◎ MIRANDA (ミランダ) Soligor Miranda 50mm/f1.9(MB)

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miranda-%e6%96%b0100今回の掲載はオーバーホール/修理ご依頼分のオールドレンズに関する、ご依頼者様へのご案内ですのでヤフオク! に出品している商品ではありません。写真付の解説のほうが分かり易いこともありますが、今回に関しては当方での扱いが初めてのモデルでしたので、当方の記録としての意味合いもあり掲載しています (オーバーホール/修理の全工程の写真掲載/解説は有料です)。オールドレンズの製造番号部分は画像編集ソフトで加工し消しています。

ミランダのオールドレンズは今回が初めての扱いになります。今回オーバーホール/修理のご依頼を頂いたモデルは1957年に登場した海外輸出専用フィルムカメラ「MIRANDA A」にセットされていた標準レンズです。ご依頼の内容は「絞り羽根が動かず」「シャッターボタンとの連動せず」です。

miranda5019%e6%a7%8b%e6%88%90光学系は4群6枚の典型的なダブルガウス型です。今回バラしてみると第2群と第3群の貼り合わせレンズ (2枚の光学硝子レンズを接着剤を使って貼り合わせてひとつにしたレンズ群) はコバ塗膜が剥離していたのでコントラスト低下を防ぐ意味から当方にて着色しています。

マウントがミランダのバヨネットマウントなので、当方にはマウントアダプタが無くそのまま当初の位置で無限遠調整も行っていきます。

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オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。すべて解体したパーツの全景写真です。

mr5019s092511ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。このモデルはシャッターボタンを装備しており一見するとエクサクタのオールドレンズに似ているのですが当然ながら日本製ですから設計は異なります。

今回バラしてみると内部の構成パーツ点数が多く、さらにすべての環 (リング/輪っか) はイモネジ (ネジ頭が無くネジ部にいきなりマイナスの切り込みを入れたネジ種) を使って締め付け固定されていました・・ロシアンレンズでさえもこれほど多くのイモネジを使っていません。しかし、構造化自体は理に適った構造をしており納得しながらバラしていくことができました。意味不明な構造化が多い富岡光学製オールドレンズと比べると天と地の差です。

mr5019s092512絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒です。このモデルはヘリコイド (オス側) が独立しており別に存在します。真鍮製 (真鍮 (黄銅) 製) のズシリと重みを感じる造りです。

mr5019s0925136枚の絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成させます。当初バラした時点では絞り羽根は油染みが酷く一部には赤サビも出ていました。このモデルの絞り羽根はカーボン仕上げなので赤サビが出てしまうのも仕方がありません。

今回の個体は過去にメンテナンスされている痕跡が見受けられます。絞りユニットは「固定環」を前玉側方向からネジ込んで締め付け固定する方法なのですが、この固定環がアルミ材なので過去のメンテナンス時にネジ山を少し潰してしまったようです。鏡筒が非常に固い真鍮製 (真鍮 (黄銅) 製) なのに対して固定環がアルミ材なので容易にネジ山が削れてしまいます。

まずはこの絞りユニットの固定で難儀してしまいました。と言うのも固定環が接するのは「絞り羽根開閉幅制御環」で可動部だからです。絞り羽根が開いたり閉じたりする際の角度を決めているパーツなのですが、絞り連動ピンやシャッターボタンとの連係で一緒に動いている部分になります。

その「絞り羽根開閉幅制御環」の直下に絞りユニットが位置しており、それらをまとめて固定しているのが「固定環」なのですが、締め付け過ぎると絞り羽根は動かなくなり、逆に緩すぎると絞り羽根がバラけてしまいます (レンズを逆さにしただけで外れます)。この部分の調整に時間がかかってしまいました。

ちなみに当初バラした直後は上の写真の鏡筒は経年劣化に拠るメッキの腐食で真っ黒でしたが当方の「磨き研磨」でキレイになっています (表層面の平滑性がキープされているので絞り羽根も滑らかに駆動します)。

mr5019s092514この状態で鏡筒をひっくり返して撮影しました。鏡筒の裏側にはすぐに絞り連動ピンの機構部が配置されています。しかも、この絞り連動ピンの機構部には200個近くのマイクロ・鋼球ボールが二段構えで使われており、さすがにここをバラすと大変なことになるので今回はこの部分だけバラしていません。

mr5019s092515絞り環用の機構部を組み付けます。上の写真で「縦の溝」が刻んであるのが各絞り値に対応したクリック感を実現している「絞り値キー」です。この溝部分に鋼球ボールがカチカチと填ってクリック感になっています。

mr5019s092516絞り環をイモネジ (3本) で締め付け固定します。この時各絞り値とクリック感との整合性をキッチリ合わせておかないと最後にまたバラしてここまで戻るハメに陥ります。

mr5019s092517真鍮製のヘリコイド (オス側) をやはりイモネジ (3本) を使ってセットします。鏡胴「前部」はこれで完成した (光学系はまだ組み付けていない) ので次は鏡胴「後部」の組み立てに入ります。

mr5019s092518ヘリコイド (メス側) はアルミ材で作られています。当初バラした時点では過去に白色系グリースが塗られていましたが恐らく純正の黄褐色系グリースもそのまま残っていました (つまり清掃せずに上から白色系グリースを塗ったようです)。

mr5019s092519ヘリコイド (メス側) を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。この基台もやはり真鍮製なのでヘリコイド (メス側) だけがアルミ材削り出しのパーツです・・過去の白色系グリースによって既にネジ山が摩耗していると考えられます。

