それを初めのほうのマウント部写真のとおり切削して切り落としてしまった為、この「空転ヘリコイド」を固定できるパーツが居なくなってしまい、ポロッと脱落する仕組みに変わったのが溶剤を注入してしまって判明しました(涙)

確かに当方が溶剤を長入する前の時点はくっついていたので、マウント部が脱落することはありませんでした。

現状、再び「固着剤」で固めましたが固定している箇所が存在しなければ、いつまだ脱落するか分かりません(怖) 仕方ないのでドリル穴開けしてイモネジを「空転ヘリコイド」縁に2箇所締め付け固定して、マウント部を固定して仕上げてあります。

従って現状脱落しなくなってはいますが、今度はご依頼内容の「トルクが重い」を改善することが不可能になるのです(涙)

要は「空転ヘリコイド」をできるだけ隙間なくマウント部とガッチリ固定 (締付ネジで) してしまえば脱落の懸念も低減しますが、今度は「空転ヘリコイド」が挟んでいる「ヘリコイドメス側」が動かなくなります(汗)

それで仕方ないので「極僅かに空転ヘリコイドを浮かせてからマウント部に固定する」と、ようやく距離環を回すトルクが軽く変わりますが、その一方で「浮かした分の隙間が空転ヘリコイドヘリコイドに生じるので、その分のガタつきが起きる」結末に至ります(涙)

何度も言いますが「空転ヘリコイド」は、本来締付ネジで締め付け固定される先が「基台」なのに、それが2分割されてしまった為、固定されなくなっているワケです(泣)

実際計測すると距離環に生じているガタつきは「0.16㎜」なので、たいした厚み/隙間ではありませんが、何にしてもその分の厚みが「基台の切削で消失してしまった部分」としか言いようがありません。

↑上の写真は今回の個体をバラしている途中に撮った写真で、鏡胴「前部」です。このモデルは鏡胴が「前部/後部」の二分割方式の設計です。

するとご覧のように「古い潤滑剤グリース」が塗られているままだったので、おそらく数十年このままだったと推測できます(泣) それが意味するのは「直近のメンテナンス時はマウント部の切削が目的だった」ことになります (何故なら鏡胴前部は一切手を付けていないから絞り羽根も油染みしたまま放置プレイ)(汗)

おそらく絞り羽根に関しては「プレッシングで十字の切込みを入れて折り曲げた三角形の羽根方式のキー代用」と言う設計である事を知って、手を付けるのを止めた整備者だったとしか考えられません。何故なら、前玉側のほうから絞りユニットを覗き込んでチェックすると普通の絞り羽根ではないことが確認できるからです (それで鏡胴前部はそのままにした)。

↑上の写真は取り出した光学系第1群前玉の拡大写真です。コバ端の「反射防止黒色塗料」がやはり執拗に着色されており、2種類の塗料で着色しています。

↑各群も取り出して当方の手による『磨き研磨』を終わらせ並べて撮っています。光学系前群を赤色文字で表記し、後群側をブルー色文字、一方グリーン色の矢印で指し示す方向は、前玉の露出面側方向を意味します。

DOHヘッダー

ここからは完璧なオーバーホール/修理が完了したオールドレンズの写真になります。

↑今一度告知しますが・・・・、

当方は改造品の整備をしません! 改造品は改造した本人以外、何をどのように処置したのか分からないからです。そこには「原理原則」が通用しないからです。そのようなオールドレンズを当方は一切扱いません!

今回のオーバーホールでは、当方の確認ミスによりご依頼を承ってしまったので整備作業しましたが、ハッキリ言ってまるで使い物にならなくしてしまった『改造』であり、どうしてこういうことが平気でできるのかと本当にイヤになります(涙)

↑当方所有のK&F CONCEPT製M42→SONY Eマウントですが、ご覧のように「ピン押し底面 (右)」を取り外して「ピン押し底面が無い状態に変更できる」ようにして所有しています。

従ってこのマウントアダプタは「ピン押し底面の平面側を使う」場合と「ピン押し底面の凹面側を使う場合」プラス「ピン押し底面が無い場合」の3通りで使える大変ありがたいマウントアダプタになっています (グリーン色矢印で指し示している箇所にピン押し底面存在せず)。

↑上の写真も過去扱い品からの転載写真ですが、本来このモテルの「M42マウント規格品」は、上の写真ブルー色ラインで囲ったようにネジ部から先に突出があり、例えば「日本製のRayqual製などのマウントアダプタに最後までネジ込めない」問題が起きるので、それを嫌って今回の個体は切り落としてしまったことが窺えます(涙)

実際計測するとマウント面から計測したときの「ネジ山部分からの突出量は8.4㎜」なのに対し、日本製Rayqual製マウントアダプタのピン押し底面までの「深さは6㎜」なので、凡そ「2.4㎜分ネジ込めない」話にしかなりません(汗)・・それをちゃんと最後までネジ込めるよう改造 (マウント部の切削) したのではないでしょうか???(汗) さらにその切削の際に、何と基台まで一緒に固定したまま切り取ってしまったから、こういう結末に到達します(涙)

自分でバラしてまた組み上げられる技術スキルを持つ整備者なのに、どうして「原理原則」を考えようと努力しないのか、本当にイヤになります(涙) 挙句の果てに使い続ける気持ちが失せてしまったのか、嘘をついてオークション出品するとは本当に腹が煮えくり返ります(怒)

