◎ Asahi – Kogaku (旭光学工業) Takumar 58mm/f2.4(M37→M42)

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※解説とオーバーホール工程で使っている写真は現在ヤフオク! 出品中商品の写真ではありません

今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、Asahi-Kogaku製
標準レンズ・・・・、
 『Takumar 58mm/f2.4 (M37→M42)』です。


当方での累計扱い本数は今回が11本目にあたりますが、前回オーバーホール済でヤフオク!
出品してから3年が経過してしまいました。内部構造として特にヘリコイド (オスメス) の機構部が神経質な設計なので、既に経年劣化が進行していた場合なかなか軽いトルク感で仕上げられずに多少敬遠気味のモデルだったりします(笑)

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旭光学工業の創立は相当古く、1919年東京大塚で掛眼鏡や双眼鏡製造を行う旭光学工業合資会社としてスタートします。戦後すぐの1946年から操業を再開し双眼鏡用レンズやフィルム カメラ用レンズの加工/研磨を始めています。

1952年に日本初の135ミリフィルムを使用する一眼レフ (フィルム)
カメラ「Asahiflex I型」を発売し、セットレンズとして標準レンズ「Takumar 50mm/f3.5」を用意しましたが、当初のマウント規格は「M37マウント」(内径⌀37mm x ピッチ:1ミリ) でした。
フランジバックが45.46mmにもかかわらず、どう言うワケか戦前の
ドイツで開発されたネジ込み式のPRAKTICAスクリューマウント「M42」を採用していません (内径⌀42mm x ピッチ:1ミリ)。

さらに後の1954年にようやくクィックリターンミラーを装備した「Asahiflex IIB」を発売して、その時同時に用意された標準レンズが今回扱うモデルTakumar 58mm/f2.4 (M37)』になります。

ウェストレベルファインダーによる使い易い設計を採っています。

今回扱うモデルTakumar 58mm/f2.4 (M37→M42)』の光学系は、3群5枚という特異な設計で、3群3枚のトリプレット型構成から第1群 に色消し効果を与え、且つ歪み率改善を図ってきた発展系と言えます。

この光学系はVOIGTLÄNDER社の設計技師Hans Harting (ハンス・ハーティング) が特許出願した、いわゆるヘリアー型構成に於ける特に歪曲の改善を狙った光学設計だったようです。従って第3群の凹凸を反転させた光学設計「Oxyn (オクシン) 」構成とも受け取られ、アメリカにて1954年に特許承諾しています (右図は一般的なヘリアー型構成図)。

今回のオーバーホールでバラした際に光学系の清掃時にデジタルノギスを使って当方が逐一計測した構成図が右図になります。

するとビミョ〜に各群の曲率や厚みが異なっており、特に第1群はカタチ自体が違います。このように指摘するとまたウソを掲載しているとSNSで批判の嵐になる為、仕方なく証拠写真を撮影しておきました。

左写真は第1群を真横から撮影していますが、カタチが僅かに異なっているのがご確認頂けると思います (つまりウソではありません)(笑)

ちなみにこの当時の旧東西ドイツでは光学硝子材に「気泡」が残っていたりしますが、このモデルも光学硝子材に「微細な気泡」が数点 残っています。

気泡
光学硝子材精製時に適正な高温度帯に一定時間維持し続けたことを示す「」と捉えていたので、当時光学メーカーは正常品として出荷していました。


上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。

一段目
左端2枚はシャボン玉ボケが破綻して滲んでいくとどうなるかピックアップしてみました。光学系の基本成分が3枚玉トリプレットの要素を強く持つのでとても美しい真円のシャボン玉ボケ表出ができます。しかし滲んで溶け行く時に収差の影響を受けて乱れた、どちらかと言うと汚い印象の滲み方をするようにも見えます。右側2枚の写真はそれをピックアップしてみました。エッジが相応に残ってしまうのでシャボン玉ボケが破綻した後に気無く溶けていく場合があります。

二段目
開放時のピント面は基本的にエッジが繊細で細目ですが、独特な「ソフトな印象/柔らかい印象」に画がまとまるという特異なピント面を構成します。そこから絞っていくと逆にコントラストが高く変化してきてカリカリになってきますから、一粒で二度美味しいような描写性を示します。また人物表現も標準レンズにしてはシッカリしており肌の表現性が素直な印象です。明暗部のバランスが良くてダイナミックレンジが広いのでインパクトのある写真を残せます。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。内部構造はそれ程複雑ではなく簡素なので、初心者でも容易にバラせると思いますが、問題なのは組み立ての ほうであり、特に「各構成パーツの経年劣化」をどのように相殺させていくかがポイントに なるので、組み上げが終わった仕上がり状態の操作性を決める要素は、これらパーツ一つ一つの仕上げ方になります。

