〓 Carl Zeiss Jena (カールツァイス・イエナ) Biotar 5.8cm/f2 T (black)《前期型−III》(M42)
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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。
今回完璧なオーバーホール/修理が終わりご案内するモデルは、旧東ドイツは
Carl Zeiss Jena製標準レンズ・・・・、
『Biotar 5.8cm/f2 T (black)《前期型−III》(M42)』です。
ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ! Слава Україні! Героям слава!
上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。
Slava Ukrainieie! Geroyam Slava!
当時の「Biotarシリーズ全体」の括りでカウントすると85本目の扱いですが、その中で標準レンズ域「58㎜/f2」だけで括ると77本目にあたり、中望遠レンズ域は6本のまま、さらにスクエアフォーマットのRoBoT用標準レンズのほうでは2本のままという状況です。
そして標準レンズ域のモデルバリエーションの中を手繰っていくと、初期型は8本のままですが今回扱う前期型が22本目にあたり、その一方で中期型は46本のまま、後期型も1本のままという内訳です。
特にノンコーティングと言う環境から初期型は光学系が良い状態を維持していることが多く、一方で中期型〜後期型も戦後暫く経ってからの製産品であることからまだ良い状態を期待できる中、実は今回扱う「前期型−I 〜 前期型−III」だけが戦後すぐの製産品であり、蒸着コーティング層「zeissのT (モノコーティング)」の走り初めだった観点から、そろそろ限界値を迎えているように近年特に感じているところです(涙)
その意味で「Biotar 58mm/f2シリーズ」の中で唯一の「真円な円形絞り (虹彩絞り)」を有するこの「前期型−I 〜 前期型−III」を狙い撃ちしようと考えた時、その際「光学系のリスク」を覚悟する前提が必ずあります(泣)
・・ハッキリ言ってクモリの少ない個体を探すのは至難の業です(泣)
ではその「光学系内に生じているクモリ」とは、その正体はいったい何なのでしょうか???
逆に言うなら、非常に多くの皆さんが (当方宛オーバーホール/修理ご依頼頂く方々も含め)、
清掃すれば多くは除去できてスカッとクリアに戻るとの「絶大なる期待感」に胸膨らみますが、リアルな現実は「50 vs 50」であり、凡そ半数が完全除去できないまま残ります(涙)
皆さんが「クモリを生じる原因のほうばかりに目を向けたがる」からイケナイのです(泣)
一歩下がり「その光学系内のクモリはいったい何処に生じるのか???」と先ずは考えてみるのがヨロシイです(汗)
多くの人達が「光学硝子レンズの表層面にクモリを生ずる」と言いますが・・違います(笑) 先ず以て戦前のノンコーティング時代のオールドレンズでない限り、光学硝子レンズの表層面にダイレクトに生ずるクモリはありません。
その多くは「蒸着コーティング層の表層面に帯びてしまうのがクモリ」なのが道理です。するとその蒸着コーティング層とは何かと言えば「資料として使う鉱物を真空引き蒸着させたモノ
:蒸着膜」と説明でき、それは光学設計上で必要とされる入射光制御の概念の中、光学硝子レンズの片面で反射されて失われていく入射光の「4%」を (片面につき4%なので両面で8%消失していく)、可能な限り低減させて透過率を向上させる目的で被せられている「鉱物による蒸着膜」です。
