◎ KONICA (コニカ) HEXANON 57mm/f1.4 EE《中期型−II》(AR)

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※解説とオーバーホール工程で使っている写真は現在ヤフオク! 出品中商品の写真ではありません

オーバーホール/修理ご依頼分ですが、当方の記録用として掲載しており
ヤフオク! 出品商品ではありません (当方の判断で無料掲載しています)。
(オーバーホール/修理ご依頼分の当ブログ掲載は有料です)


久しぶりにKONICA製オールドレンズのオーバーホールをしましたが、改めて感じた事は内部構造として独特な設計を採っていた為に、過去メンテナンスが適切に行われたのかどうかが、近年特に問題になると思いました。それは過去メンテナンス時に塗布されているヘリコイド グリースに「白色系グリース」を使っている事が多く、その経年劣化状況による影響度がより大きいのではないかと考えました。

↑上の写真は当初バラし始めた時の解体したヘリコイド (オスメス) と基台に鏡筒なのですが、溶剤による洗浄を行う前の古いヘリコイドグリースが残っている状態を並べて撮影しています。すると過去メンテナンス時に「白色系グリース」が塗られていたワケですが、既に経年劣化から「濃いグレー状」に変質しており、且つその後のタイミングで「潤滑油」を注入されてしまった為に、非常に重いトルク感に至っていました。

写真では分かりませんが、このヘリコイドグリースは粘性を帯びており「まるで接着剤のよう」にベタつき感が酷い状況です。

↑上の写真は、前述の状態から溶剤による洗浄を行い、その後当方による「磨き研磨」を施した後で並べて撮影しました。如何に「濃いグレー状」に変質していたのかがご理解頂けると思いますが、ヘリコイドグリースに「白色系グリース」を塗ると必ず元々白色だったグリースが変質します。

この「濃いグレー状」を無色透明の新しい溶剤に付けると底にサラサラと「微細な金属粉」が沈殿するので「アルミ合金材の摩耗粉」である事が明白です。但し、経年でヘリコイド (オスメス) のネジ山 (アルミ合金材) がどんどん削れてしまうのかと言えば、おそらく「転がり係数の影響分だけ」の話なのだと推察しています。

従って、古いヘリコイドグリース (ここでは白色系グリースのこと) の粘性がある程度残っている間はアルミ合金材の摩耗度も増加しないのでしょうが、今回のように「潤滑油」を注入されてしまうと話が変わってしまいます。もちろん過去メンテナンス時に塗布された「白色系グリース」の成分にもよりますが、たいていの場合化学反応を起こしてしまい今回のような「粘性を帯びたベタつき状態」に陥り、非常に重いトルク感へと変わります。

すると注入された「潤滑油」の油成分が揮発していく過程に伴い、その「発生してしまった粘性」の影響からヘリコイドのネジ山の摩耗度も増大し、よりアルミ合金材が削れていってしまうのだと考えています (だから摩耗粉が溶剤の底に沈殿する)。

いずれにしても、当方の考察としてこれらオールドレンズが製産されていた当時、各光学メーカーが塗布していた純正のヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」だったハズであり、これらアルミ合金材 (或いは真鍮/黄鋼製) のヘリコイド (オスメス) はそれを前提とした設計だった事が容易に推測できますから、いくら均質なトルク感に仕上げやすいからと言って「白色系グリース」を使う事は如何なものか疑問に感じています

つまり当方は「アンチ白色系グリース派」の先鋒であり、特にリチウム系白色系グリースを オールドレンズのヘリコイドグリースとして使う事に大きな抵抗を感じています。

もっと言えば、金属会社社長さんにも以前お話しを伺いましたが、当然ながらこれら当時の光学メーカーは塗布するヘリコイドグリースを決めて設計していたハズなので (たいていの場合純正グリースの塗布が前提のハズ)、当方が考えるところの黄褐色系グリースを使うべき」と言う考え方はとても理に適っているとのご指摘でした

