◆ Carl Zeiss Jena (カールツァイス・イエナ) Biotar 58mm/f2《中期型−II》(exakta)
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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。
オーバーホール/修理ご依頼分ですが、当方の記録用として掲載しており
ヤフオク! 出品商品ではありません (当方の判断で無料掲載しています)。
(オーバーホール/修理ご依頼分の当ブログ掲載は有料です)
ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ! Слава Украине! Героям слава!
上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。
今回オーバーホール/修理を承って扱った個体は当方がオーバーホール作業を始めた10年前からの累計で70本目にあたりますがその中で「中期型」だけでカウントすると32本目です。
つい先日当ブログにオーバーホール/修理ご依頼受け付け分の個体についてアップしたばかり ですが、同じ「exaktaマウント規格」にしても今回扱った個体は「シャッターボタン装備のexaktaマウント規格品」なので当時の旧東ドイツの光学メーカーihagee Dresden社から発売されていたフィルムカメラ「EXAKTAシリーズ」向けセットレンズを含め供給されていた標準レンズの一つです。
そもそもこのCarl Zeiss Jena製標準レンズ「Biotarシリーズ」はシルバー鏡胴モデルを最後に消えていったモデルの一つですが、次代を担う標準レンズの座はこの後に「Flexson 50mm
/f2」に受け継がれその後今でも人気が高い「Pancolarシリーズ」へと変遷していきました。
この「Pancolarシリーズ」或いは当時のCarl Zeiss Jenaの時代背景など含め知りたい方は詳細を「PANCOLAR electric 50mm/f1.8 MC《後期型》(M42)」でご案内しているのでご参照下さいませ。
ここで一つそれら時代背景として当時を認識するには、まず大前提として戦後に旧東西ドイツに国が分断された点と合わせて特に旧東ドイツ側の体制が占領統治国だった旧ソ連邦 (大戦時連合国側の一国だった) の共産主義体制を倣っていた事。合わせて私企業の概念が無く全ての企業体が国に従属する概念と共に旧ソ連邦と同じタイミングで「産業工業5カ年計画」に沿って進められていた点を踏まえる必要があります。
例えば戦前〜戦後に数多く存在していた名だたる光学メーカーは戦後の旧東ドイツの中で国が推し進める体制に従い企業体の格付の中で互いに吸収合併を繰り返していた事。合わせて戦後の特に1960年辺りをピークに旧東西ドイツの経済格差が深刻化し旧東ドイツ側からの亡命者が格段に増加していた歴史的事実 (その結果ベルリンの壁が1961年11月に敷設された)、或いは当時の冷戦構造も然ることながらベルリンの壁が崩壊した事件が勃発した1989年時点で旧東ドイツの光学メーカーの多くがCARL ZEISS JENAに吸収合併され、その時点で4万4千人に上る従業員を抱えた巨大企業体に膨れていた事をちゃんと捉えないと、それまでに吸収合併していった数々の光学メーカーの技術の消化要素が正しく見えてきません。
例を挙げるなら中判/大判光学製品に於いて戦前Carl Zeiss Jenaに肩を並べるポジショニングまて栄華を極めていたMeyer-Optik Görlitz (マイヤーオプティック・ゲルリッツ) が戦後旧東ドイツで不運なことに軍需産業VEBに配属されてしまったこと (産業工業体系の分野別括りの 一つ)、その後極度の経営難に苦しみながらも自社工場をCarl Zeiss Jenaに売却することでようやく念願の光学精密機械VEBに編入されたこと、その因果関係からさらに悲運に見舞われ二度とCarl Zeiss Jenaと競うことは適わず結果的にCarl Zeiss Jena配下の格付だったPENTACON (ペンタコン) 直属に位置付けられてしまい、ついに1968年吸収されていったこと。最後には そのPENTACONさえも経営難から1981年にCarl Zeiss Jenaに吸収され消滅していったこと