ここがポイントで「資料が鉱物である以上、経年劣化進行に伴い酸化/腐食/錆びが進む」ことを皆さんは認識しようとしません(汗) 蒸着膜の中には表層面側に「保護膜」の役目で被せられている蒸着膜もあるのだと考えますが (その成分や配合をまだ掴めていません)、その保護層が破壊された時「蒸着膜にクラックが入る」結果、そこから酸化/腐食/錆びが始まりますし、一部には空気中を好きなだけ浮遊し続けているカビ胞子が根を下ろし始めて、水分を糧にして繁殖を始めます(怖)
カビ菌糸は対する壁/障害にぶつかるまで自在に先端を伸ばしていきますが、一旦障壁に当たるとそこまでの空間で他の菌糸が伝わって繁殖の「巣作り」がスタートします(怖)・・やがてその中心部分「芯」から放射状に新たな菌糸を伸ばして占領域を拡大していきます(泣)
・・領土は自分達で奪うものと、いまだに考えるまるで今ドキのロシア軍です!(嫌)
この時、カビの繁殖は横方向のみならず、下層域にまで胞子が根を伸ばし始めるのでタチが悪いのです(涙) 蒸着コーティング層のクラックから次第に下層域の光学硝子材へと侵攻を進め、やがて光学硝子材に到達します(怖)
以下の説明は文部科学省が示す「カビ対策マニュアル基礎編」の一部抜粋です・・・・、
カビが資料に与える影響
カビは、表1で述べたように衣食住や工業製品のほとんどを栄養源として分解・劣化させる。さらに、カビは天然有機物や人工有機物のみならず無機物や鉱物までも栄養源としており、博物館・図書館等の資料などは格好の栄養源(炭素源、窒素源)として物理的、化学的に分解(破壊)される。特に、木質系、天然繊維系、皮革系および膠等は経年劣化(物理的劣化・化学的劣化)した場合には、資料素材が本来持っていた僅かの抗菌性物質(テルペノイド、リグニン、フラボノイド、芳香族化合物、精油成分、抗菌性色素等)が分解あるいは蒸散して減少しているため、細菌やカビによる微生物劣化を容易に受ける。さらに、カビ類は有機性染料(植物由来、動物由来)を含む全ての天然有機物を分解する酵素群を有しており、酵素分解により資化し、カビの細胞増殖の原料として利用する。したがって、カビ被害は不可逆的(一方通行)な生物反応で、決して元に戻らない劣化であることに改めて注意する必要がある。
・・とあります。以前「カビの説明」に際し、光学硝子材の成分/配合の相違でカビの繁殖がどのように変化するのかを研究した論文から、要約して引用説明したところ「有機と無機の違いすら分かっていない」と某有名処のコメント欄で徹底的に誹謗中傷されました(涙) しかし上の一文からも明白で、工業製品も含め無機物や鉱物さえも栄養源にできると述べています(怖) 例えばステンレスがカビの繁殖に強いとしながらも、専門研究者の論文を読むと必ずしもそのように認めていません(汗) また当方が光学硝子レンズや金属材に着色する「反射防止黒色塗料」を敵視する中で、その塗料の成分についてもまるで上の一文で説明がなされています(汗)
これ以上は頭が悪い当方には理解できませんが(汗)、少なくとも光学硝子材に侵食したカビ菌糸は、そもそも光学硝子材の「クラック/裂け目」内で菌糸を伸ばし始めることをそれら論文で確認しており、光学硝子材と言えどもカビに対する耐性が必ずしも100%ではないことが窺えます(怖)
しかし問題なのはそれ以前に「蒸着コーティング層の存在」であり、鉱物由来の蒸着膜である以上、経年劣化進行に伴う酸化/腐食/錆びの脅威からは逃げられないと考えています(涙)
さらにその酸化/腐食/錆びの中で一部には前述の「クラック/裂け目」を繁殖条件の一つとしてカビ菌の胞子が留まり、そこに蓄えられる水分を糧として繁殖を始めると言うプロセスが間違いなく存在するのが問題なのだと述べています。
詰まるところ蒸着コーティング層の「保護膜」に「クラック/裂け目」が入らなければ、特段大きな問題へと発展しないと推定できますが、拭きキズや常に空気に晒され続けている環境下を考えれば、それは経年と共に脅かされるのが道理です(涙)
従って蒸着コーティング層を保護する為に何をすれば良いのか、どう対策を執れば良いのかを考えたほうがリスクを低減できる方向性に向くのではないかと考えます(汗)
