◎ KMZ (クラスノゴルスク機械工廠) ЮПИТЕР-9 (JUPITER-9) 8.5cm/f2 Π《前期型》(L39)

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この掲載はオーバーホール/修理ご依頼分のオールドレンズに関するご依頼者様や一般の方々へのご案内です (ヤフオク! 出品商品ではありません)。
写真付解説のほうが分かり易い事もありますが、今回は記録として無料掲載しています (オーバーホール/修理の行程写真掲載/解説は有料です)。
オールドレンズの製造番号部分は画像編集ソフトで加工し消しています。


当方は「ロシアンレンズ」と表現していますが、正しくは旧ソ連 (旧ソビエト連邦) 時代に生産されたオールドレンズになります。社会主義体制国家には「私企業」の概念が存在しない為、主だった企業は国家に一元管理されていました。しかしどの工場で生産されたモデルなのかが不明瞭なので、ロシアンレンズはレンズ銘板に生産工場を示すロゴマークを刻印しています。

旧ソ連では戦前ドイツで1932年に発売されたZeiss Ikonのレンジファインダーカメラ「CONTAX I」や、その交換レンズ群に注目しており今回扱うモデル『JUPITER-9 8.5cm/f2 Π《前期型》(L39)』はそのCarl Zeiss Jena製ポートレートレンズ「Sonnar 8.5cm/f2 T」を模倣したモデルとして、戦後の旧ソ連で独自の系統として新たに発展していったオールドレンズの一つです。

これは非常に興味深い話で、旧ドイツ製オールドレンズを「模倣」したオールドレンズは日本も含め数多く存在すると思いますが、模倣元のモデルと同じ光学硝子材を使って同一設計品をまず製産し、そこから独自に別の系統としての発展を遂げたオールドレンズとなるとそれほど多くないと思います。

右写真は、旧ソ連が模倣した戦前ドイツのCarl Zeiss Jena製ポートレートレンズ「Sonnar 8.5cm/f2 T」ですが、ドイツ敗戦時に占領した旧ソ連軍はCarl Zeiss Jenaの設計技師を含む人材や工場の機械設備、或いは原材料などの資材を接収しています。

その接収した人材や設備/資材をもとに、旧ソ連のKMZ (Krasnogorski Mekhanicheski Zavod:クラスノゴルスク機械工廠) で設計されたモデルが「ZK-85 8.5cm/f2 Π」として1948年に極少数作られ、1949年より本格的な量産型モデルとして再び設計し直したたモデルが「ZORKI ZK 8.5cm/f2 Π」として登場し、新たな源流となっていきます。

今回扱うモデルはその後1951年〜1958年までKMZで製産されていたモデルバリエーションにあたり、モデル銘が「ZORKI ZK」から「JUPITER-9」へと改めたられた最初のタイプです。

左図は今回扱うモデル『JUPITER-9 8.5cm/f2《前期型》Π』のレンズ銘板に刻印されている製産工場を現すロゴマークの変遷を示しています。

KMZのロゴマーク自体は戦時中の単なる台形 (プリズムを型取ったロゴマーク) からスタートして戦後には入射光が左端から入り射出していく様を現す矢印が加えられています。

一方レンジファインダーカメラ本体は、やはりZeiss Ikonの「CONTAX I」を模倣した「Kiev-10 Avtomat」を開発したので、KMZではKiev/CONTAXマウントのモデルも製産しています。

その後1957年にはウクライナのKiev (キエフ) にあるZavod Arsenal (アーセナル工場) でもKiev/CONTAXマウントのJUPITER-9が製産され始めますが、フィルター枠部分が黒色なので外観上の相違が分かり易いです。

KMZに於ける製産でL39/M39/M42マウントモデルは、後の1958年からLZOS (Лыткаринский завод Оптического Стекла:リトカリノ光学硝子工場) に移管され1988年まで製産が続けられました。

従って「JUPITER-9」はKMZ:1949年〜1958年、LZOS:1958年〜1988年、さらにArsenal:1957年〜1963年の時系列で変遷していったことが分かります。

【モデルバリエーション】
※各バリエーションの製産時期はネット上サンプルの製造番号から推測

前期型

製産工場:KMZ / LZOS
製産時期:1950年〜1963年



中期型

生産工場:LZOS / ARSENAL
製産時期:1958年〜1968年


後期型

生産工場:LZOS
製産時期:1968年〜2000年代 (?)

