◆ OLYMPUS (オリンパス光学工業) OM-SYSTEM G.ZUIKO AUTO-S 55mm/f1.2《前期型-II》(OM)

(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、国産の
OLYMPUS製標準レンズ・・・・、
『OM-SYSTEM G.ZUJI AUTO-S 55mm/f1.2《前期型−II》(OM)』
です。


 

  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Україні!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

Slava UkrainieieGeroyam Slava

今回オーバーホール済でヤフオク! 出品する個体は当方がオーバーホール作業を始めた12年前からの累計で、当時のOLYMPUS製標準レンズの中で「開放f値:f1.2」の括りだけで捉えると累計で10本目にあたりますが、今回扱った「55mm/f1.2」の「前期型」だけでカウントすると僅か4本目です。

1973年にOLYMPUSから発売されたフィルムカメラ「OM-1」用交換レンズ群の中の標準レンズとして登場したモデル『OM-SYSTEM G,ZUIKO AUTO-S 55mm/f1.2《前期型》(OM)』です。

このフィルムカメラ「OM-1」の取扱説明書を見るとオプション交換レンズ群の一覧に今回のモデルが既に記載されています。

従って「OM-1」発売のタイミングに合わせて用意されていたことが分かります。

↑今回扱った個体で初めて「前期型にも関わらず光学硝子レンズに酸化トリウムを含有しないタイプが存在する」事を掴んだ為、モデルバリエーションを改める事にしました。

上の写真 (3枚) は「55mm/f1.2」の括りだけで掲載しており、左から順に「前期型−I (銀枠飾り環あり/アトムレンズ)」に「前期型−II (銀枠飾り環あり/非アトムレンズ)」そしてこの焦点距離では最後のタイプである「後期型 (銀枠飾り環なし/非アトムレンズ)」です。

左端の個体は以前2020年に扱った際に撮影した写真で、この時の個体は光学硝子レンズの第1群前玉と第4群貼り合わせレンズの凹メニスカスに「酸化トリウム」を含有していた、俗に言う「アトムレンズ (放射線レンズ)」でした。この時の放射線量計測値は「12.25μSv/h (前玉直上)」に対し「2.54μ㏜/h (後玉直上)」でした。

今回扱った個体も左写真と同じように「銀枠飾り環あり」という「前期型」の特徴を備え、外観を見ただけで判定できますが、光学系を覗き込んでも白紙に曝しても「黄変化が認められない」点で左端の個体を扱った時とは全く異なる状況でした。実際放射線量の測定値では「0.05μ㏜/h以下 (前玉直上)」に対し「0.10μ㏜/h (後玉直上)」との結果に至り、光学硝子レンズに「酸化トリウムどころかランタン材すら含有していない」事が確認できたとの判定を今回下しています。

↑上の写真 (3枚) は、実際に取り出した光学硝子レンズを並べて撮影しており、左端が2020年に扱った時の「前期型−I (銀枠飾り環あり/アトムレンズ)」の光学系第1群前玉と第4群貼り合わせレンズです。当初バラした直後はご覧のように既に黄変化しておりブラウニング現象が現れています (最終的にUV光の照射を執り行い黄変化は半減程度までその際改善させて組み上げました)。

一方中央と右端の写真が今回扱った個体で「前期型−II (銀枠飾り環あり/非アトムレンズ)」で光学硝子レンズの黄変化は認められず、且つ放射線量の計測でも「酸化トリウムを含有している場合の計測値に全く到達しない」のを確認しました。右端の写真は光学硝子レンズのカタチを確認する証拠写真として光学系第3群と第4群貼り合わせレンズをひっくり返して裏面側を撮影しています。

従って当方では今まで銀枠飾り環の有無の相違を以て「前期型 (銀枠飾り環あり/アトムレンズ)」及び「後期型 (銀枠飾り環なし/非アトムレンズ)」とのモデルバリエーションに区分けしていましたが、今回バリエーションを改める事に至りました。

その結果、光学系構成図のトレース図も改めました。右図が2020年に扱った際に、完全解体して光学系の清掃時、当方の手によりデジタルノギスを使い逐一全ての群の光学硝子レンズを計測したトレース図です。

 色着色している箇所に「酸化トリウム」を含有しておりブラウニング現象により黄変化 (当方では茶褐色化と呼んで一般的なコーティング焼けと分けて捉えています) していました。

