◎ Tokyo Kogaku (東京光学) RE, Auto-Topcor 25mm/f3.5(RE/exakta)

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今回オーバーホール/修理ご依頼を承ったモデルは、東京光学製の
超広角レンズ『RE, Auto-Topcor 25mm/f3.5 (RE/exakta)』です。


今回初めての扱いですが、同じモデルを2本オーバーホール/修理ご依頼として承りました。
以下解説ではその2本を次のように表記して区別します。

「常用品」新品で購入後47年間ご愛用の個体
交代用 上記交代用として新しく入手された中古品

  ●               ● 

今回のモデルは、1963年に東京光学から発売されたフィルムカメラ「RE SUPER」用の交換レンズ群として用意された超広角レンズの一つです。

モデルバリエーションとして「前期型/後期型」に分かれますが、今回扱うモデルは市場流通個体数が少ないので、以下では標準レンズの「RE、AUTO-TOPCOR 58mm/f1.4」を使って解説しています。

【モデルバリエーション】
オレンジ色文字部分は最初に変更になった諸元を示しています。
※以下解説は標準レンズの「RE、AUTO-TOPCOR 58mm/f1.4」で説明。

「前期型」

指標値環基準マーカー:
距離環ローレットの縁:有
マウント面凹み:有

「後期型」

指標値環基準マーカー:
距離環ローレットの縁:
マウント面凹み:

今回オーバーホール/修理を承った個体は2本共に「後期型」にあたります。



上の写真はFlickriverで、このモデルの特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。

一段目
左端から円形ボケが破綻して滲んでいく様子をピックアップしていますが、このモデルの描写特性を顕著に表す実写が左からの2枚目です。このピント面の驚異的なカリカリ感は、非常に極端にアウトフォーカス部との明確な差になって現れる事があります。さらに開放f値「f3.5」を少々暗めだと侮ると真逆で、被写界深度も相当狭くちゃんとピント面がカリカリに鋭く合焦しているにも拘わらず、開放時の撮影は僅かにピンボケのように見えがちです(笑)

二段目
左端のようにパッと見で二線ボケかと感じるような乱れた (汚い) 滲み方をする事もありますが素直になだらかな階調で滲んでいくこともあります。特筆すべきは2枚目と3枚目で明確になります。ダイナミックレンジが相当広いので黒潰れも白飛びも「ギリギリまで粘っている」ではなく「余裕で対応している」と感じるほどに素直で然し確実に違いを表している画を残してくれます。

三段目
左端はまさに「TOPCONの」と言えそうなくらいの発色性を示す鮮やかな赤色です。パースペクティブも歪みが少なくスキッとしており好感が持てます。また光源が入っている場合のゴーストの楽しさも相当なモノのようです(笑)

光学系は7群7枚のレトロフォーカス型構成です。一部サイトで日本初の超広角レンズ域レトロフォーカス型光学系と案内されていますが、そもそも「レトロフォーカス」とは「RETRO (後退)」の意と「FOCUS (焦点)」の意が結合した造語です。

この光学系が開発されるまでの主流がレンジファインダーカメラだった事から、バックフォーカスが短いカメラシステムである為に標準レンズ域の光学系構成を使って充分に広角レンズ域まで延伸させ対応できていました。ところがクィックリターン式ミラーを装備した一眼レフ (フィルム) カメラの登場と共に、バックフォーカスを稼ぐ必要が生じて「広角レンズ専用域の光学系開発」が急務になっていたのです。

そこで1950年にフランスのP.Angenieux Paris社から発売された焦点距離35mmの広角レンズ「RETROFOCUS TYPE R1 35mm/f2.5」に実装されてきた光学系がまさに世界初の広角レンズ域専用光学系「レトロフォーカス型構成」だったワケで、その意味が成すところはバックフォーカスの問題である事から様々な焦点距離でそのまま活用できる光学系概念だと考えます。

すると、当時日本では既に1957年時点で藤田光学工業や旭光学工業が焦点距離:35mmの広角レンズを日本初としてレトロフォーカス型構成を実装し発売していましたから (CanonやNikonなど他社光学メーカーの多くはその翌年1958年に発売)、それを考慮すれば焦点距離が25mmと言うだけの話で、当モデルが日本初のレトロフォーカス型構成と言うワケではありませんね(笑)

