◎ RICOH (リコー) XR RIKENON 50mm/f1.4《富岡光学製》(PK)

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※解説とオーバーホール工程で使っている写真は現在ヤフオク! 出品中商品の写真ではありません

今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、リコー製
標準レンズ・・・・、
XR RIKENON 50mm/f1.4《富岡光学製》(PK)』です。


今までにオーバーホール/修理ご依頼分としてこのモデルを6本オーバーホールしていますが、過去に整備済でヤフオク! に出品したのは、何と5年前なので本当に久しぶりです。従って累計扱い本数は今回が8本目という事になります。

今回のモデルも含め当時のRICOH製標準レンズ「XR RIKENON」シリーズは、そのほとんどが「富岡光学製」になります (最短撮影距離:45cmモデルのみ)。しかし以下の問題がある為なかなか手を出せません (非常にハイリスクなモデル)。

【光学系の問題点】
カビが発生している個体が多い
コーティング層経年劣化に伴うクモリがある
 貼り合わせレンズにバルサム切れが発生。

例えば廉価版の格付で未だに市場で数多く流通している「和製ズミクロン」の異名を持つ「XR RIKENON 50mm/f2 (PK)」は、その光学系の状態に上記3点の項目がすべて当てはまる個体が多いのが現実です。特に バルサム切れは一見すると外周附近のクモリ/汚れのように見えますが、実際に個別の光学硝子を取り出して清掃すると、バルサム切れなのが判明します。
(従ってクモリは除去できない)

今回のモデルで実際出品するつもりで調達したのは半年前でしたが、届いた個体はカビの発生が酷く、さらにバルサム切れが生じていました。仕方ないので次の調達機会を狙っていましたが、とうとう半年が過ぎてしまいました。

2本目から光学系前後群をすべて入れ替え転用した、いわゆる「ニコイチ」出品になります。
しかしそれでもやはり光学系の前後玉 (表面側) にはカビ除去痕が多く残っています。

貼り合わせレンズ
2枚〜3枚の光学硝子レンズを接着剤を使って貼り合わせてひとつにしたレンズ群

バルサム切れ
貼り合わせレンズの接着剤/バルサムが経年劣化で剥離し始めて白濁化し薄いクモリ、或いは反射が生じている状態

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1977年9月にRICOHから発売された自社初の一眼レフ (フィルム) カメラ「XR-1/XR-2」のセット用標準レンズとして用意されたのが今回扱うモデルで、他に開放f値「f1.7」モデルも同時に登場しています。
(右写真は1979年7月登場の北米向けモデル)

また格下の廉価版標準レンズとして、巷で俗に「和製ズミクロン」 或いは「貧者ズミクロン」と呼ばれ続けている「XR RIKENON 50mm/f2 (PK)」も同時に発売されています。

実はここがポイントだったのですが、これら3種類の標準レンズが同じタイミングで登場していた事に気をとられ、重要な点を「思い込み」で見逃していましたが、それに気がついたきっかけがあります。

左写真は当方が2015年にオーバーホールしヤフオク! に出品した際に撮影した個体からの転載ですが、アメリカのイリノイ州を本拠地とする百貨店「SEARS (シアーズ)」のカタログ通販で販売されていた、 まさに今回扱うモデル『XR RIKENON 50mm/f1.4《富岡光学製》(PK)』のOEM輸出機です。

写真をご覧頂くと分かりますが「AUTO SEARS MC 50mm/f1.4 (PK)」となっています。

2015年にオーバーホールしてヤフオク! 出品した際に完全解体しているので、内部構造から 使われている構成パーツに至るまで、そのすべてが100%今回扱うモデル『XR RIKENON 50mm/f1.4《富岡光学製》(PK)』と同一であり、コーティング層が放つ光彩の色合いまで同じです (つまり2015年にはSEARSモデルも含めると2本扱っています)

ここがヒントだったのです! そうです「同じ光彩のコーティング層」である点を、まだまだ 未熟な当方はスッカリ見逃していたのです(笑) まさにこれこそが当方が信用/信頼が無い事の「」とも言える、恥ずかしい現実です (SNSでそのように批判され続けているから)(笑)

SEARSモデルはマルチコーティング化の「MC」をレンズ銘板に伴いますが「XR RIKENON」シリーズにはありません。

当時1982年時点のリコーのカタログの記載を例としてピックアップ しました (右写真)。

すると今回扱うモデル『XR RIKENON 50mm/f1.4《富岡光学製》(PK)』が載っているワケですが「11層のコーティング層」である事を謳っており、さらに「マルチコーティング」と記載されていました。