つまり「白色系グリースがキライ」だからなのではなく(笑)、オールドレンズの内部構造と共に、その使っている構成パーツの「金属材」との関係が問題なのであって、それは自ずと設計時点に想定していたであろうグリース種別にできるだけ近いヘリコイドグリースを使うべきとの考え方に他なりません。

一部のSNSで当方に対する批判として「最近のリチウム系グリースのメリットを知らない」とのご指摘がありますが、決して知らないのではなく(笑)、オールドレンズの内部構造と使っている構成パーツの金属材に適合しないから「使いたくない」だけの話です。特に自分でバラした事も無い人に限って、そのような指摘で批判する場合が多いようですね(笑)

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コニカの歴史は相当古く、何と明治6年 (1863年) に東京麹町で米穀商「小西屋」を営んでいた6代目杉浦六右衛門が、25歳の時に当時の写真館で撮影した写真に感動し写真材料の扱いを始めたのが原点です。その後東京日本橋に写真材料と薬種を扱う「小西本店」を開業したのが創設になります。

それから30年後の明治36年 (1903年) 国産初のブランド付カメラ『チェリー手提用暗函 (6枚の乾板装填式)』国産初の印画紙「さくら白金タイプ紙」を発売しました (左写真)。

その後大正12年 (1923年) 現在の東京工芸大学の前身「小西写真専門学校」を創設し、昭和11年 (1936年) に株式会社小西六本店と社名変更しています (後のコニカ株式会社)。

今回扱うHEXANONシリーズは当初マウントが違うFマウントでしたが1965年12月に発売した世界初のAE方式一眼レフ (フィルム) カメラ「AUTOREX」からARマウントに変わっています。ARマウントの名称は「AutoRex」の頭文字を採っており、前期は「EE (Electric Eye)」後期は「AE (Auto Exposure)」機能を装備しています (セットするとシャッター優先AE機能が働く)。

【コニカ製一眼レフ (フィルム) カメラの変遷】(発売年度別時系列)
AUTOREX/AUTOREFLEX (1965年12月発売)
AUTOREX-P/AUTOREFLEX-P (1966年3月発売)
FTA (1968年4月発売)
AUTOREFLEX A (1970年発売:輸出専用機)
AUTOREFLEX T (1970年発売:FTAの輸出専用機)
New FTA/AUTOREFLEX T2 (1970年6月発売:輸出専用機)
AUTOREFLEX A2 (1971年発売:輸出専用機)
AUTOREFLEX A1000 (1972年発売:輸出専用機)
AUTOREFLEX A3 (1973年3月発売:New FTAの輸出専用機)
AUTOREFLEX T3 (1973年4月発売)
AUTOREFLEX T3N (1975年発売:輸出専用機)
ACOM-1/AUTOREFLEX TC (1976年11月発売)
AUTOREFLEX T4 (1977年1月発売:輸出専用機)
FS-1 (1979年4月発売)
FP-1 (1980年8月発売)
FC-1 (1980年10月発売)
FT-1 (1983年4月発売)
AUTOREFLEX TC-X (1985年4月発売)

上の列記で、オレンジ色①は「EE」タイプでグリーン⑨は「AE」タイプです。時系列で見ると1985年以降一眼レフ (フィルム) カメラの発売はなく、コンパクト (フィルム) カメラである「コニカカメラ」或いは「現場監督」ばかりを発売し、ついに2003年をもってフィルムカメラ事業から撤退してしまいます。

HEXANON 57mm/f1.4 EE (AR)』は、1965年発売のフィルムカメラ「AUTOREX (AUTOREFLEX)」発売時点で用意されていたセット用標準レンズですが、今回扱う個体のタイプがセットレンズとして使っていたフィルムカメラは、1968年発売の「FTA」からになります。

歴代のコニカ製一眼レフ (フィルム) カメラを如何に列挙します。




【モデルバリエーション】
オレンジ色文字部分は最初に変更になった諸元を示しています。

前期型−I1965年発売
絞り環刻印優先機能:EE
開放f値刻印:有 (囲み/有)
指標値環:梨地シルバー
筐体外装:光沢プラック
銀枠飾り感:有 (フィルター枠)
距離指標値刻印:feet/meterいずれか

