◆ TOKYO KOGAKU (東京光学) RE GN TOPCOR M 50mm/f1.4(RE/exakta)

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※解説とオーバーホール工程で使っている写真は現在ヤフオク! 出品中商品の写真ではありません

今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、東京光学製
標準レンズ・・・・、
RE GN TOPCOR M 50mm/f1.4 (RE/exakta)』です。


今回の扱いが当方累計では7本目にあたり、その中で光学系内がスカッとクリアでLED光照射でコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無な個体数は、今回が僅か「4本目」です。

つまりほぼ半分の個体で調達時に十分掲載写真をチェックし光学系がクリアな個体をチョイスしたにもかかわらず、実際に手許に届いてLED光照射で確認すると極薄いクモリが発生していたりします。その極薄いクモリが単に経年の揮発油成分のせいだけで薄く曇っているなら清掃で除去できますが、コーティング層経年劣化が原因だとまず除去できません。

するとせっかく調達したのにコントラスト低下/解像度不足と言う「眠い写り」にしか至りませんから、相当ハイリスクなモデルの一つです。手に入れる祭事前に必ずチェックしているのは「後玉表面の状態」なので、掲載写真を見ただけで汚れているように見えたら完璧にアウト です。掲載写真ではキレイに見えても出品ページに「薄いクモリあり」などと記載があれば、やはりアウトです。

当時の東京光学製開放f値「f1.4」の標準レンズとして考えると、ピント面のエッジが繊細ながらも非常にインパクトの強い明確な (カリカリな) 鋭さで合焦し、メリハリのある高いコントラストと共に、然しナチュラルな色乗りで違和感や誇張感を感じない独特な表現性を出す非常に魅力的な標準レンズです。

それもそのハズで、当時の東京光学製オールドレンズの中にあって唯一のマルチコーティングモデルであり、解像度の向上と共に優れた収差制御による「個性」を感じ取れる標準レンズ だからです。

そしてこれもまた東京光学で唯一無二の「フラッシュマチック機構」を装備した設計概念により、その独特なピント合焦の瞬間は一度味わうと虜に堕ちてしまうほどに、中毒性のある独特な操作性を実現している点も大きな魅力のひとつです

【調達時のチェック項目】
光学系の特に後玉表面の状態 (コーティング層経年劣化/カビの発生)
距離環を回す時のトルクが異常に重くないかどうか

上の2点は必ず調達時にチェックする必要があるこのモデルの大きな問題点です。

実際にピント合わせすると分かりますが、ピントが合焦する瞬間 (ピントのピーク) は「ほんの一瞬でスパンッ!と合焦する」独特な印象なのがこのモデルの特徴ですが、ところが無限遠位置から距離環を回して繰り出していった時に突然繰り出し量が増える2m越え辺りから急に重くなるのは「昇降式ヘリコイド」を採っているからであり、設計上の仕様なので改善する事ができません。

その意味でこのモデルは光学系の透明感を最優先でチョイスするにしても、距離環を回すトルク感にはある程度目を瞑る必要があります (従ってクレーム対象としません)。特に入手時に「スムーズなトルク」などと記載されていると全く重いのかどうかが掴めないと言うワケです (従ってどうしても重いトルクの個体を掴み易い)。

距離環を回すトルクが重い原因
昨夜寝ていて夢の中に「オールドレンズの神様」降臨です!(笑) どうしても 仕上がったオールドレンズの距離環を回すトルクがちょっと自分の印象として重すぎに感じていたので、それに納得できずず〜ッと気になっていたのだと 思います。そのトルクが重くなっている原因箇所のお告げがありました!(笑)

さっそく起きてからすぐに再びバラし始めて、何しろ「昇降式ヘリ コイド」部分なので、何だかんだ言って結局最後までバラさなければアクセスできません(泣)

左写真はその「昇降式ヘリコイド」の昇降筒内筒 (鏡筒が格納される 場所) なのですが、まるッきしこの通りの状態で夢の中に出てきました (さすがにキズの場所は違いますが)(笑)

赤色矢印で指し示した箇所にキズが幾つも残っています。これらのキズは実は当方が付けてしまったのではなく、過去メンテナンス時に塗布したヘリコイドグリースの性質が適合していなかった事に起因して、おそらく「砂粒」が混入してしまったのだと推測しています。