↑まずは絞りユニットですが、特異なカタチと設計概念で作られている絞り羽根を格納しています。通常絞り羽根の「位置決めキー」側は位置が変化しない設計が多いですが、このモデルは「開閉キー/位置決めキー」共に稼動部という設計概念です。

開閉キー/位置決めキー」共に基本的に「折り曲げただけの羽根状」を用意してキーの代用とさせる概念です。従って清掃時にこれら折り曲げた羽根の一つでも掛けたらアウトで、その絞り羽根は格納されずに飛び出てくるようになってしまいますから相当な恐怖感が憑き纏います!(怖)

原理原則」を理解していないのなら基本的に上の写真のように絞り羽根を1枚ずつにバラさないほうが無難でしょう(笑) ところが過去の経年劣化状況によっては「酷い油染みが発生していた」場合など、各絞り羽根の癒着が発生してしまい絞り羽根の開閉時に膨張したりします。その結果、折り曲げているだけの羽根部分に「変形」が起きてしまい、正しい角度で開閉しない絞り羽根が数枚現れます。従ってその場合は上の写真のようにバラして1枚ずつ取り出し、且つ折り曲げている羽根自体の変形を正し再セットする必要があります (そうしないと絞り羽根の開閉が正しくならないから)(泣)

その意味でこのモデルでの「絞り羽根の油染み」は脅威になり、放置プレイし続けると絞り羽根が閉じる際に膨れあがり「折り曲げた羽根部分で破断する」因果関係を作り「製品寿命」に至ります(涙)

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

↑特に「開閉キー」側は、ご覧のように「開閉環」に用意されている「単なる穴」に刺さった後、さらに折り曲げられて外れないようにセットする必要があるので、最初に折れるとするとこの「開閉キー側の羽根 (4枚のうちの1枚〜数枚)」だったりします(怖)

↑こちらは絞りユニットが組み込まれる「位置決め環」が最深部に備わる鏡筒です。「位置決めキーの羽根」が刺さる箇所には「穴ではなくスリット/欠け」が用意されていて、そこに刺さっている「位置決めキーがスライドする」仕組みである事が分かります。

従って刺さる「位置決めキーの羽根」が直角を維持せずに斜め状に曲がっていたりすると「絞り羽根の開閉角度が変わってしまう」ので正す必要があるワケです。ではどうして垂直を維持していないのかと言えば「過去に油染みが進行して粘性を持っていた時期があるから」と言えます。前述のとおり粘性を帯びた油染みを放置すると閉じる際に「癒着」が発生して膨れあがるので「直角を維持できなくなるから斜めに曲がってしまう」ワケです。

ちゃんと物事には因果関係が必ずあるので「観察と考察」で知見を広めしっかりと原理を掴んでおく必要がありますね(笑) 単純に「油染みは経年の揮発油成分」とだけ簡単に認識していると、結局何も対処できないまま組み上げるしかありません(笑) そこがバラして単純に組み戻すだけの整備で終わるのか「操作性を改善させた仕上がりに至る」のかの分かれ目とも言えます

↑このような感じで12枚の絞り羽根は正しく「開閉キー側」で組み付けられているのが絞り羽根の開閉角度をキッチリ仕上げるコツとも言えます。

↑12枚の絞り羽根の「開閉キー/位置決めキー」それぞれを正しい角度で組み込んだので、ご覧のように「真円の円形絞りで閉じていく」ワケですが、それが当たり前なのだと言われればまさしく当たり前の話であり、特に珍しいことでもありません(笑) その為に12枚の絞り羽根の用意されている「折り曲げた羽根」を逐一チェックして正した次第です。

↑完成した鏡筒を立てて撮影していますが、このモデルはこの鏡筒が真鍮 (黄銅) 材です (ズッシリと重みを感じる)。

↑やはり同様に真鍮 (黄銅) 材の「プリセット絞り環」を組み込みます。

↑この「プリセット絞り環」には各絞り値で「」が空いているので、そこにカチカチとハマる鋼球ボールが3個存在し、それぞれに鋼の板バネが用意されています (赤色矢印)。