・・これら長い歴史の中でそれぞれの光学メーカーの一ページを紐解く必要があります。
これら歴史的な時代背景を踏まえるとMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズのモデルがそのままPENTACON製オールドレンズのモデルへと引き継がれていった経緯が見えてくること。
さらにそれらPENTACON製オールドレンズのモデルさえ最後にはCARL ZEISS JENA DDR時代の単なる一つの製品群へと堕ちていった流れが掴めると言うものです。
まるで日本の戦国時代を思わさせる各大名の成れの果てのような話ですが(笑)、しかし間違いなくそのように時代の潮流に抗えずCARL ZEISS JENA DDRの単なるモデル群の一つへと堕ち 延びて、その「息づかい」だけが漂うが如く消えていく栄枯盛衰が理解できると思います。
Meyer-Optik Görlitz製オールドレンズの光学系がPENTACONに受け継がれ、やがて最後の 時期にCARL ZEISS JENA DDR製オールドレンズのモデル「PRAKTICARシリーズ」が当時のCARL ZEISS JENA DDRに於いて最新のバヨネットマウント規格 (PBマウント規格) だったはずなのに電気接点端子を備えつつも旧態依然な特異な設計概念 (光学系後群をイモネジで締め 付け固定する手法) を受け継ぐ必要性があったのか、或いはどうして「PANCOLARシリーズ」とは全く別のモデル群を登場させる必要があったのか、それらの根拠に基となる光学メーカーの設計や技術が大きく関わっていた事を掴んだからとも言えます。
このような考察は当方が「Pancolarシリーズ」の光学系変遷を調べていく中で、その根拠として当時の時代考察が必須なのだと結論した大きな理由の一つですから、たかがオールドレンズの話なのにと思うかも知れませんが意外にも急な時代の流れの中で各光学メーカーが右往左往していた事実を知るにつけ、何とも哀しくも趣のあるロマンを伴うのだとその光学系の根拠として納得できた経緯があります。
・・オールドレンズ、知れば知るほど興味は尽きないものですね。
・・夏草や兵どもが夢の跡・・
俳人松尾芭蕉のあまりにも有名な一句ですが、この五・七・五という僅か十七音に想いと風情を詰め込んで現す趣は、まさに日本語が近現代に新たな英単語として辞書登録された「bokeh (ボケ)」の如くニッポン人の侘び寂に相通ずる 概念をも現すと感慨深く感じられ、そこにオールドレンズが介在するのも摩訶不思議な印象を残し、はたして芭蕉はこの時・・今日のような茹だる猛暑の中で詠んだ句だったのでしょうか。
・・何処ぞの境内の大樹の日影でチマチマとその根元に生える雑草を眺めつつ詠んだのか、
陽射し強い午後の一時に野っ原で汗だくになりながらもかつての霊的な冷え冷えした緊迫感 に錯覚しつつ詠んだのか・・考えさせられます。
オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。
↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。先日このブログ にアップした同じ「Biotarシリーズ」モデルでは筐体内部の各構成パーツが全て「ブルー色のメッキ加工塗色」で仕上げられていましたが、こちらの個体はご覧のように「パープル色の メッキ加工塗色」なのでその製産工場がCarl Zeiss Jena母体工場なのだと結論づけられます。
さらに同じか近いタイミングで製産されていたであろう「Biotarシリーズ」からも同一たる「exaktaマウント規格」でシャッターボタン装備の有無が異なるワケで、それでいて最短撮影距離「50cmのまま」それ故に当然ながら「同一光学系の設計」を踏襲しつつも「半自動絞り方式」を採り入れたという必然性に迫られて実は「10枚絞り羽根に設計変更」してきた流れが見えてきます (前回個体は12枚絞り)。
つまりマウント面に「絞り連動ピン」を装備した「後期型」がさらにこの後に登場するので あくまでも過渡期的な製品なのですが、その「後期型」は同じ10枚の絞り羽根としても最短撮影距離「60cm」と後退したワケで当然ながら光学系は最後の再設計を経ています。
・・何を言いたいのか???