これが仮に塗布したヘリコイドグリースの性質が適合していれば、このような「砂粒」如きでこんなにキズが付いてしまう事には至りません。過去メンテナンス時に塗布されていたのは「白色系グリース」でした。当初バラした時は既に「濃いグレー状」に経年劣化進行に拠り 変質しており、特に「白色系グリース」である以上、本来は当然ながら白色なのですが「アルミ合金材の摩耗粉」が混じってしまった為に変色していた次第です。

ここでのポイントは「昇降筒の原理原則」です。おそらく過去メンテナンス時の整備者はその「昇降筒の場合の原理原則」を全く知らない整備者だったのだと推測しています。「昇降筒」とは「内外筒で1セット」であり、それは一般的なヘリコイド (オスメス) と同じ立場ですが、大きな違いは「接触面が鏡面仕上げである必要がある」点です。

一方一般的なヘリコイド (オスメス) の場合は、切削されているネジ山の凹凸部分がもしも鏡面仕上げされていたら「アッと言う間にカジリ付く」事に至ります (オスメスのネジ山が互いに噛んでしまい固着する)(笑) 金属の材質によっても違いますが基本的な「原理原則」です。

従って過去メンテナンス時の整備者は何も再考せずに「いつもどおり白色系グリースを塗ってしまった」ワケですが、おそらく何でもかんでもグリースなら白色系グリースでも全く構わない (滑らかにする役目なのがグリースだから) 程度にしか認識できていないのでしょう(笑)

意外とそういう整備者が多かったりします・・ (何とプロにも居るらしい)(笑)

さらに今回のモデルでは「昇降筒の設計」にもちゃんと着目して、それに見合う特性と言うかトルクを軽くする方策を講じる必要があります。前回のオーバーホールでは「鏡面磨き」したうえで塗布するグリースの性質も考慮したのですが、これら何カ所にも残っている深いキズがまだまだ影響してしまいました。

仕上がって最初のうちのトルク感はそこそこ軽めだったので、これでいいかなと感じたのですが、ヤフオク! に出品する為に写真撮影していろいろイジッているうちにどんどん重く変わってしまいました。

それ故、どうしてもそれに納得いかず頭の中の何処かにあったのだと思います(笑)

ありがたい事に「オールドレンズの神様」に降臨頂き、原因箇所の画を観た瞬間「ヤッバし それかョ!」と思わず口に出してしまい、キッと神様に睨まれてしまったような気がしました (夢の中の話ですが何だかあの女性の顔はしょっちゅう見た事があるようなないような?)(怖)

自分で「もしかしたら!」と言う気持ちが少しでも残っているのなら、手間を惜しまずに何度でもバラし直して組み立てろと言う事ですね(笑) ひたすらに反省の一字でした・・(泣)

もちろん例えば今回のモデルのように一方がアルミ合金材で片方が真鍮 (黄銅) 製だった場合、必然的に塗布するグリースの性質もそれに合わせて変更する必要があります。再び「鏡面仕上げ」を行い適するグリースを塗って仕上げました。バラす前の「重いトルク感」から比べると僅かに軽くなったように感じます (実際軽くなったと思います)。何とかピント合わせで使えるレベルに至ったのではないでしょうか。

残念ながら「鏡面仕上げ」で接触面が設計されていた場合、特に互いの金属材の材質が異なる時は「必要以上に磨きすぎると逆効果」になり、普通のネジ山と同じようにカジリ付いてしまいます。一度でも本格的にカジリ付いてしまったら、金属材が互いに癒着してしまうのでそう簡単にはバラせませんし、もちろんその痕跡がグサッと深くえぐれて残ってしまいます(泣)

そうなるとさらにトルクムラが酷くなり、どんどん悪化の一途です(怖) 従って「適度な鏡面仕上げ」がポイントなのであり、何とも悩ましい現実です (技術スキルが低い当方にとってはいつも悩みの種なのです/一度削ってしまった厚みはもう二度と元には戻らないから)(笑)

そんなワケで散々このブログや出品ページに「重い」と執拗に書き連ねましたが(笑)、少しは軽いトルク感に微調整ができました・・。
(これ以上は軽くできない/もう磨けないから)

