◎ RICOH (リコー) XR RIKENON 50mm/f2《前期型:富岡光学製》(PK)

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RICOH-logo②久しぶりにRICOHの「XR RIKENON」シリーズのモデルを出品します。前回出品したのは昨年の7月でした。

基本的にあまり取り扱いたくないオールドレンズです・・。

理由は、富岡光学製のOEMモデルなのですが「光学系内」の状態が非常にリスキーだからです。前後玉のコーティング劣化はほぼ確実、下手すれば光学系内のコーティングも劣化が進んでいます。さらに光学系各群へのカビ発生率が高いのであまり手を出したくないモデルになってしまっています。

コーティングの劣化は一旦剥がしてから再蒸着をしない限り元の状態には戻りません。それができるのはプロのカメラ店様や修理専門会社様ですので、相応に割高なメンテナンス代金になってしまうと思います。よく光学系内のクモリは「清掃すればキレイになる」と思い込んでいる人が居ますが、コーティング劣化に拠るクモリは清掃などでは全く改善されず、一切除去できません。その意味で「光学系内に薄いクモリあり」などと言うオークション出品物に関しては、それこそイチかバチかのお話になります。運良くレンズ内部の揮発油成分で薄くクモリが生じていたのならば、清掃だけでキレイになりますね・・やってみなければ全く分からない世界です。

描写性能のよい有名モデルだけに出品のリクエストを頂くことも多く、今回はそのリスクを覚悟で久しぶりに調達しオーバーホール済にて出品しますので、お探しの方は是非ご検討下さいませ。どんなに有名でも、或いはどんなに優秀な描写でも、光学系がハイリスクなモデルである以上、次回扱う予定は全くありません・・

1978年にRICOHから発売されたフィルムカメラ「XR500」用のセットレンズとして用意されたモデルで、その前年1977年に発売されたフィルムカメラ「XR-1/XR-2」には「XR RIKENON 50mm/f1.4」或いは「XR RIKENON 50mm/f1.7」がセットされていました。従って、この当モデルはそれら前年発売の開放F値「f1.4/f1.7」モデルの廉価版として用意されたモデルです。

しかし、巷では当モデルのほうを指して、その優れた描写性とコストパフォーマンスから「和製ズミクロン」「貧者ズミクロン」の異名を持ち、いまだに人気の絶えない有名玉のひとつになっているようです。

「RIKENON 50mm/f2」にはその後のモデル・バリエーションがあります。

  • 「XR銘 無印」富岡光学製「前期型」総金属製 (長)、最短撮影距離45cm (1978年発売)
  • 「XR銘 付」富岡光学製「後期型」総樹脂製 (長)、最短撮影距離60cm (1981年発売)
  • 「RIKENON銘 付」日東光学製(?)、総樹脂製 (短)、最短撮影距離60cm (1981年発売)
  • 「RIKENON銘 無印」日東光学製(?)、総樹脂製 (短)、最短撮影距離60cm (1982年発売)
  • 「RIKENON銘 付」日東光学製(?)、総樹脂製 (短)、最短撮影距離60cm (1984年発売)

「RIKENON」銘のモデルは「日東光学製」なのかどうかは、まだ定かではありません。何故ならば日東光学製の純正モデルが無いので調べられません。OEMばかりを生産していたメーカーは、こう言う時困りますね。

 

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オーバーホールのため解体した後、組み立てていく工程写真を解説を交え掲載していきます。

すべて解体したパーツの全景写真です。

XR502(0212)11ここからは解体したパーツを使って実際に組み立てていく工程に入ります。

構成パーツの中で「駆動系」や「連動系」のパーツ、或いはそれらのパーツが直接接する部分は、すでに当方にて「磨き研磨」を施しています (上の写真の一部構成パーツが光り輝いているのは「磨き研磨」を施したからです)。「磨き研磨」を施すことにより必用無い「グリースの塗布」を排除でき、同時に将来的な揮発油分による各処への「油染み」を防ぐことにもなります。また各部の連係は最低限の負荷で確実に駆動させることが実現でき、今後も含めて経年使用に於ける「摩耗」の進行も抑制できますね・・。

XR502(0212)12絞りユニットや光学系前後群を格納する鏡筒 (ヘリコイド:オス側) です。

XR502(0212)136枚の絞り羽根を組み付けて絞りユニットを完成させます。

XR502(0212)14こちらは距離環やマウント部を組み付けるための基台です。もちろんバラした直後はドロドロの状態で腐食していましたが、キレイに「磨き研磨」を施しています。

