◎ TOKYO KOGAKU (東京光学) RE. AUTO-TOPCOR 28mm/f2.8 (silver)(RE/exakta)

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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホール/修理が終わってご案内するモデルは、国産は
東京光学製広角レンズ・・・・、
RE. AUTO-TOPCOR 28mm/f2.8 (silver) (RE/exakta)』です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Україні!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

Slava UkrainieieGeroyam Slava

今回ご案内する個体はオーバーホール/修理ご依頼分として承りました。当方がオーバーホール作業を始めた12年前からの累計で、東京光学製オールドレンズも何本か扱ってきましたが、それらの中で広角レンズ域のモデル「21mm35mm」あたりについて一括管理していた記録用データベースを保存していたハードディスククラッシュにより、数年前に全てのデータが消失してしまいました(泣)

従って新たに扱ったモデルのみ現在掲載しています。今回は「焦点距離28mm」についてオーバーホール/修理を賜ったので、実質的に扱いページがこのブログに存在せず初めてになります (過去のオーバーホール工程写真データや解説なども全て消失しているから)。

東京光学製オールドレンズについては、正直なところオーバーホール/修理も含めあまり関わりたくない気持ちが大きいです・・その理由の最たる部分を占めているのは「内部構造と設計にカメラメーカーの特徴が多く、特に微調整について相当神経質だから」と言えます。

一番厄介なのが「絞り羽根開閉異常に纏わるトラブルの改善が相当難しい」合わせて「特異な設計に拠る鏡筒の繰り出し/収納関連のトラブル改善も難儀する事が多い」など挙げられます。

これを端的に表現するなら「アルミ合金材パーツを多用した粗削り的な加工と構造に終始しサービスレベルでの配慮が成されていないから」とも言い替えられ、凡そNikonやOLYMPUSなどの光学メーカー製品と比較すると扱いにくい設計概念を採っています。

その意味で以前から東京光学やペトリカメラ、或いはCOSINAなどについて、当方にはどうしても「カメラメーカーの造り」にしか受け取られず扱いにくさを感じます。その一方でNikonやOLYMPUS他MINOLTAなども含め、オールドレンズを完全解体していくと「サービスレベルでの細かな配慮が随所に施されている」のが一目瞭然で、例えばアルミ合金材の切削一つに於いても「必要以上とさえ感じられるほどまでに面取り加工に拘っている」といつも感心させられるのが常です(笑)

これが凡そ主要パーツだけならまだしも、下手すれば締付ネジに至るまで相当神経質に配慮した設計を採っているのが歴然なので、不本意ながら (意識せずに)「カメラメーカー vs 光学メーカー」との構図で捉えようとしてしまうから「どうしても粗ばかり見えてしまう」のがホンネです(泣)

今回のオーバーホール/修理についても「メインの不具合解消は絞り羽根の油染みとその粘りによる絞り羽根開閉異常の改善処置」との考えで臨んでみたものの、蓋を開ければ「相当神経質な絞りユニットの設計に四苦八苦」した次第で・・後悔先に立たず・・的な印象でした(涙)

ところが本当に数年ぶりに東京光学製オールドレンズを扱ってみたところ、その整備作業に関しては前述のとおり辟易するものの・・何と素晴らしい描写性能ではないか・・と今さらながらに感心した次第で、扱いにくいと吠えていた自分の浅はかさを反省した次第です(汗)

・・巷では25mmばかり褒め称えられますが、この28mmも何と素晴らしいことか!(涙)

今一度考えを新たにする機会を与えて下さったご依頼者様に・・この場を借りて感謝の念と共にお礼申し上げます!(涙)

確かに日本初の一眼レフ (フィルム) カメラ向けたるレトロフォーカス型光学設計として、その栄光を褒め称えるなら25mmなのでしょうが、如何せん「サクッと撮影できる扱い易さ」と共に「おぉ〜!」と唸ってしまうほどのその写り具合とのバランスの良さ/両立はなかなか捨てたモノではないと感心感心でした!(笑)

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その昔、先の大戦時に「陸のトーコーに海のニッコー」と巷で揶揄されたほどに、大日本帝国陸軍の御用達として様々な光学製品を軍需供給し続けていた東京光学です。それもそのハズでいつだったか、ネット上の何処かのサイトで「大日本帝国陸軍の要請により」当時の服部時計店精工舎の測量機部門を母体として「東京光学機械株式会社」を開設したのが1932年9月だったように覚えています。

元々がスタート地点からして「測量機器が主体」だった点に於いて、何となく内部構造からして「その臭いプンプン」的にどうしても考えてしまいます(笑)

