◎ Tanaka Kogaku (田中光学) TANAR H.C. 5cm/f2 (silver)(L39)

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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホール/修理が終わってご案内するモデルは、国産は
田中光学製標準レンズ・・・・、
TANAR H.C. 5cm/f2 (silver) (L39)』です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Україні!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

Slava UkrainieieGeroyam Slava

今回完璧なオーバーホール/修理が終わってご案内するモデルは、当方がオーバーホール作業を始めた12年前からの累計で捉えても今回の扱いが初めてです。

今回扱ったオールドレンズは、モデルとして「5cm/f2」だったので、開放f値が「f2.0」と熟れた明るさだった点と、そもそも当方が明るさの追求よりも「その描写の見た目の印象に惹かれるかどうか」と言う、非常に感覚的な要素を重要視する事からも「自らの琴線に最も反応するのは5cm/f2」との思惑が当初より働いていたことも、既に取り掛かりの時点から大きく影響していました。

オーバーホール作業を執り行う際は、一番最初に必ず無限遠位置での実写確認をします。合わせて距離環を回したり絞り環操作やその時の絞り羽根の動き方など、凡そオールドレンズ個体の一般的な操作性の確認と共に、例えばマウント規格がネジ込み式ならマウントアダプタに装着時の感触や、ネジ込みが停止した位置も必ずチェックします。

つまりそのオールドレンズが吐き出す写り具合の全てを事前に確認しているワケではありません・・どちらかと言うと「オーバーホール作業が主体」との背景から、そもそも確認したりチェックしている内容/要素は「描写性能以外の違和感のほうが主体的」だったりします(笑)

それは逆の言い方をすれば、何しろ当方の写真スキルがチョ〜低いので、当然ながら写真センスなど皆無に等しく、自分で何ら当てにしていません(笑) 合わせてとにかく「光学知識が皆無な (疎い) のと、合わせて極度のカメラ音痴でもある」為、自分が手にしているオールドレンズの背景などは「ネット上で調べまくらなければ先ず間違いなく何一つ知らない」と言う、誠に為体極まりない状況です(笑)

その意味でこのブログで述べている事柄や内容、或いは掲載写真や図なども含め「ウソや思い込みが酷く何ら信憑性に値しない」との評価が某有名処サイトのコメント欄でも大勢を占めており、且つSNSなどでも誹謗中傷の嵐のようです (当方はSNSなど興味関心がないので見ませんが)(笑)

そのような状況なので、大変申し訳御座いませんが「当方の琴線に触れる5cm/f2の写り」と宣うものの、何らその根拠もエビデンスも存在しない事を予めご案内しておきます (ここまで読んで、何だョ!と思った方はこのブログから即座に離れたほうが良いと思います)(笑)

そんな前置きの中で、今回扱ったこのモデルが吐き出す写りは「収差だらけなのにピント面の鋭さはハンパなく、しかも何かを訴えている」と取っ掛かりからして最大限に惹き寄せられている始末です(笑)

しかし、そのような写りに対するとてつもなく大きな期待値とは裏腹に「イザッバラし始めたらとんでもないシロモノで、中にはトラップまで仕組まれていた!」(泣) と言うのがオーバーホール作業が全て終わった現時点での正直な感想です(笑)

その意味で、今回の扱いを最初で最後にして「もぅ二度と手にしないモデルに組み入れる」かどうか・・迷っているところでもあるのです(泣)

逆に言うなら、当方が「もう扱わない!」と決意する要素は、内部構造の複雑さや難しさではなく、或いは組み立て手順の再構築が大変だったり面倒だったりでもなく、各部位 (光学系/絞り羽根駆動/ヘリコイド駆動/マウント部/無限遠位置など) の微調整があまりにも神経質すぎる
或いは内部構成パーツの一部が欠品/欠落/破断していたり、最悪の場合接着や改造に切削等々
過去メンテナンス時の「ごまかしの整備の犠牲になってしまう (不条理極まりない話です)」シ〜ンとか、そういう事柄ではなくて・・・・

ただただひたすらに「正常に組み上げられない!」詰まるところ「壊してしまった?!」みたいな、どうにもこうにも逃げ場がないリアルな現実に遭遇してしまった時

・・こそが「もぅ二度と触りたくない見たくない聞きたくない」だったりします(笑)

以前扱ったフランスはP. ANGÈNIEUX PARIS社の高級モデルが組み上げられなかった時も、それはそれはキリキリと胃が痛い時間を数日間過ごしましたが(笑)、人間後が無くなると覚悟が及ぶと言うか、背水の陣を構えられるのだと今頃悟っている始末です(笑)

要は無責任極まりないワケです(笑) SNSなどでも言われているようですが「自分は批判や攻撃を言うだけ言っておいて、イザッ自分が責められるとケツをまくって逃げてしまう!」と罵られているようで、返すコトバがありません (そのとおりだから)(笑)

まぁ〜そうは言っても「オーバーホール/修理」としてヤッている以上、知らん顔はできないので「無償扱い」にしたり、結果が酷すぎる場合は必要な部位のパーツを (手に入れて) 交換してからちゃんと組み上げたり、凡そ考え尽くしてヤレる事は最低限良心的に実行に移して対応するのは当然の話です・・もちろん全てを告白し懺悔するのも100%今まで執り行っています (ウソ偽り含め詐欺的行為などせずに一応社会秩序と法にはちゃんと沐しているつもり)(涙)

そんなスタンスなので、このブログ掲載内容は決して信じられないと・・ご覚悟召されよ(笑)

なお、当方は基本的に「極度のカメラ音痴」であり「光学知識も疎く」プラスしてヤフオク! などに出品している転売屋/転売ヤーである事からも、ここで述べている事柄/内容はその多くに信憑性を伴わず、且つ当方自身の思い込みなども影響してネット上の様々なサイトとの比較には値しない事を事前に告知しておきます (それら比較元サイトのほうを正として捉えて下さいませ)。