前期型−II
絞り環刻印優先機能:・のみ (EE省略)
開放f値刻印:有 (囲み/有)
指標値環:梨地シルバー
筐体外装:光沢プラック
銀枠飾り感:有 (フィルター枠)
距離指標値刻印:feet/meterいずれか

中期型−I
絞り環刻印優先機能:EEのみ (・消滅)
開放f値刻印:有 (囲み/有)
指標値環:梨地シルバー
筐体外装:梨地プラック
銀枠飾り感:有 (フィルター枠/距離環)
距離指標値刻印:feet/meterいずれか

中期型−II1968年発売
絞り環刻印優先機能:EEのみ
開放f値刻印:有 (囲み無/有)
指標値環:梨地シルバー
筐体外装:梨地プラック
銀枠飾り感:有 (フィルター枠/距離環)
距離指標値刻印:feet/meterいずれか

中期型−III
絞り環刻印優先機能:EEのみ
開放f値刻印:有 (囲み無/有)
指標値環:梨地シルバー
筐体外装:梨地プラック
銀枠飾り感:有 (フィルター枠/距離環)
距離指標値刻印:feet/meter併記

後期型−I
絞り環刻印優先機能:EEのみ (AEロックボタン装備)
開放f値刻印: (囲み無/)
指標値環:梨地シルバー
筐体外装:梨地プラック
銀枠飾り感:有 (フィルター枠のみ)
距離指標値刻印:feet/meter併記

後期型−II
絞り環刻印優先機能:EEのみ (AEロックボタン装備)
開放f値刻印: (囲み無/)
指標値環:梨地ブラック
筐体外装:梨地プラック
銀枠飾り感:有 (フィルター枠/距離環)
距離指標値刻印:feet/meterいずれか

後期型−III
絞り環刻印優先機能:EEのみ (AEロックボタン装備)
開放f値刻印: (囲み無/)
指標値環:梨地ブラック
筐体外装:梨地プラック
銀枠飾り感:有 (フィルター枠のみ)
距離指標値刻印:feet/meter併記

本当はさらに細かくチェックしていくと全部で16のタイプが存在しますが、何だかきりがありません(笑)

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上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。

一段目
左端からシャボン玉ボケが破綻して円形ボケへと変わっていく様をピックアップしていますが、光学系がウルトロン型構成なので収差の影響を受けて円形を維持できなくなり、さらに輪郭が滲んでしまい不明瞭になっていきます。従って、ウルトロン型光学系は円形ボケの表出が苦手ですね。

二段目
背景の円形ボケはさらに収差の影響を受けながら滲んでしまい、ほとんど円形を成していない状態まで溶けてしまいます。結果、単なる収差としてまるで二線ボケの如く現れます。

三段目
被写体の素材感や材質感を写し込む質感表現能力に優れますが (左端のコップ) ダイナミックレンジはそれほど広くなく明暗部がストンと堕ちてしまいます。また開放f値「f1.4」にしては少々被写界深度が浅め (狭い) の印象です。

尚、注意マークの位置に掲載していたピックアップ写真は「著作権に係る問い合わせ」が来たため、現在関係機関に問い合わせしています。いわゆる「フィッシング詐欺」にあたる為、調査結果に拠っては警察署に被害届を提出し、相手方IPアドレスの情報開示請求を契約サーバー会社に上申し民事事件として対処します

光学系は5群6枚のウルトロン型構成ですが、基本は4群6枚のダブルガウス型構成になり、第2群の貼り合わせレンズを分離させてコーティング層を増やす事で収差改善と解像度不足を補っているようです。
なお、第1群 (前玉) は凸平レンズに見えてしまいますが、実際は凸メニスカスで裏面が極僅かに凹んでいます。

今回バラして清掃時にデジタルノギスで計測しほぼ正確にトレースした構成図です。
当方が計測したトレース図なので信憑性が低い為、ネット上で確認できる大多数の構成図の
ほうが「」です (つまり右図は参考程度の価値もない)。
(各硝子レンズのサイズ/厚み/凹凸/曲率/間隔など計測)