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少々長くなりますが、ここでマウント種別について一つ注意点があるので解説しておきます。

左図はGOI Leningrad (Gosudarstvennyi Optichaskij Institut Leningrad:GOI光学研究所) の設計諸元書から転載しました。
(筐体外装の相違は関係なし/どちらの外装にも存在するから)

L39スクリューマウント (L39 x 1)
ライカ判ネジ込み式マウントでマウント径:39mm x ピッチ:1mmですが、フランジバック:28.8mmになります。

M39スクリューマウント (M39 x 1)
旧ソ連のフィルムカメラ「Zorki (ゾルキ)」シリーズ用でマウント径:39mm x ピッチ:1mm、フランジバック:45.2mm。

Kiev/CONTAXマウント (バヨネットマウント)
「CONTAX I」を模倣したマウント種別。

上記3種類のマウント種別の中で要注意なのが「L39とM39のネジ込み式マウント」です。
マウントが同じ「ネジ山径39mm x ピッチ1mm」なのでパッと見で同一に見えてしまいます。しかしフランジバックが違うので間違えて入手するともちろんピントが合いません。

さらに厄介なことに、右写真のような「M39 → M42変換リング」が存在するので、これをネジ込んで「M42マウント」と謳って市場に平気で流しています (古い場合は真鍮製の変換リングもある)。

ゾルキ判「M39」をM42マウントに変換すれば、確かにM42マウントのオールドレンズとしてネジ込めるのですが、今度はM42マウントのフランジバック「45.46mm (或いは45.74mm)」とも違ってしまいます。何故なら、ゾルキ判のフランジバックは45.2mmだからです (相当なオーバーインフになる/距離環距離指標値で2〜3目盛分ズレる)。オーバーインフならちゃんと無限遠のピントが合うのだから良いではないかと、詳しく案内せずにオークション出品している出品者がいつも居ますね。

すると距離環に刻印されている距離指標値は「・・6 8 12 ∞」なので、下手すると6mを過ぎた辺りから無限遠合焦してしまい、ポートレートレンズとしての画角で考えると少々使い辛いと思います。いわゆる高く売りたいが為の謳い文句として敢えて詳しく案内しない出品者も居るので本当に厄介です (シロウトなので詳細は分かりませんなどの言い逃れは卑怯千万/扱う以上最低限調査して出品するべき)。

従ってL39なのかM39なのか、或いは本当のM42なのか (変換リングがネジ込まれていない) など確認が必要になります。然しライカ判「L39」を「M39」と表記している人も居るので非常に分かりにくい話になっています。当方も調達時は必ず無限遠位置が適正なのか質問して入手しているくらいです。

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上の写真はFlickriverで、Carl Zeiss Jena製「Sonnar 8.5cm/f2 T」の特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。


上の写真はFlickriverで、このモデルKMZ製「JUPITER-9 85mm/f2 Π」の特徴的な実写をピックアップしてみました。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)
※各写真の著作権/肖像権がそれぞれの投稿者に帰属しています。

一段目
SonnarもJUPITER-9も共にシャボン玉ボケが表出しますが、残存収差の影響度合いの違いがエッジの滲み方の相違に現れるので、ピント面のエッジが骨太に出てくるロシアンレンズの特徴を備えたJUPITER-9のほうが、明確なシャボン玉ボケ〜円形ボケまでの表出にメリットがあります。Sonnarのほうは、おそらく意図的に収差を残している要素があると踏んでいるので、それはそれで美しい溶け方 (滲み方) をしている印象を受けます。

二段目
ここからが両方のモデルの相違をより明確化してくる要素だと考えますが、収差ボケの質が違うので背景ボケの現れ方に違いがあると思います。基本的にピント面のエッジが繊細で細い印象のSonnarは背景ボケが煩く出てきても違和感を感じませんが、ピント面のエッジが (太いから) 明確に出てくるJUPITER-9のほうは、シ〜ンの設定をミスると背景ボケと被写体とのバランスで違和感ギリギリのところまで近づきます。その意味で撮影スキルが試されるモデルなのかも知れません。
共にポートレートレンズの焦点距離だけあって人物撮影が美しく表現されますが、画全体的な印象は2つのモデルで対極的なように感じます。

光学系は3群7枚のゾナー型ですが、今回の個体は製造番号から1953年の製産です。後のLZOS製の頃の個体になると、特に第2群の貼り合わせレンズ (3枚の光学硝子レンズを接着剤を使って貼り合わせてひとつにしたレンズ群) の接着面が硝子レンズの側面 (コバ端部分) で平坦に変わります (凹凸が無い)。

