◎ Schneider-Kreuznach (シュナイダー・クロイツナッハ) Xenon 50mm/f2 ▽《後期型》(exakta)

(以下掲載の写真はクリックすると拡大写真をご覧頂けます)
写真を閉じる際は、写真の外 (グレー部分) をクリックすれば閉じます
※解説とオーバーホール工程で使っている写真は現在ヤフオク! 出品中商品の写真ではありません

今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、旧西ドイツは
Schneider-Kreuznach製標準レンズ・・・・、
Xenon 50mm/f2 《後期型》(exakta)』です。


ありがとう御座います!

2カ月がかりの出品になってしまいましたが、当方が出品に際し「このモデルの良さをきっとご理解頂けてご活用頂けそうな方がいらっしゃるハズ!」との思いだった、まさにそのようなご落札者様の手に渡る事になりました。

本当に嬉しい限りです・・!(涙)

一応オーバーホール作業している時と言うのは、もちろんこれを生業としているので収益も必要ですが、一番はやはり「こんな人に使ってもらえたら・・」との願いが込められていると自分でも自覚しています。

どんなオールドレンズをオーバーホールするにしても、そのモデルの時代背景だけで終わらずに必ず「その個体が辿ってきたであろう歴史の感触がある」のを完全解体する事で知る事が叶います。

従ってそれぞれの個体に見合う整備をしているつもりなのです。

特に今回のこのモデルになると、通の方はご存知でしょうが、光学系の状態を期待するほどの個体がもう残っていません。確かに今回の個体も光学系内の 状況は決して褒められたモノではありませんが、それでも市場流通価格6万円台が当たり前な現実を見据えると、相当安い価格での今回出品だったことが 分かります・・(泣)

願わくば・・ご活用頂きステキな写真ライフをお愉しみ下さいませ

単にオークションで売り買いするだけに留めず、このようにそれぞれの個体が辿ってきたであろう経緯を明らかにしながら手に入れられた「手元のオールドレンズ」は・・きっと愛着もまたひとしおなのではないかと・・そんな愉しみ方も附加させるべく超長文ながらこのブログを添えている次第です。

ありがとう御座いました・・。

《今回扱ったこのモデルで撮影したステキなお写真・・》
ご落札者様から許可を頂いたのでInstagramの投稿ページ“picmaru_photo” さんをご紹介します。
まさしくこのモデル『Xenon 50mm/f2 の個性を如実に表すステキな お写真が並んでいます!
空気感や距離感を感じさせ・・それでいてピント面は鋭くも決して誇張されず繊細感を画全体で表現できる独特な写りです。
当方が調達を決意したその時の感動が蘇りました・・(涙)

ステキなお写真・・ありがとう御座います!
普段何気なく目にしているハズの風景や景色もオールドレンズを通して眺めた世界を妄想すると、また違うひとときを共有できます!
そういう心の余裕も幸せに繋がると思います・・。

これからもたくさん「日常を切り取った一瞬」という宝石、集めて下さいね。

今回扱うモデルはず〜ッと探し続けていたSchneider-Kreuznach製の標準レンズXenon 50mm/f2 (exakta)』です。このモデルの当方での扱い数は累計で僅か7本目と極端に少なく、且つ前回の扱いが2016年なので5年ぶりと言う状況です。

特に敬遠していたワケではありませんが、2016年に扱った時に難儀して3日掛かりの作業だったトラウマで、なかなか手を付けませんでした(笑)

先日このブログでも掲載してヤフオク! 出品した、同じく旧西ドイツのパンケーキレンズCassaron 40mm/f3.5 VL (exakta)』がありますが、今回扱うモデルも同様に「空気感を感じる写り方」に惚れ込んで2016年に扱ったのがそもそもの動機でした。

従って巷で銘玉扱いされているワケでもなく、もちろん人気が高いモデルでもありません(笑) 単に当方がその描写性の虜になって一目惚れしている片想いオールドレンズなだけです(笑)

・・とは言っても、今も昔も銘玉ばかりと揶揄されつつも皆が憧れのCarl Zeiss Jena製モデルに比べると、タダでさえ繊細なエッジ表現にプラスして画全体的に非常に軟らかいニュアンスのSchneider-Kreuznach独特な (ある意味シアンに振れた) 清涼感を伴いつつ魅せる画造りはある一定のファン層を虜にして離しません(笑)