一方右構成図は今回のオーバーホールで完全解体した際に光学系の清掃時、当方の手によりデジタルノギスを使い逐一全ての群の光学硝子レンズを計測した「前期型−II」のトレース図です。

いずれの群にも「酸化トリウム」を含有しておらず、実際の放射線量計測値も一般的なオールドレンズの計測値の範疇に留まります。然し逆に上記の「前期型−I」構成図とは各群の曲率や厚み/カタチなどが微妙に違っているのをその計測値から確認しています。

特に光学系第4群の貼り合わせレンズと第6群後玉の厚みが変わっているように見えます。

以上より、一般的にネット上で「前期型/後期型」の区分けとして「銀枠飾り環の有無」で分けると同時に「光学硝子レンズへの酸化トリウム含有」の相違でもモデルバリエーションを2つに分けているようですが、今回の個体を扱って当方の認識を改めた次第です・・つまり「55mm/f1.2」のモデルバリエーションは全部で「3種類顕在する」事を確認できたと受け取っています。

ちなみに1983年に発売された一眼レフ (フィルム) カメラ「OM-4」取扱説明書のオプション交換レンズ群一覧に初めて登場する「ZUIKO AUTO-S 50mm/f1.2 (OM)」についてはその後期型モデルにあたるZUIKO AUTO-S 50mm/f1.2《後期型》(OM)』を当ブログで解説しています。

その際に扱った個体のオーバーホールで完全解体した時、光学系の清掃時に当方の手によりデジタルノギスを使い、逐一全ての群の光学硝子レンズを計測したトレース図が右図になります。

同じ6群7枚の拡張ダブルガウス型構成ながら焦点距離が「50mm」に変わっている分、当然ながら光学系は再設計されているのが分かります。実際に各群の光学硝子レンズを単独で計測したので (且つ各群の配置に関わる距離もちゃんと計測している) 間違いありません。

但し、当方は基本的に「極度のカメラ音痴」であり「光学知識も疎く」プラスしてヤフオク! などに出品している転売屋/転売ヤーである事からも、ここで述べている事柄/内容はその多くに信憑性を伴わず、且つ当方自身の思い込みなども影響してネット上の様々なサイトとの比較には値しない事を事前に告知しておきます (それら比較元サイトのほうを正として捉えて下さいませ)。

従ってこのブログをご覧になりご不満や不快感を抱いた場合は平に附してお詫び申し上げますが、誹謗中傷メールを送信してくることだけはどうかご勘弁下さいませ。

ウソを拡散するような考えなど一切なく、合わせてヤフオク! での出品についても決して詐欺的商法など執る気持ちはなく、どのようなクレームにも必ず対応させて頂く所存です。

そしてこのブログも決してヤフオク! での出品商品を高く売らんが為に煽る目的で掲載しておらず、むしろ純粋にヤフオク! のようなオークションで単にご落札頂くよりも、さらに楽しくそのオールドレンズの素性を知る事ができる事を目指して、その目的にのみ限定してこのブログを添えている次第です (その他の他意は一切御座いません)。

今このブログをご覧頂いている皆様も、何かご指摘事項が御座いましたら以下までお知らせ下さいませ。

ご指摘事項は・・・・
   出品者のひとりごと・・・・pakira3kara@pakira3.sakura.ne.jp
までお知らせ下さいませ。

・・即座に改善/訂正致します。お手数おかけする事になり本当に申し訳御座いません。

【用語解説】
 アトムレンズ (放射線レンズ)
光学硝子材に酸化トリウムを含有 (10%〜30%代) させて屈折率の向上 (20%代/1.22) を狙った光学硝子レンズ

ブラウニング現象
物質の経年変化に拠り褐色に着色し褐変 (かっぺん) する現象を指す (食品や光学硝子レンズ等)

