◎ Steinheil München (シュタインハイル・ミュンヘン) -E- Cassarit 50mm/f2.8 silver《Paxette版》(M39)
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※解説とオーバーホール工程で使っている写真は現在ヤフオク! 出品中商品の写真ではありません
今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、旧西ドイツは
Steinheil München製標準レンズ・・・・、
『-E- Cassarit 50mm/f2.8 silver《Paxette版》 (M39)』です。
今回の扱いが初めてのモデルになりますが、戦前ドイツで製産されていたレンジファインダーカメラ「Paxetteシリーズ」から「距離計連動機構装備」のタイプである『-E- Cassarit 50mm/f2.8 silver《Paxette版》 (M39)』になります。
マウント規格がネジ込み式「内径:39mm x ピッチ:1mm」とライカ判スクリューマウントの「L39」と同一規格です。従ってもちろん問題なくネジ込めるのですが、フランジバックが異なるのでライカでは使えません。
レンジファインダーカメラ用交換レンズ群の中の一つなので、特に光学系後群側サイズが小径になる為に画質で捉えると確かに不利です。ところが実写を見るとそんな事はスッカリ頭の中から消えてしまったくらいに大変魅力的な描写性能で、ハッキリ言ってファンになってしまったワケです(笑) 特に今回扱うモデルは開放付近での撮影時は背景に相当な収差の影響が現れるのでオモシロイです(笑)
ちなみにモデル銘は「Cassarit (カッサリート)」と発音し (ドイツ語なので)、主に3枚玉トリプレット型構成光学系を実装したオールドレンズなど標準レンズに使われていたようです。
またレンズ銘板の「-E-」刻印は距離計連動を意味しますが、レンジファインダーカメラ「Paxetteシリーズ」に於ける距離計の話なので、その構造や設計概念がライカなどとは違います。従って同じモデル銘「Cassarit」でも「-E-」が附随しない非距離計連動タイプも存在し、且つマウント面の設計が異なります。
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戦前ドイツで1915年にバイエルン州ニュルンベルグでKarl Braunによって 創設された会社で、戦後の1948年にはCarl Braun Camera Factoryとして レンジファインダーカメラ「Paxette (original)」を開発/発売しました。
(旧西ドイツ側に属する)
このフィルムカメラはリーフシャッター方式のPRONTOR-Sを搭載した固定式レンズのレンジファインダーカメラでした。
右写真はアクセサリシューが一体型切削だった初期のモデルで後の モデルバリエーションではアクセサリーシューが後付けされるように変更になっています (シャッター速度はいずれもB〜1/300)。
1951年に発売された上記の改良型「Paxette ver.II (original)」で、アクセサリーシューが後付けになったタイプです (写真左)。
また右写真は上記のVARIOリーフシャッター式を搭載したタイプで「Kataplast 45mm/
f3.5」の固定式レンズです (1953年発売)。
さらに1956年発売の「Paxette IB ver.2」で、右写真は巻き上げノブが附加されたほうのタイプです。
巻き上げノブが無いoriginalと同一の巻き上げ式のタイプも存在するようです。
この辺のモデルバリエーションはとても多く複雑です。固定式レンズですが「POINTAR/KATA/Cassar」などが存在するようです。
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また1952年「Paxette II」が発売され、新たにオプション交換レンズ群が用意され「M39ネジ込み式マウント規格」を採用しました。マウント規格自体は「内径:39mm x ピッチ:1mm」なのでライカ判のネジ込み式マウント規格「L39」と同一ですが、フランジバックが 違うので転用できません。
右写真は少々珍しい1951年版「Paxette I ver.II」なのにレンズ交換式に変わっているタイプです (Prontor-S搭載)。
さらにリーフシャッターがProntor-SVSに変更になり巻き上げノブが附随する「Paxette II」で1953年の発売タイプのようです。
もちろんレンズ交換式で同様に「M39ネジ込み式マウント規格」の ままです。巻き上げノブは2回巻き上げが必要です。
1953年に発売された「Paxette IIL」でレンジファインダーユニットにより軍艦部の中央が一段分高くなっています。
他に「Paxette IIM/Paxette IIBL」なども存在し、やはり種類が多く複雑です。
右写真は「Paxette IIM」で巻き上げノブが無いほうのタイプになります。
右写真は「BRAUN Paxette」でBRAUN銘を刻印しているタイプに なりこちらも少々珍しいタイプなのでしょうか。
何しろバリエーション数が非常に多いので、世代としての前後はもちろん細かい仕様上の違いなどもよく理解できていません。
(もしも間違いがあれば是非ご指導下さいませ)
そしていよいよ「M39ネジ込み式マウント規格」では最後に登場する1956年発売の「Super Paxette I」からのバリエーションです。
やはりモデルバリエーションが幾つか存在し「Super Paxette IB/
Super Paxette IL」などがあるようです。