XR502(0212)15真鍮製のヘリコイド (メス側) を無限遠位置のアタリを付けた場所までネジ込みます。最後までネジ込んでしまうと無限遠が出ません (合焦しません)。

XR502(0212)16鏡筒 (ヘリコイド:オス側) を、やはり無限遠位置のアタリを付けた正しいポジションでネジ込みます。このモデルには全部で10箇所のネジ込み位置があるので、さすがにここをミスると最後に無限遠が出ず (合焦せず)、再びバラしてここまで戻るハメに陥ります。

XR502(0212)17こちらはマウント部内部の状態を撮りました。既に連動系・連係系パーツを取り外して「磨き研磨」を施しています。

XR502(0212)18「絞り連動ピン連係アーム」や「絞り環連係アーム」を組み付けてマウント部内部を完成させます。

XR502(0212)19マウント部を基台にセットします。鏡筒の裏側から飛び出ている絞り連動アームとの噛み合わせと動きを確認しておきます。

XR502(0212)20ベアリングをセットして絞り環を組み付けます。

XR502(0212)21絞り連動ピンの環とスプリングを組み付けてから最後にマウントをネジ止め固定します。

XR502(0212)22距離環を仮止めします。この後は光学系前後群を組み付けて、無限遠位置・光軸確認・絞り羽根開閉幅の確認をそれぞれ執り行い、距離環を本締めして固定してからフィルター枠とレンズ銘板をセットすれば完成間近です。

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ここからはオーバーホールが完了した出品商品の写真になります。

XR502(0212)1富岡光学製の「XR RIKENON 50mm/f2《前期型》」になります。最短撮影距離45cmで、光学系は5群6枚の変形ダブルガウス型になり「和製ズミクロン」の異名を持つハイ・コストパフォーマンスのモデルです。

XR502(0212)2光学系内の透明度がとても高いのですが、今回の個体も前後玉のコーティング劣化が相応に進んでいます。基本的に富岡光学製のモデルは光学系の耐用年数が短いのか、既にコーティング劣化を来している、或いはカビを生じている個体が非常に多いですね・・それ故、当方ではなかなか手が出せずにいます。

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XR502(0212)2-3上の写真 (3枚) は、光学系前群のキズの状態を拡大撮影しています。1枚目は極微細な点キズの状態を撮っています。外周附近に少々目立つ明確な点キズがあります。2枚目〜3枚目は前群内 (前玉裏面〜第2群) のコーティング層経年劣化、或いはカビ除去痕による「ムラ状」「汚れ状」に見える部分を撮っていますが、薄すぎて非常に分かりにくいです (光を反射させてワザと目立つようにして撮っています)。

XR502(0212)9光学系後群も透明度が高く、順光目視で視認できる薄クモリ状の部分はありません。

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XR502(0212)9-2上の写真 (2枚) は、やはり光学系後群のキズの状態を拡大撮影しています。1枚目は極微細な点キズの状態を、2枚目はコーティング立夏とカビ除去痕による「ムラや汚れ状」の部分を撮りました。

【光学系の状態】(順光目視で様々な角度から確認)
・コーティング劣化/カビ除去痕等極微細な点キズ:
前群内:12点、目立つ点キズ:7点
後群内:11点、目立つ点キズ:6点
コーティング経年劣化:前後群あり
カビ除去痕:あり、カビ:なし
ヘアラインキズ:あり
・その他:バルサム切れなし。LED光の照射にて前玉裏面にコーティング劣化に拠る、非常に薄いクモリやカビ除去痕が浮かび上がります。
・光学系内はLED光照射でようやく視認可能レベルの極微細な拭きキズや汚れ、クモリもありますがいずれもすべて写真への影響はありませんでした。

光学系の状態を撮影した写真は、そのキズなどの状態を分かり易くご覧頂くために、すべて光に反射させてワザと誇張的に撮影しています。実際の現物を順光目視すると、これらすべてのキズは容易にはなかなか発見できないレベルです。

これらの極微細な点キズは「塵や埃」と言っている方が非常に多いですが、実際にはカビが発生していた箇所の「芯」や「枝」だったり、或いはコーティングの劣 化で浮き上がっているコーティング層の点だったりします。当方の整備では、光学系はLED光照射の下で清掃しているので「塵や埃」の類はそれほど多くは残留していません (クリーンルームではないので皆無ではありませんが)

