◎ P. ANGÈNIEUX PARIS (アンジェニュー) ALPA RETROFOCUS 24mm/f3.5 (silver)《前期型》(alpa)

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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

こんかいかんぺき今回完璧なオーバーホール/修理が終わりご案内するモデルは、フランスは
P. ANGENIEUX PARIS社製中望遠レンズ・・・・、
ALPA RETROFOCUS 24mm/f3.5 (silver)《前期型》(alpa)』です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Україні!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

Slava UkrainieieGeroyam Slava

今回オーバーホール/修理が終わってご案内するモデルは、当方がオーバーホール作業を始めた12年前からの累計でも初めての扱いです。先ずはこの場を借りて今回オーバーホール/修理を賜ったご依頼者様にお礼申し上げます・・ありがとう御座います!(涙)
このような機会を得たことにとても感謝しています。

先日オーバーホール/修理が終わってこのブログにアップした同じフランスはP. ANGÈNIEUX PARIS社製中望遠レンズALPA ALFITAR 90mm/f2.5 (silver)《前期型》(alpa)』同様、さらにその一つ前にアップしたオランダ製の「OLD DELFT製中望遠レンズ」含め、全部で3本がまとめて梱包され届いたので、立て続けにオーバーホール/修理作業していました。

一番最初のオランダ製中望遠レンズはともかく、次に作業したP. ANGENIEUX PARIS社製中望遠レンズと今回扱った超広角レンズALPA RETROFOCUS 24mm/f3.5 (silver)《前期型》(alpa)』は、パッと見の外見で同じ構造のように受け取られます。

実際ネット上を探索すると、これら2つのモデルの内部構造が全く異なる点について世界中何処にも記載がありません(涙)

先日の90mmのほうで懲りてしまったものの、再び今回扱った24mmのほうも、てつきりご依頼を賜ったのは古いほうのモデルで「手動の実絞りタイプのモデル」とばかり早とちりしていたのが拙いのですが・・然しこんなにイヤイヤ作業したのは本当に何年ぶりでしょうか。

とにかくこの2本は難しいのを通り越して「原理原則」がちゃんと掴みきれない点に於いて、全く以て当方の技術スキルを超越してしまった「超絶高難度」のモデルだったとしか言いようがありません(涙)

・・とにかく、本当に辛かったとしか言いようがない(涙)

何しろ完全解体でバラしてしまったワケですから、難しすぎて組み立てられませんと言い訳できるハズがありません(笑) まだ中望遠レンズの90mmのほうがマシだったように思います。今回扱った24mmは、寝る時間も惜しんで・・と言うか夢の中で考え続けていた・・ほぼ2日掛かりに近い作業だった次第です。

このような「変な特技」・・寝ながら夢の中で作業の続きをしている・・が自分に備わっていたなど、小売業で接客販売していた頃には全く無かったのですが(笑)、不思議なモノでこのオーバーホール作業を始めた12年前、特に4〜5年前辺りからは確実に寝る前の作業の続き、或いは「???」だった問題点についてキッチリ考察を進められているワケで、たいていの場合で翌日の朝に起きるとちゃんとヤルべき事柄と言うか「こうすれば問題が解消できる!」と言う答えを得ているから不思議です(笑)

特に70〜80%くらいの確率で夢の中の作業で見えていたとおりの結果に繋がるから、本当に不思議です(笑) 下手に眠いのを我慢して作業するよりも、観念して寝てしまったほうが良いのかも知れません (むしろそのほうが効率が良いのかも?)(笑)

何て思ったりしますが、今回も昨夜寝ながらの夢の中で「こうすればヘリコイドオスメスと距離環との連係がパッチリできるョ〜ぉ!」と答えを導き出せたので、さっそく起きてからそのとおりに作業すると本当に上手く進んでしまったので、改めてビックリです (と言ってもそもそも組み込むのに4時間掛かりみたいな作業なので決して簡単な話ではない)笑)