またSNSで当方がウソを案内していると言われてしまうので(笑)、証拠となる取扱説明書の抜粋を以下に掲載します。

ご覧のとおり、1977年に発売された一眼レフ (フィルム) カメラ「XR-1」の取扱説明書から用意されているセット用標準レンズの項目欄だけ抜粋しました。

すると「f1.4/f1.7」の2本に対してのみマルチ コーティングを謳っており「f2.0」はモノコー ティングである事が分かります。

そうなのです。「和製ズミクロン」の名声を欲しいままにしている下位格の廉価版モデル「XR RIKENON 50mm/f2 (PK)」だけがモノコーティングだったのです。

実は、今回扱う『XR RIKENON 50mm/f1.4《富岡光学製》(PK)』をバラしていて、光学硝子レンズのトレースを行った際に、2015年にバラしていたSEARSモデルの計測数値と比較するべきだと気がついたワケです。

その時点ではまだ当方はSEARSモデルが「MC」で「XR RIKENON」シリーズはモノコーティングの頭しかなかったワケですね (恥ずかしいヤツです!)(笑)

しかし計測値を比較するとその誤差は僅かしかありません。一般的にモノコーティングよりも収差の改善や解像度が向上している分、マルチコーティングモデルのほうが光学系の設計は何かしら変化が起きているのが道理です (つまり同一の光学設計を採れるワケがない)。

この時に初めて目が点になりました・・!(笑)
何と同じマルチコーティングだったのです(笑)

ネット上のどのサイトを見てもマルチコーティングとは案内されておらず、当方も暗黙の了承でモノコーティングと思い込んでいたワケです(笑)

半年がかりで調達に時間を掛けてしまったその根本的な理由が、この自らの思い込みだった ワケです。今一度ちゃんと評価してあげなくてはイケナイとただただひたすらに猛省です(泣)

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上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。

一段目
左端から真円で明確に繊細なエッジを伴うシャボン玉ボケが破綻して、円形ボケへと滲んでいく様をピックアップしました。本来光学系の設計が5群6枚のウルトロン型構成ですから、収差の影響を受けて真円のシャボン玉ボケ表出が苦手なハズなのですが、モノコーティングなら ともかくマルチコーティングなのでギリギリ何とか頑張って真円で表出できるのが納得です。

実は今までこのモデルの光学系構成でどうして真円を維持できているのか説明ができず納得 していなかったのですが、今回目から鱗でした(笑)

二段目
さらに背景ボケは円形ボケから乱れた収差ボケへと変化していきます。グルグルボケの風域を残すボケ味もあれば鋭いピント面を誇張させる美しい写真もこなします。或いは右端の如く鋭さだけではないソフトな印象を上手く取り込んだ1枚も良いですね。

三段目
被写体の素材感や材質感を写し込む質感表現能力に優れているので、左端の如く背景のボケ味を上手く活用した効果もステキです。バケツの金属質や流れる水との対比も素晴らしい出来です。ダイナミックレンジが広いので暗部に粘りがありギリギリのところまで黒潰れに堕ちず頑張ってくれます。もちろんビミョ〜な階調のグラデーションも特異なので茂木は死の写真が撮れてしまうワケですね。

四段目
XR RIKENON」シリーズの一つの特徴として赤色の発色性にビビッド感が感じられます。
人物撮影は開放f値「f1.4」として考えるともっとリアルに写せるオールドレンズが幾つもありますから、少々役不足的な印象です。

光学系は5群6枚のウルトロン型構成ですが、開放f値「f1.4」から特に後群側を使えるスペースを最大限に有効活用して、ギリギリの最大径で採ってきている事が分かります。

マルチコーティングとなれば、この構成図も納得です(笑)
そしてもちろん「MC」刻印がレンズ銘板に附随するSEARSモデルの構成とも、そのサイズ/曲率に於いて同一です。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。内部構造の設計概念や使われている各構成パーツなども全て他の「XR RIKENON」シリーズ標準レンズに同一です (細かいサイズや絞り羽根枚数は異なる)。

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒 (ヘリコイド:オス側) です。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

↑8枚の絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成させます。上の写真を見ると写っていますが、スプリングによって「常に絞り羽根を閉じようとするチカラ」が及んでいる事が明白です。

↑どうしてそのように言い切れるのかを示したのが上の写真ですが、完成した鏡筒 (ヘリコイド:オス側) を、ひっくり返して後玉側方向から撮影しています。

するとご覧のとおり裏側に一切「制御系の機構部」が存在しません。単に2本の板状パーツ「開閉アーム/制御アーム」が飛び出ているだけで、ここにスプリングも捻りバネの類も用意されていないので、前述のスプリングが「常にチカラを及ぼしている」事が明白なワケです。

するとご覧のように絞り羽根はスプリングのチカラで必ず最後まで閉じきってしまうワケですが、絞りユニットの微調整がキッチリできているので、ご覧のように互いの絞り羽根が噛み合ったりしていません (つまり寸前で閉じきってしまうのをちゃんとやめている)。

