◎ CARL ZEISS JENA DDR (カールツァイス・イエナ) TESSAR 50mm/f2.8《後期型》(M42)

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今回完璧なオーバーホールが終わって出品するモデルは、旧東ドイツのCARL ZEISS JENA DDR製標準レンズ『TESSAR 50mm/f2.8《後期型》(M42)』
です。


《またまた拾う神の降臨! ご落札ありがとう御座います!》

ネットの何処かの修理サイトに書かれていたのですが、このテッサーを組み上げられれば一人前だと・・。今回のオーバーホールは一発で組み上げられず、何と丸一日がかり14回組み直しました。まだまだ半人前にも到達していないことをイヤと言うほど思い知らされましたね。

仕方ありません・・まだ駆けだし7年の修行中ですから(笑)

今回の個体は、当初バラす前の状態で「絞り羽根開閉異常 (開放のまま)」「絞り連動ピン連係不良」「距離環回転トルク不良」「光学系合焦不良」のオンパレードでした。しかし、調達時は絞り羽根が開放のままながらもフツ〜に使えるとの情報でした。まぁ、当方も含めヤフオク! の「転売屋/転売ヤー」なんて、そんなレベルです(笑)

当方にとっては「たかがテッサー、然れどテッサー」ですョ。当方の今の技術スキルではなかなか侮れません(笑)
一日中「え? 何でテッサーにここまで手こずるの? 何なのョそれ?!」とブツブツ文句を垂れながら作業してましたねぇ〜(笑)

市場では1万円以下でたッくさん流通しているモデルですから、当方の技術スキルはその程度なのだと是非ともお見知りおき下さいませ。途中で何度も「もぉ〜ジャンク!(扱い)」と喉元まで来て壁に放り投げたくなりました (いえ、放り投げませんが)。
つまり「初心不 (初心忘れるべからず)」とのお達しなのですョ・・。

※追伸:
出品してアッと言う間に瞬札 (僅か25分) されたので、またヤフオク! のシステムが調子悪いのかとアッチコッチ調べたくらい早かったです(笑)
ありがとう御座います!

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Tessarの歴史は相当古く1902年まで遡ります。一番最初に考案されたTessarの光学系は開放f値「f6.3」だったようです。3群3枚のトリプレット型から発展した第3群を2枚の硝子レンズで貼り合わせた3群4枚構成が有名です。

特に称賛に値する光学系でもないかも知れませんが、標準レンズ域で3群3枚のトリプレット型が流行っていた当時にすれば新たな展開だともて囃されていたのかも知れません。

   
   

上の写真はFlickriverでこのモデルの実写を検索した中から特徴的なものをピックアップしてみました。
上段左端から「シャボン玉ボケ・リングボケ・円形ボケ・背景ボケ」で、下段左端に移って「被写界深度・動物毛・ゴースト・逆光耐性」です。
(クリックすると撮影者投稿ページが別ページで表示されます)

Meyer-Optik Görlitz製オールドレンズで一躍人気を博して市民権を得た「シャボン玉ボケ」(bubble bokeh) ともて囃されていますが、何のことはありません。お膝元のTessarでもこんだけ表出します(笑)

しかし、Meyer-Optik Görlitz製オールドレンズのトリプレット型光学系が当時の設計段階で本来狙っていた描写性は、きっと別のお話であり、単にその「副産物」としてシャボン玉ボケが表出していたのではないかと推察しています。Meyer-Optik Görlitz製オールドレンズでは境界を明確にした非常に繊細で真円に近いシャボン玉ボケが表出します
後に登場した同じ3群4枚テッサー型光学系を実装したMeyer-Optik Görlitz製標準レンズ「Primotar E 50mm/f3.5 V (M42)」でさえ、同格なシャボン玉ボケを表出させられるので、光学系設計時の狙いは何か別の話だと言うのが当方の考えです (つまりトリプレット型の特権ではない)。

特にヤフオク! の出品を見ていると、何でもかんでも円形ボケをシャボン玉ボケに結びつけて出品している (つまり高値で売り捌きたいが為) 出品者を見かけますが(笑)、シャボン玉ボケとはそのコトバの如く「シャボン玉」に匹敵し得る非常に薄く細い輪郭 (エッジ) を伴う円形ボケのハズですから、当方では以下のような区分けで捉えています。

