◆ PORST (ポルスト) PORST COLOR REFLEX MCM 55mm/f1.7 MULTI COATED LENS MACRO ⌀52 F《富岡光学製》(M42)

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※解説とオーバーホール工程で掲載の写真はヤフオク! 出品商品とは異なる場合があります。

今回完璧なオーバーホール/修理が終わってご案内するモデルは、
旧西ドイツはPORST製標準レンズ・・・・、
PORST COLOR REFLEX MCM 55mm/f1.7
MULTI COATED LENS MACRO ⌀52 F《富岡光学製》(M42)』です。


  ЯПОНІЯ З УКРАЇНОЮ!    Слава Україні!  Героям слава!  

上の文は「日本はウクライナと共に! ウクライナに栄光あれ! 英雄に栄光を!」の一文をウクライナ語で国旗色を配って表現した一文です。現地ウクライナでは民衆が「ウクライナに栄光あれ!」と自らの鼓舞を叫ぶとそれに応えて民衆が「英雄に栄光を!」と返すようです。

Slava UkrainieieGeroyam Slava

今回完璧なオーバーホール/修理が終わってご案内するモデルは、当方がオーバーホール作業を始めた12年前からの累計で当時の同型たる「CHINON製MCM」も合わせた括りで捉えると累計で10本目にあたりますが、今回扱った「PORST製MCM」だけでカウントすると僅か
4本目と言う状況です。

このレンズ銘板に「MCM」刻印があり「MACRO」表記を伴い、且つ「最短撮影距離28cm」と言う標準レンズ域のモデルにしては驚異的な近接撮影を実現したタイプ・・倍率計算で言えば1/3倍撮影が可能なタイプ・・をはたして「マクロレンズ」に組み入れて良いのかと言う疑念が当方にはとても強く残っています。

と言うのも「マクロレンズ」は最短撮影距離の接写域に特化した光学性能を最優先していると受け取っているからで、当時各光学メーカーが挙って発売していった1/2倍撮影が可能な「ハーフマクロレンズ」は、当時の各社カタログを観ても接写撮影時の光学性能ばかりピックアップして特徴を説明しているように思います。

一方今回扱った「1/3倍撮影」はどうなのかと言えば、普段の撮影として標準レンズ域の光学性能を主体的に設計しつつも「最短撮影距離で1/3倍撮影まで近接できる付加価値を有する標準レンズ域のモデル」と受け取っており、当方にとりこのモデルを指して決してマクロレンズとは受け入れられません(笑)

それを某有名処では「マクロレンズ対決」としてこの「MCMタイプ」とコシナ製AUTO-ALPA 50mm/f1.7 FOR ALPA SWISS MULTI COATED (M42)」の2本に於いて「最短撮影距離でのピント面鋭さの比較」を行っているので、マクロレンズとの区分で捉えている時点で納得できていません(笑)

ちなみに今回扱った「MCMタイプの最短撮影距離28cm」に対しコシナ製「AOTO-ALPAの最短撮影距離27cm」なので、僅差でコシナ製のほうが勝っているようです (共に倍率は1/3倍撮影)(笑) し、実際ピント面の鋭さや収差面でもコシナ製モデルのほうが優れていた
ようで勝ち進んでいました(笑)

逆に言うなら、もしもその道理で考察するなら、例えばエクステンションを介在させてマクロヘリコイドにより1/3倍撮影域まで延伸させて撮影させたら、それこそとんでもない数の標準レンズモデルがそれら対決の対象に入ってくるように思えます(笑)・・それを「レンズ銘板にMACRO表記があるモデルだけ」に限定しても、当時相応に流行っていた時期があるようなので、相当数が対抗馬に挙げられそうです(笑) それは下手すれば準広角レンズ域たる焦点距離 (例えば35mm〜28mm辺りまで) すら「MACRO刻印付」があったように思うので、なかなかに悩ましいところです(笑)