従って今日の日中は最後距離環を回すトルクの微調整に集中的に取り組めたので、気持的にも余裕が現れて「仕上がりが見えてきていた」ことからとても楽だったと言う次第です(笑)

・・が然し、いずれにしてもこのモデルも今回の扱いが最初で最後です!(涙)

もう二度と手にしたくありませんし、見たくもありません・・(涙) そんくらい辛かった想いしか残っていません(涙)

↑上の写真 (4枚) は、今回扱ったフランスはP. ANGÈNIEUX PARIS社製「24mm/f3.5」のモデルについて写真を載せていますが、左側の2枚は「24mm/f3.5の写真をネット上でも発見できなかった」ので、仕方なく今までに扱ってきた「28mm/f3.5」の写真から転用しています。

本来、例えば「28mm/f3.5」のモデル銘は「RETROFOCUS TYPE R11 28mm/f3.5」になるのですが、左側2枚の写真のとおり「前期型 (左)」とその後に登場したローレット (滑り止め) の意匠が変わった「後期型 (右)」の2つに分かれています。

ところが今回扱った「24mm/f3.5」については2枚目の写真の「後期型のローレット (滑り止め) のタイプ」しか発売されておらず「前期型 (左)」が存在しないようです。

また右側2枚の写真は3枚目が今回扱ったシルバー鏡胴タイプですが「前期型」にあたるそうです (ネット上の解説から)。一番右端の4枚目黒色鏡胴モデルは「後期型」との事です。

従って左から2枚目のタイプが「RETROFOCUS TYPE R51 24mm/f3.5」として1957年9月に発売されているようです。またその後にシルバー鏡胴で今回扱ったモデルが1958年発売になったようですが、モデル銘としては「RETROFOCUS TYPR R61 24mm/f3.5 silver」が正しいようですね。もちろん黒色鏡胴もさらに後に登場しますが同じ光学系を実装してきたようなので、パッと見では単に黒色鏡胴モデルの追加発売のような印象です。

但し、実装していた光学系は異なり、上の写真左から2枚目の1957年9月発売のモデルでは「最短撮影距離50cm」から当然ながら今回のモデルとは光学設計が異なります (TYPE R51のほう)。

右構成図がネット上から当方がトレースした構成図になり、7群7枚のレトロフォーカス型構成です。

一方こちらの右構成図が今回扱ったALPA RETROFOCUS 24mm/f3.5 (silver)《前期型》(alpa)』の構成図になり、8群8枚のレトロフォーカス型ですが「最短撮影距離40cm」へと変わっている為、当然ながら光学系は再設計されています (TYPE R61のほう)。

後で完全解体した全体写真を載せますが、右構成図の 色着色部分は2枚の光学硝子レンズをまとめて一体モールド成形しています。

そもそも各群の光学硝子レンズが全てアルミ合金材の硝子レンズ格納筒に一体モールド成形なのですが、どのような理由なのか「???」なるも第2群と第3群の2枚だけがまとめてモールド成形しています。

従ってバラして見ると光学系の群は「7群8枚」の塊でしかバラせませんが、この第2群は決して貼り合わせレンズではない単独光学硝子レンズなので光学系の構成としては「8群8枚」と言う話になります。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。中央の白色の紙の上に光学硝子レンズを並べています。左端から第1群 (前玉) 〜第8群 (後玉) になりますが、前述のとおり左から2番目のモールド成形には「第2群と第3群の光学硝子レンズが2枚セットで成形されている」状態です (当然ながらバラせないので清掃もできない)。

また4つ目の格納筒が本当はバラせて第5群と第6群に分かれるのですが (共に同様モールド成形)、締め付け固定しているイモネジが錆びきってしまい外せなかったので、破断するのもコワイのでそのままにしています (同様内部の清掃ができない)。

但し、いずれも光学系の状態が大変素晴らしいので、問題なく清掃が終わっています。

相変わらず完全解体してしまいましたが、今回ほどバラしたのを後悔したのは本当に久しぶりでしょうか・・(笑) とにかくこの2日間、マジッでイヤでイヤで仕方なかったです(笑)

