◎ KONICA (コニカ) HEXANON AR 28mm/f3.5 AE(AR)

KONICA31960年に登場した「初期型」は、シルバーの梨地仕上げを施した指標値環をマウント部直前に配した意匠で登場した、プリセット絞り機構部 (前玉側) を装備したモデルです。当レンズは1987年に発売の「最後期型」にあたり第4世代になります。

総金属製のシッカリした造りで、光学系構成5群5枚のレトロフォーカス型をとても上手くコンパクトに仕上げています。当初の「初期型」では光学系が6群7枚の構成でしたから、第4世代までの間に一度大幅な光学系の仕様変更を行っています。

描写性能は骨太で鋭いエッジのピント面を構成し、歪曲や色ズレなど諸収差を上手く改善させた緻密で情報量の多い描写をします。画の周辺域での流れなども無く、とてもリアルで立体的な画造りです。開放F値を「f3.5」とそつなくまとめたことでアウトフォーカス部も相応に階調の緩やかな滲み方をして背景にあまり気を遣わなくて済むボケ味です。シーンによっては真円のリングボケ (玉ボケ) も表出し雰囲気のある描写をしてくれます。

当レンズは「最後期型」なので「AE」刻印になり、コーティングレベルでも最終的な域に達しているモデルですが、市場価格は安く、その描写性能から考えると少々可哀相な状況です。


オーバーホールのために解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載しています。

すべて解体したパーツの全景写真です。

AR2835(0105)11ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。

構成パーツの中で「駆動系」や「連動系」のパーツ、或いはそれらのパーツが直接接する部分は、すでに当方にて「磨き研磨」を施しています (上の写真の一部構成パーツが光り輝いているのは「磨き研磨」を施したからです)。「磨き研磨」を施すことにより必用無い「グリースの塗布」を排除でき、同時に将来的な揮発油分による各処への「油染み」を防ぐことにもなります。また各部の連係は最低限の負荷で確実に駆動させることが実現でき、今後も含めて経年使用に於ける「摩耗」の進行も抑制できますね・・。

AR2835(0105)12絞りユニットや光学兼前後群を格納する鏡筒 (ヘリコイド:オス側) です。オールドレンズで普通多いのは、絞り羽根の角度を決める「絞り羽根制御環」はこの鏡筒内には位置されることが多いのですが、このモデルでは鏡筒の外から直接絞り羽根を制御させています。

AR2835(0105)13そのため、とても薄い絞りユニットの厚みになっています (絞り羽根とメクラ環の2つしか存在しません)。これは光学系前群の配置による都合上の仕様でしょう。

AR2835(0105)14このモデルではMINOLTAのMCタイプのモデルのように基台とは別にヘリコイド (メス側) をネジ込むためのベース環を、ワザワザ独立させて用意しています。上の写真の右端にある2つの固定ネジで固定されている真鍮製パーツは「距離環制限キー」で、距離環を回す際に「無限遠位置」と「最短撮影距離位置」の2つの駆動範囲を決めているパーツです。

AR2835(0105)15ヘリコイド (メス側) を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠は出ません (合焦しません)。

AR2835(0105)16鏡筒 (ヘリコイド:オス側) をやはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルでは全部で11箇所のネジ込み位置があるので、ここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) に再びバラしての再組み直しに陥ります。

AR2835(0105)17こちらが距離環やマウント部を組み付けるための基台です。「絞り連動ピン」の機構部が既に組み付けられています。

AR2835(0105)18基台の内部に用意されていた連動系・連係系パーツをすべて取り外した状態で撮影しています。当方での「磨き研磨」が既に終わっています。

「磨き研磨」は極力グリースの類の塗布を少なくして、今後の経年使用に於いても「揮発油成分」が光学系まで回らないよう配慮した処置です。それは既に光学系、特にコーティングの劣化が相応に進行しており、さすがに硝子材だけはいくらメンテナンスと言えども、おいそれと何度も研磨することはできません (せいぜい当初生産時諸元値の1%以下程度までしか研磨できません)。それを考えるとグリースを塗ったくったり、或いは液化の早い滑らかな (粘性が軽めな) グリースばかりを好んで使うのもどうかと思いますが・・。