そう言う煩悶にのたうち回るのも意味がないと思うので、深く考えないのが良さそうです(笑)

  ●               

PORST (ポルスト)」はレンズやフィルムカメラなど光学製品に対するブランド銘で、会社は1919年にHanns Porst (ハンス・ポルスト) 氏によって旧ドイツのバイエルン州ニュルンベルク市で創業した「PHOTO PORST」であり、光学製品専門の通信販売会社です。
戦後に於いてPORSTは旧東ドイツの会社だとよく間違われていますが、そもそもバイエルン州は東西ドイツ分断期に於いてはアメリカ統治領だったので、旧西ドイツになり別に存在する「Porst市」とは違います。

ブランド銘としては当初1930年〜1950年代にかけては、自身の名前の頭文字を採って「HAPO」ブランドを展開していました。その後「PORST」になりますが、自社での開発や製造を一切せずにすべての商品を光学メーカーのOEM供給に頼っていた通販専門会社 (商社) になります。1996年にはベルギーの投資会社に買収されますが2002年に倒産しPixelnetを経てRingfotoに商標権が移譲されました。

ちなみに1977年にCHINONから発売された一眼レフ (フィルム) カメラ「CE-3 MEMOTRON」の取扱説明書には、そのオプション交換レンズ群の一覧に「MCM」がちゃんと列記されています (1976年までに発売されたCHINON製一眼レフ (フィルム) カメラの取扱説明書のオプション交換レンズ群一覧には記載が一切ありません)。

そもそも距離環にラバー製ローレット (滑り止め) が巻かれている点からも金属筐体が主流だった時期の後に登場していることは想像に難くありません。

実際に印刷されている当時のカタログから抜粋した標準レンズ群のオプション交換レンズ一覧が左です。

ちゃんと「f1.7 MACRO」と併記されています。この事からから今回のモデル「MCM」の発売時期が大凡推測でき1977年時点だと考えられます。

さらにこのカタログ抜粋の中で興味を引かれるモデルがあります。「50mm/f1.7 MACRO」が併記されています。

左写真がそのモデルで「CHINON 50mm/f1.7 MACRO multi coated (M42)」です。

一見すると『富岡光学製』のように見えますが(笑)、実は過去にバラしており「コシナ製」である事を確認しています。
(富岡光学製を示す内部構造や構成パーツが皆無)

このモデルは「最短撮影距離27m」でありレンズ銘板に「MACRO」刻印があるとおり、1/3倍撮影が可能な・・まさに当方が独自に区分けして呼称している「疑似マクロレンズ」と言えます・・当方ではあくまでも「マクロレンズには入らず」との受け取りです(笑)

するとここで思い浮かぶオールドレンズがあります。

左写真は冒頭でご案内したスイスのPignons S.A. (ピニオン) 社が発売していたフィルムカメラ「ALPAシリーズ」用に同じくスイスのKern-ARRAUが供給していた「MACRO-SWITAR」の後継モデルの一つで前述のAUTO-ALPA 50mm/f1.7 FOR ALPA SWISS MULTI COATED (M42)」ですね(笑)

↑今回出品の個体を完全解体した時のパーツ全景写真です。オーバーホール工程やこのモデルの当時の背景など詳しい解説はPORST COLOR REFLEX MCM 55mm/f1.7《富岡光学製》(M42)』のページをご参照下さいませ。

ここまで掲載したオーバーホール工程の写真は「全て過去扱い品/個体からの転載」です。オーバーホール済でヤフオク! 出品する際の個体写真とは一部に一致しない場合があります。

DOHヘッダー

ここからはオーバーホール/修理が完了したオールドレンズの写真になります。

↑完璧なオーバーホール/修理が終わっています。このように前玉側方向から撮影した時に放つ「グリーン色の光彩」が本当に美しいオールドレンズです。

光学系は5群6枚の拡張ダブルガウス型構成です。右構成図は今回のオーバーホールで完全解体した際に光学系の清掃時、当方の手によりデジタルノギスを使い逐一全ての群の光学硝子レンズを計測したトレース図です。