カビ菌の胞子がどんな隙間さえも通過することを考えれば、完全密封しない限り意味がなく (電子防湿庫さえ意味がないことを理解するべき)、もっと言えば「好乾性」のカビ菌の存在も脅威となれば「蒸着コーティング層へのクラック/裂け目を防ぐ」手段が効果的ではないかと考えています(汗)
・・それはフィルターの装着です(笑)
拭きキズですら蒸着コーティング層のクラック/裂け目原因に十分なり得るので、保護する目的で装着するフィルターの活用は十分考えられます。よく巷では「プロの写真家はフィルターをつけない」と語られますが、それはフィルターの光学硝子性能が、そもそも装着先のオールドレンズの光学設計にどのように影響を及ぼすのかに着目している話であり (要は描写性が変化してしまうから)、それを嫌ってのことと考えられます。
その反面、蒸着コーティング層の劣化を促す要因とその脅威に常にさらされることまで勘案するなら、頻繁にオールドレンズそのモノを入れ替えるから気にしないと言う考え方も確かにあります・・が然し『絶滅危惧種』たるオールドレンズの立場から捉える時、はたしてどうなのでしょうか???(涙)
そもそもその撮影時に使っているオールドレンズの「光学系各群の格納状況 (つまり光路長の担保)」すら検証しない中、前述の話にこだわり抜いても本末転倒のような気がします(笑)
そこまでちゃんとシッカリ考えるなら、決してフィルター装着はムダにならないと思うのです。そして次に必要なのは「反射防止黒色塗料」の適切な塗布です。前述文部省の一文のとおり「染料系塗料 (速乾性も含む)」に対するカビ菌繁殖の脅威すら、リアルな現実に「白カビ」として、まるで日常の如くオールドレンズを完全解体していくと目の当たりにしています(涙)
しかしそれら「反射防止黒色塗料」の状況は、一般的には個人レベルで対処できません(泣) 光学設計面から捉えた「光路長担保」以前に、その対策はオールドレンズの整備実施に頼る以外存在しないのがリアルな現実です(涙)
・・今回の個体も、まさにクモリの原因は反射防止黒色塗料のインク成分だった(涙)
ワケで、本当にバラす個体バラす個体どれも「反射防止黒色塗料」のせいで光路長は逸脱しまくり、下手すれば今回の個体のように激烈にクモリを生じさせる因果に至るのが、本当に作業していてイヤになってきます(涙)
何故なら、決して工業製品たるオールドレンズそのモノの劣化だからではないからです!(怒) 確かに金属材を使っている以上、経年劣化進行に伴う酸化/腐食/錆びは否めません。光学硝子レンズも前述してきたとおり、その蒸着コーティング層の酸化/腐食/錆びは逃れられません。しかしそれにも増して「過去メンテナンス時の整備者の所為に拠って製品寿命が短命化していく流れ」なのが、本当に心苦しいのを通り越して「ひたすらに自分自身の無力を知るだけの結末しか迎えない」と、最近ようやく気づきました(涙)
どんなにこのブログで「白色系グリース」を敵視して貶そうとも、相変わらずプロのカメラ店様や修理専門会社様で整備されているオールドレンズ達は「平気で白色系グリースが使われ続けている」ワケで、いったいこのブログに何の意味がありますか???(笑)
星の数ほど存在するオールドレンズの個体数の中で、当方が手にできる個体数はせいぜい残り数百本です(涙)・・いったいそのリアルな現実に何の意味、意義があるのでしょうか???
・・皆さんはそう思いませんか???
しかも一部の心無い人達によって罵られ、貶され、人格攻撃までされて、タダでさえ小心者なのに心傷つきながら続けるのに、やはり自信がなくなってきています(涙)
何だかとってもネガティブな話になってしまいましたが、実のところ元旦の朝はそんなことを考えていた次第で、どんだけ昨年一年間に受けた誹謗中傷が堪えてしまったのか、今さらながら自覚したところです(涙)
そもそもさんざんパワハラやイジメの中を潜り抜けてきた社会人生活からやっとのことで抜け出せたのに、再びその記憶の延長線に入って増長させているワケで、今でも夢の中でパワハラを受け、イジメを受け、朝目が覚めると「夢だったのか」とようやく気づく有様で、そんな生活に全く以て意義がありません!!!
