◆ LZOS (リトカリノ光学硝子工場) ИНДУСТАР-61 Л/Э−МС 50mm/f2.8《後期型》(M42)

(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
写真を閉じる際は、写真の外 (グレー部分) をクリックすれば閉じます
※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、旧ソ連邦時代の
ロシアンレンズでLZOS (リトカリノ光学硝子工場) 製標準レンズ・・・・、
ИНДУСТАР-61 Л/Э−МС 50mm/f2.8《後期型》(M42)』です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Украине!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

今回オーバーホール済でヤフオク! 出品する個体は当方がオーバーホール作業を始めた10年前からの累計でカウントしても僅か36本目と言う状況です。

扱い本数が少ないのは普段から敬遠しているからなのですが、多くのロシアンレンズのモデルについて当方では基本的にあまり積極的に扱いません(笑) その理由を挙げると以下の4つに集約できます。

《ロシアンレンズを敬遠している理由》
ヘリコイドのネジ山切削精度が当時の標準以下 (粗い)
粘性が強く高潤滑性の不凍結グリース塗布が前提の設計
鏡筒内部にまで不凍結グリース塗布が前提の設計
コーティング層資料の品質管理が追求されず蒸着レベルが低い

・・などです。順を追って解説していきます。

ヘリコイドのネジ山切削精度が当時の標準以下 (粗い)
凡そ1980年代中期辺りを境にして旧ソ連邦時代の国内に散らばっていた各工場機械設備の更新が進み、特にコンピューター制御NC旋盤機の切削精度が向上しようやく西欧圏レベルにまで近づきました。これは特に当時の事件で「東芝機械ココム違反事件」が有名ですが、この事件に限らず当時日本からの最新型旋盤機の輸出が増大していた時期で、直接共産圏に輸出せずにヨーロッパ (のダミー会社) を経由して移送されていた懸念もいまだに解明が進んでおらず捨てきれません (専門研究者の論文を読んだ上で当方自身が考察)。

これは特にオールドレンズに限って考察するとロシアンレンズのモデル別に、或いは製産工場別に1970年代後半〜1980年代初期までに切削精度の変化がオールドレンズを完全解体して 特にヘリコイド (オスメス) のネジ山の切削精度をチェックしていくと確認できます。

合わせて考察を進めると逆パターンの発想で当時旧東ドイツで生産されていたオールドレンズの当時のロシアンレンズとを比較してもやはりロシアンレンズのほうのヘリコイド (オスメス) ネジ山の切削精度が同等レベルに到達していません (ロシアンレンズのほうが粗い)。

すると旧東ドイツを統治していたのはまさに当時の旧ソ連邦だったので、旧東ドイツ側で使われている旋盤機をそれこそ旧ソ連邦側に逆輸入すれば同一レベルの切削精度まで容易に向上が期待できそうですが、それは極一部だけだったようです (旧東ドイツ→旧ソ連邦向け機械設備輸出の内訳詳細が不明だから調べられない)。

もう一つ言えるのは「旧ソ連邦ではいつまでも同じ設計のロシアンレンズを作り続けていた」事が分かっています。これはモデルバリエーションの中で極僅かな変遷を伴いつつも基本的な設計思想は変化せずそれこそ光学系の設計だけが変わっていっただけのような印象です (例えば筐体外装の意匠に多少手を加え光学設計を再設計するとしても製品全体の基本設計を大きく変えようとしない)。

このような事例として最も分かり易いロシアンレンズを挙げるなら「HELIOS-40 8.5cm/f1.5 Π」から続くKMZ (クラスノゴルスク機械工廠) 製のモデルバリエーションの中で現在のZENIT製最新型モデル「HELIOS-40−2 85mm/f1.5」を調べればまるでよ〜く理解できます(笑)

何と相変わらずマニュアルフォーカスの当時のままの設計を継承したままその切削精度が飛躍的に向上した分、各部位の構成パーツを再設計してまで同じ造り方を続けていました (当方が調査した時点では2018年まで製産を続けていた)。

このような事実から推察するにそもそも旧ソ連邦時代からロシア人の民族的な思考回路として「常に最上を求めて改善に次ぐ改善の努力を怠らない」ようなニッポン人的な思考をどうやら重要だと考えない気がします(笑) これは決して民族的にロシア人を卑下して述べている話ではなく、ニッポン人のように職人気質的な考え方をあまり重要と捉えないお国柄と言うのか 国民性のような気がしてなりません。