要はこの当時Carl Zeiss Jenaは「絞り羽根の自動化に挑戦していた時期」なのだと伺えるのです。逆に言うならあ〜だこ〜だ熟考しながら絞り羽根の制御方法を完全自動化へと導いたのではなく「まさにその過程途中」の製品群であるのが分かるからです。取り敢えず作って製品化してから市場動向など反応を見ていたのか、或いはとてもそのように悠長に構えていられなかったのか・・考察はビミョ〜です。
それは大きな旧東西ドイツという括りの中で当時の様々な光学メーカーから登場してくるモデルの経緯をしっかり検証できておらず、特にシルバー鏡胴から世界規模で流行り始めるゼブラ柄へと遷移する中、或いは旧西ドイツ側光学メーカーが挙って発売してきた特異で複雑な制御方法を採ったゼブラ柄モデルの「自動絞り化」を目の当たりにして再び慌てていたのか全く 以て不明です (とても情報量が多すぎて検証する時間がありません)。
特にCarl Zeiss Jena製オールドレンズのゼブラ柄モデルで言うなら内部でステンレスワイヤーを使い引っぱったり伸ばしたりしつつ絞り羽根の駆動制御に四苦八苦していたのを知るにつけある意味黒色鏡胴自体の前は (ゼブラ柄時代は) それこそイバラの道の真っ直中だったようにも見えます。
それほどに各モデルで共通項を見出せずアッチを変えればコッチも変えてとまるで一貫性が無い再設計を立て続けに繰り返していた時代でもあり、それが旧東ドイツ側のCarl Zeiss Jenaだけに限られればまだ見切りも付きますが旧西ドイツ側のゼブラ柄モデルさえ同じように次から次へと新たな設計でモデルを追加していった流れの真っ最中だったのを知ると、それは世界規模で「絞り自動化の思考錯誤の時代」だったとも言えそうです・・が実はそこにこれら各光学メーカーにとって猶予の時間が存在しなかった最大の因果関係「日本の光学メーカーの台頭」こそが絞り羽根自動化の大きな障害/脅威になっていたと推察できます。
そこにはニッポン人気質たる職人意識の如くどうしたらもっと合理的に改善できるか、利益を残せるのか常に改善に次ぐ改善を試みていたのでしょうが、その一方で当時の旧東西ドイツとなれば自動絞り方式の簡素化/合理化までの先見性が整わない前に「ニッポンにやられる!」との緊迫感のほうが先だったような気がしてなりません(笑)
同じ敗戦国なのに日に日に経済発展を遂げているのを目の当たりにしてヨーロッパ勢は初めてこの時「技術革新の必要性を理解した」ように受け取っています。軍国主義で世界制覇できなかったニッポンはいつの間にか経済主義で世界に覇権を伸ばしつつあったのを「まるで戦前の如く脅威に捉えた」からこそ辺り構わず再設計に次ぐ再設計をひたすらに繰り返して自らの 弱体化へと邁進していったようにも見えてしまいます(泣)
結果は歴史のとおりで(笑)、光学製品はついに日本勢に取って代わってしまい写真業界からの撤退を余儀なくされたのが理解できます。まるで今ドキのニッポンで半導体の歴史を紐解いているような錯覚を覚えますが(笑)、確かに多くの家電製品が撤退してしまい気がつけば中国勢と台湾勢ばかりが占有している中、半導体の流れに「ニッポン回帰」の光明を見出せたのは 唯一の救いです。
・・今一度ニッポン回帰して技術大国ニッポンをもう一度掴んでほしいです!