ここで実際に各群の光学硝子レンズの表裏面で「いったいどのようなコーティング層の色合いが蒸着されているのか?」をちゃんと解説しているサイトがネット上には全く観られないので(笑)、今回それを明示したいと思います。

光学系第1群前玉から順に表裏面での光彩を列記していきます・・光学系前群側の第1群/第2群/第3群/光学系後群側の第4群/、そして第5群/・・の順でした。

ここで言う表記はパープルグリーンBGブルーグリーンアンバーの各色光彩を示しています。従って光学系第2群の表裏面に蒸着されている「」はパープルアンバーの略になり、見る角度によりパープルにもアンバー色にも視認できます。また前述の表記では分かりにくいですがBGブルー成分が多いグリーンでまさに上の写真の前玉の光彩そのモノでした。

従ってこれらにより光学硝子レンズ片面で4%分の入射光を反射により損失している原理からすれば、その時「どの色成分の入射光を透過させようと設計しているのか」が見えてきて、ちょっとした事柄ですが光学系内の構成と共にまた一つ知る楽しみが増えると言うものです(笑)

ちなみに同じ「MCMタイプ」としてもCHINON製品のほうの光学系構成図は右図になり、以前のオーバーホールで完全解体した際に光学系の清掃時、当方の手によりデジタルノギスを使い逐一全ての群の光学硝子レンズを計測したトレース図です。

現実には各群の曲率や厚みがビミョ〜に違っていて (但し中には全く
同一の群も一部に顕在
) CHINON製品とPORST製品とで何かしら光学設計を変えていたことが見えてきます。

さらに右構成図は今度は「最短撮影距離50cm」の普通の標準レンズのほうの構成図になり、やはり以前オーバーホールで完全解体した際に光学系の清掃時、当方の手によりデジタルノギスを使い逐一全ての群の光学硝子レンズを計測したトレース図です。

最短撮影距離を28cmに採ってきている1/3倍撮影を実現した標準レンズである分、それを考慮した光学設計になっている (ちゃんと違いがある) のが各群を見ていくと分かりますね(笑)

↑順番が逆になりますが、上の写真は当初バラし始めた時に撮影した光学系前群格納筒 (各光学硝子レンズをまだ格納したままの状態) を横方向から撮影しており、写真上側方向が前玉側方向にあたります。

すると赤色矢印で指し示しているような「油染み」が全周に渡って都合3箇所に帯びていました。一方グリーンの矢印で指し示しているのは光学硝子レンズ締付環用の固着剤です (油染みではない)。

↑こちらも当初バラし始めている最中に撮影した「取り出した鏡筒」の写真です。写真下側方向が前玉側方向にあたります。

すると赤色矢印で指し示しているように過去メンテナンス時に塗布されている「白色系グリース」が既に「薄いグレー色」に変質が始まっている状態でハミ出ているのが分かります(怖)

さらにグリーンの矢印で指し示している鏡筒両サイドに締め付け固定してある「黄鋼材の長方形の板状パーツ」は「直進キー」なのですが、ご覧のように「既に緑青が生じている」のが分かります(泣)

これは「薄いグリーン色のグリースではなくて黄鋼材が酸化/腐食/錆びた緑青」です(泣)

直進キー
距離環を回す「回転するチカラ」を鏡筒が前後動する「直進するチカラ」に変換する役目

↑さらに取り出した鏡筒を横方向から撮影していますが、実は今まで扱ってきたこのモデルで
一つとしてちゃんと正しく締め付け固定されていないのですが(泣)、鏡筒両サイドに締め付け固定されている「直進キー」の突出量が一定になっていません。上の写真で歴然ですが右側の突出が長めなのに対し左側は短めです・・これはこの黄鋼材の「直進キー」を締め付け固定する際に向きを考えずにテキト〜に固定してしまっているのが分かります(泣)

