◎ YASHICA (ヤシカ) YASHICA LENS ML 28mm/f2.8《中期型》(C/Y)

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今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルはヤシカ製広角レンズ『YASHICA LENS ML 28mm/f2.8《中期型》(C/Y)』です。


YASHICA製交換レンズ群の「MLシリーズ」には富岡光学製モデルが多いのですが終盤期にはコシナ製も存在するようです。しかし、ヤフオク! やネット上の一部解説では「コシナが富岡光学から光学系の供給を受けて製産していた」と案内されているのを見かけます。つまり実装する光学硝子レンズだけを富岡光学が供給していただけであり、実際に製品を設計/製産していたのはコシナだったと言う話です。

実は当方も当初の時期に同じことを想定したことがあるのですが「富岡光学製である決定的な根拠」を発見してしまったために、現在はその考察は捨ててしまいました。当方は何でもかんでも富岡光学製だと言い切っている「富岡狂」の如く言われることがありますが(笑)、具体的な根拠を内部構造や構成パーツに見出しているからこそ「富岡光学製」だと言い切っている ワケで、反証する方は是非とも同じように根拠を挙げて説明して頂きたいものですね。

今回のモデルが富岡光学製である根拠は以下のオーバーホール工程の中で出てきます。

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1976年に発売されたC/Yマウント方式の交換レンズ群の中の一つです。

【モデルバリエーション】
オレンジ色文字部分は最初に変更になった諸元を示しています。

前期型 (1976年発売)

光学系構成:7群8枚 (レトロフォーカス型)
筐体外装意匠:銀枠飾り環あり
レンズ銘板:金属製 (フィルター枠一体削り出し)


中期型 (不明)

光学系構成:7群8枚 (レトロフォーカス型)
筐体外装意匠:銀枠飾り環なし (完全黒色鏡胴)
レンズ銘板:金属製 (フィルター枠一体削り出し)

後期型 (1982年発売)

光学系構成:6群7枚 (レトロフォーカス型)
筐体外装意匠:銀枠飾り環なし (完全黒色鏡胴)
レンズ銘板:プラスティック製

光学系は当初発売の銀枠飾り環を配した「前期型」から「中期型」まで
7群8枚のレトロフォーカス型を採っていました。


しかし珍しいことに「後期型」では筐体サイズをそのままに光学系のみを5群6枚と大きく設計変更してきます。またコーティング層が放つ光彩にも一部に相違があり従来のパープルブルーのコーティング層に対しパーブルアンバーグリーンの光彩を放つタイプが極少数のみ存在します。

なお製造番号はいずれも「A12xxxxx」と「A12」で始まっており指向先メーカー別/モデル別として暗号付番していた富岡光学の方式を採っている個体しか市場に流れていないので、 このモデルにはコシナ製が存在しないとみています。

このモデルの市場に流れている個体 (特にヤフオク! ) を見ていると監視カメラ用に出荷されていた固体が数多く出回っています。

    

上の写真 (3枚) は焦点距離35mmのマウント面になりますが、左端が民生向けフィルムカメラ用出荷タイプであり中央/右端が監視カメラ用の出荷タイプになります。今回出品個体は民生用のフィルムカメラ向けに出荷された固体です。

相違点は「フィルムカメラのボディ側に開放f値を伝達する絞り値キーの有無」で判別し左端の今回出品個体にはキーが存在します (赤色矢印)。ところが監視カメラ用の個体は代わりにシリンダー (或いは太目の円柱) がセットされている場合 (中央/グリーンの矢印) のみならず右端のように外されている (ネジ2本だけ:ブルーの矢印) 場合もあります。さらに問題なのは「絞り連動レバーが欠落 (右端/オレンジ色)」している個体も流れているので要注意です (監視カメラではシャッターボタンに連動して絞り羽根を開閉させる必要が無いから)。

これら監視カメラ用のタイプはヤフオク! 出品で毎月流れており、監視カメラから取り外した個体であることを明記していないので必ずチェックが必要です (この数年で数百本がヤフオク! で処理されています)。監視カメラ用だからと言って光学系に何か違いがあるワケではありませんが、当方がバラした印象ではコーティング層の蒸着 (特に各群の裏面側) が民生用とは違うように感じますし、そもそも絞り羽根の開閉が行われないまま長年使われていた個体なので絞りユニットや絞り羽根のキーの劣化が相当だったりしますから、当方で調達する際は監視カメラ用はどんなに安くても除外です(笑)

