◎ FUJI PHOTO FILM CO. (富士フイルム) EBC FUJINON・SF 85mm/f4《後期型》(M42)

(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
写真を閉じる際は、写真の外 (グレー部分) をクリックすれば閉じます
※解説とオーバーホール工程で使っている写真は現在ヤフオク! 出品中商品の写真ではありません

オーバーホール/修理ご依頼分ですが、当方の記録用として掲載しており
ヤフオク! 出品商品ではありません (当方の判断で無料掲載しています)。
(オーバーホール/修理ご依頼分の当ブログ掲載は有料です)


今回初めての扱いになりますが、当時のフジカ製ソフトフォーカスレンズ『EBC FUJINON・SF 85mm/f4《後期型》(M42)』です。

1970年にスクリューマウント規格である「M42マウント」を採用した、フジカ初の一眼レフ (フィルム) カメラ「ST701」が発売され、一眼レフ (フィルム) カメラ市場に参入し、1972年に「ST801」1974年「ST901」と発売するものの世界的なM42マウントの衰退に逆らえず、1980年に独自バヨネットマウント「AXマウント」に規格変更します。

今回扱うソフトフォーカスレンズは、1974年に発売されたフィルムカメラ「ST901」登場時点の、オプション交換レンズ群と同一の意匠で登場しているモデルなので「後期型」にあたります。

ソフトフォーカスレンズ
諸収差改善を追求した一般的な鋭いピント面のオールドレンズと比較して、意図的に滲みの 要素をピント面に加味させたレンズの種別を指す

この「ソフトフォーカス」と言う分類を「ピンボケ」と解釈してしまうとだいぶニュアンスが違ってしまうので要注意です。「ソフトフォーカス」の概念ではピント面は確実に合焦しており、それぞれのモデルで最大限に鋭いピント面の構成を狙って光学設計されているのに対し「ピンボケ」と言うのはあくまでも「合焦がズレてしまった状態」なので、ピント面の鋭さが低下した写真を指します (つまりオールドレンズのモデルや分類に関係しない話)。

ソフトフォーカス」の概念として前述のように「ピント面に滲みの要素を加味」している 以上、そのピント面に対する「滲みの与え方」が細分類として問題になってきます。

【ソフトフォーカス方式の種類】
光学系の色収差を活用して滲みを生じさせる手法
球面収差の多少/縦横/度合いを可変させながら生じさせる手法
ウォーターハウス方式により生じさせる手法
レンコン方式により生じさせる手法
特殊フィルターを装着させて生じさせる手法

ひと言に「滲んだ写真の撮影」を考えてもこれだけの手法が既に存在しています。
順に解説していきましょう。

光学系の色収差を活用して滲みを生じさせる手法
これは特にクラシックレンズの時代、つまりは白黒写真しか存在しなかった時代に於ける光学設計上の一つの手法で、白黒写真のいわゆるグレースケールの世界ではフルカラーの色成分は「256階調」に強制的に仕分けされてしまいますから、色収差を活用することでこの階調への割り振りをコントロールする考え方です。従ってカラー写真が登場した時点では使われなくなった手法とも言えます (何故なら具体的な色ズレとして写真に残ってしまうから)。

球面収差の多少/縦横/度合いを可変させながら生じさせる手法
これは光学系内の一部の群、或いは全ての群に対して「球面収差」を「滲みの要素」として逆に活用してしまう概念で設計されている為、必然的に被写体との距離に対応した合焦/結像のコントロールが必須になります。従って光学系内に「昇降筒」を包括して制御する方式を採っています (一部の群の光学硝子レンズをさらに直進方向で微動させて/昇降させて位置制御する方法)。

ウォーターハウス方式により生じさせる手法
これは絞り羽根の代わりに予め四角形や丸形などのカタチでカッティングした板状を光学系 前後群の間に挟み込むことで (絞り羽根の代用として) 滲みを強制的に与えてしまう手法です。大判カメラ用レンズなどでスライド式でそのカッティングされている板を差し込んだり外し たり制御できる仕組みです。

レンコン方式により生じさせる手法
これは今回扱ったオールドレンズの手法ですが、絞り羽根を包括する絞りユニットとは別に、単独で専用の「レンコン状にカッティングされた板状」を前後に配置して、やはり強制的に 滲みの要素を与えてしまう手法です。

特殊フィルターを装着させて生じさせる手法
実際に入射光に対して滲みの要素を強制的に与えてしまう、現在最も容易に実現できる「フィルターを装着する手法」です。ソフトフォーカス専用のフィルターが用意されているので、 例えば「Kenko製ソフトフィルター」などをご覧頂ければ分かりやすいです。またフィルター着脱による手法の他に、例えばカメラボディ側のシステム側で (ソフト的に) フィルター処理を被せて疑似的に撮影された写真のデータ自体を加工してしまう場合もありますね。

これらの手法の中での色収差を活用したヤリ方は一般的なオールドレンズではポピュラーではなくなりました。またのフィルター着脱やソフト的な写真データ加工はオールドレンズのモデルに関係なく処置できる話なので、ここでは解説を省きます。

すると残ったまでの手法はそれぞれにどのような特徴があるのでしょうか?