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。上の写真も含め、オーバーホール工程の解説は『常用品』のほうで説明していきます。

左写真は当初バラした直後に撮った写真で、まだ溶剤を使って洗浄する前の状態です。ヘリコイド (オスメス) と基台を撮りましたが、過去メンテナンス時に塗布されていた「白色系グリース」か下手すると「粘性のある潤滑油」かも知れませんが、既に経年劣化が進んで「濃いグレー状」に変質しています。

この濃いグレー色の部分は「摩耗したアルミ合金の微細な粉」なのですが、キレイな無色透明な溶剤に垂らすと最後には容器の下のほうに「微細な金属粉」が沈殿するのでアルミ合金材の摩耗粉ではないかと考えています (他の金属は写真のとおり無いので)。

こちらはフィルター枠から続く「鏡筒カバー」を撮影していますが、裏側に「良品 (タップなし)」と赤マジック書きされています。

オーバーホール/修理ご依頼の指示書を読むとこの「常用品」は47年前に新品で購入後ずっとお使いだったとありました。するとこの赤マジックで書かれた一文は過去に一度だけ整備に出した際に書き込まれたと考えられます。

整備に出してなにゆえにワザワザ「良品」と書き込まなければイケナイのか想像できませんし「タップ」が何を意味するのか当方は整備の専門業者ではないのでちょっと不明です。

実はこの当時の東京光学製「RE, Auto-Topcorシリーズ」のフィルター枠は、イモネジ3本で締め付け固定されているのですが3本のうち1本が「長いイモネジ」でフィルター枠を貫通しています (残りの2本は貫通していない)。ところが今回の個体「常用品」のほうは3本とも短いイモネジでした。逆に言うと「交代用」のほうはちゃんと1本が長いサイズになっていました (貫通している)。

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。このモデルはヘリコイド (オス側) が独立しているので別に存在します。焦点距離が超広角レンズ域なのでこの鏡筒に収まりきる光学系の設計にはなりませんから、必然的に延長筒を備えその中に光学系前群がごっそり格納される設計です。

絞り羽根には表裏に「キー」と言う金属製突起棒が打ち込まれており (オールドレンズの中にはキーではなく穴が空いている場合や羽根の場合もある) その「キー」に役目が備わっています (必ず2種類の役目がある)。製産時点でこの「キー」は垂直状態で打ち込まれています。

位置決めキー
位置決め環」に刺さり絞り羽根の格納位置 (軸として機能する位置) を決めている役目のキー

開閉キー
開閉環」に刺さり絞り環操作に連動して絞り羽根の角度を変化させる役目のキー

位置決め環
絞り羽根の格納位置を確定させる「位置決めキー」が刺さる環 (リング/輪っか)

開閉環
絞り羽根の開閉角度を制御するために絞り環操作と連動して同時に回転する環

↑6枚の絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成させます。実は当初バラす前の簡易検査具を使った絞り値のチェックで「最小絞り値が閉じすぎている」状況でした。またバラした際に絞り羽根6枚のうち2枚が刺さったままなかなか外れませんでした。おそらくキーが既に変形しており垂直状態を維持していないと考えられます (実際上の写真のように絞り羽根が閉じていくと正六角形にならない)。

これは6枚の全ての絞り羽根のキーが垂直状態を維持していれば「キレイな正六角形を維持」したまま閉じていくワケですが、過去の一時期に生じてしまった「絞り羽根の油染み」が原因になってキーにサビが発生してしまったのか、或いは絞り羽根が粘着化していた時期があり、その影響からキーの変形に至ったのかも知れません。いずれにしてもある程度のタイミングで絞り羽根の油染みは整備に出して清掃したほうが良いですね (放置しておくと歪なカタチで閉じる原因になる)。

なお、絞り羽根のキーが垂直状態を維持していないなら「垂直に戻せば良い」と考えられますが、実は大変薄い厚みの絞り羽根に非常に細く短い「キー (金属製の突起棒)」をプレッシングで打ち込んでいるので、もしも垂直に戻そうとしてチカラを加えている最中に外れてしまったら「もう二度とキーは刺さらない」事になり (何故ならプレッシングで刺さる先の穴が既に広がっているから)、いきなりそのまま「製品寿命」に至ります。