しかし、KMZ製で1957年までの製産個体に関して左写真のように第2群貼り合わせレンズのコバ端面に凹凸が存在するのを、今までにオーバーホールした個体の中で確認しています (1950年〜1957年までの製産個体6本)。

ロシアのKMZ (後のZENIT) 製光学製品を専門に研究しているグループの情報サイトzenitcamera.comの解説によると、ドイツ敗戦時にCarl Zeiss Jenaから接収した光学硝子資材を使ってKMZでは製産していたらしいので、原材料が枯渇した1954年以降は精製した在庫分の硝子レンズから少量製産していたのかも知れません。

左写真の赤色矢印が第2群の貼り合わせ面凹凸です。また第3群のカタチや曲率などもLZOS製では再設計された為にビミョ〜に相違があります (グリーンの矢印部分)。Carl Zeiss Jenaの接収硝子材を使っていると確信を以て入手するなら、1954年までの製造番号 (ロシアンレンズは基本的に/多くのモデルで製造番号先頭2桁が製産年度を表す) を手に入れるのが無難ですが、一応当方では1957年の製産個体でも同一の光学系だったことを確認しています (硝子材の色合いまでチェックしている)。

なお、レンズ銘板に刻印されている「Π」はロシア語キリル文字の「Просветляющее」頭文字でモノコーティングを意味するコトバ (反射防止) です。ラテン語/英語表記では「P」になるのでPコーティングとも呼ばれています。また今回の個体はモデル銘刻印もロシア語キリル文字なので、国内流通用か或いは東欧圏輸出用だったのかも知れません。

ちなみに「Π」コーティングをシングルコーティング (単層膜コーティング) と案内しているサイトがありますが、前述のzenitcamera.com解説でも単層膜/複層膜コーティングと掲載されており、今回光学系を清掃すると確かに両方のコーティング層を視認しました。つまり「Π」コーティングはモノコーティング (複層膜コーティング) を表しています。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。今回の個体はマウント種別が「L39」のライカ判ネジ込み式ですから、マウント部には「距離計連動ヘリコイド」を備えており、それは必然的に内部構造として「内外のダブルヘリコイド方式」と言えます (ヘリコイドが2セット存在する)。従って相応な技術スキルが無いとこのモデルの場合スムーズで軽い操作性の距離環駆動に仕上げられません。

左写真は今回の個体をバラしている途中で撮影した鏡筒の写真です。既に光学系第1群 (前玉) を取り外して、且つ絞り環も取り去っています。

赤色矢印で指し示した箇所に1本だけ光学系第2群の硝子レンズ格納筒を締め付け固定しているイモネジ (ネジ頭が無くネジ部にいきなりマイナスの切り込みを入れたネジ種) があります。

今回の個体はこのイモネジが既にバカになっており空転してしまい外れません。この光学系第2群を外さないと、その直下の絞りユニットにアクセスできません。今回の個体は当初バラす前のチェックで、絞り羽根を閉じていく時に「歪なカタチで閉じていく」のを視認していたので、何としても絞りユニットまでバラしたいワケですが外れません。

左写真は当初バラした直後 (清掃した後) の距離環を撮りました。ご覧のようにローレット (滑り止め) 部分が黄褐色化しているのは、よくサイトで語られているアルミ合金材の経年劣化ではなく「手垢/汚れ」の類です(笑)

従って、市場に流れている個体の中でシャンパンゴールドのような色合いのシルバー鏡胴がありますが、それは全体的にそのような状態と

言えます。まぁ〜気にする人はキモイかも知れませんね (当方は作業していてキモイです)(笑)

左写真は当方による「光沢研磨」処置後を撮りました。どうですかね少しはキレイになってるでしょうか・・筐体外装を磨いても何の価値もないと言っているヤフオク! の出品者も居ますが、中には所有欲が満たせると喜ぶ方もいらっしゃいます。

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。このモデルは鏡胴が「前部/後部」二分割する方式なので、ヘリコイド (オスメス) は鏡胴「後部」側に配置されています。

↑15枚あるカーボン仕上げの絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成させます。当初バラす前のチェック時点で、絞り環を回して最小絞り値まで絞り羽根を閉じていくと、1枚だけ絞り羽根が歪なカタチで駆動していたのを視認しています。