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。実はこの当時のKONICA製オールドレンズは、その内部構造の設計概念から「原理原則」を理解している整備者でない限り適切な微調整が施せない要素が幾つかあります。その意味で本当は難易度が高いオールドレンズなのですが「白色系グリース」を使う事で微調整を回避しつつ過去メンテナンスされている事が多いのが現実です。

今回のオーバーホール/修理ご依頼内容は以下のです。

【当初バラす前のチェック内容】
 距離環がほぼ固着状態でとてもピント合わせできる状況にない。
距離環に前後方向でのガタつきがある。
 順光目視で光学系内に大きなカビの発生を視認できる。
絞り環操作時のクリック感が相当ガチガチの状態。
絞り羽根の動きが緩慢。

【バラした後に確認できた内容】
過去メンテナンス時に白色系グリース塗布し経年劣化で揮発している。
さらに「潤滑油」を注入した為に粘性を帯びている。
ヘリコイドの組み込み位置ミス (無限遠位置適合せず)。
その影響で無限遠位置で固まる為に距離環の半締めにより回避 (ガタつき発生)。
絞りユニット内構成パーツ等酸化/腐食/錆び進行し絞り羽根開閉が緩慢。

・・とまぁ〜こんなに出てきましたが(笑) そもそも距離環にガタつきが生じていたのは、過去メンテナンス時のミスをごまかす為に「距離環締付用イモネジ」を半締めにしてごまかしていたからです(笑)

いわゆる「常套手段」と言うヤツで(笑)「原理原則」を理解できていない整備者の手による
過去メンテナンスだった為にその原因究明ができず「ごまかしただけ」です(笑)

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。ご覧のように鏡筒裏側には「長いスプリング」が1本附随していますが、実はベアリングを複数使った「回転式の環 (リング/輪っか)」が備わっています。このクルクル回る環 (リング/輪っか) の存在が非常に厄介な問題を起こします。

↑上の写真は絞りユニットを写していますが、ご覧のように「開閉環」と「位置決め環」があります。プラスして「カム」が附随しており、そこに「捻りバネ」が1個セットされています。

実はこの「捻りバネ」の意味を正しく認識できている整備者が非常に少ないと言わざるを得ません。この当時のKONICA製オールドレンズは必ず上の写真の絞りユニットを設計して実装しているワケですが、この「捻りバネ」は「常に絞り羽根を開こうとするチカラを及ぼす」役目で備わっています。

ところがご覧のとおり「非常に細い線径の捻りバネ」なので、これが経年で弱ってしまっただけで「絞り羽根の開閉異常」が起きます。ところがその初期段階は「絞り羽根の動きが緩慢」と言う現象になるので、過去メンテナンス者がそれに気づいていたのかが問題になってきます。ブルーの矢印のように「カム」が動く事でそれに連動して「開閉環」が同じ量だけ移動するので「絞り羽根が開閉する」仕組みですね。

今回の個体が当初バラす前のチェック段階で「絞り羽根の動きが緩慢」だったのは、過去メンテナンス時の整備者がこの点に全く気づいておらず、一切関係ない箇所にグリースを塗ってしまったが為に、却ってそれが経年で抵抗/負荷/摩擦を増大させてしまったと言う因果関係でした。

凡そ自分が施している所為が将来的にどのような因果関係を及ぼすのか、全く考えていない「グリースを塗ればスムーズに動く」とばかり信じ込んでいる整備者の類であり、このような整備者がいまだにとても多く存在する事が問題になっています (グリースの目的/役割と使い方を正しく認識できていない整備者)。そのクセ「グリースに頼った整備」ばかりするからたまったものではありません (本当に迷惑千万な話です)(笑)

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

↑6枚の絞り羽根を絞りユニットにセットしたところです。ご覧のとおりとても薄い絞りユニットの設計です。

↑こんな感じで鏡筒の最深部に絞りユニットがセットされます。

↑完成した鏡筒をひっくり返して裏側 (つまり後玉側方向) から撮影しました。例の「長いスプリング」はグルッと鏡筒の周りを回って「制御キー」に接続されますが、その引っ張るチカラ (引張力) のせいで「制御キー」は必ず戻ろうとします。