従ってこのブログをご覧になりご不満や不快感を抱いた場合は平に附してお詫び申し上げますが、誹謗中傷メールを送信してくることだけはどうかご勘弁下さいませ。

ウソを拡散するような考えなど一切なく、合わせてヤフオク! での出品についても決して詐欺的商法など執る気持ちはなく、どのようなクレームにも必ず対応させて頂く所存です。

そしてこのブログも決してヤフオク! での出品商品を高く売らんが為に煽る目的で掲載しておらず、むしろ純粋にヤフオク! のようなオークションで単にご落札頂くよりも、さらに楽しくそのオールドレンズの素性を知る事ができる事を目指して、その目的にのみ限定してこのブログを添えている次第です (その他の他意は一切御座いません)。

今このブログをご覧頂いている皆様も、何かご指摘事項が御座いましたら以下までお知らせ下さいませ。

ご指摘事項は・・・・
   出品者のひとりごと・・・・pakira3kara@pakira3.sakura.ne.jp
までお知らせ下さいませ。

・・即座に改善/訂正致します。お手数おかけする事になり本当に申し訳御座いません。

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今回のモデルを扱う際いろいろ調べるにしても、その原初から辿るには相当な覚悟が必要なので、結局先の大戦に於けるドイツ敗戦からが当方にとってはスタート地点になります(笑)

ドイツ敗戦に伴う戦後賠償問題からドイツ特許権が剥奪された事が、戦後日本の光学製品発展にも大きく寄与したのではないかと捉えています。戦前から存在し戦中は積極的にドイツ陸軍に軍需供給され続けていた「Oskar Barnack (オスカー・パルナック)」氏の開発/設計に拠る「Leica II系/III系」いわゆる「バルナック型ライカ」登場により、それまで人の目で見た画角に最も近いとの受け取られ方から、戦前〜戦中主流だった標準レンズ域の焦点距離「40㎜45㎜」としたレンジファインダーカメラの中にあって、ライカが1930年以降世に送り出して瞬く間に地位を確実なものにしていった「Elmar 5cm/f3.5 collapsible (エルマー沈胴式)」など「50㎜/f3.5」という焦点距離を標準レンズ域と捉えたのが、後の時代に標準レンズ域の中心的な画角認識に至ったようです。その際、フィルム印画紙のサイズも「ライカ判24X36㎜フルサイズ」との捉え方が一般的になりました。

このような前提を踏まえた上で、今回のモデル登場の背景を探っていったワケですが、戦後すぐに国産として登場したこれらレンジファインダーカメラ「バルナックライカコピーモデル」を辿っていくと、意外にもたった一人の設計者の名前が様々に関与していたのではないかとの憶測に辿り着きます。

戦時中の1940年に東京本所で創設した「光学精機社」と言う光学工房が後のニッカカメラ株式会社の前身ですが (1948年に日本カメラ製作所/1949年ニッカカメラワークスに社名変更/1958年ヤシカに吸収合併)、そもそもCanonの前身たる「精機光学」の元社員7人と共に熊谷源治氏が1930年代に精機光学を退社した後に光学精機社に加わり、さらに1948年にはかつて神奈川県川崎市で創業した「田中光学株式会社」に移りました。

この田中光学にて熊谷源治氏の手により設計されたバルナック判ライカカメラのコピーモデルたるレンジファインダーカメラ「Tanack 35 (Tanack IIc)」が田中光学の最初のフィルムカメラになり1953年に発売しています (右写真はTanack IIc)。

その後、同年「Tanack IIIc」翌年「Tanack IIF、IIIF、IIIS」と続き1955年には「Tanack IV-S」を立て続けに発売し、1957年に
Tanack SD (右写真)」を発売した後、翌年「Tanack V3」発売が最後のモデルになり、1959年には倒産してしまいます。

 

ちなみに熊谷源治氏と共に精機光学社を退職した中の一人が創設したフィルムカメラメーカー「目黒光学工業」があり、そこからやはり距離計連動方式を採用した「L39マウント規格品」のレンジファインダーカメラ「Melcon I」があったりします (右写真はMelcon I)。

この会社でも後の1957年には前述同様Nikon S2に近似したレンジファインダーカメラ「Melcon II」が発売されています (右写真はそのMelcon II)。

他にも有名処ではライゼカメラの「Chiyotax I」や瑞宝光学精機社から発売された「Honor」或いは三鈴光学工業社から登場した「ALta 35」など、それこそこの1950年代初頭から1960年代までの間
まるで筍の如く次から次へと近似したバルナック判ライカコピーモデルが登場します。

それらの中で今回扱った標準レンズTANAR H.C. 5cm/f2 (silver) (L39)』との関連性で非常に興味を抱いたのが三鈴光学工業の「Alta 35」です (右写真)。

その登場のタイミングからして前述のライゼカメラ製「Chiyotax」の後継機モデルにあたるのではないかとの研究が述べられており (ライゼカメラ倒産後に三鈴光学工業が独占販売権を得たとの話)、当方が注目したのは「セット販売されていた標準レンズがまるでTANAT H.C. 5cm/f2のコピーモデル」だからです(笑)

最大の根拠は距離計連動を装備した標準レンズ域のオールドレンズは「最短撮影距離1m」が主流だった/ピント合焦の下限だったのに対し、TANAR H.C. 5cm/f2 (silver) (L39)』はさらに繰り出して「最短撮影距離45cm」であり、この仕様こそが「ALTANON H.C. 5cm
/f2
(L39)」にも装備されていたからです。

左写真はその三鈴光学工業製「ALTANON H.C. 5cm/f2 (silver) (L39)」ですが、他に距離環ローレット (滑り止め) とフィルター枠がブラックカラーのtwo-toneタイプも顕在しています。