↑さらに今度はアルミ合金材の「絞り環」を組み込んだところです。このモデルは鏡胴が「前部/後部」と二分割式なので鏡胴「前部」はこれで完成し残すは光学系前後群の組み込みだけになります。

↑従ってここからは鏡胴「後部」の工程へと移ります。やはり真鍮 (黄銅) 材のマウント部ですが指標値も兼ねています。

↑アルミ合金材のヘリコイド (メス側) を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

このモデルはヘリコイド (オスメス) の駆動方式が普通一般的なオールドレンズとは真逆なので「ヘリコイドメス側が繰り出されると無限遠位置」であり、逆に「収納していくと最短撮影距離位置までヘリコイドオス側が繰り出される」要は「ヘリコイドオスメスのネジ切りが逆方向」の設計を採っています。

これは鏡筒の繰り出し量が多いにもかかわらず筐体を可能な限りコンパクトに造りたかったから「逆方向のネジ切り」にしたワケで、それは当時装着先だった「Asahiflex I型IIA型」とのバランスに於いてそのような意図があったのではないかと推測しています。

↑真鍮 (黄銅) 材のヘリコイド (オス側) をやはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジショ ニングでネジ込みます。このモデルは全部で11箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

ここまでで既に気が付いていないとダメですが(笑)、ヘリコイド (オスメス) はマウント部が 真鍮 (黄銅) 材であり、アルミ合金材のヘリコイド (メス側) を間に挟んで再び真鍮 (黄銅) 材のヘリコイド (オス側) がサンドイッチ状に使われている点です。これがヘリコイド駆動時トルクを決めるポイントの一つになりますね(笑)

さらにトルク感を決定づける最大の要素が左写真です。棒状のカタチをした「直進キー」と言うパーツで、真鍮 (黄銅) 材のヘリコイド
(オス側) 両サイドに1本ずつ刺さって鏡筒の繰り出し/収納を実現させています。

つまり前出の真鍮 (黄銅) 材のヘリコイド (オス側) の底面に「」が
2箇所空いており、そこにこの「直進キー」がグサッと刺さるので、
結果的に距離環を回すとヘリコイド (オス側) が繰り出されたり/収納したりする、要は鏡筒の繰り出し/収納という原理です。

↑既に仕上がっている状態のマウント部を撮影していますが解説の為に写真を持ってきました。ご覧のように両サイドに「直進キー」が刺さっているのが分かります。

直進キー
距離環を回す「回転するチカラ」を鏡筒が前後動する「直進するチカラ」に変換する役目

従って、真鍮 (黄銅) 材のヘリコイド (オス側) 底面にある「 (2箇所)」を棒状部分がスライドして行く時の「抵抗/負荷/摩擦」こそが、実は距離環を回す時のトルク感に大きく影響する話をしています。この「直進キー」の経年劣化状況をどれだけ排除できたのかが、最終的に仕上がりの操作性の良さに繋がる点を解説しています。

逆に言うと、このような「円形の穴と円柱の棒状パーツのスライド方式」だけでヘリコイドの動きを実現させてしまった当時の日本製レンズの工業技術にただただ脱帽と言うしかないと考えています(笑)

ワザワザ円形にせずに例えば板状にしてしまいスリットを隙間にしたら、まだ抵抗/負荷/摩擦も少ないように考えられますが、一番抵抗/負荷/摩擦に弱い (発生し易い) 円形状に設計してきたところが当時の日本製レンズの凄い部分だと当方は受け取っています (要はコンパクトに造りたかったから円形に設計した)。

このような工業技術の最たる部分の違いが、当時の旧東西ドイツ製オールドレンズの設計とは大きくかけ離れていたワケで、既にその時点で日本製レンズの仕上がりの良さは決まったようなモノですから(笑)、旧東西ドイツの光学メーカーがどう改善を目指そうとも敵う相手ではなかったと考えています。

たかが内部の構成パーツの一つですが、このように紐解いて考えていくと当時の日本製レンズの工業技術力、ひいては技術立国ニッポンの素晴らしさを身を以て体験できるのではないかと思いますね(笑)

昨今某国が「世界の工場」を標榜して久しいですが、その中にあってコロナ禍も影響し「再び国内回帰」へと技術立国ニッポンを今一度見直す機会が巡ってきているように考えますが、とても良い事だと思います。既に某国の人件費も高止まりが続き、さして国内での生産と引けを取らない状況下に於いて、人件費だけにこだわらず技術の見直しも兼ねて「再び更なる高みへと技術を更新させる」試みが、必ずや良い結果として近い将来に現れると確信しています! まさにその意味で今後のニッポンの50年先、100年先を見越して是非とも官民挙げて臨んで頂きたいと切に思う次第です。