原理原則」に則れば、内部構造もすぐに把握でき、どのように連携するのか、どのように動くのかなど、大凡の見当が着きますから何一つ憶する必要がなく、ただたんに仕上げていく/組み立てていく作業工程が面倒くさいだけと言うのが普通のパターンです(笑)

ところが今回は「そもそも原理原則が掴めていないままバラすしか手が無かった」ので、特にヘリコイドオスメスの組み込み方法と、距離環との連係/動作についてどのように考えても「???」しかなく、とうとう夢の中で編み出して救われたという結末です(笑)

たいていの場合はバラしている最中の「観察と考察」で自ずと自然に「原理原則」から導き出されて組み立て方法や作業工程の手順などが見えてくるのですが、今回は全く以て「???」だったのでイヤで仕方なかったのです(涙)

その「イヤな想い」と言うのは、正しく表現するなら「組み立てられそうになくてどうしよう?!どうしよう!」と言う恐怖感と背中合わせだったからとも指摘できます(笑) 作業料金をご請求する以前に「弁償しなければならなくなる!」と言う、稼ぐつもりだったのが結果的に損をするハメに陥るとの恐怖感とでも言いましょうか・・(笑)

バラしたのに組み立てられません・・とは言えませんからねぇ〜(笑) そういう恐怖感です!(怖) 完全解体すると言うのは、そのような覚悟を伴ってヤッている作業なのです!(怖)

↑絞りユニットや光学系前後群が格納される鏡筒です。こちらのモデルも先日の90mm同様、ご覧のとおり各光学硝子レンズが格納されるべき場所は「ピッカピカにアルミ合金材状態」です(笑)

しかも今回の個体も先日の90mm同様「過去メンテナンス時に一切反射防止黒色塗料を着色していない状態」だったので、立て続けに2つの個体で続くのは本当に珍しいです!(驚)

逆に指摘するなら「各群の光学硝子レンズが全て一体モールド成形だから」一切着色せずに過去メンテナンス時も組み上げられていたとの結論に到達します(笑)

当初バラしている最中は、経年の酸化/腐食/錆びにより各群の光学硝子レンズが (一体モールド成形されたまま) 内壁に干渉してしまい取り出せない状況でしたが、オーバーホール後はピッカピカノアルミ合金材で造られている内壁部分を「磨き研磨」したので確実に各群の光学硝子レンズが格納できています。

↑こちらのモデルも同様左から「位置決め環と開閉環に締付環」の3つの構成パーツで絞りユニットが構成されます (赤色文字)。グリーンの矢印で指し示している箇所が互いに接触面になる為「磨き研磨」を施し経年の酸化/腐食/錆びを可能な限り除去し平滑性を担保しています。

またブルーの矢印で指し示している箇所にイモネジの締付用下穴が備わっているので、工場での製産時点にこの位置でイモネジにより締め付け固定を行い「絞り羽根の開閉幅 (開口部の大きさ/カタチ/入射光量) が確定する」話になります。従ってオーバーホール後の絞り羽根の開閉角度も正しい角度で仕上がっています (逆に言うなら過去メンテナンス時にもちゃんと仕上げられていた事になる)。

こちらのモデルの絞り羽根も先日の90mm同様「キモ可愛い」小っちゃな絞り羽根です (カーボン仕上げ)(笑)

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

絞り羽根開閉幅
絞り羽根が閉じていく時の開口部の大きさ/広さ/面積を指し、光学系後群側への入射光量を決定づけている

↑絞りユニットの構成パーツを「磨き研磨」後に組み上げるとこんな感じになります (既に平滑性を取り戻してある)。

↑キモ可愛い8枚の絞り羽根を組み込んだところです。カーボン仕上げですが、相当赤サビが出ていたので溶剤で清掃した分、白っぽくなっています (白っぽくなっている箇所が赤サビが出ていた箇所/領域)。

