◆ YASHICA (ヤシカ) YASHICA LENS ML 28mm/f2.8《中期型:富岡光学製》(C/Y)

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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、国産は
YASHICA製標準レンズ・・・・、
YASHICA LENS ML 28mm/f2.8
   《中期型:富岡光学製》
(C/Y)』
です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Україні!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

Slava UkrainieieGeroyam Slava

今回完璧なオーバーホールが終わってヤフオク! 出品するモデルは、当方がオーバーホール作業を始めた13年前からの累計で当時のYASHICA製「MLシリーズ」の括りで捉えると10本目にあたりますが、今回扱った個体の「広角レンズ28㎜/f2.8」だけでカウントすると僅か2本目です。

ネット上では特に銘玉と騒がれるモデルでもなく、そもそも当時同じヤシカが製産していたCarl Zeiss銘の「Distagon 28mm/f2.8 T* (C/Y)」とその写りで比較され易い点も影響して、今ひとつも二つも肩を並べられずに居る「不遇な広角レンズ」です(泣)

ところが当方がこのモデルを扱いたくない/手を出したくない最大の理由はそんな話ではなく「その内部構造/造りからオーバーホールして組み上げても、見合う代価としての作業料を回収できない面倒臭さ」から、なかなか積極的になれないモデルの一つなのです(泣)

それは「絞りユニット内の位置決め環と開閉環の両方が、互いに動いてしまう特異な設計」による微調整の難しさです(泣)

普通一般的なオールドレンズの多くは、絞りユニット内の設計として「位置決め環側が固定」の設計を採り、絞り羽根にプレッシングされる「キーと言う金属棒」が刺さることで、それが「絞り羽根の軸の役目になり、絞り環操作で開閉環側だけが回転するから絞り羽根が閉じたり開いたりする原理」です。

この方式の設計が大多数を採りますが、それにより標準的な理論値として「国際絞り方式」が採られており「F値」として一つの光学硝子レンズの明るさを示す指標値に表すことができます (昔は大陸絞り方式も使われていた)。

ところが現実には光学硝子レンズの「真の透過率」との関係性から捉えた時、F値だけを使って正確な露出を議論することはできないので、特に光学硝子レンズの「透過率を勘案した露出値」として使われる数値が必要になり「T値」が存在します。この時例えばシネレンズ界隈では「F値とT値の両方を切り替えて使う」事の重要性も高くなります・・その「T値」で絞り羽根を駆動する際に「位置決め環側の位置が可変する必要性が起きる」問題から「位置決め環と開閉環の両方が互いに個別に動く設計」を採ります。

当然ながら、必然的にその時絞り羽根の開閉幅/開口部の面積/カタチ/入射光量はF値とT値とでは同一にならないので(泣)、個別に開閉する制御が起きて「位置決め環と開閉環を互いに個別に制御する」仕組みが設計上求められます。

従って「位置決め環と開閉環の両方が互いに駆動してしまうと絞り羽根開閉制御の微調整は
相当なレベルまで高くなる
」のが非情に厄介極まりない話なのです(泣)

実際今回のオーバーホール工程でも、絞り羽根の開閉幅/開口部の面積/カタチ/入射光量を簡易検査具を使って微調整するにも、調整している最中に引張式スプリングで互いが (位置決め環と開閉環の両方が) 引っ張られて動くので、いったい広げたほうが良いのか閉じたほうが良いのか、その微調整が相当大変なのです(涙)

ハッキリ言って市場流通している「C/Yマウント規格品」の中で、正しく適切にキッチリ絞り羽根の開閉幅/開口部の面積/カタチ/入射光量に仕上げられている個体は、相当少ないと推測し
ます (真剣に微調整し始めるとそのくらい大変な話)(泣)

ましてやシネレンズ界隈の流通品などは、まともに微調整されている個体を今までに観た記憶すらありません(笑)