それを鑑みてもSteinheil Münchenも含めた大好きな旧西ドイツ製標準レンズの一つです。

  ●               

このモデルの歴史は古く、開発/設計者であるAlbrecht Wilhelm Tronnier (アルブレヒト・ヴィルヘルム・トロニエ) がまだ20代半ばでSchneider-Kreuznachに在籍 (当時の商号は前身のJos. Schneider Optische Werke Kreuznach GmbH & Co. KG) していた時代に1925年に登場しました。

戦前なのでフィルムカメラと言ってもミラーボックスを搭載しない フォールディング式フィルムカメラ (蛇腹式) やスプリング式フィルムカメラなどが主流で、特に1934年にドイツコダック (Kodak A.G./ 前身はAugust Nagel Kamerawerk:ナーゲル・ヴァーク) から発売 された「Retina (レチナ)」で一気に大衆カメラとして人気を博しま
した (右写真は初期のRetina #117で別名オリジナルレチナ)。

但しこの時の実装レンズはSchneider-Kreuznach製標準レンズ「Xenar 5cm/f3.5」が主体で供給され、冠するモデル銘「Xenar (クセナー)」からも3群4枚テッサー型光学系です。

一方1936年からはモデルラインが追加され距離計連動機構を装備した「Retina II/IIa」などが順次発売され、この段階でようやく今回扱うモデルの元祖にあたる「Xenon 5cm/f2」が実装されます (距離計 連動がファインダー内で一体となったタイプがRetina IIa/右写真はRetina II)。

当時Schneider-Kreuznachに在籍中にトロニエ博士が最初に取り組んだのは4群6枚から成る非対称型ダブルガウス型構成の設計でした。
(右構成図は1925年トロニエ開発の初期型Xenon 5cm/f2のトレース)

その基になったのは既に1920年イギリスのTaylor-Hobson (テーラー
・ホブソン) 社に在籍中のH.W.Lee (Horace William Lee) 氏開発による「Opic (オピック)」であり、現代でも数多くの光学系で採用され続けている4群6枚ダブルガウス型光学系の原型でもありました。

その関係から米国での特許申請時には届け人たる自身の名前と合わせてH.W.Lee氏開発のOpic銘も併記しなければなりませんでした。

さらに1936年に登場した「Retina IIシリーズ」向けに供給された「Xenon 50mm/f2」こそが今回扱うモデルの前期型とも言え、4群6枚ダブルガウス型構成の前群側貼り合わせレンズを分割して、特に第2群と第3群の間に「空気層」をもたせる事でより色収差の改善を狙った設計を採り、これがまさに後に銘玉へと展開していく「Ultron
型構成
」の原型とも言えます。

従って、1936年には米国で自身の名前だけで特許登録が叶い、レチナ向けSchneider-Kreuznach製標準レンズの絶対的な位置付けをようやく得ることができたようです。
(左図は1938年認可の米国特許申請:PAT.2,106,077)

なお、今回のオーバーホールに際し完全解体した後に光学系の清掃時各群を当方の手でデジタルノギスを使って逐一計測してトレースした図が右の構成図になり、モデルバリエーションで言うと「後期型」にあたります。

【モデルバリエーション】
オレンジ色文字部分は最初に変更になった諸元を示しています。

初期型1927年発売
焦点距離:50mm
絞り値:f2.0〜f16
レンズ銘板表記:5cm/f2
コーティング:シングルコーティング
マウント規格:exakta, deckel, M40他
※鏡胴に「S2」刻印有

前期型1936年発売
焦点距離:50mm
絞り値:f2.0〜f16
レンズ銘板表記:5cm/f2
コーティング:シングルコーティング
マウント規格:exakta, deckel, M40他
鏡胴に「S2」刻印なし

後期型1947年発売
焦点距離:50mm
絞り値:f2.0〜f16
レンズ銘板表記: 50mm/f2
コーティング:モノコーティング
マウント規格:exakta, M42他
※鏡胴に「S2」刻印なし



上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています/上記掲載写真はその引用で あり転載ではありません。

一段目
左端から円形ボケが滲んで破綻して溶けていく様をピックアップしていますが、光学系構成として5群6枚のウルトロン型なので、それほど大きめの円形ボケが表出しないものの、真円は難しいながら相応に円形を維持しておりなかなかの高性能ぶりです。