どうせ世界規模で様々な物価高騰に喘いでいるのがオチですから、この際Made in Japanに 回帰して価格が高くても日本製みたいな芯のある製品や商品を少しは生み出してほしいと切に願うところです (安かろう悪かろうは今ある製品だけで十分)。
その為には一にも二にも国民の所得金額を「劇的に!」上げる算段が必要でチマチマと小手先三寸だけで済ませて踊らされるのはもぅ飽き飽きです。経済や政治のことは全く疎いですが、消費税を下げるとか時限付撤廃などあたかも当然の如く参院選を意識して発言している政治家も居ますが(笑)、当方はそんな今までと同じ小手先だけの話にもう踊らされません。消費税は今のままで良いので (欧州を見れば消費税20%代の国なんてザラ)「劇的に所得額があがる システム」をここでちゃんと構築しないと今後2030年を見据えた時にニッポンは本格的な衰退期を迎えてしまうと危機感が強いです。
するとそこにヒントが隠れていて「本当に冀求するモノにお金の価値を見出す時代の到来」であって、新型コロナウイルスやロシア軍のウクライナ侵攻に次ぐ世界規模での材料費高騰は 次代のインフレ到来と共に好景気を促さないと残るは衰退だけではないのでしょうか・・よく分かりません。
近い将来 (2030年代辺りがいいなぁ〜) にニッポンが資源大国に変貌するにはどうあがいても官民挙げた取り組みが必須で、その時に好景気に溺れる時代が来ていれば我が子供達の老後はきっと花開くと安心だったりします (チマチマ生活費に飢えているのは当方だけで十分)(笑)
太陽光とか風力のような再生エネルギーとか手っ取り早く稼げるモノを言う前にもっと足元を真剣な眼差しで眺めて世界一の地震大国なら地熱発電、見渡す限り海なんだから海底資源に 特化して「それこそ戒厳令」を敷いたらブラックホールの如くお金が消えていく「核融合発電の実用化」さえも夢のまた夢ではないような気がしてお酒が進みます (原発とは別モノで運転ボタンポチッとしただけで即停止するみたいです)!(笑) 少なくとも中国が既に1億2千万度でのプラズマ温度帯を維持した実証試験炉を開発しているのを踏まえればこれはまさに国家 偉業でしか適わないのではないでしょうか (日本はいまだに6,800万度が精一杯)。
その意味でまたもや中国に拠点進出を推し進めている豊田会長の考え方は下手すると将来的に首根っこを中国に掴まれる恐怖感が憑き纏いトヨタもそろそろ日本の香りではなくなりつつ あるなと興ざめしています。経済安全保障を常に左肩に乗せようとしない経営者に明日のニッポンを託せません! 危機感とはそういう事なのではありませんかねぇ〜。
・・ニッポンの劇的な経済復興はそういうレベルが必要だと独りブツクサ言ってます。
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・・話が飛びました(泣)
冒頭でこのモデル「中期型−II」は32本目と述べましたが、その中でシャッターボタンを装備したモデル (つまりexaktaマウント規格) は累計で僅か3本目です。
意外に少ないのですが、実はこれには歴とした根拠があります。当方の技術スキルが伴わずに「半自動絞り方式のシャッターボタン装備モデルは荷が重い」と言うワケです。
実際最後にこのモデルを扱ったのは同じオーバーホール/修理ご依頼分ですが2017年でしたから5年ぶりみたいな話です(笑)・・はい、マジッで敬遠してました!
それはそもそもこのモデルにそこまでお金を掛けてオーバーホール/修理をご依頼頂くユーザーが少なかったと言え、合わせて市場流通価格帯を考慮すれば自ずと自明の理でオーバーホール作業対価を「1円たりとも載せられない」と言う低価格帯での流通と「まさに不人気モデル」と言う現実がのしかかります(笑)
ましてや「Carl Zeiss Jenaの半自動絞り方式」たるやガチャガチャと煩いばかりでとても ギミック感を味わって楽しんでいる余裕など無く(笑)、勘弁してョと敬遠モードひた走りです!