今回扱ったモデル同様距離指標値の刻印は「feet」表記なので「最短撮影距離1.5ft」を換算すれば45cmなのが分かります。ちなみに刻印距離指標値は「3.5ft (1m)」までがファインダー画像で確認できるものの、そこから先の近接撮影域「2.5ft (75cm) 〜 1.5ft (45cm)」と目測に変わってしまうので「赤色刻印」表記されています。但し当時のNikon製標準レンズ「Nikkor-H.C 5cm/f2 (L39)」があり、同じように最短撮影距離:45cmまで繰り出し撮影可能なものの、距離指標値1m辺りにクリックストップが装備されており「目測での近接撮影領域に入る」事を知らせます。

その点田中光学製TANAR H.C. 5cm/f2 (silver) (L39)』はシームレスに最短撮影距離たる45cmまでの繰り出しが可能であり、合わせて前述の「ALTANON H.C. 5cm/f2 (L39)」も全く同一の仕様設計なのです(驚) バルナック判ライカコピーモデルまで含め距離計連動域の仕様で使う事を考えれば目測撮影域に入る事を知らせるクリックストップはありがたいのでしょうが、如何せん現在のデジカメ一眼/ミラーレス一眼にマウントアダプタ経由装着する使用方法では「むしろシームレスなのが気持ち良かったりする」次第です(笑)

ちなみに、今回扱ったTANAR H.C. 5cm/f2 (silver) (L39)』が
初めて現れるのは、1955年に発売された「Tanack IVS」のセットレンズとしての登場になり、その時の取扱説明書に初めてモデル銘が印刷掲載されています (右写真はそのTanack IV-S)。

その直前までの1953年から発売されていた「Tanack IIIS/IIISa」各モデルの取扱説明書には、開放f値「f2モデル」の掲載がなかった事からも補強されます (掲載されていた標準レンズの開放f値はf3.5とf2.8のみ)。

左は「Tanack IVS」の取扱説明書からの抜粋で仕様欄です。

さらにこのページを見るとレンズ銘板に刻印されている「H.C.」の略に繋がる意味合いとして「hard coated」の記載がある事からもコーティング層表記を表す事が明確になっています。

・・そんなこんなで、何しろ惹かれまくりでバラすのが楽しみで仕方なかったモデルです(笑)

  ●               








↑上の写真はFlickriverで、このオールドレンズの特徴的な実写をピックアップしてみました。
ピックアップした理由は撮影者/投稿者の撮影スキルの高さをリスペクトしているからです
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています/上記掲載写真はその引用で
転載ではありません。

一段目
まさかこのモデルで「真円のシャボン玉ボケ」が表出するとは全く想定しておらず、実写を調べてオドロキでした。左端からシャボン玉ボケが破綻して崩れ円形ボケへと変わっていく様をピックアップしています。おそらくハレ切りなどちゃんとフードを装着して光加減をみてあげれば「もっと輪郭が繊細な大変美しいシャボン玉ボケ表出が期待できそう」なのか、嬉しい誤算だったりします(笑)

二段目
この段では敢えて収差ボケの範疇で捉えた円形ボケをピックアップしていますが、本格的を越えて少々キツメのグルグルボケが現れます(驚) グルグルボケの雰囲気を含ませた/漂わせたとても上手い撮影スキルの左から2枚目の写真など、なかなかステキです。

三段目
この段ではピント面の印象を確認するつもりでピックアップしています。いわゆる誇張感が強めでコントラスト差が激しいピント面ではなく、自然で人の目で見たがままに近い印象を受ける安心したピント面の表現具合に好感が持てます。

四段目
この段では人物撮影に的を絞って実写をピックアップしましたが、左から2枚目はよ〜く考えたらマネキンですね(笑) 人肌感覚の表現性は如何でしょうか???・・少々苦手な要素なのかも知れません。

五段目
この段では街中のスナップ撮影を中心的にピックアップしましたが、それらスナップ写真で確認しているのは実は「陰影の表現性」だったりします(笑) 明部は開放f値が「f2」なので特に欲張らずとも、その恩恵がどの程度暗部に現れるのか、その耐性を調べたかったところです。

何しろ香港の写真をピックアップできたので嬉しい限りです・・この街並の感じがとても懐かしいですね(涙) ッて言うと感傷に耽っているようにも受け取られがちですが、実は当時の香港の街中は大通りや脇道に限らず「とにかく独特な臭い (正直な話臭い)」が充満していて、一年中その中で暮らしているので当然ながら現地人 (広東人) は気にしません(笑) 何しろスコールが激しく、雨雲の塊が小さく視認でき、その雨雲が段々近づいてくるとすぐに凡そ30分くらいで「ザザーッ!」と大粒のスコールになり、土砂降りになります(笑) ッて思っているとものの5分くらいでジリジリと腕が焼かれる感じの日射しを浴びている始末で、アッと言う間に着ている服も乾きます(笑) 一年中高湿度の中になり、特に当時は道端での用足しなども当たり前だったので、いわゆる「そういう臭い」の臭さです(泣)

六段目
ここでは被写体の素材感や材質感を写し込む質感表現能力の確認としてピックアップしています。何しろ画の中心域は鋭く写るものの、アウトフォーカス含め周辺域の収差落差が激しいので(笑)、それをある意味愉しみながら撮影するのがこのモデルの素晴らしさを感じられる使い方のようにも感じます(笑) その意味で見ると、実はピント面の臑土盛んはもっと凄いハズなのですが、意外にもこれら実写では質感表現能力の高さ感がちょっと期待ハズレです(泣)

七段目
この段では明部の確認としてグラデーションをチェックしています。やはり開放f値をムリしていない分、外壁のグラデーションも美しく残せていてたいしたものです。やはり時代的にここまでの段で見てくると「白黒写真」でのグレースケール世界に於ける256階調のカラー成分振り分けで同じシ〜ンでも表情がガラッと変化するのがとても楽しい印象です・・白黒写真ファンにはお勧めです。