そのような事に陥るのが恐ろしいのでムリに垂直に戻したりしません。従って閉じる際に歪なカタチになってしまった絞り羽根をキレイなカタチに戻すのは残念ながら不可能に近いと考えられます

↑完成した鏡筒をひっくり返して裏側を後玉側方向から撮影しました。鏡筒の「後玉」格納筒の周りをグルッと真鍮製の「制御環」が入っており、その途中に備わる「なだらかなカーブ」の勾配 (坂) に「カム」が突き当たる事で具体的な絞り羽根の開閉角度が決まる仕組みです。

なだらかなカーブ」の麓部分が最小絞り値側になり勾配を登りつめた頂上部分が開放側です。上の写真では「カム」が麓の位置で突き当たっているので最小絞り値まで絞り羽根がちゃんと閉じていますね。

すると長短のスプリング2本が附随しており (グリーンの矢印①②)、それぞれのスプリングによって「常時絞り羽根を閉じようとするチカラ ()」と「常に開こうとするチカラ ()」の相反するチカラバランスの中で絞り羽根が正常に開閉するよう設計されています。

つまりこの2本のスプリングのうち一方、或いは両方とも経年劣化で弱ってしまうと途端に「絞り羽根の開閉異常」が発生しますから、よく皆さんが勘違い (思い込み) している現象に「絞り羽根の油染み/粘り」などで絞り羽根が正しく開閉していないと決めつけているパターンが非常に多いです。

実際は、絞り羽根の油染みの影響でこれら附随するスプリングや捻りバネなどの反発力/引張力が劣化してしまい、設計上の適切なチカラを及ぼさなくなったが為に「絞り羽根の開閉異常」に至っていたりします。すると絞り羽根の油染みを清掃しても何ら改善できない事も頻繁に起きているワケで、前述のとおり「絞り羽根の油染み放置プレイは危険」と認識されたほうが無難ですね(笑)

今回の個体はおそらく過去メンテナンス時の微調整が適切ではなかったと考えるのですが、最小絞り値側が閉じすぎていたので適切な開閉幅に変更しています。

↑「制御環」には赤色矢印で指し示したように「制御アーム」が附随するので、絞り環がこの「制御アーム」を掴んでいるから設定絞り値に従って前述の「なだらかなカーブ」が移動し「カム」が突き当たる際の勾配が変化しているワケです。逆に言うと、距離環を回して鏡筒を繰り出す分の長さと同じ長さ分の「制御アーム」になっていないと、距離環を回している途中で (鏡筒を繰り出している途中で) 絞り環が外れてしまいますよね?(笑)

と言うことは、何を言いたいのか?

距離環を回す時のトルクには、実はこの「制御アーム」を絞り環が掴んだままの抵抗/負荷/摩擦なども影響してくるワケで、これもよく皆さんが思い込みしています。つまり「距離環のトルクはヘリコイドグリースの粘性で決まる」とは限らず、現実には他の部位からの抵抗/負荷/摩擦なども影響して最終的な距離環を回すトルクに至っているのが実際です

↑距離環やマウント部を組み付ける為の基台です。

↑前述の基台にこのヘリコイド (メス側) がネジ込まれますが、今回の個体「常用品」には赤色矢印で指し示した箇所に「凹み」がありました。1列目から最後まで全てのネジ山に同じ深さで「凹み」があり、当初バラした直後は微細なバリが極僅かに残っていた為、当方で「磨き研磨」して滑らかにしています。

パッと見はまるで「削った」かのように見えましたが不明です。しかしネジ山を縦方向に削る必要性は一切無いので理由も分かりません。いずれにしてもこの微細なバリのせいでトルクムラが生じていたので「磨き研磨」で低減させている次第です (トルクムラを完全に解消できていない)。

↑ヘリコイド (メス側) を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

↑この後はヘリコイド (オス側) をネジ込むワケですが、解説のとおり基台内部には「直進キー」が用意されており、ヘリコイド (オス側) に用意されている「直進キーガイド (溝)」に刺さりながら (グリーンの矢印)、且つ同時にネジ込まれていくワケです。