穿った捉え方で大変申し訳御座いませんが(汗)、どうして「海のニッコー」たるNikonを挙げ諂うのかと言えば、実は陸での使用に比して「海では塩害対策が必須」との想いが裏に隠れているからでもあります。陸は陸で「どんなに頑張っても微細な砂が内部に入り込んでくる」のが常と受け入れる気持ちもありますが、それにも増して塩害は光学機器類にとり天敵です(泣)

当方はもともと生まれが神奈川県の江ノ島近くだった事もあり、その塩害の凄まじさはイヤと言うほど知っているからでもあります(泣) 海の上ならともかく、海の近くに住むと知らないウチに「砂混じり状態」に陥り泣くに泣けない次第です(涙) 夏などはいい調子になって窓を開けていると、アッと言う間にカラダ中「塩と砂でベタベタ!」と何とも気持ち悪いったらありゃしません(笑)

東京光学の一眼レフ (フィルム) カメラで一躍脚光を浴びるのは、1963年に登場した世界初TTL機構装備「TOPCON RE SUPER」で、その際オプション交換レンズ群の広角レンズに含まれていたのが先に登場したRE, Auto-Topcor 25mm/f3.5であり、確かに日本初の本格的なレトロフォーカス型光学系構成としてその前玉のデカさ故に、その認知度も上がったのでしょう(泣)

しかし今回扱ったRE. AUTO-TOPCOR 28mm/f2.8 (silver) (RE/exakta)』についてはその時のオプション交換レンズ群の中には含まれず、登場は何と相当遅い時期1977年まで待つ必要がありました。wikiによると発売時に設計を手掛けたのが東京光学であるものの、製産に当たったのは「シマ光学」だったようです。「TOPCON RE200」発売に合わせて登場したのが今回の扱いモデルです。

その根拠がちゃんと残っており、このフィルムカメラの取扱説明書のオプション交換レンズ群一覧にちゃんと「NEW」が附してあります。

この一覧を見ると「RE Topcor」と「Auto」文字が附随していません。モデル銘が「RE TOPCORシリーズ」へと変遷したタイミングもまさにこの時期だったのかも知れませんが、深く探求する気持ちが湧きません(笑)

そもそも東京光学の沿革をチェックすると1969年10月に100%出資の子会社として「東京光学精機株式会社 (現株式会社トプコンオプトネクサス)」を設立しカメラの製造に着手していると謳っている他に「シマ光学」まで関わり、それだけでもう調べる気持ちが失せてしまいました(笑) さらに東京光学さえも1980年12月にカメラ事業から撤退してしまうので、詰まる処元の木阿弥で「測量機器」に回帰している始末です(泣)

・・ちなみに当方がいまだに納得できない設計面での点について後ほど解説しています。

まるでカメラメーカーが悪いかのように卑下しているようですが、決してそのような意味合いではなく「あくまでもオールドレンズとしての内部構造とその設計面から捉えれば如何なものなのか」との自問自答的な範疇に留まります(汗)

・・そのクセ以下にご案内するとおりこのモデルの写り具合はマジッで凄いです!(驚)

正直な話・・コイツ、普段使いの標準レンズ的にまるッきし使えちゃうんじゃない???・・というのが第一印象です (何しろ最短撮影距離30cmだし、しかも広角レンズ域だし)(笑)

・・とまぁ〜改めて惚れ直したと言うか、今一度一目惚れ的な懐かしい感情がフツフツと(笑)

青春時代にそういうシ〜ンがあったりしますョねぇ〜(笑) 決してホントは本命ではなかったのに、気がつけば付き合っていたりして、それがまた意外とシックリ来て心地良かったり(笑)

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↑上の写真はFlickriverで、このオールドレンズの特徴的な実写をピックアップしてみました。
ピックアップした理由は撮影者/投稿者の撮影スキルの高さをリスペクトしているからです
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています/上記掲載写真はその引用で
転載ではありません。

一段目
今さらながらにflickriver.comでいろいろチェックしていたら、まるッきし琴線にビンビン触れまくりでちょっと冷や汗状態です(笑) 光学系がレトロフォーカス型構成なのでそもそも真円の円形ボケ表出が難しいのは致し方なし的な印象です。それよりも意外と収差ボケのほうが煩めと言うか、二線ボケ傾向も否めず少々背景には心配りが必要かも知れません(汗)

二段目
この段の特に左側2枚の実写で「・・・!」目が点状態でした(笑) ピント面の花の花弁が空恐ろしいくらいに繊細にエッジ表現できている様が「これ、マジッに28mm???」と疑いたくなるほどです(笑) しかも2枚目の写真などは「背景が明るめの空?!!」と言うほどに黄色の花弁がどんだけ繊細に、然し鋭さをキープしたまま写っていることか!(驚)

