◆ Kamerabau-Anstalt-Vaduz (カメラボウ・アンシュタルト・ファドゥーツ) Kilfitt-Makro-Kilar D 4cm/f2 silver ・・・(M42)
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※解説とオーバーホール工程で使っている写真は現在ヤフオク! 出品中商品の写真ではありません
今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、カメラボウ・
アンシュタルト・ファドゥーツ製マクロレンズ・・・・、
『Kilfitt-Makro-Kilar D 4cm/f2.8 C silver ・・・ (M42)』です。
当方の愛用マクロレンズでもある希少価値の高い「Makro-Kilar」シリーズの中から、今回 オーバーホール済で出品する個体はその第2世代にあたるモデル「タイプD」になります。
汎用的に人気な「M42マウント」で最短撮影距離「僅か5cm」さらにこれ だけコンパクト (本当に小さい筐体) でしかも本体だけで「1:1等倍撮影」ができてしまう (延長筒など必要なし) 唯一無二のマクロレンズを「これだけ軽い操作性」なのが信じられない!・・と言う仕上がりでの出品です(笑)
この「Makro-Kilar」シリーズはそのタイプ別を分けるとき全部で3種類に分類できます。
【モデル・バリエーション】※それぞれのタイプ別はレンズ銘板の中に刻印されている
(1) 撮影倍率で分ける場合 (全2種類)
● 1/2倍撮影 (ハーフマクロ)
タイプEとタイプAの2種類
鏡胴が一段だけで繰り出し/収納するタイプ
回転式ヘリコイド駆動のシングルヘリコイド
(タイプAのみ二段階のダブルヘリコイド駆動)
鏡胴が二段で繰り出し/収納するタイプ
回転式ヘリコイド駆動のダブルヘリコイド
(2) 開放f値で分ける場合 (全2種類)
● 開放f値:f3.5 (1955年発売モデル)
タイプEとタイプDの2種類
ヘリコイド繰り出しが一段と二段の2種類ある
筐体外装の意匠は角張った印象のモデル
● 開放f値:f2.8 (1958年発売モデル)
タイプEとタイプD、及びタイプAの3種類
ヘリコイド繰り出しが一段と二段の2種類ある
筐体外装の意匠は丸まったイメージ
(3) 筐体の厚みで分ける場合 (全3種類)
● 最も厚みがあるタイプ (1955年発売モデル)
タイプEとタイプDの2種類
ヘリコイド繰り出しが一段と二段の2種類ある
筐体外装の意匠は丸まったイメージ
● 厚みが中程度のタイプ (1958年発売モデル)
タイプEとタイプDの2種類
ヘリコイド繰り出しが一段と二段の2種類ある
筐体外装の意匠は丸まったイメージ
● 厚みが最も薄いタイプ (1960年発売モデル)
タイプAのみ
ヘリコイド繰り出しが二段階 (但し1/2倍撮影)
筐体外装の意匠は丸まったイメージ
・・とこんな感じで少々複雑ですが、この中で注目すべきは中段の 部分「タイプD」です。
そもそもこの「Makro-Kilar」シリーズが世界初のマクロレンズとして登場したワケですが、実はその後発売されたマクロレンズは現在まで「単体で1:1等倍撮影が存在しない」と言う状況で、たいていの場合「延長筒/エクステンション」をさらに付け足して倍率を上げる方式の設計ばかりです。
元来この「Makro-Kilar」シリーズは大変コンパクトな筐体サイズなのですが、それでいて1:1の等倍撮影ができるマクロレンズとなればもぅそれだけで希少価値が跳ね上がるワケ ですね(笑)
さらに最短撮影距離でみると「タイプD」は何と被写体に5cmまで近寄れますから、そうなるとほとんど被写体にくっついて撮影するようなイメージです(笑)
これはこのマクロキラーが非常に優れた光学設計だから等倍撮影ができたと言う評価よりも、実は諸収差の改善を妥協して倍率にこだわって光学設計したから実現できてのではないかと 考えています。と言うのも光学系は全てのモデルで3群4枚の典型的なエルマー型構成だからです。確かにこの後に登場するマクロレンズも多くのモデルで似たようにエルマー型の構成を実装してきますが、解像度や諸収差の改善のほうに重点を置いた光学設計を採っていると考えます。
またレンズ銘板を見た時に「●●●」の3色のドット刻印がある個体と省かれている個体の2つが確認できます。この3色ドットが意味するところは「色収差を厳密に補正したアポクロマートレンズ」になりります。