実はこの突出量の違いが影響して無限遠位置でのトラブルに繋がっていきます・・具体的にどのようなトラブルに至るのかと言えば「無限遠位置の時だけ絞り羽根が最小絞り値まて閉じきらなくなる」と言う現象に至り、距離環を極僅かでも「∞」刻印から動かすとシャコンと音が聞こえてちゃんと適正な最小絞り値まで絞り羽根が閉じるようになります (つまり∞の位置の時だけf11で停止してしまう)。

今回の個体はその現象が現れていたようで (両サイドの直進キーの向きが違うので当然現れるべき不具合に決まっている) 過去メンテナンス時の整備者は、それを解消すべくいろいろあ〜だこ〜だ「ごまかしの整備」をやっています(笑)

↑こちらもバラしている最中に撮影した写真ですが、鏡筒を取り出した後に内外ヘリコイド群 (このモデルはダブルヘリコイド方式なので) と共に、やはり黄鋼材の酸化/腐食/錆びにより緑青が生じている「薄くグリーン色に変質している白色系グリース」が「直進キーガイド (溝)」に残っています (直進キーガイドにまで白色系グリースを塗ったくっている)。

・・しかもダブルヘリコイドのほうもネジ山が「白色系グリース」でビチャビチャです(涙)

↑まだまだバラしている途中で撮影した写真が続きます (どんな状態だったのかご報告の意味合いもあり解説しています/過去メンテナンス時のごまかしの整備状況とも言えます)。絞り環を外したところを撮りましたが、ご覧のように「白色系グリース」がビッチリです(笑)

↑ヘリコイド筒の「外ヘリコイド側」ネジ山を撮りました。過去メンテナンス時に塗布した時は確かに「白色」だったのでしょうが、ちょっと分かり辛いですが既に「薄くグレー色に変質」しているのが分かります。グリーンの矢印で指し示している箇所は「直進キーガイド (溝)」ですが、黄鋼材の酸化/腐食/錆びによる緑青の痕跡が分かる色合いです。

↑こんな感じで内外のダブルヘリコイド筒が互いに反対方向でネジ込まれていくので無限遠位置になると上の写真のように2つのヘリコイド (オスメス) 群が全てキレイに格納状態に至ります (白色系グリースでビチャビチャですが)(笑)

↑こちらの写真もバラした後ですが既に当方の手により溶剤で洗浄作業が終わっているマウント部です。赤色矢印で指し示している箇所にちょうど「絞り環」がハマりますが、何とこの個体は過去メンテナンス時に「研磨して削ってある」と言う酷い処置を講じています(涙)

上の写真のちょうど白っぽく写っている箇所がガリガリと削られていてザラザラしています。ちなみにグリーンの矢印で指し示した箇所に「クリック感を実現するベアリングが入る」穴が空いています。

・・さすがに今までの12年間でここを削っていた個体は初めてです!(涙)

↑上の写真は解説用に過去扱った時の「同じPORST製MCMタイプのマウント部」を赤色矢印で指し示しています (転載写真で今回の個体ではありません)。本来はこのようにちゃんとキレイにメッキ加工されているので削らなくてもちゃんとグリースを塗るだけで気持ち良いトルク感で操作できる絞り環に仕上がります (クリック感もちゃんと小気味良くできます)・・どうして削ってしまったのでしょうか???

