◎ Kern AARAU (ケルン・アーラウ) KERN-MACRO-SWITAR 50mm/f1.8 AR(L39)

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今回の掲載はオーバーホール/修理ご依頼分のオールドレンズに関する、ご依頼者様へのご案内ですのでヤフオク! に出品している商品ではありません。写真付の解説のほうが分かり易いこともありますが、今回に関しては当方での扱いが初めてのモデルでしたので、当方の記録としての意味合いもあり無料で掲載しています (オーバーホール/修理の全工程の写真掲載/解説は有料です)。オールドレンズの製造番号部分は画像編集ソフトで加工し消しています。

前回このモデルを初めてオーバーホールしたのですが、今回の個体は同型モデルながらも内部の仕様が異なるタイプでしたので「初めての扱い」として掲載しています。このような高価で貴重なモデルのオーバーホール/修理をご依頼頂き、この場を借りてご依頼者様にお礼申し上げます。ありがとう御座います!

当初のご依頼ではマウントは「LMマウント」として承りましたが、届いた個体を確認すると「ライカスクリューマウント (L39)」に日本製の「L39→LMアダプタリング (50-75)」が装着されていました。従って「L39マウント」と言うことになるのですが、バラしてみると本体は「ALPAマウント」になっており「ALPA→L39マウントアダプタ」が装着されていました。

単なる当方の無知が招いた笑い話なのですが、もしも、事前にご存知であればご案内頂けると助かります・・知らないと「ALPA→L39マウントアダプタ」部分が本体のマウント部だと考えて当初バラす際に「構造検討」してしまいます (マウント改造レンズなのか?)。

と言うのも、「ALPA→L39マウントアダプタ」の側面には固定ネジとは考えられない (1箇所の固定なので) ネジが締め付けられており、集中的に2本のサイズが異なるネジで締め付けされていました。またクッション機構を装備したロックピンも備わっており、バラす際には「どうして、そのようなネジとロックピンがそこにあるのか?」さんざん考えてしまった次第です。1時間ほど観察して考えた挙げ句、どうしても理由が判らずに勇気を振り絞って恐る恐る解体したところ (どう考えても原理的にネジの位置がおかしい)・・何のことはありません単なるマウントアダプタだったワケです(笑) 何しろ、このモデルのこともALPAカメラのことも全く知らないのでお恥ずかしい限りです・・スミマセン。

1951年にスイスのKERN-AARAU (ケルン・アーラウ) から発売された「KERN-AARAU SWITAR 50mm/f1.8 AR」が初代のモデルですが1958年にモデルが代わり今回の『KERN-MACRO-SWITAR 50mm/f1.8 AR』になりました。

【モデルバリエーション】
オレンジ色文字部分は最初に変更になった諸元を示しています。

初期型:1951年発売
モデル銘:KERN-SWITAR 50mm/f1.8 AR
光学系:5群7枚アポクロマート
絞り機構:手動絞り (実絞り)
絞り羽根枚数:15枚
最短撮影距離:53cm
フィルター:専用Aタイプ

中期型-Ⅰ:1958年発売
モデル銘:KERN-MACRO-SWITAR 50mm/f1.8 AR
光学系:5群8枚アポクロマート
絞り機構:自動絞り
絞り羽根枚数:9枚
最短撮影距離:28cm
フィルター:専用Bタイプ

中期型-Ⅱ:1958年発売
モデル銘:KERN-MACRO-SWITAR 50mm/f1.8 AR
光学系:5群8枚アポクロマート
絞り機構:自動絞り
絞り羽根枚数:9枚
最短撮影距離:28cm
フィルター:専用Bタイプ

後期型-Ⅰ:1968年発売
モデル銘:KERN-MACRO-SWITAR 50mm/f1.9 AR
光学系:5群8枚アポクロマート
絞り機構:自動絞り
絞り羽根枚数:9枚
最短撮影距離:28cm
フィルター:専用Bタイプ

・・こんな感じです。モデルバリエーションとして捉えると大きくは2種類にしかチェンジしていないのですが、中期型に関しては細かい様々なバリエーションが存在しているようです。