この時、その「制御キー」に刻まれているスリット (切り欠き) をカムが行ったり来たりするので、その動きにより「絞り羽根の開閉角度が決まる」仕組みです。

↑角度を変えて「カム」に「捻りバネ」と「制御キー」がそれぞれ見える位置で撮影しました。これらの構成パーツが密接に関わり合って最終的に「絞り羽根の開閉角度を決めている」ワケですから、この「捻りバネ」のチカラが非常に重要だと言わざるを得ません。

どうしてそうなのか?

理由は簡単です。長いスプリングがグルッと鏡筒周りを回って戻そうとするチカラが及んでいるからです。つまりこの長いスプリングは「常に絞り羽根を閉じようとするチカラ」を及ぼす目的なので、ここでちょっと詳しい人はピンと来たハズです。

そうですね「捻りバネのチカラとスプリングのチカラがアンバランス」なのです。どう考えても (実際に指でチカラを確認しても) 長いスプリングのチカラのほうが大きくなってしまいます。

実はここの設計はそれを見越した設計をしているので「制御キーのスリットのカタチ」と「カムの駆動方法」が大きく影響して長いスプリングのチカラを上手く相殺させて「細い捻りバネ」とのチカラバランスを整えているワケです。

これが「原理原則」であり「観察と考察」であり、それを知る事でここの微調整が自ずと決まってきます。

ところが過去メンテナンス者は全く気づいておらず、何と「長いスプリングにグリースを塗ったくった」ので鏡筒の周囲が「濃いグレー状」に変質していたワケです(笑)

要は「グリースを塗ればスムーズになる」と言う自らの思い込みだけで処置しているワケですが、結果的に経年で抵抗/負荷/摩擦が増大してしまい絞り羽根の開閉に問題を起こしてしまいました。

ほとんどの過去メンテナンスがここにグリースを塗っているので、誰も気がつかないのでしょうか?(怒)

違います!(怒) ここの工程でヤルべき事は「絞りユニットの酸化/腐食/錆びを除去する事」です。それによって「捻りバネは少ないチカラだけで絞り羽根を開ける」のです。グリースを塗ったくる必要は一切ありません!(努)

実際、上の写真のとおり当方のオーバーホールではここに全くグリースを塗っていません(笑) それどころか過去メンテナンスで塗られてしまったグリースのせいで酸化/腐食/錆びが生じていた鏡筒周りまで「磨いて平滑性を取り戻す」作業まで当方はやらされたワケです。

本当にロクなことをしません!(怒)

・・と頭に来るくらい、本当に多くの個体でバラすとまず間違いなくここにグリースを塗ったくっている整備を過去メンテナンス時に行っているのです。

重要なのは「チカラの作用」であり「捻りバネスプリング」なのであり、その設計の意図を汲み取れたのか否かです。

↑距離環やマウント部を組み付ける為の基台です。

↑ヘリコイド (メス側) を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

過去メンテナンス者はここのネジ込み位置をミスっていました(笑) いえ、もっと正しく言えばミスを犯していると全く気がついていません(笑)

つまり無限遠位置近くになるとヘリコイドが重くなる (固まる) 理由が全く分からなかったと思いますね (それで距離環を半締め固定にした)。この「常套手段」は時々見かけますが(笑)、距離環の締め付けを弱くするとアルミ合金材の撓りが消えるので一時的にトルクが軽くなる場合があります。しかしそれはヘリコイド (メス側) の話である事が多いので、必ずしも解決策になりません。やはり根本的な原因を突きとめて、それを改善/解消しない限り適切なトルク感に仕上がらず、且つそれを何年間も維持させる事が叶いませんね。