また右端写真のように特にシアンに振れた発色性が鮮やかに出て、巷では俗に「シュナイダーブル〜」と揶揄され続けている大変美しい色合いが魅惑的です。しかし実はこの写真をピックアップした理由はその発色性ではなくて、むしろ石積みの解像度の高さと下手にコントラストの影響を帯びないナチュラルな印象の画造りに好感を持てたからです。逆に言うなら明暗部まで広いダイナミックレンジの素晴らしさとでも言いましょうか。

二段目
この段では当方がスッカリ虜に堕ちてしまった「空気まで撮ってしまった写真」に分類できる空気感や距離感を最大限に表現し得るビミョ〜なイントネーションで背景ボケを残す (ある 意味徹底的に溶けていかない欲求不満たる) 癖が功を奏し、このような立体的な1枚に至っていると認識しています。また赤色も決して色飽和せずキッチリ階調幅を残せているのは、前述のシアンに振れた発色性の傾向とみています。

三段目
それらの傾向はカラー写真に限定した話ではなく、総天然色を256階調のグレースケールに変換する白黒写真での素性の良さがまさに現れた写真だと評価しています。特に暗部が黒潰れし易いモデルが多いこの当時にあって、これだけギリギリまで粘って影部分を表現できる素要に甚だオドロキです。するとカラー成分でシアンに振れる要素は256階調のグレースケールに変換した時に「より潰れにくい暗部の中間調表現を維持/拡張する」要素へと繋がるのが、グレースケール時のメリットと受け取れます (逆に言えば白黒写真で初めて認知できる要素)。

従って「シアンに振れる要素」を何でもかんでもカラー写真 (カラー成分) の範疇で語らずに、おそらくはこの当時にまだまだ一般民衆で主流だったハズの白黒フィルム印画紙に於ける階調変換として考察しなければ、本当の意味でSchneider-Kreuznach製オールドレンズの光学系の狙いが見えてこないような気がします。

決して「シュナイダーブル〜」を貶しているワケではありませんが(笑)、要はこのような考察をする時、必然的に当時の背景やフィルムカメラの潮流など、国内外光学メーカーの狙いなどをどれだけ考察できているのかが問われる話になり、時には一歩下がって全体像から捉える努力をする事も、実は真髄を導くヒントを得る機会に繋がるかも知れませんね。

詰まるところ「シュナイダーブル〜」はカラー写真のみならず白黒写真の世界でも、ちゃんとメリットとして結果が写真に現れる要素の一つなのだと受け取られると当方は評価しています (とは言いつつも実のところ「シュナイダーブル〜」がどんな色合いを指すのか当方はいまだに理解できていない!)(笑)

↑1956年当時の旧西ドイツはVOIGTLÄNDER (フォクトレンダー) 社のカタログですが、今回 扱うXenon 50mm/f2 (exakta)』からの系譜 (1936年から) として、確かに「Ultron型光学系の確立」はNoktonモデルとしてちゃんと継承していったのがここでも分かりますね。

・・本当に素晴らしいモデルで、溜息交じりです(笑)

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。この当時の様々なオールドレンズ同様に今回の個体も鏡胴が「前部/後部」に二分割する方式を採った設計ですがやはり鏡筒の固定位置を適切にセットしないと本来の鋭い描写性能を発揮しないという、少々「高難度モデル」の一つです。

それだけに5年前に3日掛かりの作業になってしまったのは、まだまだ当方が未熟すぎて「観察と考察」が不完全なままバラしてしまい、且つその後の組み立て工程でも「原理原則」から納得しながら組み立てずに単にバラした時の手順を逆に遡っていったからです。

今回のオーバーホール作業では他のオールドレンズ同様僅か1日の作業だけで「本来あるべき姿」として組み上げられ、当初バラす前の実写チェックよりも解像度が増した印象で仕上がりました。

そもそもピントが合う時のスパッと一瞬でピークを迎えるピントの山が、当初のバラす前の時点ではフワフワと象面の解像感が上がっていきながらも、ピントのピークの山が明確な印象を伴わない「不自然な合焦の仕方」だったのが納得です。要は過去メンテナンスが数回施され、その中で本来の適正な光路長を少しずつ逸脱してしまったが故に辿り着いた「甘いピント面」だったとも言い替えられます。

その辺の要素をここからのオーバーホール工程の中で解説していきたいと思います。

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。当初バラして洗浄した直後は、こんなにキレイな黄金色ではなく経年劣化に伴い酸化しており、内側の黒っぽい茶褐色になっています。それを当方の「DOH」による「磨き研磨」を経て、上の写真のような状態に仕上がるワケです。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

