◎ Schneider – Kreuznach Rollei – SL Angulon 35mm/f2.8(QBM)
オーバーホールのために解体した後、組み立てていく工程を掲載しています。
すべて解体したパーツの全景写真です。
ここからは解体したパーツを実際に組み上げていく組立工程写真になります。
まずは絞りユニットと光学系前群を収納する鏡筒(ヘリコイド:オス側)です。
予め絞り連動ユニットを組み付けるための用意がされている鏡筒です。
実際に絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成させます。当レンズの絞り羽根は変わった形状をしていて互いのキー (ユニットに絞り羽根の位置を確定させ制御するための飛び出た棒状) を避け合うようなカタチをしています。そのために絞り羽根には隣接する絞り羽根のキーの「駆動範囲」を避ける意味から大きな切り込みが入っています。
距離環やマウント部を組み付けるための基台に、珍しいのですが「ヘリコイドを格納する役目の格納環」をセットします。
ところがやはり他社とは異なる構造をしていて、いきなりこの段階で絞り連動アームの連係機構部を組み付けると同時にセットする構造になっています。
実は解体してバラす際にヘリコイド(オス側)を固定しているネジを外した途端にすべてがバラバラと外れてしまい、どのように組み付けられていたのかを確認する余裕がありませんでした。従って清掃が終わり組み上げていく際には、どのような手順でパーツを組み上げていけばよいのかが判らずに長い時間いろいろと考えるハメに陥りました。
シュナイダー製レンズでは、時々このような状況に陥ります。同じ構造や共通パーツで複数のモデルを生産すると言う考え方がまったく無かったのではないでしょうか・・? ひとつひとつのモデルが全く異なる考え方で構造化されており、解体する際には注意深く観察しながらの作業が必須です。
上の写真では格納環のみならず、既に絞り連動アームの機構部が一緒に組み付けられています。先にその機構部を組み付けようとしても格納環が入りませんし、格納環を組み付けてから機構部を後から組み付けようとしても、その余地は全くありません。あくまでも「同時」に組み付けると言う方式でした。この方式に気がつくのに半日近く時間を要しました(笑)
次の写真は真鍮材でできているヘリコイド(メス側)を装着しています。ネジ込み式ではないのですね・・。フリーでスルスルと回ってしまいます。
マウント部に絞り連動アームやカムなどの連係パーツ類と絞り環を組み付けてから基台に装着します。
やはりマウント部と絞り環とは同時進行で作業しないとバラけてしまう構造でした。なかなか悩ましい構造です。
上の写真の状態で光学系を組み付けて距離環をセットし、無限遠調整と光軸確認をすれば完成です。
ここからは組み上げが完成した出品商品の写真になります。
組立がとても面倒なモデルでした。
光学系内はほぼ良い状態を維持した個体です。一部第5群にコーティング劣化がありますが写真には影響しませんでした。
他社のレンズでしたら単に絞り羽根だけを組み付ければ済むものを、このモデルは絞りユニットさえも面倒でした。
絞り羽根はキレイになり確実に駆動しています。
ここからは鏡胴の写真です。経年の使用のワリには使用感が少ない個体です。
フィルター枠に変形がありましたので修復しています。フィルターの着脱には支障ありません。そのために外観の状態表記を「実用品」として出品しています。
絞り環の色だけが鏡胴の中で違いますね・・オリーブ色です。距離環と絞り環の縁にあるクロームメッキ仕上げの「飾り環」がポイントになっており、ドイツ製レンズらしい意匠デザインをより強調しています。
光学系後群もキレイになりました。第5群にコーティング劣化がありますが写真への影響はないレベルです。
当レンズによる最短撮影距離30cm附近での開放による実写です。端正な写りをしていますね。
ボケ味が柔らかく、それでいてピント面は鋭さがあります。なかなかいい描写ですね。赤色の色合いが被写体色にとても近いです。