確かにこの撮影者の撮影スキルも素晴らしいのでしょうが、それに応えてちゃんと写し込めているところが凄いのです!(驚) フツ〜は畏敬にこんな空をバックにしたら黄色い花のピント面が掠れてインパクトを失うハズなのに・・どんだけ鋭いまんまなのか?!です。

・・この写真1枚でこのモデルの印象がガラッとヒックリ返りました!(笑)

三段目
見て下さい!・・この質感の高さ・・被写体の素材感や材質感を写し込む質感表現能力に秀でているのが一目瞭然です。金属質、石材の分け隔てが素晴らしい質感表現で残っています。

四段目
この段ではワザと敢えて「暗部の写り具合をチェック」するつもりで実写をピックアップしました。ところが暗部の耐性が凄い事!(驚) シッカリグラデーションを残しつつ暗がりを捉えている様が素晴らしいです!(驚) フツ〜28mm辺りになるとストンと暗がりが潰れてしまうのですが、まるで標準レンズの如く頑張っちゃっています!(涙)

五段目
さらに今度は明部の明るさにどんだけ粘れるのかをチェックする為にピックアップしました。左端からの3枚を観る限り「ピ〜カンでどんだけ頑張っちゃっているのか?!」が涙ぐむほどです(笑) それは海岸のゴロゴロした岩肌や (同色系統でまとまってしまわずにちゃんとグラデーションの階調を残している) 2枚目の石材、或いは3枚目の壁面写真など鳥肌立ちました!(汗) それでいて右端のように背景にまるで逆光の如く明るい空が来ているのに建物の開帳が残せている素晴らしい写真です。

六段目
人物写真を敢えてピックアップしましたが、まるでポートレートレンズでの撮影のように生々しい人肌感覚が写り込んでいる様に絶句です!(驚) 広角レンズ域側でこのようにポートレート写真を意識してしまうと言う、今までにあまり多くを記憶していない新鮮さが堪りません!(涙) これは「新たな発見」に繋がりました・・人物撮影をするのにポートレートレンズ域だけが主力ではないと、考えを改めざるを得ません。

確かにこのような広角レンズ域のモデルなら自然に最短撮影距離が短めなので、光学設計に拠ってはこのように人物撮影に適しているとの捉え方ができる・・と知りました!(泣) 人物撮影にはポートレートレンズと決め込んでいた自分の浅はかさを嘆きましたねぇ〜(笑) 広角レンズである分、画角が有利なので構図も新たな分野で攻め込めるワケで、これは意外でした!(驚)

光学系は焦点距離:28mmである以上真面目にレトロフォーカス型ですが(笑)、ネット上をいろいろチェックするとどこのサイトでも右の構成図を掲載しています。

そもそも東京光学のフィルムカメラ向け取扱説明書でオプション交換レンズ群としてちゃんと一覧に載せていないのが拙いのですョ!(怒)
光学系構成の枚数のみ記載していて「何群なのか?」を明示しないからこう言う事になります。確かに7枚構成なのですが正しくはこのモデルについて「7群7枚」と記載しないから、どこのサイトでもこの構成図を載せてしまいます (右構成図は6群7枚)。

右構成図はネット上の光学系構成図から当方がトレースしたものですが、これは「RE TOPCOR Nシリーズの28mm/f2.8」であり、1977年に発売された一眼レフ (フィルム) カメラ「TOPCON RE200」発売時点で用意された「RE TOPCORのNEWシリーズ、略してNシリーズ」と東京光学内でも呼ばれていたようです・・レンズ銘板が「RE TOPCOR銘に変遷したタイプ」で右写真のモデルになります。

一方こちらの右構成図は今回のオーバーホールで完全解体した際に、光学系の清掃時当方の手によりデジタルノギスを使い逐一全ての群の光学硝子レンズを計測したトレース図です。

如何ですか??? ちゃんと7群7枚の歴としたレトロフォーカス型構成なのが分かると思います。ちゃんとレンズ間も計測して正確にトレースしています。

特筆すべきは光学系第4群を「後群側に入れ込んできたパワー配分」として設計してきたところに他社光学メーカーとの違いを見出せると (知識/知見乏しい当方の光学知識にしても) 今回バラしてみて素直に驚いた次第です。

そもそも後玉の大きさをちゃんと意識すべきなのに (外見から誰でも把握できる) それをしようとしないから平気で6群7枚の構成図を載せまくります。光学系第1群前玉「外径サイズ35.97mm」に対し、光学系第7群後玉「外径サイズ23.98mm」と、右構成図を見るとちゃんと「光学系後群側に入るとちゃんと徐々に大型化している設計」なのが分かります・・だいたい後玉側方向から光学系内を覗き込めば別にバラさずともちゃんと確認できるのに (少なくとも光学系第5群〜第7群で少しずつ大型化しているのがちゃんと視認できる)、それをちゃんと確認しないからダメなのです(笑)

今回扱ったこのモデルは「前玉は特段大口径ではない」とするものの「後玉は28mmにしては意外にも大口径」なのを、ちゃんとメリットとして捉えるべきです。計測機器メーカーなのかも知れませんが、当方にはこの当時の東京光学の (遅れて登場したこのモデルだからこその) 意地が見え隠れしているように感じ、とても素晴らしいオールドレンズだと今回改めて感心した次第です。

・・その意味でも何でもかんでも25mmばかり褒めちぎるのは少々偏重すぎないか???