逆に考えると、監視カメラ用に使われていたと言うことは「それだけ解像度が高くリアルな 表現性を有する」との評価に価するので、モデルとしての描写性能は非常に優れていると考えています。

   
   
   

上の写真はFlickriverで、このモデルの実写を検索した中から特徴的なものをピックアップしてみました。特徴が多すぎていつもの枚数では足りません。
上段左端から「リングボケ・円形ボケ・背景ボケ①・背景ボケ②」で、中段左端に移って「質感・空気感・リアル感・発色性」さらに下段左端に移って「ブル〜・コントラスト・パースペクティブ・逆光」です。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)

先ず、このモデルの写真を見て凄いと感じたのは下段左端の2枚で、このブル〜を表現してしまうところが非常に感心しました。表現できそうでできないブル〜だと思います。特に2枚目に至ってはまるで絵葉書状態の発色性でまさにヨーロッパナイズされた表現性です (岩のコントラストの差がちゃんと出ている部分)。

これらのピックアップ写真を見ていて感じたのは、写真を見る限り日本製であることをすっかり忘れてしまうほどにドイツ系の表現性を持ったモデルだと思いました。中段右端からの2枚のとおり色乗りは決してコッテリ系ではなくむしろ大人しめな印象ですが (決してナチュラル派ではない)、コントラストが高いのでそのように感じるのかも知れません。ところが富岡光学製オールドレンズたる描写性はシッカリ受け継いでいて、ピント面の繊細なエッジがちゃんと表現されています (中段左端1枚目)。しかも中段左端から2枚目の「空気感」を見事に表現できているのが溜息モノです。

これらの写真を見ると相当なポテンシャルを秘めたモデルなのが分かるワケで海外での評価が高い分、日本での評価が低いのが何とも情けない限りです・・監視カメラのレンズとして使われる素養があることをもっと評価してあげるべきと思いますね。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。内部構造や構成パーツの設計思想は先日掲載した焦点距離35mmのモデルと全く同一です。

↑このモデルも焦点距離28mmながら光学硝子レンズの前群として延長筒を用意せずにそのまま鏡筒サイズに収めた光学設計で出してきたところに凄さが秘められています。

↑このモデルも絞り羽根が出てきません。

↑焦点距離35mmのモデル同様「意味不明な設計」の絞りユニットです(笑) まるで「t値を装備しているかの如く」位置決め環まで回ってしまうので、このモデルも絞りユニットの中で2つの環が一緒に回ります (一般的なf値の考え方で作られているオールドレンズでは位置決め環側が固定で回らない)。

f値とは
f値は「明るさを表す数値」であり「F=f/Φ」で表され焦点距離(f)を有効口径(Φ)で割ると出てくる計算上の論理値です。「国際絞り (古いオールドレンズでは大陸絞り)」で0から始まり「0/1.4/2/2.8/4/5.6/8/11/16/22/32/・・・」と上がっていく√2倍の数値になります。
(大陸絞りは1.1/1.6/2.2/3.2/4.5/6.3/9/12.5/18/25/・・・と上がる)

t値とは
t値は光学系に入ってきた入射光から捉えた時の実際の明るさ (実絞り) を指し「透過率を表す数値」です。従って表面反射などで減ずる影響や光学系の構成枚数によっても異なった数値として出てきます。

この時、f値とt値とで絞りユニットの構造 (ひいては絞り羽根の開閉制御) が変わってきます。
f値の場合は論理値なので絞り羽根を固定した状態のまま開閉だけさせて入射光制御しますが、t値の場合は光学硝子レンズに合わせて具体的な可変幅を制御する必要が生じるので「絞り羽根の固定箇所まで可変」である必要性が出てきます。

↑完成した鏡筒をそのままひっくり返して撮影しました。ここも35mmモデルと全く同一の制御系を一極集中配置しています。

開閉アーム
マウント面の絞り連動レバー操作に連動して一気に絞り羽根を開放状態にする役目のアーム

連係アーム
絞り環との連係で設定絞り値を伝達しているアーム

カム
「なだらかなカーブ」に突き当たることで具体的な絞り羽根の開閉角度を伝達する役目

こんな感じですが、何と「なだらかなカーブ」が一般的なオールドレンズとは逆なのです!(笑) フツ〜のオールドレンズでは「なだらかなカーブ」の麓が「最小絞り値側」になり登りつめた頂上が「開放側」なのです。