ちなみに、ヤフオク! の一部出品で「マイロヘリコイド (アダプタ)」などを装着してMeyer-Optik Görlitz製中望遠レンズ「Trioplan 100mm/f2.8」と同格なシャボン玉ボケになると案内している出品者が居ますが、表出するシャボン玉ボケの「性質」特にエッジの繊細感や明確さなどには相違が表れますから「同格」と案内するのは少々誇張的な表現だと考えます。これもやはり「売り捌きたいが為のこじつけ」的な発想ですから如何なものかと思います。
そもそも焦点距離が異なる単焦点のオールドレンズに、そのようなアダプタを介在させて本来の光学性能から逸脱した焦点で同格だなどと言うこと自体にムリがあります。

特に、現在流通している「マクロヘリコイド (アダプタ)」の低価格品にはロックもストッパーも装備していないので、オールドレンズ本体側で一旦合焦点を特定してからマクロヘリコイド側を回すか、ボケ味を事前に決めて絞り環操作を極力控えるかしないと、マクロヘリコイド側のトルクが白色系グリース塗布に拠るトルクなのですぐに動いてしまいます (つまりピント合わせが意外と面倒)。
実際にマクロヘリコイド (アダプタ) を入手してバラしてみたので内部構造もトルク感もすべて把握してますが、ヘリコイドの回転域さえもネジ山ネジ切りのエンド (ネジ山終端) で停止しているだけ (カツンと停止しない詰まった感じ) の簡素な設計ですから (中国製)、使い勝手が良いとベタ褒めにはなりません。
どんなオールドレンズでも最短撮影距離を短縮化できるのは素晴らしいことなのですが、意外とマクロヘリコイド (アダプタ) が普及していないのは、そのような使い勝手の悪さも影響しているのではないかと思います (少なくとも当方は好んで使い続けたいと思わなかったので処分してしまいました)。最短撮影距離短縮化ならば、むしろスリーブ (延長筒/エクステンション) をかませたほうが、そのまま本体の距離環操作でピント合わせできるので (絞り環操作も問題無い) 使い勝手に変化が無く適していると思います (スリーブは3種類/厚みもあれば充分です)。

【当方で表現してる円形ボケ】

  • シャボン玉ボケ:
    真円で且つエッジが非常に繊細で細く明確な輪郭を伴うまさにシャボン玉のような美しいボケ方
  • リングボケ:
    ほぼ真円に近い円形状でエッジが明確ながらもキレイではない (骨太だったり角張っていたり) ボケ方
  • 玉ボケ:
    円形状のボケが均等に中心部まで滲んでしまっているノッペリした (イルミネーションの円形ボケのようなイメージ) ボケ方

 

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。内部構成パーツ点数がご覧のとおり少ないので、確かに「初心者向け」だと思います (当方と比べないで下さい/恥ずかしいから!)。

↑絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒 (ヘリコイド:オス側) です。

↑たった5枚のフッ素加工が施された絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成させます。

冒頭のFlickriver写真をご覧頂くと分かりますが、キレイな円形ボケが開放時に限らずちゃんと出ています。もちろんシ〜ン (光) によっては角張ったボケが表出することもありますが、そもそも円形ボケは光学系設計の問題であり「円形絞り」に限定したお話ではありませんョね?

このことは、書籍解説者やライターなどにも錯覚した考え方の人がいらっしゃるようですが、当方の考えでは絞り羽根が閉じていく際のカタチ (開閉幅/開口部/入射光量) に左右される要素でもないと考えています。特に今ドキのデジタルなレンズの絞り羽根の閉じ方を見れば、自ずと「円形絞り≠円形ボケ」になると思います。

要は、入射光とそれを遮る絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) のタイミングで決まる要素なのでしょうが、それに大きく関わっているのは光学系の設計だと考えているので「円形絞り」に極端に拘る必要性は無いかと・・まぁ、心の健康面では拘りたい気持ちも分からないでもありませんが(笑)

↑こちらは距離環やマウント部を組み付けるための基台です。取り敢えずここの工程を覚えていて下さい

↑ヘリコイド (メス側) を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

↑このモデルでは距離環を後から実装できないので、ここで先に組み付けます。

↑完成している鏡筒 (ヘリコイド:オス側) を、やはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルでは全部で9箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

