◎ Zunow Opt. (ズノー光学工業) ZUNOW 5cm/f1.9(M44)
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オーバーホール/修理ご依頼分ですが、当方の記録用として掲載しており
ヤフオク! 出品商品ではありません (当方の判断で無料掲載しています)。
(オーバーホール/修理ご依頼分の当ブログ掲載は有料です)
今回扱うのは、MIRANDA CAMERA CO. (ミランダカメラ) から1955年に発売された一眼レフ (フィルム) カメラ「Miranda T」のセット用レンズとして供給されていたZunow Opt.製標準レンズ『ZUNOW 5cm/f1.9 (M44)』です。
先立つ1953年にライカスクリューマウントで発売された標準レンズ「ZUNOW 5cm/f1.1 (L39)」のほうが、当時世界一の明るさを誇る
モデルとして非常に有名なので、ネット上を探るとその案内ばかりで今回扱うモデルの解説はほとんどヒットしません(笑) 他にも5cm/f1.3があったようですがあまり詳しいことが分かりません。
今回扱うモデルの光学系もやはりネット上には一切案内されておらず、せいぜい5群7枚という情報しかヒットしません (今回初めての扱いなのでよく分からない)。
バラしてみると5群7枚の変形ズミター型構成を実装していました。
第2群が貼り合わせレンズになっていれば、そのままズミター型構成そのものですが、個別に独立させてレンズ面を増やして解像度の向上と収差改善を狙っていたのが分かります (第2群は間に0.2mm厚のシムリングが挟まるだけなのでまさに貼り合わせレンズを分離させているだけのような設計です/もちろんちゃんとそれぞれコーティングされている)。
また 部分の第5群 (後玉) には新種硝子のクラウン硝子 (ランタン材含有) を採用し屈折率10%台までの向上を狙っているのが分かります。
ちなみに第1群 (前玉) はいきなり貼り合わせレンズです。
◉ 貼り合わせレンズ
2枚〜3枚の光学硝子レンズを接着剤を使って貼り合わせて一つにしたレンズ群
右図は今回バラして清掃時にデジタルノギスで計測しほぼ正確にトレースした構成図です。
当方が計測したトレース図なので信憑性が低い為、ネット上で確認できる大多数の構成図のほうが「正」です (つまり右図は参考程度の価値もない)。
(各硝子レンズのサイズ/厚み/凹凸/曲率/間隔など計測)
上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。
◉ 描写の傾向
円形ボケ (左端の写真) は収差の影響をウケてしまうので真円で表出させるのが難しい印象ですが、円形ボケのエッジ (輪郭) には嫌味が無く自然なので、円形ボケのボケ味としては扱い易いイメージです。
光源 (2枚目) はほんのりと滲んでいるのがまた雰囲気を増長させていますが、それでも空気感/距離感まで写し込んでしまうところが光学系の素性の良さでしょうか。3枚目の岩の質感表現能力も非常に優れ人物写真も生々しさをちゃんと取り込んでいます。
なお、MIRANDAマウントは左写真のように2つのマウントで構成されており、爪があるスピゴット式のバヨネットマウントの他、内側に「内径:44mm x ピッチ:1mm」の「M44スクリューマウント」を備え、どちらのマウント種別でも使えるよう考えられている画期的なマウント種別です。
オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。
↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。内部構造は基本的にこの当時のオールドレンズに多く採用されていた二分割式の設計で、鏡胴が「前部/後部」に分かれます。
内部構成パーツのほとんどが真鍮 (黄銅) 製なのですが、逆に筐体外装はフィルター枠を兼用している「プリセット絞り値キー環 (リング/輪っか)」とマウント部だけが真鍮製で他はアルミ合金材と言う設定です。