これは光学系内に入ってくる入射光を3つの波長で捉え、その屈折率の違いを利用して厳密に補正効果を与えた (焦点位置を重ねた) 色収差補正の事を「アポクロマート」と言います。何故なら補正を講じない限り入射光は波長なので紫外線から赤外線までの間でそれぞれ波長が異なります。
するとその異なる波長が影響して合焦位置が光軸に対して波長の長短でズレてきます。結果ピント面に色ズレが生じて解像度も低下してしまうので、それを厳密に合焦点を一致させる光学設計を執ったのが「アポクロマートレンズ」なのです。従って必然的に当時の価格でも非常に高価なオールドレンズでした。
ちなみに当時は入射光 (自然光) を3色の「赤青黄」として波長を分けて捉えていますが、今ドキのデジタルで捉えれば「赤緑青」の「RGB」ですが、近年では輝度を上げた「RGBY」の4色で処理しています。輝度 (明るさ) を明るくするのに「白色」を使うと思い違いしている人が居ますが、白色を強くすると画全体のコントラストはむしろ低下してしまい「白っぽい写り」に堕ちてしまいますね(笑)
従って輝度 (明るさ) を明るくする為に「黄色」を使っているワケです。これらの3色の色分けを指して総天然色を表現する上での「色の三原色」と定義しています (各色の濃淡の相違で総天然色を表現できるから)。
するとここで気が付くかも知れませんが、オールドレンズのコーティング層を光に反射させて見たときに「アンバー色」に見えたり「パープル」に見えたり、或いは見る角度によって「グリーン色」の光彩を放つオールドレンズもあったりします。
しかし「レッド」の光彩を放つオールドレンズは非常に少ないですね(笑) つまりは波長の相違でそうなるワケですが、紫外線側の波長のほうが最も短くなる為に赤外線側とその次に来るアンバー系の波長とは隣接している関係から波長が近いので「パープル」でコーティング層を蒸着すれば両方の波長に対して効果を発揮できます。
ところが「ブルー」が波長が短くて光学系内に入射してきたときに一番最初に減衰してしまいます。それを補う目的で一番最初のコーティング層として「ブルー」の透過率を上げていた (稼いでいた) のが初期の頃のオールドレンズなので、光に反射させると「ブルー」の光彩を放っていたりしますね。後の時代になると波長の異なる硝子材を組み合わせて使う事で紫外線側の波長をキープできるようになったので「パープル」だけで紫外線から赤外線までをカバーできるようになりました。
同時に光学系の開放f値を稼ぐ目的からやはり「黄色」の透過率をキープする目的で「アンバー系」のコーティング層も必要だったりするワケですね(笑)
このような事情から後には入射光の波長に対する補正効果の考え方が変化したので、当初は「赤青黄」の並び順だった「●●●」は「青赤黄」の並び順にに変わっており、おそらくそれに合わせて色補正効果もコーティング層蒸着が変化していると推察しています。
ちなみに「Makro-Kilar」シリーズの「●●●」ドット付モデルを光に反射させると前玉が「パープルブルーアンバー」に光彩を放っているのがちゃんと確認できますね。
↑今回出品の個体を完全解体した時のパーツ全景写真です。オーバーホール工程の解説などは「Kamerabau-Anstalt-Vaduz Kilfitt-Makro-Kilar E 4cm/f2.8 C ●●● (M42)」のページをご参照下さいませ。
ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。
ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。
↑完璧なオーバーホールが終わりました。この個体は絞りユニット内絞り羽根の油染みが相当長い間放置されていたようで、絞り羽根に油染み痕がだいぶ残っています。且つ酸化/腐食/錆びも多いので残念ながら絞り羽根が閉じていく際に相応に抵抗/負荷/摩擦が増大します。
その結果、絞り環のネジ山に塗布するグリースの粘性を「軽め」にすると途中で止まってしまう (固着) 為、仕方なく粘性の高いグリースを塗っています。従って絞り環操作は僅かにトルクを与えながらも軽い操作性に仕上がりましたが、絞り環よりもさらに重目のトルクで距離環側 (つまりヘリコイドオスメス) の粘性を塗ると「ピント合わせし辛いトルク感」に至ってしまいます。
何を言っているのか???