↑完成した絞りユニットを鏡筒最深部にセットしたところです。

↑この状態でひっくり返して立てて撮影しました。上の写真下側方向が前玉側方向にあたります。鏡筒の外壁に切削されているネジ山は「ヘリコイドのオス側ネジ山」なので、この部分がネジ込まれていくワケです。

鏡筒の外回りに特大の弧を描いたアームが附随します (赤色矢印/設定絞り値伝達アーム)。ブルーの矢印のように鏡筒内部の絞りユニットにセットされている「開閉環」から飛び出る「操作アーム (赤色矢印)」が押されるので、筐体外側に備わる「回転式の絞り値ツマミ」を回すことで、このアームがズズ〜ッと押し込まれたり、逆に離れたりして設定絞り値が絞りユニットに伝達される「原理」です。

↑さらに鏡筒を回して反対側を撮影しました。制御系パーツがビッシリセットされています。棒ばねと捻りバネの2本が介在するので (グリーンの矢印)、それらが経年劣化進行に伴い弱ってしまうと「途端に絞り羽根開閉異常が起きる」のが常です(泣)

今回の個体はまだまだバネ類のチカラが維持できていたので大丈夫です!(笑)

また鏡筒の中腹には「直進キー」と言うネジが1本附随します (グリーンの矢印)。ここで距離環を回した「回転するチカラ」が鏡筒を「直進動させるチカラ」に瞬時に変換されるので鏡筒が繰り出されたり/収納したりする「原理」です

左側に弧を描く前述の「設定絞り値伝達アーム」が捻りバネのチカラで大きく外方向に飛び出ているのがポイントです(泣)

一方絞りユニットにはさらに「シャッターボタン連携レバー」や「開閉アーム」が飛び出ています (赤色矢印)。

これらの制御系パーツが例えばシャッターボタンと連係したり、A/M切替スイッチと連係したり、或いは「回転式絞り値設定ツマミ」と連係したりします。

↑ヘリコイド群 (オスメス) 以外に「距離環」や「ローレット (滑り止め)」或いは「指標値環/締付環/基台」が全て介在する事で、このモデルでの「距離環を回した時の鏡筒繰り出し/収納動作が実現されている」ワケですね (赤色矢印)。

すると「基台」は距離環やマウント部を組み付ける為に用意されている筒状ですが、その内壁の1箇所に「直進キーガイド」と言う溝があります (グリーンの矢印)。

ここに前述の鏡筒の外壁にポツン1本附随していた「ネジ (直進キー)」が刺さって、距離環を回した時に「回転するチカラが即座に直進動に変換される」から鏡筒の繰り出し/収納が実現できます(笑)

ところが問題なのが中央手前に並べてある「距離環のブルーの矢印で指し示している出っ張り部分」です(泣) この出っ張りが何の役目として備わるのかと言えば「距離環を回した時の無限遠位置と最短撮影距離位置の両端を決めている駆動範囲そのもの」なのです。

従って組み上がったこのオールドレンズを操作した時、距離環を回すと「カツン音が聞こえて小気味良く無限遠位置で距離環が突き当て停止する」或いは最短撮影距離の位置で同様カツン音が聞こえて突き当て停止するのは「この突出部分が範囲を決めているからその範囲内で距離環が回っている話」と指摘できます。

・・ここで考えてみて下さい!(笑)

ヘリコイドオスメスをネジ込む時、この両端 (無限遠位置最短撮影距離位置) で突き当て停止するなら、いったいどうやってネジ込めば良いのでしょうか?

どうやってちゃんと無限遠位置でピント合焦するよう微調整すれば良いのでしょうか?