なにゆえに「プリセット絞り値キー環」を真鍮製にする必要があったのか全く分かりません。考えるに、おそらく「プリセット絞り機構」のガチガチと操作する耐性を保たせる意味が強いのかも知れません。
↑絞りユニットや光学系前後群を格納するアルミ合金材の鏡筒です。ヘリコイド (オス側) が独立しており鏡胴「後部」側に配置されています。
絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。
◉ 位置決めキー
「位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー
◉ 開閉キー
「開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー
◉ 位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)
◉ 開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環
↑12枚の大変シッカリした (厚みがある) 造りの絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成させます。絞りユニットは「位置決め環/開閉環」まで真鍮 (黄銅) 製という、この当時のオールドレンズに多く採用されている材質の配分です。
過去メンテナンス時にこの開閉環側 (鏡筒内壁部分) にグリースが微量ながら塗られていたのが分かりましたが、この当時の真鍮 (黄銅) 製「位置決め環/開閉環」が鏡筒内壁と接触して抵抗/負荷/摩擦が増大し、絞り羽根に負荷が掛かってしまうのを避ける目的でグリースを塗ったものと推察します (負荷が掛かると絞り環操作が非常に重くなるから)。
当初バラす前のチェック時点で既に絞り羽根に「油染み」が生じていたのは、そのグリースを塗ってしまったのが影響しているのかも知れません。
もちろん今回のオーバーホールではご覧のとおり「磨き研磨」を施したので、グリースなどは一切塗っていません。本来真鍮 (黄銅) 製パーツはバラした直後には経年の酸化/腐食/錆びにより茶褐色に変質している事がほとんどなので、そもそもその酸化/腐食/錆びによってさらに抵抗/負荷/摩擦が増大しておりグリースを塗ってしまう整備が横行しています。
しかし現実的に考えて、光学系前後群で挟まれる絞りユニットにグリースを敢えて塗ってしまう考え方に、当方は疑問を感じます (光学系コーティング層の経年劣化を促しているようなものだから)。
当方のオーバーホールでは、よほど理由が無い限り光学系前後群で挟まれる絞りユニットに
(ひいては鏡筒内部に) グリースを塗る事は一切ありません。それほど光学系前後群 (特にコーティング層に対して) は神経を遣うべきと考えます。
なお、ロシアンレンズの多くのモデルが鏡筒内部 (絞りユニットも含む) に多量のグリースを塗って製産/出荷していたのは全く別の理由で、ロシアが国土に氷点下40度以下という極寒地を含む為に、金属凍結を防ぐ目的で敢えて鏡筒内部にグリースを塗っています。従ってロシアンレンズの絞り羽根に「油染み」が多いのは必然的な話であり、光学系のコーティング層もそれを見越した成分/配合だったと推測できますが、そもそもロシアのコーティング層蒸着技術が低い精度なので(笑)、不純物が混じっていたりそれこそコーティングムラまであったりします (経年劣化も早い)。
↑完成した鏡筒を立てて撮影しました。5群7枚の光学系構成ですが意外と鏡筒の長さがありません。
↑まず最初にフィルター枠を兼ねる真鍮製の「プリセット絞り値キー環 (リング/輪っか)」をネジ止めしますが、当初バラす前の時点でガチャガチャとこのフィルター枠部分が緩んでいる状態でした (ご依頼者様からのご指摘あり)。3箇所から締付ネジで締め付け固定するよう設計されていますが、バラしてみると3本全ての締付ネジが緩められたままでした。
バラしつつ試しに3本全ての締付ネジをキッチリ締め付けてみると、ちゃんとネジ込めて最後までフィルター枠部分を固定できます。なにゆえに過去メンテナンス時にワザと緩められていたのでしょうか?