↑15枚もある絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成させたところですが、実は上の写真の状態ではまだ絞りユニットが固定されておらず、このままひっくり返すと組み込んだ絞り羽根が全部外れてバラけてしまいます。

↑完成した鏡筒を立てて撮影しました (写真上側が前玉側方向)。すると鏡筒に対してその内部に「開閉環」が絞り羽根をサンドイッチしてセットされており、しかしまだ固定されていない状態 (単に開閉環が組み込まれただけの状態) と言えます (赤色矢印)。また鏡筒の外回りには上下に分かれて同じピッチでネジ山が刻まれています。その中腹に細長い四角形で「連結窓」が切削され用意してあります。

この細長い四角を通って内部の「開閉環」に絞り環が「開閉キー」と言うシリンダーネジで連結するので、絞り環を回すと絞り羽根が開いたり閉じたりする仕組みです。

シリンダーネジ
円柱の端にマイナスの切り込みがあり、反対側がネジ部になっているネジ種

↑上の写真は光学系の第3群をひっくり返して、後玉側方向を上に向けて撮っています。すると「平滑面」が備わっているワケですが、当初バラした直後には光学系第3群の光学硝子レンズ「コバ端」に過去メンテナンス時に何度も厚塗りされてしまった反射防止塗料が分厚く乗っており、且つその塗料の一部が平滑面のほうにまで塗られていました。

上の写真の状態は、当方がコバ端の塗料を全て溶剤で剥がして光学硝子材を剥き出しにしたところを撮っています。また同時に「平滑面」は「磨き研磨」を施し平滑性を取り戻しました。

つまり光学系第3群は鏡筒にネジ込んでいくと、上の写真の黒色外枠部分 (一番外径が大きい下部の枠部分) が鏡筒の縁にピタリと接触したままネジ込みが完了します。且つその時、必然的に絞りユニット内の「開閉環」にやはり「平滑面」がピタリと接触して絞りユニットを押さえ込む事で、ようやく絞り羽根が完全固定されます。

そのような原理で設計されているので、過去に数回施されたメンテナンス時に厚塗りされてしまった反射防止塗料のせいで「絞りユニット内開閉環の動きが固くなり絞り環がf8で重くなって止まってしまう」状態に堕ちていました。

それを過去メンテナンス時の整備者がごまかす為に「光学系第3群のネジ込みを最後まで締め付けずに固着剤で接着して固定していた」から、当初バラす前の実写チェック時点で「甘い ピント面」に堕ちていた次第です。

その際、上の写真の格納筒を最後まで鏡筒に締め付けていないので、厚塗りされてしまった塗料があっても「開閉環が極僅かに浮いていた為に動いていた」ワケで、これらの状況を知らなければ何の問題も無く正常に使えて「何となくピントが甘いのは1951年製産の個体だからだろう」と納得していたかも知れませんね(笑) 逆に言うなら、そんな言い訳「製産されてから何十年も経っている」からこの当時のオールドレンズはどんなモデルもたいてい甘いピント面だったり、コントラストが低下した解像度が甘い描写だったりするなどと (売らんが為に) 勝手に言い繕って出品している出品者も多く、下手すればメンテナンスした整備者自らがネット上でも記載している事がありますね(笑)

実際はそんなレベルの話ではなく、最後まで第3群をネジ込んで硬締めしておらず「適正な 光路長が確保されていなかった」からこそ甘い写り方に堕ちていたワケで、詰まるところ過去の「ごまかし整備」の成せる技と断言できます。

では今回のオーバーホールでは「塗料を剥がしてしまったコバ端部分はどうなったのか?」と疑念を抱かれるでしょうが(笑)、もちろんちゃんと最後に光学系を組み込む際「コバ端着色を施して最後までネジ込んだ」ので、このブログの最後のほうにあるオーバーホール後の実写をご確認頂ければ、鋭いピント面に戻っているのが分かります。合わせて当然ながら絞り環も 軽い操作性でちゃんと仕上がっています(笑)

↑光学系を組み込む前に先に「絞り環用のベース環」を正しい位置までネジ込んで「開閉キー (シリンダーネジ)」を刺して鏡筒内絞りユニットの「開閉環と連結させた状態」が上の写真です。従ってこの絞り環用ベース環に絞り環がセットされると、回すことで絞り羽根が開いたり閉じたりするワケですね(笑)