直進キー
距離環を回す「回転するチカラ」を鏡筒が前後動する「直進するチカラ」に変換する役目

従って、ヘリコイド (メス側) が回ると「直進キー」のせいでチカラの方向が変換されヘリコイド (オス側) が直進動をする原理です。するとヘリコイド (オス側) の内側には鏡筒がセットされるので、結果的に距離環を回すことで鏡筒が繰り出されたり/収納したりしている事になります。

↑ヘリコイド (オス側) も同様無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルでは全部で9箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

↑ヘリコイド (オスメス) が基台にセットされたところでひっくり返して撮影しました。ここから絞り環やマウント部を組み付けていきます。

↑まずは指標値環をセットして「絞り値キー」を組み付けます (赤色矢印)。絞り環を回した時にこの「」にベアリングがカチカチとハマるのでクリック感を実現していますね。従ってこの「絞り値キー」の固定位置がズレると絞り環のクリック感と刻印されている絞り値との整合性も執れなくなります。

↑ここで完成している鏡筒をセットします。

↑絞り環をセットしてベアリングを組み込みます。

↑上の写真はマウント部の内側を撮影していますが、赤色矢印で指し示したところ4箇所に「マウント部固定用ネジの穴」が空いています。単に穴が空いているだけで特にこのマウント部がカチッと填るように設計されていません(笑)

↑実際にマウント部を固定用ネジ (4本) で締め付け固定したところを撮影しましたが (赤色矢印)、東京光学のこの「RE,Auto-Topcorシリーズ」は締め付けネジの締め付けだけでマウント部を固定しています。

逆に言えば、他社光学メーカーの多くがマウント部と基台との接続は「確実に位置が決まるようカタチを与えた設計 (つまりカチッとハマり込む仕組み)」にしていた中、東京光学はネジだけの締め付けに頼った設計でした。実際4本の締め付けネジを締め付ける際のマチ幅 (隙間/余裕) が1.5mm程あるので、その分のチカラがこの固定用ネジ (4本) に負荷として掛かりますから、装着時には余り乱暴に扱うと良くないですね。

↑距離環を仮止めしてから光学系前群を組み付けて無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にレンズ銘板をセットすれば完成です。

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ここからはオーバーホールが完了したオールドレンズの写真になります。

↑今回オーバーホール/修理を承った2本を並べて撮影しました。「常用品」のほうは距離環のラバー製ローレット (滑り止め) が過去メンテナンス時に貼り替えられています。「交代用」のほうもローレット (滑り止め) は既に経年劣化が進行しだいぶ伸び始めています。

ここから暫くは「交代用」のほうについて解説していきます。

左写真は「交代用」のほうの光学系前群用硝子レンズ格納筒を撮っています。

絞りユニット直前から第1群 (前玉) までの合計5枚の光学硝子レンズが全てこの格納筒に組み込まれます。光学系の構成が「レトロフォーカス型」なので、ご覧のようにキレイに前玉から順に径が小さくなっていきます。

さらに拡大撮影しました。もう1本の「常用品」も同じだったのですが光学系の第3群〜第4群の間にある「内壁」に反射防止塗料が相当な量で塗られています。

左写真を見ると分かりますが、反射防止塗料が「盛られている」のが分かるくらいです(笑)

こちらの「交代用」のほうはその塗られている反射防止塗料が経年で乾燥した為にヒビ割れしているのが分かります。

実は「常用品」のほうは光学系第2群〜第5群を清掃したところ黒く汚れたのですぐに反射防止塗料のせいだと分かりました。仮にもしも製産時点に塗装されるのだとすると「メッキ加工」しているハズなので今回のオーバーホールで溶剤を付けても取れません (メッキ加工した塗膜は溶剤で溶けない)。また「交代用」のほうは硝子レンズの表面に「微細な粉 (黒色)」が附着していたので、やはりこの反射防止塗料ではないかと推測しています (ヒビ割れした分が粉になって附着したのかも知れません)。

逆に言えば、反射防止塗料ならば溶剤で除去できてしまいますから (溶剤に溶ける) 光学系内の硝子レンズを清掃した際に黒く汚れたら、それは経年で反射防止塗料の黒色成分が附着している事になります

今回のオーバーホールでは「常用品」のほうは過去メンテナンス時に塗装した反射防止塗料を溶剤で除去できましたが、残念ながら「交代用」のほうは厚みが多すぎて除去できませんでした。申し訳御座いません・・。

