◆ FUJI PHOTO FILM CO. (富士フイルム) FUJINON 55mm/f1.6《前期型》(M42)
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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。
今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、国産は
FUJICA製標準レンズ・・・・、
『FUJINON 55mm/f1.6《前期型》(M42)』です。
ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ! Слава Україні! Героям слава!
上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。
Slava Ukrainieie! Geroyam Slava!
今回オーバーホール済でヤフオク! 出品する個体は当方がオーバーホール作業を始めた11年前からの累計で当時のFUJICA製標準レンズ「55mm/f1.6」の括りで捉えると累計で14本目にあたりますが今回扱った個体「前期型」だけでカウントすると僅か8本目ですが、さらに「一部金属製」の個体となればまさに今回が初めてです。
・・って言うか、そもそも市場流通している個体数が極端に少なすぎるので今回扱った個体が「本当に前期型と呼べるのか否か?」との疑念がまだまだ残ったままです。
このモデルに関する過去の考察はこちらのページ・・『FUJINON 55mm/f1.6《前期型》(M42)』・・で詳しく述べているので当時の背景や様々な考察の根拠など解説はご参照下さいませ。
例えば同じ頃に発売され流通していた同じ「廉価版格付の標準レンズ」に・・『FUJINON 55mm/f2.2《前期型》(M42)』・・がありますが、こちらのモデルには「前期型/後期型」の違いはもとより一部に「初期型」まで存在する事を過日掴み、或いは内部構造の明確な相違や筐体外装の変遷なども数多く顕在している事実を数年がかりで掴んできました。
正直言って当時のたかが廉価版格付のチープ感タップリなモデルのクセにまるで費用対効果を度外視したかの如くとんでもないコストを掛けて次から次へと改良を重ねていった背景が見えてしまい、むしろ調査しているこちらのほうが焦ってしまうほどに多種多様なバリエーションが存在していました。
そもそも当方がこのモデル「FUJINON 55mm/f2.2」に注目した理由は、旧東ドイツはMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズに特徴的に見られる「シャボン玉ボケの表出」について、国産オールドレンズの中にも真円で繊細なエッジ表現を実現できる数少ないモデルが存在する事を掴んだからでした。
単なるリングボケや玉ボケ、或いは歪なカタチの円形ボケなどばどんなオールドレンズでも表出が適いますが「真円で繊細なエッジのシャボン玉ボケ表出」だけは限られたオールドレンズでしか適いません。
2018年辺りからそのような要素について特にこだわりを以て調査と考察を進め、様々なモデルバリエーションが顕在する事実まで検証を明示した上でご紹介してきました。当時も今も誰一人アナウンスし得なかった「総金属製モデルが存在する事実」も世界で初めて解き明かし、且つ単なるパーツの転用などでは決して実現できない「オリジナルでユニークな総金属製」としてご案内するまでに至っています。
ところが今回扱うオールドレンズはそれら「FUJINON 55mm/f2.2」が登場した当時1978年の同じタイミングで現れたにもかかわらず、そのバリエーションも個体数も何もかもが「ひたすらに謎」で国内はもとより海外でも年間出現数は「僅か数本程度」というレベルの極度の品薄品です。
当方が前回扱ったのが2019年だったので、アッと言う間に3年が経ってしまいましたが、なんとその間に海外の流通価格帯が高騰し「現在は3万円台〜5万円前後で取引」と言う全く信じられないレベルに変異していました。
当方にとり「FUJINON 55mm/f2.2」がシャボン玉ボケの表出というある特定の要素でその存在価値を見出したのだと仮に結論するなら、では今回扱うモデル「FUJINON 55mm/f1.6」の存在価値とはいったい何なのか・・なかなか悩ましい話です。
↑上の一覧は当時のレンズカタログからの抜粋です。1979年にはマウント規格を「AXマウント規格」に転針してしまいついにバヨネットマウント時代へと突入しましたが、それでも企業利益を潤すには既にタイミングを逸しており、ついに1983年には写真機業界から撤退してしまいます。
すると焦点距離「50mm/55mm」に対して開放f値「f1.6」としてのみ括るなら全部で4種類のモデルが顕在していた事が掴めますが、最短撮影距離「60cmと45cmの相違」が明白で、且つそれに合わせて当然ながら光学設計が異なるので「6群6枚と4群5枚の2種類」に大きく分かれるのがみてとれます。
ところが上記一覧表は「あくまでもAXマウント規格のみ」の話であって、今回扱う「M42マウント規格品」とは全くの別モノなのが理解できます。
つまり赤枠で囲っている要素だけをピックアップしても最短撮影距離が異なるので、同じ4群5枚の光学系としても「別モノの光学系構成に至るのは自明の理」です・・何故なら今回のモデルは最短撮影距離「60cm」だからです。