ちなみに光学系第3群をネジ込んでセットしていないので、絞りユニット内の「開閉環」がまだ見えています。

↑ここでようやく光学系第1群〜第3群までの「前群」がセットできました。この時点で初めて「開閉環が固定された」ワケで、ひっくり返そうが何をしようが絞り羽根がもう外れることはありません。

↑今度はひっくり返して光学系第4群貼り合わせレンズと第5群後玉「後群」を組み付けました。鏡筒から飛び出ている「開閉キー」が絞り環用ベース環に刺さっているのが分かります。

すると鏡筒の露出している外周部分にはまだネジ山が残っていますが、その後玉側直前に「固定用スリット」と言う非常に狭い隙間のような切欠き部分が備わっています (ブルーの矢印)。このスリット (切り欠き) は最後に鏡筒を固定する際に機能するよう考えられて用意されている部分です。

またその直前までネジ山がグリーンの矢印で指し示した分残っています。鏡筒の外周に残っているネジ山は全部で13列ありますが、そのうち3列がスリット部分からなので「実際に鏡筒をネジ込む際のネジ山は残り10列」と言う話になります (それがグリーンの矢印で指し示した範囲)。

要はこのグリーンの矢印の範囲が本来あるべき姿の鋭いピント面を発揮する固定位置なのであって、その10列のネジ山の何処が固定位置なのかの判断が必要になってきます。何故ならもしもこのモデルの本来のピントの山が一瞬でアッと言う間なら、1列分も回していったら逃してしまうかも知れませんから、現実的に「本来あるべき鋭いピント位置を探す」のだとすれば、それこそ「45度くらいずつ移動しながら実写確認でピント面をチェック」しないと正しい固定位置を越えてしまうかもしません。

ところがそんなことをしていたら一日どころか、また5年前と同じで3日掛かりで作業する ハメに陥ります(笑)

まさに今回のオーバーホールで自らの技術スキルが少しは向上したのが否か判定できる要素がこの話という次第です。

↑鏡胴「前部」がマウントアダプタの工程で完成したので、ここからは鏡胴「後部」の組み立てに移ります。「exakta規格」のマウント部になります。

↑ヘリコイド (オス側) を無限遠位置のアタリを付けた正しい場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

ここでのポイントはご覧のように「ヘリコイドのメスネジ側が相当長い」のを赤色矢印で指し示しており、つまり鏡筒の繰り出し/収納量が多いモデルなのが分かります。

一方距離環に刻印されている距離指標値を見ると、とてもそこまでグルグルと回るようになっていないように見えます。つまり刻印されている距離指標値は一段分しかないので、グルグルと何周も回っていく距離指標値を二段や三段で刻印して表示していません。

要は「観察と考察」ができる整備者なのか否かがここで問われているワケです。

どうしてヘリコイドのネジ山が長い/深いのに距離環の回転域は普通のオールドレンズと似たような限定した範囲でしか指標値が刻印されていないのでしょうか?

ヘリコイドのネジ山の長さ/深さはヘリコイドの回転数に直結しますから、相当何周もグルグルと回るのがネジ山が存在する以上間違いありません。

この点について辻褄が合わない、整合性が執れていない事をちゃんと認識できたのかが、結果的にこのモデルの操作性はもちろんピント面の鋭さなど全ての仕上がりが適正だったのかを表す要因なのです。

答を言ってしまえば(笑)、前述の鏡筒外周に残っている「10列のネジ山 (グリーンの矢印の範囲)」は、このヘリコイドネジ山がいったいどの位置まで回った時点で初めてネジ込まれるのかの話なのだと気が付かないとダメなのです(笑)

つまりヘリコイド (オスメス) がある程度の回転数でグルグルとネジ込まれていった先の特定の位置で、ようやく鏡筒の残りの10例を使ってネジ込んで、且つ「鋭いピント面の位置を確定させる」事で組み上がる設計なのです。逆に言えばその特定のネジ込んだ位置/箇所を判定できなければ「このモデルは組み上げる事すらできない」とも言い替えられます。

つまりこのモデルは「超高難度モデル」の分類に当方の中では入っているワケです(笑)

そしてまさに組み上がった後の「本当に素晴らしい解像度の高さ」が、このブログ最後に載せている実写でご確認頂けるワケで、どんだけ「ウルトロン型元祖の素晴らしさが溜息交じりなのか」をご堪能頂けると思っています(笑)

残るべくして残された収差があるからこその写り・・何を活かし何を捨てるのか・・光学設計者にかかっているワケですね(涙)