ネット上の解説では今回扱った距離環ローレット (滑り止め) が大柄なタイプを「最終型」のバリエーションと案内していますが、製造番号から遍歴を調べてみる (調査サンプル21本) と距離環ローレット (滑り止め) の意匠で捉えた場合は2つのバージョン「中期型-Ⅰ」「中期型-Ⅱ」が存在しているようです。ところが、製造番号の中ではそれらのタイプは混在しておりバラバラに顕在していました。このことから (おそらく) セットするフィルムカメラ本体との兼ね合いで両方のバージョンを生産し出荷していたのではないかと推測しています。

もっと細かく言えば、今回の個体は絞り環が「梨地銀枠ローレット (滑り止め) 」なのに対して上の写真の黒色鏡胴モデルは「黒色ローレット (滑り止め) 」の絞り環になっており、製造番号で観ると若い番号であるにも拘わらず近い製造番号で黒色の絞り環の個体があったりします。従って、同時期に幾つかのバリエーションで出荷していたのではないか (製造番号はシリアル値のまま符番) とみています・・。

ネット上の解説では、光学系は当初の1951年発売初期型から中期型までは5群7枚のアポクロマートレンズとの解説で「後期型」が発売された1968年に5群8枚のアポクロマートレンズに設計変更したと案内されていました。

しかし、バラしてみたところ今回の個体は「中期型-Ⅰ」にあたりますが、既に5群8枚の光学系設計に変わっており、且つ絞りユニットは第2群の次に配置されていました。そのことから、当方では逆に1958年時点 (の中期型発売時期) では最短撮影距離28cmまで短縮化させるために光学系を再設計して5群8枚構成に代えてきたとみています・・従ってネット上の解説とは少々異なる考えで、結果的にモデル銘にも「MACRO」が附随して『KERN-MACRO-SWITAR 50mm/f1.8 AR』にかわったと考えていますが、実際は同じ「中期型-Ⅰ」でも内部の構造が全く異なる5群7枚の光学系設計の個体もありました (しかし製造番号は今回の個体よりも後のシリアル値です)・・よく判りません。Flickriverにてこのモデルの実写を検索したので興味がある方はご覧下さいませ。

オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

↑ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。今回このモデルを初めて (ほぼ) 完全解体に至りました (と言っても空転ヘリコイドとシャッターボタン部は解体していません)。絞り環と空転ヘリコイドの2箇所は「固定環」で締め付け固定されているのですが特殊な専用工具が必要であり前回の整備では外せませんでした。今回は、絞り環側の固定環を専用工具を使わずに回すことができたのでラッキ〜でした (逆に言えば、過去にメンテナンスされていた証です)。

↑絞りユニットと光学系前後群を格納する鏡筒です。今回初めて絞り環が附随していない状態 (つまり完全な鏡筒だけの状態) でバラすことができました。当初バラした直後 (清掃前) の時点では鏡筒内部にグリースが薄く塗られていました。上の写真で鏡筒の縁に刻まれている「22」と言う数値は当方がマーキングしたのではなくバラした状態で刻まれていました・・おそらく生産時の個体を確定するマーキングだと推測します (同じ番号が複数の構成パーツにマーキングされています)。

↑清掃が終わった絞り羽根を絞りユニットに組み付けていくワケですが、絞りユニットはこのような構造をしています。上の写真は後玉側方向から撮影していますが絞りユニットには「ベアリング x 30個」が組み付けられており絞り羽根を組み付ける「位置決め環 (真鍮製)」がクルクルと360度回るようになっています。当初オールドレンズを持った時に内部からカラカラ音が聞こえていたのですが犯人は、このベアリングでした。見たところベアリングには特に経年のサビなどが生じていないようなので今回は絞りユニットをバラしていません (そのまま清掃と「磨き研磨」のみ実施しています)。

ご覧のように「コイルばね」を絞りユニットの両サイドにグルッと巻いており、1箇所で「伝達アーム」でとりまとめています。この「伝達アーム」はシャッターボタンから飛び出ている「回転キー」に取り付けられて、結果的に絞りユニットの向きをコントロールしている役目になります。

↑コイルばねと伝達アームの接続部分を拡大撮影しました。コイルばねは特に伸びたりしていないようです・・この接続部分のコイルばねが伸びていると適正な制御ができなくなるので必ずチェックが必要になります。

↑同様に絞りユニットの反対側のコイルばねの固定箇所を撮影しました・・こちらも特に伸びたりしていません。つまり絞りユニットに附随するコイルばねは2本とも均等に適正なチカラを及ぼす状態をキープしていると判断できます。