その結果旧東ドイツから (いわゆるロシア人にすれば自分達が統治している国から) 産業機械を逆輸入してまで、或いは製品を最初から再設計してまで作り直す気概が一切無かったようにみえます(笑) それが国を挙げて (と言うか研究者の論文を調べると) 共産党指導部の意向が反映して日本からの最新型旋盤機が輸入された事で一気にその模倣が進み各地の機械工場で頻繁に更新が進んだのがどうやら1980年代中頃からの話だったようなのです。

従って当時の旧東ドイツ製オールドレンズの切削精度は決して低くなく (粗くなく)「品質面で低いレベルの評価」との因果関係は「利益追求に徹したが為の設計の拙さ」であり、その一方で当時のロシアンレンズは「まさに切削レベルが低かった (粗かった)」と言う違いを指摘できそうです。

話が長くなりましたが、このような時代背景を伴ってロシアンレンズのヘリコイド (オスメス) ネジ山の切削精度が向上しつつも次のへと繋がります。

粘性が強く高潤滑性の不凍結グリース塗布が前提の設計
鏡筒内部にまで不凍結グリース塗布が前提の設計

当時のロシアンレンズが戦後から延々と高潤滑性/高粘性で、且つ氷点下40℃以下でも凍結しない特異な不凍結グリースを鏡胴内部に塗りまくっていたのはまさに金属凍結を防ぐ目的だったワケですが、そこには単に不凍結グリースに頼るだけでない「操作性を可能な限り低温化でも犠牲にしない設計を最優先」していた事が当方の考察で判明しました。

この考察の一助になったのが戦前ドイツのCarl Zeiss Jenaで設計されていたCONTAX向け標準レンズ「Sonnar 5cm/f1.5」の「まんまコピー」モデルたる「絞り環に耳 (ツマミ)」が備わる「Zorki ZK 5cm/f1.5 Π (M39)」のオーバーホールとその考察で明確になりました。

この時の考察で明確になったのは「氷点下40℃以下でも金属凍結しない設計の重要性」からその後のロシアンレンズが戦前ドイツのCarl Zeiss Jenaの設計を模倣せずに独自に進化発展していったそもそもの本質と結論づけたからです。

逆に指摘するなら戦前ナチスドイツが旧ソ連邦に侵攻/侵略した時に冬将軍の中でモスクワを 目前にしながら立ち往生してしまった最大の理由が「金属凍結による兵装の機能不全」であり低温下での操作性が著しく低下した事を戦後の旧ソ連邦技術者達が知り得たからだと考えた 次第です。これはさんざん戦前に旧ソ連軍がナチスドイツの光学技術を狙っていたハズなのに戦後にどうして模倣をやめてしまったのか当方にはどうしても不思議だったのです。

その根拠が前述の「まんまコピー」モデルから敢えてヘリコイドのネジ山数を1列増やして 戦前ドイツのCarl Zeiss Jena製標準レンズよりさらに滑らかにヘリコイド駆動させるよう設計変更していた事実を突き止めたからです。つまり例え不凍結グリースを塗布してもその操作性が犠牲になれば製品使用に支障を来す為「低温下でも可能な限り実用性の維持を最優先する」からこそせっかく模倣したのにその後すぐに捨ててしまったのだと理解できました。

これはコトバではなかなか理解できませんが、例えば冬場の本当に寒い日にオールドレンズを操作していると距離環を回すトルクがとても重く感じる事があったりします。それがまさに 良い例であり極寒地の氷点下40℃以下の地域で撮影に使うとなればそのピント合わせは相当苦労したハズで金属凍結を防いでも肝心な時にピント合わせができなければ何の意味もありません・・そういう事だったのです。

従ってロシアンレンズの多くのモデルで「純正の不凍結グリースを使う前提で細かく配慮した設計が成されている」のをその純正グリースなど入手できないので今ドキのグリースを使うとなればなかなか適合しないのが現実だったりします。

すると多くの場合で「白色系グリース」でごまかしている整備が横行するワケですが(笑)、その一方で次のの問題に大きく影響を及ぼします。

コーティング層資料の品質管理が追求されず蒸着レベルが低い
現在市場に流通している数多くの様々な国のオールドレンズの中で「唯一の存在」と明言できてしまう不名誉な事実がロシアンレンズにはあったりします(笑)