夜寝ていても作業しているのかと、正直なところちょっと恥ずかしいのですが致し方ありま せん(笑) 一度気になると気になってどうしようもないのでしょう (気が小さいので)(笑)

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光学系は5群7枚の拡張ダブルガウス型構成で、右構成図の中で 部分の第3群〜第4群の光学硝子材に「酸化トリウム」を含有させた、俗に言う「アトムレンズ (放射線レンズ)」です。逆に言えば、その他の群 (第1群
〜第2群と第5群) には「酸化トリウム」は含まれていません。

右図は今回バラして清掃時にデジタルノギスで計測しほぼ正確にトレースした構成図です。
当方が計測したトレース図なので信憑性は低いですから、ネット上で確認できる大多数の構成図のほうが「」です (つまり当方のトレース図は参考程度の価値もありません)。
(各硝子レンズのサイズ/厚み/凹凸/曲率/間隔など計測)

左写真は今回の個体の光学系から取り出した、第3群〜第4群の「酸化トリウム」を硝子材に含有した光学硝子レンズです。ご覧のように経年による「ブラウニング現象」が生じて赤褐色化しています。これを指して一般的には「黄変化」と呼ばれますが、当方が2,000本以上今までオーバーホールしてきたオールドレンズを見ていると「酸化トリウム」含有の場合は単に黄色く変色するだけではなく「赤褐色化」します。

左写真は、取り出した硝子レンズを24時間UV光を照射していわゆる「黄変化」を低減させた状態を撮っています。

すると、それでもなおまだ「黄色っぽく」見えているのですが、これはコーティング層の化学反応で変質してしまった部分で、これ以上UV光の照射を続けても変わりません。

実際は現物の光学硝子レンズを1枚ずつ確認すると「レモンイエロー」にうっすらと色付いているのですが、格納筒の中に全ての群がセットされると「相応に黄変化が残っている状態」に見えます。単に「黄変化」としてしまうと、いわゆる「コーティング焼け」で黄色っぽくなっている場合と区別が付かなくなるので、当方では敢えて「赤褐色化」と呼んでいます (当方の勝手な判断です)。

紫外線の照射で「黄変化」が改善できると言うことは、つまり使われずに保管期間が長くなると再び「黄変化が進行する」と言えます。逆に言えば時々撮影していれば (特に外に持ち出していれば) 入射光が光学系内に入る分、変質しにくい話になると考えます。

ところで、この「酸化トリウム」の光学硝子材への含有は、世界中の光学メーカーで1950年代後半辺りから1960年代に多く採用されましたが、前述の「ブラウニング現象」の問題から代替材として1970年代に入ると日本の光学メーカーも含め「ランタン材」を使うようになりました。

今回のモデルが発売された時期は1973年です。では、どうしてこのタイミングで敢えて「酸化トリウム」を硝子材に含有してきたのでしょうか? ヒントは「酸化トリウム」の含有により「屈折率を20%代まで向上できる」点です (ランタン材は10%代まで向上が期待できる)。
逆に言えば、年代として他社光学メーカーでも挙って「酸化トリウム」含有をやめてきている時期なのに、東京光学では「フラッシュマチック機構」の装備から必然的にシームレスな光学性能が必要になってしまい、結果的に「敢えて酸化トリウムを硝子材に含有した」とも言え、このモデルが「銘玉」と評価され続けているポイントの一つでもあると考えます (何故なら、シームレスな鏡筒の繰り出し/収納の中で酸化トリウムを含有しなければこれだけの鋭くも違和感の無い自然なピント面を構成できなかっただろうから)。

つまりは全てが「フラッシュマチック機構」装備からスタートし、一切の妥協を捨てて (当時の慣習を捨てて) 可能な限り追求し続けた結果のオールドレンズであったと、当方は評価しています。それゆえ、レンズ銘板の「M」は単なるマルチコーティングだけの意味に留まらず「東京光学の威信を架け」有終の美を飾った気概として捉えるべきとロマンが広がりますね。

↑今回出品の個体を完全解体した時のパーツ全景写真です。オーバーホール工程の解説などは「RE GN TOPCOR M 50mm/f1.4 (RE/exakta)」のページをご参照下さいませ。

ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わりました。特に光学系内の透明度は相当なレベルの個体なので、もちろん後玉表面がキレイな状態を維持している (つまり汚れやクモリ/キズが一切無い) のも保証済です。光学系内の「黄変化」は可能な限り半減させてあるので、カメラボディ側オート・ホワイト・バランス (AWB) 設定をONにするとしても、さらにコントラストへの影響も気にならないレベルまで低減できています。

特に東京光学製のオールドレンズでマルチコーティングモデルとなればこのモデルしか存在しないので希少価値値が高いワケです (開放f値f1.8モデルはモノコーティングだから)。それ故、レンズ銘板の途中にマルチコーティングを表す「」が赤色に刻印されているワケです。

そしてマルチコーティング化がどのように描写性に影響したのかと言えば、おそらくブル〜レッドの鮮やかな表現性と合わせて自然なグリーンの表現性など、より人の目で見た記憶色に近い仕上がりになっているのではないかと評価しています。

↑光学系内はLED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。ひいて言えば後群側の貼り合わせレンズ表面に極微かなコーティング層経年劣化に伴う汚れ状が、見る角度によっては浮かび上がる程度で (パッと見で拭き残しのように見える) 実際の写真には一切影響しません。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

↑後群側も特に後玉がご覧のように非常に綺麗な状態を維持した個体でラッキ〜でした! もちろんLED光照射で極薄いクモリがありません。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:14点、目立つ点キズ:10点
後群内:16点、目立つ点キズ:11点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(極微細で薄い8ミリ長が数本あります)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
後群内の一部にパッと見で拭き残しのように見える箇所がありますがコーティング層経年劣化に伴う汚れ状のため清掃しても除去できません(クレーム対象としません/写真に一切影響せず)。
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・光学系内は透明度が非常に高いレベルです。
(LED光照射でも極薄いクモリすら皆無です)
・光学硝子材に「酸化トリウム」含有の為俗に言う「アトムレンズ(放射線レンズ)」でありUV光照射しましたが一部に黄変化が残っています(半減に改善済)。
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑さらに特にこのモデルは今まで扱った7本の中で3本の個体に「絞り羽根の開閉異常」が発生しており、且つオーバーホールしても完璧に改善できませんでした。絞りユニット内の「開閉環」と言うパーツの設計が拙いのです (薄い厚みのアルミ合金材だから変形し易い)。

たいていの場合、過去の一時期に「絞り羽根の油染みで粘性が生じていた」場合に、残念ながら簡単に曲がってしまう欠点のある設計なのでどうしようもありません (後から補強ができない)。

従ってこのモデルでは「絞り羽根油染みの放置プレイ」は厳禁です。

6枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。もちろん「GNスイッチ」をONにしたフラッシュマチック機構を働かせても、正しく絞り羽根が距離環に連動して自動開閉してくれます。絞り羽根が閉じていく時はご覧のとおり「完璧に正六角形を維持したまま」閉じていきます。

例えばちゃんと組み立て工程の中で「絞り値/クリック感と刻印数値との位置調整」なども数回バラし直して適切な位置でクリック感を感じるように適合させて組み上げているので、単に絞り環のクリック感が小気味良いだけの仕上がりではありません(笑)

自らオーバーホールしているメリットとは、実際にそのオールドレンズを使う人の気持ちになって、どういう操作性に所有欲/悦びを感じられるのか、使っていて何に神経質にならざるを得ないのか、逐一自ら考えチェックしつつ組み 上げられるのが最大のメリットです。
皆さんが喜ばれる距離環を回す独特なトルク感/ヌメッとした指に伝わる感触は、人によってはライカレンズのトルク感に近い (いえ確かにそれよりは劣りますが) 然し後を惹く (いじりたくなる) トルク感だと指摘されます(笑) それはまさしく自ら微調整している最中に「目が点になって何度も恍惚にトルクを イジッているから/微調整しているから」とも言い替えられますね(笑) その時決して悦に入っているのではなく「使う人の想いに浸っているから」目が点 なのです (情けない・・)(笑)