つまり距離環を回してピント合わせした後に最後にボケ味を微調整する絞り環操作を行う操作手順にしようとすると、絞り環操作を軽くできない分距離環を回すトルクを「相当重い」設定にしないと「絞り環操作時に距離環が微動しないようにできない」と言う話です。
このような仕上がりに調整して実際に組み上げたところ、とてもピント合わせし易いトルク感とは感じませんでした。特にこのモデルはマクロレンズですからピント面の微調整は頻繁に行うハズです。
従って「ピント合わせ後に絞り環操作する手順」を諦めて「絞り値を決めてからピント合わせする逆手順」で操作して頂くつもりで微調整を行い仕上げましたのでご留意下さいませ。つまり距離環を回してピント合わせしてから絞り環操作すると「絞り環を回すと同時に距離環まで一緒に回ってしまう」ワケです。
これは実は絞り羽根の設計上の問題なのですが、各絞り羽根に打ち込まれている「キー」の片側が非常に薄い (短い) 金属棒/突出量なので、その絞り羽根開閉に於いて「開閉環の被せ方」が設計として考慮されてしまったワケです。つまり本格的に接触面が多い状態で被さるので、10枚もある絞り羽根が重なり合うと相応の抵抗/負荷/摩擦増大となって絞り環側に伝わる次第です (だから絞り羽根の経年劣化状況にとも無い重いトルク感に至ってしまう)。
↑当初バラす前の状態では光学系内が全面に渡って水滴状に湿った感じに見え、且つ相応に白濁した状態だった為に実写しても濃霧の中での撮影にしか見えない写真でした(笑) 従って仕方ないので一旦光学硝子レンズを取り出して貼り合わせレンズを剥がした後に再接着しました (光学系第3群の後玉)。光学系内の透明度が非常に高い状態に改善されました。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。
↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。
↑光学系後群側も同様にLED光照射でも極薄いクモリが皆無です。後玉の貼り合わせレンズは前述のとおり一旦剥がしてから再接着したので当然ながらクリアに戻りました(笑)
◉ 貼り合わせレンズ
2枚〜複数枚の光学硝子レンズを接着剤を使って貼り合わせて一つにしたレンズ群を指す
◉ バルサム切れ
貼り合わせレンズの接着剤/バルサムが経年劣化で剥離し始めて白濁化し薄いクモリ、或いは反射が生じている状態
↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。
【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ:
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:11点、目立つ点キズ:7点
後群内:18点、目立つ点キズ:11点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(極微細で薄い2ミリ長が数本あります)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
(バルサムを一旦剥がし再接着しています)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・光学系内には大小の「気泡」が複数あり、一部は一見すると極微細な塵/埃に見えますが「気泡」です(当時気泡は正常品として出荷されていた為クレーム対象としません)。
・光学系内は透明度が非常に高いレベルです。
(LED光照射でも極薄いクモリすら皆無です)
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。
↑当初バラす前の時点で完璧に全ての絞り羽根がヒタヒタと油染み状態だった為に、ご覧のような「油染み痕」が相当残っています。また一部に酸化/腐食/錆びが発生しており除去できない為に絞り羽根が重なり合うと相応に抵抗/負荷/摩擦が増大します。
このような事情から絞り環操作は軽めに仕上げると途中で止まってしまうので、敢えて重めのグリースを塗布して仕上げています。従って絞り環操作は僅かに抵抗/負荷/摩擦を感じます (何も事前説明が無ければ十分軽い操作性だと感じてしまうレベルです/いわゆるスカスカ状態ではないと言う意味)。
パッと見で油染みのように見えてしまいますが、ちゃんと個別に10枚全ての絞り羽根を洗浄してあります。
ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。
↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人により「軽め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。
・距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
・回転式ヘリコイド駆動なので距離環を回すと絞り環も一緒に回転しながら繰り出し/収納をします。
ピント合わせ後に絞り環操作するとピント位置がズレてしまうので最初に絞り値を設定する使い方がベストです(設計上軽く改善できません)
【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
・当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。
↑このモデルは海外オークションebayでもなかなか「タイプD」が出回らないですが、他の「タイプE」にしても往々にしてヘリコイド駆動は重めに堕ちた個体が多かったりします。一つには解体の仕方が分からないので隙間からグリースを塗るくらいの整備しか過去にできていないという問題もあるかも知れません。