従ってまた何年後かには光学硝子レンズが黒っぽく汚れるかも知れません。光に翳して硝子の裏側が薄く曇っているように見えたらその懸念が高くなるので、その際はまた整備にお出し下さいませ。申し訳御座いません・・。

溶剤で簡単に一度拭いただけで落ちないので (綿棒を50〜60本使わないと除去できない) 大変申し訳御座いませんがこの作業分追加料金をご請求させて頂きます。

こちらは鏡筒の裏側にセットされるアームなのですが、赤色矢印の箇所に何と「バリ」が残っていました(笑)

さすがにこれだけ本格的に残っているパーツはあまり見た事がありません。この「バリ」の一部が擦っていて (干渉していて) 絞り羽根の開閉に影響を来していたようです。

さらに左写真も「交代用」のほうのパーツを撮っていますが「直進キー (環/リング/輪っか)」です。

両サイドに板状の「直進キー」が用意されています。問題なのはこの「直進キー」です。

その「直進キー」をさらに拡大撮影しました。

実は本来正しいのは左写真の解説のとおり、グリーンのラインで示したように「直進キーの両側が少し突出している」のが製産時点の設計です。
ところが「常用品/交代用」共に過去メンテナンス時にヤスリ掛けされていました (ヤスリで研磨した痕が残っていた)。

グリーンのラインで示したカタチは分かりやすくする為に少々誇張気味に示していますが、ほんの少しだけ両側が出っ張っているのです。それをヤスリ掛けして平にしてしまったので確かに距離環を回した時のヘリコイド (オスメス) は滑らかに繰り出し/収納をするのでしょうが、実は当初バラす前のチェック時点で「距離環に極僅かなガタつき」が生じていました (両方ともガタつきがあり)。

前述の「直進キー」は左写真の解説のとおりヘリコイド (オス側) に用意されている「直進キーガイド」と言う「」に刺さって行ったり来たりするワケですから (赤色矢印)、確かにヤスリ掛けしてしまえば滑らかになるのですが、それはそのまま「ガタつきの発生」にも至ります (ピント合わせの際に僅かなガタつきを感じる)。

まだあります。実は「交代用」のほうは当初バラす前のチェック時点で、オールドレンズを下向きにすると問題ないのですが上向きにすると時々絞り羽根が途中で引っ掛かります。

10回中6回くらいの割合で上向きにしている場合のみ絞り羽根が途中で引っ掛かって動かなくなってしまいます。

そもそも「交代用」も当初バラす前の時点で既に「最小絞り値が閉じすぎ」でしたし、絞り環を回していった時「f16〜f22」で変化しない事が時々起きる状況でした。

つまり結局2本とも絞り羽根が閉じすぎていた事になります・・。
「常用品」のほうが僅かに閉じすぎで「交代用」は相当閉じすぎの状況でした。

そこでどうしてオールドレンズの向きが (上下で) 変わるたびに絞り羽根が引っ掛かるのか、その原因を3時間掛かって詰めていきました。原因は「絞りユニット内の位置決め環変形 (平ではなくなっていた)」でした。6枚の絞り羽根のうち3枚が引っ掛かって浮き上がっていたのです。

この「位置決め環」を組み付ける際に変形させてしまう要素が無いのですが、どうして平ではなくなったのか不明です。なお、前述の「バリ」が残っていたアーム (グリーンの矢印) は、その「バリ」をヤスリ掛けして取り除きました。

↑オーバーホール後の光学系を撮影しています。1枚目が「常用品」のほうで2枚目が「交代用」です。

残念ながら「常用品」のほうは特に後玉表面側の経年の拭きキズが凄いので全く改善できません (前玉表面側の拭きキズも相当残ったまま)。光学硝子レンズ面のキズだけは、どんなに微細でも具体的に削れている以上清掃でキレイに戻りません。申し訳御座いません・・。

なお「交代用」ほうは当初よりとても綺麗な状態を維持しています。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。

