◎ ASAHI OPT. CO., (旭光学工業) Super-Multi-Coated TAKUMAR 135mm/f2.5《後期型》(M42)

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1968年に初めて開放F値「f2.5」の明るい中望遠レンズが発売になりましたが今回出品する個体は、その「後期型」にあたり1973年の発売になります。「f2.5」の関係から大玉の光学系を装備しておりズシリと重みを感じるモデルです。当方での扱いは今回が初めてになりますが内部の構造化は他のタクマーシリーズに共通した設計で、さすがは旭光学工業です・・他モデルも含めての設計寸法などの相違があるにも拘わらず共通化させた「構造」を踏襲し続けられると言うのは、長い開発/設計/生産の時間と労力から考えると相当な見定めを行った共通項としての完成した構造化が成されている「証」でもあり、まさに当時の先進工業国日本の粋を極めた「職人魂」を感じます。おそらくパーツ設計のみならず締め付け固定ネジのひとつひとつに至るまで様々なモデルに共通した諸元値を満たす開発/設計だったのでしょう・・感銘を覚えます。

光学系は当初発売時の「前期型」では4群5枚のエルノスター型でしたが「後期型」では6群6枚に設計変更しテレフォト型にしています。「Super-Multi-Coated」は7層に及ぶマルチコーティングを意味します。今回のモデルはコーティング層の光彩に濃い「グリーン色」を含む輝きを放っており他のパーブル系の光彩とは異なりますが、どのような描写性への影響が込められているのでしょうか・・。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。他モデルと同じレベルの部品点数と構成パーツ形状を踏襲しており、さすがです。

絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒 (ヘリコイド:メス側) です。この当時の旭光学工業製オールドレンズはヘリコイドのネジ山が他社光学メーカーと比較すると極体に少ない特異なネジ山の設計です。これで数十年という長期間に渡り一定のトルク感を維持していたワケですからオドロキです・・純正のヘリコイド・グリースは「黄褐色系グリース」になりますから今回の整備でも当方の「黄褐色系グリース」を塗布していきます。

8枚の絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成させます。

こちらは距離環やマウント部を組み付けるための基台になります。光学系の光路長を稼ぐ意味合いから深さのある基台です。

真鍮材のヘリコイド (オス側) を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

鏡筒 (ヘリコイド:メス側) をやはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルには全部で8箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

こちらはマウント部内部の写真を撮りましたが既に内部の各連動系・連係系パーツを取り外して当方による「磨き研磨」を終わらせている状態で撮っています。

外していた各連動系・連係系パーツも個別に「磨き研磨」を施し組み込みます。

マウント部を基台にセットします。

絞り環にベアリングを入れ込んでから組み付けます。この状態で鏡筒から飛び出ている「絞り羽根開閉アーム」との連結を行い絞り環の各指標値との整合性を確認しておきます。

指標値環をセットして絞り環指標値との位置合わせを行います。

距離環を仮止めしてから光学系前後群を組み付けて無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

 美しく淡い緑色に光り輝くコーティング層を有する旭光学工業製「Super-Multi-Coated TAKUMAR 135mm/f2.5」中望遠レンズです。当方で旭光学工業製オールドレンズのヤフオク! への出品をすることは大変希ですのでお探しの方は是非ご検討下さいませ・・以前他モデルのまとめて数本出品した際に予想に反して落札されなかったので (ヤフオク! のウォッチ数が大変低かった) オーバーホール済であることに価値観が無いと判断し、それ以降扱いを見合わせています。従って、描写性や性能の良し悪しで扱っていないのではありません。

光学系はキレイなのですが残念ながら中玉にLED光照射で浮かび上がる非常に薄いクモリが残っています (清掃しても除去できず)。おそらくコーティング層の経年劣化に拠る薄いクモリだと考えられるのでコーティング層を剥がしてしまう懸念があるため硝子研磨などは行っていません・・写真への影響には至らないレベルと判断しています。

上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。1〜2枚目は極微細な点キズの状態を半分ずつ撮っています。3枚目は中玉の非常に薄いクモリを光に反射させて撮ろうとしましたが薄すぎて全く分かりませんでした。

光学系後群もキレイになったのですが後玉のコーティング層はカビ除去痕があり光に反射させて見るとコーティング層のムラ状に見えます (一般的にコーティング焼けと言う状態)。

上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。1〜2枚目は極微細な点キズを撮っています。3枚目は後玉のコーティング層のムラ状に見える部分を撮りましたがキレイに写ってしまいました。

【光学系の状態】(順光目視で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ:
前群内:18点、目立つ点キズ:11点
後群内:10点、目立つ点キズ:7点
コーティング層の経年劣化:前後群あり
カビ除去痕:あり、カビ:なし
ヘアラインキズ:あり
LED光照射時の汚れ/クモリ:あり
LED光照射時の極微細なキズ:あり
・その他:バルサム切れなし。光学系内には塵や埃に見えるコーティング層の経年劣化に拠る極微細な点キズが複数あります。LED光照射で浮かび上がる非常に薄いクモリも中玉にあります。
・光学系内はLED光照射でようやく視認可能レベルの極微細なキズやクモリなどもあります。
・いずれもすべて写真への影響はありませんでした。

8枚の絞り羽根もキレイになり確実に駆動しています。

ここからは鏡胴の写真になります。経年の使用感が極僅かに感じられる筐体ですが当方による「磨き」をいれたので落ち着いた美しい仕上がりになっています。一部着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます。

【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度」を塗布しています。距離環や絞り環の操作は大変滑らかになりました。
・距離環を回すトルク感は「普通」で滑らかに感じトルクは全域に渡り「完璧に均一」です。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。

【外観の状態】(整備前後拘わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。

大柄な筐体ですが開放F値「f2.5」のとても明るい中望遠で、その安定した描写性には評判があります。是非ともご検討下さいませ。

当レンズによる最短撮影距離1.5m附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでベッドライトが点灯します)。

画角はそのままで絞り環を回して絞り値「f4」で撮影しています。

F値「f5.6」になりました。

F値「f8」になります。

F値は「f11」で撮っています。

F値「f16」になりました。

最小絞り値「f22」になります。