そんな面倒臭さが悪戯して、ホンネでは誠に扱いたくないモデルの一つに入ってしまうのが「YASHICA LENS MLシリーズ」だったりします(笑)・・その意味で、今回オーバーホール
作業を本当に久しぶりに試しにヤッてみましたが(笑)、やはり二度と扱いたくない気持ちの
ほうが大きく「やっぱり今回で最後にするかなぁ~」といった感じです(泣)

・・それが13年間で僅かたったの2本目と言う今回扱った個体数の本数の真実です(泣)

この広角レンズ「ML 28mm/f2.8」のほうは別に今回ヤフオク!出品している標準レンズ「ML 50mm/f1.7」に比べて、むしろ銘玉とは行かずとも、それでも相応に市場でも評価
され続けているモデルのように受け取っています・・特に暗部の黒潰れがなかなか耐え凌いでいて、ギリギリまで粘っている様がたいしたものです(驚)

また発色性も然る事乍らコントラストも稼いでいて、特にこの当時の顧客嗜好からも大いに
受け入れられていたように感じます・・しかもその傾向は今現在も続いているようで、特に
海外オークションebayでの評価はなかなかたいしたレベルを維持しています (市場流通価格が意外にもMLシリーズの中にあって高めの印象)(驚)

  ●               

1977年に当時のヤシカが発売した一眼 (レフ) フィルムカメラ「YASHICA FR」向けオプション交換レンズ群として用意された
広角レンズの一つが今回扱うモデルです (右写真はそのFRにML28mm/f2.8が装着してある)。

【 モデルバリエーション】
オレンジ色文字部分は最初に変更になった諸元値の要素を示しています。

前期型:1976年発売
光学系:7群8枚レトロフォーカス型構成
レンズ銘板:金属製
銀枠飾り環:フィルター枠/距離環/絞り環
ローレット (滑り止め):ラバー製
光学設計:中期型までが同一の光学設計

中期型:???
光学系:7群8枚レトロフォーカス型構成
レンズ銘板:金属製
銀枠飾り環:全てなし
ローレット (滑り止め):金属製 (製産時のNC切削)
光学設計:前期型と同一の光学設計

後期型:???
光学系:6群7枚レトロフォーカス型構成 (再設計)
レンズ銘板:樹脂製
銀枠飾り環:全てなし
ローレット (滑り止め):金属製 (製産時のNC切削)
光学設計:前期型~中期型とは全く異なる再設計

↑上の写真は、今回扱ったモデルと内部構造が非常に近似していますが、当時国内発売はされず米国向けの輸出品として富岡光学で生産されていたいわゆるOEMモデルです。但し、OEMモデルと言ってもあくまでも販路は「米国内のヤシカ拠点扱い品」なので、例えば左側2枚の写真は「YASHICA U.S.A」をとって「YUSモデル」の扱いですし、同様同一販路「DSB
モデル
」はモノコーティング限定モデルとして流通していたようですから、米国内では意外にポピュラーな扱いを受け続けています(笑)

なお最後右端「YASHICA LENS ML 28mm/f2.8 C (C/Y)」モデルだけは別モノで、モデル銘最後に付随する「」表記は「コシナ製」を表す表記なので、富岡光学製モデルではありません (当然ながら内部構造も設計も何から何まで全くの別モノです/最後期に登場していたようで、おそらくヤシカ倒産後の1983年以降の製品と推察しています)。

↑さらに特にこれら「YASHICA LENS MLシリーズ」で注意が必要な情報として解説を続け
ます・・準広角レンズ「YASHICA LENS ML 35mm/f2.8 (C/Y)」或いは今回扱いの「YASHICA LENS ML 28mm/f2.8 (C/Y)」含め、マウント面の仕様について把握しておく必要があります。

ちなみに「ヤシコン (Y/Cマウント)」と呼称していたのは当時の日本国内がメインの話で(笑)、世界的に捉えても「CONTAX」の歴史のほうが先で拡散しているブランドなので、正しくは「C/Yマウント規格」だと思います(笑)