結局簡単に大きく分類すると「固定式レンズ方式のPaxette Iシリーズ」また同時期に「レンズ交換式M39ネジ込み式マウント規格のPaxette IIシリーズ」そしてさらに「距離計連動機構を装備したSuper Paxette Iシリーズ」までが「M39マウント」対応モデルと考えられます。
なお「距離計連動機構装備」のPaxetteにセットで発売されていた交換レンズは「-E-」刻印をレンズ銘板に伴うオールドレンズで、距離計を意味するドイツ語「Entfernungsmesser」の頭文字を採っています (必ず-E-が附随するとも限らない)。
但し距離計と言っても構造としてはちょうど「M42マウント」の絞り連動ピンのような仕組みなので、レンジファインダーカメラ側マウント部内部には「押し込み板」が備わり、その板状が押し込まれる量で距離計が連動するようです。
またこの事から同一モデル銘のオールドレンズでも「-E-」の有無によってマウント面の設計が異なっており、特に「マウントアダプタへの装着時に問題が起きる」点が要注意です (最後 までネジ込めないタイプが中には存在する)。
従ってライカ判「L39」と同じマウント規格だからと取っつき易く考えるのですが、イザッ オールドレンズを手に入れると下手すれば用意したマウントアダプタにネジ込めないハメに 陥ります (実際当方もそのような個体が数本あった)。この相性のような問題点があるために、なかなか手放しで調達できない難しさがあったりしますね。
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上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています/上記掲載写真はその引用で あり転載ではありません。
◉ 一段目
左端からシャボン玉ボケが破綻して滲みながら溶けていく様をピックアップしています。
シャボン玉ボケで有名と言えば真円の明確なエッジを伴うとても美しいシャボン玉ボケを表出させられる旧東ドイツのMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズがすぐに思い浮かびます。
確かに実装している光学系もそれらMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズと同じ3枚玉の トリプレット型構成なのですが、それらMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズが苦手とする「立体感」や「質感表現能力」などはこの小さな後玉の3枚玉のほうが優れていると評価しています。逆に言えばシャボン玉ボケの品質だけで比較するなら、やはりMeyer-Optik Görlitz製オールドレンズがベストと言う話になりますね。
そうは言ってもこれだけ本格的なシャボン玉ボケを写し込めるなら十分なのではないでしょうか。明確なエッジを伴うシャボン玉ボケの他、2枚目のような液体ボケのような滲み方、或いは優しく柔らかく溶けていく円形ボケなどなかなか背景の演出効果に余念がありません(笑)
◉ 二段目
さらに背景の円形ボケが溶けていくと収差の影響を受けて二線ボケに至ったりするオールド レンズが多い中で、今回のCassaritはあくまでも「優しさ/柔らかさ」が前面です。さすが旧西ドイツ製オールドレンズだけあって「シアンに振れる発色性」から非常に鮮やかで艶やかな 赤色表現と思いきや、スカッと気持ち良いくらいなブル〜の表現性など、こんな小さなパン ケーキレンズなのにオドロキです。
◉ 三段目
小口径である分どうしても不利ですが人物撮影でこれだけ肌の表現性を魅せてくれれば十分です。また3枚玉トリプレットながら十分すぎるくらいの鋭いカリッカリのピント面を構成しますし、一方まるで正反対なソフト感タップリなピント面もこなしてしまうのが何ともオドロキです。逆光でもこれだけフレアっぽいギリギリの光の中で耐え凌げばむしろ褒めたい くらいです(笑)
光学系は典型的な3群3枚トリプレット型構成です。同じ旧西ドイツのENNA WERK (エナ) やISCO-GÖTTINGEN (イスコ・ゲッチンゲン) 或いは旧東ドイツのMeyer-Optik Görlitz製の同格オールドレンズ3枚玉と比較するとガラスレンズの肉厚を採ってきているのでどちらかと言うと旧東ドイツのCarl Zeiss Jena製モデルと同じ印象です。
右図は今回バラして清掃する際に当方の手でデジタルノギスを使って 逐一計測したトレース図になります。
オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。
↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。内部構造はやはり非常に簡素で合理化が進んでおり「初心者向け」のようにも見えますが、実は「各部位の微調整が相当神経質」なので、相応に技術スキルを有する整備者でない限り適切に組み上げられない「高難度モデル」の一つです。
絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。
◉ 位置決めキー
「位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー
◉ 開閉キー
「開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー
◉ 位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)
◉ 開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環
↑絞りユニットを鏡筒最深部にセットしますが、光学系第2群が抑え環の役目も兼ねている為に光学系をセットしてしまいます。