↑絞りユニットを組み込んだ状態で鏡筒を立てて横から撮影しました。絞りユニットからは3本目のコイルばねである「戻し用コイルばね」が飛び出ています (常に開放状態まで絞り羽根を戻そうとするチカラを及ぼす役目)。

  • 直進キー②:
    距離環を回す「回転するチカラ」を鏡筒が前後動する「直進するチカラ」に変換する役目のパーツでてすが、このモデルは2種類の直進キーを複合的に使っている初めて経験する方式です。
  • 伝達アーム:
    シャッターボタンの「回転キー (絞り羽根開閉キー)」に接続させて2本のコイルばねを使って絞りユニットを回転させるためのアーム。
  • ヘリコイド (オス側):
    空転ヘリコイドである「ヘリコイド (メス側)」がとても長い距離のネジ山であるのに対し「ヘリコイド (オス側)」は短いネジ山です。
  • 制限キー:
    距離環を回した際に無限遠位置「∞」と最短撮影距離「11 1/4″ (28cm)」の2箇所でヘリコイドを停止させるためのヘリコイド駆動域を決めているキー。

↑絞りユニットを鏡筒内に組み付けてから9枚の絞り羽根を組み込んだ状態で一旦撮影しています。この時もう1本の別のコイルばね (3本目) を絞りユニットの「内壁」に固定します (上の写真で絞りユニット内部から飛び出ているコイルばね)。当初バラした時点では、この3本目のコイルばねの両端 (ネジ止めされる箇所) の螺旋が2周分ずつ伸びきっていました・・このことから過去にメンテナンスされていたことが判明します。過去のメンテナンス時には絞りユニットを解体する際にコイルばねが取り付けられていることを知らずに引っ張って外そうとしてしまい、結果的に3本目のコイルばねの両端が伸びてしまったのだと推測できます。

この3本目のコイルばねと前述の絞りユニットの周りにグルッと巻かれていた2本のコイルばねは互いに異なるチカラを絞りユニットに対して及ぼすように設計されています (共に引張コイルばねです)。上の写真の解説のとおり、シャッターボタンの「回転キー」に接続される、絞りユニット外壁にグルッと巻かれた2本のコイルばねは赤色矢印の方向にチカラを及ぼそうとしています ()。片や絞りユニットから飛び出ている3本目のコイルばねは逆方向のグリーンの矢印にチカラを及ぼします ()・・つまり互いに逆方向にチカラを及ぼし均等な状態なのが適正状態と言えます。

絞りユニットのベアリングを装備した真鍮製の環 (リング/輪っか) は「絞り羽根位置決め環」なので、絞り羽根の表裏に1本ずつ打ち込まれている「キー (金属製の突起棒)」の1本が刺さり絞り羽根の固定位置を確定させています。

↑絞りユニットの上に「絞り羽根開閉幅制御環」を被せますが、この時に絞りユニットの内壁に取り付けた3本目のコイルばねを「絞り羽根開閉幅制御環」に、やはりネジ止めします。ネジ止めした後に絞りユニット内に組み込むのですが、同時に3本目のコイルばねを引っ張りながらチカラを蓄えた状態でセットしなければイケマセン。ちなみに「絞り羽根開閉幅制御環」とは上の写真で絞り羽根の上に被さっている環 (リング/輪っか) のことで、絞り環の設定絞り値に見合う角度で回転して絞り羽根の開閉角度を制御している環 (リング/輪っか) になります。

実は、この工程をクリアするためだけに4時間を費やしました (つまり上の写真の撮影は前出の写真を撮ってから4時間経過しています)・・どうして、そんなに時間がかかってしまったのか?