マウント規格が「C/Yマウント規格」なので、その場合にマウント面には装着先たるC/Yマウント規格のフィルムカメラ側に伝達するべく、以下の仕様が決まっています。

開放f値伝達キー (モデル固有の開放f値をフィルムカメラ側に伝達する役目)
設定絞り値伝達アーム (絞り環操作による設定絞り値をフィルムカメラ側に伝達する役目)
操作アーム (フィルムカメラ側からの操作により絞り羽根の開閉操作を行う役目)

ちなみにグリーン色の矢印で指し示している箇所 (の爪部分) がこのオールドレンズをフィルムカメラ側マウント部に装着する際に目安とするリリースキー部分を意味し、鏡胴側にも「」の刻印が施されてリリース位置を明示しています (装着時のロック箇所)。

↑これら「YASHICA LENS MLシリーズ」のマウント面に関し、特に注意が必要な情報を上に写真で列挙しました。

左端の写真は上で紹介した 開放f値伝達キーが (今回の扱い品と同じ) 円柱キーではなくて
爪を有する円弧を描いたプレート (締付ネジ2本を使う)」で製産していた頃の出荷個体になり、モデルバリエーションで言うところの「中期型」以降の仕様が含まれます (純正品で正規商品と言う意味合い)。

また左から2枚目の写真は敢えて「YASHICA LENS ML 50mm/f1.4 (C/Y)」のマウント面を撮影した写真を加えていますが、ご覧のように赤色矢印で指し示している「 開放f値伝達キーの位置が違う/ズレている」点を解説用に示しています・・開放f値が異なるモデルなので
当然ながら伝達キーの位置が変わっている必要が (設計上) ありますね (フィルムカメラ側に
伝える必要があるから
)(笑)

ところがここからが「要注意事項」になります。右側2枚の写真で示した個体のマウント面には、本来正規品に必要なハズの「 開放f値伝達キー」がありません(泣)・・例えば3枚目の
写真では赤色矢印で指し示した位置に「 開放f値伝達キー」が欠落している代わりに「締付ネジだけが残っている」ことが分かりますし、一方グリーン色の矢印で指し示した位置には
規格外のネジ穴が残って見えています。

その規格外のネジ穴位置に刺さっていたのが、一番右端で赤色矢印で指し示している「特大の金属製円柱パーツ」です・・当然ながら、このような特大の円柱パーツが突出していれば、そもそもフィルムカメラ側に装着できません(汗)

さらにこの「特大の金属製円柱パーツ」はマウント面のメクラ板にネジ込んでいたのではなく「製産時点のプレッシング」で入っているので、この円柱パーツをねじ切ってしまうとご覧のように「汚い部品が欠損/脱落した穴状態」に堕ちてしまいます(泣)

これら右側2枚の写真で明示したマウント規格品は「監視用カメラに装着していた個体からの転用品 (つまり監視カメラ向け供給品)」なのです!(驚)

以前にこれら監視カメラ向け転用品を扱った事がありますが、光学系内の各群の曲り率や厚みが微妙に異なり、確かに正規品とは別モノなのが判っています (デジタルノギスによる実測データが残っていない)・・それもそうで、実はこれら監視カメラ向け転用品は白黒画像に特化して組み替えて出荷していたタイプなので (カラー撮影で使っていなかったようです) その分で、
光学系内の透過率を変更した専用の光学設計を採っていたようです (詳細情報無く不明確)(汗)

当初は海外オークションebayで頻繁に出回っており、その次に日本国内でもオークションで
流通が始まりましたが、近年も相変わらず出回っています(笑)・・本来「YASHICA LENS MLシリーズ」は「ulti-ayer」の頭文字を採って「MLシリーズ」ですからマルチコーティング化したモデルですが、それを監視カメラ向けに敢えてモノコーティング、或いはシングル
コーティング
へと転生させた商品と推定できます (そうしないと白黒のグレースケールで254階調にカラー成分を振り分ける為に波長を特化させる必要が起きるから/要は白黒画像に於ける解像度向上を狙ったタイプ)。