八段目
長くなりましたが、ここでは光源を含んだ時の写り具合を確認するつもりでピックアップしています。但し左端だけは「赤色の発色性」の確認として選択しています。ハレーションも如何でしょうか、最近はシャボン玉ボケと同じようにハレーションにこだわる人が多くなっていますが、当方は基本的にハレーションの何処が魅力なのか理解できていないので、よく分かりません(笑)

光学系は3群6枚の典型的なゾナー型構成です。現在ネット上で確認できる構成図から当方によりトレースした光学系構成図が右図です。

確かに3群6枚ゾナー型ですが、今回このモデルをバラしてみると、鏡筒のコンパクトさから計測した時に右構成図の各群間隔に広がり
ません。逆に言うとこの間隔で各群との空間を備えた標準レンズなら「相応に大振りな鏡筒サイズのモデル」ではないかとみています。

右構成図は今回のオーバーホールで完全解体した際に光学系の清掃時、当方の手によりデジタルノギスを使い逐一全ての群の光学硝子 レンズを計測したトレース図です。

とにかく鏡筒サイズがコンパクトなので、光学系第1群前玉との間隔もほとんど直下に第2群3枚貼り合わせレンズが来ています (ちゃんとスペースを計測したのでほぼ間違いない/第1群裏面とは非接触)。

合わせて最短撮影距離が45cmに採ってきている光学設計からみても、各群との距離を空けていくと、相応に大型化した鏡筒にならざるを得ず、或いは相当な高屈折率の光学硝子材が必要になっていくのではないかと、光学系知識が皆無なのに考察したりしています(笑)

とにかく現物を見れば一目瞭然ですが、最短撮影距離:45cmまで繰り出すのに「この小ささはアリかョ?!」と思うほどにコンパクトな筐体です(笑) なお絞りユニット内部に「トラップ/仕掛け爆弾」が仕掛けられていたので(涙)、光学系第2群と第3群との間の距離は、ご覧のように詰まっています(泣)

まぁ〜自分で計測しているので当然な話ですが、このコンパクトな光学設計はある意味納得
ですね(笑)

いずれにしても当時の写真雑誌などの検証テストでも、このモデルはNikonやCanonなどの「50㎜/f2」クラスに於いて、充分互角に闘える素晴らしい描写性能を有するモデルとの評価を得ており、確かに社自体は1959年時点で倒産してしまうものの、なかなか価値のあるモデルではないかと受け取っています・・せっかくなら無名ながらも三鈴光学工業製の「Altanon H.C. 5cm/f2 (L39)」のほうが、より市場流通数が少なく手に入れば眺めている
だけで溜息モノかも知れません(笑)

貼り合わせレンズ
2枚〜複数枚の光学硝子レンズを接着剤 (バルサム剤) を使って貼り合わせて一つにしたレンズ群を指す

バルサム切れ
貼り合わせレンズの接着剤/バルサムが経年劣化で剥離し始めて白濁化し薄いクモリ、或いは反射が生じている状態

ニュートンリング/ニュートン環
貼り合わせレンズの接着剤/バルサム剤が完全剥離して浮いてしまい虹色に同心円が視認できる状態

フリンジ
光学系の格納が適切でない場合に光軸ズレを招き同じ位置で放射状ではない色ズレ (ブルーパープルなど) が現れてエッジに纏わり付く

コーティングハガレ
蒸着コーティング層が剥がれた場合光に翳して見る角度によりキズ状に見えるが光学系内を透過して確かめると物理的な光学硝子面のキズではない為に視認できない

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。今回初めての扱いですが、バラしてみると内部構造や各構成パーツの造り方、或いは設計概念などいずれも「今まで扱ってきた数多くの田中光学製モデルに共通」であり、もう少し簡素化/合理化できなかったの???と考えられる与件も相変わらず見受けられますが、今回のモデルには明らかな「トラップ/仕掛け爆弾」が仕掛けられていました(涙)・・真に悪者なのは「過去メンテナンス時の整備者」なのは間違いありませんが、基を正せば「その設計はやめようョ・・」なのがホンネなので(泣)、真に唸ってしまいます。

↑上の写真はその「トラップ/仕掛け爆弾」とは一切関係ない写真ですが、当初バラして始めて取り出した光学系第2群の3枚貼り合わせレンズがモールド一体成形されている「光学系前群格納筒」です。

赤色矢印で指し示している箇所には本当に執拗に「反射防止黒色塗料」が厚塗りされており、特にヤバいと感じたのは「光学系第1群前玉の格納箇所、その内壁にまで塗りまくっていた」事です(怖)

上の写真で中央に光学系第2群の3枚貼り合わせレンズがモールドされて写っていますが、その直上に「それこそ接触するのではないか???」と恐れおののくくらいの近距離で(笑)、前玉が入るので「その為の格納箇所が削られて用意されている」のが分かります (左側上の赤色矢印が指し示す位置)。

この格納箇所の内壁に「反射防止黒色塗料」を塗られまくると、肝心なその前玉は「コバ端にまで反射防止黒色塗料が塗られている」ワケで、必然的に格納の際に「2層分の反射防止黒色塗料の厚みが加味される」話に至ります。

・・何を言いたいのか???