或いはどうやって最短撮影距離の位置まで鏡筒を繰り出した時「ボロッと鏡筒が脱落せずに停止させるのか?」お分かりでしょうか?(笑)

これこそがオールドレンズの「原理原則」であり、無限遠位置と最短撮影距離位置の両端で「まさにその位置で停止していたらヘリコイドオスメスは最後までネジ込めていない」話に至り、多少多めにネジ込む事で無限遠位置の微調整 (ピタリとピント合焦させる) 事が適い、或いは反対側の最短撮影距離位置でもボロッと鏡筒が脱落せずに突き当て停止で正しい位置で (最短撮影距離40cm) 停止する次第です。

↑基台の内側を撮影しました。このように「シャッターボタン用の開口部」の他「A/M切替スイッチ用の切り欠き/スリット」が切削されており、且つ「回転式絞り値設定ツマミ用の軸部分」もあります (赤色矢印)。

ところがグリーンの矢印で指し締めている「直進キーガイドの溝」だけは垂直状に位置が決まっています。どうやってヘリコイドオスメスをネジ込んでいくのでしょうか (ヘリコイドオスメスは互いに回転していく)?(笑)・・これがオールドレンズの「原理原則」です。

↑シャッターボタンの機構部を完全解体したところです。もちろん「磨き研磨」が終わっていて、経年の酸化/腐食/錆びを可能な限り除去してあります。ここでのポイントは赤色矢印で指し締めている「シャッターボタン用のカバー (ネジ込み式)」です。

今回のオーバーホール/修理ご依頼内容の中に「シャッターボタンのところがガタつく」との不具合が指摘されていました。

残念ながらダイキャスト製の受け部分 (骨組み) に対し、このカバー部分のネジ山は「アルミ合金材」なので、おそらく過去メンテナンス時に強く締めつけすぎてしまい「ネジ山がバカになっている/削れてしまっている」ようです(泣)

組み上げ後でもガタつきは改善できいないので、申し訳御座いません・・ご納得頂ける分の金額をご請求額から減額下さいませ (スミマセン/削れてしまったアルミ合金材は復活できません)。

またグリーンの矢印で指し示している部分が、このシャッターボタン機構部のダイキャスト製骨組みが固定される受け部分になりますが、黄鋼材で設計してしまったので「固定用ネジの締め付けが強すぎると撓る」因果関係に至ります。

つまり下手に締め付け過ぎると、今度は「シャッターボタンが最後まで押し込みできなくなる」別の不具合が起きます (最後まで組み上げて不具合が発生する事を確認済)。

従ってガタつきを解消できないと言う話に至りました・・スミマセン!(涙)

↑シャッターボタン機構部はこんな感じで組み上がります。シャッターボタンを押し込むと (ブルーの矢印❶) 内部のアームが回転しながら飛び出します (ブルーの矢印❷) 。その時の飛び出し量に従って (赤色矢印) 前の工程でさんざん説明してきた「鏡筒外回りの制御系パーツが連係動作する」ワケです(笑)

なお、グリーンの矢印で指し示しているネジ山部分は、ダイキャスト製なので削れて摩耗していません。要はここにネジ込むシャッターボタン用カバーをアルミ合金材で設計してきたのが拙いのです!(涙)

↑基台にセットしたところです。既に内部で一部連係パーツにちゃんと連係できています。なお、このモデルのシャッターボタン操作は、先日アップした90mmのほうとは違い「明確に押し込むチカラが必要」な操作方法で、90mmのほうが単に押し込めば良いだけだったのに対し、こちらの24mmのシャッターボタンはカクンと明確に押し込む感触が伝わる印象です (当然ながら内部構造が全く別モノ)。

↑この状態で基台の内部を再び撮影しました。シャッターボタンが押し込まれると (ブルーの矢印❶) 最終的にブルーの矢印❷の連係アームが動きます。その際赤色矢印で指し示しているA/M切替スイッチ伝達板 (円弧を描いた黄鋼製) や回転式絞り値設定ツマミの軸とも連係していますね(笑)

↑さて、いよいよヘリコイド群が入るべき工程に到達しました。上の写真は一旦寝て「夢の中で導かれた」後に撮影しています(笑)