それはモノコーティング/マルチコーティングの別なく1945年〜1980年代初頭まで凡そロシアンレンズの多くのモデルで光学系に蒸着するコーティング層は「その資料の品質管理が行き届いておらずコーティング層蒸着時に異物混入によりムラが起きる」問題です (ここで言う 資料とはコーティング層の蒸着で使う鉱物の事を指す)(笑)

これは実際今回扱った個体も含めとても多くの市場流通品 (ロシアンレンズ) でモデルの別なく現物を確認すれば容易に目視できます。光学系を光に反射させ拡大撮影すると「コーティング層に写る点状の白点がまるで彗星のように尾を引いた跡/影を伴う」事実です。

従ってタダでさえ製産時点でコーティング層の蒸着の質が高くないのに (特に表層面の平滑性まで当時の他の国のオールドレンズと比較しても明らかに滑らかではない) そこに余計に経年の揮発油成分が廻り易い環境となれば光学系にクモリが生じて除去できないのも納得です。

要は「白色系グリース」をロシアンレンズの内部に多量塗布するとその分「経年の揮発油成分も廻る量が増える」ワケで、その揮発油成分が光学系コーティング層に悪影響を来し経年劣化を促すのでコーティング層の薄いクモリを生じ易くなります。ましてや前述のとおりそもそもロシアンレンズだけがコーティング層の蒸着が良くないので簡単に劣化が促されます。その 意味で当方では特にロシアンレンズの場合は必ず「黄褐色系グリースしか使わない」次第ですが、今度は「黄褐色系グリースはヘリコイドのネジ山の切削にとても敏感」と言う短所があるので、詰まるところ当方が整備したロシアンレンズばかりが「距離環を回すと擦れる感触が 指に伝わる」と指摘できます(笑)

  ●               

↑上の写真 (4枚) は、左側2枚が「前期型」タイプの鏡胴写真と後玉側方向から最小絞り値の閉じ具合を写した写真です。一方右側2枚は「後期型」で同様鏡胴写真と後玉側方向からの 撮影です。

実は今回このモデルの「後期型」を扱ったワケですがブログ掲載に際しネット上でチェックできる「前期型と後期型合わせて165本」についてその仕様をチェックしました。調べた内容の最大の目的は「絞り羽根のカタチが違うタイプの法則性を見出す」為です。

上の写真で最小絞り値の絞り羽根の閉じ具合を「後玉側方向から撮っている」写真を載せたのには理由があり一番絞り羽根のカタチの相違が分かり易いからです。前玉側方向から見ると 写真の写り具合で不明瞭だったりします。

左側のほうの絞り羽根のカタチは「このモデルの大きな魅力の一つである星ボケが表出しないタイプ」なのでその注意喚起として調べました。一方右側の絞り羽根は最小絞り値まで閉じていく途中で「星形に絞り羽根が閉じるので星ボケが表出する」次第です。

今回165本の個体を調べたところ明確になった点は「1975年までの製産個体の中に幾つか星ボケが表出しないタイプが混在している」状況です。混在していると言う表現なので同じ1975年までの製産個体でも問題なく星ボケを表出できる個体のほうがむしろ多く顕在します (右側の絞り羽根のカタチ)。

つまり「前期型」の鏡胴意匠 (上の写真左側) でもその大多数の個体に実装されている絞り羽根のカタチは右側の写真の場合が多いのですが、逆に言うなら165本調べても1976年以降の個体には左側の絞り羽根のカタチ (星ボケが表出しないタイプ) は1本も発見できませんで した・・とは言いつつも実はこのモデルは「鏡胴二分割方式」の設計なので鏡胴「前部」側にあたるレンズ銘板に刻印されている製造番号が必ずしも鏡胴「後部」側の距離環や指標値環の仕様と一致しているとは限らない話になります。

いわゆる「ニコイチ」で鏡胴「前部/後部」を別個体から転用してきて合体させている個体が 市場流通品の中に紛れています。しかし仮にニコイチとしても実装している絞り羽根のカタチは鏡胴「前部」でユニークなのでニコイチしようがありません・・何故なら絞り羽根にプレッシングされている「開閉キーと位置決めキーの仕様が別モノ」だからです。つまり星ボケが 表出しないからと言って絞り羽根を入れ替えようとしてもそもそも絞り羽根の開閉制御方法の設計が異なるので適合しないのです (それを試した人が居ましたが試さずとも一目瞭然)(笑)