↑この状態でひっくり返して鏡筒の裏側を撮影しました。

  • 直進キー:
    距離環を回す「回転するチカラ」を鏡筒が前後動する「直進するチカラ」に変換する役目のパーツ
  • 絞り羽根開閉アーム:
    絞り羽根を開いたり閉じたりする捻りバネが附随したパーツ

今回のオーバーホールで延々と丸一日ハマり続けた問題箇所が上の写真です。

まず、当初バラす前の確認時点でピント面の合焦が甘かったのは、単に光学系前群の締め付けが足りていなかっただけでしたので、容易にこのモデル本来の鋭いピント面を構成するよう改善できました。

しかし、絞り羽根が開放のままだったのは経年の油染みと言うよりは、過去メンテナンス時に注入されてしまった「潤滑油」による絞り羽根の癒着が原因でした。もちろんヘリコイド (オスメス) にも潤滑油が流し込まれていました。

不幸中の幸いだったのは、白色系グリースが過去メンテナンス時に塗布されていなかったことで、古いグリースは黄褐色系グリースのままでした。白色系グリースに「潤滑油」が組み合わさると途端に「接着剤のような粘着性」を経年劣化で帯びてきますから最悪のパターンになります (この状態に陥ったヘリコイドはトルクが非常に重くなりピント合わせできないくらいの硬さに陥ります)。

それでも、今回の個体は過去メンテナンス時に注入されてしまった「潤滑油」のせいでヘリコイドのトルクムラが発生し、おそらくムリに使っていたのだと推測されます。

「直進キー」とその「直進キーガイド」には摩耗が生じてしまい適正なスライドをしない状況に陥っています。まだ救われたのは、摩耗の進行が最悪状態まで到達していなかったので、距離環を回す際のガタつきは発生していません (正確に言うと極僅かに感じはしますが)。

この工程で最初に躓いたのは「絞り羽根の開閉」であり、それに大きく関わっている「開閉アーム」の問題です。

↑別の角度から「開閉アーム」を拡大撮影しました。赤色矢印の箇所に水平方向に絞りユニット内部に伸びている真鍮製のアームが見えています。このアームはグリーンの矢印のようなチカラが及ぶことで左右に首振り動作をして、ダイレクトに絞りユニット内の「開閉環」と言う環 (リング/輪っか) を回しています。当然ながら絞り羽根を閉じた後に開放位置まで絞り羽根を戻す (開く) 必要がありますから、コイルばねが附随しており、そのチカラで開放状態になります。

まず、問題だったのは相当な期間開放状態で保管されていたようで、既にコイルばねが経年劣化で弱っていました。もちろん当方に代替で使えるコイルばねなど在庫があるワケがありません。

さらに問題なのは、このアームが2本の固定ネジで締め付け固定される点です。1つ前の写真をご覧頂ければ大きめのネジで締め付け固定されているのが分かります。しかし、このネジには「マチ (隙間)」があり開閉アームを固定する際の微調整が必要になります (つまり固定位置調整でアームの上下方向位置を可変させている)。

そのマチ幅 (隙間幅) は僅か1mm程度の話ですが、左右に2本固定ネジがあるので、その位置調整で最大1mmの幅で開閉アームの上下位置を調整できます。同様に左右方向にも1mmずつ合計1mmのマチ幅が用意されていますから、上下左右で各1mmずつの固定位置微調整が実現します。

精密な検査機械設備があって位置調整できるなら簡単な話でしょうが、当方は「手による勘に頼った整備」をしている不誠実な整備者らしいので(笑)、ここで苦しむことになります (評価と信頼が高い有名処のヤフオク! 出品者の話)。

この絞り羽根開閉動作の調整はまだ楽なほうで、この状態のまま開閉アームの固定位置調整だけで工程を進められます。凡そ2時間くらいで適正な動きをするよう開閉アームを固定完了しました。

↑ベアリング+コイルばねを組み付けてから絞り環をセットします。絞り環から伸びているアームが鏡筒の絞りユニットに連係して絞り羽根の開閉角度を伝えている仕組みです。

↑自動/手動切替スイッチ (A/Mスイッチ) のスイッチ環に、やはりベアリング+コイルばねを組み込んでからセットして最後にマウント部を組み込みます。

この状態で初めて距離環を回す際のトルク感をチェックできます。何故ならば、絞り環からの連係やマウント面にある「絞り連動ピン」からのチカラの影響を受けるので、単にヘリコイド (オスメス) だけの状態でトルク感をチェックしても最終的な仕上がりに繋がらないからです。