同じようなお話を今回のオーバーホール/修理ご依頼者様からも頂きさすがちゃんと見据えて いらっしゃると感心しておりました。
しかし不思議なモノでバッチリ仕上がってしまうとこの煩わしいだけのガチャガチャさえまで「おぉ〜ギミック!」と気がつけば楽しんでいる始末でアンタさっき言ってたのとまるで違うじゃんかッ!・・と心の中から聞こえてきます。
その裏側で独りニマニマしていたワケで(笑)・・はい、ちゃんと技術スキルが5年の間にアップしていたのを感じ取り「実はお酒飲みながら昨夜はホッと安堵していた」のがホントで如何に自信が無かったのかがバレバレです(笑)
別に完全解体しないつもりならこんな大騒ぎにもならずサクッとヘリコイドグリースだけ入れ替えるなら楽勝でしょう。しかし当方が手を付ける以上「何で完全解体できないんだョ?!」と何だか目の前に見えない誰かが居て胸を小突かれている気がして仕方ありません(泣)
そんな嫌な冷や汗が出てきてので一気にエイッとバラしてしまったら・・案の定大変でそれ こそ「まるで定期のスキル認定試験」に臨んでいた如く陥ってしまい正直「・・・」とコトバを失ったまま時間だけが過ぎていったという始末です(笑)
↑まずはここが一番最初の難関だったのにそれに気づいたのはほぼ仕上がりを目前にした時点でした!(笑) 絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒ですが別にフツ〜に「Biotarシリーズ」まんまの鏡筒です。
ところがこの赤色矢印で指し示した箇所にある「平滑面」がポイントで当初バラした直後は この「平滑面」に相応な経年に拠る酸化/腐食/錆びがありました。あぁ〜過去メンテナンス時に絞りユニット内なのにここにグリース塗っちゃったんだなとむしろ過去メンテナンス時の 整備者を例によって批判して小馬鹿にしていたのですが、最後のほうでそれは自分の事だと 分かりました(笑)
この「平滑面」の位置にピタリと適合して「開閉環」と言う絞り羽根の開閉動作を司る環/リング/輪っかがセットされるのですが、そこに「ちゃんとグリースを塗る為の場所が用意されて いた」のを発見!(笑)
それでようやく絞り羽根の半自動絞りに伴うチカラ伝達が適いちゃんと絞り羽根が開閉動作 するように戻りました。何しろ相当に白っぽく経年の酸化/腐食/錆びが残っていたので「磨き研磨」により平滑性を担保した次第です。
例えばここが「鏡面仕上げ」ならグリースを塗らずとも良いのでしょうが「平滑面だけの処置だけで製産されている」となればその反対側たる「開閉環」側をチェックしていればちゃんと最初から気づけていたのです・・「観察と考察」ができていません。
最近椅子を立ち上がった瞬間に何で立ち上がったのかを忘れる始末でマジッでヤバいです!
絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。
◉ 位置決めキー
「位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー
◉ 開閉キー
「開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー
◉ 位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)
◉ 開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環
↑10枚のペラッペラの薄い絞り羽根を組み付けて絞りユニットを鏡筒最深部に組み込んだところです。もちろんこの時点で既に「開閉環」にグリースを塗ってありますが、実はこの写真を撮ったのは一度最後まで組み上げてあ〜だこ〜だ分解←→組み立てを繰り返していた時の撮影です(笑)
どうして「開閉環にグリースを塗布する」との結論に到達したのかと言えばちゃんとその根拠がこの写真にも写っているのですが、どうせBiotarだからとはなから馬鹿にしていた当方が悪いのです。最近こうやって注意力が散漫になりつつあり「観察と考察」ができずにミスる回数が増え始めています!(怖)
この前などはそれで一度返品されたにもかかわらずさらに勘違いして全く的外れな必要ない 処置を講じて送ってしまったら「信じられない!」と怒クレームに至ってしまい全額返金したことがありました(泣) いまだに「アナタが言う原理原則はこの何処にあるのか?!!!」の御言葉が心にグサッと深く刺さったままで今も痛いです(涙)
まぁ〜身から出たサビでまさに自分が悪いので、この痛みを大事にこれからもしていかなければダメだと戒めにしています(涙)
・・そのハズだったのに相変わらずダメダメです!