mr5019s092520こちらはマウント部になりますが既にシャッターボタンの機構部をそっくり外しています。理由はご依頼のひとつ「シャッターボタンと連動しない」と言う不具合があったからです。なお、指標値部分が清掃時にすべて褪色 (黒色のみ) してしまったので当方にて着色しています。

mr5019s092521こちらはシャッターボタンの内部を写していますが既に中のパーツをほとんど取り外しています。理由はこの中にグリースが相当量入れられていたのとつい最近だと思いますが潤滑油も塗られていました。それらの影響から一部のパーツは腐食が生じてしまい、また一部には赤サビも出ていました。上の写真は当方による磨き研磨が終わった状態で撮っていますがそれらが不具合の一因でもあったかも知れません。

mr5019s092522上の写真はシャッターボタンの機構部で使われている僅か7mm径のリングに仕込まれるマイクロ・鋼球ボールを撮っています。このマイクロ・鋼球ボール自体も僅か1mmにも満たない径の大変小さな鋼球ボール (12個使用) です。実はこの鋼球ボールが赤サビで赤くなっていたのです。そのために鋼球ボールとしての機能を果たしていなかったようです。

mr5019s092523前述のマイクロ・鋼球ボールが仕込まれたリングは上の写真解説のとおり絞り羽根開閉アームを止めている「ナットの軸」に裏表で組み付けられているワケです。従ってマイクロ・鋼球ボールに赤サビが出ていたために結果的に絞り羽根開閉アーム (当初メッキに腐食有り) に負荷が架かり上手く機能していなかったようです。

mr5019s092524シャッターボタンの軸を取り付けて機構部の完成です。単純な仕組みの機構部ですが経年劣化に拠るメッキの腐食や赤サビなどによって互いの連係が滑らかに動かなかったようです。この部分をいちいちバラしてまでメンテナンスするのが面倒なので恐らく過去のメンテナンス時にはグリースを入れてしまったのでしょう。さらにそれから時間が経ってからつい最近になってスプレー式潤滑油をシュッとやったためにサビまで出てしまったのだと推測します。細かいパーツばかりなので特にサビをとるのが大変です・・。

mr5019s092525ヘリコイド (オス側) をやはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルでは全部で8箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず) 再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

この時鏡筒の繰り出し量なども確認しておきます。もしも適正でなければこの段階でキッチリ合わせておかないと正しくなかった場合には最後にまたバラしてここまで戻らなければイケマセン。

 

DOHヘッダー

ここからはオーバーホールが完了したオールドレンズの写真になります。

mr5019s09251当初届いた現物は絞り羽根が全く動いていませんでしたが正しく機能するように改善できました。もちろんシャッターボタンとの連動も問題なく連係して正常機能しています。シャッターボタン横のロックボタンとの連係も正しく機能しています。

mr5019s09252光学系内は透明度が大変高い個体ですが残念ながら第2群の貼り合わせレンズ (2枚の光学硝子レンズを接着剤を使って貼り合わせてひとつにしたレンズ群) 外周附近にバルサム切れ (貼り合わせレンズの接着剤/バルサムが経年劣化で剥離し始めている状態) が生じており、全週に渡って水滴痕のような汚れ状が見受けられます。今後進行するレベルではなさそうなので問題にはならないと思いますし写真への影響にもならないと考えます。

mr5019s09259光学系後群もとてもキレイな状態をキープしています。

ここからは鏡胴の写真になります。当初より経年の使用感が感じられない大変キレイな状態でしたが、一応当方による「磨き」をクロームメッキ部分にもいれてありますしローレットの滑り止めジャギー部分もナイロンブラシでブラッシングしてあります。

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mr5019s09257塗布したヘリコイド・グリースは「粘性:中程度」をご指示により最初塗りましたがヘリコイドの一部が真鍮製 (真鍮 (黄銅) 製) であることからトルクムラが酷かったので「粘性:中程度+軽め」の使い分けで塗り直しました。それでも直進キーのガイドとの接触部分が影響して (腐食を取り除けない箇所) いるのかトルクムラが極僅かにあります・・距離環指標値の「6ft」前後で僅かに重くなります。また最短撮影距離の位置では「クッ」と一瞬負荷が架かります (これも直進キーの箇所の問題)。僅か3mmの隙間部分なので研磨することができず改善はできませんでした・・申し訳御座いません。

距離環を回す際のトルク自体は「普通〜軽め」程度に仕上げてありますのでピント合わせ時でも違和感を感じないレベルと思います。

mr5019s09258このモデルはフィルター枠部分がネジ込むだけになっており固定ネジが存在しませんでした。実際フィルター枠をネジ込むと「」マーカー位置が「f2.8」の位置に来てしまうので固着剤をネジ山に塗って位置合わせをしています。従ってフィルターなどを強く締めつけてしまった場合にはフィルターを外す際に一緒にフィルター枠まで外れてしまう可能性がありますのでご留意下さいませ。申し訳御座いません。

mr5019s092510オーバーホールの工程中に勘違いしてマーキングをつけてしまいました。大変申し訳御座いません! 外に出てこない場所だとばかり思い込んでいましたが最短撮影距離の位置まで距離環を回すと上の写真のようにマーキング箇所が表れます。ご請求額より必要額を減額下さいませ。誠に申し訳御座いません、お詫び致します。