するとこの点に於いて複雑な話に至るのですが、右構成図はこの「AXバヨネットマウント規格」の4群5枚クセノター型光学系構成をカタログからトレースした構成図です。
つまり「最短撮影距離:45cm」のほうの「X-FUJINON 55mm/f1.6」の構成図と指摘できます。もう一つの6群6枚のほうの構成については今回は関係ないので省きます。
一方右図は旧東ドイツはCarl Zeiss Jena製オールドレンズの中で「Biometar 80mm/f2.8」の光学系構成図をトレースした図になり、同じ4群5枚ビオメター型と呼んでいますから詰まるところクセノター型/ビオメター型は類似した光学系構成として受け取れます。
そして今回扱うモデル「M42マウント規格のほうのFUJINON 55mm/f1.6」は同じ4群5枚としても全く別モノになり、今回のオーバーホールに際し完全解体した際に光学系の清掃時に逐一当方の手でデジタルノギスを使って計測してトレースした構成図が右図です。
単に上記2つの光学系構成図を「左右反転させただけ」のように見えますが当方では敢えて「反転型」とはまだ結論付けしたくありません (某有名処では反転型と結論付けしていますがその解説が一切ありません)。
その理由は以下ご案内する描写性を観てそんな簡単に結論付けできないと悩んでしまったからです。
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↑上の写真はFlickriverで、このオールドレンズの特徴的な実写をピックアップしてみました。
ピックアップした理由は撮影者/投稿者の撮影スキルの高さをリスペクトしているからです。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています/上記掲載写真はその引用で
転載ではありません。
◉ 一段目
左端からシャボン玉ボケが破綻して円形ボケへと変わっていく様をピックアップしていますが、そもそも「FUJINON 55mm/f2.2」と違いまともなシャボン玉ボケが表出できません。すぐに収差の影響を被るので歪なカタチの円形ボケしか表出できません。その意味でこのモデルに円形ボケを期待するとガッカリすることになるかも知れません。
◉ 二段目
この段では円形ボケから一旦離れて「収差ボケ」の範疇で括って実写をピックアップしています。二線ボケとも収差ボケともどちらでも括れないくらいに乱れた煩い印象を拭い去れませんが、実は一つ前の歪なカタチの円形ボケなどとある意味同じ趣向を持つ印象があって「ピント面は意外にもちゃんと写っている感がある」点に於いて「???」なのです。
つまりアウトフォーカス部の乱れ方がとんでもないレベルなのですが、ここまでピント面との境界に差が現れてしまっても良いのかと言いたくなるほどの印象です。
◉ 三段目
実は一段目〜二段目を通じて観てきた印象からガラッと変化して「オドロキのピント面」なのをご紹介したくて敢えて一段目〜二段目を載せてきたような感じです(笑)
この段のピント面には独特な存在感が備わるように受け取っていてちょっと一段目〜二段目とは別モノ扱いなのです。確かにアウトフォーカス部の乱れ具合には一種相通ずる要素が散見しますが、然しそれでいてピント面の落ち着き具合がハンパなく、だからこそ別モノ感が強い印象を受けています。
つまり当方はこの段の写り具合をこのモデルの特徴の一つとして認めてしまったと言っても良いかも知れません。
◉ 四段目
さらに進んでこの段では「まともに写ってしまっている写真」だけをピックアップしていますが、これらの実写を観て「単に反転させた光学系と結論づけるにはもっと説明が欲しい」と強く印象を抱いてしまったからどうにもなりません。まるでまともに写ってしまっていますが、もっと指摘するならとても「FUJINON 55mm/f2.2」のレベルに留まらずまるで別次元の写りとして写真を残せているのを感じ得ます。
特に一番右端は白黒写真ではなくカラー写真です。しかもちゃんと花弁の質感表現を写し込んでいるから凄いと鳥肌立ちしたくらいです。この階調表現をキッチリ残す性能とはいったい何なのでしょうか???・・ちょっと乱れまくりの収差ボケだけが特徴のようなオールドレンズにはどうしても観る事ができません。
◉ 五段目
さらにここでは左側で2枚ワザと人物写真をピックアップしましたが、右側2枚の「柔らかな光の表現性」に人物撮影に対するこのモデルの光学系の特徴を何となく見出してしまい「すげぇ〜!」と唸ってしまったのです。人肌感をとても上手く表現できるだけでなく、このように光の柔らかさまで写し込んで残していくこの光学系にどうにもこうにも解説が伴いません!(驚)
◉ 六段目
この段では今度は被写体の材質感や素材感を写し込む質感表現能力の高さをピックアップしています。石材壁や硝子の質感表現、或いは鉄瓶の素材感などを経てようやく最後に右端の小さなテーブルを用意しました。テーブル面の木肌の感じと相反するポールの金属質。この対比をどれだけ表現できているのかを左から順に観ていったような並び順にしてあります。
◉ 七段目
ここでは一般的な街中スナップ的な陰影や明暗部のダイナミックレンジの広がり感、或いは階調グラデーションの表現性など意外にもこのモデルの描写性能が優れている点としてピックアップしています。雨降りの町中でその路面の湿り具合などどんだけ表現できているのかをみています。
◉ 八段目
最後のこの段では暗部やピーカンでの色表現性が潰れずにちゃんと出せている点、被写界深度の薄さや光源を含んだ場合のピント面とのアウトフォーカス部の影響度合い/影響を受けていない点を知るために集めています。
