〓 YASHICA (ヤシカ) AUTO YASHINON DS-M 50mm/f1.7《富岡光学製》(M42)

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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは国産の、
ヤシカ製標準レンズ・・・・、
AUTO YASHINON DS-M 50mm/f1.7《富岡光学製》(M42)』です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Украине!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

今回オーバーホール済でヤフオク! 出品する個体は当方がオーバーホール作業を始めた10年前からの累計で22本目にあたりますが、光学系構成で言うと第4群の貼り合わせレンズに「酸化トリウム」を含有していないタイプとしてカウントした時、21本目になります (前回に初めて酸化トリウム含有の個体を扱いました)。

光学硝子材に「酸化トリウム」を含有した「アトムレンズ (放射線レンズ)」が流行ったのは1950年代後半〜1960年代中盤までですが、1970年代に入ると経年劣化に伴う変質で「赤褐色化するブラウニング現象」からその含有をやめています。巷では単にオールドレンズの光学系を覗き込んだ時に「黄変化 (光学硝子が黄色っぽく変質する現象)」していると指摘されますが、実はその「黄変化」は大きく分けると2つのに分類できます。

この2つは互いに全く別の因果関係から起きている現象なので同一視する事に当方は違和感を覚えています。

一つは前述の「酸化トリウム含有に伴う茶褐色化」でありその「酸化トリウム」と言う放射性物質の光学硝子材への含有から別名「アトムレンズ (放射線レンズ)」とも呼ばれています。

その一方で「単に光学硝子レンズが黄色っぽく変質する現象」として「コーティング焼け」と言う現象があり、これは光学硝子レンズに蒸着されたコーティング層が経年劣化に伴い無色 透明だったのが変質して「レモンイエローに変色する現象」を指します。

当方では基本的に「酸化トリウム含有と単なるコーティング焼けとを分けて認識すべき」との考察から敢えて明確に分け隔てて指摘しています。

その最大の根拠は「光学硝子材に酸化トリウム含有により変質していた場合とコーティング層の経年劣化に拠る変質とでは屈折率に対する影響度が異なる」との認識からです。

光学硝子材に因果関係が伴う場合の屈折率は極端に変化しますが、単なるコーティング層蒸着資料による違いは入射光の透過時にしか屈折率が変化しないとの認識から述べています。

光学硝子材に酸化トリウムを含有すると最大で22%の屈折率向上を期待できる」との研究 論文からそのように認識しています。

従ってこの「光学硝子材の変質/変色」ひいて言うなら「黄変化」についてもっと神経質に取り扱うべき要素であって、何故ならその結果がまさに描写特性に大きく関わるからとも指摘できるからです。

ちなみに今回オーバーホール済で出品する個体には光学系第4群貼り合わせレンズには「酸化トリウム」を含有していません。その根拠は第4群直上で放射線量を計測しても「僅か0.05μ㏜」の実測値だからです。実測単位は「m㏜」ではなく一桁下る「μ㏜」です。

↑今回出品の個体を完全解体した時のパーツ全景写真です。オーバーホール工程やこのモデルの当時の背景など詳しい解説はAUTO YASHINON DS-M 50mm/f1.7《富岡光学製》(M42)』のページをご参照下さいませ。

ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わりました。単に当時のヤシカ製オールドレンズでマルチコーティングモデルが珍しい「DS-M」だからと囃し立てて大袈裟に言っているのではありません。

確かにヤシカ製オールドレンズの中で「M42マウント規格」として捉えれば唯一の存在ですが「C/Yマウント規格」で捉えると「MLシリーズ」もマルチコーティング化モデルです。特にその違いに何某か当てつけて解説する気持ちはありませんが少なくとも「M42マウント規格」のほうが当時は先に流行っていてこのモデルが発売された1969年時点では残念ながら「M42マウントが陳腐化していた時期」との認識です。

少なくとももう10年、いやせめて5〜6年早く世界に供給していればまだ別の歴史を残せていたかも知れないと思うくらいに何とも残念なシリーズなのがこの「DS-M」なのです(涙)

そのマルチコーティング化と言っても蒸着したコーティング層は「上の写真の如くグリーン色のコーティング層」であって当時の流行りに従っただけの話です。

そしてもっと言うなら当方が大嫌いな等倍鑑賞の評価の如くこのモデル「DS-M」の描写性能はそれほど褒められる評価に (いまだに) 到達していません。要はオールドレンズの描写性能と捉えるなら確かに二束三文かも知れませんが(涙)、その一方で今ドキの「インスタ映え」と 捉える努力をするならまだまだ使えるモデルとの認識です!