↑上の写真はフィルター枠部分を並べて撮影していますが、実はこの「フィルター枠」がヘリコイド (オス側) を兼ねています。

一般的なオールドレンズで言うと、ヘリコイド (オス側) にフィルター枠の役目を持たせている設計を採っている光学メーカーがあまりありません。たいていの場合、ヘリコイド (オス側) は鏡筒を内側にストンと入れ込むよう設計している事が多くフィルター枠を兼ねている事が非常に少ないです。

逆に言うと、これがKONICA独自の設計概念なのですが、鏡筒が全く関わっていません。この事に整備者が気がつくかどうかも、KONICA製オールドレンズの操作性を軽く仕上げられるかどうか左右する決め手になります。

↑フィルター枠 (ヘリコイド:オス側) を、やはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルでは全部で9箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

↑ヘリコイド (オスメス) を組み込んだ状態でひっくり返して後玉側方向から撮影していますが、ワザと明るめに撮っています。

基台の裏側にベアリングでクルクル回る「環 (リング/輪っか)」が附随しており、そこに「開閉用ガイド」なる「」が用意されています。

ここがKONICA製オールドレンズのポイントです。

↑今度はフィルター枠 (ヘリコイド:オス側) をネジ込んだ後の状態で内部を撮影しました。するとやはりフィルター枠 (ヘリコイド:オス側) にも「直進キー用のガイド (溝)」ともう一つ「鏡筒用ガイド (溝)」まで備わっています。

つまり全部で3つの「ガイド (溝)」が存在します。

これを整備者が理解できているかどうかでKONICA製オールドレンズが軽い操作性で仕上げられるのかどうかが決まります。逆に言うと、このような設計概念を採っているのはKONICAだけだとも言えますね (それほど独特な設計概念)。

距離環を回すと「直進キー」が上下方向でスライドします (ブルーの矢印)。また絞り環を回すと設定絞り値に従い「開閉用ガイドの環 (リング/輪っか)」も絞り環と一緒になって回転します (ブルーの矢印)。そして同時に鏡筒はフィルター枠 (ヘリコイド:オス側) に用意されている「鏡筒用ガイド (溝)」をスライドしながら移動するワケです。

つまり3箇所のガイド (溝) が距離環を回すことで関わっている話になり、そこに絞り環も連係しています。この点を過去メンテナンス者は全く理解できていませんでしたね(笑)

↑では鏡筒がどのように前述の「ガイド (溝)」と関わるのかを解説していきます。鏡筒には2箇所に「キー」が用意されていて、それぞれ「鏡筒キー/開閉キー」になります。この「キー」がそれぞれのガイド (溝) に刺さってスライドしながら動くので「結果としてに鏡筒が上下動する」仕組みなのです。

↑別の角度で撮影していますが「鏡筒キー」はフィルター枠 (ヘリコイド:オス側) に用意されている「鏡筒用ガイド (溝)」に刺さるので、距離環を回すと鏡胴が前後動してピントが合わせられる仕組みです。

↑またその際「同時に」絞り環操作で設定した絞り値に対して「開閉キー」が「開閉用ガイド (溝)」に刺さったままなのでスライドしているワケです (ブルーの矢印)。

つまり絞り羽根の開閉角度が一定のまま (設定絞り値のまま) 距離環を回すと鏡筒が前後動してピント合わせできる仕組みですョね?(笑)

これを過去メンテナンス者は全く理解できていなかったので、ヘリコイド (オスメス) の組み込み位置も (適切なのかどうか) 分からず、痰にバラした時の逆手順で組み上げていっただけの話です(笑)

↑こんな感じで鏡筒がそれぞれのガイド (溝) にキーが刺さって連係しつつセットされます。

↑基台の両サイドには「絞り値キー」と言う円形の溝が用意してある金属板がセットされます。各絞り値に見合う位置で円形の穴が切削されており、ここにベアリングがカチカチとハマるので、絞り環操作時にクリック感を伴う操作性になりますね。

ちなみに、上の写真で手前に見えているネジ (2個) が「直進キー」を締め付け固定しているネジですが、KONICA製オールドレンズの多くのモデルで「直進キーは1本だけ」の設計を採っています。