それ故、今年1年を再考の年に据えて、今一度考えたいと思っているところです(涙)
世の中、いつの時代も異質なモノ、周囲と協調できない、迎合しようとしない人間は、ただただ排除されていくだけです。SNSが当たり前になり、余計にそれに同調して誹謗中傷する人達/勢力が増えているように見えてなりません(怖)
↑完全解体した時の内部構成パーツ全景写真です。オーバーホール工程やこのモデルの当時の背景など詳しい解説は『Biotar 5.8cm/f2 T (black)《前期型−III》(M42)』のページをご参照下さいませ。
歴代の「Biotar 58mm/f2シリーズ」の中にあって、戦前に登場していた「初期型」でさえ「8枚の歪曲絞り羽根」或いは戦後に登場した「中期型〜後期型」も10枚まで減じられていく運命を辿りますが「唯一の17枚絞り羽根による真円の円形絞り」たる「前期型−I 〜 前期型−III」の中で、今回扱った個体は「1952年製産の斜め指標値ラインを備える前期型−IIIのプラックバージョン」であり、ハッキリ言って大変珍しいです!(驚)
指標値環の各絞り値目安のラインが四角いタイプは時々市場に現れますが、今回の個体の「斜め指標値ライン」のタイプは滅多に現れません(汗)
いわゆる後の時代に登場する「黒色鏡胴」の話では一切ない「正真正銘のブラックバージョンの鏡胴メッキ加工」を意味し、この当時 (戦後すぐ) に真鍮材/ブラス材によるクロームメッキ加工から黒色鏡胴に移行することを考えたのではない「まるで色違いの登場」だったことが窺える証拠みたいなモデルバリエーションです!(驚)
当然ながら製産時期的にみても真鍮材/ブラス材からアルミ合金材削り出しへと大きく金属材を変更してきたタイミングにあたりますが、その際に鏡胴の2色展開を見据えていたことを明示させる素晴らしいタイプです(涙)
・・正直、当方は前期型ではブラックバージョンが好きだったりします (希少だし)(笑)
そもそも後にも先にもビオターで黒色鏡胴の標準レンズ域モデルは、唯一の存在でもありますし、後の時代に消滅していく運命だったとなれば、なおさらです!(涙)
その意味でブラックバージョンは「まるで当時のドイツ的の配色」と受け取れるので大好きなのです(笑)
↑上の写真は当初バラし始めている最中に撮った写真です。相変わらず「白色系グリース」を塗っており (赤色矢印)、酷い話ですが「古い黄褐色系グリース (グリーン色の矢印) の上から塗り足している」始末です(汗)
巷の整備会社では今も昔もこのような所為を指して「グリースの補充」と呼ぶらしいです(汗)
・・はたしていったいどうして成分も配合も添加物も全く別モノの「黄褐色系グリース」と「白色系グリース」をこのように混ぜて使うことに抵抗感を一切感じないのか「???」を通り越して人格を疑います(怒)
コトバではそのように良く言いますが、実のところリアルな現実はまるで上の写真のとおり「古い黄褐色系グリースがネジ山終端域に追いやられてしまう」のが歴然で、それはグリースの成分/配合/添加物の相違からしてあまりにも明白な事実であり、まるで必然の結末です!
・・いったいどうしてこういう所為ができるのか???(怒)
もっと言うなら「いったいどうして古い黄褐色系グリースはグレー色に変質していないのか」説明しろ・・と、もう何度も何度もこのブログで整備者に対して問い正していますが、未だに誰ひとりメールしてきません(笑)
・・自分達で処置しているなら、その根拠をちゃんと説明したらどうなんだ???
巷では革新的なシリコーングリースのことを全く知らない無知と、どこぞで批判されているようですが・・まるで反対です(笑) 知っているからこそこのように述べまくっているワケで、いったいどうしてまだ「白色系グリース (シリコーングリース) が存在しなかった時代に製品設計されたオールドレンズに使う根拠があるのか???」と問うているワケで「黄褐色系グリースを使わない理由を述べよ!」と言っているのです。
これらの話は逐一、以前金属加工会社の社長さんを取材した時にお聞きしたとても貴重なお話や説明から述べているワケで、根拠が存在し得ないから問い正しているのです。
↑さらに取り出した光学系第2群の2枚貼り合わせレンズをヒックリ返して撮影しています。このような「反射防止黒色塗料」の執拗な着色が、はたしていったいどのような整備の裏付けになるのか、本当にイヤになります!(怒)
上の写真を見れば分かりますが、着色されている「反射防止黒色塗料」は全部で3つあり、水性溶剤で溶けるタイプと油性溶剤で溶けるタイプと、交互に塗布されており最低でも3回は過去メンテナンスが施されたことを物語っています(汗)
当然ながら、当初バラす前の実写確認と比較して、オーバーホール作業が終わった現状は「解像感が増した」仕上がりに到達しているのは言うまでもありません(笑)