・・その意味でこれら監視カメラ向け転用品の写りは全くの別モノなので要注意です!(怖)

例えカメラ店で入手される場合でも「必ずマウント面を確認して手に入れるべき」内容として解説を進めました (知らん顔して売っているお店があるらしい/写りが別モノなのに)(笑)

↑光学系は「前期型~中期型 (左側) / 後期型 (右側)」で同じレトロフォーカス型構成を採りますが、上の構成図のとおり「後期型」で光学系を大きく再設計してきて構成枚数すら減じています。特に「第4群を1枚減じた分、後群側の第4群~第5群での屈折率確保が相当大きな
課題になったハズ
」と容易に推測でき、相当な気合の入れ方だったようにも見えます(泣)

上の構成図は両方ともに過去扱った際のオーバーホールで完全解体した時に、光学系の清掃時当方の手によりデジタルノギスを使い逐一全ての光学硝子レンズを計測したトレース図です。

なお今回扱った「中期型」では光学設計を変更しないながらも、実は蒸着されているコーティング層が変更してあって「特に第1群前玉裏面側と第3群貼り合わせレンズの構成3枚目、及び後群側第6群後玉側方向にグリーン色の光彩を蒸着」してきているのが分かります。

ところがこれらの「グリーン色の光彩」は当時流行っていたほどに明確に濃くて強い光彩を放たず「淡いグリーン色」に留めている点からして「敢えて蒸着コーティング層の調整だけに
限定して、光学設計自体を触らなかった
」との憶測が湧いてきます・・逆に指摘するなら同一光学設計のままで収まる範囲内に絞って「淡いグリーン色のコーティング層蒸着」を執る事で
中間帯域の波長増幅を狙ったようにも見えます (要はインピーダンスのより広帯域化を狙った
/階調幅の増幅化/滑らかさの増強
)。

もしもそうだとすれば、これは白黒写真のグレースケール内では254階調の中で影響が最も少ない帯域幅でインピーダンスを広げているので「狙ったのは明らかにカラー成分のグラデーションをより滑らかにしたかった」のではないかとも考えられますが、確かなことは分かりません (但し蒸着コーティング層が前期型と違うのは間違いない/しかし光学設計はその実測値に変更の形跡が確認できない/つまり同一のまま)。

するとそこにCarl Zeiss銘の「Distagon 28mm/f2.8 T* (C/Y)」とは異なる方向性でカラーリングをイジっている印象が拭えないので、YASHICAはヤシカなりに「何かをMLシリーズに求めていた/狙っていた」のかも知れません・・ロマンが広がります(涙)

  ●               






↑上の写真はFlickriverで、このオールドレンズの特徴的な実写をピックアップしてみました。
ピックアップした理由は撮影者/投稿者の撮影スキルの高さをリスペクトしているからです
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています/上記掲載写真はその引用で
転載ではありません。

一段目
左端は円形ボケでどの程度のシャボン玉ボケ表出が適うのかを観たいと思ってピックアップしましたが、そもそも広角レンズなので小さすぎてよく分かりません(笑) その一方で背景ボケよりもピント面のインパクトは相当なレベルなのがよ~く分かり、さすがネット上での評価がいまだに高いままなのも納得できます(驚)

二段目
広角レンズなので最短撮影距離が30cmと寄れる分、人物撮影に特化したポートレートレンズとしての要素を併せ持つのかの確認に実写を調べていますが、標準レンズ同様「美肌効果」ではありませんが、今一つ感が残る人肌感覚です。 その一方でシ~ンの中である程度の「距離感」を持たせてくると、3枚目の実写の如く現場の臨場感が増してリアルな写真を残せそうな気がしてきます。