もちろんこのモデルはほぼ真円に近い「円形絞り」ですから、どうしてもそれが気になっており何としても完全解体して絞りユニットをバラしたかったのです。

原因は過去メンテナンス時に15枚のうち1枚だけ表裏を逆に刺していました(笑) 絞り羽根に打ち込まれている「キー」が垂直を維持していないなら仕方ありませんが、過去メンテナンス時のミスなら簡単に適正な状態に戻せます。そうは言っても、相応に膨れあがっている絞り羽根が4枚ほどあったので、おそらく過去の一時期に粘性を帯びた状態で油染みしていた期間が相当長かったと思います。もちろん今回のオーバーホールでは適正な状態に戻しました。

↑完成した鏡筒を立てて撮影しました。ここからは鏡筒の下側から絞り環をネジ込んでいきます。

↑まずは「絞り環用ベース環」がネジ込まれて、絞りユニット内の「開閉環」と接続することで絞り環操作が絞り羽根に伝達されていきます。

すると「絞り環用ベース環」には両サイドにスリット (切り欠き) が2箇所用意されており (グリーンの矢印)、そこに絞りユニットから飛び出てくる「開閉アーム」が刺さって連係動作をします。問題なのは、この2箇所のどちらを使えば良いのかと言うことになります (開閉アームは1本だけだから)。

↑「絞り環用ベース環」を正しい位置までネジ込んで「開閉アーム」で絞りユニットと連結します。この工程をミスると仕上がった時に鏡胴の基準「」マーカー位置と合致せず、アッチの方向に絞り環が回ってしまいます。

↑後から組み込むことができないので、ここで先に光学系前後群をセットします。当初バラす前の実写チェックで、極僅かに甘いピント面のような印象を受けましたが、実際バラしていくと第3群 (後玉) が手ですぐに回せてしまいました。おそらく過去メンテナンス時にカニ目レンチを使わず手締めしていたと推測します (経年でそこまで勝手に緩まない)。

↑絞り環をイモネジ (3本) で締め付け固定します。これで鏡胴「前部」の完成です。

↑ここからは鏡胴「後部」の組み立て工程に入ります。鏡胴「後部」側は単にヘリコイド (オスメス) とマウント部だけですから簡単です。

ヘリコイド内筒 (オス側)
ヘリコイド内筒 (メス側)
ヘリコイド外筒 (オス側)
ヘリコイド外筒 (メス側)

ライカ判L39マウントなのでマウント部に「距離計連動ヘリコイド」がある為、ご覧のようにダブルヘリコイド方式になります。内外のヘリコイド (オスメス) 2セットが互いに連係し合って駆動する仕組みです。

↑こんな感じで (ブルーの矢印) 内外ヘリコイド (オスメス) がネジ込まれて、最終的にヘリコイド外筒 (メス側) のが表側に出てきて、そこに距離環がセットされます。

↑まずはヘリコイド内筒 (オスメス) をネジ込みますが、は互いに逆方向ににネジ込まれます。ネジ込むと言っても、何処までネジ込めば良いのか、或いはどの位置で最短撮影距離位置になるのかの「原理原則」を理解していないとネジ込み位置をミスります。

もちろんミスれば無限遠位置がズレるばかりか、光路長まで変化してしまうので描写性まで変わります。

↑最後に④をネジ込んで、この段階で既にダブルヘリコイド (オスメス) のトルク調整を終わらせておく必要があります。

実は今回の個体をバラしたところ、過去メンテナンス時にこの2つのヘリコイドセットに「潤滑油」が注入されていました。グリースは一切塗られておらず、純粋に「潤滑油」だけですから、過去メンテナンス時点からそれほど時間が経っていないのではないでしょうか?

どうりでバラす前の確認でトルクが非常に軽い印象だったワケです。残念ながら今回新たにグリースを塗っても「潤滑油」相手に同じようなトルク感で仕上げることは不可能です。

確かにグリースも潤滑油も同じ「潤滑剤」ですが、粘性を持たせているほうと液化した潤滑油とではそもそも前提が違うので、どんなに粘性が軽いグリースを塗ったところで「潤滑油と同じトルク感まで軽くならない」と断言できます。

仕方ないので、当方では基本的にあまり使いませんが今回のオーバーホールでは「潤滑油」を塗りました。しかし、そうは言っても液性が強い「潤滑油」は1〜2年で揮発してしまい、突然重いトルクに変わってきます (その後スカスカになってくる)。すると間違いなくアルミ合金材のヘリコイドネジ山が摩耗していくので、当方で用意している「潤滑油」は「粘性がある特殊なタイプ」であり、今回はそれを使います。