その際ネジ山だけではダメで、基台側まで切削して除去する必要があり基台を二分割してしまったのでしょうが、組み上げていてようやくそれでは個体できないことに気づいたのだと思います。

何とかエポキシ系瞬間接着剤で接着してそれらしく組み上げオークションで処分したと言う経緯が浮かび上がりますが、よくもそういうことを平気でできると思います。

今回のご依頼者様もその被害者の一人であり、とんでもない高額な勉強代になってしまったとご心痛お察し致します(涙)

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。

↑光学系後群側もキレイになり極薄いクモリすら皆無です。後玉の露出面側に僅かなカビ除去痕が複数残っていますが、写真には影響ないレベルです。

マウント部と空転ヘリコイドを (本来締め付け固定する役目だった) 部分は再着色していますが、そもそも切削痕がキレイにならないままですし、着色も下手クソなのでご覧のとおり汚い仕上がりです・・申し訳ございません。

一応応急処置でマウント部と空転ヘリコイドを締付ネジで締め付け固定してありますが、冒頭解説のとおり距離環を回すトルクを軽く調整する為に、僅かに浮かせてある為、その分がガタつきとして残っています・・申し訳ございません。

↑12枚の絞り羽根もキレイになり、絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に円形絞りを維持」しながら閉じていきます (途中カタチが変わります)。油染みもキレイに清掃済みなので絞り羽根の耐性もきにしないで済むと思います。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑塗布したヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」を塗り、当方独自のヌメヌメッとしたシットリ感漂う軽めのトルク感で、掴んでいる指の腹に極僅かにチカラを伝えるだけでピント面の前後微動が適うトルクに仕上げられており、抜群の操作性を実現しています(笑)

但し、当方が狙うトルク感からすると「少々軽すぎ」の印象ですが、これは前述したように「空転ヘリコイドを僅かに浮かせて固定したから」であり、浮きを解消させると距離環が回らなくなります。

またさらに前後方向でのガタつきまで現れているので、全く以て基台を切削してしまったせいで大変な目に遭っています(涙)

↑せっかくの大変希少な『初期型』です。それは冒頭解説のとおり「位置決め環の位置決めキーが刺さる穴の状況から判定を下せる」としています。従って今回のオーバーホール工程では、その絞り羽根の組み込みだけに丸っと1時間を要したくらいです(笑)

残ってしまった瑕疵内容は以下のとおりです。

距離環に前後方向でのガタつきが残っている。
その結果、ピント合わせ時にコツが必要になっている。
距離環を回すトルクが軽めの印象。
マウント部を何とか固定したが確実には至っていない。
マウント部の切削痕をキレイに再着色できていない (汚いまま)。

ピント合わせの際は、次のように操作して下さいませ・・申し訳ございません。

距離環を保持したままカメラ側方向に押し付けながらピント合わせする場合
無限遠位置は∞刻印位置でピタリで合唱するように仕上がっています (当初バラす前の状態に一致)。

距離環を保持したまま前玉側方向に押し出しながらピント合わせする場合
無限遠合焦位置は、距離指標値の8m辺り (凡そ2目盛り分手前位置) のオーバーインフ状態です。

これはまるで鏡筒が一番下がった時に無限遠合焦する道理からは正反対に考えられますが、実はこのモデルのネジ山は逆転方向なので条ネジの繰り出し時に鏡筒が格納され、反対の収納時に鏡筒が繰り出す原理だからです。

別に距離が関係ない (無限遠での撮影ではない) 場合などは、いずれの状態で距離環操作しても構いません。距離環に生じてしまった「隙間0.16㎜」分の影響が現れおり、このような瑕疵が残ります。

またマウント部の切削は再度磨きをかけましたが、切削痕を消すことはできていません・・申し訳ございません。

オーバーホール/修理ご依頼者様皆様に告知しているとおり、もしもお届けしたオールドレンズの仕上がり状況にご満足頂けない場合は、そのご納得頂けない要素に対して「ご納得頂ける分の金額をご請求金額より減額」下さいませ。
減額頂ける最大値/MAX額は「ご請求金額まで (つまり無償扱い)」とし、大変申し訳御座いませんが当方による弁償などは対応できません・・申し訳御座いません。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致、或いは僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

被写界深度から捉えた時のこのモデルの無限遠位置を計算すると「焦点距離35㎜開放F値f2.5被写体までの距離19m許容錯乱円径0.026㎜」とした時、その計算結果は「前方被写界深度10m後方被写界深度∞m被写界深度∞m」の為、10m辺りのピント面を確認しつつ、以降後方の∞の状況 (特に計算値想定被写体の20m付近) をチェックしながら微調整し仕上げています。

・・一言に無限遠位置と述べてもいったいどの距離で検査したのかが不明瞭ですね(笑)

↑当レンズによる最短撮影距離50cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2.8」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f4」で撮りました。

↑f値は「f5.6」に上がっています。

↑f値「f8」での撮影です。

↑f値「11」です。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。もう絞り羽根がほとんど閉じきっている状態なので「回折現象」の影響が現れ始めています。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。

↑最小絞り値「f22」での撮影です。今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。明日2本共に完全梱包の上、クロネコヤマト宅急便にて発送申し上げます。どうぞよろしくお願い申し上げます。