また仮に上手くバラせても無限遠位置をピタリと合わせて、且つ当然ながらその時のヘリコイド (オスメス) ネジ込み位置まで合致し、距離環刻印距離指標値との整合性を執ったまま組み上げられる技術スキルとなると、なかなか難しかったりします(笑)
従ってハッキリ言ってとても距離環を回すときの操作性云々を追求するほどの余裕が無い、というのが現実的な整備の時の話ではないかと思います(笑)
今回の個体は上の写真のとおりヘリコイドのネジ込み位置を散々調べましたが距離環の「∞」のライン位置まで距離環が回り切りません (∞の僅か手前位置で突き当て停止します)。一応この位置でちゃんと無限遠合焦を確認していますが、逆に言えば突き当て停止位置でピタリと無限遠が合っています (当方所有マウントアダプタ/K&F CONCEPT製)。
これは完全解体して各構成パーツを見ていったときに、人の手でマーキングが施されているのですが、一部にマーキングの数字が違うパーツがありました。ほとんどはこの個体の製造番号に由来しますが、一部に異なる数値がマーキングされていたので、もしかしたらこの個体は過去に「ニコイチ」された個体なのかも知れませんが不明です (数字の書き方が外国人によるので日本人の整備ではない)。
さらにやはり解体方法が分からなかったようで、内部に塗られていたグリースは相当年数が経過した状態で劣化が進行していました (黄褐色系グリースが使われていた)。
また距離環ローレット (滑り止め) に貼られているラバーも純正状態ですが、相当経年劣化が進行しており「ヒビ割れ状態」です (伸びも発生)。一応ちゃんと接着して固定していますが次の整備時はもう限界かも知れません (ラバーをよ〜く観察すると無数にヒビ割れしているのが分かる)。
今回のオーバーホールでは「ピント合わせのし易さ」を追求したのでおそらくほとんどの方が「軽い」と認識されるほどに軽い操作性で距離環を回せるよう仕上げてあります。確かに光学系は3群4枚のエルマー型構成ですが、そうは言ってもピント合焦時はピントのピークが分かり辛いので特に距離環を回すトルクが軽くないと使い辛くて仕方ありません (手指が疲れる)。
従って敢えて距離環の操作性を「軽め」に仕上げあるので、冒頭解説のとおり「絞り環操作は先に行う」点にご留意下さいませ。
なおフィルターを装着する時に使う本来の附属品「フロントベゼル」がこの出品個体には附属していません。
無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。
もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい。当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません。
↑当レンズによる開放f値での実写ですが、何しろ1:1等倍撮影ができるマクロレンズですから、フツ〜に撮ると何処を撮っているのかが分からなかったりします(笑) そこで一旦被写体から離れてワザと全景を撮っています。
↑ここからはこのモデルの最短撮影距離5cmまで被写体に近づいての実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。
各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありません。またフード未装着なので多少フレア気味だったりします。
↑f値「f11」です。そろそろ「回折現象」の影響が現れ始めています。
◉ 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。
◉ 被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。
もぅほとんど絞り羽根が閉じきっているような状態なのですが(笑)、それでもご覧のようにピント面の背景部分にはまだボケが生じていますから、如何にアウトフォーカス部がすぐに破綻して滲んでいく性格なのかがご理解頂けると思います。
また後の時代に登場する数多くのマクロレンズが (1/2撮影のハーフマクロですが) さらに格段にピント面のアウトフォーカス部の滲み方を滑らかに柔らかく表現しているので、それに比べるとこの「世界初のマクロレンズ」の描写性はある独特な表現性を持っていると言えます。
この点について愛用している当方には独自の感覚を抱いていたのですが、それをものの見事に適確に言い当てたプロの写真家がいらっしゃいました。その写真家のマクロキラーをだいぶ前にオーバーホール (DOH) したのですが、写真家曰く「ドライな表現性を持つ唯一のマクロレンズ」とのご指摘で、酷く感心してしまったことを覚えています。
確かに独特な表現性を持つと感じていたのですが、その表現性をどのようなコトバで言い表せば良いのか思い付かなかったのです(笑) まさしく「ドライ」なのであって「あくまでも被写体に忠実」なので、例えば柔らかく優しく写し込むなどと言うことをこのマクロキラーにやらせようとしても却って難しかったりします(笑)
「ありのままに素のままに写し込む」事が使命の如く一切妥協を許さずに頑なに写し続ける姿に、今さらながらに惚れ惚れです(笑) その意味では例えば植物/草花などの撮影でトロトロにボケた感じの、或いは繊細なボケ味の感じを表現したくて使う事をマクロレンズに期待される方は、このモデルは適さないかも知れませんね(笑)
当方は逆にどうしても出品個体の「できるだけ正確な状態」を写し込みたいので、このマクロキラーに勝るマクロレンズに出逢ったことがまだありません(笑) まさに「金属質の相違を写し込める/塗膜の違いを写し込める」そんなビミョ〜な然し歴然とした違いを人の目で見たらちゃんと視認できている様を残せるマクロレンズとして、当方は絶大なる評価を下しています(笑)