つまり製産時点ではせいぜい前玉のコバ端にしか着色していなかったものの、プラスして格納する位置の内壁まで塗ってしまうと「光学硝子に対する圧が経年で加わり続ける」事になります(怖) 当然ながら、今回のバラし作業でも前玉は一切取り出せず、仕方なく「加熱処置」したものの、それでも取り出せないワケで、毎度の事ながらこのような過去メンテナンス時の整備者による「自己満足大会」にはホトホト付き合いきれません!(涙)

やはり当方が気になって仕方ないのは「設計時点で想定していた以上の (必要以上の) 圧が経年で加わり続ける」点に於いて、当時精製された光学硝子レンズとしても「はたしてその耐用年数はどうなのか???」との恐怖感に苛まれます(怖)

よくバラしていると「コバ端が一部欠けてしまっている光学硝子レンズ」に出くわしたりしますが(涙)、まさに過去メンテナンス時に着色された「反射防止黒色塗料」のせいで光学硝子レンズ取り出しの際に「その圧に耐えられずに欠けていく」からこそ、既にバラした時点で細かく欠けてしまっているのです(涙)

・・当方はそういうのを「ヨシ」とは考えられませんね(涙)

↑こちらも同じ話ですが、取り出した光学系第3群の2枚貼り合わせレンズで、要は後玉です。同様コバ端に「反射防止黒色塗料」が何度も厚塗りされているのが分かります (一部が剥がれて下地がさらに表れている)。ちょうど右下側の赤色矢印で指し示している箇所の右側に2層の「反射防止黒色塗料」着色が判明します。

つまりこの個体は過去メンテナンスが2回執り行われていて、その都度「反射防止黒色塗料」が着色されていたのが分かります。

ちなみにこの第3群の2枚貼り合わせレンズは光学設計上「写真上側に位置する第6群 (後玉) とその直下第5群との外径サイズが違う」のが判明します。

ところが肝心な後群側格納筒の内壁にはこのサイズが異なる分を補う要素が皆無なので (つまり内壁はストンと上から下まで平面のまま) 必然的に格納すると上の写真のとおり「サイズが小さいほうのコバ端に隙間ができるので、反射防止黒色塗料が塗られていると経年で酸化/腐食/錆びが進行してしまう」次第です(涙)

上側の光学系第6群 (後玉) のコバ端がバタバタと凹凸が激しいのは汚れやゴミではなく「塗られた反射防止黒色塗料に繁殖しているカビ菌」であり、これがはたしてどのように受け取られるのかを考えた時、いったい何の意味があるのか毎回ながら不思議で仕方ありません(笑)

さらに言うなら、このように外径サイズが異なる要素をネット上の光学系構成図では一切含んでいません(泣)・・もちろん当方がトレースした構成図では、分かりにくいですがこの段差分をちゃんと計測してトレースしています(笑)

このように指摘すると「公然とウソを拡散している」と誹謗中傷の嵐なので(笑)、いちいち証拠写真を撮らないとイケナイらしいです(笑)

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒ですが、冒頭解説のとおり「とてもコンパクトな鏡筒サイズ」であり、合わせて内側内部の最深部に写っている「内壁に白っぽい線が写っている箇所」は実は僅かな段差になっていて「位置決め環が格納される場所」ですから、ここに絞りユニットがセットされるとなれば「その前側のスペースが意外にも少ない/深さが少ない」からこそ、冒頭の光学系構成図のところで解説したとおり、前玉と第2群の3枚貼り合わせレンズとの距離が空いている余裕が無いのが分かります。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

絞り羽根開閉幅
絞り羽根が閉じていく時の開口部の大きさ/広さ/面積を指し、光学系後群側への入射光量を決定づけている

↑すると、ここで既に気づいていなければ「整備者として如何なモノか???」との整備スキルの話に至りますが(笑)、一つ前の写真を見ただけで「あッ!」とヤバい気持ちが湧き上がらなければ、そもそも前述してきた「トラップ/仕掛け爆弾」が仕掛けられていたと言う話が全く理解できません(笑)

このモデルの絞り羽根は「位置決めキー側がプレッシングで三本の線を一度に打ち込んでめくれ上がった3枚の羽根をキーの代用とした設計」なのです!(驚)

一般的に多いのは「十字でプレッシングする事で切断されてプレスされると反対側に4枚の羽根が飛び出てくる」ので、いわゆる「4枚の羽根をキーの代用とした設計」が多いのですが、今回のモデルはどう言うワケか「敢えて3枚に減じている」のです(驚)

それでフッと思い出したのが同じ田中光学製の初期モデルたるTANAR 50mm/f2.8 (L39)」だったりします(泣) 当方のオーバーホール作業自体がだいぶ昔なので (2016年) 技術スキルが相当低い頃ですが、やはり「プレッシングで折り返しの羽根をキーの代用とした設計」でした(涙)

これがどうして「トラップ/仕掛け爆弾」なのかについてここから少し解説していきます。

上の写真はその「折り返しの羽根をキーの代用としている」位置決めキー側を3枚の絞り羽根で並べて撮影しています (つまり鏡筒内に組み込む際は裏側に当たり前玉側のほうから見えない面)。

この絞りユニットの構成パーツとして捉えた時に「裏側に当たる面」と言う要素について確実に認識できているか否かが今回の個体の過去メンテナンス時での処遇を掴めるか否かの分かれ道です・・これが理解できなければ、過去メンテナンス時にどんな事をされてきたのかが分かりません(涙)

・・マジッで可愛そうです!(涙)

上の写真では3枚同じ面の「絞り羽根の裏面」で位置決めキー側を並べて撮影していますが、よ〜く観察すると「の中で折り返しの羽根の状態が全部異なる」のが分かります。

今回のモデルはどう言うワケか「十字の切り込みではなく3線の混じり合いによる切り込み」なので、3枚の折り返しバネが出現します。

ところが上の写真は「本来存在するべき折り返しの羽根が1枚も無い!」(驚) 状態で、本当に拡大撮影すると「辛うじて1枚分の根元だけが残っている」状況です(涙)

さらにはちゃんと3枚の折り返しバネが突出しているものの「キレイな三角ではない歪なカタチ」です。最後のがワリと正しい状態で残っていて「ちゃんと同じ大きさの折り返し羽根が3枚備わる」状況です。