黄変化 (おうへんか)
光学で言う処の黄変化とは光学硝子レンズの経年変化に拠る変質で褐色に色付く現象を指す

コーティング焼け
光学硝子面に蒸着したコーティング層が経年に拠り変質し黄ばんでくる事を俗に言う表現

貼り合わせレンズ
2枚〜複数枚の光学硝子レンズを接着剤 (バルサム剤) を使って貼り合わせて一つにしたレンズ群を指す

バルサム切れ
貼り合わせレンズの接着剤/バルサムが経年劣化で剥離し始めて白濁化し薄いクモリ、或いは反射が生じている状態

ニュートンリング/ニュートン環
貼り合わせレンズの接着剤/バルサム剤が完全剥離して浮いてしまい虹色に同心円が視認できる状態

フリンジ
光学系の格納が適切でない場合に光軸ズレを招き同じ位置で放射状ではない色ズレ (ブルーパープルなど) が現れてエッジに纏わり付く

コーティングハガレ
蒸着コーティング層が剥がれた場合光に翳して見る角度によりキズ状に見えるが光学系内を透過して確かめると物理的な光学硝子面のキズではない為に視認できない

ハレーション
光源からの強い入射光が光学系内に直接透過し画の一部分がボヤけて透けているような結像に至る事を指す

フレア
光源からの強い入射光が光学系内で反射し乱反射に至り画の一部や画全体のコントラストが 全体的に低下し「霧の中での撮影」のように一枚ベールがかったような写り方を指す

↑完全解体した時の内部構成パーツ全景写真です。オーバーホール工程やこのモデルの当時の背景など詳しい解説は『OM-SYSTEM G.ZUJI AUTO-S 55mm/f1.2《前期型》(OM)』のページをご参照下さいませ。

ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わっています。当初バラす前のチェック時点では「距離環を回すとツルツル状態で非常に軽すぎるトルク感」との印象を抱き、その一方で前玉直下の絞り環は「ガチガチしたクリック感の操作性」との印象でした。正直、絞り環操作するたびに違和感の極みで、如何にも内部の鋼球ボールが引っかかっているような感触のクリック感でした (一般的に捉えても良い操作性とは言い難い印象)。

さらにピントのピーク/山が、以前扱った2020年の時の個体「前期型−I」の記憶と比べても、少々不明瞭な印象でピント面の鋭さも僅かに足りないように感じました。

基本的に当方は当時のOLYMPUS製オールドレンズ (OMマウント) がとても大好きです。今回扱ったモデルもオーバーホールする上での技術スキル面から捉えれば「高難度のオールドレンズ」に間違いなく入りますが、それは当方の技術スキルが低いが故です(汗)

従って頻繁に扱う事ができませんが、オーバーホールする際は使う方の操作性やお気持ちに配慮して納得いくまで微調整し仕上げているつもりです。是非ともご活用頂ける方の手に渡ります事を願いつつオーバーホール済でヤフオク! 出品致します。

↑そこで実際にバラしてそれらの因果関係を調べると、さんざん「観察と考察」を繰り返して5時間経過した辺りでようやく因果関係を掴めました (5時間も掛けてあ〜だこ〜だ何回も組み立て直さないと気づけないと言うスキルレベル)(恥)

絞り環の操作性がガチガチして鋼球ボールが如何にも絞り値の溝に引っかかっている印象だった原因は上の写真でした。上の写真は前玉直下に配置される「絞り環」をひっくり返して裏側方向から撮影しています。

赤色矢印で指し示している穴に鋼球ボールが1個ストンと落とし込みで入りますが、このモデルの設計は鋼球ボールを圧縮スプリングで反発させるのではなく上の写真弧を描いたカタチの薄いステンレス板」による反発力 (つまり板バネ) でカチカチと絞り環操作した時のクリック感を実現しています。グリーンの矢印で指し示したように締付ネジ用の穴がこのステンレス板に用意されていて、絞り環の裏側に備わるネジ穴に締め付け固定する手法の設計です。

ところがプラスしてさらに黄銅材の弧を描いた板状パーツ」まで合わせて締付ネジで重ねてとめる設計を採っています。

絞り環操作した時のクリック感を実現するだけなら、鋼球ボールが入るべき落とし込みの穴の方向に延びているステンレス板だけで充分な気がしますが、このモデルの設計者は「敢えてさらに黄銅材の板状パーツまで重ねて締め付け固定する設計を採った」事に注目する必要があります (グリーンの矢印のように締付ネジで重ねて締め付け固定する)。

実は当初バラした際に、これらの板状パーツは「エポキシ系接着剤で互いに接着されていた」のです(驚) のステンレス板が絞り環側にエポキシ系接着剤で接着され、且つの黄銅材の板状パーツまで同様、今度はステンレス板にエポキシ系接着剤で接着されていました。