絞りユニット (真鍮製の位置決め環の方) はベアリングで360度クルクルと回るようになっています。片やこの工程で被せる「絞り羽根開閉幅制御環」も3本目のコイルばねで適度なチカラで引っ張られている状態で組み付けなければイケマセン。つまり、指を離すとアッと言う間に絞りユニットが回ってしまい絞り羽根がバラけてしまう状況の中で3本目のコイルばねを引っ張るワケで・・それはそれは相当厄介な工程でした(笑) 手は2つしかありませんし絞りユニットは鏡筒の内部に入っていますから固定ができません。何とか絞りユニットを固定する工夫を考えつくのに少々時間がかかり、その後3本目のコイルばねをどの程度引っ張れば良いのかいろいろと試しながら何度も何度も組み付け直した次第です。上の写真は4時間後に、ようやく適正な絞り羽根の閉じ具合に収まった状態で撮影したワケです・・前回の整備でも、この工程で時間がかかっていますから、このモデルの最初のハードルは絞りユニットを完成させる工程になりますね。

↑絞りユニットは (正しくは絞り羽根開閉幅制御環は)、そのままでは固定されていないので (鏡筒を傾けると途端に絞り羽根が再びバラけてしまう) 固定の役目も担っている光学系前群 (第2群) を先に締め付け固定してしまいます。

↑上の写真 (2枚) は、完成した鏡筒を両サイド撮影したものです。

↑この状態で絞り環を組み上げていきます。まずは絞り環のベース環でもある「被写界深度インジケーター用の深度環」をイモネジ (ネジ頭が無くネジ部にいきなりマイナスの切り込みを入れたネジ種) 3本で組み付けます。次に下から鏡筒「被写界深度環」との間の隙間に「インジケーター環」を差し込みます (グリーンの矢印)。オレンジ色の部分が絞り環を回すことで動いて、インジケーターの「穴」の中がオレンジ色に表示されて被写界深度をガイドしてくれています。

↑絞り環をセットした状態ですが、この時点では絞り環はまだ固定されていません。

↑光学系前後群も組み付けてしまいフィルター枠 (レンズ銘板も兼ねる) をセットして初めて絞り環が完全に固定されます。このモデルは鏡胴が「前部」と「後部」の二分割になっているのですが、これで鏡胴「前部」が完成したことになります。

↑ここからはヘリコイド (オスメス) とシャッターボタンを装備した鏡胴「後部」の組み立てに入ります。真鍮製のヘリコイド (メス側) は「空転ヘリコイド」になっておりクルクルと無限にいつまでも回せるようになっています。この空転ヘリコイドを固定している「固定環」が専用工具が無ければ外せない特殊な締め付けなので今回は解体できていません。またシャッターボタンの機構部も解体せずに工程を進めています。

↑シャッターボタンの押し下げで向きを左右に変える「回転キー」が飛び出ています・・上の写真では「絞り羽根開閉キー」と案内しています。このキーが向きを変えることで「伝達アーム」が勢いよく左右に振られるので、結果的に2本のコイルばねの引っ張るチカラで絞りユニットが回転する仕組みです。

↑「回転キー」の部分を拡大撮影しました。シャッターボタンが押される前の段階は上の写真の赤色矢印の方向に回っており ()、シャッターボタンが押し込まれると同時に反対側のグリーンの矢印方向に勢いよく回転 () します。従って連結している「伝達アーム」が左右に勢いよく振られるワケで、そのチカラで絞りユニットが左右に回転します。

↑上の写真は実際に「伝達アーム」を接続した状態で撮影しています。上の写真では赤色矢印の方向 () にアームが傾いていますがシャッターボタンが押し込まれるとグリーンの矢印側 () に「伝達アーム」は大きく振られる仕組みです。

↑接続部分に「S字留め具」を装着してアームが外れないようにセットします。

↑さて、このモデルの次の難関です。前回整備した個体には「直進キー」は1種類しか装備していませんでした・・上の写真は前回整備した個体の写真から転用しています (注:今回の個体ではありません)。ご覧のように大型の「直進キー」が1本だけ組み付けられています。

↑ところが、今回の個体では直進キーが2種類存在し、且つ「複合的に使われる」方法の仕組みを採っていました。直進キーの内側にさらに直進キーが備わっている仕組みです (上の写真は今回の個体の写真です)。

これが何に影響するのか・・? ヘリコイドを回転させるトルク、つまりは距離環のトルクに大きく影響してきたワケです。こんな構造のオールドレンズは初めてであり、当然ながら想定していませんからトルク調整の方法が全く判りません。結局、ヘリコイドのトルク調整をしようとした時には直進キーのの両方を微調整しながら、且つ無限遠位置の確定のためにヘリコイドのネジ込み位置も替えていかなければイケマセン。さらに・・距離環の停止位置 (無限遠位置と最短撮影距離の2箇所) でキチッと距離環が停止してくれなければヘリコイドが外れてしまいます。