↑やはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでヘリコイド (オス側) をネジ込みます。このモデルでは全部で13箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

↑距離環の指標値環と基準「」マーカー環 (基準環) をイモネジで締め付け固定し鏡胴「後部」が完成です。この後は基準環の内側に完成している鏡胴「前部」を、前述の残っているネジ山10列分の中から正しい位置でネジ込み固定してから、無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行えば完成です。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わりました。5年前の2016年当時は3日掛かりの作業になってしまいましたが、今回のオーバーホールでは1日で十分全ての工程作業と微調整が終わりました。

観察と考察」に「原理原則」に従えば、ヘリコイド (オスメス) のネジ込み位置が13箇所ある中で正しく適正なのはもちろん「1箇所だけ」であり、且つ鏡胴「前部」の固定位置 (要は鏡筒の固定位置) も適切なのは「やはり1箇所だけ」なので、残っていた10列のいったい何処なのか、全てを納得尽くで組み立てていくとすんなり組み上がります(笑)

それを下手に当初バラした時の位置で固定しようとするから、結局過去メンテナンス時に厚塗りされてしまった反射防止黒色塗料の分、適正な光路長がズレてしまい、さらに何も考えずに何も微調整せずに単にグリースを塗って組み上げてしまうから「甘いピント面のまま仕上がってしまう」ワケです。

↑光学系内は大小の微細な「気泡」が光学硝子材の中に残っています。また光学系第4群の貼り合わせレンズにバルサム切れが生じており、中心部から外周に向かって薄いクモリが生じています。

今回のオーバーホールでバルサム切れを貼り直そうと考え対処しましたが、剥がせずに諦めました。その際クモリの領域が全く変化しなかったので、バルサム切れ自体の進行はとっくの昔に終わってしまった状態のようです (今後進行しないと推定)。

従って通常撮影時でも極僅かにコントラストが低めな傾向に写りますが (このブログ最後の実写でご確認頂けます)、中心部が抜けてクリアなので絞り値を上げていくとコントラストも確保されていきます。また解像度は実写のようにピント面が鋭く出るように「芯出し」しましたので、このモデルの本来の鋭さに戻ったと判定しています。

気泡
光学硝子材精製時に、適正な高温度帯に一定時間到達し続け維持していたことを示す「」と捉えていたので、当時の光学メーカーは正常品として「気泡」を含む個体を出荷していました (写真に影響なし)。

貼り合わせレンズ
2枚〜複数枚の光学硝子レンズを接着剤を使って貼り合わせて一つにしたレンズ群を指す

バルサム切れ
貼り合わせレンズの接着剤/バルサムが経年劣化で剥離し始めて白濁化し薄いクモリ、或いは反射が生じている状態

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

光学系前群は第1群 (前玉) 〜第3群の3つの分離した光学硝子レンズで構成していますが、第1群 (前玉) の中心部には経年で生じてしまった「擦りキズ」が目立つ印象で薄く残っています (順光目視レベルで視認できる)。撮影時に写真に影響しませんが、例えば円形ボケなどを表出させている写真ではこの「擦りキズ部分」の影が同じ位置 (中心部) に影となって写り込むことが考えられますが、そもそも標準レンズなので「円形ボケ自体の大きさが非常に小さめなので、よほど拡大撮影しない限り分からないレベル」と言えます。

光学系内の特に「目立つキズ」などがいったいどのように撮影した写真に影響するのかは、もちろんその程度/レベルにも拠りますが、基本的に「全面に渡る程度/状況」のクモリや擦りキズの多さでない限り写真には影響しません。

例えばこれが中望遠レンズ以降の焦点距離のオールドレンズだとすれば、表出する円形ボケの径が大きくなってくるので、その時に残っているキズの影が表出している円形ボケの中に写り込む事があります。

上の写真はFlickriverで、前述のキズなどの写り込み解説用に特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています/上記掲載写真はその引用で あり転載ではありません。

上の実例でピックアップしたオールドレンズのモデル銘は旧東ドイツのMeyer-Optik Görlitz製中望遠レンズ「Trioplan 100mm/f2.8 」です。焦点域が100mmと長く、中望遠レンズ (別名ポートレートレンズとも言う) に分類されるオールドレンズですね。

すると左端の実写がまさに焦点距離を活かした大変美しい大きな円形ボケを、チョウの背景に持ってきて撮っている写真ですが、その円形ボケの内部を細かく観ていくと「ポツポツと汚れのように影が写り込んでいる」のが分かります。