エポキシ系接着剤を使っている時点で、過去メンテナンス時のタイミングが近年 (おそらく10年以内) であり、数十年前の古い時期の整備ではない事が明白です。

すると「では何故このモデルの設計者はワザワザ黄銅材の板状パーツまで用意したのか?」とのこの1点に於いて、過去メンテナンス時の整備者は一切「観察と考察」していません(笑)

設計時に (もちろん製産時点も同じだが) 黄銅材の板状パーツまで用意して締付ネジで締め付け固定する手法を採った理由は「鋼球ボールが反発する感触を滑らかに仕上げたかった」からではないかと推察できます。

つまり黄銅材の板状パーツが「黄銅材なのである程度撓る特徴を有する」金属材としての要素を重視して、敢えてステンレス板の上にもう1枚被せて/重ねて締め付け固定する手法を採ったのだと推測できます。

つまりステンレス板1枚だけではクリック感が軽すぎて、黄銅材の撓る特徴を付け加える事で納得できるクリック感に絞り環操作を仕上げたかったのだと考えた次第です。

それを過去メンテナンス時の整備者はバラした時 (つまり製産時点) には処置されていなかったハズのエポキシ系接着剤で2枚重ねで接着してしまったが為に「反発力が却って強くなってしまいガチガチと引っ掛かりを感じるクリック感の操作性に至っていた」と判明しました。

実際、エポキシ系接着剤を全て剥がして単に締付ネジで締め付け固定して組み上げたところ「大変滑らかに小気味良いクリック感で絞り環操作が適う」操作性に変わりました。

そしてここからが今回のオーバーホール作業で最大の難関だったのですが、ピント面の鋭さが足りない印象に感じた理由も「このエポキシ系接着剤で接着してしまった事柄」に端を発し、何と鏡筒内の絞りユニットで「設定絞り値に従い移動する制御環の操作性が固くなってしまい」その影響がさらに伝達されて「距離環を回した時のトルクムラに至っていた」が為に「白色系グリースの♯10番」と言う大変粘度の緩い/軽い白色系グリースを塗布してごまかしていたのが判明しました。

↑上の写真は2020年に扱った際のオーバーホール工程の途中を撮影した写真からの転載です。鏡筒内最深部にセットされる「絞りユニット」を解説していますが、赤色矢印で指し示しているようにこのモデルは絞り羽根が組み込まれる階層から順に「第1階層第3階層」まで3つの階層に分かれて制御系のパーツが組み込まれます。最後の「第3階層」で絞り羽根の開閉角度を決めており「制御環」になりますが、この3つ目の階層が外側外周にセットされる「絞り環」と連結する事で回る原理です (設定絞り値が伝達される仕組み)。

ところが前述の「エポキシ系接着剤で接着してしまった板バネ部分」の影響で鋼球ボールの反発力が強すぎてしまい、この第3階層の「制御環」が回るトルクが異常に重くなってしまい、その結果「ヘリコイドの回転時に制御環の伝達キーからのチカラの影響を受けてトルクムラが起きていた」次第です。

当初バラして組み立てている最中に「エポキシ系接着剤で接着されている板状パーツ2枚を剥がさずにそのまま組み上げてしまった」為に、組み上げていくと最後にトルクムラが起きてしまったワケです(汗)

この原理はこのモデルで「マウント面に絞り値伝達レバーが突出している」点からも皆様にもご理解頂けると思います。前玉直下に配置されている「絞り環を操作するとその設定絞り値が最終的にマウント面からフィルムカメラ側にまで伝達される」仕組みを採っているので、上の写真の「第3階層の制御環」が固くなってしまうと、その影響はヘリコイドオスメスを経て最終的にマウント面まで伝わっているのがご理解頂けると思います。

つまり鋼球ボールでクリック感を実現する板状パーツ2枚をエポキシ系接着剤で接着してしまったが為に、その影響が絞りユニット内の制御系パーツに現れ、且つ絞り値の伝達機構からヘリコイドオスメスのトルクムラに至り「それをごまかす為に一番軽い粘性の♯10番白色系グリースを塗布していた」という流れが見えてきたのです(泣)