上の写真を撮影したのは、前出の「伝達アームの接続」写真を撮ってから・・何と7時間が経過していました。

  • ヘリコイドのトルク調整
  • ヘリコイドのネジ山のネジ込み位置
  • 無限遠位置と最短撮影距離の整合性
  • 距離環の停止位置と距離環指標値との整合性

・・たったの4点なのですが、これらの事柄を同時に微調整しながら何度も何度もヘリコイドをネジ込み直した次第です。途中からカウントを忘れてしまいましたが、おそらく30回以上はヘリコイドの組み直しをしています。当然ながらヘリコイドのトルク調整ですからヘリコイド・グリースの塗り直しも行っているワケで、グリースを塗って距離環を回してトルク確認をしては、またバラしてグリースを除去し再び別のグリースを塗って・・の繰り返しです。

せっかくトルクの感じが良くなっても距離環の停止位置が合っていない (無限遠位置の∞マークを大きく越えてしまった) とか、無限遠位置が合ったのに今度は最短撮影距離の位置まで回らずに停止してしまう・・などなど、ひとつが良くても別がダメと言う状況を延々と続けたために7時間も経過してしまいました。それは距離環の停止位置を「キー」と言う金属製の突起棒を使っている設計だったからです。ヘリコイドのネジ込み位置と距離環指標値環の固定位置との整合性がシッカリ合致していないとキーを容易に越えてしまうのです。従って、ヘリコイドが外れてしまう・・と言う結果になります。

↑まだ、鏡筒 (ヘリコイド:オス側) をネジ込んでいない状態で距離環の指標値環だけを組み付けて撮った写真です。この後に鏡筒 (ヘリコイド:オス側) をネジ込むワケですが、なかなかスンナリとは工程が進みませんでした・・正直、疲れましたねぇ〜(笑)

↑ようやく完成かと喜んで絞り環を回したところ、絞り羽根の開閉が適正ではありません。つまり、絞りユニットの2本のコイルばねがシャッターボタンとの接続で引っ張られているままなので、ヘリコイドのネジ込み位置によっては絞り羽根の開閉が変わってしまうことが判りました・・つまり、前述の4項目にプラスして第5項目目の問題が出てきてしまったワケです。もぅこうなると、いったい自分が今何をしているのかが判らなくなってきます(笑) 何の調整をしているのか分からないまま (無意識のまま)、ただ単に作業をしているだけ・・みたいな状態に陥りましたね(笑) 頭ン中が真っ白状態でした・・。

ようやく完成の域に到達した時に確認用として撮影したのが上の写真です (せっかく組み上げたのを再びバラしているワケですョ)。絞り環の設定では開放状態なのですが、ご覧のように絞り羽根は内部で顔出ししている仕組みだったのです。つまり、このモデルはスイッチの設定で「手動 (実絞り)」の時と「自動絞り」の時とでは絞り羽根の開閉が異なった動きをしている設計だったのです・・上の写真は「自動絞り」のスイッチ設定で撮った写真ですが、スイッチのツマミを「手動 (実絞り)」に切り替えると、開放時点ではキッチリと絞り羽根が回収されて顔出ししていないのです。

この原理に気がつくのに、再び1時間をかけてしまいました・・(笑) もう何でも来い状態です(笑) こうなると、再びヘリコイドを外してネジ込み位置を変更して調整しなければ絞り羽根の開閉さえ適正状態にならないのですョ・・トンでもない設計です(笑)

↑上の写真はようやく完成してスイッチの設定「自動/手動」いずれの状態でも絞り環の設定「開放 (f1.8)」で完全開放していることを確認した時の写真です (ヘリコイドのネジ込み位置をミスると、この段階で絞り羽根が顔出ししていました)。

↑こちらはスイッチを「自動絞り」にセットしておいて絞り環を回して設定絞り値「f8」の時の絞り羽根の顔出し状態です。

↑こちらの写真は当初バラす前の段階で確認用に撮っておいた写真ですが、スイッチは同じ「自動絞り」の設定で絞り環を回して絞り羽根が顔出しした時の写真です・・絞り環の設定絞り値は「f5.6」になっていました。従って、今回の個体は過去のメンテナンス時に絞り羽根が閉じすぎた設定で調整されていたことが判明しました (絞り値との整合性は確認済です)。しかし、これらの写真はあくまでも距離環を無限遠位置まで回した時の写真であり、最短撮影距離の位置では絞り羽根はもっと顔出ししていますから、このモデルは「自動絞り」設定の時は「見なし絞り値」方式を採っているのではないかと考えます・・が、よく判りません。