結局、距離環 (赤色矢印) の回転域は無限遠位置と最短撮影距離位置の両端で決まってしまうので、ヘリコイドオスメスをネジ込むにしても「このまま当たり前にネジ込んでもヘリコイドは最後まで入らない」のは当然な話です(笑)・・何故なら距離環が「最短撮影距離」まで半周分しか回らないのにヘリコイド群が入るべき/ネジ込まれるべき「ネジ山の長さは上の写真グリーンの矢印で指し示した領域分が必要」だからです。

しかもこの時、前の工程でさんざんグリーンの矢印で指し示してきた「直進キーとそのガイド (垂直状の溝)」にも鏡筒外壁に飛び出ている「直進キーが刺さる」ワケですから、いったいどうやってヘリコイドオスメスをネジ込めば良いのか・・???

・・これこそが「原理原則」なのですが、このモデルは一筋縄では進めなかったワケです(涙)

何だかんだ文句垂れながらも当方の技術スキルはその程度の低さですから(汗)、本当に恥ずかしい限りです・・(恥)

ちなみに日本国内でこれらALPA向けP. ANGENIEUX PARIS社製オールドレンズ (回転式絞り値設定ツマミを装備したモデル) のオーバーホールが可能と明言している整備会社は、当方が知る限り1社しかありませんから、さすがプロ集団はその技術スキルレベルが別次元です!(驚)・・凄い会社があるものです

この後にちゃんとヘリコイド群をネジ込んで無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行って完成している次第です(笑)

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了したオールドレンズの写真になります。

↑本当に恨めしいだけしかない写真です(笑) とんでもないモデルです(笑)

↑光学系内は一部の群がバラせていませんが、前述のとおりとてもスカッとクリアな状態を維持している個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無です。カビ除去痕もありません(笑)

↑後群側も何も瑕疵がありません。スカッとクリアです。

↑8枚の絞り羽根も赤サビがとれてキレイになりました。当初バラす前の状態と絞り羽根の開閉幅は変化していません・・生産時点のイモネジ用の下穴があるので、その位置でちゃんと締め付け固定しているからです。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。

詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。

↑ヘリコイドのネジ込み位置を当初バラす前の位置とほんの少しだけ変更しました。当初バラす前のチェック時点で「90mm同様極僅かにアンダーインフ状態」だったので、無限遠位置で鋭いピント面に仕上げてあります。

塗布したヘリコイドグリースはいつものとおり「黄褐色系グリース」ですが、当方独自のヌメヌメ感があります(笑)

但し、このモデルの設計上「前の工程で解説した距離環の組み込み方法がネジ山ではない」単にハメ込むだけの方式なので「距離環を回した時にヘリコイドオスメスが互いに回転するものの距離環は擦っている状態のまま」なので、トルク感は軽く仕上げてありますが「擦れ感はそのまま残っている」状況です。

これは距離環の組み込み方法が設計上そのような手法なのでどうにもなりません・・スミマセン!(泣)

↑以上、シャッターボタン部分のガタつきと距離環を回した時の擦れ感についてはバラす前の状態から何ら改善できていないので、以下の通り減額下さいませ・・申し訳御座いません(泣)

オーバーホール/修理ご依頼者様皆様に告知しているとおり、もしもお届けしたオールドレンズの仕上がり状況にご満足頂けない場合は、そのご納得頂けない要素に対して「ご納得頂ける分の金額をご請求金額より減額」下さいませ。
減額頂ける最大値/MAX額は「ご請求金額まで (つまり無償扱い)」とし、大変申し訳御座いませんが当方による弁償などは対応できません・・申し訳御座いません。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離4cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑回転式ツマミを回して設定絞り値「f4」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f5,6」で撮りました。

↑f値は「f8」に上がっています。

↑f値「f11」です。

↑f値「f16」での撮影です。

↑最小絞り値「f22」での撮影です。絞り羽根が閉じきっている状況なので「回折現象」の影響が現れ始めています。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。

今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。明日3本まとめて梱包し発送させて頂きます。

どうぞよろしくお願い申し上げます。