この汚れのように影が写り込んでいるのが「光学系内に生じてしまったカビやカビ除去痕、 或いはキズ/汚れ//」なのだと言えます。この時「気泡」が影となって同じように写り込んでいるのか否かは入射光の状況によって分かりません (基本的に気泡は写り込みにくい)。

その「影になって写り込む」要素は「物理的に入射光を遮るモノ」なので、光学系内の入射光の反射与件になり兼ねない「気泡」は写真に影響することが低いと考えられるからとの事です (以前工業用硝子精製会社を取材した時にお聞きした話)。

もちろん精神衛生上は光学系内の光学硝子材に「気泡」が残っていないほうが良いのでしょうが、そもそも光学硝子材を精製していた当時の国内外光学メーカーでさえ「正常品の範疇」として出荷していたので、本来気にするべき話ではないようですね(笑)

こんな感じで実際に光学系内に残っている経年の様々な要素が写真に影響するのかを調べる/観ることができます。

ところが次の実写を観ると「円形ボケ自体が小さい」ので、その内部に写り込んでいるハズの影がそもそも視認できない状況です (おそらく拘って拡大撮影しても視認できない)。もちろん上の実写4枚は全て同一モデルでのピックアップ写真ですが、時と場合によってはこのように小さな大きさの円形ボケになる事もありますね(笑)

するとこの「小さな円形ボケ」がまさに今回のモデルのような標準レンズ域のオールドレンズで撮影していた時に表出する円形ボケのレベルと同じと言えます。

要は表出している円形ボケの内側に本来存在するであろう「影になっている要素の写り込み」があるのですが、円形ボケの径が小さすぎるのでご覧のように全く目立たず視認すらできない状況なのです。

さらに3枚目の実写になると、円形ボケが溶けて滲んでしまい乱れた背景ボケへと変化しているところの写真に見えます。すると本来は影が写り込んでいるハズなのですが、そもそも光学系の設計から来る「収差の影響度合いが増す」状況なので、それら写り込んでいるハズの影まで乱れてしまい視認できないワケです(笑)

そして最後の右端4枚目は、もっとボケボケにトロトロに溶け込んでしまった背景ボケですが、やはり写り込んでいるハズの影領域まで一緒に溶けて言ってしまうのでご覧のように全く見分けがつかなくなってしまいます。

従って「光学系内の物理的に存在する要素」別に、このようにオールドレンズの焦点距離や撮影時の光の加減、或いは拡大撮影 (今ドキのデジカメ一眼/ミラーレス一眼などでの話) によってケースバイケースなのだと分かるのではないでしょうか。

従って今回の出品個体で言えば、前玉中央の擦りキズ部分が影となって写り込むのは相当拡大撮影しない限り視認できないレベルなのだと推測できますね(笑)

↑光学系後群側も「非常に微細な気泡」が多めで、パッと見で「微細な塵/」に見えますが、3回の清掃で除去できなかったので「気泡」と言えます (これこそ拡大撮影すると気泡なのが視認できる)。後群内はLED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無です。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:20点以上、目立つ点キズ:16点
後群内:20点以上、目立つ点キズ:20点以上
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(前後群内に極微細な薄い3mm長数本あり)
・バルサム切れ:あり (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:あり
(前後玉に微細な拭きキズ/擦りキズ/点キズあり)
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):あり
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・光学系内には大小の「気泡」が複数あり、一部は一見すると極微細な塵/埃に見えますが「気泡」です(当時気泡は正常品として出荷されていた為クレーム対象としません)。「気泡」も点キズにカウントしているので本当の点キズは僅かしかありません
第4群貼り合わせレンズにバルサム切れが生じており外周部分から中心方向に向かって非常に薄いクモリがあります。辛うじて中心部がクリアを維持している為、通常撮影時に写真への影響は少ないですが、光源を含む場合や逆光撮影時にはフレアの出現率/影響度が上がる懸念がありますので、ご留意下さいませ
(事前告知済なのでクレーム対象とせず)

↑今度は後玉のほうから光学系内の「気泡」を拡大撮影で撮ってみました。ポツポツとあるのが「気泡」です。

↑同じ写真を使って光学系前群の第4群に生じている「バルサム切れ」でクモリが最も少ない箇所をイメージできるよう赤丸で囲ってみました。こんな感じで光学系内に光を差し入れて確認すると一部だけクモリが少ない箇所があるので、絞り値を上げていくと解像度が低下せずに鋭いままなのです (但しあくまでもイメージの話で実際にクモリが抜けている箇所を囲っているワケではない)。