何でワザワザ逆に設計する必要があったのか??? 全く以て理解できません。実際は絞り環との連係箇所 (連係アームの場所) との位置関係から逆にしているのですが、ならばそもそも 連係経路 (連係方式) を変更した設計をすれば良いだけの話で、行き当たりばったり的な安直な設計変更をしているから絞りユニット側の環 (2つとも回ってしまう) の問題になります。

結果、工程数が増えて人件費が嵩み調整箇所まで増えるので適正検査時の出戻り率まで影響してきます。

↑上の写真は前出の写真とは反対側を撮りました。絞りユニット内の2つの環 (リング/輪っか) は、それぞれ「絞り羽根が常に開こうとするチカラ」と「常に閉じようとするチカラ」の2種類の相反するチカラが及ぶ必要があります。そのためにスプリングが2本附随するワケですが前述の「なだらかなカーブ」が逆方向になったためにCONTAXマウントとしての絞り羽根制御方式上、絞り羽根を閉じないとイケマセンから結果的に2つの環が回らざるを得なかったワケです。

なので、鏡筒が完成した時点で「あれ? 絞り羽根閉じてないじゃん?!」と言うことになります(笑) つまり悪さしているのは「なだらかなカーブ」だったワケです。

なお、この鏡筒裏側に「なだらかなカーブ」を用意して制御系を一極集中的に配置してしまう設計思想も当時の富岡光学製オールドレンズに多く共通する要素のひとつです。

↑距離環やマウント部を組み付けるための基台です。光学系がレトロフォーカス型なので光路長が長い分この基台側の厚み/長さ/深さが必要なのですが、むしろ焦点距離35mmのモデル よりも浅い設計です。

↑真鍮製のヘリコイド (メス側) を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

↑アルミ材削り出しのヘリコイド (オス側) を、やはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルでは全部で6箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

アルミ合金材の間に真鍮製のヘリコイド (メス側) を挟んでいる理由は、同じ材によるネジ山の回転でカジリ付 (互いに噛み合って固着してしまう現象) を避ける目的なので、この当時の富岡光学ではまだアルミ合金材同士のネジ山切削技術が到達していなかったことになります。ところが当時の他社光学メーカーでは既にアルミ合金材同士でのヘリコイド (オスメス) を実現していましたから、要は富岡光学では工場の製産設備更新ができなかったことが窺えます。

それもそのハズで、1968年にヤシカに吸収された後、母体のヤシカまで倒産してしまい結局1983年には京セラに共倒れで吸収されます。しかしその京セラもついに2005年からカメラ 事業の縮小を始め2007年には撤退してしまうので、結局転げ堕ちる下り坂が変わっただけの話で命運は既に尽きていたのでしょう・・ロマンが広がりますね。

↑さて、ここでレトロフォーカス型光学系を実装するための光路長を稼いでいる種明かしが出てきました。絞り環用にさらに延長筒を用意してしまったのです。この延長筒を固定する工程がここで一つ増えてしまいます。何故に基台を深く採らなかったのか? ワザワザ分離させた理由が次に出てきます。

↑完成した基台の裏側マウント側方向を撮りました。絞り環との連係環 (リング/輪っか) が介在しています。つまり鏡筒に配置されている「連係アーム」と絞り環との間に「さらにもう一つの連係環」を用意しているワケで(笑)、ここも意味不明の設計です。何で構成パーツを増やす方向にばかり設計するのでしょうか?(笑) ダイレクトに絞り環と「開閉アーム」を連係させる他社光学メーカーと同じ方式で設計すれば良いと思うのですが・・。

↑この工程が海外も含めて他社光学メーカーでは何処も採り入れなかった富岡光学独特の設計です(笑) この当時の富岡光学製オールドレンズでそのほとんどが鏡筒の位置調整で絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) を調整する仕組みを延々と続けていました。

従って鏡筒はヘリコイド (オス側) 内側にストンと落とし込んでから「締め付け環」でワザワザ締め付け固定します。つまり最後まで組み上げてから検査時点で絞り羽根の開閉幅が適正ではなかったら、ここまで戻ってイチイチ鏡筒を取り出して絞り羽根の開閉幅調整をやり直す設計です。