の場合のメリットは、簡単に言ってしまえば光学性能を最大限に追求した上で「滲みの要素を与える」のが目的なので、撮られる写真の「画質」の良し悪しが要求される話になり、一般的なオールドレンズのモデルよりもコストがかかった設計を採っていることが多いです。その為にワザワザ光学系内に「昇降筒」を包括させて光学性能を追求した考え方です。

逆にの手法は絞り羽根の代用、或いは絞りユニットの前後に「カッティングした板状」を挟み込むことで強制的に入射光制御する考え方なので、簡素ですが「画質の追求には影響が現れる」欠点があります。

  ●               ● 




上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。

一段目
左端2枚は開放での実写だと考えますが、まさにソフトフォーカスの良さを最大限に利用した写真だと思います (ちゃんとピント面が鋭く合焦しているからピンボケではない)。右側2枚はこのモデルの焦点距離がポートレートレンズ域なので、必然的に人物撮影が得意ですね。

二段目
円形ボケの実写をピックアップしましたが、一般的なオールドレンズでは「シャボン玉ボケ」にあたるのが左端の1枚だけです。明確に輪郭のエッジが鋭く現れているので、もしもレンコン方式のパーツが光学系内に入っていなければキレイなシャボン玉ボケになっていたと推測できる写真ですね。

2枚目〜4枚目まではまさに「レンコン」のカッティングされているカタチそのモノが「円形ボケにそのまま現れる」特徴を示している実例です。従ってこのモデルで撮る写真は円形ボケ部分に「打ち上げ花火」のような円形ボケが現れます(笑)

三段目
とても良い実写例を用意してくれていますが、開放f値「f4」から最小絞り値「f16」までの実写です。ほぼ「f8」辺りからは違和感を感じないレベルで普通の撮影にも使えそうです。

四段目
左端が最小絞り値「f16」での実写ですね。白黒写真になると前述のとおり256階調に強制的にカラーの色成分が割り振られる為、また違った印象でとても落ち着いた実写が残せますから、これはこれでソフトフォーカスレンズのある意味使い方の一つになると考えます。

このモデルの光学系はダイナミックレンジが相応に広めなので明暗部の偏りが少ないですね。右端などはとてもキレイに上手くこのモデルを活用した実写ではないでしょうか。

光学系は4群4枚のエルノスター型構成です。右構成図はネットの某有名処に掲載されている光学系構成図と同じデータをそのままトレースしています。

第3群と第4群の間に絞りユニットが配置されていますが、その絞り羽根のさらに背後に「レンコン状の円形板」がセットされているのが分かりますね。

ところが今回の個体をバラして光学系を清掃した際に1枚ずつデジタルノギスを使って実測した数値をもとにトレースした構成図が右図です。

やはり4群4枚のエルノスター型構成なのは変わりないのですが、第1群 (前玉) からして外径サイズも曲率も (カタチも) 何もかも全く違います。また「レンコン状」も中心部から外周に向かってカッティングされている穴の大きさは全部で3種類の大小に分かれるので、ご覧のように入射光の通る穴の大きさが違います。

↑また当方がこのように指摘すると、SNSで「平気でウソを載せているヤツ」と批判の嵐になるので(笑)、証拠として上の写真を撮影しました(笑) どうしても某有名処の信用/信頼が高いので誹謗中傷の的になってしまいます(笑)

左は写真は写真下方向が「前玉側方向」で、2枚の写真はひっくり返して「前玉側方向が上」になるよう各硝子レンズを並べています。3枚目と4枚目も同じ順序です (つまり表裏で並べ替えている)。

すると特に第2群のカタチが全く違うのが分かると思います。どうしてここまで全く異なる光学系構成図なのか、当方には分かりませんが、もしかしたらモデルバリエーションとしての「前期型/後期型」の相違で光学系の設計自体が違うのかも知れません。「前期型」をバラしてみなければ不明なままです。