そしてその一翼を担うのが安い人件費たる「当方のような定年組」がまだまだ現役でバリバリと働きたいと、或いは海外からの労働者によって某国の人件費とたいして変わらない中で国内回帰した工業製産が実現できているのではないでしょうか。

まだまだ頑張りますョ・・!(笑)

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑3年ぶりに扱いましたが完璧なオーバーホールが終わりました。光学系の状態はスカッとクリアですし、距離環を回すトルク感は「軽め」に仕上がり、ピント合わせもとても楽にこなせます。特にこのモデルはピントの山が掴み辛いので (ピークが一瞬でしかも分かりにくい) 余計に軽い操作性がありがたく感じられるハズです。

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。「気泡」が数点残っていますがパッと見で「微細な塵/埃」にしか見えないので気が付かないかも知れません。

気泡
光学硝子材精製時に適正な高温度帯に一定時間維持し続けたことを示す「」と捉えていたので、当時光学メーカーは正常品として出荷していました。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

↑光学系後群側も貼り合わせレンズですがとんでもなくクリアでもちろんLED光照射で極薄いクモリは皆無なままです。

なお「M37M42変換リング」(赤色矢印) を既にネジ込み済ですがキッチリ締め込んでいるのでそう簡単には外れません。一応カニ目溝付なのでカニ目レンチがあれば外せます。また今ドキの3Dプリンターによる樹脂製ではなく「ちゃんとした金属製」ですが、ネジ切りが雑なのでマウントアダプタなどへのネジ込み時はご留意下さいませ (いきなり強めに回してネジ込まないで下さい)。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:11点、目立つ点キズ:7点
後群内:16点、目立つ点キズ:10点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(極微細で薄い4ミリ長が2本あります)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・光学系内は透明度が非常に高いレベルです。
(LED光照射でも極薄いクモリすら皆無です)
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑12枚の絞り羽根はカーボン仕上げなので (この当時のオールドレンズはたいていの場合でカーボン仕上げ) 既に経年劣化からだいぶ汚く見えますが絞り羽根の開閉には影響しません (基本的に当方は絞り羽根の擦れ痕などは重要視していません)。限りなく真円に近い「完璧な円形絞りを維持」したまま閉じていきます。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。もちろんクロームメッキ部分も「光沢研磨」を施したので当時のような大変艶めかしい光彩を放っています。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人により「軽め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。
距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。

↑完璧なオーバーホールが終わっています。特に距離環を回すトルク感は「軽め」に仕上がったのがこのモデルのピント合わせのし辛さからも本当に有難く感じるハズです(笑)

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑よく「プリセット絞り環/絞り環」の区別を間違えて認識している人が居ますが(笑)、正しくは上の解説になります。「プリセット絞り環」で予め設定絞り値をカチカチとクリック感を伴いつつ設定すると、開放「f2.4設定プリセット絞り値」との間でシームレスに無段階式 (実絞り) が実現します。その時、ブルーの矢印①方向が「絞り羽根を設定絞り値まで閉じる操作」であり、逆にブルーの矢印②方向が「絞り羽根を完全開放まで開く操作」です。

なので、事前に「プリセット絞り値」を設定してしまえば、撮影時 (要はシャッターボタン押し下げ前) に都度絞り環の刻印絞り値をいちいちチェックせずともブルーの矢印①方向に操作すれば設定絞り値まで絞り羽根が閉じるので簡単な話です。撮影のタイミングに集中できるワケです (それぞれ回しきってしまって良いから)。

↑ハクバ製ですがマルチコーティングのフィルターを新規に購入して附属品にしました。

↑当レンズによる最短撮影距離60cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありません。またフード未装着なので多少フレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2.8」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f4」で撮りました。

↑f値は「f5.6」に上がっています。

↑f値「f8」になりました。

↑f値「f11」です。

↑f値「f16」です。もうほとんど絞り羽根が閉じきっているのですがコントラスト低下も解像度低下も起きていません。さすがのポテンシャルです!

↑最小絞り値「f22」での撮影です。極僅かに「回折現象」が表れ始めていますがちょっと分かりませんね(笑)

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。