つまり、当方が今回丸一日がかりで14回組み直したのは、だいぶ前の工程で「」マークを附したところからここまでを14回やり直していたのです(笑)

コトバで表現すれば、ヘリコイドを再度解体してグリースを洗浄して、新たな種別と粘性のグリースを塗って、再び組み上げて距離環を回す際のトルクをチェックする作業です。

しかし、実際にはヘリコイドの直進動には必ず「直進キー」と「直進キーガイド」と言うパーツが関わるので、その「直進キー」の固定位置調整も必須作業になります。再び「固定ネジ」の話ですが(笑)、やはり1mm程のマチが用意されているので2本の固定ネジで都合1mmズレることになります。もちろん左右のみならず奥行き方向にも1mmずつズレますから前後左右で1mmずつのマチが用意されています。

つまり、ヘリコイドグリースの種別や粘性を替える前に、チェックするのはその「直進キー」の固定位置なのであり、それを確認しながら全部で7種類あるヘリコイドグリースの粘性を替えていく、いえ、正しくはネジ山が2箇所あるのでそれぞれにグリースを替えなければ意味がありません。とんでもない組み合わせの回数をチェックする必要が発生するのが、今回の不具合の話です(笑)

従ってテッサー相手に丸1日作業に陥ってしまったワケですが、これがヘリコイドのネジ山をパッと見で判断できるプロならば、何のことはない作業なのでしょう(笑) まだ修行7年の半人前以前の当方にはムリな話です。実際にグリースを変更しつつ直進キーの位置を調整しつつ、ひとつひとつ確認していくしかありません。それゆえ「手による勘に頼った整備」と貶されるワケですねぇ〜、至極ご尤もなお話です(笑)

ちなみに、当方が考えるオールドレンズ整備のプロ (定義) とは・・、

【オールドレンズ整備のプロとは】

プロに師事し下積みを経てから正しい技術と知識を習得し、その作業に於いてプロとの認識の共有を成し伝承された専門技術の職人たる『

・・です。つまりいくら修行中とは言え、独学に頼る当方にはプロの域に到達するゴールラインは存在し得ないのです。これがなかなか皆様にはご理解頂けないようですね(笑)
従って修行中のままいずれ引退する日が訪れるのは間違いないワケで、単なる「一過性だった変なヤツ」としてこのブログ共々消えていくのがこの物語の最後です。

距離環を回す際のトルク感に納得できたら、ようやく光学系前後群を組み付けて無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認 (それぞれ解説:無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅確認についてで解説しています) をそれぞれ執り行い、最後にフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成です。

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DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

↑「ジャンク扱い!」ギリギリのところで壁に放り投げるのを思い留まり(笑)、今回は何とか壁にキズを付けずに済みました (いや、壁にキズ残ってませんョ)。

正直な話、残念ながら距離環を回す際のトルクは「重め」で「トルクムラ」が残っており、諸手を挙げて歓べる仕上がりになっていませんが、当方の限界を感じた次第です。7種類のグリースをすべてチェックして、且つ直進キーの固定位置調整も「この個体の癖」を把握した上で、最善と考えられるオーバーホールに落ち着きました。

「直進キー」と「直進キーガイド」が既に摩耗しているのは間違いないと推測できます。同時に過去メンテナンス時に注入されてしまった「潤滑油」のせいでヘリコイドのネジ山まで摩耗が進行しています。ネジ山を微細な精密検査する機械設備が無いので、何とも確かなことは申し上げられません。

距離環を回すと、重くなる箇所と軽くなる箇所がある「トルクムラ」が残っており、且つ鏡筒の繰り出し時と収納時とでもトルク感が違って感じられます。これ以上改善できません。

そんなワケで、今回の出品もチョ〜赤字での価格設定です(笑) 丸一日がかりの作業はすべてタダ働きですので、もしも拾う神がいらっしゃいましたら是非とも宜しくお願い申し上げます。