さらにレンズ銘板に刻印のモデル銘が「キリル文字なのかラテン語/英語なのかの相違」は純粋に「旧ソ連邦国内流通品/東欧圏向け輸出品キリル文字表記」に対して「欧米向け/アジア向け輸出品ラテン語/英語表記」が当時の国際貿易法で義務づけられていた話であり、そこに新旧モデルバリエーションの相違などの根拠は一切存在しません(笑)

また1979年の最後のほうから製造番号先頭に「」が附随しなくなり単にシリアル値の数字を刻印する方式に変わりました。つまり1980年以降製造番号に「」が附随している個体はありません。

その一方で距離環の刻印の仕様 (距離指標値の刻印の仕方/フォント) の相違、或いは∞刻印手前の距離指標値が「6mなのか10mなのかの相違」も合わせて1965年〜1992年までの個体についてまるでバラバラに混在していますきが大きく括るなら1980年以降の個体は「∞刻印の一つ前は6m」と言う仕様に固定のようです。但し前述のとおりそもそも「鏡胴二分割方式」なので必ずしも該当性がある話ではありませんね(笑)

↑さらに上の写真のように光学系が放つ光彩はモノコーティング/マルチコーティングの相違と共に上のように3つのパターンで輝くのでこれらの違いについては何しろ写真によるチェックだけなのでとても判明しません。然し敢えて指摘するなら右端のクリーン色の光彩を放つタイプは間違いなくマルチコーティング化モデルです。

ちなみにロシアンレンズは製造番号先頭2桁だけが製産年度を表しますが例えば「00xxxx」と先頭にゼロ番が来ている個体は「2000年度の製産品」ではなく(笑)、当時の共産党高官向け頒布専用個体なので製造年度を表しません (但し初期番号は量産化前の個体も含む)。

そしてロシア語のキリル文字とラテン語/英語の表記との整合性に常に注意しないとデタラメな解説になってしまいます(笑) これは特にロシア語のキリル文字の翻字なのか否かを注意深く考察しないと複雑になります。

その例を挙げるなら例えば今回のモデルの製産工場はその工場名を現す略語として「LZOS」とよく呼称しますが (耳にしますが) この工場名はいったい何を意味するのでしょうか?(笑)

このブログページ標題のとおり「リトカリノ光学硝子工場」で製産されたオールドレンズなのが今回扱うИНДУСТАР-61 Л/Э−МС 50mm/f2.8《後期型》(M42)』ですが、ロシア語のキリル文字でこの工場名を表記すると「Лыткарино Завод Оптического Стекла」が正式名称です。

このロシア語キリル文字の名称頭文字をまとめると「ЛЗОС」になります。これを純粋にそのままラテン語/英語表記に翻字すると「LZOS」になるのですが、ここで今度は前述の工場正式名称をそのままラテン語/英語に「翻訳」すると「Lytkarino Optical Glass Factory」となってしまいそのまま略語でまとめると「LOGF」で全く別モノです!(笑)

要は翻字で解説しているのか翻訳しているのかで別の名称になってしまうように錯覚します(笑)

これがとても複雑な話なので当方も時々分からなくなりますが(笑)、次は今回のこのモデル名を考察してみます。

ИНДУСТАР-61 Л/Э−МС 50mm/f2.8《後期型》(M42)』ですが、「ИНДУСТАР-61」はラテン語/英語翻字で「INDUSTAR-61 L/Z」と言うモデル銘になり「前期型」ならモノ コーティングですし今回の個体のように「後期型」ならマルチコーティングです。

すると「INDUSTAR (インダスター)」は3群4枚構成のテッサー型構成を指しモスクワのGOI光学研究所の設計諸元書通し番号で言う処の「61番目」であって、且つ光学硝子材の一部に「ランタン材を含有し屈折率を最大で1.33倍まで向上」させた表記として「」を附随させその装着対象フィルムカメラ「Zenit用のZ」までをまとめて「INDUSTAR-61 L/Z」と言うモデル銘が決まります。