そもそも「当方の技術スキルが低すぎる」ので一発で完全解体した時に判明できず、さんざん5時間も掛けて何回も何回も組み直しつつ、トルクムラが改善しない因果関係にようやく気づいたと言う・・本当に情けない始末です(笑)

しかもおそらくは上の写真のさらに上に「第4階層として入る光学系前群格納筒」が最後までキチッとネジ込みできておらず、その影響から最終的なピント面の鋭さが何となく足りないような変な描写性に至っていたのだと推察しています (具体的に物理的に真横方向から光学系前群の格納位置を調べられないので推測するしかできない)。

ツルツルのトルク感に至る白色系グリースの塗布に、絞り環のガチガチ感や、さらにはピント面の鋭さ感が足りない印象など・・元を正せばクリック感を実現する為の「2枚の板状パーツをエポキシ系接着剤で接着してしまったのがワルイ!」に全て帰結していたなど・・全く以て気づきませんでしたね (恥ずかしい)(汗)

このように何でもかんでも経年で固定位置がズレないように固着剤で固めてしまう概念は、実は過去メンテナンス時の整備者の「自己満足大会」以外の何ものでもなく(笑)、製産時点に一切執られていなかった処置を平気でヤッています(笑) もっと言えば光学系内を「反射防止黒色塗料」で塗りまくりなども当たり前のように必ず執られており、全く以て笑うしかありません (当方同様整備レベルが低俗すぎる)(笑)

・・世の中の整備者は十分反省してもらいたい!と言いたいですね(笑)

↑順番が逆になってしまいましたが、オーバーホールが終わった出品個体の光学系です。当初薄く曇っていたのが完璧に除去できてスカッとクリアに戻りました。光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層の経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無です。

微細なカビ除去痕や点キズが少々多めですが、写真には影響しません。例えば一般的にそれら点キズなどはポツポツと玉ボケへの写り込みが懸念されますが、この程度のレベルでは写り込みません。仮にエクステンションを介在させて玉ボケを大きく変化させたとしてもその分光量が増大しボケ味もより滲みの量が増すのでさらに写り込まなく変わります (同様収差の影響度合いも大きくなります)。

従ってカビ除去痕/点キズの影響は最小限でまず撮影した写真で発見/指摘できませんが、光学系内を覗き込めば物理的に痕跡が残っている状況です (光学系前群側は光に翳してようやく視認できるレベルで後群側は順光目視できるレベルです)。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

カビ除去痕の一種ですが、菌糸状に薄いクモリが附随する微細なカビ除去痕がレンズ銘板の刻印で言う処の「f=50mmの=の直前に1箇所」及び「OM-SYSTEMのMの直前にも1箇所」と2箇所に残っています・・つまり光学系第1群前玉の外周にあたりますが拡大撮影の上の写真を見てもそれらを視認できません。光に翳して反射させつつ「必ずその場所に在る!」と認識して探さない限り見つけられません。

↑光学系後群側も薄いクモリが除去できてスカッとクリアに戻りました。しかしカビ除去痕としての微細な点キズや菌糸状の痕跡 (線キズ) などは多めに残っています。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:20点以上、目立つ点キズ:20点以上
後群内:20点以上、目立つ点キズ:20点以上
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
(前後玉に微かな菌糸状カビ除去痕が複数あり)
(前玉表面外周に薄クモリ伴うカビ除去痕2点あり)
(後玉表面に菌糸状と点状カビ除去痕複数あり)
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(前後群内に極微細な薄い最大10mm長数本あり)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:あり
(前後群内にカビ除去痕として数点あり)
(前後玉に極微細な経年の拭きキズ数箇所あり)
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・光学系内は透明度が非常に高いレベルです。
(LED光照射で確認しても極薄いクモリが皆無)
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。

↑8枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。当初バラす前の違和感を感じた絞り環操作は大変小気味良い確実な操作性にちゃんと戻っています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に正八角形を維持」したまま閉じていきます。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。

詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感で距離環を回す時のトルクの印象は「普通」人により「軽め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。特にピント合わせ時は距離環を掴んでいる指の腹に極僅かなチカラを伝えるだけで微妙な前後動が適い正確にピント合わせできる素晴らしい操作性を実現しています。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。