↑さらにまた別の1枚を拡大撮影しましたが、赤色矢印で指し示している2枚の折り返し羽根はほぼ正しい機能を果たす状態で残っていますが、グリーンの矢印で指し示している1枚だけは「根元部分しか残っていない!」ので、キーの代用としての羽根の機能を果たしません(怖)

↑今度はまた別の絞り羽根をひっくり返して裏側の位置決めキー側を撮影しています。同様赤色矢印で指し示している折り返し羽根はキーの代用として充分機能する良いカタチで残っていますが、グリーンの矢印で指し示している折り返し羽根は「やはり根元部分だけに等しい」のが分かり、さらにヤバいのがオレンジ色矢印で指し示しているほうの折り返し羽根で「穴がさらにめくれて折り返しバネのカタチ自体が大きく変わってしまっている」状況です(怖)

つまり過去メンテナンス時に「この大型のカタチに変わってしまった羽根だけで位置決めキー用の穴に刺さっていた」ワケで、他の羽根は代用キーとして全く機能していなかった事になります (少なくとも赤色矢印の羽根はちゃんと機能するのにオレンジ色矢印の羽根が特大過ぎて意味が無くなってしまったと言う意味)。

ではどうしてこのようないい加減な状態にそれぞれの折り返し羽根が変質してしまったのでしょうか?

↑それを示す「証拠」が上の写真の解説です(涙) 鏡筒最深部にセットされるべき絞りユニットを構成するパーツで「位置決め環 (左) と開閉環 (右)」です。「開閉環」の前に一つだけ空いているネジ穴は「開閉キーがネジ込まれる場所」で絞り化と連結します (グリーンの矢印)。

一方ブルーの矢印で指し示している箇所に残っている「イモネジで締め付けた痕跡」がまさに「証拠写真」になり(涙)、この「位置決め環」は鏡筒最深部にハマッて「全周を均等に鏡筒側面からイモネジ3本で締め付け固定する」設計です。従って、この位置決め環の外縁部には全部で確かに3箇所のイモネジ締め付け痕が残っていますが、問題なのは「一度も外していないのが分かる痕跡」なのです(涙)

この位置決め環が製産時点に鏡筒最深部に落とし込んでイモネジで締め付け固定されてから今日まで一度も外されていないのが分かるのです。

これが意味するのは「過去メンテナンスが最低でも光学系第3群の2枚貼り合わせレンズコバ端着色で2回は実施されているのが分かる」ものの、その過去メンテナンス2回は「位置決め環を外さずに絞り羽根を取り出していた」事になります。

何故なら、前述のとおり「プレッシング時に切り込みを入れて折り返してキーの代用としている折り返し羽根」なので、もしも絞り羽根を強制的に引っぱって取り外すと「折り返し羽根が曲がって変形する、或いは折れてしまう」ので「必ず絞り羽根を取り外す前の段階で位置決め環を取り出して絞り羽根の清掃作業を行うべき」なのです!

つまりこのような折り返し羽根でキーの代用とするモデルの場合「できるだけその折り返している羽根はイジらないほうが耐性が極度に低い」と明言できるのです(泣)

そのような対処をちゃんと正しく執っていなかった事が、このブルーの矢印で指し示しているイモネジの締め付け痕で露わになってしまいました(涙)

従って、ムリに/強制的に絞り羽根を引っこ抜いて清掃していたので「折り返し羽根が変形したり折れてしまった」のが今まで解説してきた位置決めキーの羽根部分の状況なのです(涙)

・・ロクな事をしません!!!(怒)

実際は、今回バラしている最中に「折り返し羽根でキーの代用としている設計」なのを全く知らないので (今回の扱いが初めてなので当たり前です)、鏡筒をひっくり返して絞り羽根がパラパラと落ちてくると思ったら「数枚しか落ちてこずに何枚かは僅かに斜めッたままブラ下がっている」状況でした。

それを見てすぐに「あ”ッ!」と冷や汗です!(怖)・・コイツ折り返し羽根の設計だ!(驚)・・とようやく気づいた次第で、どんだけ当方の技術スキルが低いのかを物語っています(笑)

結局、9枚実装される絞り羽根のうち「6枚の折り返し羽根について、各々3枚の羽根突出が無く機能していない状況」だったのです(涙)

その後に拡大撮影したりしつつ折り返し羽根の状況をチェックしていくと「3枚の絞り羽根が均等に穴に刺さらない状況 (つまり羽根として1枚〜2枚しか機能していない)」で、その他「2枚が破断 (そもそも羽根がもう存在していない単なる穴状態)」1枚だけが何とか1枚だけ羽根が生き残っている状態でした(涙)

実は当初バラす前の確認時点で「開放にして覗き込むと完全開放せずに絞り羽根が2枚顔出ししている状態」だったのを視認していたので、この2枚の絞り羽根について「位置決めキー代用の折り返し羽根が欠落している状態」なのも納得なのです(涙)

いずれにしても、その2枚も含め何とか「9枚全ての絞り羽根で裏面の位置決めキーを機能させないとキレイな円形絞りで閉じていかない」話に至ってしまった次第です。

・・これこそが隠されていた「トラップ/仕掛け爆弾」でありハメられたのです!(涙)

逆に言うなら、今回バラしているのは当方なので(笑)、仮にちゃんと正しく絞り羽根が駆動しない状態のまま組み上げたら「ご依頼者様はいったいどのように思いますか???」と考えれば自明の理です(涙)

・・オマエの整備が悪いからこんな事に遭ってしまった!!!