ちなみに光学系構成図の中で第3群の両凸レンズは「前玉側の曲率が少なめで絞りユニット側方向の曲率が高い」設計を採っています。合わせて後群側第4群で目一杯曲率を高めた凸メニスカスを介在させる事で屈折率を稼いでいるようにも見えます。この点からしても前群側をシンプルに抑えることで「その一方後群側は最大限にこだわりを魅せた」光学設計と当方は受け取りました。

・・下手に開放f値をf2.5などに上げずに、やれることをキッチリヤッたモデルではないか!

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。このモデルに関する全ての過去データが消失しているので、実質的に今回の扱いが初めてのようなものです。

今回のオーバーホール/修理ご依頼内容は単純明快で「絞り羽根の開閉異常の改善」であり、その因果関係もハッキリしており「絞り羽根の油染みと共に粘りを帯びており特に最小絞り値からの復帰 (完全開放) が鈍い」とのご指摘です。このような内容なので、パッと考えると「絞り羽根を清掃すれば元に戻る/改善される」と考えましたが、今回の個体はそんな簡単な話ではありませんでした・・(泣)

・・絞りユニットの微調整だけに何と4時間がかり!(驚)

といささかお疲れモードで御座います(笑)

↑その理由をこれから解説していきます。上の写真は絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。光学系が「7群7枚のレトロフォーカス型構成」なので、どうしてこんなにコンパクトな鏡筒で済むのかといぶかしがる方も居られるでしょう(笑) たいていの場合、広角レンズ域の特に構成枚数が多いレトロフォーカス型になると「光学系前群は延長筒を用意してそこに半分以上の光学硝子レンズを格納している事が多い」のが現実です(笑)

上の写真を撮影したのは4時間経過後に「何が悪かったのか?」が明確になり、その改善処置を講じてから撮影した写真です。赤色矢印で指し示している箇所が問題だったのです。

当初絞り羽根を清掃してフツ〜に組み上げたのですが、全く絞り羽根の開閉異常が改善されず仕舞いで「???」でした(泣) やっぱり東京光学製オールドレンズは絞り羽根の微調整が神経質すぎて厄介なのか・・と変に納得した次第です(泣)

上の写真の赤色矢印の箇所は当初バラした直後は「真っ黒に着色されていた」のです。別にそういう鏡筒の設計を採るオールドレンズは星の数ほどあるので別に「???」には至りませんが、然し「何で溶剤で溶けるのか???」だったのです。

製産時点の工場でメッキ加工されているなら溶剤で溶けませんし除去できません。溶剤で溶けると言う事は「明らかに過去メンテナンス時に着色された」と捉えるべきです。それにしても何だかシックリ来ません。

↑その答えがこちらの写真です。今度はひっくり返して後玉側方向から鏡筒内を撮影しています。分かり易いようにワザと露出オーバーで撮影したのですが、写真スキルがド下手なのでよく分かりません(笑)

赤色矢印で指し示している箇所が一つ前の赤色矢印と同じ箇所で、過去メンテナンス時に着色されていた場所です。ご覧のように「外周を接着剤で固めている」のが一目瞭然です。

実は、このような所為は過去メンテナンス時の整備者が執った所為ではなく「何と設計時点からこのように接着するようになっている」のがこのモデルなのです!(驚)

ハッキリ言って・・信じられません!(笑) ワザワザ接着するなら「最初からアルミ合金材削り出し時にそのように切削すれば良いだけ」なのに、何でこういう接着する手法を製造メーカー自身が採るのか全く以て理解できません!(驚)

当然ながら製産時点からの話なので「今回のオーバーホール工程でも一切剥がさずにそのまま利用 (組み上げる)」した次第です。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

さらに絞り羽根の別の1枚拡大撮影しました。赤色矢印で指し示ししている箇所をご覧下さいませ。

製産時点は「まるで枝豆の房のように絞り羽根がブラブラとブラ下がってプレッシングされていた」のがこれで判明します。おそらく「キーの金属棒まで一気にプレッシング」して各絞り羽根のカタチに仕上がっていたと推測できます。