この当時他社光学メーカーで最も多い調整方法は、鏡筒自体、或いは絞りユニット自体の位置をダイレクトに微調整する方式 (つまりネジ止め固定方式) だったのでここまでバラす必要性が無く、工程数も合理化できて人件費も掛からず検査の影響も最低限で対応できます。要は富岡光学は旧態依然の「慣例に従う設計」をず〜ッと踏襲し続けていたと推測でき、いわゆる日本らしい会社の体質だったことが窺えます。こう言う部分が当方が「アンチ富岡光学」に走る由縁だったりします(笑)

↑この工程も「意味不明な設計」です。絞り環をセットした後にスプリング+ベアリングを絞り環側に組み込みますが、そのベアリングがカチカチとハマるクリック感を実現する「 (絞り値キー)」が、何と指標値環側に用意されているのです。

これが何で拙いのか?

指標値環がイモネジ (ネジ頭が無くネジ部にいきなりマイナスの切り込みを入れたネジ種) 3本による締め付け固定だからです。つまり指標値環の固定位置をミスると絞り環のクリック感と刻印されている絞り値との整合性が無くなります

この工程も「要調整箇所」になってしまったワケで、そのような設計をしているのが拙いのです。単に絞り環の裏側に溝を用意して基台側にベアリングを忍ばせればクリック感が簡単に (しかも調整の必要も無いまま) 実現できるのに、どうしてその発想ができないのか?!

この当時の富岡光学製オールドレンズに多く採用されている設計でもあります・・。

↑冒頭で案内したこのモデルが「富岡光学製たる決定的な根拠」がこの工程の解説です。今回出品する個体は「中期型」なので「前期型」から引き継ぐ設計がまだ残っていました。
上の写真「ストッパー」は指標値環の位置を微調整する際の目安として、ワザワザ真鍮製の パーツを用意しているのです。

指標値環の位置調整にこのような真鍮製ストッパーを用意しているのは数多いオールドレンズのなかでも富岡光学製オールドレンズだけに見られる独特な設計なのです。

左の写真は過去にオーバーホールしたAUTO YASHINONシリーズから転用した写真ですが、ストッパーが入るための「溝」が右端に用意されています。この溝の下に絞り環が配置されるので上の写真と全く同じ考え方の設計と言うことになります。

さらにもっと言えば転用写真がありませんでしたが「TOMIOKA」銘がレンズ銘板に刻まれているモデルにも全く同じストッパーが指標値環の位置調整用にセットされています。

従って、当方がこのモデル (焦点距離35mmも含めて) が富岡光学製だと言い切っている根拠は海外勢のオールドレンズはもとより日本製 (Canon/Nikon/MINOLTA/KONICA/FUJICA/栗林写真工業/サン光機/TAMRON/TOKINA・・) も含めて唯一指標値環の位置調整のためにこの ような方式のストッパーを用意している会社が富岡光学だけなのを知っているからなのです。

何も根拠がないままに富岡光学製だと言い切っているワケではないので「富岡狂」と侮るのはおやめ頂きたいと思いますね。むしろちゃんと反証材料を挙げてそのように言って頂きたいと思います。

ハッキリ言って、この当時のコシナにはまだマニュアルレンズをゼロから開発/設計/製産する技術も工場設備も整っていなかったハズで、それはコシナの沿革を見れば一目瞭然です。
コシナが一眼レフ用レンズ製産をスタートしたのは沿革に従うならば1982年からなので、このモデルが登場した時期には整っていなかったことになります。そのような単純な事実も調べもせず侮るのはおやめ頂きたい・・。

↑指標値環をセットして微調整が終わった状態を上から撮影しました。ご覧のようにストッパーが指標値環にくい込んでいます。

↑こちらはマウント部内部の写真ですが既に当方による「磨き研磨」を終わらせた状態で撮っています。

↑セットされるのはたった一つ「絞り連動レバー」だけです。

↑完成したマウント部を基台に組み付けます。

↑距離環を仮止めしてから光学系前後群をセットして無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑このモデルでは珍しいパープルアンバーにさらにグリーン色の光彩を放つ3色のコーティング層が蒸着されている個体「後期型」です。もちろん監視カメラ用ではない正規品ですから(笑)フィルムカメラに装着してもちゃんと開放f値が伝達されます。

このモデルのピント面は焦点距離35mmと比較するとまだより明確なエッジを際立たせてくれるので、ピントの山は分かり易いのですがそのピント面が距離環を回しているにも拘わらずあまり変化しません。と言うか、ビミョ〜なピント面の違いが分かりにくいのです。