↑完成した鏡筒 (ヘリコイド:オス側) を立てて撮影しました。するとヘリコイド (オス側) のネジ山距離が相当長い事がこれで分かりますね。

つまり繰り出し量が多いワリには細かいネジ山で制御している設計なのが分かります。また製産時期が1977年ですから、既に富岡光学製はヤシカに吸収されているので合理化を進めた設計を採用し、絞りユニットの固定を「締付ネジ」だけに変更し、当時の他社光学メーカーと同様に簡素化 (合理化) してきています。

↑距離環やマウント部を組み付ける為の基台です。

↑真鍮 (黄鋼) 製のヘリコイド (メス側) を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

↑完成している鏡筒 (ヘリコイドけオス側) を、やはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルは全部で9箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

↑頭ン中からでは組み込みが大変なので、ここで先に光学系後群をセットしてしまいます。ひっくり返して再び裏側を後玉側方向から撮影しました。

すると解説のとおり「開閉アーム/制御アーム」がちゃんと鏡筒から飛び出たままになっていますが、よ〜く見るとブルーの矢印のとおり「飛び出ているアームの長さが違う」事が分かります。

つまりここがポイントで、マウント部との連係動作時に正しく適切なチカラの伝達が行われるか否かがこの「アームの長さの相違」に気がついているかどうかで決まってきます。

また両サイドに「直進キー」が組み込まれているので、ここの微調整遺憾で距離環を回すトルクも大きく変化してきますから、単に塗布するヘリコイドグリースの粘性だけではトルク調整は叶いません。

それをムリにグリースの粘性だけでトルク調整を終わらせる考え方で最近富みに多く使われているのが「白色系グリース」ですね(笑) 当方は基本的に製産時点の工程を意識したオーバーホールを行うので、当時使われていたであろう「黄褐色系グリース」をメインとしています。

何故なら、当時は「白色系グリース」がまだ主流になっておらず各光学メーカーの純正グリースは「黄褐色系グリース」が主力であり、必然的にそれを前提とした各構成パーツの設計を採っているからに他なりません

つまりアルミ合金材のヘリコイド (オスメス) は「黄褐色系グリース」塗布を前提とした材質管理を以て製産されていた事になるワケで、ここが近年塗布されてしまう「白色系グリース」によって経年で「アルミ合金材が白っぽく変色してしまう」因果関係に繋がっています。

白色系グリース」が塗布されていた固体の場合、たいてい白色成分 (具体的な成分は不明) がアルミ合金材に浸透してしまい、実際に「白っぽく変色している」のが現実ですから、はたしてこの現象をどう説明するのかですね (ちなみに黄褐色系グリースは浸透しないのでアルミ合金材が変色していない)。

以前グリース業界の方にお話しを伺った際に、実は具体的にどのような成分がアルミ合金材を侵すのか大凡の話は聞いていますが、それを明らかにするとまた面倒なことになるのでこのブログでは解説しません (一部整備者が見ているらしいので)。

↑こちらはマウント部内部の写真ですが、既に各構成パーツを取り外して当方による「磨き研磨」を終わらせた状態で撮っています。

↑取り外していた各構成パーツも個別に「磨き研磨」を施しセットします。「連係環」が絞り環と連係することで設定絞り値が伝達されます。そして「制御爪」によって鏡筒から飛び出ている「制御アーム」がカッチリ掴まれたままになります。

さらにマウント面から飛び出てくる「開閉レバー」の操作によって同じく「開閉アーム」も操作されるので、鏡筒から飛び出ている2本の「板状アーム」はここで掴まれたり接触したりしたまま距離環が回転した時に、その設定絞り値が伝達されます。

そして何よりも重要なのが「捻りバネ」の存在であり、前述の絞りユニットに附随していた「スプリング」が「常に絞り羽根を閉じようとするチカラ」であったのに対し、この「捻りバネ」は「常時絞り羽根を開こうとするチカラ」を及ぼし続けるので、互いに相反するチカラが作用していることになります。

スプリングと捻りバネ」このカタチも作用する方向も全く異なる2種類のバネ材が、実は絞り羽根開閉が正しく行われるのかを決定づけている大変重要な要素なので、ここの微調整がシッカリできるか否かが「絞り羽根の開閉異常」の発生に繋がっていきます。

いわゆる単なる「絞り羽根の油染み」だけが絞り羽根の開閉を異常にする要素ではありません。その「原理原則」を理解しているかどうかが整備者に問われますね(笑)