それはそれで別にそのようなプレッシング工程を経て絞り羽根が作られていたのは数多く世界中に顕在するので別に珍しい話でもありません。

当方が問題視したのはそのプレッシング工程の話ではなく「何で赤色矢印で指し示したようにブラ下がっていた接続箇所が残ったまま切り取っているのか???」と言う点です。当時このモデルが製産されていたのが発売時期からして1977年前後〜1980年12月迄ですから確かに下請けの格付だった当時のシマ光学に製産部分を委託していたのだとすれば、さらにもう少し長い期間生産され続けていたと考えられますが、そうだとしても「どうして日本のメーカーのクセにこのようにバリを残したまま平気で組み立ててしまうのか???」との点に於いて当方はどうにもこうにも許せません(笑)

これが例えばNIkonやMINOLTA、或いはOLYMPUSなどなど、いわゆる当方が「光学メーカー」と呼称している/認めている会社なら、このようなバリなど残さずキレイにカッティングしています。こういう部分の (決して外部からは見えませんが) の「取り組み方がダメなのでカメラメーカーの造り」と罵っているのです。

これが旧東西ドイツの光学メーカーやロシアンレンズなら別に文句も言いませんが、当時の日本メーカーとなれば「ちょっと恥ずかしくないのか???」と言いたいですね・・(泣)

↑こちらの写真は鏡筒内の最深部に収まるべき絞りユニットを構成する「開閉環位置決め環」です (赤色文字)。今回の個体は特に「開閉環側のアームの一つが極僅かに斜め状」だったのです (グリーンの矢印)。

↑今度はその「開閉環」だけをひっくり返して裏面方向から撮影しました。グリーンの矢印で指し示して箇所に「白っぽい筋が残っている」のがハッキリと分かります。

実はこのような現象は今回の個体だけに限らず「意外と東京光学製オールドレンズの多くの個体で多い」のがリアルな現実です。そもそもこの「開閉環」も、もう一方の「位置決め環」もアルミ合金材の切削で用意されていますが、ハッキリ言ってそんなに材質として固くはありません。

特にこのように「単にアルミ合金材をカタチ造って一気にプレッシングして吐き出す」設計の場合、ご覧のような「アーム状に垂直に瞬時にプレッシングで曲げてしまう手法」で用意しています。

従って「駆動箇所として考えた時に一番弱いのはこの垂直状に折り曲げられた曲がりの箇所」なのはド素人の当方が考えただけでもすぐに分かるのに、そのような設計を平気で採るのです(泣) これが「光学メーカー」になると材を変更してきたりそもそもプレッシング内容を変えたりして「耐用年数の改善まで配慮した設計を採る」のが一般的です。

・・だからこそ当方はカメラメーカーの造りだと貶している!

次第です。今回の個体でこの白っぽい筋がどうしてついたのかは「???」ですし (鏡筒内壁に擦っていたのか?)、極僅かに斜めッていたので垂直状に正しましたが、正直あまりこのアームを何回も曲げているとすぐに亀裂が入るのでコワイのです!(怖)

・・既に亀裂が入ってしまった個体を何回も見てきているから!(怖)

↑絞りユニットを鏡筒最深部にセットして完成したところです (4時間経過後)(泣)

↑完成した鏡筒をひっくり返して再び後玉側方向からの撮影です。ご覧のように裏面には「制御系パーツがギッシリ」状態です(笑) ハッキリ言ってここの微調整が相当難度が高く「真剣にマジッに改善しようとしたら幾ら時間があっても足りないくらい」と思えるほどに厄介です!(泣)

まず鏡筒の「光学系後群用の格納筒がネジ込まれる場所の周りに制御環がセットされる」のを赤色矢印で指し示しています。その「制御環」の途中には「連係アーム」と言う金属製のL字型アームが備わります (赤色矢印)。この連係する先は「絞り環の専用パーツ (爪)」だったりします。

また「制御環」の周囲には2本の引張式スプリングが介在しているのが分かります。それぞれの引張式スプリングはブルーの矢印❶の方向とブルーの矢印❷方向の互いに相反するチカラを及ぼしています。

これは詰まる処「常に絞り羽根を開くチカラ (ブルーの矢印❶) と常時閉じるチカラ (ブルーの矢印❷) を互いに及ぼしている」引張式スプリングと指摘できます。つまり互いに相反するチカラのバランスの中で「絞り羽根は正常に制御されて開いたり閉じたりしている原理」です。

ところがこれを過去メンテナンス時の整備者の多くが思い違いして「スプリングを伸ばしたり短く切ったりして強制的に及ぼすチカラを変えてしまう所為」が氾濫しています。

ラッキ〜な事に今回扱ったこの個体は「スプリングに何も所為が及んでいなかった」ので良かったのですが、そのような個体を数多く見てきた次第です (ロクな事をしません!)。