↑当初バラす前のトルク感とほぼ同一なレベルでトルク調整が終わったので、マウント部 (指標値環を兼ねる) を組み込みます。

↑距離環を組み付けてから完成している鏡胴「前部」をセットして無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行えば完成です。

なお、距離環を締め付け固定しているイモネジ (3本) のうち2本がオリジナルではなかったので (ネジ込んでも突出して指に引っ掛かる) 入れ替えています。

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ここからはオーバーホールが完了したオールドレンズの写真になります。

↑当方では珍しく「潤滑油」を使いましたが、粘性がある分すぐには揮発しませんし、もちろんグリース業界の方に選定して頂いた (潤滑油で液性ではなく粘性などを言ってくる人は非常に希とのこと) タイプなので、トルク感もバラす前の感触に似ています (つまり適度な軽さ)。

↑光学系内の透明度が非常に高く、LED光照射でもコーティング層の経年劣化に伴う極薄いクモリすら皆無です。

↑後群側もバルサム切れなど一切無く、もちろんコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリも皆無です。光学系内の黄変化が進行してはいますが、これはいわゆる「コーティング焼け」であり (レモンイエロー) UV光の照射などで改善したりしません。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かにあるものの大変良い状態を維持した個体です。当方による「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。もちろんご指示のあった「筐体外装の光沢研磨」もキッチリ実施しました。絞り環/距離環/真マウントアダプタ飛ぶなどのローレット (滑り止め) ジャギー部分も、可能な限り経年の手垢などを洗浄しました。

↑前述のとおり「粘性のある潤滑油」を塗布しています。距離環のトルク感は「全域に渡って完璧に均一」であり「普通」人により「軽め」に感じ、ピント合わせの際は極軽いチカラだけで微動できます。ピント合わせ時に極僅かにガタつきを指に感じますが、これは内部の「直進キー」と言うパーツが経年使用で擦り減ってしまったのが影響しており、一度摩耗した金属を元に戻すことは不可能ですから改善できません。

なお、最短撮影距離位置まで繰り出すと距離環と絞り環の間に「隙間」が空きます (赤色矢印)。これは当方の整備状況が悪くて空いてしまうのではなく(笑)、設計上の仕様ですのでどの個体でも同一です。

↑もちろん当初バラす前の状態と同じように、鏡胴基準「」マーカーと絞り環側の基準「」マーカーは、同一ライン状に並んでいます (これが当たり前)。

無限遠位置 (当初バラす前の位置に合致/僅かなオーバーインフ状態)、光軸 (偏心含む) 確認や絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) と絞り環絞り値との整合性を簡易検査具で確認済です。

↑冒頭の解説のとおり、光学系第2群の硝子レンズ格納筒を締め付け固定しているイモネジが空転していた為、処置を講じて外しました。その為に亀裂がネジ穴付近に入っていますが (穴の直上) イモネジを取り出せなかったので仕方ありません (赤色矢印)。一応、ちゃんと固定できるようイモネジも当方で調達してネジ込みました (光学系は動きません/ちゃんとネジで固定できています/接着剤や固着剤の類は使っていません)。

もしもご納得頂けないようであれば、ご請求額よりご納得頂ける分の金額を「減額申請」にて減額下さいませ。申し訳御座いません・・。

↑距離環側のイモネジも2本当方で代用品を調達して入れ替えました (現状飛び出ていません)。また、筐体外装の黄変化に関してはご指示に従い可能な限り処置しましたが、こちらも含めもしもご納得頂けない場合は同様に減額下さいませ。

いろいろとご期待に添わない結果になり大変申し訳御座いません・・。

↑当レンズによる最短撮影距離1.15m付近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

この実写はミニスタジオで撮影していますが上方と右側方向からライティングしています。その関係でフードを装着していない為に絞り値の設定によりハレ切りが不完全なまま撮影しています。一応手を翳していますがハレの影響から一部にコントラスト低下が出てしまうことがあります。しかし簡易検査具による光学系の検査を実施しており光軸確認はもちろん偏心まで含め適正/正常です。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2.8」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f4」で撮りました。

↑f値は「f5.6」に変わっています。

↑f値「f8」です。

↑f値「f11」になりました。

↑f値「f16」です。

↑最小絞り値「f22」での撮影です。大変長い期間に渡りお待たせし続けてしまい本当に申し訳御座いませんでした。今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。