三段目
この段の実写を観ていて、冒頭で説明した「光学系内の蒸着コーティング層に淡いグリーン色を使ってきた理由」が見えたと言うか、分かったような気がしました!(驚)・・これは或る意味Carl Zeiss銘のDistagonにも肉薄しそうな勢いを感じるのですが、如何でしょうか???(驚)

この中間調のグラデーションが確保できた/担保できた分がよりリアル感を増してくる/増強してくる結果に功を奏しているように見えてなりません。

四段目
さらにこの段でもやはり街中スナップ写真でさえ、リアル感の増強に功を奏していると同時に、実は相変わらずネックになっているハズの「暗部の潰れ感」にまで、その耐性として大きく貢献しているようにも見えてきます。パースペクティブはなかなかたいした耐性で、歪が少なく均整が摂れていると思います。

五段目
左端の白黒写真になると中間調の効果が今ひとつよく分かりませんが、やはりカラー写真になると途端に中間調のグラデーションがより細かく、滑らかに広がっているように見えます・・違和感を感じず、かと言って誇張感にも至っておらずなかなかの表現性ではないでしょうか。

六段目
光源が入ってきても明暗部の誇張感が少なく、やはり黒潰れの耐性が増してきているように見えます・・標準レンズよりも明らかに黒潰れがギリギリまで耐え凌いでいるように見えますが、如何でしょうか???

↑完全解体した時の内部構成パーツ全景写真です。オーバーホール工程やこのモデルの当時の背景など詳しい解説はYASHICA LENS ML 28mm/f2.8《中期型:富岡光学製》(C/Y)』のページをご参照下さいませ。

ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。

DOHヘッダー

ここからは完璧なオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わりました。前回の扱いが2018年なので、そろそろ6年が経とうとしています(汗)・・何しろ、このモデルの絞りユニット微調整が相当なレベルで大変なので、市場流通価格帯の低価格化に反して作業内容はハードでメッチャリスキーです(涙)

・・その意味でも残念ながら今回の2本目を最後の扱いにしたいと思っています。

だいたい「F値で十分通用するのに何故にT値と同じ設計概念で起こすのか、相変わらず全く以て意味不明な会社です」と富岡光学に対して恨みツラツラですが(笑)、ヤシカ倒産の秒読み段階にあった当時の背景としては「何かしら避けられない要素が介在していたのかも???」と、もしかしたら富岡光学に対する濡れ衣かも知れませんね (冤罪か???)(笑)

・・しかし作業している立場としては大変なモノは大変なのだから曲げられない!(笑)

ちなみにネット上での評価記事を読むにつけ、意外にもこのモデルの描写性能は評価がとても高い印象が残っているようです(笑)・・上の写真のとおり、レンズ銘板も「中期型」なので
金属製のレンズ銘板を装着しており、なかなかの端正なボデイにちっとばかり惚れ惚れです(笑)

↑何とも恨めしい写真ですが(笑)、絞りユニット内の構成パーツで「開閉環 (左) と位置決め環 (右)」です。先にオーバーホール済でヤフオク!出品したYASHICA LENS ML 50mm/f1.7《後期型:富岡光学製》(C/Y)』同様、超ハードな微調整を必須とする設計概念です。

当然ながら「開閉アーム」と「制御キー」の位置も仕様も使い方/役目も何もかも同一です(汗)・・オレンジ色の矢印で指し示している箇所にそれぞれ引張式スプリングが2本付随することになり、互いに反対方向に常時引っ張られるので、これら構成パーツを絞りユニットに組み込んでも「絞り羽根は常に閉じたまま」になります(泣)

ここでのポイントは「開閉環側の開閉キーが金属棒の突起」に対し「位置決め環側の位置決めキー用の穴は真四角」です・・また合わせて赤色矢印で指し示している箇所の凹み/窪みも重要な意味を持っています(泣)

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

絞り羽根開閉幅
絞り羽根が閉じていく時の開口部の大きさ/広さ/面積を指し、光学系後群側への入射光量を決定づけている

すると上の左写真を見れば一目瞭然ですが絞り羽根は「開閉キー側に四角い穴が開いている」一方「位置決めキー側は金属棒の突起」です・・これッて「???」と思いません???(笑)

一つ前の絞りユニット構成パーツ写真で「開閉環位置決め環の突起と四角い穴がこれら絞り羽根の仕様とは真逆です」(驚)

・・何を言いたいのか???