↑但し、光学系内の透明度が非常に高い状態をキープしている個体です。最後まで壁に放り投げられなかったのが、実はそれが理由だったりします (いや、いつもホントに投げてませんから!)。LED光照射でもコーティング層の経年劣化に伴う極薄いクモリすら「皆無」です。

↑上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

↑光学系後群の貼り合わせレンズも大変キレイな状態を維持しています。意外とテッサーはこの第3群 (後玉) にバルサム切れ (貼り合わせレンズの接着剤/バルサムが経年劣化で剥離し始めて白濁化し薄いクモリ、或いは反射が生じている状態) が生じている個体が市場に流れていたりするので、LED光照射すれば一発で一目瞭然です。

↑上の写真 (3枚) は、光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。すべて極微細な点キズを撮っていますが微細すぎて全部写りませんでした。

【光学系の状態】(順光目視で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ
(経年のCO2溶解に拠るコーティング層点状腐食)
前群内:11点、目立つ点キズ:7点
後群内:13点、目立つ点キズ:9点
・コーティング層の経年劣化:前後群あり
・カビ除去痕:あり、カビ:なし
・ヘアラインキズ:あり
・バルサム切れ:無し (貼り合わせレンズあり)
・深く目立つ当てキズ/擦りキズ:無し
・光源透過の汚れ/クモリ (カビ除去痕除く):皆無
・その他:光学系内は微細な塵や埃が侵入しているように見えますが実際はカビ除去痕としての極微細な点キズです (清掃しても除去できません)。
・極微細な「気泡」が数点ありますが当時は正常品として出荷されていました(写真に影響しません)。
光学系内の透明度が非常に高い個体です
・いずれも全て実写確認で写真への影響ありません。

↑当初バラす前のチェック時に「絞り羽根不動 (開放のまま)」「絞り連動ピン連係不良」「A/Mスイッチ機能せず」などいろいろと生じていた絞り羽根に関わる不具合は、すべてキッチリと改善でき、絞り環指標値との絞り羽根開閉幅 (開口部/入射光量) 整合性も確認済で、確実に駆動しています。

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感をほとんど感じさせない大変キレイな状態をキープした個体です。当方による「磨きいれ」を筐体外装に施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。

↑光学系の状態から考慮すれば、これで距離環を回すトルク感に問題が無ければプラス1万円の即決価格でもいいかなと言う個体です。

【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドグリースは「粘性:中程度と軽め」を使い分けて塗布しています。距離環や絞り環の操作はとても滑らかになりました。
・距離環を回すトルク感は「重め」で滑らかに感じトルクは全域に渡り「ほぼ均一」です。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。
・内部パーツが経年摩耗している影響から距離環を回す際にトルクムラを感じる場合があります。また鏡筒繰り出し時と格納時の往復でトルクの重さが僅かに違って感じられます。

【外観の状態】(整備前後拘わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。

↑一応、当方所有のフィルムカメラに装着してマウント面の「絞り連動ピン」押し込み動作も絞り羽根開閉が適正であることも確認済です。もちろん、無限遠位置 (僅かにオーバーインフ) もチェック済ですし、絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) も絞り環刻印指標値の整合性を確認済です。

各指標値が清掃時に褪色してしまったので、当方にて着色し鮮やかさを取り戻しています。もちろん距離環の「銀枠飾り環」もクロームメッキ部分を「光沢研磨」したので当時のような艶めかしい眩い光彩を放っています。

距離環を回す時のトルク感が本当に残念です。申し訳御座いません・・。

取り敢えず、以下のオーバーホール後の実写ではピント合わせ時に「まぁ、重いかな」と感じる程度でしたので、それほど酷いとは思わないのですが、如何せん納得できた整備で仕上がったワケではありません (人によって感覚は違いますし)。どうかご留意下さいませ (従ってトルク感などを理由にしたクレームは対象外とします)。但し、描写性は本来のこのモデルの鋭さを回復できたので、まぁ、不幸中の幸いです (何もしてませんが)(笑)

↑当レンズによる最短撮影距離35cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。

↑絞り環を回して設定絞り値「f4」で撮影しています。

↑さらに絞り環を回してf値「f5.6」で撮っています。

↑f値は「f8」になりました。

↑f値「f11」です。

↑f値「f16」になりました。

↑最小絞り値「f22」での撮影です。