上の写真ではさらにその直下に、基準「▲」マーカー刻印がある「プリセット絞り環」まで組み込んでいますが、実はこの内側に設置されている「プリセット絞り機構」の設置が適切ではありませんでした。その影響からフィルター枠部分を完全固定してしまうと「プリセット絞り環」が回らなくなっていたようです。
つまりそれをごまかす為に3本全ての締付ネジを緩めてあったようですね(笑)
今回のオーバーホールでは本来あるべき姿で「プリセット絞り機構」を組み込んだので、もちろん締付ネジを最後まで締め付けて固定しています。
↑絞り環を組み込んだところです。残るのは光学系前後群を組み込むだけとなり、これで鏡胴「前部」が完成しました。
↑鏡胴「後部」の組み立て工程に移ります。マウント部ですがズッシリと重みを感じる真鍮製です。
↑アルミ合金材のヘリコイド (メス側) を、無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。
通常一般的なオールドレンズにはネジ込み位置が1つしかありませんが、このモデルはこの
ヘリコイド (メス側) にネジ込み位置が3箇所用意されていました。当然ながらネジ込みポジ
ションをミスると無限遠が出ません。
↑真鍮 (黄銅) 製のヘリコイド (オス側) を、やはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルでは全部で7箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。
↑完成している鏡胴「前部」に光学系前後群を組み込んでから距離環を仮止めし、無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行えば完成です。
なお、上の写真に写っているヘリコイド (オス側) 内壁の「J83」というマーキングは、当方が刻んだのではなく全ての構成パーツにマーキングされているので製産時点ではないかと推測します。「J」なので国内流通用と言う意味なのかも知れません。
ここからはオーバーホールが完了したオールドレンズの写真になります。
↑完璧なオーバーホールが完了しました。距離環を回すトルクは、ご指示に従い当初バラす前のトルク感に近いトルクで調整して仕上げています。
↑光学系の透明度が非常に高い状態を維持した個体で、LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。当初バラす前に光学系内に微細な塵/埃が多めに入っているように見えましたが、バラして清掃したところ除去できないので経年の微細な点キズです。
また光学系第1群 (前玉) 表面側のコーティング層がだいぶ経年劣化が進んでおりハガレ始めています (裏面側は大変綺麗な状態でコーティング層がそのまま残っています/ブルシアンブル〜系のコーティング層)。他のグンのコーティング層は光に反射させるとパープルアンバーがだいぶ強く出るコーティングです。また第5群 (後玉) はクラウン硝子なので、その性質がちゃんとコーティング層の光彩として現れていますね。
つまり構造面で見ても、当初バラす前の時点でだいぶ強気な光学系後群側の設計を採っていると感じたのですが (後玉がモロ飛び出たまま)、その拠はクラウン硝子による強制的な収束 (屈折率) なのがよく分かります。
そのギリギリまで拘って収差改善に尽くしていた事が実写を見れば納得できると言う、本当に素晴らしいオールドレンズです。
↑光学系後群側も透明度が高くLED光照射で極薄いクモリが皆無です。極微細な点キズが少々多めでしょうか。
5群7枚の光学系構成ですが、その中でコーティング層の経年劣化が進行しているのは前述のとおり第1群 (前玉) の表面側だけなので、それ以外のコーティング層が経年劣化により剥がれずに残っていたのがオドロキでした。
↑当初油染みが生じていた12枚の絞り羽根もキレイになり「プリセット絞り環/絞り環」ともども確実に駆動しています。
過去メンテナンス時の所為なのか、当初組み付けられていた「プリセット絞り機構部」の位置がズレていたので本来あるべき正しい位置で「プリセット絞り機構部」を固定しましたが、残念ながらアルミ合金材の鏡筒ネジ山が擦り減ってしまった為に「絞り環」の操作性が軽すぎます。粘性のあるグリースを塗ってトルクを与えたのですが、ネジ山数が少ない為に軽すぎるのは改善できていません。
申し訳御座いません・・。
但し、適正な位置で「プリセット絞り機構部」を組み付けられたので、ご依頼内容であった「フィルター枠部分のガタつき」は締付ネジをキッチリ締め付け完全固定できています。
もちろん鏡筒内壁にもグリースを塗っていませんが、ご覧のようにほぼ真円に近い円形絞りで絞り羽根が閉じていきます。
ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。
↑塗布したヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」を使い「粘性:軽め」を塗布しましたが、真鍮製のネジ山に真鍮 (黄銅) 製ヘリコイド、さらにアルミ合金材のヘリコイドと3種類の金属が介在する為、当方ではこれ以上軽いグリースがありません。
一応、ご指示に従い当初のトルク感に近いトルクで仕上げています。距離環を回すトルクは「普通」人により「重め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。