一般的なオールドレンズは「両サイドに直進キーを配置」する事で、距離環を回す少ないチカラだけでスムーズに鏡筒を繰り出し/収納できるよう考慮していますが、この当時のNikonとKONICAだけが「1本の直進キーだけでの鏡筒駆動」に拘っていました。

逆に言うと「1本だけの直進キーでスムーズにヘリコイドを駆動させる必要がある」とも言えますね。つまりこの点も整備者が理解していないと重いトルクになったりします。

↑絞り環をセットしたところですが、両サイドに「ベアリングスプリング」を入れる穴が備わっています (赤色矢印)。前述の「絞り値キー」にカチカチとベアリングをクリックさせる為に用意されているワケです。

ちなみにグリーンの矢印で指し示した箇所を見ると、ちゃんと鏡筒の「開閉キー」が「ガイド (溝)」に刺さっていますね。

この当時のKONICA製オールドレンズは多くのモデルでこのように「3つのガイド (溝)」にそれぞれの「キー」が入って、且つ距離環の回転と共に前後に行ったり来たりスライドするので、単にヘリコイド (オスメス) だけのトルク調整だけで最終的な距離環を回すトルクが決まっているワケではありません。

逆に言えば塗布するヘリコイドグリースなんかよりも「どれだけチカラの伝達経路を平滑に戻したのか」のほうが実際は重要だったりします。それを「白色系グリース」を塗布すれば容易に滑らかでスムーズなトルク感に仕上げられますから、使い続ける整備会社が多いというのが現実なのでしょうね(笑)

・・だとすれば、いずれさらに50年後には整備して本来あるべき操作性で仕上げられるオールドレンズの個体数は、間違いなく半減していると考えますが、もうその時には当方は居ないので気にしていません(笑)

↑ヘリコイドのトルク調整、絞り環操作時のガチガチ感、もちろん絞り羽根の開閉動作など、全ての微調整が終わったのでマウント部をセットします。

↑距離環を仮止めしてから光学系前後群を組み付けて無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。

なお、この当時のKONICA製オールドレンズの場合、今回の個体も含めて内部には「数多くのベアリングで回転させている環 (リング/輪っか)」が最低でも2箇所あるのですが、それらベアリングが経年で酸化/腐食/錆びていた場合に回転の平滑性が失われている事があります。

その場合は仕方ないので(笑)、バラして仕込まれている数多いベアリングを1個ずつチェックして「赤サビ」が生じていないか確認し、もしも錆びていたらサビ取りをしない限り滑らかに戻りません。ベアリングと言っても「36個とか64個」のレベルですから、ハッキリ言って滑らかで平滑性が保たれているならバラしたくないです (今回はバラしていません)(笑) 直径僅か1.5mm程度の小さなベアリングの赤サビを除去する作業と言うのは、それはそれは「拷問」に近い苦痛が伴います(笑)
(見えないし滑って何処かへ転がっていくし作業中はただただ恍惚になるし)

修理広告DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了したオールドレンズの写真になります。

↑完璧なオーバーホールが終わりました。KONICA製オールドレンズもこれだけ滑らかに軽い操作性で仕上がるのかと言う、良い例になるほどの仕上がり状態です(笑)

↑オーバーホール/修理のご依頼内容の中に「カビの発生」があった事をすっかり忘れていて清掃してしまいましたが(笑)、キレイにカビを落として (除去して) 清掃が終わっているので、非常に透明度の高いクリアな状態に仕上がっています。LED光照射してもコーティング層の経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。

当方が「皆無です」と言えば本当に皆無ですから、LED光照射しつつどんなに探しても曇っている所がありませんし、それは「個人の主観」だからではなく「客観的に皆無」だから皆無と明言しているワケです(笑) オークションなどでの逃げの手段として「個人の主観」と言う表現が罷り通っていますが(笑)、それは客観的に表現すれば良いだけの話なので「逃げ口上」でしかないですョね?(笑)