↑さらにオドロキだった事実があり、上の写真も当方の手による溶剤による洗浄が終わった時点での撮影ですが、赤色矢印で指し示している箇所は「磨き研磨」を施したので「本来の製産時点に戻りメッキ塗色が見えている状態に戻った」次第ですが、グリーンの矢印の箇所だけは処置できず、そのままバラした後の状態のまま残っています。

・・何と「マウント部内部を艶消し塗料で着色していた」のです!(驚)

さすがにこんな所為を施してある個体も今までの12年間で1つもありませんでした!(驚)
赤色矢印のように、別に艶消し処理などせずとも充分に製産時点のメッキ塗色のままで黒色になっています。多少の光沢があるか、或いは完全な艶消しなのかの違いですが、そもそも製産時点に処置していない所為をどうして施す必要があるのか、どう考えても当方には「???」です!(驚)

↑上の写真も当方による「磨き研磨」が終わって状態ですが、やはりグリーンの矢印の箇所
・・底面部分と内壁部分に過去メンテナンス時に「艶消し塗料を着色」していました。

当初バラしている最中に締付ネジを外したのに「絞りユニットが外せない/完全固着している」状態だったので、どうしてそんな事をするのか「???」でしたが、まさか艶消し塗料を塗っているとは全く想像できませんでした!(驚)

結局、この艶消し塗料の塗膜の厚み分で絞りユニットに圧が加わり、絞り羽根開閉に異常が起きていた事が伺えます。

↑こちらは取り外した「板バネ」ですが、マウント部内部に締め付け固定される「絞り環用のベアリングを押し出す役目の板バネ (1枚)」及び「A/M切替スイッチ用ベアリングを押し出す役目の板バネ (1枚)」の合計2枚が必要なのですが、どういうワケかこの個体にはスイッチ側に「2枚の板バネが重ねられて締め付け固定されていた」次第です。

・・従ってスイッチ環の操作性が相当固くなっていたと思います(泣)

その影響が現れている箇所が次の写真での解説パーツになります。

↑こちらはマウント部内部に組み込む「マウント面から飛び出る絞り連動ピンに連係して動く操作アーム」を取り外して撮影しています。

すると先ずグリーンの矢印で指し示した箇所に固着剤が固められていました。さらに赤色矢印の箇所は「故意にワザと曲げられていた」のが分かります。

赤色矢印で指し示している箇所を拡大撮影しました。長方形の板が附随しますが、その板が半分曲げられています。この長方形の板はマウント面から飛び出ている絞り連動ピンが必要以上に押し込まれた時に「その余分なチカラを逃がす目的で反応させる/チカラを受ける板」なのですが、そこが内側に曲げられているので「絞り連動ピンが必要以上に押し込まれた時の反発力をより強く変化させている処置」なのがこれだけで判明します・・つまり過去メンテナンス時の整備者の手により曲げられているのです。

・・しかも附随している捻りバネまで固着剤でガッチリ固められていました。

とにかく今回の個体はありとあらゆるネジ類、バネ類、スプリングが全て「緑色の固着剤」で固められていたので、10年以上昔の整備ではない事が分かります (10年以上昔の整備で使われていたのは当時市場流通していた赤色の固着剤だから)。

そもそも「白色系グリース」が塗布してある時点で10年以内の過去メンテナンスであるのが大凡見当が付きます。

↑同じ操作アームをひっくり返して反対側を撮影していますが、今度はグリーンの矢印で指し示した箇所にまで固着剤が固められていました。実はこの金属棒はシリンダーネジで円柱部分がカムの働きを持ち「絞り環に備わるなだらかなカーブに突き当たる」原理になっています。

するとその突き当たった時のなだらかなカーブの勾配量に従い「絞り羽根の傾く角度が決まる原理」なのですが、このシリンダーネジの根元にまで固着剤が固まっていたので「その分厚みが増えてしまい絞り羽根の開閉角度が影響を受けていた」事実が判明します。

実際その固められていた固着剤を除去する前時点での絞り羽根の傾きをチェックしたので「事実」として判明しているのです。特に最小絞り値側での絞り羽根の閉じ具合が全く変わってきます。