↑完成した鏡筒を立てて撮影しました。単なる4群6枚のダブルガウス型光学系構成なのに相当な深さを伴います。赤色矢印で解説しているとおり鏡筒内部の絞りユニットの位置に「開閉環」が見えていてブルーの矢印のように動くことで絞り羽根が開閉する原理です。
↑プリセット絞り環を兼ねる「絞り環」をセットします。「半自動絞り方式」なのでそういう構造をしています。
↑このモデルは「鏡胴二分割方式」なので鏡胴「前部」と鏡胴「後部」に分かれますが、その鏡胴「後部」に含まれるチャージレバーによる操作で蓄えられたチカラが開放された時「バチンと勢い良く設定絞り値まで閉じるチカラ」の根源が上の写真に写っている長〜いスプリングです。
↑こんな感じでグルッと鏡筒周りをスプリングが巡って設定絞り値に対する「バチンと瞬時に絞り羽根を閉じるチカラが蓄えられる」仕組みですね。グリーンの矢印で指し示した長さこそがまさに「鏡筒が繰り出される長さ」に比例します。
従ってここの工程が一つのポイントになりますが「チャージアーム」を引き留めてロックしたり/解除したりが鏡胴「後部」の機構部によって執り行われ、それら制御系のチカラが確実に 伝達されるか否かを決めるのがこの工程とも言い替えられます。
ところが実はチャージレバーに附随して硬質のゴム材が介在しており、既に経年劣化進行に 伴い弱っています (柔らかく劣化している)。
↑鏡胴「前部」は一つ前の工程で完成しているので残り光学系前後群を組み込むだけなので ここからは鏡胴「後部」の組み立て工程に移ります。
両サイドに「直進キー」と言う距離環を回すチカラを変換する原理が備わります (赤色矢印)。その一方でグリーンの矢印で指し示したように丸窓が開いていてそこにシャッターボタンからの連係解除フックが入る仕組みです。
↑マウント部内部を完全解体してありますがこれだけの構成パーツが組み込まれます。
↑解体していた各構成パーツも全て当方による「磨き研磨」を施してマウント部にセットしたところです。横に並べてあるのは「距離環用のネジ山」で環/リング/輪っかに「梨地艶消し凹凸仕上げのメッキ加工」が敢えて処置されています。
マウント部から飛び出ているツマミがチャージレバーでブルーの矢印のように引き回すことでカチッとロックされて完全開放状態まで絞り羽根が開き、そのままピントを合わせ後にシャッターボタンを押し込むと瞬時に設定絞り値まで絞り羽根が勢い良く閉じて撮影が適います。
この時マウント部内部は「チャージ環」が勢い良く回転しますがその直上の「ロック環」は 固定されています (赤色矢印)。さらにその途中にグリーンの矢印で指し示したように「ロック用の爪」が見えていて、この爪がチャージレバーを引き回した時に鏡筒の周りをグルッと囲んでいたスプリングのチカラを基に「チャージアームがカチッとロックする」時の爪です。
↑もう一度同じ位置を撮影していますが、実はこの写真はさんざん組み立て直しを行った後に撮った最後の写真です。この写真撮影をする前に何度もヘリコイド (オスメス) まで組み込ん でから鏡胴「前部」までセットして要は完全に組み上げた状態まで到達しつつも「何かしらの不具合が憑き纏う」ので何度もバラしては微調整しながら組み立ててを繰り返していた次第 です。
つまりチャージレバーのツマミの操作性が硬すぎたりロックして完全開放にならなかったり、或いは距離環を回すトルクがとても重すぎたりと次から次へと問題が現れます(泣)
解説自体は一つ前の写真と全く同一なのですがそれぞれの「構成パーツの材質の違い」こそがここでの最大のポイントになりました。
前述のとおり左横に斜め状に立てかけてある「距離環用ネジ山 (環)」はどうして「微細な凹凸を伴う艶消し梨地仕上げのメッキ加工」なのか?