↑光学系第1群 (前玉) と第3群 (後玉) も組み付けてしまい鏡筒周りを完成させてしまいます。
↑この後はヘリコイド (オスメス) を組み込むだけなので簡単ですが、実は無限遠位置や「距離計連動部分」の微調整が相当大変なモデルです。
↑パッと見で簡単に見えますが、上の写真を撮影するのに既に6時間が経過しています(笑) 最後まで組み上げて実写確認しながら無限遠位置を割り出すワケですが、そもそもレンジファインダーカメラ用の標準レンズなので (Paxette用) フランジバックも見合いつつマウントアダプタとの関係性まで考慮する必要があります。
パッと見で距離環がイモネジによる締め付け固定なので、無限遠位置が自由に微調整できるように思い込んでしまいますが、実は距離環の駆動域が決まってしまっているので、そもそも 無限遠位置を微調整する概念が設計段階で考慮されていません。
もっと言うならフランジバックも当然ながら「Paxette専用」なので、無限遠位置の微調整にプラスしてフランジバックまで解決しない限り今ドキのデジカメ一眼/ミラーレス一眼にマウントアダプタ経由装着してちゃんと使えません。するとそれぞれの微調整機能が設計として附加されていない以上、ではいったい何処でどうやって微調整すれば良いのか、或いは如何に使い易い操作性のまま仕上げられるのか、そのような問題点を一つずつ片付けながら仕上げていく次第です(笑)
それを簡単に仕上げてしまおうと考えれば、切削したり接着したりと言う「改造」でマウント自体を別のマウント規格に変更してしまえば面倒くさい事を省けます。しかし当方の方針として「あくまでもオリジナルのままを維持」しつつも、もっと魅惑的な使い方まで裾を広げて、且つその使い勝手の良さがシンプルだからこそ (面倒な手順などに制約されないから) むしろ 撮影のお供としてず〜ッと使い続けてもらえると言うスタンスで組み立てています。
要は整備者サイドの立場だけで組み上げてしまうのか、或いは落札者 (使用者) の立場で常に 物事を考えているのか、この辺の違いが現物を使い始めると見えてきますね(笑) その意味ではこういうモデルは相応に使ってみてからでないと、本当の魅力はなかなか現実味を以て感じ取られないのかも知れません。然しそれこそがまさにオールドレンズにこだわる醍醐味と言うか愉しみだったりするのだと当方は考えていますね (だからこそ当時は負の要素でしかなかった収差に注目している/収差の多い少ないが実は愉しい)(笑)
そう言う意味で当方は撮影した写真を等倍でチェックして、オールドレンズの描写性能をあ〜だこ〜だ評価する気持ちがあまりありません(笑) そんなに描写能力の高い画を残したいのなら今ドキのデジタルなレンズを使えば良いワケで、いったい何の為にオールドレンズを付けているのかと思ってしまいますね(笑)
この後は完成している鏡胴を組み込んでから無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行えば完成です。
ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。
↑内部構造が簡単に見えますが相当厄介な微調整を施しようやく完成しました。ご覧のとおりパンケーキレンズで製品全高:22.4mmに最大幅:46.7mmと言う本当に小さな筐体です。
そして3枚玉トリプレットですがご覧のように本格的なコーティング層が蒸着されており、決してレンジファインダーカメラ用だからと簡素に設計を仕上げていません。こういうところはさすが旧西ドイツの老舗光学メーカーSteinheil Münchenですね。
↑光学系は非常に透明度が高い状態を維持しておりLED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無です。但し光学系後群側には点状カビ除去痕が複数残っているので、コーティング層に侵食した分は極薄いクモリ状に見えます。また「気泡」も数点入っています。
◉ 気泡
光学硝子材精製時に適正な高温度帯に一定時間維持し続けたことを示す「証」と捉えていたので、当時光学メーカーは正常品として出荷していました。
↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。
↑パッと見ではキレイですがLED光照射すると点状カビ除去痕が複数浮かび上がります。
↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。
【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ:
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:11点、目立つ点キズ:6点
後群内:20点以上、目立つ点キズ:20点以上
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(極微細で薄い3ミリ長が数本あります)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズなし)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・光学系内は透明度が非常に高いレベルです。
(LED光照射でも極薄いクモリすら皆無です)
(但し非常に薄い点状カビ除去痕浮かび上がります)
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・光学系内には大小の「気泡」が複数あり、一部は一見すると極微細な塵/埃に見えますが「気泡」です(当時気泡は正常品として出荷されていた為クレーム対象としません)。
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。