↑さらにマウント部内部の話が続きますが、赤色矢印で指し示している引張式スプリングも固着剤で固められていたのですが、向きが反対方向を向いたまま固まっていました。

反対向きに向けられたまま固着剤で固めていた理由は明白で(笑)、反対向きに固定してしまう事で「引張時のチカラが強まるから」と指摘できます。

ところが前述のとおりこのモデルの設計者は「捻りバネと引張式スプリングとのチカラのバランスの中で絞り羽根開閉駆動を正常に制御していた」ワケですから、その捻りバネと引張式スプリングのチカラを故意にワザと変えてしまう所為は「バランスが崩れて絞り羽根開閉異常を誘発する懸念が高くなる」のに、それを敢えて執っています。

逆に言うなら捻りバネの両端を固着剤で固めてしまった時点で既にチカラバランスが崩れているので「絞り羽根開閉異常」の因果関係に至っていたでしょうし、もっと言えば既に絞りユニットに圧が加わっていた (鏡筒内部を艶消し着色していたので) 時点で絞り羽根の開閉制御が狂っているのは想像に難くありません(笑)

全て過去メンテナンス時の整備者が整備中に自ら蒔いた種ですが(笑)、それを全く理解できていません(笑) その「ごまかしの整備」の一環としてこのように引張式スプリングの向きを反対方向で固めて強めているのです (ヤッている目的が簡単にバレてしまう)(笑)

↑実際は上の写真のように操作アーム方向に向いている必要があるのに「反対方向を向いていた為に引っ張るチカラが強く変わってしまっていた」次第です(泣)

このマウント部内部で本当に必要な固着剤を使うべき箇所は「赤色矢印で指し示した1箇所だけ」であり、引張式スプリングが外れないようにする為に固着剤を当方でも塗布しています (現在流通している緑色の固着剤)。

ところが今回の個体をバラした直後に固着剤 (緑色の固着剤) で固められていた箇所は赤色矢印の1箇所にプラスしてグリーンの矢印の箇所です(笑) しかも前述のとおりブルーの矢印で指し示している長方形の板も曲げられていました (上の写真では本来の正しいカタチに当方が既に戻してある)。

例えば「捻りバネ」の両端を固着剤で固めてしまうと「本来チカラの反発力として伝達されるべき捻り部分のチカラが変わってしまう」ので、基本的に「捻りバネ」の両端は固着剤で固めません (製産時点の話)!

同様に引張式スプリングも適正なチカラを及ぼすならその「向き」は或る一つの方向なので、反対方向を向いたまま固めるのは間違っています。もちろん製産時点で曲げられていないパーツをムリに変形させるのも「製産時点に処置していない内容」なので、そんな所為を施す時点でおかしいですョねぇ〜???

・・どうしてそういう余計な所為を講ずる必要があるのでしょうか???

↑過去メンテナンス時の整備者は、ハッキリ言ってこのようなダブルヘリコイド方式で互いが反対方向に回転していく原理のヘリコイドを組み上げできる技術スキルを持つ整備者なので「シロウト整備はムリで整備会社に在籍する整備者」なのが歴然です。

・・ところが上の写真で示した2種類のネジ種の使い方すら間違っています!(怒)

シリンダーネジ (円柱にネジ部が備わる) を2本と、皿頭ネジの合計3本を使ってフィルター枠筒 (鏡筒が入る場所のヘリコイド筒で外ヘリコイドのオス側) を締め付け固定するのですが、過去メンテナンス時の整備者は「どうして1本だけ皿頭ネジなのかが全く理解できていない」のです!(怒)

・・逆に言うなら、どうして他の2本はシリンダーネジを使うのでしょうか???

マウント部内部のパーツの使い方は間違っているし、不必要な箇所にまで固着剤を塗りまくっているし、ビチャビチャに「白色系グリース」は塗りまくるし、直進キーの向きは間違えるし・・いったいどうしてそういうスキルレベルで整備会社で働いていられるのですか???