LED光照射などして確認しない限り順光目視ではクモリの領域を視認できません。

↑15枚の絞り羽根もキレイになり絞り環操作共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じていく際は「完璧に円形絞りを維持」して閉じていきますから、開放以外でも多少絞って撮影している時でも表出する円形ボケはちゃんと円形を維持してくれるハズですが、実際は収差の影響も現れるので必ずしも真円を維持した円形ボケの表出とは限りません。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度+軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人により「軽め」に感じ「全域に渡り完璧に均一」です。
距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります
・絞り環は設計無段階式(実絞り)でスカスカですが今回のオーバーホールで極僅かにトルクを与えてスカスカ感が低減するよう微調整済です。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。
・附属コニフィルターにはフードを装着できるネジ山が備わっていません(なのでコニフィルターと呼ぶ)。
また前キャップを装着できる枠もないので被せ式の前キャップなど工夫が必要です。同様フードを装着する場合も⌀ 40.5mm径の留具式タイプを用意する必要があります(ネジ山がない為)。
・附属のコニフィルター (⌀ 29.5mm) には極微細な薄いヘアラインキズが数本残っています(中古品)。

今回のオーバーホール済でのヤフオク! 出品に際しセットした附属品の一覧です。

《今回のヤフオク! 出品に際し附属するもの》
marumi製UVコニフィルター (中古品)
本体『Xenon 50mm/f2 (exakta)』
汎用樹脂製バヨネット式後キャップ (新品/3D製品)

当初バラす前のチェック時点では距離環を回すトルクが相応に重い印象で、且つ「甘いピント面」だったのがオーバーホールが終わってしまえば明確な状況でした (扱い本数が少ないのでこのモデルのピント面の鋭さを認識できていないから)。

過去メンテナンス時には例によって「白色系グリース」が塗られてしまい、その後に近年「潤滑油」を注入されている状況だったので、このまま使い続けても数年でヘリコイドが非常に重い状態に至っていたと推測でき、何とかその前に改善できました。

そして仕上がってみると、このモデルのピント面の鋭さが判明し改めて惚れ込んだという認識です。しかもそのピント合わせ時の「ピントの山のピーク」がほんの一瞬だったので、オーバーホールして非常に軽い操作性に至ったのがとても使い易い印象になりました。

製造番号から1951年のおそらく1月の製産個体と推測していますが、既に70年が経過しているものの、光学系第4群の貼り合わせレンズに生じてしまったバルサム切れは今後進行しないようなので、まだまだ100年を目指して活躍していってもらいたいものです(笑)

ガンバレ・・クセノン!!!

↑上の写真はひっくり返して後玉が上方向になるよう撮影しています。ご覧のように後玉の突出が「2㍉」あるので、写真のように距離環を無限遠位置「∞」の状態で下に向けて置いたりすると「当てキズ」を後玉中央に付けかねません。ご留意下さいませ。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離75cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

ご覧のように極僅かですが光学系第4群の貼り合わせレンズに生じているバルサム切れの薄いクモリの影響が現れ、画全体的なコントラストが極僅かに薄めに出ています

↑絞り環を回して設定絞り値「f2.8」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f4」で撮りました。背景のコントラストが大夫改善されてきました。

↑f値は「f5.6」に上がっています。

↑f値「f8」になりました。もうバルサム切れの影響は視認できません。そもそも開放時から解像度「ピント面の鋭さ」は全く影響を受けていないので、極僅かでもクリアな領域が残っていたのが不幸中の幸いです。

↑f値「f11」での撮影ですが、実はバックに置いてあるお城の模型の「穴が空いている部分」にさらに背景のシート (の模様) がうっすらと見えているのが、このf値「f11」での最大のポイントです。

どんだけダイナミックレンジが広いのかをまさに物語っているワケで、明部の白飛びのみならず暗部の黒潰れまでシッカリと階調を維持できている事の証なのではないでしょうか。単に ピント面の鋭さ追求のみならず、ちゃんと適切な光路長で鏡筒が固定されているからこその「この写り」なのです(涙)

↑最小絞り値「f16」での撮影です。ピント面の解像度が低下し始めているのはバルサム切れのせいもありますが「回折現象」の影響です。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。