↑光学系後群側も透明度が高く、LED光照射で極薄いクモリがやはり皆無です。

↑6枚の絞り羽根もキレイになり絞り環共々確実に駆動しています。特に絞りユニットをバラしてキッチリ「磨き研磨」したので、絞り羽根の開閉は小気味良くちゃんと動いてくれますし、絞り環のガチガチ感もちゃんと消えて「程良いクリック感」に仕上がっていますから、こういうところが当方の「DOH」の成果でしょうか(笑)

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

↑塗布したヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」の「粘性中程度軽め」を使い分けて塗布し、距離環を回すトルク感は「全域に渡って完璧に均一」に仕上がっています。

例えばMINOLTA製オールドレンズも同じですが、KONICA製オールドレンズもヘリコイド (オスメス) の仕様から回す時のトルク感は「シッカリしたトルク」に仕上がるので、その分抵抗/負荷/摩擦は残ります (いわゆるユルユル/スルスル状態のスムーズさには仕上がらない)。しかしピント合わせすれば明白ですが「極軽いチカラだけでス〜ッとピント合わせできる」のが当方のオーバーホールでの特徴でもあります。

特にこのモデルは「ピントの山がアッと言う間」なので、このピント合わせ時の微動は使用感としての重要な要素になってきますから、その点にちゃんと配慮して仕上げたのかどうかが問われますね。

筐体外装も「磨きいれ」していますが、実は「経年のカビ」がビッチリそこいら中に生じていました。オールドレンズを見た時に「筐体外装が斑模様に汚れて見える」のは、それは汚れではなく「カビ」です。従って洗浄液で落とそうとしても一切除去できませんし、ましてやヤフオク! などで出品者が言っている「除菌アルコール処理」など、全く以て意味がありません(笑)

そんなのはいわゆる「謳い文句」の類であり、除菌剤に含まれている成分のほうが、むしろ将来的には問題になりますね(笑)

な〜んにも考えずに思い込みだけでそのような処置を施して「あたかもユーザーサイドに立った考え方」のよう振る舞っていますが、何の差別化にも至っていません (むしろ塗膜面に対して悪影響なのでやめてほしい)(笑)

今回の個体に関して言えば、現物を手に取った時点ですぐに分かりますが「斑模様の汚れが消えている」のでキモく無いです(笑)

↑冒頭問題点のまで全てが完璧に改善され、本来あるべき「機能性使用感」としてバッチリ仕上がっています。

無限遠位置 (当初バラす前の位置から検査して変更/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑附属のフィルターとフードもちゃんと清掃していますし、フードは「磨きいれ」したので
再び光沢感が戻り、ちょっと嬉しい気持ちになったりします (刻印文字だけは経年で剥がれているのでそのままです)(笑)

↑当レンズによる最短撮影距離45cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

この実写はミニスタジオで撮影していますが上方と右側方向からライティングしています。その関係でフードを装着していない為に絞り値の設定によりハレ切りが不完全なまま撮影しています。一応手を翳していますがハレの影響から一部にコントラスト低下が出てしまうことがあります (簡易検査具による光学系検査を実施済で偏心まで含め光軸確認は適正/正常)。

ピンボケにしか見えませんが(笑)、これでもちゃんと手前側ヘッドライトの本当に電球の球部分にだけピントが合っているのです。逆に言うと開放ではそのくらい被写界深度が浅くて (狭くて) シビアなので、開放f値「f1.4」の標準レンズとして考えるとちょっと珍しいレベルですね (まるでf1.2のよう)。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2」で撮影しています。ここでイキナシ鋭く明確にピント面が変わって出てくるから堪りません(笑)

↑さらに回してf値「f2.8」で撮りました。この時点ではもぅスパッとピントの山が合うので「チョ〜気持ちいい!」状態です(笑)

↑f値は「f4」に変わっています。

↑f値「f5.6」になりました。

↑f値「f8」です。

↑f値「f11」になっています。このf値でもまだ「回折現象」の影響を感じませんから、相当な光学系のポテンシャルではないでしょうか。素晴らしいです。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。このモデルでは「回折現象」が出るのかしらと思うほど影響を感じ取れません。

大変長い期間に渡りお待たせし続けてしまい本当に申し訳御座いませんでした。お詫び申し上げます。今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。