とまるで事故や災難にでも遭遇したかの如く、徹底的に詰めてくる人が居たりします(怖)
結局何だかんだ言ってもバラした張本人たる当方が最後は悪者にならざるを得ないのです(笑)

だから今回のこのような状況を以てして「不条理にもハメられてしまった!」と過去メンテナンス時の整備者を恨んでいる次第です(笑)

↑結局、4時間ほど時間を掛けて「いったいどう処置すれば折れてしまった/単なる穴になってしまった位置決めキー側を復元/再生できるのか???」との課題をあ〜だこ〜だ考えて、ようやく6時間後に撮影できた「最深部に絞りユニットを組み込んだ鏡筒」の写真です (前玉側方向から撮影しています)(笑)

見えている側は「開閉キー」なので、この裏面側が大騒ぎだったワケですし、9枚のうち6枚が正しく絞り羽根の角度が変化していかない「正直限りなく製品寿命状態の個体」だったのです(涙)・・ヤラれましたねぇ〜(笑)

↑完成した鏡筒を立てて撮影しました。写真上側が前玉方向にあたります。側面には赤色矢印で指し示している箇所に、絞り環との連結孔/切り欠き/スリットが空いており、ここに開閉
キーが介在して絞り環と連結します。

またグリーンの矢印で指し示している箇所にも溝が用意されていますが、この溝は鏡胴「前部」の固定位置を確定させる目的なので「このモデルの鏡胴前部は固定位置を変更できない
設計
」なのが分かります。

↑絞り環をセットしましたが、単に締付環で締め付けしているだけなのでまだ鋼球ボールなどのクリック感を実現する機構部は組み込まれていません。

↑この状態でひっくり返して内部を撮影しています・・後玉側方向からの撮影です。すると絞り環の裏側に「絞り値キー」と言う溝が刻まれているのが分かります (但しまだ鋼球ボールは入っていないのでこの状態で絞り環操作してもクリック感がない)。

既に締付環で締め付け固定してありますが、その両サイドに「ネジ穴が空いている」のをグリーンの矢印で指し示しています。このネジ穴は「締付環と鏡筒の両方を跨いでネジ穴が切削されている」特別なネジ穴なので、このネジ穴がちゃんと真円になる位置で締付環を固定していないと「締付ネジをネジ込む事ができなくなる」設計です(泣)

ちなみにブルーの矢印で指し示しているのが大変だった「位置決めキーの欠損箇所の復元/再生」です(笑)

↑鋼球ボール用の環 (赤色矢印) に鋼球ボールとスプリングを入れ込んでからセットして「締付ネジで締め付け固定」すると、ようやく絞り環が完成します (グリーンの矢印)。

従ってこの時前述のように「ネジ穴の位置が真円になっていないとこの両サイドの締付ネジが全くネジ込めない」ワケです(笑)・・もう少し簡単な設計にすれば良かったと思うのですがね。何でこんなにこの部位にこだわって複雑な設計にしたのか正直全く「???」です(笑)

↑フィルター枠を組み込みます。赤色矢印で指し示しているとおり基準「」マーカーが絞り環の刻印絞り値とクリック感を感じる場所でちゃんと合致します。なおフィルター枠の1箇所にキズがあり、おそらく打痕の修復箇所だと思いますが「ネジ山が僅かに変形していた」ので修復しています。フィルターなどをネジ込む際は多少ネジ山が咬み合うのを確認してからゆっくりとネジ込んでいって下さい。真鍮 (黄銅) 製/ブラス製なのでムリにネジ込むとカジリ付いてしまいます (カジリ付くとネジ山の溶解が起きるので外せなくなる)(怖)

↑鏡胴「前部」が完成したので今度は鏡胴「後部」の組み立て工程です・・と言ってもヘリコイド群だけなので簡単ですね(笑) マウント規格が「L39マウント」なので距離計連動ヘリコイドを有し、且つ筐体がコンパクトな設計なので最短撮影距離:45cmまで繰り出す素晴らしい仕様ながらも「空転ヘリコイドを活用して小さく造る努力をしている」のが分かります。

なお、当初バラして溶剤で洗浄した直後は、これら内部構成パーツのうち「黄銅製パーツ」に限って経年劣化に伴う酸化/腐食/錆びにより表層面が変質していて「焦茶色」です・・当然ながら上の写真のようなピッカピカではありませんね(笑)

↑マウント部の内側に「空転ヘリコイド」が入るので、グリーンの矢印で指し示している箇所
全てが「平滑面仕上げ」必須です。過去メンテナンス時にはここに「潤滑油」が入れてありましたが(笑) おかげで当初バラす前の距離環を回すトルクはツルツル状態だったので(笑)、今回の
オーバーホールでは敢えて「グリースを入れてトルクを与えた」次第です(笑)

このようにトルク管理/制御とは「単に軽く仕上げるためだけ」ではなく、むしろピント合わせ時のピントのピーク/山の状況次第では「逆にトルクを敢えてシッカリした重さ」に仕上げたほうがピント合わせし易い場合もあったりします。もちろん「シッカリした重さ」と言っても掴んでいる指の腹に極僅かなチカラを伝えるだけでピント面の前後微動が適う程度の話なので、そういう細かい配慮こそが「撮影に没頭できるありがたさ」なのだと確信しています(笑)

↑トルクを与えて/重く仕上げて「空転ヘリコイド」を封入したところです。どうしてここで敢えて「封入」と言うコトバで表現しているのかと言えば、それはこのパーツ「封入環」をちゃんと細かく観察すれば「裏側の一部に平滑面が備わる設計」なのが判明するので、その「平滑処理」を施して締め付ける/封入する次第です。

当初バラした直後のように「封入環から潤滑油が滲み出ている状況」には成り得ません・・
何故なら、塗布したグリースはこの封入環の硬締めによる締め付けで完璧に封入され、外に
滲み出ないよう「カタチを考慮して設計してある」のがこの封入環の裏面を観察すると分かります。

逆に言えば、他の部位で使っている「締付環」の裏面とは全く異なるカタチで造られていて、その原理は「平滑面が互いに接触しているから滲み出ない」ワケで、そんなのは数多くの工業製品で常識です(笑) それを以てして、当方ではこの締付環を指して「封入環」なのだと判定を下した次第です (ちゃんとコトバの根拠が在る)(笑)