「交代用」のほうだけは後玉も極薄いクモリすら皆無の透明度を維持しています (上の写真左側)。

↑それぞれ絞り羽根の開閉幅 (開口部の大きさ/カタチ/入射光量) も簡易検査具でチェックしつつ適正状態に戻しました (当初は2本とも閉じすぎの状態)。

また「常用品」のほうは前述の反射防止塗料のせいで、光学硝子レンズ第4群の締め付け環 (上の写真で見えている絞り羽根直前に位置しているように見える小さめの環/リング/輪っか) が適正な位置まで締め付けされていなかった為に (反射防止塗料の厚み分で締め付けが甘かったから)「甘い写り/ピント面」でした。これも反射防止塗料を除去したので鋭いピント面に変わっています。

なお「交代用」のほうは第2群の裏面側にカビが発生しており、清掃により除去できましたがカビ除去痕が点状に残っています。前玉側方向から光でコーティング層を反射させると「点状に空の雲のように浮かんでいる黒点」が数箇所視認できます。コーティング層が剥がれてしまった箇所なので元に戻す事ができません。申し訳御座いません・・。

また絞り羽根が閉じる際は「常用品」のほうは前述のとおり「正六角形を維持しません」が「交代用」は「正六角形を維持」します。但し、絞り羽根が引っ掛かる懸念は残ったままの状態ですのでご留意下さいませ。

↑上の写真は「常用品」のほうを撮っています。「黄褐色系グリース」の「粘性:中程度/軽め」を使い分けて塗布しましたが、前述のヘリコイドに1箇所縦方向に凹みがあった分を考慮してトルク調整しています。当初の状態がスカスカに感じるとの事でしたので、多少トルクを与えて僅かに重めに仕上げています。

↑こちらは「交代用」のほうです。やはり「黄褐色系グリース」の「粘性:中程度/軽め」を使い分けて塗布しましたが、こちらは前述の「直進キーをヤスリ掛けしてしまった」分が影響してしまい、極僅かにトルクムラが残っています。

「常用品」のほうはコントラスト低下が前後玉表面の経年の拭きキズの影響で改善できません。申し訳御座いません・・。その代わり光路長は適正化できたので当初より多少ですが鋭いピント面に変わっています。

「交代用」はとにかく絞り羽根の開閉で不具合が起き、その改善処置にほとんどの時間を費やしています。現状改善できていると思いますが、絞りユニットの「開閉環」を (ピンセットなどで) 触ったまま絞り羽根を開閉動作すると「まだ極僅かに抵抗を受けている」ように感じるので、いずれ症状が再発するかも知れません。その際は絞り環を回してカチカチやると正常に戻ったりします。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

もちろん光学系の光路長調整もキッチリ行ったので (簡易検査具によるチェックなので0.1mm単位や10倍の精度ではありません)、以下実写のとおり大変鋭いピント面を確保できました。電子検査機械を使ったチェックを期待される方は、是非ともプロのカメラ店様や修理専門会社様が手掛けたオールドレンズを手に入れて下さい当方の技術スキルは低いのでご期待には応えられません

↑今回試写用にワザワザ専用の純正フードをおかし頂きました。ありがとう御座います!

このモデルは後玉がバヨネット枠になっており、そこに専用のフィルターを装着するように設計されています (前述の写真は既にフィルターをセットしてある)。さらにシリーズ9フィルターを装着できるよう専用フードが用意されているというなかなかの配慮です。

なおご依頼者様のご教授により明確になりましたが、この専用フィルターは焦点距離:25mm用が先に発売され後に20mm用が登場しているとのお話です。それは確かに1963年のフィルムカメラ「RE SUPER」発売と同時に用意されていたのが焦点距離:25mmの超広角レンズなので、必然的に「レンズ銘板の焦点距離が2.5cm刻印」であり、専用フードも「2.5cm」表記だった事からも確証がとれます。

説得力のあるご説明で大変助かりました。ありがとう御座います!

↑当レンズによる最短撮影距離16cm付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

撮影した際はピント面が確実に視認できていたのですが、もしかしたらボケてしまったかも知れません。取り敢えず、開放から非常に鋭いピント面を視認できるモデルと言えます。

↑絞り環を回して設定絞り値「f5.6」で撮影しました。

↑さらに回してf値「f8」で撮っています。

↑f値は「f11」に変わっています。

↑f値「f16」です。

↑最小絞り値「f22」なのですが「回折現象」の影響が感じられません。相当な光学性能ではないでしょうか。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。