これらの実写からとても「FUJINON 55mm/f2.2」とはまるで同類項には括れない・・決して廉価版モデルとは括れない何かがこの光学系には隠されているのではないかと「???」目一杯な印象なのです。
その意味で語るなら・・このモデルは「何を吐き出してくるか皆目見当が付かない」くらいの勢いでなかなか面白み豊富なオールドレンズではないかと期待感一杯な感じです。
なお、このモデルの光学系について様々なサイトで「4群5枚クセノタール型」と語られ続けている点についてはそれが間違いである事を現物をトレースした光学系構成図をちゃんと明示して先にご案内しましたが、この光学系の名称を呼称する際に「クセノタール」と「◉◉◉ール」のように語尾のR発音を強調して呼称する手法に対し当方は相当な違和感を覚えています
・・ハッキリ言ってウザイです!
今回のモデルで言えば巷では「Xenotar型構成」として語尾にRが附随するので「クセノタール」と呼ぶらしいのですが、例えばこの呼称の基「Xenotar」は本来ドイツ語です。ラテン語/英語発音に習えば「ゼノター」と発音するようですがドイツ語なら「クセノター」になり語尾にRを強調した発音が附随しません。
逆に指摘するなら「クセノタール」と語尾のR発音を強調して発音する国は東欧圏のほうで今問題になっているロシアを筆頭にウクライナ語やハンガリーにチェコなどなど発音をGoogle翻訳などで聞いてみれば確かに語尾にRの発音を強調して聞く事が適います。
しかしドイツ語も英語も「クセノター」で語尾のR発音は決して強調されません。以前ギリシャのディーラーと語っていた時にどうして日本人はオールドレンズの光学系を語る時にRを強調して発音したがるのか、その理由を聞かれて全く答えられなかった事があります。
今でこそ「Xenotar/クセノター」が有名ですが類似光学系として捉えるなら旧東ドイツはCarl Zeiss Jena製中望遠レンズ「Biometar 80mm/f2.8」で採用されていた光学系なので、ほぼ近似しているため「ビオメター型光学系構成」と指摘しても良いのですが、これもまた通の方々に言わせると「ビオメタール」らしいので、本当に調べていて辟易してきます。
・・当方は歴とした日本人なのでR強調発音はしません!(笑)
↑完全解体した時の内部構成パーツ全景写真です。オーバーホール工程やこのモデルの当時の背景など詳しい解説は『FUJINON 55mm/f1.6《前期型》(M42)』のページをご参照下さいませ。
ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。
ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。
↑完璧なオーバーホールが終わりました。前回扱ってから3年ぶりに手に入った、しかも「一部金属製」と言う今までに手にしたことがない個体です。前述の光学系構成図を見ても分かりますが前玉のみならず光学系第2群の光学硝子レンズの曲率たるや相当なレベルです。
日本国内ではまるで人気がありませんが(笑)、海外では特に海外オークションebayなどでプレミアム的に高騰しており、その流通価格帯は「3万円台〜5万円台」とまさに驚異的な数値です。
↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無です。
光学系第2群のコバ端附近に全部で3箇所「菌糸状のカビ除去痕」が残っており、パッと見で「繊維が入っているように見える」ものの実は菌糸状のカビ除去痕でほぼコバ端の壁面状態なので (光学硝子の曲率が高いので) そのように見える事があります。
↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。
↑光学系後群側もLED光照射で極薄いクモリが皆無です。点状カビ除去痕が少々多めですが、それでも今まで扱った個体の中では群を抜いて光学系内の状態が良いレベルです (正直このモデルの光学系はあまり良い状態の個体が流れない)。
↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。
【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ:
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:16点、目立つ点キズ:12点
後群内:19点、目立つ点キズ:15点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
(前後玉に微かな菌糸状カビ除去痕が複数あり)
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(前後群内に極微細な薄い最大6mm長数本あり)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
(前後玉に菌糸状カビ除去痕複数残っています)
(前後玉に極微細な経年の拭きキズ数箇所あり)
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・光学系内は透明度が非常に高いレベルです。
(LED光照射で確認しても極薄いクモリが皆無)
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。
※神経質な人を考慮して瑕疵内容は少々誇張的にワザと表現しています(以下同様)。