或いは「チャージ環」はどうして「平滑なクローロメッキ加工の真鍮 (黄銅) 製」なのか?
合わせてその直上に固定される「ロック環」もどうして「アルミ合金材のアルマイト仕上げ」なのか?・・と言う三つ巴の金属材の相違に「原理原則」をキッチリ見出さなければちゃんと仕上げられません。
ブルーの矢印で指し示したような長い領域でチャージレバーのツマミ操作が行われますし、その時最後にロックされて (グリーンの矢印の爪) 絞り羽根が完全開放状態にセットされて初めてピント合わせが実現できます。
↑一旦ここまでヘリコイド (オスメス) を組み込んでから、既に完成している鏡胴「前部」を 入れ込み各部位の操作性をチェックすると何処かしら重すぎたりして、或いは上手く機能せずあ〜だこ〜だ何回もバラしてはここまでの組み立てを繰り返したのです。
つまりオーバーホール工程の最初のほうで解説した鏡筒内の「平滑面」の問題から始まりその工程〜ここまでの工程を都合12回も行ったり来たりして組み直しつつ一歩ずつ詰めていって最終的に仕上がりに至りました。
この後は鏡胴「前部」に光学系前後群をセットしてから組み込んで無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。
ここからはオーバーホールが完了したオールドレンズの写真になります。
結論から申し上げればオーバーホールの最初の工程で指摘していた「硬質ゴム材の経年劣化による柔らかさ」が仇となって鏡胴「後部」側マウント部内部の「ロック環から飛び出ている ロック用のフック (爪)」が適切なチカラで鏡筒周りをグルッと廻っている「チャージアーム」にロックせず完全開放状態を維持できない事が何回が起きます。
このような現象が「起きたり起きなかったりと再現性が一定ではない」時点でその因果関係に「金属材が関係していない」のが明白で、もっと言うならマウント部内部にあるもう一つの「硬質ゴム材」の劣化まで影響しているかも知れませんが、何しろ組み上げてしまうとそれら各部位の動きを逐一目視できないので不都合が起きていても視認できません。
このように例えば「内部構成パーツの一部の金属材が経年劣化に伴い擦り減っている」なら その起きている不具合はある一定の再現性を伴いますが、軽くカチッとロックできたり目一杯強くチャージレバーのツマミを (それこそ指が痛く感じるほどに強く) カチッとロックさせる 必要が起きたりとまるで現象が一定しない再現性の一貫性が指摘できない状況は「まさに硬質ゴムの経年劣化に伴う柔らかさが問題」との判定に到達しました。
するとではこのオールドレンズを使う上で「いったい何を諦めて捨てて何を徹底的に突き詰めるのか?」と言う選択の場に行き当たります。
するとフィルムカメラに装着してシャッターボタン押し下げ時の半自動絞りの動き方を最優先する必要性が最も低いとの結論に至りました。
従って残念ながらチャージレバーのツマミを引き回して設定絞り値までプリセット絞り環を セットした後に「絞り羽根を完全開放にカチッとセットする操作性」だけを諦めて犠牲にしています。
つまり再現性が低いですが無限遠位置でも何処でも構わないので一度でもチャージレバーの ツマミを引き回して「ちゃんと軽くカチッとロックされて絞り羽根が完全開放した時」にシャッターボタンを押し下げないようにご留意下さいませ。
もしも誤ってシャッターボタンを押し下げてバチンと設定絞り値まで絞り羽根が閉じてしまったらもう一度同じ操作を行い軽いチカラだけでロックするまでトライして下さい。
特に壊れたり摩耗したりなど起きないのでとにかく確実にロックして絞り羽根が完全開放を 維持しつつもその時軽いチカラだけでツマミを操作できたタイミングの時に初めて「そのまま手を離して残りはプリセット絞り環の操作だけ行う」よう努めて下さいませ。
プリセット絞り環のガチャガチャの操作性も可能な限り軽めにセットできるよう改めましたし合わせて距離環を回すトルク感は当初のとても重すぎる状況から劇的に (まさに劇的に!)(笑)軽く変わっています。
従ってフツ〜に完全開放位置でピント合わせしてからプリセット絞り環のガチャガチャを操作して (それも軽めに仕上げてありますが) お好みのボケ具合に至ったところでカメラボディ側 シャッターボタンを押し下げて写真撮影して下さいませ。