但し当方が計測した実測値に基づく構成図なので、その信憑性が低いと言われるのは覚悟していますから、是非とも某有名処の構成図を「」として下さいませ (誹謗中傷メールはご勘弁下さい)(笑)

↑上の写真は絞りユニットの直後に配置されている「レンコン状」パーツをピックアップしました。単に板状パーツが接着されている簡素な設計ですが、ご覧のとおり中心部の円形開口部が大きく、その他に大小2種類の円形穴が備わって入射光制御しています。

このように「入射光に介在させること」を「 (しゃ) をかける/紗を被せる」などとも光学用語で言いますね。最も分かり易い喩えで言うなら、オールドレンズの前玉直前に「荒目の木綿の布」などを被せて撮影すると、似たようにソフトフォーカスな写真が撮れますョね?(笑)

もっと言えば、光学系の全面に渡ってクモリが発生してしまったオールドレンズなども、このような「霧がかかった/ベールがかかった」ような撮影になりますから、仮にそのような個体を持っていたとしても、捨ててしまわずにこのような活用の手法もあると言う話です。

なお本来絞り値に関して、以下のとおり3種類の表示が存在します。

f値
焦点距離÷有効口径」式で表される光学硝子レンズの明るさを示す理論上の指標数値。

t値
光学硝子レンズの透過率を基に現実的な明るさを示した理論上の指標数値。

h値
レンコン状にフィルター (グリッド環) を透過させることで具体的な明るさを制御するf値。

従って、例えばRodenstock製オールドレンズなどで「h値」刻印されているモデルがあるのは、上記の理由です。逆に言うと「f値」は理論値でしかないのでどのオールドレンズでも同一の数値で表示/刻印ですが「t値/h値」の場合は、具体的な光学系を透過した数値で刻印されるので、モデルによってバラバラです (同一モデルなら個体別では同一になる)。

例えば開放f値「f2」のモデルで「t値切替スイッチ装備」の場合は、スイッチを切り替えると「f2.2」刻印になったりします。これはそのモデルの光学系を透過してきた入射光の実測値として「f2.2」の光学設計を意味します。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。内部構造は一部に特殊な構成パーツが介在するので、少々この当時のフジカ製モデルとは異なります。

【当初バラす前のチェック内容】
 距離環がほぼ固着状態なので回そうとするとマウント部が回って外れてしまう。
距離環を回しても鏡筒が一切動いていない。
 ピントが合っていない/無限遠合焦しておらずその位置も変わらない。
光学系内に何か膜のようなモノが附着しているように見える。

【バラした後に確認できた内容】
過去メンテナンス時に「白色系グリース」塗布。
さらにその上から「潤滑油呉工業製CRC5-56」塗布。
 グリースが経年劣化に伴い粘性を帯びてしまい接着剤状に変質。
距離環が外れている。
絞りユニット「開閉アーム」変形。

・・とこれだけ問題点が出てきました。

今回の最大の問題点は「距離環が回らない/ピントが合っていない」なのですが、その根本原因は過去メンテナンス時に「白色系グリース」を塗っており、その上から「CRC5-56」をシュッとやったのがアウトでした(笑)

どうして「CRC5-56」と断言できるのかと言えば、それはこの製品特有の「異臭」がするからです(笑) シュッとやった時はおそらく軽く操作できていたのだと思いますが、揮発してしまうと化学反応を起こして「グリースが接着剤のように粘性を帯びる」現象が発生してしまうので、このようにヘリコイド (オスメス) が完全固着してしまいます。

それだけならまだ良いのですが、それをムリに回そうとチカラを加え続けていると下手すれば「ネジ山のカジリ付」が起きてしまい、二度とバラせなくなるので怖いです(怖)

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒 (ヘリコイド:オス側) です。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

↑完成した絞りユニットを鏡筒最深部にセットします。冒頭解説の「レンコン状パーツ」は この絞りユニットの直後に入っているので、絞り羽根を閉じるとご覧のように普通のオールドレンズと同じように絞り羽根が閉じていきます。

絞り羽根を完全開放させると左写真のように「レンコン状パーツ」 部分が現れます。

この「レンコン状パーツ」部分だけをスッポリ着脱できる仕組みなのが冒頭解説の「ウォーターハウス方式」になります (このモデルは着脱できない)。

↑完成した鏡筒をひっくり返して裏側を撮影しました (つまり後玉側方向から撮っています)。すると鏡筒の裏側には「開閉アーム」が1本だけ飛び出ている状態です (赤色矢印)。この「開閉アーム」を操作することで絞り羽根がダイレクトに開いたり閉じたりしています。