↑こちらの写真は既に溶剤洗浄が終わり、当方の手による『磨き研磨』が終わった状態で撮影している「ヘリコイドメス側」です。赤色矢印で指し示している箇所のイモネジ用の下穴が製産時点を示し、他のグリーン色の矢印で指し示している箇所のイモネジ締め付け痕は「全てデタラメな整備の際に残った締め付け痕跡」です(汗)
ヘリコイドメス側なので、この上に締め付け固定されるのが「距離環」です。すると1箇所のイモネジ締付箇所に対して4つの痕跡が確認できる為、全周で「12箇所残っている」ことになります・・当然ながら製産時点のイモネジ用下穴は3箇所しかなく、その他がいい加減な組立工程の結果残された痕跡と指摘できます(笑)
上の写真をちょっと覚えておいて下さいませ。赤色矢印の位置に対してグリーン色の矢印のイモネジ締付痕は「左右に広がっている」状況です。
↑こちらも既に当方の手による『磨き研磨』が終わっている鏡筒 (ヘリコイドオス側) です。この内部に光学系前後群と絞りユニットがセットされます。
するとここには側面に「絞り環用基準▲マーカー環」がやはり3本のイモネジで締め付け固定されます。同様赤色矢印で指し示している箇所の下穴が製産時点を示します。ところがズレた位置にあるイモネジ締付痕3つ分は「どういうワケか左側にのみ集中している」ことが判明します (グリーン色の矢印)。
一つ前のヘリコイドメス側の距離環を固定していた位置とは、イモネジ締付痕が位置が違うのです(笑)
これが意味するのは、過去メンテナンス時 (最低でも3回) は、下手すると距離環の無限遠位置たる「∞刻印と絞り環用基準▲マーカーが一直線上に位置せず、ズレていた期間がある」ことを表しています(汗)
要は距離環とマウント部指標値環の基準▲マーカーと、絞り環用の基準▲マーカーが縦に並んでいなかった時期があることを意味しており、無限遠位置を何とか合わせただけと言う仕上がりがあったことを明示しています(笑)
・・こういうのが整備らしいです(笑)
↑ここからはオーバーホール工程が終わって仕上がった個体の撮影写真になります。完璧なオーバーホール/修理が終わりました。
↑ご依頼内容の一つだった「光学系内のクモリ」は、光学系第2群の2枚貼り合わせレンズと、後群側の第3群貼り合わせレンズにも帯びていました(汗)
位置的に説明するなら「絞りユニットを挟んで、互いに対峙する貼り合わせレンズどうしの面がそれぞれでクモリを帯びていた」状況です(汗)
清掃で除去できるレベルではなく (3回清掃作業を試みましたが)、仕方なくガラセリウムを使いガラス研磨してクモリを除去しました。あまり本格的にガラセリウムを使うと「蒸着コーティング層まで削り取ってしまう」懸念が高くなるので、その判断が大変難しいのがリアルな現実です(怖)
ちなみに今回の整備では「光学清掃時のツルツルした感触」が残ったままなので「保護層」を削り取っていないのが分かります(涙)
するとこのクモリの原因は何かと言えば「蒸着コーティング層の経年劣化進行に伴う酸化/腐食/錆び以前の話」なワケで、それが明示するのは「保護層に化学反応で強固に付着したインク成分」としか考えられない道理になります(汗)
・・ご理解頂けますか???(汗)
実際、後群側の光学系第3群のコバ端も同じように執拗な厚みで「反射防止黒色塗料」が (こちらは2種類を2回に分けて) 塗布しており、その両側からのインク成分のせいでクモリを帯びていたと推測できます(汗)
↑結果、それらクモリは完全除去が終わっていますが、残念ながら前玉露出面と、後玉露出面は既に蒸着コーティング層の経年劣化進行に伴う酸化/腐食/錆びがだいぶ進んでおり、ご覧のようにクラック/裂け目が相当数で残ります・・これらの一部はカビ除去痕でもあります(汗)
具体的に撮影写真に影響を来すレベルでのクモリを帯びていませんが、光に翳すと間違いなく視認できます (もちろん順光目視でも上の写真のとおり視認できる)。これらは一旦蒸着コーティング層を剥がさない限り除去できないので、当方の整備スタンスから「可能な限り製産時点の蒸着コーティング層を残す」方針でこのまま組み上げています・・申し訳ございません。
一方光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無ですから、このブログページ最後のミニスタジオを使った、各絞り値での実写のとおり、たいへん鋭いピント面を確保できています(涙)
↑15枚の絞り羽根もキレイになり、絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に真円の円形絞りを維持」しながら閉じていきます。
また絞り環操作も当初バラす前時点の確認時に「重く」感じたので「普通〜軽め」程度に仕上げています。
ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。
↑塗布したヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」だけを使い、当方独自のヌメヌメッとしたシットリ感漂う軽めのトルク感で、掴んでいる指の腹に極僅かにチカラを伝えるだけでピント面の前後微動が適うトルクに仕上げられており、抜群の操作性を実現しています(笑)
特に当初バラす前の「重い」トルク感から比べると、大変実用的なトルク感に仕上がったと思いますが、残念ながら「擦れ感は強め」の印象です。これはヘリコイドのネジ山の劣化と言うよりも「直進キーがスライドするスリット/切り欠き/溝の摩耗」が影響している為、これを研磨すると直進キーに対してマチ/隙間が増えてしまう為「今度はピント合わせ時に左右ブレする」因果へと繋がるのでそのままにしてあります(汗)・・申し訳ございません。
↑また距離環を締め付け固定しているイモネジ3本のうち「1本だけが加熱しても外れず距離環を外せない」状況に至り、このままでは完全解体できないことから、仕方なくドリル切削しました。その後、組み立ての際に代用イモネジ (赤色矢印) を調達して、それでネジ込んでいます(汗)・・申し訳ございません。
↑他ご報告すべき瑕疵内容は残っていません (以下の瑕疵内容のみ残ります)。
《残ってしまった瑕疵内容》
❶ 光学系内の前玉/後玉露出面に経年劣化進行に伴う微細な点状として相当数に残る
❷ 距離環を回した時に強めの擦れ感を感じることがある
❸ 距離環固定用イモネジのうち1本が代用でドリル切削したのが分かる
オーバーホール/修理ご依頼者様皆様に告知しているとおり、もしもお届けしたオールドレンズの仕上がり状況にご満足頂けない場合は、そのご納得頂けない要素に対して「ご納得頂ける分の金額をご請求金額より減額」下さいませ。
減額頂ける最大値/MAX額は「ご請求金額まで (つまり無償扱い)」とし、大変申し訳御座いませんが当方による弁償などは対応できません・・申し訳御座いません。
無限遠位置 (当初バラす前の位置から僅かに改善/僅かなオーバーインフ状態で∞刻印の左○横辺りで合焦)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。
被写界深度から捉えた時のこのモデルの無限遠位置を計算すると「焦点距離:58㎜、開放F値:f2.0、被写体までの距離:65m、許容錯乱円径:0.026㎜」とした時、その計算結果は「前方被写界深度:33m、後方被写界深度:∞m、被写界深度:∞m」の為、40m辺りのピント面を確認しつつ、以降後方の∞の状況 (特に計算値想定被写体の70m付近) をチェックしながら微調整し仕上げています。
・・一言に無限遠位置と述べてもいったいどの距離で検査したのかが不明瞭ですね(笑)
当初のオーバーインフ状態よりほんの僅かだけ縮まっている状況です (オーバーインフであることには変わりない)。設計上、これ以上は詰められません・・申し訳ございません。またもちろん光学系内の「気泡」も物理的に除去は不可能です。
◉ 気泡
光学硝子材精製時に、適正な高温度帯に一定時間到達し続け維持していたことを示す「証」と捉えていたので、当時の光学メーカーは正常品として「気泡」を含む個体を出荷していました (写真に影響なし)。
但し、例えば円形ボケなどの内側に大きめの「気泡」は映り込んでしまいますが、どれだけ大きい円形ボケを表出できるかの点については、光学設計の問題です。
↑当レンズによる最短撮影距離90cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。
各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。
この微妙な繊細感と優しさ感のバランス性がビオターの大好きな写り具合で、マジッで泣けてきます(涙)
↑f値「f11」です。もうだいぶ絞り羽根が閉じてきている為「回折現象」の影響が現れ始めています。
◉ 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。
◉ 被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。
◉ 焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。
今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。引き続き次のモデの整備に移ります。どうぞよろしくお願い申し上げます。