光学系内については、何でもかんでも「カビや塵・埃、拭き残しと決めつける方」或いは「LED光照射した状態をクレームしてくる人」は、当方ではなくプロのカメラ店様や修理専門会社様などでオールドレンズのお買い求めをお勧めします。当方のヤフオク! 出品オールドレンズの入札/落札や、オールドレンズ/修理のご依頼などは、御遠慮頂くよう切にお願い申し上げます。
当方には光学系のガラス研磨設備やコーティング再蒸着設備が無く、キズやコーティングの劣化が全く無い状態に整備することは不可能です。

XR502(0212)3絞り羽根もキレイになり確実に駆動しています。

ここからは鏡胴の写真になります。経年の使用感が僅かに感じられる個体ですが、オールドレンズとして捉えた場合の当方の判定では「超美品」として掲示しています。

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XR502(0212)7【操作系の状態】(所有マウントアダプタにて確認)
・ヘリコイドのグリースは「粘性:重め」を使用。距離環や絞り環の操作は大変滑らかになりました。
・距離環のトルク感は滑らかに感じ完璧に均一です。
・ピント合わせの際は極軽いチカラで微妙な操作ができるので操作性は非常に高いです。

【外観の状態】(整備前後拘わらず経年相応の中古)
・距離環や絞り環、鏡胴には経年使用に伴う擦れやキズ、剥がれ、凹みなどありますが、経年のワリにオールドレンズとしては「超美品」の当方判定になっています (一部当方で着色箇所がありますが使用しているうちに剥がれてきます)。
・清掃時に指標値が褪色したため着色しています。
・フィルター枠に打痕 (凹) があり修復しています。フィルター着脱には支障ありません。

「磨き研磨」は極力グリースの類の塗布を少なくして、今後の経年使用に於いても「揮発油成分」が光学系まで回らないよう配慮した処置です。それは既に光学系、特にコーティングの劣化が相応に進行しており、さすがに硝子材だけはいくらメンテナンスと言えども、おいそれと何度も研磨することはできません (せいぜい当初生産時諸元値の1%以下程度までしか研磨できません)。それを考えるとグリースを塗ったくったり、或いは液化の早い滑らかな (粘性が軽めな) グリースばかりを好んで使うのもどうかと思いますが・・。

その意味では、使い倒すつもりならば整備する必要は無いでしょうし (スルスル回るのは既にグリースの限界が来て液化が始まっているからです)、少しでも長く使うならば整備したほうが良いコトになります (グリースを入れ替えるワケですから、トルクはそれなりに変化します)。その辺のリスクが分からない (気がつかない) 方が最近は多くなってきました・・当然ながら、当方のスキルレベルは低いですから、完璧な整備を望まれる方は「プロのカメラ店様/修理会社様」に整備をご依頼されるのが最善かと思いますヤフオク! に出品しているオールドレンズの入札/落札も、このブログをご覧頂き「オールドレンズ/修理」のご依頼をされるのも、すべてスルーして頂くようお願い申し上げます。

それでもヤフオク! の当方評価に「非常に良い/良い」をお付け頂ける方がいらっしゃるのは、或いは「オーバーホール/修理」のご依頼を頂けるのは、市場に出回っているオールドレンズの状態を既にご存知だからです。問題なのは、このブログが検索でヒットして「オーバーホール/修理」のご依頼をされる方々の中で「認識」「感覚」が「プロのカメラ店様で販売しているオールドレンズしか知らない」と言う方々です。そのような方々からのご依頼では、トラブルになることが最近は多くなってきました・・ご勘弁下さいませ。何度も言いますが、当方の技術レベルは低いです・・。

XR502(0212)8ヤフオク! でも数多く出回っていますが、普通のオークション落札価格で出品する気持ちはありません。それは、オーバーホールの手間と工数が相応に掛かっているからで、そのような一般的な落札価格近くで入手されたい方は、どうぞ普通のオークションのほうで落札してください。当方の価格は基本的に値下げして一般的な価格まで落とすことはありません (当方出品オークションをウォッチしてもい意味がありませんよ)。

XR502(0212)10当モデルによる最短撮影距離45cm附近での開放実写です。