もっと言うなら「何で互いのチカラバランスの中でスプリングが在るのに長さが違うのか???」と言う要素に気づきませんし、そもそも介在する構成パーツが互いに違っています。

従ってここのスプリングに纏わる箇所の微調整は相当ハードルが高いのを整備者なら心得るべきです・・それをスプリングだから伸ばしたり短くすれば改善すると安直に考えるからダメなのです(泣)

・・何故なら製産時点はそんな所為など処置せず新品の引張式スプリングをセットしていた。

誰でもそんな事は分かるハズなのに多くの整備者が余計な所為を行います(泣) ちなみにグリーンの矢印で指し示しているのが前の工程で説明してきた「極僅かに斜めッていたアーム」です。

するとこのアームに及んでいる引張式スプリングのチカラから「常に絞り羽根を閉じる方向のチカラが及んでいた」のが斜めってしまったので「最小絞り値側でf11〜f22に閉じなくなった」と容易に推測が成り立ちます。

ちゃんと垂直状にアームが伸びていれば引張式スプリングのチカラで正しく最小絞り値「f22」まで閉じるハズなのです。

↑同じように鏡筒裏側を撮影していますが、今度は少し角度を変えて別の場所を撮影しました。「制御環」に前述の「連係アーム」が備わり (赤色矢印) 一方さらに途中に「なだらかなカーブ」も用意されています。そのなだらかなカーブの坂/勾配に「カムの金属棒が突き当たる」のを上の写真で解説しています (赤色矢印)。

なだらかなカーブの坂/勾配を登りつめた頂上部分が「開放側」であり、その反対側の麓部分が「最小絞り値側」です (グリーンの矢印)。ここにカムの金属棒が突き当たる事で「絞り羽根の開閉角度が決定する原理」なワケです・・上の写真では坂/勾配の麓部分にカムの金属棒が突き当たっているので「絞り羽根がちゃんと最小絞り値まで閉じきっている」のが一目瞭然です。

・・これが多くのオールドレンズの絞り羽根開閉制御に採用されている仕組み/原理です。

オールドレンズのモデルによっては頂上が「最小絞り値側」で麓が「開放側」と反転している場合もありますし、もっと言えば前述してきた「開閉環と位置決め環が互いに回ってしまう難度の高い設計」もザラにあったりします(笑)

↑上の写真は完成した鏡筒にネジ込まれる「光学系前群用格納筒」と「光学系後群用格納筒」です (赤色文字)。グリーンの矢印で指し示している箇所は当初バラした直後に過去メンテナンス時に着色されていた「反射防止黒色塗料」の箇所です。

↑例えば「光学系前群用格納筒」をピックアップしていますが、赤色矢印の箇所ははちゃんと製産時点にメッキ加工されており「マットで微細な凹凸を伴う梨地メッキ加工仕上げ」ですから、当然ながら溶剤などで溶けませんし除去できません。その一方で前述のグリーンの矢印で指し示した箇所の塗膜は溶剤で溶けて除去できたりするワケです(笑)

・・如何に過去メンテナンス時の整備者の自己満足大会なのかが分かると思います(笑)

↑そしてさらに実際に光学系前群と後群の光学硝子レンズを清掃してから組み込んだ写真が上の写真です。何しろ撮影スキルがド下手なので上手く撮れていませんが(汗)、赤色矢印で指し示した箇所は曲率がとても高い突出の光学硝子レンズが露わになっている箇所です。下手に下向きに置いたりすると中心部に点キズを付けてしまうほどに曲率が高いのです!(驚)

・・おそらくこれがこのモデルの描写性能の高さを物語っている要素なのかも知れません!

↑鏡筒がやっとの事で完成したのでヘリコイドオスメス側に工程を移します。上の写真は距離環やマウント部が組み付けられる基台です。

↑一方こちらの写真はヘリコイド (オス側) を撮影しています。焦点距離:28mmの広角レンズなのに、意外にも相当長い距離の勾配を持つネジ山がビッシリです (つまり繰り出し量/収納量が多い事が分かる)。

↑さらにそのヘリコイド (オス側) に今度は「直進キーガイド」を締付ネジで固定したところです (赤色矢印)。東京光学製オールドレンズの多くのモデルで、このように「直進キーガイドが別途備わる」設計を採ることが多いですが、これが相当厄介なのです(泣)

右横にこの直進キーガイドのコの字型の切り欠きに入るべく「直進キー (赤色矢印)」を並べて説明しています (グリーンの矢印のように入る)。

どうしてこの部位の微調整が相当厄介なのかと言えば「締付ネジで締め付け固定するものの極僅かなマチ幅を持つから」と指摘でき、要はここで距離環を回す時のトルク感が決まってくる次第です。

↑ヘリコイド (メス側) を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます (赤色矢印)。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