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DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了したオールドレンズの写真になります。

↑正直、もぅ当分は関わりたくはない気持ちになってしまった『KERN-MACRO-SWITAR 50mm/f1.8 AR』です(笑) 黒色鏡胴ながら距離環のローレット (滑り止め) が大型タイプであり、しかも「梨地仕上げ銀枠」絞り環を備えた大変珍しい個体です・・今までに見た記憶がありません。

↑5群8枚の光学系内はピカイチレベルの透明度です。1点だけカビが生じていたので清掃して除去しています (点状のカビ除去痕が残っています)。

↑無知にも程がありますが(笑)、L39マウントの中からALPAマウントの爪が出てきた時は「へッ?!」と驚いてしまったワケで・・本当に恥ずかしいです。そもそもフィルムカメラのことを一切知らないのですからシロウト以下のレベルです(笑) その意味では、単にオールドレンズと戯れるのが好きなだけですね・・。

↑絞り羽根の開閉幅 (開口部/入射光量) は絞り環の絞り値との整合性を確認済です。絞り羽根には油染みが生じていましたが既に乾ききっていたため油染み痕は除去できません・・申し訳御座いません。

ここからは鏡胴の写真になります。筐体外装の「磨きいれ」をしましたがほとんど変わっていません。多少、梨地仕上げの銀枠環はキレイになったでしょうか?

↑塗布したグリースは「粘性:軽め」を使いましたがご指示の「現状同程度」にはできませんでした・・申し訳御座いません。当初の状態ではグリース切れが生じた一部分の領域でスカスカ状態でしたから、古いヘリコイド・グリースを除去しなければイケナイのは間違いない (ヘリコイドネジ山の摩耗を防ぐ意味合い) のですが、仕上がりのトルク感は「普通」程度です。当初の「非常に軽い状態」に比べると「重くなってしまった」と言わざるを得ません。従って、ご請求額より必要額分を減額下さいませ。当方の低い技術スキルでは、これ以上軽くすることができません。大変申し訳御座いません。もしかしたら、このレンズの整備をしていらっしゃるプロのカメラ店様や修理専門会社様に再びご依頼頂ければもう少し軽いトルク感に仕上げられるのかも知れません。

↑当初バラす前の状態に比べると絞り羽根の顔出しは「ほんの僅か」減ったかなと言う程度の改善しかできませんでした。この点もご納得頂けないようであれば必要額分を減額下さいませ。申し訳御座いません。最終的に減額頂けるMAXの金額は「ご請求額分 (つまり無償扱い)」までとし最低限送料のみご負担をお願い申し上げます・・スミマセン。その上で、お手数ですが、また別の整備会社様にお出し下さいませ。ご面倒をお掛けする結果となり誠に申し訳御座いませんが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

↑オリジナルの専用金属製フードとフィルターに前キャップが附属していました・・見たところ経年のホコリや汚れ、砂などが附着していたため清掃しています。また、この写真を撮った後にフードの縁部分の塗装が一部剥がれていたので着色しています。しかし、焼付塗装ではありませんから使われているうちに、また剥がれてしまいます。板バネ部分にも腐食が生じていたので磨きましたし、フードの梨地仕上げ銀枠ローレット (滑り止め) も中性洗剤で少し掃除しました・・せめてものお詫びの気持ちです。本当に申し訳御座いません。

↑当レンズによる最短撮影距離28cm附近での開放実写です。ピントはミニカーの手前側ヘッドライトの本当に「球部分」にしかピントが合っていません (このミニカーはラジコンカーなのでヘッドライトが点灯します)。

↑絞り環を回して設定絞り値を「f2」にセットして撮影しました。

↑さらに絞り環を回してF値「f2.8」で撮っています。

↑設定絞り値はF値「f4」になりました。

↑F値「f5.6」で撮っています。

↑F値「f8」になります。

↑絞り値は「f11」です。

↑F値「f16」になりました。

↑最小絞り値「f22」の写真です。今回のオーバーホール/修理ご依頼、誠にありがとう御座いました。