このような整備者が勤務している整備会社が何処なのかはだいたい見当が付いていますが、実際に現場の作業風景を見ているワケではないので特定できていません・・現在も営業している意外と大手の整備会社です。

確かに当方が携わった個体はたかが12年間で3,000本を越えた程度の本数ですが、それらの中で半数以上に及ぶ個体に不必要な固着剤や間違ったネジ種の使い方などザラに現れています。

どうして皿頭ネジと丸頭ネジの使い方が分からないのか??? どうしてイモネジを正しく使えないのか??? どうして不必要な箇所にまで固着剤を塗りまくるのか???

このように指摘すると、今度はマニアの方から誹謗中傷メールが着信します(笑) どうしてサービスマニュアルも無いのに製産時点が分かるのだ???・・と(笑)

サービスマニュアルなど今までに見た事は1度もありませんが (ハッキリ言って必要ない)(笑) 使っているネジ種やバネ類、或いはパーツや構造を知れば「自ずとどのような役目や目的で設計者が考案したのかが理解できる」からです(笑) 逆に言うなら皿頭ネジが必要な箇所に丸頭ネジを使うと「何が起こるのか???」をちゃんと明言できるのです。何のためにイモネジを使うのか、イモネジの締め付けるチカラの程度はどのくらいなのか、何の為に捻りバネを使っているのか、どうしてその場所がスプリングではダメなのか・・何から何まで逐一明言できる/理由がある/根拠があるからこそサービスマニュアルなど一切手元に無くても指摘できるのです。

それが分からないまま整備しているのがシロウトレベルの話なのであって「本来在るべき姿」とは、そのオールドレンズの内部構造と使っているパーツにネジ種やバネ類を一つ一つチェックしていけば「自ずと決まってくる」のが当たり前なのです。

ちゃんと自ら整備できないクセに誹謗中傷だけはシッカリメールしてくるから笑ってしまいます(笑)

↑当方でのオーバーホール工程が全て完了した後に附属で同梱頂いたK&F CONCEPT製マウントアダプタに装着した状態を撮影しました。オールドレンズ側の基準「」マーカー (赤色矢印) の位置に対して、マウントアダプタに装着するとグリーンの矢印で指し示した位置が真上に来るべきですが、ズレています (後でちゃんと直してありますが)。

↑光学系内の透明度が非常に高い状態を維持した個体です。LED光照射でもコーティング層経年劣化に伴う極薄いクモリが皆無です。但し前玉の外周、本当にコバ端の位置に1箇所だけ点状のカビ除去痕が白っぽく残っています。

↑光学系後群側もコーティング層経年劣化の極薄いクモリが皆無です。後玉の中心部分に極僅かに微細な拭きキズ/擦りキズが円弧を描いて少しだけ残っています。

↑6枚の絞り羽根もキレイになりA/M切替スイッチや絞り環共々確実に駆動しています。絞り羽根が閉じる際は「完璧に正六角形を維持」したまま閉じていきます。

結局、いろいろあ〜だこ〜だ指摘しましたが、根本的な部分で過去メンテナンス時の整備者がネジの使い方を間違ったり固着剤を塗りまくったり、余計にカタチの変形を処置したり削ったりと「ごまかしの整備」を施して何とか組み上げていたようですが、それら全てを100%本来の製産時点の状態に戻して (黄鋼材の直進キーも正しい突出に戻して) 組み上げたら「何一つ瑕疵が起きない/現れない」のは至極当然な話です(笑)

・・ご報告すべき事柄は一つも御座いません!(笑)

ここからは鏡胴の写真になりますが、経年の使用感が僅かに感じられるものの当方にて筐体外装の「磨きいれ」を施したので大変落ち着いた美しい仕上がりになっています。「エイジング処理済」なのですぐに酸化/腐食/錆びが生じたりしません。

当方ではヤフオク! で流行っている「抗菌剤/除菌剤による清掃」などは絶対に実施しません。これをやると薬剤に含まれている成分の一部が金属の表層面に対して酸化/腐食/錆びを促す結果に至るので、早ければ1年、遅くとも数年でポツポツと錆が表れ始めます。