↑完成したマウント部を基台にセットします。

↑ベアリングを組み込んでから絞り環をセットします。

↑マウント部の爪を組み付けます。

↑距離環を仮止めしてから光学系前群を組み込んで無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。

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ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑実に5年ぶりにオーバーホール済でヤフオク! に出品する『XR RIKENON 50mm/f1.4《富岡光学製》(PK)』です。しかも今回は2本を調達して良いとこ取りした「ニコイチ」品でもあります。

なかなかこのモデルが市場に出回らず月間1本レベルなので、その個体の光学系がどうなのかまで構っている余裕が実際のところあません(笑) 従って良いとこ取りをする「ニコイチ/サンコイチ」はある意味致し方ないのではないかと考えています。

↑パッと見では大変キレイな光学系に見えるのですが、実は残念ながら前後玉 (表面側) には経年相応にカビ除去痕が残っており、LED光照射すると浮かび上がります。しかし光学系内の透明度は非常に高くLED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリも皆無です。

もっと正しく言うならもパッと見で「極微細な塵/」に見えてしまう実は「微細極微細な点キズ」が多いので、まるで光学系の清掃をしていないように思われてしまいますが(笑)、現実は3回の清掃でも一切除去できないカビ除去痕に附随する点キズです (従ってクレーム対象としません)。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

ご覧のとおり写真ではとてもキレイに写りますが、LED光照射すると極微細な点キズが複数浮かび上がります。

↑光学系後群側が特にLED光照射で浮かび上がる「極微細な点キズ」が多めです。しかしLED光照射でのコーティング層経年劣化に伴う極微細なクモリは皆無のままです (つまり透明度は非常に高い状態を維持している)。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(LED光照射で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:16点、目立つ点キズ:11点
後群内:20点以上、目立つ点キズ:20点以上
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり(前後群内僅か)
(極微細で薄い数ミリ長が数本あり)
・バルサム切れ:なし (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:なし
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):なし
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが清掃しても除去できないCO2の溶解に拠る極微細な点キズやカビ除去痕、或いはコーティング層の経年劣化です。
・光学系内の透明度が非常に高いレベルです。
(LED光照射でも極薄いクモリすら皆無です)
・光学系内のコーティング層には一部に拭き残しのように見えてしまうコーティング層経年劣化が線状に見る角度により光に反射させると視認する事ができますが拭き残しではありません。
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑8枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に正六角形を維持」したまま閉じていきます。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:軽めと超軽め」を使い分けて塗布し距離環や絞り環の操作性は非常にシットリした滑らかな操作感でトルクは「普通」人によって「軽め」に感じ「全域に渡って完璧に均一」です。
・距離環を回すとヘリコイドのネジ山が擦れる感触が伝わる箇所があります。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
・絞り環操作も確実で軽い操作性で回せます。

【外観の状態】(整備前後関わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
当方出品は附属品に対価を設定しておらず出品価格に計上していません(附属品を除外しても値引等対応できません)。
・附属の中古フィルターは清掃済ですが経年なりの極微細なキズや汚れが残っています。
・附属品の樹脂製後キャップが少々キツメです。

↑このモデルの「ピント面の山がアッと言う間」で、且つそのピント域が極僅かなので、距離環を回すトルクを今回のオーバーホールでは故意に (ワザと)「軽め」に仕上げています。特に開放辺り (f1.4〜f2.0) で撮影する際は、ほんの僅かに距離環を微動させただけでピントの山から外れますから、それに配慮したトルク感に仕上げています。

その意味では開放f値「f1.2」にも匹敵するかと錯覚するほどに浅い (狭い) 被写界深度のモデルです。またファインダーで見ているとピント面が非常に鋭いのですがエッジが基本的に細い (繊細) なので、前述のピントの山がアッと言う間なのと合わせて「おッ!」と唸るような合焦の仕方です(笑) つまりピントの山から行きすぎたり戻したりの微動操作をするハメに陥りますから(笑)「軽め」に仕上げています。

今回2本調達して「ニコイチ」しましたが、基本的に光学系の状態が良い個体にオーバーホール/修理ご依頼分も含めて出会ったことがありません(笑) 従ってまた2〜3年してほとぼりが冷めた頃に扱うつもりの、やはりいわゆる「敬遠モデル」のひとつですね(笑)

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑当レンズによる最短撮影距離45cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

この実写はミニスタジオで撮影していますが上方と右側方向からライティングしています。その関係でフードを装着していない為に絞り値の設定によりハレ切りが不完全なまま撮影しています。一応手を翳していますがハレの影響から一部にコントラスト低下が出てしまうことがあります (簡易検査具による光学系検査を実施済で偏心まで含め光軸確認は適正/正常)。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f2.8」での撮影です。

↑f値は「f4」に変わっています。

↑f値「f5.6」です。

↑f値「f8」になりました。

↑f値「f11」での撮影です。極僅かに「回折現象」の影響が現れ始めています。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。