自分が使い倒してそれで終わりでいい・・と考えるならば仕方ありませんが、いつの日にか状態の良いオールドレンズ自体が入手困難な時代もやってくるでしょう。その時には、古いオールドレンズに替わって、最新の技術と設計思想で作られたマニュアルフォーカスの新たなレンズ (復刻版など) が全盛時代になるのでしょうか (オートフォーカスはまた別のお話として)・・しかし、その描写性は如何にも最新の画造りだけの世界にも感じ、古き良き時代の「個性」としての描写性は、 オールドレンズのひとつの魅力ではないかとも考えます。

AR2835(0105)19こんな感じで連動系・連係系パーツがセットされます。これらのパーツも既に当方による「磨き研磨」が終わっています。当初バラした直後はこのパーツ類にはベットリとグリースが塗られていました・・白色系グリースなので最近メンテナンスされたのではないでしょうか? 上の写真で真鍮製のパーツが「絞り連動ピン」に直付けされており、絞り連動ピンの動きに伴い中心部の「コの字型」パーツ「絞り羽根開閉アーム」の制御を行っています。この「コの字型」が左右に首を振ることで絞り羽根が最終的に開いたり閉じたりしています。各パーツの平滑性が担保されたのでグリースなどは塗布していません・・それでも確実に少ない負荷で駆動しています。

AR2835(0105)20ベース環を基台にセットします。基台の裏側 (つまりマウント側) の絞り連動ピン機構部は、このような感じで長いマイクロスプリングによって戻るチカラを持っています。

AR2835(0105)21指標値環を「Ι」マーカーをキッチリ合わせて組み付けます。

AR2835(0105)22絞り環に「鋼球ボール+スプリング」をセットしてから基台に組み付けます・・同時に鋼球ボールが飛んでしまうので、すぐにマウント部もセットします。

AR2835(0105)23距離環を仮止めして光学系前後群をセットすれば完成間近です。

AR2835(0105)24まずは光学系前群を組み付けます。

AR2835(0105)25

AR2835(0105)26上の写真 (2枚) は光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。1枚目は前玉中央付近のカビ除去痕による汚れ状の部分を撮りました。2枚目は極微細な点キズを撮っていますが微細すぎてすべては写りませんでした。

【光学系の状態】(順光目視で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ:
前群内:5点、目立つ点キズ:1点
後群内:4点、目立つ点キズ:2点
コーティング経年劣化:前後群あり
カビ除去痕:あり、カビ:なし
ヘアラインキズ:あり
・その他:バルサム切れなし。前玉中央付近にはLED光照射にて浮かび上がるカビ除去痕が汚れ状にあります。また後群はコーティング劣化に拠る非常に薄いクモリが僅かにあります。
・光学系内はLED光照射でようやく視認可能レベルの極微細な拭きキズや汚れ、クモリもありますがいずれもすべて写真への影響はありませんでした。

AR2835(0105)27光学系後群を組み付けます。

AR2835(0105)28上の写真は後群のキズの状態を拡大撮影しています。極微細な点キズがありますが微細すぎてすべては写りませんでした。

光学系の状態を撮影した写真は、そのキズなどの状態を分かり易くご覧頂くために、すべて光に反射させてワザと誇張的に撮影しています。実際の現物を順光目視すると、これらすべてのキズは容易にはなかなか発見できないレベルです。

これらの極微細な点キズは「塵や埃」と言っている方が非常に多いですが、実際にはカビが発生していた箇所の「芯」や「枝」だったり、或いはコーティングの劣 化で浮き上がっているコーティング層の点だったりします。当方の整備では、光学系はLED光照射の下で清掃しているので「塵や埃」の類はそれほど多くは残留していません (クリーンルームではないので皆無ではありませんが)

光学系内については、何でもかんでも「カビや塵・埃、拭き残しと決めつける方」或いは「LED光照射した状態をクレームしてくる人」は、当方ではなくプロのカメラ店様や修理専門会社様などでオールドレンズのお買い求めをお勧めします。当方のヤフオク! 出品オールドレンズの入札/落札や、オールドレンズ/修理のご依頼などは、御遠慮頂くよう切にお願い申し上げます。
当方には光学系のガラス研磨設備やコーティング再蒸着設備が無く、キズやコーティングの劣化が全く無い状態に整備することは不可能です。

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ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