↑12枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。ご覧のように「とてもキレイな真円の円形絞りを維持」しながら閉じていきます。
ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。
当方は筐体外装の磨き上げ工程で「研磨剤 (コンパウンド)」や「光沢剤」などを一切使わずアルミ合金材を磨き上げているので、例えば表層面のアルマイト仕上げまで確実に処置しており、それは実際に現物を手に取ってご覧頂ければ明らかにそれら薬剤を使った場合とは全く以て別モノの仕上がりです(笑)
↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人により「重め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。
・距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
・当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。
↑完璧なオーバーホールが終わりました。ご覧のとおりパンケーキレンズです(笑) しかしその筐体サイズとは裏腹にとても素晴らしい描写性能を発揮してくれます。
今回の個体は特にピント合わせ時の操作性の良さにこだわって仕上げたので、もちろん距離環を回すトルクも「普通」人により「重め」ながらも実は絞り環操作まで考慮してのトルク微調整です。
なおフィルター枠は「内径:⌀ 29.5mm」ですが、フィルターを装着すると「絞り環が外側なので操作し辛くなる」点にご留意下さいませ (絞り環を摘まみたいのにフィルターが指に当たってしまう)。
↑またご覧のとおり距離環を回していくと「絞り環まで一緒にクルクル回転しながら繰り出し/収納する」方式なのでブルーの矢印のように絞り環の刻印位置が回っていきます (基準「△」マーカー位置はそのまま)。
↑今回のヤフオク! 出品に際して附属するマクロヘリコイド付マウントアダプタやキャップ類です。なおマウントアダプタにはグリーンの矢印で示した場所に複数の「フランジバック環 (リング/輪っか)」がネジ込まれていますが、このグリーンの矢印の環 (リング/輪っか) はフランジバックを微調整して適合化させているので「絶対に分解しない」ようお願い申し上げます。もしもバラした場合はフランジバックが狂ってしまうので適切な描写をしなくなります。
↑こんな感じでマクロヘリコイド付マウントアダプタにネジ込んでお使い下さいませ。するとマウントアダプタ側のマクロヘリコイドを操作しない時は (つまり繰り出していない時は)「仕様諸元値のまま」になり、最短撮影距離も「1m」であり無限遠位置も僅かなオーバーインフ状態です。
しかし2枚目の写真のようにマウントアダプタ側マクロヘリコイドをブルーの矢印位置まで回しきると「最大5mm繰り出し」になり「近接撮影状態」となります。
従って普通に撮影しながら「疑似マクロ化」で撮りたい時だけ「マクロヘリコイドを操作すれば良い」ワケですね(笑) もちろん最後まで回しきらずとも構いません。
↑今回のヤフオク! 出品には上の写真のエクステンションセットは附属しません。これら10mmや16mm、或いは両方ともセットするとさらに近接撮影が可能です。
無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。
もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい。当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません。
↑ここからは当レンズによる各近接撮影時の写り方の相違を各絞り値で掲載していきます。
まず1枚目は仕様上の最短撮影距離「1m」での開放実写です。ピント位置をミスったのでミニカーの後ろの建物の模型に合焦してしまいました。アウトフォーカス部の収差が凄いです。また2枚目はマクロヘリコイド繰り出し時 (つまり5mm突出状態) で3枚目がそれにエクステンション「10mm」を噛ました場合です (つまり突出量15mm)。そして4枚目がエクステンション「16mm」に付け替えた時の写り方で、最後5枚目がエクステンション「10mm+16mm」の状態での撮影です。
従って繰り出す量はマクロヘリコイドだけの操作時は「5mmだけ」ですが、エクステンションを用意して併用した場合はそれぞれ「15mm/21mm/26mm」と増えていく話です。その分突出した分だけピント面の周囲はボケ量が増大します。
《近接撮影の状況》
◎ マクロヘリコイド回さず → 仕様1mのまま
◉ マクロヘリコイドを回した時 (5mm) →41cmまで近接
◉ エクステンション (10mm) +マクロヘリコイド (5mm) →25cmまで近接
◉ エクステンション (16mm) +マクロヘリコイド (5mm) →21cmまで近接
◉ エクステンション (10/16mm) +マクロヘリコイド (5mm) →20cm近接
・・こんな感じです。
↑同様1枚目が仕様状態「最短撮影距離:1m」での撮影で2枚目がマクロヘリコイド繰り出し時、3枚目がエクステンション「10mm」で4枚目が「16mm」に最後5枚目「10mm+16mm」での撮影です。設定絞り値は「f4」での撮影になります。
↑最小絞り値「f16」での撮影です。「回折現象」の影響が現れています。
◉ 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。
◉ 被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。