↑今度は前述のヘリコイド (オス側) をやはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込み増す。このモデルは全部で7箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります (赤色矢印)。

↑こんな感じでヘリコイド (オスメス) 群がネジ込まれ、且つ当然ながら繰り出し/収納をする必要があるので「直進キーが介在する」のを解説しています (赤色矢印)。するといったいどうやってトルク調整をすれば良いのでしょうか???(笑)

そんなのは「観察と考察」がちゃんどてきていれば「原理原則」に則り容易に把握できます(笑) よく「教えてほしい」とメール着信しますが「教えるワケがない」ですし、そもそもそんな簡単な表現だけで教えられるような内容ではありません(笑)

↑ヘリコイド (オスメス) 群のネジ込みが完了したところでひっくり返しています。ここからマウント部の組み上げへと工程を進めます。

↑指標値環をセットしたところです。

↑ここに組み込む「絞り環」はご覧のように「爪の環」と別々にパーツが構成されています。その理由は「爪の環/リング/輪っかが真鍮 (黄鋼) 製だから」です。赤色矢印で指し示している「操作爪」は鏡筒裏側の制御環に備わる「連係アームをガシッと掴む為の爪」です。

↑上の写真も数多くの東京光学製オールドレンズで採用されている「同じ材のアルミ合金材で作られている鏡筒用の締付環」で、この締付環のネジ込みをミスると大変なことになります (同じアルミ合金材なのでネジ山が潰れ易い)(怖) 締付環をグリーンの矢印のように入れ込んだ鏡筒 (赤色矢印) の上からネジ込んで固定します。

↑鏡筒をセットした状態で再びひっくり返しています。

↑爪を噛み合わせて絞り環を背としたところです。この写真だと「制御環」が分かり易いです (赤色矢印)。

↑こんな感じで「制御環」に備わる連係アームを爪がガシッと掴んだまま離しません (赤色矢印)。結局距離環を回して繰り出したり/収納したりの動作をしている時「この爪が連係アームを掴んだまま」なので、必然的にここに抵抗/負荷/摩擦が生ずるとソックリそのまま「距離環のトルクが重くなる因果関係に至る」次第です(泣)

↑上の写真はマウント部 (左側) の締め付け固定用のネジ穴を赤色矢印で互いに指し示しています。実はこれこそが当方が冒頭で「カメラメーカーの造りで信じられない!」と豪語した理由です。

マウント部と基台との連結時に「噛み合わせなど一切無く単に締付ネジで締め付け固定しているだけ」と言う何とも心許ない設計なのです。

例えばたいていのオールドレンズでこのマウントと基台との締め付け固定には「咬み合う箇所が介在する」ので締付ネジへの負担が軽減されています (ズレ幅が少ないと言う意味)。

↑こんな感じで締付ネジを4箇所で締め付けていくだけの設計なので (右横に並べて写した締付ネジがグリーンの矢印のように締付用の穴に入る) どうして心許ないのかと言えば「僅か7mm長のネジのネジ山部分だけでマウント部が固定される設計だから」です!(泣) そのような長さの締付ネジ4本だけでこのマウント部が締め付け固定されます。他のどのモデルでも基本的に東京光学製の「REシリーズ」は同じ設計概念を採っています。

実際にこの4本の締付ネジを入れてみると分かりますが、マウント部がガタついてマチ (ズレ幅) がどうしても顕在してしまいます(泣) その分だけマウント部の強度問題でこの4本の締付ネジに負担が及ぶワケで、このような配慮が無い設計は光学メーカーだと少ないとの印象です。

↑マウント部が組み付けられました。

↑ひっくり返して光学系前群をようやくセットできます・・が然し、実はここでようやく「絞り羽根の開閉動作が正しく機能しているのか確認できる」ワケです。

何故なら、設定絞り値までちゃんと絞り羽根の開閉角度が変化して、且つ合わせて設定絞り値に見合う実写の絞りに到達しているのか、或いは超過していないのかを調べる必要があるからです (簡易検査具を使う)。

実際、今回の個体は当初バラす前のチェック時点で「完全開放せずに2枚の絞り羽根が顔出ししていた」のを確認済です。この点についてご依頼者様から作業指示が出ていませんでしたが、何しろ光学系内の絞りユニット前後で光学ガラスレンズ径が小さいとなれば「極僅かな絞り羽根の顔出しだけで開放f値f2.8が執れない」話に繋がります(泣)

現実に開放時をチェックすると極僅かですが「f4」に近いような気がします (簡易検査具なのでそもそも広角レンズだとよく見えない)(泣)

従って、当初バラす前の時点でそのような状況だったので (ご依頼内容に作業指示がありませんでしたが) 完全開放状態にちゃんとなるよう「絞り羽根の開閉幅を微調整した」次第です。