実は意外にもそんな処に「撮影するピントを合わせる時の醍醐味」が隠されているのかも知れません(笑) オールドレンズをイジる愉しみには、描写性のみ ならずそんな要素もきッと重要なハズです・・。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「重め」に感じ「全域に渡りほぼ均一」です。
距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります
昇降式ヘリコイドの仕様から距離環を回した時にトルクが重くなる箇所と多少軽くなる箇所のムラがありますが改善できません(クレーム対象とせず)。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。

↑距離環を回す時のトルク感をもう少し「軽く」仕上げられれば文句なしだったのですが、こればかりは「昇降式ヘリコイド」と言う設計が原因なのでどうしようもありません。

内部構造や設計概念を考えた時、例えば東京光学製オールドレンズの多くのモデルでマウント部の締め付け固定は「たった4本の締付ネジ」の締め付けるチカラだけで固定しています。逆に言うなら「ガチッとハマッて固定されていない」ワケです(笑) それはその4本の締付ネジを締め付ける際に、ネジ穴に対して締付ネジ自体が垂直に立たずにマチがある事で一目瞭然です (締め付けている最中でもマウント部が僅かに動かせてしまう)。

それ故締め付けるチカラだけで固定していると断言できるのではありませんか?(笑)

同じように前述の絞りユニット内の構成パーツ「開閉環」が薄いアルミ合金製である点も、たかが絞り羽根が粘性を帯びた油染みだけで変形してしまうほどに弱いのかと言う質問を受けますが、実際薄いアルミ板を直角にプレッシングしただけの構造なので「強度があるから変形しません」とは決して言えませんね(笑)

今までに数本の個体で変形しているのを実際に目にしており、その原因も掴んでいるのでここで明言している次第です。

ではどうしてそんな設計をしてしまったのか・・???

答は「光学メーカーではなかったから/計測機器メーカーだったから」と言えるのではないでしょうか? つまりNikonやCanonのような光学メーカーではなかったからです。確かに戦時中は「海のニッコー (Nikon) に陸のトーコー (東京光学)」と大日本帝国海軍と陸軍とで御用達の会社が違っていたワケですが、はたしてそれは光学メーカーに限定する話とは聞いた覚えもありません。

そのように考察する理由が実際にNikonやCanonなど光学メーカー品 (MINOLTAなども含めて) をバラしていると、カメラメーカーとの明らかな相違としてアルミ合金材などの切削面取り処理の相違に気が付きます。光学メーカー品は内部構成パーツのほぼ全てがキレイに面取り処理されているので「指を切る心配がない」ワケですが、東京光学や栗林写真工業、或いはその他のカメラメーカー品となると面取り処理が雑なので指を切らないまでもティッシュペーパーを滑らせただけで簡単にボロボロに裂けます (キレイに面取りされていればティッシュペーパーが裂けない)。

要は「観察と考察」する事でこのような明確な違いを見出せるワケで、すると組み立て工程の中で「ではいったいどういう部分に配慮して微調整すれば良いのか」その違いまでハッキリしてきます。

当方のオーバーホールでは仕上がり状態の良し悪しについて100%必ず説明できる」ワケで、どうして軽やかな操作性で仕上がったのか、どうしてムラのある仕上がりになってしまったのか、逐一必ず因果関係があります。もっと 言うなら当方の言い訳には「製造してから何十年も経っているので仕方ない」と言う弁明は・・残念ながら存在しないのです (抽象的表現が無い)(笑)

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑純正の樹脂製被せ式前後キャップが附属します。距離環のラバー製ローレット (滑り止め) は多少経年劣化進行に伴い伸びています (一応貼り付けてあります)。

以下当方の判定は神経質な人がご落札頂いたときの為にだいぶ辛め判定基準で選択していますが、オーバーホール済なので間違いなく市場流通品の中では「快適なレベル」と言えます。

↑当レンズによる最短撮影距離40cm (実測値では38cm/ヘリコイドネジ込み位置を微調整したので2cmですが短縮済) での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありません。またフード未装着なので多少フレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f2.8」で撮りました。

↑f値は「f4」に変わっています。

↑f値「f5.6」での撮影です。

↑f値「f8」です。

↑f値「f11」になりましたが、ほとんど絞り羽根が閉じきっているにもかかわらず「回折現象」の影響が現れていません。相当な光学系のポテンシャルを保っているモデルと評価しています。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。