今回のオーバーホール済でのヤフオク! 出品に際しセットした附属品の一覧です。

《今回のヤフオク! 出品に際し附属するもの》
HAKUBA製MCレンズガード (新品)
本体『OM-SYSTEM G.ZUJI AUTO-S 55mm/f1.2《前期型−II》(OM)』
純正樹脂製バヨネット式後キャップ (中古品)
純正樹脂製スナップ式前キャップ (中古品)

このモデルを実際に手に取り撮影に臨めばすぐに分かりますが(笑)「ピントのピーク/山に瞬時に到達しアッと言う間に過ぎる」ピント面の合焦なので、距離環を回す時のトルク感は「当初バラす前のツルツルの印象では却って緩すぎて使い辛かった」ワケです。従って今回のオーバーホールでは「むしろトルクを与えて軽いながらも決してツルツルではないシッカリしたトルク感」に仕上げています。

要は何でもかんでも軽めのトルク感が良いのではなく「ちゃんとそれぞれのオールドレンズ/モデルのピントの合い方」に見合うトルク感として仕上げるのが「最終的に撮影に没頭できて結果的に後から使い易さ感に感じ入る」のが本来追求するべきトルク感なのだといつも心掛けています。

その意味で今ドキのヤフオク! のように「トルクはスムーズです」とか「問題ない操作性です」などと言う表現など、全く以て煮ても焼いても食えない当方と同じ転売屋/転売ヤーの類と断言できますね(笑) 整備するとはそういう事を指すべきであって、単にグリースを入れ替えるだけが使い易さの追求ではないと認識するべきです(笑)

なお、今回の個体は距離環のラバー製ローレット (滑り止め) を剥がしたところ「イ72」との白色印刷が施されており、1977年2月にオリンパス光学工業の伊那事業所で生産出荷された個体である事が確認できています。せっかく完全解体して整備するなら、そういう情報も知り得る事で「より一層所有欲を充たせる」のがオールドレンズの愉しさの一つでもあります。

大好きなOLYMPUS製オールドレンズ達の中で、例えば有名処の「f2シリーズ」も焦点距離:28mmや35mmに100mmの他、マクロレンズのほうも2本扱ってきているので、光学系の中に「昇降機能」を包括した設計を積極的に採り入れ (特に光学系後群側) その素晴らしい描写性能を結果として実現している点で、いまだに溜息モノです(涙) 然しながら今までにバラしたそれらモデルの多くの個体で「肝心な昇降機能の部位で白色系グリースを使っている現実」に一種の危機感を抱いており、その酸化/腐食/錆びのレベルがより悪化傾向である点からも危惧しています。

なかなか高価なモデルばかりなので容易に扱う事が叶いませんが、チャンスがあれば是非もう一度扱ってみたいと願っているところです。確かに光学性能を追求して可能な限り開放f値の明るさを追求するのも重要な技術革新なのでしょうが、当方はむしろ標準レンズ域のほうでも開放f値に余裕を持たせた「f2モデル」のほうに琴線がなびくので(笑)、同様OLYMPUS製オールドレンズでもそれら「f2シリーズ」に対して多大な魅力を感じている一人です(笑)

もちろんバラして始めて知り得た事柄でしたが、光学系後群に「昇降機能」を持たせた、当時のOLYMPUSのこだわりように最大限の敬意を表すると共に、そこから吐き出される写りに今さらながらの魅力を感じています (もちろん他の光学メーカーでも当時は採用しています)。

昇降機能/昇降機構 (但し光学系の構成内)
構成する光学硝子レンズを単独〜複数枚で被写体との距離の変化に応じて回転させながら、同時に構成の中で直進動させつつ位置を可変させる事で描写性能をより細かく追求する手法。
対象となる光学硝子レンズの格納筒は単独〜複数枚で可変する軸線上だけで保持される原理なので「フローティング機構」とも呼ぶ。

詳しい事はド素人の当方には全く分かりませんが、非球面レンズを積極的に採り入れられる時代の前段階では「昇降機能」はきっと精一杯の技術革新の一つだったのではないでしょうか
・・そんな事柄に思いを馳せるのもまたオールドレンズの愉しみの一つだったりします(笑)

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離45cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f2.8」で撮っています。

↑f値は「f4」に上がっています。

↑f値「f5.6」での撮影です。

↑f値「f8」になりました、

↑f値「f11」です。もう既にだいぶ絞り羽根が閉じきっている状況ですが、まだまだ「回折現象」の影響を見出せません。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。