詳細は厚労省の「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」が詳しく解説しています。

↑塗布したヘリコイドグリースは「黄褐色系グリース」を使い、当方独特な (皆様が喜ばれている) ヌメヌメッとしたシットリ感漂うトルク感に仕上げてあります。距離環を回すトルクは「このモデルのピントの山/ピークがまだかまだかと少しずつ迎える」ので全域で均等に「軽め」或いは「普通」程度に仕上げました。

ピントのピーク/山位置での前後微動は掴んでいる指の腹に極僅かにチカラを伝えるだけで微動しますから操作性も良くなっています。当初バラす前も決して重いトルク感ではありませんでしたが、バラしてみてあれだけビチョビチョに「白色系グリース」が塗られていると、既に光学系前群の格納筒にまで油成分が廻っていたのを考えれば「安心材料」になると思います。

↑完璧な仕上がりです。特にご報告すべき瑕疵内容はありません。

オーバーホール/修理ご依頼者様皆様に告知しているとおり、もしもお届けしたオールドレンズの仕上がり状況にご満足頂けない場合は、そのご納得頂けない要素に対して「ご納得頂ける分の金額をご請求金額より減額」下さいませ。
減額頂ける最大値/MAX額は「ご請求金額まで (つまり無償扱い)」とし、大変申し訳御座いませんが当方による弁償などは対応できません・・申し訳御座いません。

↑念の為に当方所有の日本製マウントアダプタに装着して確認しています・・もちろん一切問題ありません。

↑同様、今度は中国製ですがK&F CONCEPT製マウントアダプタにも装着してチェック済です。瑕疵は一つも御座いません。

↑当レンズによる最短撮影距離28cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。カメラボディ側オート・ホワイト・バランス設定はOFFです。

各絞り値での「被写界深度の変化」をご確認頂く為に、ワザと故意にピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に電球部分に合わせています。決して「前ピン」で撮っているワケではありませんし、光学系光学硝子レンズの格納位置や向きを間違えたりしている結果の描写でもありません (そんな事は組み立て工程の中で当然ながら判明します/簡易検査具で確認もして います)。またフード未装着なので場合によってはフレア気味だったりします。

↑絞り環を回して設定絞り値「f2」で撮影しています。

↑さらに回してf値「f2.8」で撮っています。

↑f値は「f4」に上がっています。

↑f値「f5.6」です。

↑f値「f8」になりました。

↑f値「f11」です。まだまだ「回折現象」の影響が視認できないと思います。

 回折現象
入射光は波動 (波長) なので光が直進する時に障害物 (ここでは絞り羽根) に遮られるとその背後に回り込む現象を指します。例えば、音が塀の向こう側に届くのも回折現象の影響です。
入射光が絞りユニットを通過する際、絞り羽根の背後 (裏面) に回り込んだ光が撮像素子まで届かなくなる為に解像度やコントラスト低下が発生し、眠い画質に堕ちてしまいます。この現象は、絞り径を小さくする(絞り値を大きくする)ほど顕著に表れる特性があります。

被写界深度
被写体にピントを合わせた部分の前後 (奥行き/手前方向) でギリギリ合焦しているように見える範囲 (ピントが鋭く感じる範囲) を指し、レンズの焦点距離と被写体との実距離、及び設定絞り値との関係で変化する。設定絞り値が小さい (少ない) ほど被写界深度は浅い (狭い) 範囲になり、大きくなるほど被写界深度は深く (広く) なる。

焦点移動
光学硝子レンズの設計や硝子材に於ける収差、特に球面収差の影響によりピント面の合焦位置から絞り値の変動 (絞り値の増大) に従い位置がズレていく事を指す。

↑最小絞り値「f16」での撮影です。このたびのオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。引き続き2本目の作業に入ります。どうぞよろしくお願い申し上げます。