AR2835(0105)1市場ではいくらでも安い価格で出回っているのでしょうが、今回はオーバーホールをしてしまいました(笑) 老眼が酷いので焦点距離的にこのくらいの広角レンズ (28mm) が限界でしょうか・・光学系の後群が硝子レンズが小さすぎてもう見えません。

AR2835(0105)2順光目視では大変クリアな状態を維持した個体ですが、LED光を照射すればいくらでも粗探しはできると思います・・当方のスキルレベルは三流以下ですので、そのような確認方法をされる方は、当方が出品するヤフオク! のオークションやオーバーホール/修理のご依頼などもすべてスルーして下さい。設備が整ったプロのカメラ店様や修理専門会社様を是非ともご利用下さいませ

これだけ何度もしつこくお願いしていてもいまだにLED光照射での状態を指摘してくる方がいらっしゃいます。確かに写真を撮る状況で考えれば強い光源が入射することも当然ながら考えられるワケですが、当方には設備がありませんから、汚れや点キズ、或いはコーティング劣化などを完全に除去することは不可能です。光源を含む撮影や逆光撮影での使用を避けたくださいと申し上げているワケではありません(笑) 実際オールドレンズにそのような完璧な光学系の状態を期待するコト自体がどうなのかと思いますが・・(笑) 修理専門会社様で整備依頼されるのがベストではないでしょうか (どうして当方に依頼されるのでしょうか)?

AR2835(0105)3絞り羽根もキレイになり確実に駆動しています。

ここからは鏡胴の写真になります。経年の使用感がほとんど感じられないとてもキレイな状態を維持した個体です。

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AR2835(0105)7【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドのグリースは「粘性:中程度」を使用。距離環や絞り環の操作は大変滑らかになりました。
・距離環のトルク感は滑らかに感じ完璧に均一です。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。

【外観の状態】(整備前後拘わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。

使い倒すつもりならば整備する必要は無いでしょうし (スルスル回るのは既にグリースの限界が来て液化が始まっているからです)、少しでも長く使うならば整備したほうが良いコトになります (グリースを入れ替えるワケですから、トルクはそれなりに変化します)。その辺のリスクが分からない (気がつかない) 方が最近は多くなってきました・・当然ながら、当方のスキルレベルは低いですから、完璧な整備を望まれる方は「プロのカメラ店様/修理会社様」に整備をご依頼されるのが最善かと思いますヤフオク! に出品しているオールドレンズの入札/落札も、このブログをご覧頂き「オールドレンズ/修理」のご依頼をされるのも、すべてスルーして頂くようお願い申し上げます。

それでもヤフオク! の当方評価に「非常に良い/良い」をお付け頂ける方がいらっしゃるのは、或いは「オーバーホール/修理」のご依頼を頂けるのは、市場に出回っているオールドレンズの状態を既にご存知だからです。問題なのは、このブログが検索でヒットして「オーバーホール/修理」のご依頼をされる方々の中で「認識」「感覚」が「プロのカメラ店様で販売しているオールドレンズしか知らない」と言う方々です。そのような方々からのご依頼では、トラブルになることが最近は多くなってきました・・ご勘弁下さいませ。何度も言いますが、当方の技術レベルは低いです・・。

 内部の構成パーツは、ヘリコイドも含めてすべて当方にて「磨き研磨」を施しているので、ほぼ生産時の環境に近づいた状態に戻っています。また、使用したヘリコイドグリースは、距離環を回す際は「僅かに重め」なのにピント合わせをする時は「とても軽いチカラ」でスッと微妙なピント合わせができる (ピント合わせしていることを意識したチカラの入れ具合) ことを最優先した粘性を選択しています。すでに1,000本を越える本数の整備をして参りましたが、ヘリコイドグリースに纏わるクレームは数件レベル (まだ1桁) です。

数件だとしても、この「言葉じり」を引用してクレームを付けてくる人が居ますが、感覚的な要素なのでそのようなクレームはご勘弁下さい。何かしら適確に説明したいので「コトバ」で表現しているに過ぎませんから・・。

AR2835(0105)8市場では安く出回っているモデルですが、もう少し評価してあげても良いのではないでしょうか・・そのくらいの描写性能を持っているモデルだと当方では考えています。

AR2835(0105)9光学系後群もキレイになりとてもクリアです。

AR2835(0105)10当レンズによる最短撮影距離30cm附近での開放実写です。