◎ CONTAX (コンタックス) Carl Zeiss Distagon 35mm/f1.4 T*(C/Y)

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DT3514(0421)レンズ銘板

CONTAXコンタックス-100今回の掲載は、オーバーホール/修理ご依頼分のオールドレンズに関するご依頼者様へのご案内ですので、ヤフオク! に出品している商品ではありません。写真付の解説のほうが分かり易いため掲載しています (オーバーホール/修理の全工程の写真掲載/解説は有料です)。

当方での扱いが初めてのオールドレンズ「Carl Zeiss Distagon 35mm/f1.4 T* (C/Y)」です。ご依頼の内容は「鏡胴のガタつき」で当初お預かりの時点で既に鏡筒カバー部分から距離環に至るまでがグラグラとグラついており、隙間も空いていました。レンズの内部で何かの部品が外れており「カラカラ」と異音が聞こえています。また距離環は無限遠位置まで完全に回らない状態に陥っており、何かが引っ掛かっている感触です。絞り環も回るのですが、途中で引っ掛かるような感じがあります。それらの確認を行っているうちに、絞り環が止まって動かなくなってしまいました。

 DT3514(0421)仕様

DT3514(0421)レンズ銘板

DT3514(0421)1当初酷い状態でしたが、バラす際も通常の解体方法ではすんなり分解ができませんでした。既に鏡筒カバーが内部で外れてしまっているようですが外れませんし、距離環も内部で一箇所引っ掛かってしまい同様に外すことができませんでした。またマウント部にも問題があり、この個体は前からも後からも全く外せない状態です・・。

距離環を回すと内部で引っ掛かりがあることが分かるので、まずは距離環のラバー製ローレットを外して「固定ネジ」を外しました。次に距離環の駆動範囲を制限している「制限キー」を外すのですが、これが引っ掛かっていました。

「制限キー」は真鍮製の板状 (8mm x 30mm) なのですが、ネジ穴が2つ用意されているにも拘わらず、内部でネジ止めされていたのは1本で、且つ完全に締め付けられていません。さらに「瞬間接着剤」で接着しているようなのですが、パーツが斜めの状態で少し浮き上がったまま固まってしまっています。それで引っ掛かっていたようです。

上の写真は、既にオーバーホールが完了した状態で撮影しています。光学系は前群の固着が激しかったのですが専用工具で外して清掃しました。前玉には写真の通り「カビ除去痕」が斑状に浮かび上がります。過去のメンテナンスでカビの清掃を行っているようです。

DT3514(0421)2光学系は8群9枚の変形レトロフォーカス型ですが、各群の硝子レンズは既に経年のコーティング層劣化が進行しておりLED光照射では非常に薄い極微細な点状のクモリが僅かに出ています。清掃により透明度は上がりましたが、極微細な点キズやヘアラインキズ、拭きキズなども相応に見受けられます。残念ながら、手放しで「クリアです」とは言えない状態です・・。

DT3514(0421)9後群も同様の状態です。光学系内には極薄いヘアラインキズがあります。

DT3514(0421)3絞りユニットも、絞り羽根の駆動に影響している「ねじりバネ」が変形していました (故意に曲げられていると思います)。適正なチカラを及ぼすよう今回カタチを整えています。

DT3514(0421)4

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DT3514(0421)7使用したヘリコイド・グリースはご指示により「粘性:中程度」を使いましたが、それでは距離環のトルクが重いので一部に「粘性:軽め」を塗っています。距離環の駆動は滑らかになったのですが、それでも相応に重めの印象に仕上がっています (これ以上軽いトルクにするとスリップしてしまうのでこのまま仕上げています)。結果、この重さのトルクでは微妙なピント合わせを行う際には少々使いにくく感じるかも知れません。

今回のご依頼内容「ガタつき」に関しては、以下のような原因でした。

  1. 鏡筒カバーと距離環の固定方法が正しくなかった。
  2. 鏡筒カバーの固定用ネジ3本のうち、1本しか締め付けられておらず、残りの2本がレンズ内部に落下していた。
  3. 光学系鏡筒のフローティング機構の組付けが正しくない。
  4. 数箇所に「瞬間接着剤」を使って固定している形跡がある。