※光学系内の点キズなどのカウント数はオーバーホール工程の中で個別に各群の光学硝子レンズ清掃時にカウントしている為、鏡筒に組み込み後の見え方はまた変わります/光学系構成により多少が変化します。
↑マウント面には「開放測光用の爪」が凡そ1mm弱で突出しますが、正しくは「開放測光用の爪は絞り環に備わる」ので、一番左端の総金属製だけが「開放測光用の爪も金属製」なのでカッターで削るにしても少々大変です。他はエンジニアリング・プラスチック製なのでカッターでも削れますね。
当時のFUJICA製フィルムカメラ「ST-801/901/AZ/1」などに装着すると開放測光機能がご使用頂けます。
もしもマウントアダプタ (ピン押し底面タイプ) 経由デジカメ一眼/ミラーレス一眼に装着される場合は、ご使用になられるマウントアダプタによってはマウント面の「開放測光用の爪」が当たって擦れるので/最後までネジ込めないので切削する必要があります。
申し訳御座いませんが切削にはご落札者様自身で行って下さいませ (当方では切削しません)。
またK&F CONCEPT製のマウントアダプタをご使用頂ければ/手に入れればこの「開放測光用の爪」を回避するので干渉せずに正常使用が可能ですからご検討下さいませ。
↑5枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に正五角形を維持」したまま閉じていきます。
ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。
当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。
詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。
↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感で距離環を回す時のトルクの印象は「普通」人により「軽め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。
・距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が指に伝わります(神経質な人には擦れ感強め)。
・マウント部内部の捻りバネの経年劣化進行に伴い僅かに弱っている為鏡筒から飛び出ているアームを掴んでいる爪が擦れて「カリカリ音」が聞こえてくる事があります(特にマウントアダプタに装着すると聞こえてきます)。捻りバネの経年劣化が原因なのでこれ以上改善できません。また当問題で将来的に不具合を起こす因果関係に至ることはありません。
・マウント面に「開放測光用の爪」が1mm程突出しています。一般的なM42マウントのフィルムカメラやマウントアダプタ経由デジカメ一眼/ミラーレス一眼に装着する際は、ご落札者様ご自身で「開放測光用の爪」を切削して対応をお願い申し上げます(当方で切削しません)。或いはK&F CONCEPT製マウントアダプタをご使用頂ければ避けて使えるので切削の必要もありません。
【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
・当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。
↑今回のオーバーホール済でのヤフオク! 出品に際しセットした附属品の一覧です。
《今回のヤフオク! 出品に際し附属するもの》
❶ HAKUBA製MCレンズガード (新品)
❷ 本体『FUJINON 55mm/f1.6《前期型》(M42)』
❸ 汎用樹脂製ネジ込み式M42後キャップ (新品)
❹ 純正樹脂製スナップ式前キャップ (中古品)
↑今回初めて手にしましたが、上の解説のとおり「フィルター枠と指標値環とマウント部が金属製」です。「距離環と絞り環がエンジニアリング・プラスチック製」ですが、このモデルで数多く市場流通している個体には「特に距離環側にヒビ割れを伴う個体が多い」状況なのは別モデル「FUJINON 55mm/f2.2」と同じ状況なので参考になるかも知れません。
逆に言うならこのモデルで「一部金属製の個体が存在するのを知らなかった」とも言え、また一つ新たな発見と言ったところです(笑)
無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。
もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい。当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません。
↑当レンズによる最短撮影距離60cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。
各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。
↑絞り環を回して設定絞り値「f2」で撮影していますが、絞り環の刻印は「単なるドット●」だけです。
↑最小絞り値「f16」での撮影です。既に絞り羽根がほとんど閉じきっている状況なので「回折現象」の影響が現れ始めています。
◉ 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。
◉ 被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。
◉ 焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。