焦点距離35mmと共に使い難さに繋がる残念な仕様です。

↑今回の出品個体も光学系内は驚異的な透明度を誇ります。残念ながらこちらは後玉の表側にカビ除去痕が残っているのでLED光照射では極薄いクモリとして浮かび上がります。

しかしそれを勘案しても「MLシリーズ」で光学系の透明度が高い状態を維持していること自体がそもそもキチョ〜です。当方が調達する際は、まず光学系内にクモリがある個体は手を出しません (ほとんどがコーティング層の経年劣化なので清掃しても改善できないから)。ましてや貼り合わせレンズ (2枚の光学硝子レンズを接着剤を使って貼り合わせてひとつにしたレンズ群) を実装しているとなるとバルサム切れ (貼り合わせレンズの接着剤/バルサムが経年劣化で剥離し始めて白濁化し薄いクモリ、或いは反射が生じている状態) の懸念も捨てきれません。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

↑後玉表側のカビ除去痕と言ってもご覧のとおりのレベルです。ハッキリ言って当方のチェックは相当厳しいので届いた個体を見ると肩透かしを食らうかも知れません (チョ〜神経質な人のことを考慮してチェックしているのでだいぶ大袈裟な表現をしています)。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(順光目視で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:11点、目立つ点キズ:7点
後群内:11点、目立つ点キズ:9点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり
・バルサム切れ:無し (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):あり
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
光学系内の透明度が非常に高い個体です
・後玉表面にコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが生じておりLED光照射で視認できます。写真には影響しないレベルです。
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑絞り羽根の開閉も絞り環操作もクリック感もすべて確実に駆動しています。

ここからは鏡胴の写真になりますが経年の使用感を僅かに感じるものの当方による「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度」を塗布し距離環や絞り環の操作性はとてもシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人によっては「重め」に感じ「全域に渡って完璧に均一」です。
・距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります。
・撮影時のピントの山が大変分かりにくいモデルのためワザと距離環を回す時のトルクを「重め」の粘性でグリースを選択しています。しかしピント合わせ時は極軽いチカラだけで微動しシットリ感のある操作性を実現しています。
・絞り環操作も確実で軽い操作性で回せます。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。

【外観の状態】(整備前後拘わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。

↑意外にもその描写性は海外勢、特にドイツ製オールドレンズを彷彿させるほどに実力を持った非常に魅力的なモデルだと感じ入りました。まさに当時、このようなモデルが世界中を席巻していたのだとすれば、それはドイツ製オールドレンズの衰退を招いたのも納得できると言うものです。

そこで今現在を考えると、市場にチラホラと某国のマニュアルレンズが増えつつありますが、その描写性にはまだまだ魅力どころか個性すら感じ得ません。同じように模倣して作り始めているのでしょうが、根本的な部分に日本人との違いが何かあるように思います。それほど光学硝子レンズは単なる設計だけの問題ではなく『成分とその配合度合いに光が反応する』のだと言うことをバラしていると強く感じますね (つまり真似だけしてもダメ)。

その意味でコシナ製の現行モデルたるマニュアルフォーカスレンズの写真がどれをとっても皆同じに見えてしまうのは何とも情けない限りです。当方は情報量が異常に多く緻密な描写性に現代のデジタルレンズたる素晴らしさを見出しません。単なる寒々しい世界だけにしか見えませんね。その辺に気がつきイジり始めたのがSIGMAではないでしょうか? 最近の新シリーズには「個性/」を見出します。

残念ながらSONYのZEISSにも源流から引き継ぐ何かを感じませんし、ましてやMINOLTAの味はどうしてしまったのか? キャノニコに至っては当方とは相反する陣営なので興味関心も沸きませんしPENTAXも相変わらず元気が無いままです。デジタルなレンズにどう言うワケか面白みを感じません・・つまらないですね。唯一横目でチラ見しているのは富士フイルムですが、如何せん撮像素子がAPS-C止まりでは2台体制ができる余裕が出るまではひたすらに我慢です(笑)

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

↑当レンズによる最短撮影距離30cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

↑絞り環を回して設定絞り値「f4」で撮りました。

↑さらに回してf値「f5.6」で撮っています。

↑f値は「f8」になりました。

↑f値「f11」です。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。