・・こんな感じです。

このモデルは光学系前群がフローティング機構になっており厳密に言えば「ダブルヘリコイド」です。その動きと共に鏡筒カバーが独立した動きをするのですが、過去のメンテナンスではそれが理解できていなかったようです。固定ネジを最後まで締め付け固定せずに浮かせていたために、2本が外れてしまったのだと推測します。距離環も含めてグラついていたのはそのような理由でした。

DT3514(0421)11マウント部にも問題がありました。このモデルは「マウントの爪」を3本の固定ネジで止めているのですが、その固定ネジの1本が最後まで締め付けられておらず少し浮いていました。さらに爪プレート自体も瞬間接着剤で接着していた痕跡がありますが、既に剥がれていました (つまり爪プレートが浮き上がっていた)。

それが分からずに、当初確認の際に所有マウントアダプタにて実写確認をしようとしたのですが (必ず最初に行っています)、その時に引っ掻く感触を感じたので、マウントアダプタへの装着を途中でやめました。

DT3514(0421)13結局、当方所有マウントアダプタに装着した際に、爪プレートが浮き上がってしまい上の写真のようにマウント面の一部に弧を描いたキズを付けてしまいました・・申し訳御座いません。最後に着色していますがキズは残っています。ご請求金額より必要額を減額下さいませ。スミマセン。

DT3514(0421)12前述の途中までしか締め付けられていなかったネジは、恐らくネジ込めなくなってしまいそのままだったのだと思いますが、隙間から瞬間接着剤を入れたのかも知れません・・確かなことは分かりません。今回ネジを外そうとしましたが微動だにせず、仕方なく上の写真のようにネジ頭を切削しました。

理由は、絞り環が当初は引っ掛かりを感じながらも回っていたのですが回らなくなってしまったからです。つまりマウント部を解体して内部を調整する必要がありました。そのためにはまず爪プレートを外してマウント部を固定しているネジ4本を外さなければなりません (爪プレートの下に隠れている隠しネジです)。それ故にこの1本のネジ頭を切削してでも爪プレートを外す必要がありました。誠に申し訳御座いません・・。

結局、鏡筒カバーを固定していて外れていた2本のネジのうちの1本が落ちており、そのネジが絞り環の連係アームに填ってしまっていました。それで絞り環が動かなくなっていました。

なお、上の写真でも僅かに浮かび上がって写っていますが、光学系後群にもカビ除去痕が複数あります。

DT3514(0421)8距離環を回すトルク感は少々重めなのですが (申し訳御座いません)、一応使える状態まで戻しました。無限遠位置確認・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認・・それぞれが終わっています。無限遠位置はほんの僅かにオーバーインフにしてあります。また絞り環のクリック感は調整して軽くしてあります (当初はガチガチでした)。鏡筒カバーや距離環、或いは鏡胴部分など、すべてシッカリと固定しましたので問題ありません。また光学系もカビ除去痕やキズなどはありますが、写真への影響を懸念するレベルではありません。

しかし、当方による「マウントの爪プレート固定ネジ切削 (1本)」と「マウント面にキズをつけてしまった事」に関しては、ご請求金額より必要額を減額下さいませ。誠に申し訳御座いませんでした。

DT3514(0421)10当レンズによる最短撮影距離30cmでの開放実写です。

なお、別件の「Planar 50mm/f1.4 HFT (C/Y)」の光学系清掃も終わっております。やはり経年の微細なキズやヘアラインキズ、拭きキズなどが見受けられます。また第2群に弧を描いた薄いヘアラインキズが数本まとまっている箇所があります。この部分も当方の清掃とは異なる形状なのですが (当方は渦巻き状)、当初のレンズ内状態の証拠があるワケではないので、当方で付けてしまったキズだとご判断される場合には (証拠が示せないので) 、やはりご請求額より必要額を減額下さいませ。申し訳御座いません。