つまり、絞り羽根を組み込むと互いに同じ状態にセットされるので (開閉キーが突起に刺さり位置決めキーが四角い穴に入る/逆の立場も然り)、プラスして互いが互いに引張式スプリングで引っ張られるとなれば「いったいどうやって絞り羽根の開閉角度を微調整すれば良いのョ
誰か教えてぇ~!・・みたいな話です(笑)

正直な処、既にオーバーホール済でヤフオク!出品したYASHICA LENS ML 50mm/f1.7《後期型:富岡光学製》(C/Y)』にも増して何しろ光学系が7群8枚のレトロフォーカス型構成ですから、鏡筒内部のスペースは「さらに狭くなっているのに微調整だけはもっと大変な作業に変わっている設計」なのです!(涙)

・・マジッでイヤになります!(涙)

だから濡れ衣だろうが、冤罪だろうが何だろうがツラツラと富岡光学を恨みますね・・(笑)
こう言う知恵の輪の如く謎解きを強いる富岡光学の肩を持つ気持ちにはなりません!(笑)

↑さらにヤバいのが上の写真で「直進キー」と言うパーツですが、何故にワザワザ金属材の
材質まで変更してくるのかしらねぇ~!(怒)・・と、ここでもツラツラです(笑)

直進キー
距離環を回す「回転するチカラ」を鏡筒が前後動する「直進するチカラ」に変換する役目

鏡胴の両サイドに締め付け固定されるのに「その応力分が金属材の変更によって変わってしまうではありませんか!」(怒)・・と言う話です(笑)

つまりこれが意味するのは「距離環を回した時に鏡筒の繰り出し時収納時とではそのトルク制御が違う/変わる仕様の設計を採っている」と言う、まさに意味不明な設計概念を強いているのが富岡光学の罪なのです(笑)

・・本当に恨めしいったらありゃしません!(笑)

もちろんちゃんと同一のトルクになるよう仕上げましたが、これにはちゃんと意味と目的があって「絞り羽根の開閉制御でマウント面にフィルムカメラ側からの開閉操作がチカラとして
伝わってくるから
」と言う、フィルムカメラ側からの操作を念頭に置いたトルク管理が必要だからです。

ちゃんと「観察と考察」を行い「原理原則」に則って考えれば、自ずとその微調整内容すら
導き出されて「本来在るべき姿」に落ち着くのですが、一方作業をしている立場からすれば
メッチャ大変な話にしかなり得ません(笑)

↑上の写真は、今回の個体をバラした際に内部で使われていた「固着剤」を綿棒で拭った時の色合いを並べて撮影していますが・・4種類も使っているですョ!(驚)

色別に説明するなら「固着剤」はつい近年の使用で「固着剤」はおそらく数十年前、さらに「固着剤」はまさに富岡光学で製産時点に使っていた固着剤の種類になり、最後の「固着剤」はまた別の過去メンテナンス時に使われていたタイプなので、全部で最低でも製産後に3回はメンテナンスされているのが分かります(笑)

バラすと、グリースと同じで経年の技術革新なのか何なのか分かりませんが(笑)、このように固着剤の変遷すらチェックできるワケです(笑)

↑さらに上の写真は鏡胴に貼り付けられていたシールを撮影していますが、今回の個体に付いていたのは「手前のシルバータイプ」であるものの、そもそもこのモデルたる「YASHICA LENS MLシリーズ」の「前期型」登場時期が1976年のハズなので「1964年」のスタンプが印刷されているシールが貼り付けられて海外輸出しているハズがありません(笑)