絞り羽根開閉幅
絞り羽根が閉じていく時の開口部の大きさ/広さ/面積を指し、光学系後群側への入射光量を決定づけている

但し、そうは言っても現実にここまで組み上げてからでないと簡易検査具でチェックできないので、いちいちここまで組み上げては「もう少し絞り羽根を開くよう調整が必要」とか「もう少し絞り羽根が閉じるよう微調整」など・・6枚の絞り羽根の開閉角度が経年劣化に伴い変わってしまっているので、その分も勘案しつつ何度も何度も組み上げてはバラしつつを繰り返していたので「結果的に4時間後にようやく絞り羽根が顔出ししない処まで絞り羽根の開閉角度を個別に微調整できた」ワケです(笑)

このように、たかが絞り羽根の開閉角度調整だけに4時間も掛かっているのが当方の技術スキル低さの所以です(泣)・・恥ずかしい(恥) 技術スキルが低いので時間をかければ何とかちゃんと「完全開放する状態」にまで改善できました(汗)

もっと言うならそもそも当初バラす前の時点で既に「絞り羽根が各絞り値で閉じすぎ」だったと指摘できます。簡易検査具ですが検査し確認しつつ正しています。

↑フィルター枠を固定して、この後は無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にレンズ銘板と距離環をセットすれば完成です。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了したオールドレンズの写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わりました。光学系内の格納筒や締付環なども過去メンテナンス時に着色されていた「反射防止黒色塗料」を除去したので、上の写真のように何となく垢抜けしたような印象の光学系に見えています(笑) もちろんピント面の鋭さは間違いありません。

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無ですが、残念ながら後玉の中心付近には「カビ除去痕に伴う薄いクモリが僅かな面積で残っている状況」です。おそらく光源を含む写真撮影でも影響を来さないレベルと考えられます。

↑後群側ですが、ご覧のようにカビ除去痕に附随する薄いクモリは視認できません。LED光照射に翳してようやく何とか見える程度です。

ちなみにこの後玉の周りを覆っている締付環も「ちゃんと製産時点のマットで微細な凹凸を伴う梨地メッキ加工仕上げ」であり、過去メンテナンス時の着色ではありませんから、必要箇所はメッキ加工されているワケです。

↑6枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に正六角形を維持」したまま閉じていきます。もちろん当初バラす前の状況 (f11〜f22まで閉じない) 或いは最小絞り値側からの完全開放への復帰が緩慢などの現象も一切消えています (つまり正常の状態に戻っています)。

フィルムカメラでご使用になるとのお話しですが、当方にはフィルムカメラが無いのでマウント面のレバー操作 (小さな突出レバーがある) でその挙動を確認しています。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。

詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。

↑当初バラした直後は過去メンテナンス時に「白色系グリース」が塗布されているのを確認しました。従って「いわゆる白色系グリースのツルツルした操作性」でしたが、当方が使うのは「黄褐色系グリース」なので相応にシッカリしたトルク感に変わっています。

しかしピント合わせ時は「掴んでいる指の腹にチカラを伝えるだけでピント面の前後で微動が叶う」トルク感に至っていますから、操作性が悪い話ではありません。

いわゆる当方独特のトルクで「ヌメヌメッとしたシットリ感漂うトルク感」と皆様がご指摘頂く印象のトルク感に仕上がっています(笑)

↑ご依頼内容の不具合は全て解消していますが、そもそもご依頼内容に無かった「開放時の絞り羽根顔出し」について改善処置を執ったので、コマ点必要外の作業を経ている為にご納得頂けない場合はご請求額からの減額が可能です。

オーバーホール/修理ご依頼者様皆様に告知しているとおり、もしもお届けしたオールドレンズの仕上がり状況にご満足頂けない場合は、そのご納得頂けない要素に対して「ご納得頂ける分の金額をご請求金額より減額」下さいませ。
減額頂ける最大値/MAX額は「ご請求金額まで (つまり無償扱い)」とし、大変申し訳御座いませんが当方による弁償などは対応できません・・申し訳御座いません。

気になるとどうしても処置しないワケには済ませないので・・申し訳御座いません(泣)

なおフィルムカメラでのご使用との事ですが、当方では確認のしようがないので「当初位置のままで無限遠位置をセット」しています。また附属品のフィルターやキャップ類も全てちゃんと清掃済です (キャップと距離環のラバー製ローレット (滑り止め) は中性洗剤で洗浄しています)。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離30cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f4」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f5.6」で撮りました。

↑f値は「f8」まで上がっています。

↑f値「f11」です。

↑f値「f16」になりました。まだまだ「回折現象」の影響を感じません!(驚)・・さすがです!

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。

↑最小絞り値「f22」での撮影です。今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。明日梱包し発送させて頂きます。どうぞよろしくお願い申し上げます。