さらにその後に「後期型になるとマルチコーティング化が成される」ので「MC」が附随しますが、実はレンズ銘板のモデル銘の刻印がロシア語キリル文字なら「MC」もそのままキリル文字なのでラテン語/英語に翻字すると「MS」が正しい表記になります。

従って時々英語圏のサイトで表記されている「INDUSTAR-61 L/Z-MS」と「INDUSTAR-61 L/Z-MC」は全くの同一品を指して述べていると理解できますね(笑)

・・これがロシア語キリル文字を扱う時の複雑な話です(涙)

ちなみにマルチコーティングを現すロシア語キリル文字の「MC」は「Много Слоев」の頭文字であってもしもそのままラテン語/英語翻字なら「Mnogo Sloev」ですが、反対にそのままラテン語/英語に翻訳すると「Multi Layerd」で要は「多層膜」だからマルチコーティングなのが明白です。従ってここまでをまとめて「INDUSTAR-61 L/Z-MS」と言う表し方が翻字の表記だと言えるワケです (ロシア語キリル文字のロシア語のラテン語文字表記法を参照すると分かります)。

・・毎回この解説をしていていつも頭が痛くなります(笑)

なお今回の出品個体は1986年の製産個体です。

↑完全解体した時の内部構成パーツ全景写真です。オーバーホール工程やこのモデルの当時の背景など詳しい解説はИНДУСТАР-61 Л/Э−МС 50mm/f2.8《後期型》(M42)』のページをご参照下さいませ。

ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わりました。前回の扱いが2019年なので3年が経ってしまいました(泣) 正直あまり扱いたくないモデルですが(笑)、今回の個体もバラしてみると純正のオリジナルなヘリコイドグリースがドップリで相当異臭を放っていました(泣)

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無です。

クモリは一切ありませんがコーティング層の微かな薄い線状ハガレがパッと見で光に反射させるとまるでヘアラインキズのように見えてしまうので出品ページで明記しています。実際にLED光照射などして透過してみれば光学硝子面に物理的に削れているキズではないので、それら ヘアラインキズに視認していた箇所が全く視認できなくなります。

一応そのように明言しても「いやヘアラインキズだ!」と頑なにクレームしてくる人が居るのでヘアラインキズと明記してカウントしています(笑) そういう人は落札しなければ良いのに どうしてワザワザ面倒な手間を掛けるのか不思議です (ちゃんと全額返金しているから)。

ちなみに一部光学硝子レンズのコバ端は反射防止黒色塗料で着色しています。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

冒頭で解説したコーティング層の不純物による「彗星のように尾を引いた部分」がこのように拡大撮影すると見えてきます。

↑光学系後群側も本当に気持ちいいくらいに「まるでスカッとクリア」ですが同様パッと見でヘアラインキズに見えてしまう実はコーティング層の線状ハガレがやはり数本視認できますがLED光照射で透過すると見えません (つまり物理的な光学硝子面のキズではない)。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:20点以上、目立つ点キズ:16点
後群内:20点以上、目立つ点キズ:17点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
(前後玉に微かなカビ除去痕が計4箇所あり)
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(前後群内に極微細な薄い7mm長数本あり)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・光学系内は透明度が非常に高いレベルです。
(LED光照射でも極薄いクモリすら皆無です)
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・光学系内を光に反射させると容易に光学系内のヘアラインキズが視認できますが、実はこれら多くのヘアラインキズは「コーティング層の線状ハガレ」で物理的な光学硝子レンズのキズではありません。それはLED光照射で内部をチェックするとそれらヘアラインキズに見えていた箇所の多くが視認できなくなる事で納得できます。しかしパッと見でヘアラインキズに見えてしまうのでヘアラインキズとしてカウントを行いマイナス要素としてこの出品ページでは明示しています(事前告知済なのでクレーム対象としません)。また多くの撮影シ〜ンの場合で入射光が透過してしまうのでこれらコーティング層の線状ハガレは写真に影響を来しません(光源を含むシ〜ンや逆光撮影時でも影響しません)。
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑6枚の絞り羽根もキレイになり絞り環/プリセット絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に正六角形を維持」したまま閉じていきますが凡そ「f5.6〜f8」辺りで星形の絞り羽根開口に変化します。上の写真は最小絞り値「f16」の時なのでほぼ円形絞りに近くなります。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。

詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人により「軽め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。
距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります。特に擦れる感触は距離環の全域に渡り感じられます。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。