つまり別個体から貼り替えられたとの憶測が強くなりますが、下手するとこの「PASSED
シールが貼り付けられている事を「検査合格としての安心材料」の一つに捉えている人も居るかも知れませんね・・しかしそれは全くの思い込みです(笑)

・・はたしてこのシールの意味とは???(笑)

戦後日本の光学機械工業は飛躍的に発展しますが、そうは言っても戦争で工業界の全ての分野に渡って疲弊してしまった国内市場がすぐに活況を帯びることにはなりません。そこで海外 輸出にまずは弾みを付けることで国内市場の景況感も向上してくると考えるのは自然です。

日本の光学メーカーは挙って海外製オールドレンズの模倣を始めますが、戦後の輸出品の中には大手光学メーカー以外のアウトサイダー品も流れていました (いわゆるパクリ品)。結果海外光学製品メーカーからのクレームが起き (一部訴訟あり)、その品質に於いて政府を挙げて対応したのがこのシール登場の背景です (つまり政府が業界に直接関与した背景がこのシールの
存在とも言える
)。

JCIA:日本写真機工業会
終戦当時1946年に発足した光学精機工業界写真部会 (当時17社) を前身とし1953年に政府からカメラ産業が重要輸出産業に指定されたことを受け、1954年に部会を独立させて「日本写真機工業会 (JCIA)」としました。

任務は「日本の世界に於けるカメラ産業の発展、及び写真文化の普及」を命題としていました。2000年に団体は解散し「カメラ映像機器工業会 (CIPA)」へと引き継がれます。

JCII:日本写真機検査協会
輸出品取締法 (1948年制定) により日本工業規格 (JIS) の前身として日本輸出規格 (JES輸出39携帯写真機) の最低標準規格/梱包規格が制定され、当初輸出業者の自主検査により実施されていましたが、品質向上/管理の寄与には程遠く、1956年に第三者検査機関として「日本写真機検査協会 (JCII)」が発足し (当初僅か7名)、輸出品取締法から輸出検査法に改訂された1957年を契機に一定水準を満たさなければ輸出できない検査/審査を執り行う機関へと変貌しました。

JMDC:財団法人日本機械デザインセンター
当時海外光学メーカーより意匠 (デザイン) 模倣のクレームや訴訟が多数発生したのを受け製品意匠と輸出価格の適正化 (自主輸出規制) を狙い発足したのが始まりです。輸出品に対するデザイン認定 (意匠審査/認定) 業務の他認定書の発行及び製品個体への認定シール貼付を課していましたが、実際はJMDCからの委託を受けてJCIIが輸出品全数にシール貼付を代行していたようです (製産メーカーにシールが渡り出荷時に貼付済なのを輸出認定時に抜き取り検査して全数検査としていた/輸出認可は事前申請だった為)。

これらのことからこの「PASSED」シールはある一定の品質基準に合致した製品であり、同時に海外意匠を模倣していないことを証明する「」であったことが分かります。しかし製品の性能機能を厳密に保証する (つまり精度保証する) 目的で貼り付けしていたワケではなく、あくまでもグローバル的な視点から見た最低基準の話であり、さらにそれは輸出品全数に及ぶ個体の「全数検査」を意味するものではないことを理解しなければイケマセン

つまりこのシールには「何の意味も無い」と考えたほうが良さそうですね(笑)・・ヤフオク! などを見ていても、時々このシールが張り付いている事をメリットとして謳っている転売屋/転売ヤーが居ますが、笑ってしまいます。当方などはこのシールが貼り付いていたせいで経年焼けしてしまうので (シール痕が残る) むしろ厄介だと受け取っているくらいです(笑)

ちなみに「シルバーのシール」と「ゴールドのシール」2種類が顕在するのは、製品の輸出
指向先の相違 (欧米諸国向けがゴールドで東欧圏向けがシルバー) によるらしいです(笑)・・
が現状は貼り替えられていたりするのでバラバラです(笑)

