◎ Tokyo Kogaku (東京光学) Topcor-S 5cm/f2(L39)

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TC52(0507)レンズ銘板

東京光学LOGO今回の掲載は、オーバーホール/修理ご依頼分のオールドレンズに関するご依頼者様へのご案内ですので、ヤフオク! に出品している商品ではありません。写真付の解説のほうが分かり易いため掲載しています (オーバーホール/修理の全工程の写真掲載/解説は有料です)。

1954年に発売された当時のレンジファインダー・フィルムカメラ「レオタックスF」やその後の「レオタックスTV」用に用意された東京光学の標準レンズです。モデルバリエーションは「初期型・前期型・中期型・後期型」と分かれ、光学系の設計から筐体の意匠、或いは使用している材質までそれぞれのバリエーションで異なっています。

今回オーバーホールご依頼を頂いた個体は「中期型」にあたり筐体の一部がまだ真鍮製で作られていた頃のモデルです。光学系は初期型のみが5群6枚構成で前期型〜後期型は4群6枚に変わっており、それぞれのバリエーションで細かな光学系設計の仕様変更もされていたようです。この「Topcor 5cm/f2」シリーズの中では今回の「中期型」モデルが最も描写性能に優れていると評判のようです。

ご依頼の内容は光学系内の清掃と絞り指標値環が回ってしまう現象の改善でした。

TC52(0507)仕様

TC52(0507)レンズ銘板

オーバーホールが完了したオールドレンズの写真を掲載していきます。

TC52(0507)1光学系内の清掃に関しては、残念ながら光学系前群が硝子レンズ格納筒から外すことができませんでした。真鍮製のレンズ格納筒に第1群 (前玉) と第2群 (貼り合わせレンズ) が格納されているのですが、固定環を外した後に専用工具を使って硝子レンズを引き抜こうとしても全く動きません。恐らくバルサム (貼り合わせレンズの接着剤) が経年で極微量流れ出てしまい格納筒の内壁に固着していると思います。或いは硝子レンズのコバ塗膜の剥離も相応に進んでいるのでコバ塗膜の固着なのかも知れません。いずれにしてもいろいろ試しましたが前群は外せなかったので前玉表面と第2群の裏面のみ清掃しています。

TC52(0507)2清掃により光学系内の透明度は格段に上がったのですが、前玉に無数にある極微細な点状のモノはコーティング層の劣化に拠ると考えられるので、これは一旦コーティング層を剥がして再蒸着しない限り改善は期待できないと思われます (当方では処置できません)。前玉の極微細な点キズや汚れは清掃でも全く改善しませんでした・・誠に申し訳御座いません。

TC52(0507)9光学系後群は解体できたので清掃でキレイになっています。後群を解体する際にやはり硝子レンズ格納筒から容易に外れませんでした。外した後に確認するとバルサムがほんの僅かにはみ出しておりそれが格納筒の内壁に附着して残っていました。恐らく経年でバルサムが流れ出てしまったのだと思われます (或いは過去のメンテナンスでバルサムを入れ替えたのか)。いずれにしても格納筒の内壁に硝子レンズを接着しているようなニュアンスで固着していましたから光学系前群も同じような状況と推察します。

TC52(0507)310枚の絞り羽根にはご指摘の通り油染みがありましたが、それよりも重要なのは4枚の絞り羽根に「折れ」「切れ」が生じていたことです。4枚の同じ位置で山型にほんの僅かに折れていたり、或いは1枚は同じ箇所で切り込みが入っていました・・切れてしまったのだと思います。しかし他の6枚にはその同じ箇所に痕跡が一切無いので「過去に絞り羽根が咬んでしまった」ことが原因ではないように思われます・・確かなことは分かりません。

折れに関しては少しずつたたき込みを行い平坦に戻しましたが切れてしまっている1枚は元には戻せません。1mmほどの切り込みが入っているので次回絞り羽根の動きが鈍くなった際には「切断」の懸念がありますのでご注意下さいませ。

ここからは鏡胴の写真になります。

TC52(0507)4

TC52(0507)5

TC52(0507)6

TC52(0507)7使用したヘリコイド・グリースは「粘性:中程度」を塗布しました。結果、とても滑らかな駆動になりトルク感も完璧に均一です。ヘリコイドの材質が真鍮製 (ガンメタル) なので、塗布したグリースは黄褐色系グリースですが距離環を回す感触は「僅かに重め」か「普通」程度です。ピント合わせは大変楽に操作できるトルク感に仕上がっています。

距離環指標値や絞り環指標値の白色文字が一部褪色してしまったので仕方なく当方にて着色しています。筐体は「磨き」をいれたので落ち着いた美しい仕上がりになっており、クロームメッキ部分も「光沢研磨」を施したので輝いています。

TC52(0507)8絞り指標値の空回りは、指標値環を締め付け固定している「イモネジ (ネジ頭が無くネジ部にいきなりマイナスの切り込みを入れたネジ種) 」が緩んでしまったのが原因ですので締め付け固定しました。その際に基準マーカー「」と「」の位置合わせを行っています。また当初クリック感が「軽い」感触だったので僅かに強めにシッカリした感触でクリック操作できるよう調節しています。

その他無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認をそれぞれ執り行い滞りになくオーバーホールが完了しています。

TC52(0507)10当レンズによる最短撮影距離1m附近での開放実写です。今回のオーバーホールご依頼誠にありがとう御座いました。