それを怠ると「粘度のあるグリースを塗布した時にこの封入環のせいで抵抗/負荷/摩擦が増大してしまいトルクが極端に重く変わる」ので、確かに「潤滑油」を使いたくなりますね(笑)

それはそうです。いくら「空転ヘリコイド」と言っても、それを現実にしているのは「平滑面が存在するから」であり、合わせて「別のパーツと接触する面の互いが平滑処理だから」とも言い替えられ、要はちゃんと「観察と考察」をしないから過去メンテナンス時には適切な組み立てが適っていなかっただけの話です(笑) 「平滑処理」により、今回のオーバーホール工程では「敢えてトルクを与えて重めのグリースを塗布」できました (それでも軽いトルク)(笑)

↑距離環のローレット (滑り止め) とツマミに「距離計連動ヘリコイド」を組み込んで鏡胴「後部」が完成したので、この後は完成している鏡胴「前部」をセットして無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。

DOHヘッダー

ここからは完璧なオーバーホール/修理が完了したオールドレンズの写真になります。

↑完璧なオーバーホール/修理が終わっています。グリーンの矢印で指し示している箇所のフィルター枠ネジ山が極僅かに変形しているので修復しています。フィルターをネジ込む際は確実にネジ山が咬むのを確認してから慎重にゆっくりネジ込んで下さいませ。

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射もコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無です。「気泡」が大小含んでいるのが視認できます。最短撮影距離位置で大きめの竹を表出した写真など撮影した際には「その玉ボケの内側にこの気泡の点がポツポツと写り込む」懸念は残りますが、そういうシ〜ンは相当少ないでしょうか(笑)

絞り環はクリック感を感じる位置でちゃんと「開放f値f2.0」にセットして撮影していますが、ご覧のように完全開放せずに「2枚の絞り羽根が顔出ししている状況」で、当初バラす前の時点と同じです。従っておそらく「2枚の絞り羽根で開閉キー側のプレッシングされている金属棒/キーが垂直を維持していない」のではないかとみていますが、確認できません。

また位置決めキー側の6枚については「再生処置を施した状況」なので、閉じていく時に完璧な円形絞りを維持できません(泣)・・この点も当初バラす前の状況と同じです(泣)

気泡
光学硝子材精製時に、適正な高温度帯に一定時間到達し続け維持していたことを示す「」と捉えていたので、当時の光学メーカーは正常品として「気泡」を含む個体を出荷していました (写真に影響なし)。

なお、このモデルの光学系は第2群の3枚貼り合わせレンズと第3群の2枚貼り合わせレンズの2つで「白紙に翳すと僅かに黄変化しているように見える」ものの、放射線量を測定すると、光学系第1群前玉〜第2群3枚貼り合わせレンズの2つの群で「0.05μ㏜/h以下」の測定値で、合わせて光学系第3群の2枚貼り合わせレンズは「0.07μ㏜/h」とやはり一般的なオールドレンズ同様の測定値をとる為、光学系内が黄ばんで見えるのは「コーティング焼けの類」と判定を下す事ができます。

↑後群側もコバ端でいろいろ在りましたがキレイになり光学系内はスカッとクリアです。

↑取り敢えず9枚中6枚も位置決めキー側を復元/再生した状況ですが、完全な円形絞りにはならないものの機能してはいます・・申し訳御座いません。さすがに折り返しの羽根相手で、且つ既に折れたり破断しているのの処置は、その改善も限られてしまいます(涙)

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。

詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。

↑塗布したヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」を使い全域に渡り完璧に均一なトルクで仕上げています。当方独自のヌメヌメッとしたシットリ感漂うトルクに仕上がっており、このモデルのピント面はピーク/山がスパッと突然現れるので、掴んでいる指の腹に極僅かなチカラを伝えただけでピーク/山前後の微動が適います(笑)

指標値などが溶剤での洗浄で褪色したので再着色しています。また絞り環のクリック感位置も可能な限り基準「」マーカーに合致させていますが、どう言うワケか「最小絞り値側だけズレている」仕上がりです。これも前述のとおり位置の微調整機能が設計されていません。

↑ご覧のように絞り環用の基準「」マーカーと鏡胴側基準「▲」マーカーの位置は縦方向で一直線上に並びません・・その理由は前述した「鏡胴の固定位置の溝が決まっている設計なので縦方向の位置合わせができない設計 (必ずこの位置で組み上がる)」です。

オーバーホール/修理ご依頼者様皆様に告知しているとおり、もしもお届けしたオールドレンズの仕上がり状況にご満足頂けない場合は、そのご納得頂けない要素に対して「ご納得頂ける分の金額をご請求金額より減額」下さいませ。
減額頂ける最大値/MAX額は「ご請求金額まで (つまり無償扱い)」とし、大変申し訳御座いませんが当方による弁償などは対応できません・・申し訳御座いません。

オーバーホール/修理ご依頼者様向けにご依頼者様と当方の立場が「50 vs 50」になるよう配慮しての事ですが、とても多くの方々が良心的に受け取って頂ける中、今までの12年間で数人ですが日本語が口語として普通に語れない、おそらく某国人に限ってここぞとばかりに「無償扱い」される方もいらっしゃいます (漢字三文字、或いは漢字とカタカナ表記を合わせて含むお名前様だけで確定判断はできませんが)(笑)

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離45cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2.8」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f4」で撮影しました。

↑f値は「f5.6」に上がっています。

↑f値は「f8」になりました。

↑f値「f11」です。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。もうほとんど絞り羽根が閉じきっている状況なので「回折現象」の影響が現れています。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。

今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。引き続き次の3本目の作業に入ります。どうぞよろしくお願い申し上げます。