↑話が長くなりました(汗) 光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

↑光学系後群もスカッとクリア極薄いクモリすら皆無です。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:14点以上、目立つ点キズ:9点
後群内:17点以上、目立つ点キズ:12点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(前後群内極微細な薄い最大5mm長数本あり)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・光学系内は透明度が非常に高いレベルです。
(LED光照射で確認しても極薄いクモリが皆無)
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。

↑6枚の絞り羽根もキレイになり、絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根には経年のスレ痕や汚れが多少残っています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に正六角形を維持」したまま閉じていきます。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。

詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。

もっと言うなら「光沢剤/研磨剤/化学反応」の類も一切利用しないので、金属材表層面に影響を及ぼしてしまう処置は何一つ講じていません(笑) 特にヘリコイドのネジ山などを研磨剤にて処置すると、塗布するヘリコイドグリースの成分/配合によってはそれらの浸透を促してしまうので、ザリザリ感やスレ感が数年で増大し製品寿命の短命化を促す結果に到達しますから要注意です(泣)・・当方独自のヌメヌメ感を感じるシットリしたトルク感は、それら「光沢剤/研磨剤/化学反応」の類を一切利用しない磨き研磨により実現している特異なトルク感であり、巷で流行る「分解整備済」とは全く異なる完全解体を前提とした製品寿命の延命化が最終目的です(笑)

もちろんそれらの根拠として「当時製産時点に使っていたであろう成分/配合の分類に可能な限り近い黄褐色系グリースだけを使う」事をその前提と据えており、今ドキ流行っているシリコーン系「白色系グリースの何♯ (番)」などを謳って整備するのは以ての外で(泣)、そのような整備は「製品の延命処置」からはまさに逆行した所為と指摘せざるを得ません(涙)

実際それらシリコーン系「白色系グリース」が塗布されている個体を数多く確認していますが
距離環を回した時のトルク感は「ツルツルした感触」しか感じず、合わせてピントのピーク/山の前後微動に於いて、意識せずとも微動してしまう使いづらささえその印象として残るので、はたしてそれで撮影に没頭できる操作環境を真に提供できているのかとの疑念さえも湧いて
きます(笑)

その意味でも整備で塗布するグリースの問題は、製産時点/設計概念に配慮した内容だけに留まらず、組み上げられたオールドレンズの使用感にまで気配りした概念がそこには介在し、結果的に「製品寿命の延命化」に到達できていれば、なおさらに最高ではないかとのポリシ~が
根底にあったりするのが当方が施すDOHそのものなのです(笑)

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感で距離環を回す時のトルクの印象は「普通」人により「軽め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。特にピント合わせ時は距離環を掴んでいる指の腹に極僅かなチカラを伝えるだけで微妙な前後動が適い正確にピント合わせできる素晴らしい操作性を実現しています。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。

今回のオーバーホール済でのヤフオク! 出品に際しセットした附属品の一覧です。

《今回のヤフオク! 出品に際し附属するもの》
HAKUBA製MCレンズガード (新品)
本体『YASHICA LENS ML 28mm/f2.8《中期型:富岡光学製》(C/Y)』
純正樹脂製バヨネット式C/Y後キャップ (中古品)
純正樹脂製スナップ式前キャップ (中古品)

完璧に仕上がりましたし、そう言う操作性でちゃんと組み上げきっています・・プラスして、とんでもなく鋭いピント面を構成するよう簡易検査具を使い微調整済でもあります(笑)

・・総じてとにかく微調整が大変なので、次回の扱いはやめるつもりです(泣)

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離30cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f4」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f5.6」で撮りました。

↑f値は「f8」に上がっています。

↑f値「f11」です。

↑最小絞り値「f16」での撮影ですが、もうほとんど絞り羽根が閉じきっているものの「回折現象」の影響が感じられません(驚)

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。