↑無限遠位置もご指示に従い当初バラす前の位置と同じ位置で組み上げました (実写確認済)。
筐体外装は、フィルター枠部分 (絞り値が刻印されている環/リング/輪っか) が真鍮製クロームメッキで、その他の筐体外装はアルミ合金材にやはりクロームメッキが施された拘った造りです。従って「光沢研磨」せずともご覧のように光り輝いているワケです (そのようなメッキ加工が施されている作りだから)。
無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。
もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい。当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません。
↑ここからはご存知ない方の為に参考としてこのモデルの「プリセット絞り操作」を解説していきます。
「プリセット絞り環」が基準「▲」マーカー刻印されている上側で、その直下のローレット (滑り止め) だけの環 (リング/輪っか) が「絞り環」です。「絞り環」にはマーカーとして「●」刻印が備わっています (オレンジ色矢印)。
様々な「プリセット絞り方式」のオールドレンズで同じですが、その実装されている「プリセット絞り環/絞り環」の区別を間違えると、プリセット絞り操作が分からなくなってしまいますね(笑)
このモデルでは上側が「プリセット絞り環」でその直下のローレット (滑り止め) が「絞り環」です。
すると「プリセット絞り環」の基準「▲」マーカーが開放f値「f1.9」に位置している時 (グリーンの矢印)、直下の「絞り環」側「●」も合致しています (オレンジ色矢印)。この状態で絞り羽根は完全開放しており、且つ「絞り環」を回そうとしても一切動きません (つまり完全開放を維持したまま)。
今回、例としてプリセット絞り値を「f4」に設定する方法を解説していきます。
「プリセット絞り環」側を指で掴んでマウント側方向に押し下げます (ブルーの矢印①)。クッション性があるので指を離すと戻ってしまいます。
そのまま指で掴んで「プリセット絞り環」を設定絞り値「f4」まで移動させて (②) 指を離すとカチッと音がして填ります (③)。
↑上の写真が指を離した直後の状態を撮っています。「プリセット絞り環」の基準「▲」マーカーがちゃんと設定絞り値「f4」の位置で填りました (グリーンの矢印)。
しかし、この時直下の「絞り環」側はまだ操作していないので (触っていないので)、基準「●」マーカーの位置が開放f値「f1.9」のところで動いていません (オレンジ色矢印)。そのまま光学系内を覗き込んでもちゃんと完全開放しています(笑)
従って、この状態で距離環を回してピント合わせを開放のまま行えるワケですね。ピント合わせが終わってシャッターボタンを押し込む前に、今度は「絞り環」を指で掴んで設定してあるプリセット絞り値「f4」まで回します (ブルーの矢印④)。
すると絞り羽根が閉じていって設定絞り値の「f4」まで閉じてくれます。シャッターボタンを押し込んで撮影します。
つまり「絞り環」はブルーの矢印④方向に回すと「閉じる操作」である事を覚えていれば、シャッターボタン押し込み前にただ回せば良いだけの話です (設定絞り値が既に設定済なので回すだけ)。
これが「プリセット絞り機構」の操作概念になりますね。絞り羽根を閉じる「設定絞り値」を事前に決めておく概念なので、ボケ具合をチェックしながら絞り値を変更して (絞り環を回して) 気に入った時点ですぐにそのままシャッターボタンを押し込んで撮影する「自動絞り方式」とは一手間操作が必要なのが「プリセット絞り機構」です。
逆に言えば、その一手間が面倒なので後の時代になって「自動絞り方式」が開発され当たり前になりました。
↑撮影が終わったら、念の為再び元に戻します。プリセット絞り値が「f4」のままなので (グリーンの矢印)「プリセット絞り環」側を指で掴んでマウント方向に押し下げ (ブルーの矢印⑤)、そのまま指で掴んだまま開放f値「f1.9」まで移動させ (⑥) 指を離します (⑦)。
するとこの時このモデルでは直下の「絞り環」側も一緒に動いていくので「●」マーカーも同時に開放f値まで移動します (オレンジ色矢印)。
↑当レンズによる最短撮影距離40cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。
この実写はミニスタジオで撮影していますが上方と右側方向からライティングしています。その関係でフードを装着していない為に絞り値の設定によりハレ切りが不完全なまま撮影しています。一応手を翳していますがハレの影響から一部にコントラスト低下が出てしまうことがあります (簡易検査具による光学系検査を実施済で偏心まで含め光軸確認は適正/正常)。
↑絞り環を回して設定絞り値「f2」で撮影しています。開放f値が「f1.9」なのでほとんど変わりません。
↑f値「f11」ですが、ギリギリ「回折現象」の影響が目視できないレベルでしょうか (実際は影響が出始めている)。
◉ 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。
↑最小絞り値「f16」での撮影です。大変長い期間に渡ってお待たせし続けてしまい、本当に申し訳御座いません。今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。