↑距離環やマウント部を組み付ける為の基台です。基台には「制限キー」と「微調整キー」の2つのキーが用意されています。

制限キー
距離環の回転域を決めているパーツで無限遠位置と最短撮影距離位置の2箇所存在する。

微調整キー
距離環を回してピント合わせした後に、さらに解像度の微調整を行う際に駆動する範囲を指定する役目。

↑ヘリコイド (メス側) を基台に無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。さらに鏡筒 (ヘリコイド:オス側) を、やはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルは全部で11箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

すると当初バラす前の時点で、距離環が空転してしまっていたので「そもそも無限遠位置自体が不明/ピントが合っていない」状況でしたから、無限遠位置のアタリ付けをゼロから行った次第です。従って大変申し訳御座いませんが、この分が追加料金として加算されます (普通のオーバーホール時には執り行わない作業だから/今回の個体に限定した作業だから)。

ヘリコイドには別に「カシメ環」と言う真鍮 (黄銅) 製の環 (リング/輪っか) が入っており、これに距離環が締め付け固定されます。

また鏡筒には3箇所に均等配置で「イモネジ」が刺さっているのですが (グリーンの矢印)、過去メンテナンス時にこのイモネジを接着しています。当初バラす際に全く回らず「加熱処置」を3回施してようやく解体できていますので、この分の追加請求になります。

申し訳御座いません・・。

↑「ピント微調整環」をセットします。この環 (リング/輪っか) は、上のグリーンの矢印の範囲でしか動かない設計です。

↑こちらはマウント部内部を撮影しましたが、既に各構成パーツを取り外して当方による「磨き研磨」を終わらせた状態で撮っています。

↑外していた各構成パーツも個別に「磨き研磨」した後組み込みます。するとマウント面から飛び出ている「絞り連動ピン」が押し込まれると (ブルーの矢印①)、その押し込まれた量の分だけ「カムが押し上げられ ()」その移動量がそのまま伝達されて、先端部の「操作爪」が移動します ()。

この「操作爪」が前述の鏡筒から飛び出ている「開閉アーム」がガッチリ掴んだままなので、マウント面から飛び出ている「絞り連動ピン」り押し込みで連動して瞬時に設定絞り値まで絞り羽根が閉じる仕組みですね。

その際「なだらかなカーブ」の途中に「制御カム」が突き当たることで絞り羽根の開閉角度が決まる概念です。「なだらかなカーブ」の麓部分が最小絞り値側になり、勾配 (坂) を登りつめた頂上部分が開放側です (グリーンの矢印)。

↑完成したマウント部を基台にセットしたところです。

↑さらに鋼球ボールを組み込んでから絞り環をセットしました。するとご覧のように「微調整環」がセットされており、スプリングのチカラで戻るような設計です。

逆に言うと、単にスプリングのチカラで引き戻されるだけの話であり、それ以上の機能を持っていませんから、この機構部は非常に簡素な設計です。

↑距離環を仮止めしてから光学系前後群を組み付けて無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。

↑そのハズだったのですが、残念ながら組み上げると「距離環を回すトルクムラが酷すぎる」状況です。

ヘリコイド (オスメス) の塗布するヘリコイドグリースの種類や粘性をいろいろ変更しつつトルク調整を試みましたが、どうやってもトルク自体は軽くなるものの「トルクムラが残る」状況です。

それで再びバラしてもう一度最初から組み直しつつ (つまり完全解体まで一度戻った)(笑)、今度は「チカラの伝達経路」を逐一チェックしながら組み上げていったところ「トルクムラが酷くなる原因」が判明しました。

上の写真はその解説ですが、残念ながらこの個体は「開閉アームが変形」しています。と言うのも、マウント部内部の「操作爪」がガッチリとこの「開閉アーム」を掴んだまま、距離環を回すと鏡筒が繰り出されたり/収納したりする仕組みですから (グリーンの矢印)、特に「開放f値f4」の時に限定して急にトルクが重くなるのを突きとめた次第です。

そこで「開閉アームに何かしらその根本原因がある」とみて、3回目再び完全解体まで戻り各構成パーツをつぶさにチェックしたところ「開閉アームのアームが垂直を維持していない」ことが判明しました。