・・というのもこのモデルの調達にあたって低価格で推移している事がそのような評価に至る根底にありますが、確かに低価額なら当方にとってはありがたい要素と受け取りながらも何だか釈然としない思いだけが残るので堪りません。

逆に言えばそのくらいこのモデルの描写性能は卑下して言うほどに悪いとも思えないのです。確かに皆さんが褒めちぎる「Planar 50mm/f1.4」クラスと比べれば当然の如く低い描写性能かも知れませんが、だからと言ってどうしてそこまで卑下されるのかに (市場価格が低いのか) 納得できません。

・・もう少し認めてあげてはどうなのでしょうか? 決して銘玉とは言いませんから。

↑光学系内の透明度がとても高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無ですが「逆にカビ除去痕に附随する極薄いクモリは後玉に多め」です(涙)

要は後玉以外には極薄いクモリが無くても後玉に複数のカビ除去痕 (極薄いクモリが附随する) が残っています。これらはハッキリ言って光源や逆光撮影時に多少なりとも撮影写真に影響を来す懸念があります。残念ながらコーティング層を侵食したカビ除去痕だけに改善する手立てがありません。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

↑光学系後群側も透明度が高いですが残念ながら前述のとおりカビ除去痕に附随する極薄い クモリが幾つも散見します。

従って前述のとおり光源を含んだり逆光撮影時は多少なりともフレアの出現率が上がる懸念が残りますが、しかしだかにと言って必ずしも「低コントラストに堕ちて霧の中の写真まで覚悟するべきなのか」と問われれば・・そこまで堕ちるレベルではないと言えそうです (入射光の角度で変わると思います/つまり撮影シ〜ンに縒る)。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:18点、目立つ点キズ:11点
後群内:20点以上、目立つ点キズ:15点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
(前後玉に微かなカビ除去痕が計5箇所あり)
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(前後群内に極微細な薄い3mm長数本あり)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:あり
(第2群外周に1本目立つ拭きキズがあります)
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):あり
(後玉外周に1箇所1cm程の領域にコーティング層経年劣化に伴う極微かな薄いクモリあり)
・光学系内は透明度が非常に高いレベルです。
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑6枚の絞り羽根のキレイになり 絞り環共々t確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に正六角形を維持」したまま閉じていきます。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。

詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人により「重め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。
距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が指に伝わります

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。

今回のオーバーホール済でのヤフオク! 出品に際しセットした附属品の一覧です。

《今回のヤフオク! 出品に際し附属するもの》
HAKUBA製MCレンズガード (新品)
本体『AUTO YASHINON DS-M 50mm/f1.7《富岡光学製》(M42)』
汎用樹脂製ネジ込み式M42後キャップ (新品)
 純正樹脂製被せ式前キャップ (中古品)

被せ式の純正前キャップはカパカパ状態です (しっかり被せられません)。一応ちゃんと業務用中性洗剤 (引越業者が業務で使うタイプ) で洗浄しているので経年の手垢など残っていません。

距離環を回す時のトルク感は当方自身は十分に「軽い」との認識ですが、一応神経質な人の事を想定して「重め」或いは「普通」との評価にしています。他特に明示するべき事柄はありませんが何しろ後玉のカビ除去痕に附随する微かな薄いクモリだけはLED光照射で必ず視認できるのでその分の覚悟は必要です。

・・つまり光源や逆光撮影時は相応にコントラスト低下が生じる懸念がゼロとは申し上げられません。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離50cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2」で撮影していますが、絞り環の刻印は単なる「ドット●」です。

↑さらに回してf値「f2.8」で撮影しました。

↑f値は「f4」に上がっています。

↑f値「f5.6」になりました。

↑f値「f8」です。

↑f値「f11」での撮影です。

↑最小絞り値「f16」です。絞り羽根が閉じきっているので「回折現象」の影響が現れ始めています。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。