今回のオーバーホール済でのヤフオク! 出品に際しセットした附属品の一覧です。

《今回のヤフオク! 出品に際し附属するもの》
marumi製MC-Nフィルター (新品)
本体『ИНДУСТАР-61 Л/Э−МС 50mm/f2.8《後期型》(M42)』
汎用樹脂製ネジ込み式M42後キャップ (新品)
汎用樹脂製スナップ式前キャップ (新品)

光学系内にはクモリが皆無ですし (パッと見で視認できるヘアラインキズ状のコーティング層ハガレは複数ある) 距離環を回すトルク感もこのモデルのピントの山 (ピントのピーク) が不明瞭でゆっくり合焦するのでとても「軽め」に仕上げてあります。特にピント合わせ時の前後微動は本当に僅かな動きだけで微動できるので楽です。

また当初バラす前の実写チェック時点で「このモデルにしては僅かに甘いピント面」だったのでその因果関係が「光学系前群の格納筒への落とし込みが抵抗/負荷/摩擦で適正ではなかった」のを「磨き研磨」で改善させて本来の鋭さに戻しています。このモデルは前後群が共に「落とし込み方式」でバラバラと格納させて最後に締付環で締め付け固定するだけなので意外と経年劣化に伴う酸化/腐食/錆びなどの影響で光路長が極々僅かにズレている事がありますから、その面でも安心です。

さらに鏡胴「前部/後部」の間に挟まれる「シム環」もキッチリ微調整済なので無限遠位置も適切に仕上がっています (マウントアダプタとの相性から極僅かにオーバーインフに仕上げています)。

プリセット絞り環の設定方法などは前述のオーバーホール工程を参照する当方ブログページの最後のほうで細かく解説しているので、ご存知ない方はご参照下さいませ。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離30cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f4」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f5.6」で撮影しました。

↑f値「f8」での撮影です。

↑f値は「f11」に上がっています。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。絞り羽根がほとんど閉じきっているので「回折現象」の影響が極僅かに現れ始めています。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

ここからはミニスタジオの被写体を変更して「円形ボケや星ボケ/角ボケの表出を掲載」していきます。

↑当レンズによる最短撮影距離30cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

背景に光りモノを置いてあるので「キレイな真円の円形ボケ/玉ボケ」が表出しています。

↑絞り環を回して設定絞り値「f4」で撮影しています。背景の円形ボケが「角ボケ (正六角形)」に変化しました。

↑さらに回してf値「f5.6」で撮影しました。このモデルの特徴たる「星ボケ (ダビデの星)」が背景に表出しています。

↑f値は「f8」に上がっています。背景の星ボケがさらに角張って明確なエッジに写り「金平糖のようなボケ方」に至っています。

↑f値は「f11」です。やはり角張ったボケ味に写っていますね。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。同様「回折現象」の影響が表れ始めていますが背景はギリギリ円形ボケにまで戻らない感じのボケ味がこのf値でも表出しています。

なお前述のとおり光学系の光路長が当初バラす前の時点でズレていたのを確認済 (光学系第2群のモールド筒の経年劣化による抵抗/負荷/摩擦が原因) なのでキレイに「磨き研磨」した 甲斐がありご覧のようにとても鋭い本来のピント面に至っています(笑)

特に当方の場合オーバーホール後の仕上がった個体で必ず同じ被写体とミニスタジオを使って実写撮影しているのでれぞれのオールドレンズによる描写特性の違いなども比較できますし、そもそも対象個体の光学系の問題点「クモリの影響やキズの影響、或いはピント面の解像度や色ズレなど」が常に同じ条件下に近い環境で撮影できている事が重要であり、互いの比較が 適うと言う話です。

そのような目的の為に当方では様々な被写体写真を取っ替え引っ替えして敢えて撮影しません
・・ご覧の方々が自由に気になるオールドレンズの描写特性を比較できるよう配慮している 処置の一つです
(笑)

このような要素にちゃんとこだわってブログに逐次掲載する事で、互いのモデルの比較ができるよう配慮する事がまた単なるオークションの落札だけとは違う別の有意義な楽しみ方をご提供できるとのポリシ〜です (つまり単なるオーバーホールの自慢話が目的ではありません)(笑)

・・どうぞお楽しみ下さいませ。