上の写真は少々誇張的に撮影しましたが、垂線としてブルーのラインを附随させたので、僅かに斜めに曲がっているのが分かります。

残念ながらこの当時のフジカ製オールドレンズは全てのモデルで「開閉アームはプレッシングしただけ」の組み込み方法なので、ここが斜めっているからと変形を正そうとチカラを加えると「簡単に打ち込んだ穴が広がりグラグラになってしまう」為、大変申し訳御座いませんが改善させることができません。

従って、この個体は開放f値「f4」の位置のまま距離環操作すると (ピント合わせすると) 重いトルクに陥りますが、絞り環操作して「f5.6f16」間ではとても軽い操作性で、且つトルクムラも発生せずにピント合わせできます。

つまり開放時のみピント合わせするとトルクムラが酷く出てくるのをご留意下さいませ。

申し訳御座いません・・。

修理広告DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了したオールドレンズの写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わりました。無限遠位置もゼロから割り出しを行いキッチリ合焦でき、且つ前述のとおり「f5.6f16」間なら軽いトルク感でピント合わせができます。

↑光学系内の透明度が高い状態を維持した個体なのですが、残念ながら第2群の表裏面コーティング層経年劣化が進行しており、LED光照射でチェックすると「非常に薄いクモリが全面に渡って発生している」状況です。

とても薄いクモリなので「言われればそうかな?」程度のレベルですが、絞り値「f4f8」まではその影響が写真で確認できないものの、絞り値が「f11f16」では残念ながら「コントラスト低下と解像度不足」に多少影響が確認できます。

従ってそれを防ぐ意味からもこの固体の場合はフード装着がお勧めです。特に「f11f16」間で写真の中央辺りが薄くコントラスト低下を招きます。

↑光学系後群側はとてもクリアな状態を維持しています。

↑6枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に正六角形を維持」したまま閉じていきます。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑塗布したヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」の「粘性軽め超軽め」を使い分けて塗っていますが、前述のとおり絞り値が「f4」の時だけ距離環を回すトルクが重くなり「トルクムラが出る」状況です。

申し訳御座いません・・。

無限遠位置 (当初バラす前の位置から適切にセット/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

開放時の距離環を回すトルクムラの発生、及び変形している「開閉アームの改善ができない問題」或いは光学系内の極薄いクモリなど、キッチリ改善できずに大変申し訳御座いません。

この件、ご納得頂けない場合は大変お手数ですが「減額申請」にてご申告の上、ご請求額よりご納得頂ける分の金額を減額下さいませ。減額する金額の最大値は「ご請求金額まで (つまり無償扱い)」とし、当方による弁償などは対応できません。

申し訳御座いません・・。

↑上の写真 (2枚) は、このモデルに装備されている「解像度微調整機能」を解説しています。距離環を回してピント合わせした後に梨地仕上げのシルバーな「微調整環」を保持したまま距離環と一緒に掴んで回すと解像度が最大値になる仕組みです。

上の写真1枚目は、距離環を回してピント合わせした時の説明で、仮に「10m付近で合焦」を想定しています (赤色矢印)。基準「」マーカー位置に距離環刻印指標値の「10m」が合致しています (グリーンの矢印)。

ここで解像度を最大までアップさせて撮影する為に「距離環と微調整環の両方を保持する」のをブルーのライン①で示しています。そのまま (両方を保持したまま) 「微調整環の黒色矢印方向」にカツンと突き当たるまで回すと解像度が最大値になります (ブルーの矢印②)。

2枚目の写真をご覧頂くと分かりますが、当初「10m位置で合焦」させていた距離環が微動して赤色矢印で指し示したとおり「5m辺り」まで動いています (ブルーの矢印位置で距離環はカツンと停止する)。

単に「一目盛分距離環の位置が回るだけ」なので(笑)、それ以上の機能が無いのが梨地仕上げのシルバーな「微調整環」ですから、ちょっと拍子抜けですが(笑)、一応写真を見ると解像度が上がっているように見えます。

↑当レンズによる最短撮影距離1m付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

この実写はミニスタジオで撮影していますが上方と右側方向からライティングしています。その関係でフードを装着していない為に絞り値の設定によりハレ切りが不完全なまま撮影しています。一応手を翳していますがハレの影響から一部にコントラスト低下が出てしまうことがあります (簡易検査具による光学系検査を実施済で偏心まで含め光軸確認は適正/正常)。

↑絞り環を回して設定絞り値「f5.6」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f8」で撮りました。

↑f値は「f11」に変わっています。写真中央辺りのコントラストが僅かに低下しているのが前述の光学系第2群に発生している極薄いクモリの影響です。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。「回折現象」の影響まで出始めているのでさらに中央部分のコントラスト低下が増大しています。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。