くれぐれもこのオールドレンズ側のシャッターボタンは「お飾りとして触らない」ようご配慮頂ければそれでOKです。もちろんギミック感を愉しみたくて「いや、シャッターボタン押しちゃうもんね!」でも構いません。その時にちゃんと絞り羽根が完全開放するのに何度か試みる必要性があるだけの話です (壊れたり擦り減ったりしませんから)。
重要なのはいったい何が撮影時の操作性に大きく影響するのか? 或いはいったい何を犠牲にしても後で酒の肴の如くギミック感だけで遊べる道具として触れるのか? そういう良し悪しの問題を事細かく想定して仕上げてあるからこその「安心感」と言えるのではないでしょうか・・と当方は考えています。
そこに当方のこだわりが隠されていてアレもダメこれもダメではなく、心置きなく触っても 大丈夫だけどその代わり必須になる操作性の面倒くささも残ってしまったのは「ゴムがダメ だわ」と納得できてしまえば・・それもまた愉し!
・・と思うのですョ(笑)、しょせんオールドレンズですから!
↑その代わり光学系内の透明環は一切の妥協無く (選択切り捨てもなく) スカッとクリアに戻りました。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無です。
↑光学系後群側もスカッとクリアです。前群と比較して後群側のほうに「微細な気泡」が多め です。パッと見で「微細な塵/埃」に見えますが実は「気泡」です。
◉ 気泡
光学硝子材精製時に、適正な高温度帯に一定時間到達し続け維持していたことを示す「証」と捉えていたので、当時の光学メーカーは正常品として「気泡」を含む個体を出荷していました (写真に影響なし)。
↑10枚の絞り羽根もキレイになりプリセット絞り環ともドも確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に円形絞りを維持」したまま閉じていきます。
前述のとおりプリセット絞り環のガチャガチャも残るものの操作性は軽く仕上げてありますしもちろん絞り羽根は正しく設定絞り値まで閉じるので普通のオールドレンズと同じ使い方でご使用下さいませ。
ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。合わせて刻印指標値の着色も終わっていて視認性を向上させています。
↑いつもと同じで「黄褐色系グリース」を塗布しつつ前述のとおり「劇的に軽いトルク感に 変貌!」しています(笑)
モデルバリエーション上のタイプが「中期型−II」と同一のハズなので (最短撮影距離:50cmだから) 同じピント面の鋭さになるハズですが、実は光学系の格納方法が変わっているので もしかしたら光学系も後群側を再設計したのかも知れませんが今回は計測していません (疲れてしまったので)。
まぁ〜見っけもんみたいな感じで使って頂ければと言う心境です (ちょっとパワー残っていません)。
その意味で前回の1本と合わせてこちらの個体もそれはそれ「おっ? チッとばかし鋭い かも?」と使ってみるのも良いかも知れませんね。
↑何だかんだ言って詰まるところ「完璧に仕上げられていないじゃん!」と言う「定期技術 スキル認定試験」の結果はお恥ずかしながらギリッギリで及第点みたいな感じでせめてもの お詫びとして「exakta用3Dプリンタ出力の後キャップ」をハメ込んでおきました・・スミマセン。
もちろん附属品の中古フィルターもちゃんと清掃してあります。
無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。
もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい。当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません。
↑当レンズによる最短撮影距離50cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。
各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。
大変長い期間に渡りお待たせし続けてしまい本当に申し訳御座いませんでした。今回のオーバーホール/修理ご依頼誠にありがとう御座いました。